【実施例1】
【0018】
図1は本発明の第1の実施例の構成を示すブロック図であり、図中の1と2はそれぞれ、インクリメンタルエンコーダと本発明によるABZ相の分周装置である。該インクリメンタルエンコーダ1はA相信号A1、B相信号B1、およびZ相信号Z1を出力し、該A相信号A1とB相信号B1は90度位相差で回転に応じて生成されるパルス列であり、回転方向が変わると位相差は逆となる。また、前記インクリメンタルエンコーダ1は1回転するごとに、前記Z相信号Z1を出力する。
【0019】
次に前記ABZ相の分周装置2は、図示する11から24の機器を内蔵し、11と12は周知の機器であり、13以降の機器が本発明の特徴を構成するものである。
始めに11と12はそれぞれパルス変換器とカウンタであり、該パルス変換器11は、前記インクリメンタルエンコーダ1が出力する前記A相信号A1とB相信号B1を入力し、逓倍信号と回転方向信号DRを出力する。該逓倍信号は前記A相信号A1の周波数の1倍、2倍、または4倍の周波数であるが、前記
図1では4倍の場合にて逓倍信号4Fとしている。
【0020】
続いて前記カウンタ12は、前記逓倍信号4F、回転方向信号DR、およびZ相信号Z1を入力してカウント値Cを出力する。さらに説明すると該カウンタ12はアップダウンカウンタであり、前記回転方向信号DRに応じて前記逓倍信号4Fをアップ、またはダウンにて計数しカウント値Cを出力する。ここで前記
図1では、該カウント値Cをn桁の2進数にて、C(n−1)、C(n−2)、〜C0とも表記している。
そして、該パルス変換器11とカウンタ12の動作は、後の
図2と
図3にてさらに説明を行う。
【0021】
同じく
図1において、13と14はそれぞれセレクタとNXORゲートである。始めに該セレクタ13は前記カウンタ12によるカウント値Cと、分周比1/K(Kは2のべき乗)に対応した選択信号Sを入力とし、該選択信号Sは図示しないマイクロコンピュータから出力されるものである。そして前記セレクタ13は、該選択信号Sにて前記カウンタCの連続した2ビットを選択して、上位桁のビットをY1から、下位桁のビットをY0から出力する。
【0022】
そして、前記Y1から出力する信号は分周A相信号A2であり、前記Y0とY1の出力を前記NXORゲート14で演算したものが分周B相信号B2となる。すなわち、前記セレクタ13の出力Y1と前記前記NXORゲート14は、分周AB相発生器を構成するもので、前記インクリメンタルエンコーダ1が出力する前記A相信号A1とB相信号B1は、前記選択信号Sにより指定される前記分周比1/Kにて分周され、分周A相信号A2と分周B相信号B2を生成するものである。
なお、前記セレクタ13とNXORゲート14による該分周A相信号A2と分周B相信号B2の生成の詳細は、後の
図4および
図5にてさらに説明を行う。
【0023】
同じく
図1において15、17、19,および22は分周Z相パルス幅設定器であり、16、18、20、および23はコンパレータであり、21と24はそれぞれANDゲートとORゲートである。該分周Z相パルス幅設定器15からORゲート24は、前記カウント値Cを常時監視し、前記カウント値Cがゼロを基点に、パルス幅が前記Z相信号Z1に対して、前
記分周比1/Kの逆数倍(K倍)となるパルス幅の分周Z相信号Z2を生成するものである。
なお、該分周Z相信号Z2の生成についても、後の
図6および
図7にてさらに説明を行う。
【0024】
次に、前記
図1のパルス変換器11およびカウンタ12の動作について、
図2と
図3を参照して説明する。
始めに
図2は、前記インクリメンタルエンコーダ1、パルス変換器11、およびカウンタ12の各部の信号の波形を時間の推移とともに表したものであり、該
図2の(a)、(b)、および(c)はそれぞれ、前記インクリメンタルエンコーダ1が出力する前記A相信号A1、B相信号B1、およびZ相信号Z1の波形の推移を表している。そして、該
図2の(c)に示すとおり前記Z相信号Z1は、前記インクリメンタルエンコーダ1が時刻T1、T2、T3,T4、T5と1回転ごとに出力する1パルスの信号である。
【0025】
続いて該
図2の(d)と(e)はそれぞれ、前記パルス変換器11が出力する前記逓倍信号4Fと回転方向信号DRの時間的推移を表している。また、該
図2の(f)は前記インクリメンタルエンコーダ1の回転の状態を表したもので、次のとおりとなっている。
図2の(f)について
時刻T21まで、 正転にて回転
時刻T21からT22まで、 停止
時刻T22からT41まで、 逆転にて回転
時刻T41以降、 正転にて回転
該
図2の(f)回転の状態を参照し、前記
図2の(e)回転方向信号DRは、正転を0にて逆転を1にて検出するとしている。
【0026】
そして、該
図2の(g)は前記カウンタ12が出力するカウント値Cの時間的推移を表し、前記インクリメンタルエンコーダ1が正転のときはカウントアップし、逆転のときはカウントダウンの動作としている。また、前記Z相信号Z1が1となる時刻T1、T2、T3、T4において、該カウント値Cはゼロにクリアされる。
また、+Cmaxと−Cmaxにおける最大カウント値Cmaxは、次の数式1による値となる。
(数1)
これを数値例で示せば、1回転当たりのパルス数を8,192PPRとし、前記逓倍信号は4Fとしているのでここでは逓倍率が4となり、前記最大カウント値Cmaxは次の数式2の値となる。
(数2)
【0027】
次に
図3は、前記
図2の(a)、(b)、(d)、および(g)の動作を明確にするため、時刻T21からT22間の時間を拡大して表すもので、該
図3の(a)から(g)は、前記
図2における同じ符号のものと同一の信号を表している。また該
図3の(c)、(e)、および(f)の時間的推移は、前記
図2のそれと同じでありこれの説明は割愛する。
【0028】
そして該
図3の(a)と(b)について、時刻T21まで正転のとき前記A相信号A1は前記B相信号B1より位相が90度進みであり、時刻T22以降の逆転のとき前記A相信号A1は90度遅れである。また該
図3の(d)逓倍信号4Fは、前記A相信号A1とB相信号B1の立ち上がりと立下りを検出し生成したものである。
次に該
図3の(g)カウント値Cは、前記
図3の(d)逓倍信号4Fと(e)回転方向信号DRにより、図示のごとくアップカウント、またはダウンカウントされる。
【0029】
ここで前記パルス変換機11とカウンタ12は周知の機器であるが、以降に示す本発明の説明を容易とするため、該11と12の動作を前記
図2と
図3により説明を行ったものである。
【0030】
次に、前記
図1の前記セレクタ13とNXORゲート14の動作について、
図4と
図5を参照して説明する。
始めに
図4は、前記セレクタ13の構成例を説明するものであり、該
図4において13aおよび13bはマルチプレクサである。該マルチプレクサ13aおよび13bは、前記カウント値Cと前記選択信号Sを入力し、分周上位桁Y1と分周下位桁Y0を出力する。なお前記選択信号Sは、図示しないマイクロコンピュータにて前記分周比1/Kに対応して設定されるものである。
【0031】
該
図4ではさらに説明を容易とするため、前記カウント値Cを2進数で下8ビットのC(7)、〜C(1)、C(0)を使用するとし、前記選択信号Sを同じく2進数3ビットでS(2)、S(1)、S(0)としている。そして前記マルチプレクサ13aと13bは、該
図4の真理値表のとおり、前記選択信号S(2)からS(0)によって、8つの入力から1つを選択して出力する。ここで、前記マルチプレクサ13aには前記C(0)から入力され、前記マルチプレクサ13bには前記C(1)から入力されている。これにより、前記マルチプレクサ13a、13bの出力Y1とY0には、前記カウント値C(7)からC(0)の中から連続した2ビットが出力されこととなる。
下の表1に、前記選択信号Sの値と前記出力Y1とY0に出力される信号の組み合わせを示す。該表1には前記選択信号Sにより得られる分周比も示すが、この分周比はあとで説明する。なお前記
図4は、前記カウント値Cを2進数で下8ビットの例で示しているため、該表1で選択信号Sが7で使用することはできない。
【0032】
(表1)
【0033】
前記
図4で説明したセレクタ13とNXORゲート14を用いて、前記分周A相信号A2と分周B相信号B2を生成するが、次に
図5によりこの生成について説明する。該
図5は、前記インクリメンタルエンコーダ1が出力する前記A相信号A1とB相信号B1を、例として1/2に分周した前記分周A相信号A2と分周B相信号B2の生成を示すものであり、これは前記表1において選択信号Sが1の場合である。
始めに、該
図5の(a)、(b)、(d)、(e)、および(f)は、前記
図3における同じ符号のものと同一の信号を表しており、これらの説明は割愛する。
【0034】
そして該
図5の(h)、(i)、および(j)は、前記カウント値Cの下3ビットのC(0)、C(1)、およびC(2)の時間的推移を表し、該
図5の(j)のC(2)が前記分周A相信号A2となる。そして該
図5の(p)は、前記C(2)とC(1)の値を10進数で表し、0から3の範囲で連続して変化することを示している。
【0035】
次に該
図5の(q)は、前記NXORゲート14の出力を表すもので、該NXORゲート14の入力は前記C(2)とC(1)である。ここでNXORは排他的論理和の否定であり、該
図5の時刻T51とT52において該
図5の(q)の値は下のとおりとなる。
図5の(i)と(j)を参照して
時刻T51において、C(1)=0、C(2)=1より → 0
時刻T52において、C(1)=1、C(2)=1より → 1
このように該
図5の(q)は図示する波形となって、これが前記分周B相信号B2となる。該
図5の(j)と(q)を参照して、正転のとき前記分周A相信号A2は前記分周B相信号B2より位相が90度進みであり、逆転のとき前記分周A相信号A2は90度遅れとなっており、元の前記A相信号A1と前記B相信号B1と同様である。
【0036】
以上で前記
図4と
図5で説明したとおり本発明による前記ABZ相の分周装置2は、前記インクリメンタルエンコーダ1が出力する前記A相信号A1とB相信号B1を、前記セレクタ13とNXORゲート14によって、相互の位相関係を保持して周波数を1/Kに分周した前記分周A相信号A2と分周B相信号B2を生成するものである。
【0037】
これまで本発明によって、前記インクリメンタルエンコーダ1が出力する前記A相信号A1とB相信号B1の分周について説明を行ったが、これに加えて前記Z相信号Z1の分周について前記
図1、
図6、および
図7を参照して説明を行う。始めに前記
図1において、前記分周Z相パルス幅設定器15からORゲート24によって、前記分周Z相信号Z2を生成する。
【0038】
続いて前記
図6は、前記分周Z相信号Z2を生成するしくみを説明するもので該
図6の(g)は、前記カウンタ12が出力するカウント値Cの時間的推移を表した前記
図2の(g)に、前記分周Z相パルス幅設定器15,17,19、および22がそれぞれ保有する値ZW1、ZW2、ZW3、およびZW4を追記したものである。ここで、前記分周Z相パルス幅設定器15,17,19、および22を、分周Z相パルス幅設定器ZW1、ZW2、ZW3、およびZW4とも表記する。
次に該
図6の(t)は、本発明により生成する前記分周Z相信号Z2を表している。該分周Z相信号Z2は、例えば時間TaからTc、TdからTe、およびTfからThにおいて1となっているが、これは前記分周Z相パルス幅設定器15からORゲート24によって表2のとおり生成される。
【0039】
(表2)
【0040】
該表2について説明すると、時間TaからTb間は前記カウント値Cが、前記分周Z相パルス幅設定器ZW4を越えて大であるので前記コンパレータ23がアクティブとなって1を出力し、前記ORゲート24を介して前記分周Z相信号Z2は1となる。
次に時間TbからTc間は前記カウント値Cが、前記分周Z相パルス幅設定器ZW2を越えて大であるとともに、前記分周Z相パルス幅設定器ZW3未満のため、前記コンパレータ18と20がアクティブとなって1を出力し、前記ANDゲート21と前記ORゲート24を介して前記分周Z相信号Z2は1となる。
そして時間TdからTe間、およびTgからTh間も時間TbからTc間と同様であり、このときの説明は割愛する。
次に時間TfからTg間は前記カウント値Cが、前記分周Z相パルス幅設定器ZW1未満であるので前記コンパレータ16がアクティブとなって1を出力し、前記ORゲート24を介して前記分周Z相信号Z2は1となる。
ここで、前記ZW1とZW2は負の整数であり、前記ZW3とZW4は正の整数である。また前記カウント値Cが前記表2に示す範囲以外の値であるとき、前記分周Z相信号Z2は0である。
【0041】
以上のとおり前記
図6にて、前記分周Z相信号Z2を生成するしくみを説明したが、さらに
図7にて説明を行う。該
図7は各部の信号の波形を時間の推移とともに表したものであり、該
図7の(a)、(b)、(d)、(e)、(h)、(i)、および(j)は、前記
図5における同じ符号のものと同一の信号を表しており、これらの説明は割愛する。なお、前記インクリメンタルエンコーダ1の回転方向は、前記
図5では正転、停止、および逆転にて表していたが、該
図7では正転のみで表している。
【0042】
そして該
図7の(c)は、前記インクリメンタルエンコーダ1が出力する前記Z相信号Z1であり、これの1となる期間は、例えば図示するとおり前記A相信号A1の一周期と同じとしている。ここで該
図7では分周比1/Kは1/4として、前記表1において選択信号Sの値を2としてカウント値C(3)とC(2)を使用するもので、該
図7の(k)は前記カウント値C(3)を、すなわち前記分周A相信号A2を表している。そして該
図7の(r)は、前記C(3)とC(2)の値を10進数で表し、0から3の範囲で連続して変化することを示している。
【0043】
次に該
図7の(s)は、前記C(3)とC(2)を入力とする前記NXORゲート14の出力を表し、これが前記分周B相信号B2となる。そして該
図7の(k)と(s)による前記分周A相信号A2と分周B相信号B2は、該
図7の(a)と(b)を1/4に分周したものとなる。
【0044】
そして該
図7の(t)は、前記分周Z相信号Z2の推移を表しており、これは前記表2および
図6において、前記分周Z相パルス幅設定器ZW1からZW4を表3の値としたものである。そして該分周Z相信号Z2が1となる期間は、分周比1/4に対応して前記Z相信号Z1の1である期間の4倍となり、前記分周A相信号A2の一周期と同じとなる。
(表3)
【0045】
かように本発明による前記ABZ相の分周装置2は、該
図7にて説明したとおり、前記インクリメンタルエンコーダ1が出力する前記A相信号A1、B相信号B1、およびZ相信号Z1を相互の位相関係を保持して所定の分周比1/Kにて分周し、前記分周A相信号A2、分周B相信号B2、および分周Z相信号Z2を生成するものである。