(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、ホテルやオフィスビル等の商業施設又は公共施設の出入口や、集合住宅又は一般住宅のエントランスや玄関等では、正当な利用者の入退室又は入退場のタイミングに合わせて利用される電気錠や自動ドア以外の機器や、不当な利用者の接近のタイミングに合わせて不当な利用者に対応するように動作する機器が設けられることがある。しかし、これらのような機器を、常時稼働させておくと、消費電力が上昇し、運用コストが上昇してしまう。そこで、利用者の入退室又は入退場あるいは扉への接近に連動する連動装置が求められている。しかしながら、利用者の入退室又は入退場、あるいは接近を検知する動き検出センサや人感センサ等の検知器を備えると、システムが複雑化し、設備コストが増加してしまう。
【0007】
また、上記のような扉制御システムでは、例えば、携帯器を所持した利用者が、玄関室内側且つリーダの通信可能領域にいる場合には、携帯器は、リーダから応答要求信号を受信するたびに応答信号を送信するので、利用者の意図に沿わずにこの応答信号の識別情報が認証されて電気錠の解錠や自動ドアの開扉を可能にして、不正入室が可能になってしまう。例えば、リーダが室外に設けられていて、携帯器が室内にある場合でも、応答要求信号や応答信号が扉や壁で完全に遮断されずに、扉付近の窓等を介して室内外に通信されてしまうことがある。なお、室内側で携帯器を所有する利用者を検知するために人感センサ等の検知器を備えると、システムが複雑化し、設備コストが増加してしまう。
【0008】
本発明は、上記した課題を解決すべくなされたものであり、利用者の入退室又は入退場あるいは扉への接近に連動する連動装置を簡易な構成で実現する扉制御システムを提供することを目的とするものである。
【0009】
また、本発明は、上記した課題を解決すべくなされたものであり、電気錠制御部等の扉制御部によって制御される電気錠等の機器の制御に用いられる信号の不測の通信を簡易な構成で抑制する扉制御システムを提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するために、本発明の第1の扉制御システムは、携帯器から固有の識別情報を認証したときに、扉を制御する扉制御システムであって、前記扉の周囲の所定の通信範囲で無線通信可能に構成されていて、応答要求信号を送信し、該応答要求信号に応答した前記携帯器からの応答信号を受信する読取装置と、前記応答信号の前記識別情報が正当か否かを認証する認証部と、前記応答信号を認証した場合に前記扉を制御する扉制御部と、前記通信範囲内に配置されていて、前記読取装置との無線通信によって前記応答要求信号の送信開始に同期して起動して使用可能となる連動装置と、を備えることを特徴とする。
【0011】
上述した本発明の第1の扉制御システムによれば、読取装置からの応答要求信号を利用する簡易な構成によって、連動装置を起動して使用可能な状態にすることができる。即ち、利用者の入退室又は入退場あるいは扉への接近に連動する連動装置を簡易な構成によって実現している。
【0012】
また、本発明の第2の扉制御システムは、上述した本発明の第1の扉制御システムにおいて、前記扉制御部は、前記扉に設けられた電気錠の施解錠を制御するように構成されることを特徴とする。
【0013】
上述した本発明の第2の扉制御システムによれば、利用者の入退室又は入退場あるいは扉への接近に連動する連動装置を電気錠システムに採用することができる。
【0014】
また、本発明の第3の扉制御システムは、上述した本発明の第1の扉制御システムにおいて、前記扉制御部は、前記扉の開閉を制御するように構成されることを特徴とする。
【0015】
上述した本発明の第3の扉制御システムによれば、利用者の入退室又は入退場あるいは扉への接近に連動する連動装置を自動ドアシステムに採用することができる。
【0016】
また、本発明の第4の扉制御システムは、上述した本発明の第1〜第3の何れかの扉制御システムにおいて、前記読取装置は、前記扉に対して一方側に配置されていて、前記連動装置は、前記扉に対して他方側に配置されていることを特徴とする。
【0017】
上述した本発明の第4の扉制御システムによれば、扉の一方側の読取装置を使用することで、扉の他方側の連動装置を遠隔起動させることができる。
【0018】
また、本発明の第5の扉制御システムは、上述した本発明の第1〜第4の何れかの扉制御システムにおいて、前記連動装置は、前記応答要求信号の送信開始に同期して起動して、前記応答要求信号を妨害する妨害信号を送信する妨害装置であることを特徴とする。
【0019】
上述した本発明の第5の扉制御システムによれば、読取装置からの応答要求信号が妨害装置の周辺に伝達されても、妨害装置が応答要求信号の送信開始に同期して起動して妨害信号を妨害装置の周辺に送信する。そして、妨害信号が応答要求信号に干渉して、応答要求信号の動作指示等の信号内容は妨害信号によって破壊される。そのため、例えば、携帯器が他方側に存在していても、応答要求信号に応じて応答信号を読取装置へと送信することはなく、携帯器の識別情報が読取装置を介して認証されることもない。従って、携帯器を有する利用者の他方側への入室直後や、携帯器の扉付近での置き忘れがある場合でも、扉制御部によって制御される機器は、他方側の携帯器に反応して制御されることがなく、不正入室を防ぐことができる。
【0020】
更に、本発明の第5の扉制御システムによれば、例えば、一方側に読取装置を備えていて、他方側への妨害信号の送信機構を備えていない既存の扉制御システムに対して、読取装置と無線通信する妨害装置を設置するだけで、不正入室を防ぐことが可能となる。そのため、他方側に人感センサ等の検知器を備える必要がなく、設備コストを抑制することが可能となる。また、妨害装置は、読取装置や、認証部及び扉制御部を備える制御ユニット、扉制御部によって制御される機器等との通信のための配線を備える必要がなく、簡易且つ低コストに設置することができる。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、利用者の入退室又は入退場あるいは扉への接近に連動する連動装置を簡易な構成で実現することが可能となる。
【0022】
また、本発明によれば、電気錠制御部等の扉制御部によって制御される電気錠等の機器の制御に用いられる信号の不測の通信を簡易な構成で抑制することが可能となる。
【発明を実施するための形態】
【0024】
本発明の一実施形態に係る扉制御システム1について、添付の図面を参照しながら説明する。
図1は、本発明の一実施形態に係る扉制御システム1の構成の概略を示すブロック図、
図2は、本発明の一実施形態に係る扉制御システム1の模式的な上面図である。
【0025】
扉制御システム1は、例えば、部屋の入退室を制限する扉を電動で施解錠する電気錠装置2(電気錠)と、固有のIDである識別情報を記憶した非接触キー等の携帯器3a、3bと、携帯器3a、3bから識別情報を読み取る室外リーダ4(読取装置)と、利用者の入退室又は入退場あるいは扉への接近に連動する連動装置としての妨害装置5とを備える。また、扉制御システム1は、室外リーダ4で受信した識別情報の認証結果に応じて電気錠装置2を制御する制御ユニット6を備える。即ち、本実施形態の扉制御システム1は、電気錠システムである。
【0026】
電気錠装置2は、例えば、デッドボルト(図示せず)及び該デッドボルトを移動させる電動アクチュエータ(図示せず)からなる施解錠機構7と、電動アクチュエータを駆動するためのモータ等の駆動部8とを備えて構成される。デッドボルトは、扉から突出するように移動して扉枠のストライク内に固定されることにより扉を施錠して開扉不能にし、他方、ストライクから抜脱するように移動して扉内に引き込まれることにより扉を解錠して開扉可能にする。電気錠装置2は、制御ユニット6に接続されていて、制御ユニット6から施錠又は解錠を指示する制御信号を受けて、この制御信号に応じて駆動部8が電動アクチュエータを駆動する。
【0027】
携帯器3a及び3bは、各種情報を読み出し/書き込み可能に記憶する記憶領域を有するICチップ等の電子部品を設けていて、特に、扉の施解錠許可の認証に必要な情報として、利用者情報等の固有の識別情報を記憶領域に記憶している。また、携帯器3a及び3bは、電磁波や磁界結合又は電界結合によって室外リーダ4と非接触通信(近距離無線通信)可能であって、所定の通信半径(通信範囲)内で通信信号を送受信することができる。
【0028】
携帯器3a及び3bは、通常はスリープ状態(携帯器スリープ状態)であって、室外リーダ4から送信された応答要求信号に応じて起動して起動状態(携帯器起動状態)となり、識別情報を含む応答信号を室外リーダ4へと無線で送信する。換言すれば、携帯器3a及び3bは、正常な応答要求信号を受信できなければ、起動や応答信号の送信ができない。なお、携帯器3a及び3bは、応答信号の送信後に再びスリープ状態に切り換えられてよい。
【0029】
携帯器3a及び3bは、例えば、室外リーダ4からの電磁波や磁界結合又は電界結合に応じて電力を発生させるパッシブタグを備えたICカード等のカード状記憶媒体や、内蔵した電池等の電源より電力が供給されるアクティブタグを備えたリモコンキーでよい。なお、携帯器3a及び3bは、室外リーダ4と非接触通信可能で利用者が携帯可能な機器であればこれらに限定されない。
【0030】
室外リーダ4は、扉に対して一方側、例えば、部屋の外側(室外側)で、扉の表面又はその周囲の壁面等に設けられる。室外リーダ4は、制御ユニット6を介して又は直接的に外部電源(図示せず)に接続されて電力供給を受けてもよく、電池を内蔵して構成されてその電池から電力供給を受けてもよい。室外リーダ4は、電磁波や磁界結合又は電界結合によって携帯器3a及び3bと非接触通信(近距離無線通信)可能なリーダ又は送受信装置であって、所定の通信半径(第1通信範囲R1、
図2参照)内で通信することができる。
【0031】
室外リーダ4は、例えば、携帯器3a及び3bを起動させるための応答要求信号を無線で送信すると共に、この応答要求信号に応じた携帯器3a及び3bからの応答信号を受信可能になっている。例えば、室外リーダ4は、所定の周波数帯(例えば、134MHz)の電磁波や磁界結合又は電界結合による応答要求信号を、扉に対して室外側で携帯器3aに対応するために、1〜2mの通信半径で送信する。室外リーダ4は、制御ユニット6と有線通信可能又は無線通信可能に接続されていて、携帯器3a又は3bから受信した応答信号から識別情報を読み取り、制御ユニット6へと送信する。
【0032】
室外リーダ4は、常時、起動状態(リーダ起動状態)であってもよく、あるいは、通常はスリープ状態(リーダスリープ状態)であって、起動指示(リーダ起動指示)に応じて起動状態に切り換えられてもよい。なお、室外リーダ4は、スリープ状態から起動状態に切り換えられた場合、所定の起動期間(リーダ起動期間)経過後に、又は停止指示(リーダ停止指示)に応じて、起動状態からスリープ状態に切り換えられるとよい。
【0033】
また、室外リーダ4は、起動状態の間は、常時、応答要求信号を送信してもよく、あるいは、送信開始指示に応じて応答要求信号を送信してもよい。なお、室外リーダ4は、応答要求信号を所定の送信間隔毎に周期的に送信してよい。
【0034】
室外リーダ4は、例えば、応答要求信号の送信を開始するための開始部として、開始ボタン4a及び開始センサ4bの少なくとも一方を備える。開始ボタン4a及び開始センサ4bは、室外リーダ4と一体に構成されてもよく、あるいは、別個に設けられていてもよい。開始ボタン4aの操作に応じて、室外リーダ4に送信開始指示が入力される。開始センサ4bは、扉又は室外リーダ4に対する利用者の接近を検知する検知部であり、例えば、赤外線センサ、動きセンサ等の何れのセンサで構成されてもよい。開始センサ4bによる利用者の接近の検知に応じて、室外リーダ4に送信開始指示が入力される。また、室外リーダ4は、開始ボタン4aの操作や開始センサ4bによる利用者の検知に基づいて、室外リーダ4の起動指示を発信してもよい。
【0035】
また、室外リーダ4は、携帯器3a及び3bから応答要求信号に対する応答信号を受信した後、制御ユニット6によって電気錠装置2が解錠されると、制御ユニット6から解錠完了信号を受信する。このとき、室外リーダ4は、送信開始指示に応じて応答要求信号を送信している場合、解錠完了信号に応じて、応答要求信号の送信を停止してよく、更に室外リーダ4の停止指示を発信してもよい。なお、室外リーダ4は、開始ボタン4aの再操作若しくは停止ボタン(図示せず)の操作に応じて応答要求信号の送信を停止してもよく、更に室外リーダ4の停止指示を発信してもよい。また、室外リーダ4は、応答要求信号の送信を開始してから所定の送信期間経過後に、応答要求信号の送信を停止してもよい。
【0036】
例えば、応答要求信号は、所定の周期のパルスで生成され、この所定の周期の範囲内で、携帯器3a及び3bへの起動指示(携帯器起動指示)を示す先頭部分と、携帯器3a及び3bへの動作指示を示す後方部分とを含む。室外リーダ4は、先頭部分の送信に連続して後方部分の送信を行う。
【0037】
妨害装置5は、利用者の入退室又は入退場あるいは扉への接近に連動する連動装置であり、扉の近傍に取り付けられ、例えば、扉に対して他方側(室外リーダ4とは反対側)、即ち、部屋の内側(室内側)で、扉の表面又はその周囲の壁面等に設けられる。妨害装置5は、電池を内蔵して構成されてその電池から電力供給を受ける。妨害装置5は、電磁波や磁界結合又は電界結合によって室外リーダ4と非接触通信(近距離無線通信)可能な送受信装置であって、所定の通信半径(第2通信範囲R2、
図2参照)内で通信することができる。
【0038】
妨害装置5は、例えば、室外リーダ4からの応答要求信号を受信すると共に、応答要求信号を妨害する妨害信号を無線で送信可能になっている。即ち、妨害装置5は、室外リーダ4の第1通信範囲R1内に設置され、特に、妨害装置5の第2通信範囲R2が、室外リーダ4の第1通信範囲R1と部分的に重複し、第2通信範囲R2が第1通信範囲R1の室内側の通信範囲を包含するように、室外リーダ4及び妨害装置5が配置される。なお、応答要求信号は、室外側で受信されるだけでなく、室外側から扉や壁、窓等を介して室内側で受信されるように指向性や周波数特性を有していてよいが、妨害信号は、室内側のみで受信されるように指向性や周波数特性を有するとよい。妨害装置5は、ジャミング信号等の妨害信号を生成、送信するジャミングモジュールで構成されてよい。なお、応答要求信号は、室外側から扉や壁、窓等を介することで減衰され、室外側に比べて室内側では通信半径(第1通信範囲R1)が狭まる場合があり、その場合、妨害装置5は、その狭まった第1通信範囲R1を包含する第2通信範囲R2で妨害信号を送信すればよい。
【0039】
妨害装置5は、室外リーダ4との無線通信によって応答要求信号の送信開始に同期して起動するように構成される。例えば、妨害装置5は、通常はスリープ状態(妨害装置スリープ状態)であって、応答要求信号に含まれる起動指示に応じて起動状態(妨害装置起動状態)に切り換えられる。なお、応答要求信号は、携帯器3a及び3bを起動するための起動指示(携帯器起動指示)と、妨害装置5を起動するための起動指示(妨害装置起動指示)とを、共通の信号で有していてもよいが、別個の信号で有していてもよい。携帯器3a及び3bの起動指示と妨害装置5の起動指示とが別個の信号である場合、室外リーダ4は、妨害装置5の起動指示に続いて携帯器3a及び3bの起動指示を送信する。
【0040】
妨害装置5は、起動状態になると、即座に、妨害信号を生成、送信する。妨害装置5は、応答要求信号と同一周波数帯の妨害信号を生成し、妨害信号を室内側の応答要求信号に干渉させることで、応答要求信号を無効化する。妨害信号は、応答要求信号と同一周波数帯であることに加えて、応答要求信号と位相又はピークの異なる信号でもよい。例えば、妨害信号は、応答要求信号のパルスの所定の周期の少なくとも一部を妨害する信号でよい。これにより、必要最小限の構成で、妨害信号による効果を発揮することができる。
【0041】
また、妨害装置5は、起動状態になってからスリープ状態に切り換わるまで妨害信号を送信する。なお、妨害装置5は、妨害信号を所定の送信間隔毎に周期的に送信してよく、妨害信号の送信間隔は応答要求信号の送信間隔以下である。妨害装置5は、応答要求信号の受信後に次の応答要求信号を受信することなく、応答要求信号の送信間隔を経過した場合、起動を停止し、即ち、スリープ状態に切り換わる。
【0042】
例えば、
図2に示すように、室外リーダ4は、室外側の携帯器3aに対応するために所定の第1通信範囲R1で応答要求信号を送信する。この室外リーダ4からの応答要求信号が、扉や壁で遮断されずに、室内側に伝達される場合、応答要求信号は、室内側の第1通信範囲R1内に配置された妨害装置5によって受信される。
【0043】
このとき、妨害装置5は、応答要求信号に含まれる起動指示に応じて起動し、室内側の所定の第2通信範囲R2で妨害信号を送信する。なお、室内側において、妨害装置5による妨害信号の第2通信範囲R2は、室外リーダ4による応答要求信号の第1通信範囲R1を包含している。そのため、室内側の応答要求信号の第1通信範囲R1内において、妨害信号が応答要求信号に干渉して、応答要求信号は妨害信号によって妨害(破壊)される。
【0044】
すると、室内側の応答要求信号の第1通信範囲R1内に携帯器3bが存在していても、応答要求信号は、妨害信号によって妨害された状態(携帯器3bによって解読可能な波形が崩れた状態)で携帯器3bに到達する。例えば、応答要求信号に妨害信号が重畳されて、携帯器3bは、応答要求信号の少なくとも一部について、正常な振幅の有無が判別できなくなり、パルス幅を判別できなくなる。なお、携帯器3bが、応答要求信号の動作指示に基づいて、応答要求の正否の判別、応答信号送信すべきか否かの判別等を行う場合、妨害信号は、この動作指示の少なくとも一部を解読不可能とするように、応答要求信号を妨害すればよい。
【0045】
また、応答要求信号は、起動指示に続いて動作指示が送信されるので、室内側に妨害装置5と携帯器3bとが存在する場合、応答要求信号の起動指示が妨害装置5に到達した後で、応答要求信号の動作指示が携帯器3bに到達することになる。そのため、携帯器3bに応答要求信号が到達しても、携帯器3bは応答要求信号に応じて応答信号を送信することはない。従って、室外リーダ4は、室内側の携帯器3bから応答信号を受信することはなく、識別情報を読み取ることもないので、電気錠装置2の解錠は行われない。
【0046】
制御ユニット6は、扉制御システム1の全体の動作を統括制御するCPU(Central Processing Unit)等の制御部10と、この制御部10による制御に必要な情報を記憶するROMやRAM等の記憶媒体からなる記憶部11とを備える。
【0047】
制御部10は、例えば、認証部12と、電気錠制御部13(扉制御部)とを備えて構成される。なお、認証部12及び電気錠制御部13は、記憶部11に記憶されて制御部10によって実行されるプログラムで構成されてよい。また、記憶部11は、例えば、携帯器3a及び3bの識別情報の認証に用いられる一つ以上の認証情報14を記憶する。
【0048】
認証部12は、制御部10が室外リーダ4から受信した携帯器3a又は3bの識別情報を、記憶部11に記憶された認証情報14と比較して、識別情報が正当と認証できるか否かを判定する。
【0049】
電気錠制御部13は、認証部12による判定結果に応じて電気錠装置2を制御し、例えば、識別情報が正当であると認証されたときに、電気錠装置2を解錠する制御信号を電気錠装置2へと送信する。また、電気錠制御部13は、解錠する制御信号を電気錠装置2へと送信してから所定時間が経過したときに、電気錠装置2を施錠する制御信号を電気錠装置2へと送信する。
【0050】
例えば、室外リーダ4による応答要求信号の第1通信範囲R1内において、室外側に携帯器3aが存在する場合、携帯器3aは、応答要求信号に応じて起動し、室外リーダ4に対して応答信号を送信する。すると、室外リーダ4は、応答信号から識別情報を読み取り、制御ユニット6へと送信する。制御ユニット6では、認証部12によって識別情報が正当と認証されると、電気錠制御部13によって電気錠装置2が解錠される。なお、室内側には、室外リーダ4のように携帯器3a、3bと通信可能なリーダや送受信装置に代えて、室内側から手動で電気錠装置2の施解錠機構7を施解錠可能なサムターンやキーシリンダー等の機構を備えてよい。
【0051】
上記したように、本実施形態に係る扉制御システム1は、携帯器3a、3bから固有の識別情報を認証したときに、扉を制御するように構成される。扉制御システム1は、扉の周囲の所定の第1通信範囲R1で無線通信可能に構成されていて、応答要求信号を送信し、応答要求信号に応答した携帯器3aからの応答信号を受信する室外リーダ4(読取装置)と、応答信号の識別情報が正当か否かを認証する認証部12と、応答信号を認証した場合に扉の電気錠装置2を制御する扉制御部としての電気錠制御部13と、第1通信範囲R1内に取り付けられていて、第1通信範囲と重複する第2通信範囲で無線通信可能に構成されていて、室外リーダ4との無線通信によって応答要求信号の送信開始に同期して起動して使用可能となる連動装置としての妨害装置5と、を備えている。
【0052】
このような構成により、本発明によれば、扉制御システム1では、室外リーダ4からの応答要求信号を利用する簡易な構成によって、妨害装置5等の連動装置を起動して使用可能な状態にすることができる。即ち、利用者の入退室又は入退場あるいは扉への接近に連動する連動装置を簡易な構成によって実現している。
【0053】
また、本実施形態では、扉制御システム1の扉制御部は、扉に設けられた電気錠装置2(電気錠)の施解錠を制御するように構成される電気錠制御部13である。
【0054】
このような構成により、本発明によれば、扉制御システム1では、利用者の入退室又は入退場あるいは扉への接近に連動する連動装置を電気錠システムに採用することができる。
【0055】
更に、本実施形態では、室外リーダ4は、扉に対して室外側(一方側)に取り付けられていて、連動装置としての妨害装置5は、扉に対して室内側(他方側)に配置されている。
【0056】
このような構成により、本発明によれば、扉制御システム1では、扉の一方側の室外リーダ4を使用することで、扉の他方側の妨害装置5を遠隔起動させることができる。
【0057】
また、本実施形態では、妨害装置5は、室外リーダ4との無線通信によって応答要求信号の送信開始に同期して起動して、扉に対して室内側で応答要求信号を妨害する妨害信号を送信する。
【0058】
このような構成により、本発明によれば、扉制御システム1では、室外リーダ4からの応答要求信号が妨害装置5の周辺(例えば、室内側)へと伝達されても、妨害装置5が応答要求信号の送信開始に同期して起動して妨害信号を妨害装置5の周辺(室内側)に送信する。そして、妨害信号が応答要求信号に干渉して、応答要求信号の動作指示等の信号内容は妨害信号によって破壊される。そのため、携帯器3bが室内側に存在していても、応答要求信号に応じて応答信号を室外リーダ4へと送信することはなく、携帯器3bの識別情報が室外リーダ4を介して認証されることもない。従って、携帯器3bを有する利用者の室内側への入室直後や、携帯器3bの扉付近での置き忘れがある場合でも、電気錠制御部13等の扉制御部によって制御される電気錠装置2等の機器は、室内側の携帯器3bに反応して制御されることがなく、不正入室を防ぐことができる。
【0059】
更に、本発明によれば、室外側に室外リーダ4を備えていて、室内側への妨害信号の送信機構を備えていない既存の電気錠システム等の扉制御システム1に対して、室外リーダ4と無線通信する妨害装置5を設置するだけで、不正入室を防ぐことが可能となる。そのため、室内側に人感センサ等の検知器を備える必要がなく、設備コストを抑制することが可能となる。また、妨害装置5は、室外リーダ4や、認証部12及び電気錠制御部13等の扉制御部を備える制御ユニット6、扉制御部によって制御される電気錠装置2等の機器との通信のための配線を備える必要がなく、簡易且つ低コストに設置することができる。このようにして、扉制御部によって制御される電気錠装置2等の機器の制御に用いられる信号の不測の通信を簡易な構成で抑制する扉制御システム1を提供することが可能となる。
【0060】
また、本実施形態では、応答要求信号は、携帯器3a、3bへの起動指示を示す先頭部分と、携帯器3a、3bへの動作指示を示していて先頭部分に続いて送信される後方部分とを含み、妨害装置5は、起動指示の受信に応じて起動して、動作指示の少なくとも一部を妨害するとよい。
【0061】
このような構成により、室内側では、応答要求信号の起動指示が妨害装置5に到達した後で、応答要求信号の動作指示が携帯器3bに到達することになる。そのため、携帯器3bが応答要求信号を受信して解読する前に妨害信号を送信することができるため、携帯器3bによる応答要求信号への応答をより確実に防ぐことができる。また、妨害信号は、動作指示の一部のみを妨害するように生成されるので、必要最小限の構成で、妨害信号による効果を発揮することができる。
【0062】
更に、本実施形態では、扉制御システム1は、応答要求信号の送信を開始するための開始部として、開始ボタン4aや開始センサ4bを更に備える。また、室外リーダ4は、認証部12が応答信号の識別情報を正当と認証した場合に電気錠装置2が解錠された後、応答要求信号の送信を停止する。室外リーダ4は、所定の送信間隔毎に応答要求信号を送信し、妨害装置5は、応答要求信号の受信後に次の応答要求信号を受信することなく送信間隔を経過した場合、起動を停止する。
【0063】
これらのような構成により、応答要求信号や妨害信号の送信開始の構成を簡易化することができる。室外リーダ4は、必要な場合のみ、応答要求信号を送信し、妨害装置5は、必要な場合のみ、起動して妨害信号を送信することになる。そして、室外リーダ4が応答要求信号を送信している間に亘って妨害装置5が妨害信号を送信する構成を実現している。そのため、消費電力を最小限に削減することが可能となり、省エネルギー化及び低コスト化を実現することもできる。
【0064】
なお、上記した実施形態では、妨害装置5は、室外リーダ4から送信される応答要求信号の起動指示に応じて起動する例を説明したが、本発明はこれに限定されない。例えば、他の実施形態では、室外リーダ4からの応答要求信号の送信開始に同期していれば、妨害装置5は、室外リーダ4から送信される他の起動信号に応じて起動してもよい。この場合、室外リーダ4は、起動信号に続いて応答要求信号を送信することになる。
【0065】
なお、上記した実施形態では、扉制御システム1が、電気錠装置2の施解錠のために携帯器3aに対応する室外リーダ4を室外側に備える一方、室外側からの不正解錠(不正入室)を防ぐために妨害装置5を室内側に備える構成を説明したが、本発明はこれに限定されない。例えば、他の実施形態では、扉制御システム1が、電気錠装置2の施解錠のために携帯器3bに対応するリーダを室内側に備える一方、室内側からの不正解錠を防ぐために妨害装置5を室外側に備えてもよい。即ち、扉に対して一方側にリーダを備えて、扉に対して他方側に妨害装置5を備えていればよい。
【0066】
また、本実施形態では、認証部12が携帯器3a又は3bの識別情報を認証したときに、電気錠制御部13が電気錠装置2を直接、制御して施解錠する扉制御システム1の構成を説明したが、扉制御システム1の構成はこれに限定されない。例えば、扉制御システム1は、電気錠装置2の解錠や施錠を操作するための解錠ボタンや施錠ボタンを扉付近に備え、認証部12が携帯器3a又は3bの識別情報を認証した場合には解錠ボタンや施錠ボタンの操作を有効にし、それ以外の場合には解錠ボタンや施錠ボタンの操作を無効にするように構成してもよい。あるいは、扉制御システム1は、扉を開けるための操作ハンドルを備えて、認証部12が携帯器3a又は3bの識別情報を認証した場合のみ、操作ハンドルの操作を有効にするように構成してもよい。
【0067】
本実施形態では、扉制御システム1が利用者の入退室又は入退場あるいは扉への接近に連動する連動装置として妨害装置5を備える構成を説明したが、本発明の扉制御システム1が備える連動装置は、妨害装置5に限定されない。連動装置は、扉の近傍に取り付けられていて、室外リーダ4との無線通信によって応答要求信号の送信開始に同期して起動して使用可能となるものであれば、扉に対して室内側及び室外側の何れに設けられていてもよい。また、連動装置は、扉や壁に固定されていてもよく、コンセント等に着脱可能に取り付けられていてもよい、据え置き型の装置である。連動装置は、内蔵した電池から電力供給を受けるように構成されてもよく、接続された外部電源から電力供給を受けるように構成されてもよい。例えば、妨害装置5以外の連動装置として、照明装置や防犯装置等がある。
【0068】
本実施形態では、本発明の扉制御システム1が電気錠装置2及び電気錠制御部13を備える電気錠システムに適用される例を説明したが、本発明はこの例に限定されない。例えば、本発明は、
図3及び
図4に示す他の実施形態によれば、エントランス等に備わる扉(自動ドア)の開閉を制御する自動ドアシステムとしての扉制御システム30に適用することもできる。以下の説明において、
図1及び
図2に示す上記の実施形態と同様の構成については、説明を省略する。
【0069】
図3に示すように、扉制御システム30は、例えば、携帯器3a、3b及び室外リーダ4に加えて、室内リーダ31(読取装置)、扉開閉装置32及び室内利用設備33、連動装置としての妨害装置34を備える。制御ユニット6は、制御部10、記憶部11及び認証部12に加えて、扉開閉装置32を制御する扉開閉制御部35を備える。扉開閉制御部35は、記憶部11に記憶されて制御部10によって実行されるプログラムで構成されてよい。
【0070】
室内リーダ31は、
図4に示すように、扉に対して他方側(室外リーダ4とは反対側)、例えば、部屋の内側(室内側)で、扉の表面又はその周囲の壁面等に設けられる。室内リーダ31は、室外リーダ4と同様の機能及び構成を有し、携帯器3a及び3bと非接触通信(近距離無線通信)可能なリーダ又は送受信装置であって、所定の通信半径(第1通信範囲R3、
図4参照)内で通信することができる。
【0071】
扉開閉装置32は、制御ユニット6(扉開閉制御部35)によって制御されて自動ドアを開閉する機構である。自動ドアは、スライドドアや開き戸の何れで構成されてもよい。なお、開き戸の場合には、自動ドアの開閉に対する障害物を検知する障害物センサ(図示せず)を備え、扉開閉装置32は、障害物がない場合に自動ドアを開閉させる。
【0072】
室内利用設備33は、扉に対して室内側で、扉の近傍に備えられる宅配ボックス等の設備である。
【0073】
妨害装置34は、上記の実施形態の妨害装置5と同様の機能及び構成を有し、携帯器3a及び3bや室内リーダ31と非接触通信(近距離無線通信)可能な送受信装置であって、所定の第2通信範囲R4(
図4参照)内で通信することができる。なお、妨害装置34は、室内リーダ31の第1通信範囲R3内に設置され、特に、室内利用設備33の利用可能領域と室内リーダ31の第1通信範囲R3とが重複する場合に、その重複領域を妨害装置34の第2通信範囲R4が包含することで、妨害装置34の第2通信範囲R4が室内リーダ31の第1通信範囲R3と部分的に重複するように、室内リーダ31及び妨害装置34が配置される。
【0074】
扉開閉制御部35は、認証部12による判定結果に応じて扉開閉装置32を制御し、例えば、識別情報が正当であると認証されたときに、扉開閉装置32を開扉する制御信号を扉開閉装置32へと送信する。また、扉開閉制御部35は、扉開閉装置32を開扉してから所定時間が経過したときに、扉開閉装置32を閉扉する制御信号を扉開閉装置32へと送信する。
【0075】
上記のような構成によれば、携帯器3bを有する利用者が、自動ドアを利用しないが、室内利用設備33を利用するために、室内利用設備33の利用可能領域に入ったときに、室内リーダ31の第1通信範囲R3にも入ってしまう場合でも、第1通信範囲R3と室内利用設備33の利用可能領域との重複領域に対して妨害装置34が妨害信号を送信している。そのため、この重複領域では、室内リーダ31からの応答要求信号が妨害信号によって破壊されることになる。これにより、室内利用設備33の利用可能領域への立ち入りに起因する自動ドアの開扉、即ち、利用者の意図に反する自動ドアの開扉を抑制することができる。
【0076】
あるいは、扉制御システム30は、扉開閉装置32による自動ドアの開閉を操作するボタン等の扉開閉操作部36を室外側の自動ドアの近傍に備えていてもよい。この場合、扉開閉装置32は、扉開閉操作部36の開閉操作に基づいて自動ドアを開閉する。また、扉開閉制御部35は、認証部12による判定結果に応じて扉開閉操作部36の開閉操作を可能又は不能に制御し、例えば、通常は、扉開閉操作部36の開閉操作は不能に設定されていて、識別情報が正当であると認証されたときに、扉開閉制御部35は、開閉操作を可能にする制御信号を扉開閉操作部36へと送信する。
【0077】
上記のような構成によれば、扉制御システム30では、例えば、室内側の利用者の意図に反して、扉開閉操作部36を操作可能にすることを抑制するように、各部を構成することもできる。
【0078】
このように、本発明によれば、扉制御システム30では、利用者の入退室又は入退場あるいは扉への接近に連動する連動装置を自動ドアシステムに採用することができる。
【0079】
本発明の扉制御システム1は、複数の扉のそれぞれに認証機能を有する制御ユニット6を設けて、携帯器3a、3bを各扉に共通に使用して施解錠できるように構成することもできる。また、本発明の扉制御システム1は、ホテルやオフィスビル等の商業施設又は公共施設の出入口や、集合住宅又は一般住宅のエントランスや玄関等だけでなく、病院、リクリエーション施設、店舗、ショッピングセンター、学校等、様々な建物に適用することが可能である。
【0080】
また、本発明は、請求の範囲および明細書全体から読み取ることのできる発明の要旨または思想に反しない範囲で適宜変更可能であり、そのような変更を伴う扉制御システムもまた本発明の技術思想に含まれる。