特許第6903537号(P6903537)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6903537
(24)【登録日】2021年6月25日
(45)【発行日】2021年7月14日
(54)【発明の名称】ワイヤハーネス組立治具
(51)【国際特許分類】
   H01B 13/012 20060101AFI20210701BHJP
   H01R 43/00 20060101ALI20210701BHJP
【FI】
   H01B13/012 D
   H01B13/012 A
   H01R43/00 Z
【請求項の数】2
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2017-187605(P2017-187605)
(22)【出願日】2017年9月28日
(65)【公開番号】特開2019-61921(P2019-61921A)
(43)【公開日】2019年4月18日
【審査請求日】2020年8月19日
(73)【特許権者】
【識別番号】000006895
【氏名又は名称】矢崎総業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001771
【氏名又は名称】特許業務法人虎ノ門知的財産事務所
(72)【発明者】
【氏名】萩崎 武志
【審査官】 神田 太郎
(56)【参考文献】
【文献】 特開2003−068418(JP,A)
【文献】 特開2017−050194(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01B 13/012
H01R 43/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
金属端子が挿入される複数のキャビティーが形成されたコネクタを着脱可能に保持し、かつ前記コネクタの保持状態において複数の前記キャビティーが外部に露出する開口部が形成される複数のコネクタ受け装置と、
複数の前記コネクタ受け装置が配列方向に配列される組立台と、
前記組立台を配列方向周りに回動自在に支持する支持台と、
を備え、
前記組立台は、配列方向から見た場合に、第一作業方向に前記開口部が向かう第一姿勢と、前記第一作業方向よりも、水平方向に向かう第二作業方向に前記開口部が向かう第二姿勢とに、姿勢を切り替え
前記コネクタ受け装置は、
前記コネクタが着脱自在に挿入される挿入口が形成される本体部と、
前記本体部の上方向側に配置され、かつ前記本体部に対して、配列方向周りに回転自在に支持される第一部材と、
前記本体部の下方向側に配置され、かつ前記本体部に対して、配列方向周りに回転自在に支持される第二部材と、
前記第一部材および前記第二部材を閉状態に付勢する付勢部材と、
を有し、
前記開口部は、
前記第一部材および前記第二部材が閉状態において対向する前記第一部材の先端部および前記第二部材の先端部により形成され、
前記挿入口と対向し、前記挿入口よりも小さく形成されており、
前記組立台は、配列方向周りに回転自在に支持され、開方向に回転することで、複数の前記コネクタ受け装置の前記第一部材および前記第二部材を閉状態から開状態とする外力を前記第一部材および前記第二部材に作用させる解放機構を有する、
ことを特徴とするワイヤハーネス組立治具。
【請求項2】
請求項に記載のワイヤハーネス組立治具において、
前記支持台に対する回転が規制された状態で、前記支持台に固定される補助組立台を備え、
前記補助組立台は、前記組立台の上下方向の少なくとも一方向側に配置され、複数の前記コネクタ受け装置が配列方向に配列される、
ワイヤハーネス組立治具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ワイヤハーネス組立治具に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、車両に用いられるワイヤハーネスは、複数のコネクタと、各コネクタ間あるいは他の電子機器と接続される複数の電線とを有する。ワイヤハーネスの組み立てにおいては、各コネクタに形成された複数のキャビティーに、各電線の端部に圧着された金属端子をそれぞれ挿入する作業を行うこととなる。従って、ワイヤハーネス組立治具は、1つの組立台に対してコネクタ受け装置が複数配列して固定されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2003−68418号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、ワイヤハーネスの組み立てにおいては、金属端子をコネクタに挿入する作業が主な作業となるが、金属端子をコネクタに挿入する作業以外の作業、例えば、コネクタに金属端子が挿入された複数の電線をテープ、チューブなどの結束部材で結束する作業などがある。作業員にとっては、作業ごとに手の動きが異なるため、コネクタや電線と、作業員との位置関係が作業効率を向上させるために重要となる。
【0005】
本発明は、上記の事情に鑑みてなされたものであって、ワイヤハーネスの組み立てにおいて、組み立て途中のワイヤハーネスを作業員が行う作業に適した姿勢とすることができるワイヤハーネス組立治具を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、本発明におけるワイヤハーネス組立治具は、金属端子が挿入される複数のキャビティーが形成されたコネクタを着脱可能に保持し、かつ前記コネクタの保持状態において複数の前記キャビティーが外部に露出する開口部が形成される複数のコネクタ受け装置と、複数の前記コネクタ受け装置が配列方向に配列される組立台と、前記組立台を配列方向周りに回動自在に支持する支持台と、を備え、前記組立台は、配列方向から見た場合に、第一作業方向に前記開口部が向かう第一姿勢と、前記第一作業方向よりも、水平方向に向かう第二作業方向に前記開口部が向かう第二姿勢とに、姿勢を切り替え、前記コネクタ受け装置は、前記コネクタが着脱自在に挿入される挿入口が形成される本体部と、前記本体部の上方向側に配置され、かつ前記本体部に対して、配列方向周りに回転自在に支持される第一部材と、前記本体部の下方向側に配置され、かつ前記本体部に対して、配列方向周りに回転自在に支持される第二部材と、前記第一部材および前記第二部材を閉状態に付勢する付勢部材と、を有し、前記開口部は、前記第一部材および前記第二部材が閉状態において対向する前記第一部材の先端部および前記第二部材の先端部により形成され、前記挿入口と対向し、前記挿入口よりも小さく形成されており、前記組立台は、配列方向周りに回転自在に支持され、開方向に回転することで、複数の前記コネクタ受け装置の前記第一部材および前記第二部材を閉状態から開状態とする外力を前記第一部材および前記第二部材に作用させる解放機構を有する、ことを特徴とする。
【0008】
また、上記ワイヤハーネス組立治具において、前記支持台に対する回転が規制された状態で、前記支持台に固定される補助組立台を備え、前記補助組立台は、前記組立台の上下方向の少なくとも一方向側に配置され、複数の前記コネクタ受け装置が配列方向に配列される、ものでもよい。
【発明の効果】
【0009】
本発明に係るワイヤハーネス組立治具は、ワイヤハーネスの組み立てにおいて、組み立て途中のワイヤハーネスを作業員が行う作業に適した姿勢とすることができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1図1は、実施形態におけるワイヤハーネス組立治具(第一姿勢)の正面図である。
図2図2は、実施形態におけるワイヤハーネス組立治具(第一姿勢)の要部正面図である。
図3図3は、実施形態におけるワイヤハーネス組立治具(第一姿勢)の側面図である。
図4図4は、実施形態におけるワイヤハーネス組立治具(第二姿勢)の要部正面図である。
図5図5は、実施形態におけるワイヤハーネス組立治具(第二姿勢)の側面図である。
図6図6は、実施形態におけるワイヤハーネス組立治具(解放状態)の要部正面図である。
図7図7は、実施形態におけるワイヤハーネス組立治具(解放状態)の側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下に、本発明に係る実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。なお、この実施形態によりこの発明が限定されるものではない。また、下記実施形態における構成要素には、当業者が置換可能かつ容易なもの、あるいは実質的に同一のものが含まれる。
【0012】
[実施形態]
まず、実施形態におけるワイヤハーネス組立治具について説明する。図1は、実施形態におけるワイヤハーネス組立治具(第一姿勢)の正面図である。図2は、実施形態におけるワイヤハーネス組立治具(第一姿勢)の要部正面図である。図3は、実施形態におけるワイヤハーネス組立治具(第一姿勢)の側面図である。図4は、実施形態におけるワイヤハーネス組立治具(第二姿勢)の要部正面図である。図5は、実施形態におけるワイヤハーネス組立治具(第二姿勢)の側面図である。図6は、実施形態におけるワイヤハーネス組立治具(解放状態)の要部正面図である。図7は、実施形態におけるワイヤハーネス組立治具(解放状態)の側面図である。ここで、各図のX方向は、本実施形態におけるワイヤハーネス組立治具の幅方向であり、配列方向である。X1は移動方向であり、X2は移動方向と反対方向である反転方向である。Y方向は、ワイヤハーネス組立治具の奥行き方向であり、幅方向と直交する方向である。Y1方向は奥方向であり、Y2方向は手前方向である。Z方向は、ワイヤハーネス組立治具の上下方向であり、幅方向および奥行き方向と直交する方向である。Z1方向は上方向であり、Z2方向は下方向である。なお、本実施形態においては、上下方向は鉛直方向となる。
【0013】
本実施形態におけるワイヤハーネス組立治具1は、図1に示すように、自動車等の車両に搭載されて、バッテリなどの電源から供給される電力を各種の電子機器に供給する導電性を有し、図示しない金属端子が電気的に接続された電線などの複数の配索材E、配索材Eの金属端子が挿入される図示しない複数のキャビティーが形成されたコネクタC、図示しない結束部品(コルゲートチューブ、テープ、結束バンド、クリップ付き結束バンド)などの複数の組付部品から構成されるワイヤハーネスWHを組み立てる装置である。ワイヤハーネス組立治具1は、複数のコネクタ受け装置2A,2Bと、組立台3と、支持台4と、補助組立台5とを備える。
【0014】
ここで、複数のワイヤハーネス組立治具1は、固定台座101に対して移動方向に移動自在に支持されることで、ワイヤハーネス組立装置100を構成する。固定台座101は、複数のワイヤハーネス組立治具1を移動方向に移動自在に支持するものであり、組立工場の敷地内に固定されている。固定台座101は、ベルトやチェーンなどの無端連鎖部材102を図示しないモータなどの台座駆動源により回転駆動することで、無端連鎖部材102にそれぞれ連結されているワイヤハーネス組立治具1が移動方向に移動することとなる。ここで、無端連鎖部材102は、上下方向から見た場合に、長穴形状に形成されている。従って、移動方向に移動するワイヤハーネス組立治具1は、固定台座101の移動方向側端部において折り返し、移動方向に移動するワイヤハーネス組立治具1の裏側を反転方向に移動し、固定台座101の反転方向側端部においてさらに折り返し、再び移動方向に移動することとなる。台座駆動源は、図示しない制御装置と電気的に接続されており、制御装置により複数のワイヤハーネス組立治具1の移動が制御される。なお、固定台座101に対するワイヤハーネス組立治具1の相対位置を検出する図示しない位置検出部が設けられており、位置検出部が制御装置と電気的に接続されており、各ワイヤハーネス組立治具1の位置情報が制御装置に出力される。
【0015】
複数のコネクタ受け装置2A,2Bは、コネクタCを着脱自在に保持するものである。複数のコネクタ受け装置2Aは、組立台3の上面3aに配列方向に配列されている。複数のコネクタ受け装置2Bは、補助組立台5の上面5aに配列方向に配列されている。コネクタ受け装置2A、2Bは、図2および図3に示すように、本体部21と、第一部材22と、第二部材23と、付勢部材24と、基台25とを有する。
【0016】
本体部21は、コネクタCを着脱自在に保持するものであり、挿入口21aが形成される。挿入口21aは、本体部21の手前方向側端面に形成されており、コネクタCが着脱自在に挿入されるものである。ここで、挿入口21aの形状は、コネクタ受け装置2A,2Bが保持するコネクタCの形状に対応したものであり、組み立てるワイヤハーネスWHに用いるコネクタCの種類、数に応じて、コネクタ受け装置2A,2Bのうち、同じ挿入口21aが形成されているものや、異なる挿入口21aが形成されているものがあってもよい。本実施形態における本体部21は、図示しない固定部材により基台25に固定されており、組立台3に対して固定されている。
【0017】
第一部材22は、本体部21の上方向側に配置されている。第一部材22は、配列方向から見た場合に、上方向側端部から下方向側に向かって突出する先端部22aが形成されており、下方向側端部から下方向側に向かって突出する後端部22bが形成されている。先端部22aの下方向側端部には、切欠部22cが形成されている。後端部22bは、第二部材23の後述する後端部23bと対向して形成されている。第一部材22は、例えば、ヒンジ機構などの回転機構26により、基台25に対して配列方向周りに回転自在に支持されている。本実施形態における第一部材22は、下方向側端部において、基台25に固定されている本体部21に対して配列方向周りに回転自在に支持されている。
【0018】
第二部材23は、本体部21の下方向側に配置されている。第二部材23は、配列方向から見た場合に、上方向側端部から上方向側に向かって突出する先端部23aが形成されており、下方向側端部から上方向側に向かって突出する後端部23bが形成されている。先端部23aの下方向側端部には、切欠部23cが形成されている。後端部23bは、後端部22bと対向して形成されて、後端部22bよりも手前方向側に配置されている。第二部材23は、例えば、ヒンジ機構などの回転機構26により、基台25に対して配列方向周りに回転自在に支持されている。本実施形態における第二部材23は、下方向側端部において、基台25に固定されている本体部21に対して配列方向周りに回転自在に支持されている。
【0019】
付勢部材24は、第一部材22および第二部材23を閉状態に付勢するものである。本実施形態における付勢部材24は、例えば、弾性を有するコイルバネであり、一方の端部が第一部材22に固定され、他方の端部が第二部材23に固定されている。ここで、付勢部材24は、切欠部22cおよび切欠部23cにより開口部2aが形成される、すなわち先端部22aと先端部23aとが当接し、第一部材22および第二部材23が閉じた状態である閉状態においても、先端部22aを先端部23aに近づける方向に第一部材22を付勢するとともに、先端部23aを先端部22aに近づける方向に第二部材23を付勢する。
【0020】
ここで、コネクタ受け装置2A,2Bに形成される開口部2aは、第一部材22および第二部材23が閉じた状態である閉状態において、対向する先端部22aおよび先端部23aにより形成されている。本実施形態における開口部2aは、対向する切欠部22cおよび切欠部23cにより構成されている。また、開口部2aは、第一部材22および第二部材23が閉じた状態である閉状態において、挿入口21aと対向する。本実施形態における開口部2aは、挿入口21aに対して、コネクタCの挿入方向において対向する。開口部2aは、コネクタCの挿入方向から見た場合に、対向する挿入口21a(対応する挿入口21aに挿入されたコネクタCの外形)よりも小さく形成されている。つまり、第一部材22および第二部材23が閉じた状態である閉状態においては、挿入口21aに挿入されたコネクタCが開口部2aからコネクタ受け装置2A,2Bから離脱することはない。
【0021】
基台25は、コネクタ受け装置2A,2Bを組立台3および補助組立台5にそれぞれ固定するものである。基台25は、例えばねじなどの固定部材により組立台3または補助組立台5に固定されている。
【0022】
組立台3は、複数のコネクタ受け装置2Aが配列方向に配列されるものである。組立台3は、台本体部31と、取っ手32と、ピン受け33と、解放機構34とを有する。
【0023】
台本体部31は、複数のコネクタ受け装置2Aが配列方向に固定されるものである。本実施形態における台本体部31は、木製であり、配列方向を長手方向とする長方形状の平板である。
【0024】
取っ手32は、組立台3の姿勢を後述する第一姿勢と第二姿勢とに切り替える際に、作業員が把持することで、切り替えを容易に行うものである。本実施形態における取っ手32は、台本体部31の移動方向側端部に形成されている。取っ手32は、例えば、金属製であり、上下方向における中央部が上面3aに対して離間して配置され、上下方向における両端部が台本体部31にそれぞれ固定されている。
【0025】
ピン受け33は、解放機構34の後述する開状態を維持するものである。ピン受け33は、上下方向において解放機構34の後述するレバー38と対向する位置、本実施形態では、台本体部31の反転方向側端部に形成されている。ピン受け33は、例えば、金属製であり、少なくとも配列方向においてロックピン39aと対向する位置まで、台本体部31の反転方向側端部から反転方向に突出して形成されている。
【0026】
解放機構34は、複数のコネクタ受け装置2Aの第一部材22および第二部材23を閉状態から開状態とする外力を第一部材22および第二部材23に作用させるものである。解放機構34は、回転力により、第一部材22および第二部材23に対して外力を作用させるものである。解放機構34は、シャフト35と、シャフト受け36と、連結部材37、レバー38と、ロック機構39とを有する。
【0027】
シャフト35は、配列方向周りに回転するものであり、第一部材22および第二部材23に外力を作用させるものである。シャフト35は、例えば、金属性であり、円柱状に形成されている。
【0028】
シャフト受け36は、シャフト35を配列方向周りに回転自在に支持するものである。シャフト受け36は、一方の端部が台本体部31に固定、すなわち組立台3の上面3aに固定されており、他方の端部に配列方向を軸方向とする円環部が形成されて、シャフト35が回転自在に挿入されている。本実施形態におけるシャフト受け36は、組立台3の配列方向における両端部に一対形成されている。
【0029】
連結部材37は、シャフト35の回転力を第一部材22および第二部材23に外力を作用させるものである。連結部材37は、各コネクタ受け装置2Aのそれぞれに対応して形成されている。本実施形態における連結部材37は、可撓性を有するワイヤー、ロープ、糸などの紐状部材であり、一方の端部がシャフト35の外周面に固定され、他方の端部が第一部材22の上方向側端部に固定されている。連結部材37は、解放機構34が後述する閉状態において第一部材22に外力を作用させず、開状態において第一部材22に外力を作用させる長さに設定されている。
【0030】
レバー38は、解放機構34の閉状態と開状態とを切り替えるものである。レバー38は、円柱形状であり、シャフト35の反転方向端部に、かつ軸方向が配列方向と直交する方向に固定されている。本実施形態におけるレバー38は、解放機構34の閉状態において軸方向が台本体部31と直交する方向と平行となる開位置となり、開状態において軸方向が下方向と平行となる閉位置となるものである。レバー38は、作業員が把持しやすくするため、シャフト35よりも外形が大きく形成されている。
【0031】
ロック機構39は、解放機構34の開状態を維持、すなわちロックするためものであり、レバー38を開位置に維持するものである。ロック機構39は、レバー38に固定されており、ロックピン39aと、ピン軸受39bとを有する。ロックピン39aは、ピン受け33に当接することで、レバー38の開位置から閉位置への回転を規制するものである。
【0032】
ピン軸受39bは、ロックピン39aを軸方向に移動自在に支持するものある。本実施形態におけるピン軸受39bは、レバー38の軸方向に対してロックピン39aの軸方向が平行となるように、ロックピン39aを支持する。ピン軸受39bは、解放機構34のロック時に、レバー38の軸方向において、ロックピン39aの先端部がレバー38よりも軸方向に突出させる。
【0033】
支持台4は、組立台3を配列方向周りに回動自在に支持するものである。支持台4は、台本体部41と、回転機構42と、第一姿勢支持部材43と、第二姿勢支持部材44とを有する。
【0034】
台本体部41は、回転機構42を介して、組立台3を配列方向周りに回転自在に支持するものである。本実施形態における台本体部41は、木製であり、配列方向を長手方向とする長方形状の平板である。
【0035】
回転機構42は、台本体部41と、組立台3の台本体部31とに固定され、台本体部41に対して台本体部31を回転自在に支持するものである。回転機構42は、配列方向周りに回転するものであり、例えば、ヒンジ機構である。回転機構42は、一方の端部が組立台3の上面3aに固定され、他方の端部が支持台4の上面4aに固定されている。
【0036】
第一姿勢支持部材43は、図3に示すように、組立台3を第一姿勢の状態に維持するものである。第一姿勢支持部材43は、台本体部41の奥方向側端部に形成されている。本実施形態における第一姿勢支持部材43は、支持台4の上面4aから上方向に向かって延在して形成されており、上方向側端面が奥方向側端部から手前方向側端部に向かって、下方向に傾斜する傾斜面43aに形成されている。ここで、台本体部31は、回転機構42により、支持台4に対して回転自在に支持されているが、奥方向側に向かって回転すると、上方向側端部が傾斜面43aと接触することで、奥方向側に向かって回転することが規制される。つまり、組立台3は、第一姿勢支持部材43により、第一姿勢を維持する。ここで、第一姿勢とは、配列方向から見た場合に、組立台3が第一作業方向に開口部2aが向かう姿勢である。本実施形態における第一作業とは、作業員により、コネクタ受け装置2Aに保持されたコネクタCに、開口部2aを介して配索材Eの図示しない端子金具を挿入し、固定する作業である。第一作業方向とは、コネクタCに配索材Eを固定する作業の際に、作業員に適した方向をいう。第一作業方向は、支持台4の手前方向側端部に対向するように立位する作業員が下方向に視線を落とした際に、視線を落とした方向が開口部2aと直交する方向、すなわち挿入方向と平行(ほぼ平行も含む)する方向である。
【0037】
第二姿勢支持部材44は、図5に示すように、組立台3を第二姿勢の状態に維持するものである。第二姿勢支持部材44は、第一姿勢支持部材43の手前方向側端部に形成されている。本実施形態における第二姿勢支持部材44は、支持台4の上面4aから上方向に向かって延在して形成されている。ここで、台本体部31は、回転機構42により、支持台4に対して回転自在に支持されているが、手前方向側に向かって回転すると、下方向側端部が第二姿勢支持部材44と接触することで、手前方向側に向かって回転することが規制される。つまり、組立台3は、第二姿勢支持部材44により、第二姿勢を維持する。ここで、第二姿勢とは、配列方向から見た場合に、組立台3が第二作業方向に開口部43が向かう姿勢である。本実施形態における第二作業とは、作業員により、コネクタ受け装置2Aに保持されたコネクタCに固定された配索材Eのうち、複数の配索材Eを結束する作業である。第二作業方向とは、第一作業方向よりも水平方向、すなわち奥行き方向に向かうものであり、複数の配索材Eを図示しない結束部材により結束する作業の際に、作業員に適した方向をいう。第二作業方向は、配列方向から見た場合に、支持台4の手前方向側端部に対向するように立位する作業員と配索材E(開口部2aと直交する方向)と直交する方向(ほぼ直交する方向も含む)である。
【0038】
補助組立台5は、複数のコネクタ受け装置2Bが配列方向に配列されるものである。補助組立台5は、木製であり、配列方向を長手方向とする長方形状の平板である。補助組立台5は、組立台3の上下方向の少なくとも一方向側、本実施形態では、組立台3に対して上方向側に配置されている。本実施形態における補助組立台5は、第一姿勢支持部材43の傾斜面43aに、例えば固定部材により固定されている。つまり、補助組立台5は、支持台4に対する回転が規制された状態で、支持台4に固定され、上面5aに複数のコネクタ受け装置2Bが固定されている。なお、補助組立台5は、本実施形態では、組立台3の上方向側に配置するが、これに限定されるものではなく、下方向側に配置、あるいは上方向側および下方向側の両方向側に配置してもよい。
【0039】
次に、ワイヤハーネス組立治具1によるワイヤハーネスWHの組み立てについて説明する。ここでは、組立台3が第一姿勢であり、各コネクタ受け装置2A,2BにコネクタCが保持されている状態から説明する。また、固定台座101に対して組立台3が第一姿勢となる第一姿勢位置と、第二姿勢となる第二姿勢位置となる位置とが異なることから、第一姿勢において行う第一作業と第二姿勢において行う第二作業とは、別の作業員あるいは
第一姿勢位置において組立台3と正対している作業員が第二姿勢位置まで移動して行ってもよい。
【0040】
まず、作業員は、ワイヤハーネス組立治具1のうち奥行き方向のうち、手前方向側端部と正対する。作業員は、図1図3に示すように、組立台3が第一姿勢の状態で、コネクタCに配索材Eを固定する。具体的には、作業員は、配索材Eを把持し、開口部2aから露出しているコネクタCのキャビティーに金属端子を挿入し、コネクタCに配索材Eを固定する。
【0041】
次に、作業員は、図4図5に示すように、組立台3を第一姿勢から第二姿勢に切り替える。具体的には、作業員は、取っ手32を把持し、組立台3を手前方向に引き付ける。組立台3は、作業員が外力を作用させることにより、回転機構42により、第一姿勢から手前方向側に向かって回転し、第二姿勢支持部材44に台本体部31が当接することで、第二姿勢に移行する。
【0042】
次に、作業員は、組立台3が第二姿勢の状態で、コネクタCに固定された配索材Eのうち、複数の配索材を図示しない結束部材により結束する。
【0043】
次に、作業員は、図2図3に示すように、組立台3を第二姿勢から第一姿勢に切り替える。具体的には、作業員は、取っ手32を把持し、組立台3を奥方向に押し出す。組立台3は、作業員が外力を作用させることにより、回転機構42により、第二姿勢から奥方向側に向かって回転し、第一姿勢支持部材43に台本体部31が当接することで、第一姿勢に移行する。
【0044】
次に、作業員は、ワイヤハーネス組立治具1から組み立てたワイヤハーネスWHを取り外す。具体的には、作業員は、図6図7に示すように、解放機構34のレバー38を閉位置から開位置とする。このとき、シャフト35がシャフト受け36に対して、開方向であるR1方向に回転する。連結部材37は、シャフト35がR1方向に回転することにより、シャフト35に巻き取られる。連結部材37がシャフト35に巻き取られると、各コネクタ受け装置2Aの第一部材22に対して、シャフト35に近づける外力が作用する。この外力が付勢部材24の付勢力に対抗すると、第一部材22は、回転機構26により、基台25に対して上方向側に向かって回転する。第一部材22が回転すると、後端部22bが後端部23bと当接し、第二部材23に対して、第二部材23を第一部材22から遠ざける外力が作用する。この外力が付勢部材24の付勢力に対抗すると、第二部材23は、回転機構26により、基台25に対して下方向側に向かって回転する。これにより、第一部材22および第二部材23が互いに離間することで、開口部2aが形成されなくなり、本体部21の挿入口21aのすべてが外部に露出する。このとき、ロック機構39のロックピン39aを下方向側に移動させ、ロックピン39aとピン受け33とを奥行き方向において対向させ、当接させる。これにより、コネクタ受け装置2Aは、第一部材22および第二部材23が互いに離間され、本体部21の挿入口21aのすべてを外部に露出させる。このとき、シャフト35には付勢部材24により、閉方向であるR2方向の回転力が作用しているため、作業員がレバー38の把持をやめると、解放機構34は自動的に開状態から閉状態に移行しようとする。ロックピン39aとピン受け33とが当接していれば、シャフト35のR2方向への回転が規制され、解放機構34の開状態が維持される。
【0045】
また、図示は省略するがコネクタ受け装置2Bも、コネクタ受け装置2Aと同様に、第一部材22および第二部材23が互いに離間することで、本体部21の挿入口21aのすべてを外部に露出させる。コネクタ受け装置2A,2Bの挿入口21aが外部に露出することで、各本体部21に保持されているすべてのコネクタCを本体部21から引き抜くことができ、ワイヤハーネスWHをワイヤハーネス組立治具1から取り外すことができる。
【0046】
なお、引き続きワイヤハーネス組立治具1によりワイヤハーネスWHを組み立てる場合は、コネクタ受け装置2A,2Bの挿入口21aが外部に露出した解放状態において、作業員が新たなコネクタCを各本体部21の挿入口21aにそれぞれ挿入する。作業員は、コネクタCをコネクタ受け装置2A,2Bにそれぞれ保持させたのち、ロック機構39のロックピン39aを上方向側に移動させ、ロックピン39aとピン受け33との当接を終了し、解放機構34を開状態から閉状態に移行する。これにより、コネクタ受け装置2Aは、第一部材22および第二部材23が互いに接近、当接し、本体部21の挿入口21aが開口部2aにより一部が露出した状態となる。
【0047】
以上のように、本実施形態にかかるワイヤハーネス組立治具1は、ワイヤハーネスWHの組み立てにおいて、組み立て途中のワイヤハーネスWHを作業員が行う作業に適した姿勢、すなわちワイヤハーネスWH、特に、コネクタCに配索材Eを固定する第一作業に適した第一姿勢と、複数の配索材Eを結束部材で結束する第二作業に適した第二姿勢とに切り替えることができる。従って、組み立て途中のワイヤハーネスWHを作業員が行う作業に適した姿勢とすることができる。
【0048】
また、本実施形態にかかるワイヤハーネス組立治具1は、解放機構34により、各コネクタ受け装置2Aの第一部材22および第二部材23を開状態と閉状態とに切り替えることができる。つまり、1つの解放機構34により、すべてのコネクタ受け装置2Aの第一部材22および第二部材23を開状態と閉状態とに切り替えることができる。従って、作業員が各コネクタ受け装置2Aの第一部材22および第二部材23を開状態とする場合と比較して、ワイヤハーネスWHの組み立て作業の作業効率を図ることができる。
【0049】
また、本実施形態にかかるワイヤハーネス組立治具1は、支持台4に対して回転が規制された状態で、補助組立台5が固定され、補助組立台5に複数のコネクタ受け装置2Bが固定されている。したがって、コネクタ受け装置2Bは、第一作業に適した姿勢から他の姿勢に切り替えられることはない。これにより、ワイヤハーネスWHの組み立てにおいて、第二作業を行う際に、第一姿勢から第二姿勢に切り替える必要がないコネクタ受け装置2Bを補助組立台5に固定することで、コネクタ受け装置2A,2Bのすべてを組立台3に固定した場合と比較して、姿勢の切り替えを行う組立台3の総重量を低減することができる。つまり、作業員による組立台3の姿勢切り替えを容易に行うことができ、ワイヤハーネスWHの組み立て作業の作業効率を図ることができる。
【符号の説明】
【0050】
1 ワイヤハーネス組立治具
2A,2B コネクタ受け装置
2a 開口部
21 本体部
22 第一部材
23 第二部材
24 付勢部材
25 基台
3 組立台
31 台本体部
32 取っ手
33 ピン受け
34 解放機構
35 シャフト
36 シャフト受け
37 連結部材
38 レバー
39 ロック機構
4 支持台
41 台本体部
42 回転機構
43 第一姿勢支持部材
44 第二姿勢支持部材
5 補助組立台
100 ワイヤハーネス組立装置
101 固定台座
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7