特許第6903543号(P6903543)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6903543
(24)【登録日】2021年6月25日
(45)【発行日】2021年7月14日
(54)【発明の名称】ABZ相の分周装置
(51)【国際特許分類】
   G01D 5/244 20060101AFI20210701BHJP
【FI】
   G01D5/244 A
   G01D5/244 G
【請求項の数】2
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2017-197354(P2017-197354)
(22)【出願日】2017年10月11日
(65)【公開番号】特開2019-70603(P2019-70603A)
(43)【公開日】2019年5月9日
【審査請求日】2020年3月12日
(73)【特許権者】
【識別番号】000003115
【氏名又は名称】東洋電機製造株式会社
(72)【発明者】
【氏名】小谷 郁雄
【審査官】 岩本 太一
(56)【参考文献】
【文献】 特開平02−099826(JP,A)
【文献】 特開昭64−032118(JP,A)
【文献】 特開2005−156208(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2005/0238365(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01D 5/00−5/252
5/39−5/62
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
インクリメンタルエンコーダと、該インクリメンタルエンコーダが出力するA相信号、B相信号、およびZ相信号を入力とする分周装置で構成され、
前記インクリメンタルエンコーダは、回転に応じて90度位相差のパルス列である前記A相信号とB相信号を出力するとともに、1回転するごとに前記Z相信号を出力し、
前記分周装置は、パルス変換器とカウンタを内蔵し、
該パルス変換器は前記A相信号とB相信号を入力して、該A相信号とB相信号の周波数を整数倍した周波数となる逓倍信号と、前記インクリメンタルエンコーダの回転方向を示す回転方向信号を検出し、
前記カウンタは、前記逓倍信号、前記回転方向信号、および前記Z相信号を入力とするアップダウンカウンタであり、該カウンタは前記回転方向信号に応じて前記逓倍信号をアップ、またはダウンカウントしてカウント値を出力し、また該カウンタは、前記Z相信号がアクティブとなったとき前カウント値をクリアするものであって、
前記分周装置に、セレクタ、分周AB相発生器、複数個の分周Z相パルス幅設定器、およびコンパレータを設け、
該セレクタは、前記カウンタが出力するカウント値から連続した2ビットの信号を選択して出力し、
前記分周AB相発生器は、該2ビットの信号から前記A相信号とB相信号の位相関係を保持しつつ周波数を分周比1/K(Kは正の整数)にて分周した、分周A相信号と分周B相信号を生成することを特徴とし、
前記複数個の分周Z相パルス幅設定器、およびコンパレータは、前記カウント値を常時監視して、前記カウント値がゼロを基点にパルス幅が前期Z相信号に対して、前記分周比1/Kの逆数倍Kとなるパルス幅であって、前記Z相信号に同期した分周Z相信号を生成することを特徴とし、
前記A相信号、B相信号、およびZ相信号を分周した前記分周A相信号、分周B相信号、および分周Z相信号を生成することを特としたABZ相の分周装置。
【請求項2】
請求項1のABZ相の分周装置において、前記複数個の分周Z相パルス幅設定器の値を変更することにより、分周Z相信号のパルス幅を可変としたことを特徴とするABZ相の分周装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高い分解能のインクリメンタルエンコーダが出力するA相信号、B相信号、およびZ相信号の分周処理に関するものである。
【背景技術】
【0002】
モータなどの駆動装置や、その他製造装置、搬送装置などのローラにインクリメンタルエンコーダを取り付けて、回転体や移動体の速度、移動距離、あるいは変移角度の検出が従来から実施されている。該インクリメンタルエンコーダには、回転の正転と逆転を検出するために、90度位相差のパルス列であるA相信号とB相信号を出力するもの、これに加えてさらに、1回転するごとに1つのパルスであるZ相信号を出力するものがある。
【0003】
また、該インクリメンタルエンコーダが出力する1回転あたりのパルス数(インクリメンタル信号の数)は、従来の制御装置では600PPR(PPRはPulse Per Roundである)、1024PPRなど通常の精度のものが使用されていた。
そして近年の制御装置では、検出する速度や変移角度に高い精度が必要なとき、9600PPR、19200PPRや、8192PPRなどのインクリメンタルエンコーダが用いられるようになった。この高い精度のインクリメンタルエンコーダは出力するA相信号、B相信号、およびZ相信号の周波数も高いものとなった。
かような高い精度のインクリメンタルエンコーダを使用するとき、組み合わせて使用するモータの駆動装置などは、新規に開発するかモデルチェンジを行って、前記インクリメンタルエンコーダのインターフェィスを準備し使用されている。
【0004】
一方前記インクリメンタルエンコーダは、モータの駆動装置と組み合わせて使用するだけでなく、従来や他社製の表示装置やモニタ装置、あるいは他の制御装置など別の機器と同時に使用するニーズがある。このようなときに、かような別の機器は高い精度、ひいては高い周波数のインクリメンタルエンコーダに対応しておらず、使用ができない不都合があった。
【0005】
これの解決策として、信号を分周して使用する方法があり、前記インクリメンタルエンコーダが出力する1つの信号、例えばA相信号を分周することは周知の技術である。これは例えば、8192PPRのインクリメンタルエンコーダのA相信号を8分の1に分周すれば、1024PPRの信号となる。
【0006】
また上記とは別の解決策として、前記インクリメンタルエンコーダが出力する2つのA相信号とB相信号を分周する技術は、特許文献1と特許文献2にて公開されている。
該特許文献1では、2分の1の分周回路を従属に接続し、A相信号とB相信号を分周する技術が公開されている。また前記特許文献2では、分周比Eによる分周回路が公開されており、該分周比Eは2のべき乗分の1の分周比に依らないと推定される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開平5−99947号広報
【特許文献2】特開平7−12588号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
前記特許文献1と特許文献2ではともに、前記インクリメンタルエンコーダが出力する信号のうち、A相信号とB相信号の分周に関するものであり、Z相信号の分周については記載がないようである。ここで、インクリメンタルエンコーダがA相信号、B相信号のみならず、Z相信号も出力するときは、これらの3つの信号を全て分周するA相信号、B相信号、およびZ相信号の分周装置(以下に、ABZ相の分周装置と称す)が必要である。
すなわち本発明の課題は、単に分周するのではなく、元のA相信号、B相信号、およびZ相信号の相互の位相関係を保持して分周を行う前記ABZ相の分周装置を実現することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を本発明においては、次のように解決する。
(1)本発明は、インクリメンタルエンコーダと、該インクリメンタルエンコーダが出力するA相信号、B相信号、およびZ相信号を入力とするABZ相の分周装置で構成され、該ABZ相の分周装置に特徴がある。そして前記インクリメンタルエンコーダは、回転に応じて90度位相差のパルス列である前記A相信号とB相信号を出力するとともに、1回転するごとに前記Z相信号を出力する。
【0010】
また前記分周装置は、パルス変換器とカウンタを内蔵し、該パルス変換器は前記A相信号とB相信号を入力して、該A相信号とB相信号の周波数を整数倍した周波数となる逓倍信号と、前記インクリメンタルエンコーダの回転方向を示す回転方向信号を検出する。次に前記カウンタは、前記逓倍信号、前記回転方向信号、および前記Z相信号を入力とするアップダウンカウンタであり、該カウンタは前記回転方向信号に応じて前記逓倍信号をアップ、またはダウンカウントしてカウント値を出力し、さらに該カウンタは、前記Z相信号がアクティブとなったとき前カウント値をクリアするものである。
【0011】
そして本発明は、前記分周装置にセレクタ、分周AB相発生器、複数個の分周Z相パルス幅設定器、およびコンパレータを設けることを特徴とし、該セレクタは、前記カウンタが出力するカウント値から連続した2ビットの信号を選択して出力する。次に前記分周AB相発生器は、該2ビットの信号から前記A相信号とB相信号の位相関係を保持しつつ周波数を分周比1/K(Kは正の整数)にて分周した、分周A相信号と分周B相信号を生成することを特としている。
【0012】
続いて前記複数個の分周Z相パルス幅設定器、およびコンパレータは、前記カウント値を常時監視して、前記カウント値がゼロを基点にパルス幅が前Z相信号に対して、前記分周比1/Kの逆数倍Kとなるパルス幅であって、前記Z相信号に同期した分周Z相信号を生成することを特としている。
【0013】
かように本発明は、前記A相信号、B相信号、およびZ相信号を分周した前分周A相信号、分周B相信号、および分周Z相信号を生成することを特としたABZ相の分周装置である。
【0014】
(2)さらに前記ABZ相の分周装置において、前記複数個の分周Z相パルス幅設定器の値を所定の値に変更することにより、分周Z相信号のパルス幅を可変としたことを特徴とするABZ相の分周装置である。
【発明の効果】
【0015】
本発明の効果は、高い分解能のインクリメンタルエンコーダが出力するA相信号、B相信号および、Z相信号が高い周波数であっても、本発明のABZ相の分周装置を用いることにより、低い周波数の分周A相信号、分周B相信号および、分周Z相信号を得ることができる。
これにより高い分解能のインクリメンタルエンコーダを、性能が優れた近年の制御装置と組み合わせて使用するほか、同時に従来や他社製の表示装置やモニタ装置、あるいは別の制御装置などと使用することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】本発明の実施例の構成を示すブロック図である。(実施例1)
図2】パルス変換器11とカウンタ12の動作を説明する図である。(実施例1)
図3図2の一部を拡大して説明する図である。(実施例1)
図4】セレクタ13の詳細を説明する図である。(実施例1)
図5】分周A相信号A2と分周B相信号B2の生成を説明する図である。 (実施例1)
図6】分周Z相信号Z2を生成するしくみを説明する図である。 (実施例1と実施例2)
図7】分周Z相信号Z2の生成を説明する図である。(実施例1)
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下に、本発明の実施例の図を示して説明を行う。図1は第1の実施例の構成を説明し、図2から図7は第1の実施例の各部の動作を詳細に説明し、図6と表2は第2の実施例を説明するものである。
【実施例1】
【0018】
図1は本発明の第1の実施例の構成を示すブロック図であり、図中の1と2はそれぞれ、インクリメンタルエンコーダと本発明によるABZ相の分周装置である。該インクリメンタルエンコーダ1はA相信号A1、B相信号B1、およびZ相信号Z1を出力し、該A相信号A1とB相信号B1は90度位相差で回転に応じて生成されるパルス列であり、回転方向が変わると位相差は逆となる。また、前記インクリメンタルエンコーダ1は1回転するごとに、前記Z相信号Z1を出力する。
【0019】
次に前記ABZ相の分周装置2は、図示する11から24の機器を内蔵し、11と12は周知の機器であり、13以降の機器が本発明の特徴を構成するものである。
始めに11と12はそれぞれパルス変換器とカウンタであり、該パルス変換器11は、前記インクリメンタルエンコーダ1が出力する前記A相信号A1とB相信号B1を入力し、逓倍信号と回転方向信号DRを出力する。該逓倍信号は前記A相信号A1の周波数の1倍、2倍、または4倍の周波数であるが、前記図1では4倍の場合にて逓倍信号4Fとしている。
【0020】
続いて前記カウンタ12は、前記逓倍信号4F、回転方向信号DR、およびZ相信号Z1を入力してカウント値Cを出力する。さらに説明すると該カウンタ12はアップダウンカウンタであり、前記回転方向信号DRに応じて前記逓倍信号4Fをアップ、またはダウンにて計数しカウント値Cを出力する。ここで前記図1では、該カウント値Cをn桁の2進数にて、C(n−1)、C(n−2)、〜C0とも表記している。
そして、該パルス変換器11とカウンタ12の動作は、後の図2図3にてさらに説明を行う。
【0021】
同じく図1において、13と14はそれぞれセレクタとNXORゲートである。始めに該セレクタ13は前記カウンタ12によるカウント値Cと、分周比1/K(Kは2のべき乗)に対応した選択信号Sを入力とし、該選択信号Sは図示しないマイクロコンピュータから出力されるものである。そして前記セレクタ13は、該選択信号Sにて前記カウンタCの連続した2ビットを選択して、上位桁のビットをY1から、下位桁のビットをY0から出力する。
【0022】
そして、前記Y1から出力する信号は分周A相信号A2であり、前記Y0とY1の出力を前記NXORゲート14で演算したものが分周B相信号B2となる。すなわち、前記セレクタ13の出力Y1と前記前記NXORゲート14は、分周AB相発生器を構成するもので、前記インクリメンタルエンコーダ1が出力する前記A相信号A1とB相信号B1は、前記選択信号Sにより指定される前記分周比1/Kにて分周され、分周A相信号A2と分周B相信号B2を生成するものである。
なお、前記セレクタ13とNXORゲート14による該分周A相信号A2と分周B相信号B2の生成の詳細は、後の図4および図5にてさらに説明を行う。
【0023】
同じく図1において15、17、19,および22は分周Z相パルス幅設定器であり、16、18、20、および23はコンパレータであり、21と24はそれぞれANDゲートとORゲートである。該分周Z相パルス幅設定器15からORゲート24は、前記カウント値Cを常時監視し、前記カウント値Cがゼロを基点に、パルス幅が前記Z相信号Z1に対して、前分周比1/Kの逆数倍(K倍)となるパルス幅の分周Z相信号Z2を生成するものである。
なお、該分周Z相信号Z2の生成についても、後の図6および図7にてさらに説明を行う。
【0024】
次に、前記図1のパルス変換器11およびカウンタ12の動作について、図2図3を参照して説明する。
始めに図2は、前記インクリメンタルエンコーダ1、パルス変換器11、およびカウンタ12の各部の信号の波形を時間の推移とともに表したものであり、該図2の(a)、(b)、および(c)はそれぞれ、前記インクリメンタルエンコーダ1が出力する前記A相信号A1、B相信号B1、およびZ相信号Z1の波形の推移を表している。そして、該図2の(c)に示すとおり前記Z相信号Z1は、前記インクリメンタルエンコーダ1が時刻T1、T2、T3,T4、T5と1回転ごとに出力する1パルスの信号である。
【0025】
続いて該図2の(d)と(e)はそれぞれ、前記パルス変換器11が出力する前記逓倍信号4Fと回転方向信号DRの時間的推移を表している。また、該図2の(f)は前記インクリメンタルエンコーダ1の回転の状態を表したもので、次のとおりとなっている。
図2の(f)について
時刻T21まで、 正転にて回転
時刻T21からT22まで、 停止
時刻T22からT41まで、 逆転にて回転
時刻T41以降、 正転にて回転
図2の(f)回転の状態を参照し、前記図2の(e)回転方向信号DRは、正転を0にて逆転を1にて検出するとしている。
【0026】
そして、該図2の(g)は前記カウンタ12が出力するカウント値Cの時間的推移を表し、前記インクリメンタルエンコーダ1が正転のときはカウントアップし、逆転のときはカウントダウンの動作としている。また、前記Z相信号Z1が1となる時刻T1、T2、T3、T4において、該カウント値Cはゼロにクリアされる。
また、+Cmaxと−Cmaxにおける最大カウント値Cmaxは、次の数式1による値となる。
(数1)

これを数値例で示せば、1回転当たりのパルス数を8,192PPRとし、前記逓倍信号は4Fとしているのでここでは逓倍率が4となり、前記最大カウント値Cmaxは次の数式2の値となる。
(数2)
【0027】
次に図3は、前記図2の(a)、(b)、(d)、および(g)の動作を明確にするため、時刻T21からT22間の時間を拡大して表すもので、該図3の(a)から(g)は、前記図2における同じ符号のものと同一の信号を表している。また該図3の(c)、(e)、および(f)の時間的推移は、前記図2のそれと同じでありこれの説明は割愛する。
【0028】
そして該図3の(a)と(b)について、時刻T21まで正転のとき前記A相信号A1は前記B相信号B1より位相が90度進みであり、時刻T22以降の逆転のとき前記A相信号A1は90度遅れである。また該図3の(d)逓倍信号4Fは、前記A相信号A1とB相信号B1の立ち上がりと立下りを検出し生成したものである。
次に該図3の(g)カウント値Cは、前記図3の(d)逓倍信号4Fと(e)回転方向信号DRにより、図示のごとくアップカウント、またはダウンカウントされる。
【0029】
ここで前記パルス変換機11とカウンタ12は周知の機器であるが、以降に示す本発明の説明を容易とするため、該11と12の動作を前記図2図3により説明を行ったものである。
【0030】
次に、前記図1の前記セレクタ13とNXORゲート14の動作について、図4図5を参照して説明する。
始めに図4は、前記セレクタ13の構成例を説明するものであり、該図4において13aおよび13bはマルチプレクサである。該マルチプレクサ13aおよび13bは、前記カウント値Cと前記選択信号Sを入力し、分周上位桁Y1と分周下位桁Y0を出力する。なお前記選択信号Sは、図示しないマイクロコンピュータにて前記分周比1/Kに対応して設定されるものである。
【0031】
図4ではさらに説明を容易とするため、前記カウント値Cを2進数で下8ビットのC(7)、〜C(1)、C(0)を使用するとし、前記選択信号Sを同じく2進数3ビットでS(2)、S(1)、S(0)としている。そして前記マルチプレクサ13aと13bは、該図4の真理値表のとおり、前記選択信号S(2)からS(0)によって、8つの入力から1つを選択して出力する。ここで、前記マルチプレクサ13aには前記C(0)から入力され、前記マルチプレクサ13bには前記C(1)から入力されている。これにより、前記マルチプレクサ13a、13bの出力Y1とY0には、前記カウント値C(7)からC(0)の中から連続した2ビットが出力されこととなる。
下の表1に、前記選択信号Sの値と前記出力Y1とY0に出力される信号の組み合わせを示す。該表1には前記選択信号Sにより得られる分周比も示すが、この分周比はあとで説明する。なお前記図4は、前記カウント値Cを2進数で下8ビットの例で示しているため、該表1で選択信号Sが7で使用することはできない。
【0032】
(表1)
【0033】
前記図4で説明したセレクタ13とNXORゲート14を用いて、前記分周A相信号A2と分周B相信号B2を生成するが、次に図5によりこの生成について説明する。該図5は、前記インクリメンタルエンコーダ1が出力する前記A相信号A1とB相信号B1を、例として1/2に分周した前記分周A相信号A2と分周B相信号B2の生成を示すものであり、これは前記表1において選択信号Sが1の場合である。
始めに、該図5の(a)、(b)、(d)、(e)、および(f)は、前記図3における同じ符号のものと同一の信号を表しており、これらの説明は割愛する。
【0034】
そして該図5の(h)、(i)、および(j)は、前記カウント値Cの下3ビットのC(0)、C(1)、およびC(2)の時間的推移を表し、該図5の(j)のC(2)が前記分周A相信号A2となる。そして該図5の(p)は、前記C(2)とC(1)の値を10進数で表し、0から3の範囲で連続して変化することを示している。
【0035】
次に該図5の(q)は、前記NXORゲート14の出力を表すもので、該NXORゲート14の入力は前記C(2)とC(1)である。ここでNXORは排他的論理和の否定であり、該図5の時刻T51とT52において該図5の(q)の値は下のとおりとなる。
図5の(i)と(j)を参照して
時刻T51において、C(1)=0、C(2)=1より → 0
時刻T52において、C(1)=1、C(2)=1より → 1
このように該図5の(q)は図示する波形となって、これが前記分周B相信号B2となる。該図5の(j)と(q)を参照して、正転のとき前記分周A相信号A2は前記分周B相信号B2より位相が90度進みであり、逆転のとき前記分周A相信号A2は90度遅れとなっており、元の前記A相信号A1と前記B相信号B1と同様である。
【0036】
以上で前記図4図5で説明したとおり本発明による前記ABZ相の分周装置2は、前記インクリメンタルエンコーダ1が出力する前記A相信号A1とB相信号B1を、前記セレクタ13とNXORゲート14によって、相互の位相関係を保持して周波数を1/Kに分周した前記分周A相信号A2と分周B相信号B2を生成するものである。
【0037】
これまで本発明によって、前記インクリメンタルエンコーダ1が出力する前記A相信号A1とB相信号B1の分周について説明を行ったが、これに加えて前記Z相信号Z1の分周について前記図1図6、および図7を参照して説明を行う。始めに前記図1において、前記分周Z相パルス幅設定器15からORゲート24によって、前記分周Z相信号Z2を生成する。
【0038】
続いて前記図6は、前記分周Z相信号Z2を生成するしくみを説明するもので該図6の(g)は、前記カウンタ12が出力するカウント値Cの時間的推移を表した前記図2の(g)に、前記分周Z相パルス幅設定器15,17,19、および22がそれぞれ保有する値ZW1、ZW2、ZW3、およびZW4を追記したものである。ここで、前記分周Z相パルス幅設定器15,17,19、および22を、分周Z相パルス幅設定器ZW1、ZW2、ZW3、およびZW4とも表記する。
次に該図6の(t)は、本発明により生成する前記分周Z相信号Z2を表している。該分周Z相信号Z2は、例えば時間TaからTc、TdからTe、およびTfからThにおいて1となっているが、これは前記分周Z相パルス幅設定器15からORゲート24によって表2のとおり生成される。
【0039】
(表2)
【0040】
該表2について説明すると、時間TaからTb間は前記カウント値Cが、前記分周Z相パルス幅設定器ZW4を越えて大であるので前記コンパレータ23がアクティブとなって1を出力し、前記ORゲート24を介して前記分周Z相信号Z2は1となる。
次に時間TbからTc間は前記カウント値Cが、前記分周Z相パルス幅設定器ZW2を越えて大であるとともに、前記分周Z相パルス幅設定器ZW3未満のため、前記コンパレータ18と20がアクティブとなって1を出力し、前記ANDゲート21と前記ORゲート24を介して前記分周Z相信号Z2は1となる。
そして時間TdからTe間、およびTgからTh間も時間TbからTc間と同様であり、このときの説明は割愛する。
次に時間TfからTg間は前記カウント値Cが、前記分周Z相パルス幅設定器ZW1未満であるので前記コンパレータ16がアクティブとなって1を出力し、前記ORゲート24を介して前記分周Z相信号Z2は1となる。
ここで、前記ZW1とZW2は負の整数であり、前記ZW3とZW4は正の整数である。また前記カウント値Cが前記表2に示す範囲以外の値であるとき、前記分周Z相信号Z2は0である。
【0041】
以上のとおり前記図6にて、前記分周Z相信号Z2を生成するしくみを説明したが、さらに図7にて説明を行う。該図7は各部の信号の波形を時間の推移とともに表したものであり、該図7の(a)、(b)、(d)、(e)、(h)、(i)、および(j)は、前記図5における同じ符号のものと同一の信号を表しており、これらの説明は割愛する。なお、前記インクリメンタルエンコーダ1の回転方向は、前記図5では正転、停止、および逆転にて表していたが、該図7では正転のみで表している。
【0042】
そして該図7の(c)は、前記インクリメンタルエンコーダ1が出力する前記Z相信号Z1であり、これの1となる期間は、例えば図示するとおり前記A相信号A1の一周期と同じとしている。ここで該図7では分周比1/Kは1/4として、前記表1において選択信号Sの値を2としてカウント値C(3)とC(2)を使用するもので、該図7の(k)は前記カウント値C(3)を、すなわち前記分周A相信号A2を表している。そして該図7の(r)は、前記C(3)とC(2)の値を10進数で表し、0から3の範囲で連続して変化することを示している。
【0043】
次に該図7の(s)は、前記C(3)とC(2)を入力とする前記NXORゲート14の出力を表し、これが前記分周B相信号B2となる。そして該図7の(k)と(s)による前記分周A相信号A2と分周B相信号B2は、該図7の(a)と(b)を1/4に分周したものとなる。
【0044】
そして該図7の(t)は、前記分周Z相信号Z2の推移を表しており、これは前記表2および図6において、前記分周Z相パルス幅設定器ZW1からZW4を表3の値としたものである。そして該分周Z相信号Z2が1となる期間は、分周比1/4に対応して前記Z相信号Z1の1である期間の4倍となり、前記分周A相信号A2の一周期と同じとなる。
(表3)
【0045】
かように本発明による前記ABZ相の分周装置2は、該図7にて説明したとおり、前記インクリメンタルエンコーダ1が出力する前記A相信号A1、B相信号B1、およびZ相信号Z1を相互の位相関係を保持して所定の分周比1/Kにて分周し、前記分周A相信号A2、分周B相信号B2、および分周Z相信号Z2を生成するものである。
【実施例2】
【0046】
次に、前記インクリメンタルエンコーダ1が出力する前記Z相信号Z1は、1回転に1パルスの信号で通常はパルス幅が狭いものである。このため前記Z相信号Z1の波形は、ノイズにて変形されることが多く、また応答性の遅い他の機器にて受信が失敗となることがあった。しかし、本発明による前記ABZ相の分周装置2にて、前記図6と表2に示した分周Z相パルス幅設定器の値を変更することにより、任意の広いパルス幅の前記分周Z相信号Z2を生成して、ノイズの影響を排除するとともに、応答性の遅い他の機器と確実に組み合わせて使用することを実現する。
【産業上の利用可能性】
【0047】
本発明のABZ相の分周装置を用いることにより、高い分解能のインクリメンタルエンコーダを、性能が優れた近年の制御装置と組み合わせて使用するほか、同時に従来や他社製の表示装置やモニタ装置、あるいは別の制御装置などと使用することが可能となる。
【符号の説明】
【0048】
1 インクリメンタルエンコーダ
2 ABZ相の分周装置
11 パルス変換器
12 カウンタ
13 セレクタ
14 NXORゲート
15、17、19、22 分周Z相パルス幅設定器
16、18、20、23 コンパレータ
21 ANDゲート
24 ORゲート
13a、13b マルチプレクサ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7