(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0013】
[1]第1実施例
図1は第1実施例に係る防災ドローン10の概要を説明するための図である。防災ドローン10は、災害の原因となる事象が発生した場合に、その事象により人々が災害に遭うことを防ぐための装置、すなわち防災のための装置である。災害の原因となる事象とは、例えば地震、津波、土砂崩れ、洪水及び火事等であり、人々が被害を受ける事象のことである。災害の原因となる事象には、地震等の自然現象だけでなく、失火等の人為的な原因で発生した事象も含まれる。
【0014】
防災ドローン10は、予め定められた飛行経路及び自機が判断して定めた飛行経路に従って自律的に飛行を行う飛行体であり、本実施例では、1以上の回転翼を備え、それらの回転翼を回転させて飛行する回転翼機型の飛行体である。防災ドローン10は、自機の位置及び高度(つまり3次元空間上の空間座標)を測定する機能を有しており、空間座標を測定しながら飛行速度及び飛行方向を制御することで、飛行経路に沿って飛行する。
【0015】
防災ドローン10は、地震等の発生により災害を受ける(地震等の事象により被害を受けること。災害に遭う又は災害を被るとも言う)ことが予測される地域(以下「被害予測地域」という)にある施設又はその被害予測地域まで飛行可能な距離にある施設に配置される。ここでいう飛行可能な距離とは、被害予測地域に到着したあと被害予測地域内をある程度の距離だけ飛行してから出発地点に戻ることができる距離をいう。
図1では、津波被害予測地域A1及び土砂崩れ被害予測地域A2に飛行可能な場所にあるドローン配置施設2に防災ドローン10が配置されている。
【0016】
防災ドローン10は、例えば津波警報等(大津波警報、津波警報又は津波注意報)が発令された場合に、飛行経路R1を飛行して津波被害予測地域A1にいる人々に避難を呼びかけるメッセージ音声の出力等を行う。また、防災ドローン10は、M1山における土砂災害の警報が発令された場合に、飛行経路R2を飛行して土砂崩れ被害予測地域A2にいる人々に避難を呼びかけるメッセージ音声の出力等を行う。
【0017】
防災ドローン10は、移動体通信網及びインターネットを含むネットワークと無線通信を行う機能を有している。これらのネットワークからは、例えば特定の通信事業者が提供する防災情報が送信されてくる。防災情報は、少なくとも、上述した地震等の災害の原因となる事象の発生及びその事象により災害を受ける地域(以下「災害地域」という)を示す情報である。ここでいう事象の発生とは、その事象が既に発生したことと、その事象がこれから発生することの両方を含む。
【0018】
例えば津波であれば、地震の震源地及び規模等から津波の発生が予測され、津波が届く前から防災情報が提供されるし、当然ながら津波が届いた後も引き続き防災情報が提供される。津波に限らず、その事象自体が発生する前に災害の発生が予測される場合(例えば降水量又は河川の水位が基準を超えた場合に土砂崩れ又は洪水が予測される場合等)には、その事象がこれから発生することと、その事象により災害を受けることが予測される地域(災害地域)とを示す情報が防災情報として提供される。
【0019】
特定の通信事業者は、例えば気象庁が発信する緊急地震速報及び津波警報と、地方公共団体が発信する災害に関する情報を防災情報として提供する。この防災情報を提供するサービスはエリアメール又は緊急速報メール等と呼ばれ、通信事業者は、災害が発生した地域及び災害の発生が予測される地域を含む特定の範囲に位置する通信端末にしか防災情報を送信しないようにしている。
【0020】
また、防災ドローン10は、地方公共団体(市区町村の役所等)が発信する防災行政無線を受信する機能も有している。地方公共団体には災害対策本部等の防災情報を収集する組織があり、その組織が収集した防災情報及び気象庁等の国からの防災情報が防災行政無線又は防災行政無線と同報される登録制のメールによって発信されている。防災行政無線は、基本的に発信元の地方公共団体の管轄範囲(地方公共団体の区域内)では少なくとも受信可能であるように発信されている。一方、登録制メールは、防災無線を運用している地方公共団体に予め登録したメールアドレスに防災情報を発信させるサービスであり、地方公共団体の管轄範囲外でも防災情報を受け取ることができる。
【0021】
津波被害予測地域A1及び土砂崩れ被害予測地域A2は、いずれも同じ地方公共団体の管轄範囲に含まれる地域である。また、ドローン配置施設2も、同じ管轄範囲内の施設から選ばれている。従って、防災ドローン10は、津波被害予測地域A1及び土砂崩れ被害予測地域A2で発生する災害に関する防災情報を受信して、上記のとおり被害予測地域を飛行して避難を呼びかけるメッセージ音声の出力等を行うことができるようになっている。
【0022】
図2は防災ドローン10のハードウェア構成を表す。防災ドローン10は、プロセッサ11と、メモリ12と、ストレージ13と、通信装置14と、飛行装置15と、センサ装置16と、出力装置17と、バス18という各装置を備えるコンピュータである。なお、ここでいう「装置」という文言は、回路、デバイス及びユニット等に読み替えることができる。また、各装置は、1つ又は複数含まれていてもよいし、一部の装置が含まれていなくてもよい。
【0023】
プロセッサ11は、例えば、オペレーティングシステムを動作させてコンピュータ全体を制御する。プロセッサ11は、周辺装置とのインターフェース、制御装置、演算装置、レジスタなどを含む中央処理装置(CPU:Central Processing Unit)で構成されてもよい。また、プロセッサ11は、プログラム(プログラムコード)、ソフトウェアモジュール及びデータ等を、ストレージ13及び/又は通信装置14からメモリ12に読み出し、これらに従って各種の処理を実行する。
【0024】
各種処理を実行するプロセッサ11は1つでもよいし、2以上であってもよく、2以上のプロセッサ11は、同時又は逐次に各種処理を実行してもよい。また、プロセッサ11は、1以上のチップで実装されてもよい。プログラムは、電気通信回線を介してネットワークから送信されてもよい。
【0025】
メモリ12は、コンピュータ読み取り可能な記録媒体であり、例えば、ROM(Read Only Memory)、EPROM(Erasable Programmable ROM)、EEPROM(Electrically Erasable Programmable ROM)及びRAM(Random Access Memory)等の少なくとも1つで構成されてもよい。メモリ12は、レジスタ、キャッシュ及びメインメモリ(主記憶装置)等と呼ばれてもよい。メモリ12は、前述したプログラム(プログラムコード)、ソフトウェアモジュール及びデータ等を保存することができる。また、メモリ12は、通信回線を介してデータ等の書き込み及び書き換えが可能であってもよい。
【0026】
ストレージ13は、コンピュータが読み取り可能な記録媒体であり、例えば、CD−ROM(Compact Disc ROM)などの光ディスク、ハードディスクドライブ、フレキシブルディスク、光磁気ディスク(例えば、コンパクトディスク、デジタル多用途ディスク、Blu−ray(登録商標)ディスク)、スマートカード、フラッシュメモリ(例えば、カード、スティック、キードライブ)、フロッピー(登録商標)ディスク、磁気ストリップなどの少なくとも1つで構成されてもよい。ストレージ13は、補助記憶装置と呼ばれてもよい。上述の記憶媒体は、例えば、メモリ12及び/又はストレージ13を含むデータベース、サーバその他の適切な媒体であってもよい。
【0027】
通信装置14は、有線及び/又は無線ネットワークを介してコンピュータ間の通信を行うためのハードウェア(送受信デバイス)であり、例えばネットワークデバイス、ネットワークコントローラ、ネットワークカード、通信モジュールなどともいう。通信装置14は、前述した移動体通信網及びインターネットを含むネットワークと無線通信を行うと共に、地方公共団体が発信する防災行政無線を受信する。
【0028】
飛行装置15は、上述したローターと、ローターを回転させるモーター等の駆動手段とを備え、自機(防災ドローン10)を飛行させる装置である。飛行装置15は、空中において、あらゆる方向に自機を移動させたり、静止(ホバリング)させたりすることができる。センサ装置16は、飛行制御に必要な情報を取得するセンサ群を有する装置である。センサ装置16は、本実施例では、自機の位置(緯度及び経度)を測定する位置センサと、自機が向いている方向(防災ドローン10には自機の正面方向が定められており、その正面方向が向いている方向)を測定する方向センサと、自機の高度を測定する高度センサとを備える。
【0029】
出力装置17は、外部への音、光又は映像等の出力を実施する出力デバイス(例えば、スピーカ、LED(Light Emitting Diode)及びディスプレイ等)である。出力装置17は、例えば避難を呼びかけるメッセージ音声をスピーカから出力(放音)し、避難を呼びかけるメッセージ文字列の映像をディスプレイで出力(表示)し、又は、それらのメッセージ音声・メッセージ文字列への注意を惹きつけるための光をLEDで出力(発光)する。
【0030】
なお、防災ドローン10に設けられるディスプレイとしては、例えば特開2017−107037、特開2017−107038、特開2017−107039、特開2017−071235に開示されている技術(並べて配置された複数のLEDを回転させて残像により映像を表示する技術)等が用いられてもよいし、ドローンに映像を表示させるその他の周知技術が用いられてもよい。プロセッサ11及びメモリ12等の各装置は、情報を通信するためのバス18を介して互いにアクセス可能となっている。バス18は、単一のバスで構成されてもよいし、装置間で異なるバスで構成されてもよい。
【0031】
なお、防災ドローン10は、マイクロプロセッサ、デジタル信号プロセッサ(DSP:Digital Signal Processor)、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)、PLD(Programmable Logic Device)、及び、FPGA(Field Programmable Gate Array)等のハードウェアを含んで構成されてもよく、当該ハードウェアにより、各機能ブロックの一部又は全てが実現されてもよい。例えば、プロセッサ11は、これらのハードウェアの少なくとも1つで実装されてもよい。
【0032】
防災ドローン10のプロセッサ11がプログラムを実行して各部を制御することで以下に述べる機能群が実現される。
図3は防災ドローン10が実現する機能構成を表す。防災ドローン10は、防災情報取得部101と、飛行経路決定部102と、飛行経路記憶部103と、飛行開始指示部104と、飛行制御部111と、飛行部112と、位置測定部113と、高度測定部114と、方向測定部115と、報知データ取得部121と、報知部122と、報知データ記憶部123とを備える。
【0033】
防災情報取得部101は、上述した防災情報、すなわち、災害の原因となる地震等の事象の発生及びその事象により災害を受ける地域(災害地域)を示す情報を取得する。防災情報取得部101は本発明の「取得部」の一例である。防災情報取得部101は、上述した通信装置14が受信する防災情報(エリアメール又は緊急速報メールで提供される防災情報と、防災行政無線で提供される防災情報)を取得する。
【0034】
防災情報取得部101は、取得した防災情報を飛行経路決定部102、飛行開始指示部104、報知データ取得部121に供給する。飛行経路決定部102は、防災情報取得部101により取得された防災情報が示す災害地域を飛行する飛行経路を決定する。飛行経路決定部102は本発明の飛行体が備える「決定部」の一例である。飛行経路決定部102は、飛行経路記憶部103を参照して飛行経路を決定する。
【0035】
飛行経路記憶部103は、災害の原因となる複数の事象にそれぞれ対応付けられた複数の飛行経路を示す経路情報を記憶する。飛行経路記憶部103は本発明の「経路記憶部」の一例である。
図4は記憶されている経路情報の一例を表す。
図4の例では、飛行経路記憶部103が、「津波」という災害の原因となる事象に対応付けて「lat1_lng1、lat11_lng11、・・・、lat17_lng17、lat1_lng1」という緯度及び経度で表された経路情報を記憶している。
【0036】
出発地点及び到着地点を示す「lat1_lng1」は
図1に表すドローン配置施設2の緯度及び経度であり、その他の7つの緯度及び経度は
図1に表す飛行経路R1に含まれる7つの曲がり角の緯度及び経度である。また、飛行経路記憶部103は、「土砂崩れ」という災害の原因となる事象に対応付けて「lat1_lng1、lat21_lng21、・・・、lat27_lng27、lat1_lng1」という緯度及び経度で表された経路情報を記憶している。
【0037】
出発地点及び到着地点は津波の場合と同じくドローン配置施設2の緯度及び経度であり、その他の7つの緯度及び経度は
図1に表す飛行経路R2に含まれる7つの曲がり角の緯度及び経度である。このように、飛行経路記憶部103は、飛行経路R1を示す経路情報を津波という事象に対応付けて記憶し、飛行経路R2を示す経路情報を土砂崩れという事象に対応付けて記憶している。
【0038】
飛行経路R1、R2は、
図1に表すように、直線を描く経路を繋げて設定されている。経路情報は、例えば、それらの直線状の経路の繋ぎ目となる曲がり角の緯度及び経度を、通過する順番に並べた情報である。飛行経路の出発地点及び到着地点は、
図4の例のように防災ドローン10が配置されている位置(配置位置)であることが望ましいが、それ以外の位置であってもよい。
【0039】
防災ドローン10は、出発地点及び到着地点が配置位置から離れていても、配置位置から出発地点までと、到着地点から配置位置までとを結ぶ飛行経路を自律的に飛行を行う。なお、
図1に表す飛行経路及び
図4に表す経路情報は一例であり、これに限らない。例えば直線だけでなく曲線を描く経路が飛行経路として用いられてもよい。また、高度まで指定された飛行経路が用いられてもよい。
【0040】
飛行経路決定部102は、防災情報取得部101から防災情報が供給されると、供給された防災情報(防災情報取得部101により取得された防災情報)が示す災害地域を飛行する飛行経路として、飛行経路記憶部103に記憶されている経路情報が示す複数の飛行経路のうち、その防災情報が示す事象(災害の原因となる事象)に対応付けられた飛行経路を決定する。
【0041】
飛行経路決定部102は、例えば津波警報を示す防災情報、すなわち災害の原因となる事象が津波であることを示す防災情報(例えば津波警報を示すエリアメール又は防災行政無線で提供される防災情報)が防災情報取得部101により取得された場合は、津波という事象に対応付けて記憶されている飛行経路R1をその防災情報が示す災害地域(津波被害予測地域A1)を飛行する飛行経路として決定する。
【0042】
また、飛行経路決定部102は、土砂災害を示す防災情報、すなわち災害の原因となる事象が土砂崩れであることを示す防災情報が取得された場合は、土砂崩れという現象に対応付けて記憶されている飛行経路R2をその防災情報が示す災害地域(土砂崩れ被害予測地域A2)を飛行する飛行経路として決定する。飛行経路決定部102は、決定した飛行経路を示す経路情報を飛行経路記憶部103から読み出して飛行制御部111に供給する。
【0043】
飛行開始指示部104は、防災情報取得部101により防災情報が取得された場合に飛行制御部111に対して飛行開始を指示する。飛行開始指示部104は本発明の飛行体が備える「指示部」の一例である。飛行開始指示部104は、防災情報取得部101から防災情報が供給されると、飛行開始の指示を示す指示データを飛行制御部111に供給することでこの指示を行う。
【0044】
飛行制御部111は、飛行開始指示部104から飛行開始の指示があった場合に、飛行経路決定部102により決定された飛行経路に沿った飛行の飛行制御を行う。飛行制御部111は本発明の「制御部」の一例である。飛行制御部111は、この飛行制御を行うため、飛行部112の動作を制御する。飛行部112は、自機(防災ドローン10)を飛行させる機能であり、本実施例では、飛行装置15が備えるローターを回転させて自機を飛行させる。飛行部112は本発明の「飛行部」の一例である。
【0045】
飛行制御部111は、飛行経路に沿った飛行を行わせるため、飛行開始の指示を受け取ると、位置測定部113、高度測定部114及び方向測定部115にそれぞれ測定を開始するよう指示する。位置測定部113は、自機の現在位置を測定し、測定した位置を示す位置情報(例えば緯度及び経度の情報)を飛行制御部111に供給する。高度測定部114は、自機の高度を測定し、測定した高度を示す高度情報(例えば高度をcm単位で示す情報)を飛行制御部111に供給する。
【0046】
方向測定部115は、自機の正面が向いている方向を測定し、測定した方向を示す方向情報(例えば真北を0度とした場合に各方向を360度までの角度で示す情報)を飛行制御部111に供給する。位置測定部113、高度測定部114及び方向測定部115による測定は所定の時間間隔で繰り返し行われる。飛行制御部111は、飛行経路決定部102から供給された経路情報に加え、繰り返し供給されてくる位置情報、高度情報及び方向情報に基づいて飛行部112を制御する。
【0047】
飛行制御部111は、測定された位置及び方向と経路情報が示す次の曲がり角の緯度及び経度とに基づいて自機の向きを決定し、次の曲がり角に向けて自機を飛行させる。その際、飛行制御部111は、測定される高度が例えば防災ドローン10の飛行高度として決められた高度になるように飛行部112の出力を制御する。飛行制御部111は、飛行部112の制御に用いた自機の現在の位置を示す位置情報を報知データ取得部121に供給する。
【0048】
報知データ取得部121は、防災情報取得部101から供給された防災情報、すなわち防災情報取得部101により取得された防災情報が示す災害に関する報知を行うための報知データを取得する。報知データは、上述したメッセージ音声を示す音声データの他、例えばサイレンの音を示す音データ、ディスプレイに表示するメッセージ文字列を示す文字列データ及びLEDの点滅パターンを示すパターンデータ等である。報知データ取得部121は、生成した報知データを報知部122に供給する。
【0049】
報知部122は、供給された報知データに基づいて、防災情報取得部101により取得された防災情報が示す災害に関する報知を行う。報知部122は本発明の「報知部」の一例である。報知部122は、例えば人々に避難を呼びかけるメッセージ音声を示す音声データが報知データに含まれる場合、そのメッセージ音声をスピーカから放音させることで、人々に避難の必要があることを伝える報知を災害に関する報知として行う。
【0050】
また、例えば地方公共団体等によって災害の原因となる事象が発生した場合に鳴らすサイレンの音が定められており、住民にもそのことが周知されているものとする。その場合に、報知部122は、そのサイレンの音を示す音データが報知データに含まれている場合、その報知データが示すサイレンの音をスピーカから放音させることで、災害の原因となる事象が発生したことを人々に伝える報知を、災害に関する報知として行う。
【0051】
また、報知部122は、例えば人々に避難を呼びかけるメッセージ文字列を示す文字列データが報知データに含まれる場合、その報知データが示すメッセージ文字列をディスプレイに表示させることで、人々に避難の必要があることを伝える報知を災害に関する報知として行う。報知部122は、飛行制御部111が行う飛行制御による自機の飛行中にこの報知を行う。これにより、被害予測地域にいる人々に災害に関する報知をすることができる。
【0052】
また、報知部122は、LEDの点滅パターンを示すパターンデータが報知データに含まれる場合、その報知データが示す点滅パターンでLEDを点滅させる。報知部122は、LEDの点滅を他の報知と共に行う。これにより、防災ドローン10から離れていて出力される音が聞こえなかったり表示されるメッセージ文字列の映像が見えなかったりする人でも、LEDの点滅は遠くからでも分かるので、防災ドローン10に近付いて音及び映像を確認するように仕向けることができる。
【0053】
また、防災ドローン10の進行方向にいる人が先にLEDの点滅に気付いていれば、防災ドローン10に注目するので防災ドローン10が近付いてきたときにメッセージ音声等に気付きやすくなる。このように、報知部122は、LEDを点滅させることで、災害に関する報知の効果を高めることができる。以上のとおり、報知部122は、災害に関する報知を複数の方法(メッセージ音声を出力する方法、サイレンの音を出力する方法、メッセージ文字列を表示する方法、及び、共にLEDを点滅させる方法)で行う。
【0054】
報知データ取得部121は、本実施例では、報知データを報知データ記憶部123から取得する。報知データ記憶部123は、上述した各種の報知データを記憶する。報知データ記憶部123は、上述したサイレンの音を示す音データ及びLEDの点滅のパターンデータを記憶する。また、報知データ記憶部123は、メッセージ音声を示す音声データ及びメッセージ文字列を示す文字列データを格納する防災メッセージDB124(DB:Data Base)と区域メッセージDB125とを記憶する。
【0055】
防災メッセージDB124には、災害の原因となる地震等の事象に対応付けてメッセージ(具体的にはメッセージ音声を示す音声データ及びメッセージ文字列を示す文字列データ)が格納されている。
図5は防災メッセージDB124に格納されている情報の一例を表す。
図5の例では、「地震」という災害の原因となる事象に、「地震が発生しました。揺れがおさまったら近くの広域避難場所まで避難してください。」というメッセージが対応付けられている。メッセージ音声及びメッセージ文字列はそれぞれ異なるメッセージを表していてもよいが、本実施例では
図5に表すようにどちらも同じメッセージを表しているものとする。
【0056】
同様に、「津波」、「土砂崩れ」、「火事」という災害の原因となる事象に、「津波の恐れがあります。海岸から離れるか、高台に避難してください。」、「土砂崩れの恐れがあります。土砂災害警戒区域の外に移動してください。」、「火事が発生しました。延焼の恐れがあるので、建物から出て避難してください。」というメッセージがそれぞれ対応付けられている。これらのメッセージはいずれも、各事象が起きたときに災害を受けないようにするために避難を呼びかけるメッセージである。避難方法は発生した事象によって異なるので、メッセージも事象ごとに異なっている。
【0057】
区域メッセージDB125には、被害予測地域内の区域に対応付けられたメッセージ(具体的にはメッセージ音声を示す音声データ及びメッセージ文字列を示す文字列データ)が格納されている。ここでいう区域とは、被害予測地域に含まれる複数の区域のことである。例えば
図1に表す津波被害予測地域A1には、民家が密集する民家密集区域、学校を中心とした学校区域、海岸沿いの海岸区域が含まれている。
【0058】
図6は区域メッセージDB125に格納されている情報の一例を表す。
図6の例では、津波被害予測地域A1内の区域に対して災害の原因となる事象ごとにメッセージが対応付けられている。例えば「民家密集区域」に対して、災害の原因となる事象が「地震」なら「学校C1が広域避難区域になっています。」というメッセージが対応付けられ、災害の原因となる事象が「津波」なら「M2山か津波避難施設C2に避難してください。」というメッセージが対応付けられ、災害の原因となる事象が「土砂崩れ」なら「M1山から離れる方向に避難してください。」というメッセージが対応付けられている。
【0059】
また、「学校区域」に対しては、災害の原因となる事象が「地震」なら「学校C1の校庭に避難してください。」というメッセージが対応付けられ、災害の原因となる事象が「津波」なら「M2山に避難してください。」というメッセージが対応付けられている。また、「海岸区域」に対しては、災害の原因となる事象が「津波」なら「津波避難施設C2に避難してください。」というメッセージが対応付けられている。
【0060】
これらのメッセージはいずれも、被害予測地域において人々が自分のいる区域に応じて行うべき具体的な避難方法を伝えるメッセージである。この具体的な避難方法も、発生した事象によって異なるので、メッセージも事象ごとに異なっている。また、区域によっては、特定の事象では避難する必要がない場合があり(例えば学校区域では土砂崩れの発生する恐れがない)、その場合にはメッセージも用意されていない。
【0061】
また、区域メッセージDB125には、各区域に含まれる緯度及び軽度の範囲を示す範囲情報が格納されている。位置測定部113により現在位置として測定された緯度及び経度がその範囲に含まれていれば、防災ドローン10がその範囲に該当する区域を現在飛行していることになる。このように、報知データ記憶部123は、災害の原因となる事象に対応付けられたメッセージと、災害地域(被害予測地域)内の区域に対応付けられたメッセージとを記憶している。報知データ記憶部123は本発明の「メッセージ記憶部」の一例である。
【0062】
報知データ取得部121は、取得された防災情報が示す災害の原因となる事象に対応付けて記憶されているメッセージを取得する。報知データ取得部121は、防災情報が取得された後であればいつでもこのメッセージを取得してよく、例えば防災情報が供給されたらすぐにこのメッセージを取得して報知部122に供給する。
【0063】
また、報知データ取得部121には、飛行制御部111の飛行制御により自機が飛行経路を飛行している最中に、位置測定部113から測定された現在位置が供給される。報知データ取得部121は、その測定された現在位置を含む区域に対応付けて報知データ記憶部123に記憶されているメッセージを取得する。報知データ取得部121は、このメッセージについては、飛行経路の飛行中に繰り返し測定される現在位置に基づいて取得して、取得する度に報知部122に供給する。
【0064】
報知部122は、報知データ取得部121からメッセージが供給されると、供給されたメッセージを報知する。これにより、報知部122は、取得された防災情報が示す災害の原因となる事象に対応付けて記憶されているメッセージを飛行経路の飛行中に報知する。また、報知部122は、飛行経路の飛行中に、現在位置を含む区域に対応付けて報知データ記憶部123に記憶されているメッセージを報知する。
【0065】
防災ドローン10は、上記の構成に基づいて、飛行経路を飛行して災害に関する報知を行う報知処理を行う。
図7は報知処理における防災ドローン10の動作手順の一例を表す。この動作手順は、災害の原因となる事象が発生して防災情報が提供されることを契機に開始される。まず、防災ドローン10(防災情報取得部101)は、災害の原因となる地震等の事象の発生及びその事象により災害を受ける地域を示す防災情報を取得する(ステップS11)。
【0066】
次に、防災ドローン10(飛行経路決定部102)は、取得された防災情報が示す災害地域を飛行する飛行経路を決定する(ステップS12)。続いて、防災ドローン10(飛行開始指示部104)は、ステップS11で防災情報が取得されたことを契機に飛行開始を指示する(ステップS13)。次に、防災ドローン10(報知データ取得部121)は、取得された防災情報が示す災害に関する報知を行うための報知データを取得する(ステップS14)。
【0067】
防災ドローン10(報知データ取得部121)は、ステップS14では、災害の原因となる事象に対応付けて記憶されているメッセージと、サイレンの音を示す音データ及びLEDの点滅のパターンデータとを取得する。続いて、防災ドローン10(飛行制御部111)は、ステップS13において決定された飛行経路に沿った飛行の飛行制御を開始する(ステップS15)。次に、防災ドローン10(位置測定部113)は、自機の現在位置を測定する(ステップS21)。
【0068】
続いて、防災ドローン10(報知データ取得部121)は、測定された現在位置を含む区域に対応付けて自機(報知データ記憶部123)に記憶されているメッセージを取得する(ステップS22)。次に、防災ドローン10(報知部122)は、ステップS14及びS22で取得された報知データに基づいて、災害に関する報知を行う(ステップS23)。そして、防災ドローン10は、自機が配置されていた施設に帰投したか否かを判断し(ステップS24)、帰投していない(NO)と判断した場合はステップS21に戻って動作を続け、帰投した(YES)と判断した場合はこの動作手順を終了する。
【0069】
本実施例では、上記のとおり防災ドローン10が被害予測地域を飛行して災害に関する報知を行う。これにより、防災ドローン10がこの報知を行わない場合に比べて、災害を受ける地域(被害予測地域)にいる人々の避難を促進することができる。また、防災ドローン10は、防災情報が取得されることを契機に出動する(飛行を開始する)。これにより、飛行開始の指示を例えば人が行う場合に比べて早いタイミングで防災ドローン10を出動させることができ、人々の避難をより早く促進することができる。
【0070】
また、本実施例では、予め記憶されている飛行経路から実際に飛行する飛行経路を決定している。これにより、飛行経路を新たに生成する場合に比べて、より早いタイミングで飛行経路に沿った飛行を開始することができる。また、本実施例では、被害予測地域を飛行中の防災ドローン10が現在位置を含む区域に対応付けられたメッセージを報知する。これにより、被害予測地域内の区域ごとに、より適切な報知(例えばその区域において最も近い避難場所の報知)を行うことができる。
【0071】
[2]第2実施例
本発明の第2実施例について、以下、第1実施例と異なる点を中心に説明する。第1実施例では、防災ドローン10だけで報知処理が行われたが、第2実施例では、防災ドローン及びサーバ装置が連携して報知処理が行われる。
【0072】
図8は第2実施例に係る防災システム1の全体構成を表す。防災システム1は防災のためのシステムであり、防災ドローン10a−1、10a−2、10a−3、・・・(以下区別しない場合は「防災ドローン10a」という)と、サーバ装置20と、ネットワーク3とを備える。ネットワーク3は、移動体通信及びインターネット等を含むシステムであり、自システムにアクセスする装置同士の通信を仲介するシステムである。ネットワーク3には、防災ドローン10aが無線でアクセスし、サーバ装置20が有線で(無線でもよい)アクセスしている。
【0073】
サーバ装置20は、第1実施例の防災ドローン10が行っていた処理のうち、本実施例では、飛行経路の決定処理、報知データの生成処理、飛行開始の指示処理を行う。防災ドローン10aは、サーバ装置20にそれらの処理を行わせるために必要な情報(詳細は後述する)をサーバ装置20に送信し、それらの処理の結果を示す情報をサーバ装置20から受け取って実施例で述べたものと同様の飛行制御を行う。
【0074】
複数の防災ドローン10aは、例えば全国各地の被害予測地域の近くに分散して配置される。各防災ドローン10aは、基本的にはそれぞれ異なる被害予測地域の近くにある異なる施設に配置されるが、被害予測地域が周辺に多数存在していたり広大であったりした場合は、複数の防災ドローン10aが同じ施設に配置されていてもよい。各防災ドローン10aには自機を識別する識別情報としてドローンID(Identification)が割り当てられており、各防災ドローン10aは自機のドローンIDを記憶している。
【0075】
図9はサーバ装置20のハードウェア構成を表す。サーバ装置20は、プロセッサ21と、メモリ22と、ストレージ23と、通信装置24と、入力装置25と、出力装置26と、バス27という各装置を備えるコンピュータである。なお、ここでいう「装置」という文言は、回路、デバイス及びユニット等に読み替えることができる。また、各装置は、1つ又は複数含まれていてもよいし、一部の装置が含まれていなくてもよい。
【0076】
プロセッサ21、メモリ22、ストレージ23及びバス27は
図2に表す同名の装置と共通するハードウェアである。通信装置24は、
図2に表す通信装置14と同じく有線及び/又は無線ネットワークを介してコンピュータ間の通信を行うためのハードウェア(送受信デバイス)であるが、通信装置14とは異なり防災行政無線は受信しない。入力装置25は、外部からの入力を受け付ける入力デバイス(例えば、キーボード、マウス、マイクロフォン、スイッチ、ボタン、センサなど)である。出力装置26は、外部への出力を実施する出力デバイス(例えば、ディスプレイ、スピーカなど)である。
【0077】
防災ドローン10a及びサーバ装置20のプロセッサがプログラムを実行して各部を制御することで以下に述べる機能群が実現される。
図10は防災システム1の各装置が実現する機能構成を表す。防災ドローン10aは、
図3に表す防災情報取得部101と、飛行制御部111と、飛行部112と、位置測定部113と、高度測定部114と、方向測定部115と、報知部122とに加えて、情報通信部100と、報知データ保持部126とを備える。
【0078】
サーバ装置20は、
図3に表す機能のうち防災ドローン10aが備えていない飛行経路決定部102と、飛行経路記憶部103と、飛行開始指示部104と、報知データ取得部121と、報知データ記憶部123とを備え、それらに加えて情報通信部200と、登録情報記憶部201と、飛行経路生成部202と、ハザードマップ記憶部203とを備える。
図3に表す各部と同名の機能はそれらの対応する機能と基本的に同じ機能(情報の受け渡し先及び動作タイミング等が異なる場合はある)である。
【0079】
本実施例では、防災ドローン10aを施設に配置する際に、配置作業の担当者が防災ドローン10aに関する情報を登録する操作を行う。具体的には、防災ドローン10aの最長航続距離を登録する操作と、防災ドローン10aが配置された配置位置を登録する操作が行われる。前者の操作が行われると、登録された最長航続距離を示す距離情報が情報通信部100に供給される。後者の操作が行われると、防災ドローン10aの位置測定部113が、現在位置を自機が配置された配置位置として測定し、測定した配置位置を示す位置情報を情報通信部100に供給する。
【0080】
情報通信部100は、サーバ装置20との間で情報を通信する機能である。情報通信部100は、供給された距離情報及び位置情報に自機のドローンIDを付加したドローン登録情報をサーバ装置20に送信する。サーバ装置20の情報通信部200は、各防災ドローン10aとの間で情報を通信する機能である。情報通信部200は、送信されてきたドローン登録情報を受信すると、受信したドローン登録情報を登録情報記憶部201に供給する。
【0081】
登録情報記憶部201は、供給されたドローン登録情報を、そのドローン登録情報が示すドローンIDで識別される防災ドローン10aの登録情報として記憶する。サーバ装置20の飛行経路生成部202は、登録情報記憶部201に記憶された登録情報と、ハザードマップ記憶部203に記憶されているハザードマップとに基づいて飛行経路を生成する。ハザードマップ記憶部203は、ハザードマップ、すなわち地震等が発生したときに被害の発生地域として予測される範囲(被害予測地域)を表した地図を記憶する。
【0082】
このハザードマップには、被害予測地域の他に、避難場所(広域避難場所及び津波での避難施設等)と、学校、病院、公園、民家を含む建物等の人が滞在する可能性がある場所が表されている。飛行経路生成部202は、例えば登録情報記憶部201に新たな登録情報が記憶されると、その登録情報が示す配置位置からの距離が、その登録情報が示す最長航続距離の所定の割合未満である被害予測地域をハザードマップから抽出する。
【0083】
この所定の割合を大きくするほど配置位置から離れた被害予測地域が抽出されるが、配置位置から離れるほど被害予測地域内を飛行する距離が短くなる。飛行経路生成部202は、例えば、防災ドローン10aの配置密度(1平方kmあたりの配置台数等)が少ないほど所定の割合を大きくして、離れた被害予測地域が抽出されるようにして、1台の防災ドローン10aがカバーする範囲を広くしてもよい。
【0084】
飛行経路生成部202は、登録情報が示す配置位置を出発地点及び到着地点とし、且つ、登録情報が示す最長航続距離未満の長さであり、且つ、抽出した被害予測地域のうち前述した人が滞在する可能性がある場所の近くをなるべく多く通過する飛行経路を生成する。飛行経路生成部202は、例えば、被害予測地域を通過する飛行経路を複数試算して、そのうち人が滞在する可能性がある場所との距離の平均値が最小となる飛行経路を、登録情報が示すドローンIDで識別される防災ドローン10aの飛行経路として生成する。
【0085】
飛行経路生成部202は、生成した飛行経路及びドローンIDを示す経路情報を飛行経路記憶部103に供給する。飛行経路記憶部103は、供給された経路情報を記憶する。ここまでは、防災ドローン10aの登録に関する機能について説明した。このあとは、災害の原因となる事象が発生したときに防災ドローン10aを飛行させる機能について説明する。
【0086】
防災ドローン10aの防災情報取得部101は、防災情報を取得すると、取得した防災情報を情報通信部100に供給する。情報通信部100は、供給された防災情報に自機のドローンIDを付加してサーバ装置20に送信する。情報通信部100は本発明の「送信部」の一例である。サーバ装置20の情報通信部200は、防災情報を受信すると、受信した防災情報を飛行経路決定部102、飛行開始指示部104及び報知データ取得部121に供給する。
【0087】
飛行経路決定部102は、供給された防災情報と同じドローンIDを示す経路情報を飛行経路記憶部103から読み出して、あとは第1実施例と同じ方法で、供給された防災情報、すなわち防災ドローン10aから送信されてきた防災情報が示す地域を飛行する飛行経路を、その防災ドローン10aの飛行経路として決定する。飛行経路決定部102は本発明のサーバ装置が備える「決定部」の一例である。飛行経路決定部102は、決定した飛行経路を示す経路情報を情報通信部200及び報知データ取得部121に供給する。
【0088】
飛行開始指示部104は、防災情報が供給されると、その防災情報を取得した防災ドローン10aに対して飛行開始を指示する指示データを情報通信部200介して送信することで、決定された飛行経路での飛行開始を防災情報を送信してきた防災ドローン10aに指示する。飛行開始指示部104は本発明のサーバ装置が備える「指示部」の一例である。
【0089】
報知データ取得部121は、実施例と同様に、供給された防災情報が示す災害の原因となる事象に対応付けて記憶されているメッセージを取得する。また、報知データ取得部121は、飛行経路決定部102により決定された飛行経路の各区域(被害予測地域に含まれる各区域)及び災害の原因となる事象に対応付けて記憶されているメッセージを取得する。報知データ取得部121は、取得したメッセージ(具体的にはメッセージ音声を示す音声データ及びメッセージ文字列を示す文字列データ)を情報通信部100に供給する。
【0090】
決定された飛行経路を示す経路情報と、指示データと、取得されたメッセージを示す報知データは、情報通信部200が防災情報の送信元である防災ドローン10aに送信する。防災ドローン10aの情報通信部100が受信した経路情報及び指示データを飛行制御部111に供給すると、飛行制御部111は第1実施例と同様に飛行制御を行う。情報通信部200が受信した報知データを報知データ保持部126に供給すると、報知データ保持部126はその報知データを保持する。
【0091】
報知データ保持部126は、サーバ装置20からの報知データ以外に、サイレンの音を示す音データ及びLEDの点滅のパターンデータを報知データとして予め保持しておく。なお、これらの報知データは、サーバ装置20から送信されてきたものを保持してもよい。報知部122は、自機の飛行中に報知データ保持部126から報知データを読み出して、第1実施例と同様に、防災情報取得部101により取得された防災情報が示す災害に関する報知を行う。
【0092】
図11は本実施例の報知処理における動作手順の一例を表す。この動作手順は、災害の原因となる事象が発生して防災情報が提供されることを契機に開始される。まず、防災ドローン10a(防災情報取得部101)が防災情報を取得する(ステップS31)。次に、防災ドローン10a(情報通信部100)は、取得された防災情報をサーバ装置20に送信する(ステップS32)。サーバ装置20(飛行経路決定部102)は、送信されてきた防災情報が示す災害地域を飛行する飛行経路を決定する(ステップS33)。
【0093】
続いて、サーバ装置20(報知データ取得部121)は、送信されてきた防災情報が示す災害の原因となる事象に対応付けて記憶されているメッセージを報知データとして取得する(ステップS34)。また、サーバ装置20(報知データ取得部121)は、ステップS33で決定された飛行経路上の各区域に対応付けて記憶されているメッセージを報知データとして取得する(ステップS35)。次に、サーバ装置20(飛行開始指示部104)は、飛行開始を指示する指示データを生成する(ステップS36)。
【0094】
そして、サーバ装置20(情報通信部200)は、決定された飛行経路を示す経路情報と、取得された報知データと、生成された指示データを防災ドローン10aに送信する(ステップS37)。防災ドローン10a(報知データ保持部126)は、送信されてきた報知データを保持する(ステップS38)。防災ドローン10a(飛行制御部111)は、送信されてきた経路情報が示す飛行経路に沿った飛行の飛行制御を開始する(ステップS41)。次に、防災ドローン10a(位置測定部113)は、自機の現在位置を測定する(ステップS42)。
【0095】
続いて、防災ドローン10a(報知データ取得部121)は、測定された現在位置を含む区域に対応付けて自機(報知データ保持部126)に保持されているメッセージを取得する(ステップS43)。次に、防災ドローン10a(報知部122)は、ステップS38で保持された報知データ及びステップS43で取得された報知データに基づいて、災害に関する報知を行う(ステップS44)。そして、防災ドローン10aは、自機が配置されていた施設に帰投したか否かを判断し(ステップS45)、帰投していない(NO)と判断した場合はステップS41に戻って動作を続け、帰投した(YES)と判断した場合はこの動作手順を終了する。
【0096】
本実施例でも、防災ドローン10aが災害に関する報知を行わない場合に比べて、災害を受ける地域(被害予測地域)にいる人々の避難を促進することができる。また、本実施例では、サーバ装置20において飛行経路の決定処理と報知データの取得処理が行われるので、それらの処理を防災ドローンが行う場合に比べて、防災ドローンが行う処理の負荷を少なくすることができる。
【0097】
[3]変形例
上述した実施例は本発明の実施の一例に過ぎず、以下のように変形させてもよい。
【0098】
[3−1]時間帯
防災ドローンが飛行する飛行経路が時間帯によって異なっていてもよい。本変形例では、飛行経路記憶部103が、災害の原因となる複数の事象にそれぞれ対応付けられた複数の飛行経路を、さらに複数の時間帯のそれぞれに対応付けて記憶する。
【0099】
図12は本変形例で記憶されている経路情報の一例を表す。
図12の例では、飛行経路記憶部103が、「平日日中」という時間帯に対応付けて、「津波」及び「飛行経路R1−1」と「土砂崩れ」及び「飛行経路R2−1」という2組の災害の原因となる事象及び経路情報を記憶している。なお、
図12では説明を分かりやすくするため経路情報を簡単に表しているが、実際は
図4の例のように緯度及び経度の集合で経路情報が表されているものとする。
【0100】
同様に、飛行経路記憶部103は、「平日夜間、休日夜間」という時間帯に対応付けて「津波」及び「飛行経路R1−2」と「土砂崩れ」及び「飛行経路R2−2」という2組の事象及び経路情報を記憶し、「休日日中」という時間帯に対応付けて「津波」及び「飛行経路R1−3」と「土砂崩れ」及び「飛行経路R2−3」という2組の事象及び経路情報を記憶している。
【0101】
例えば
図1に表す地域の場合、「平日日中」に対応付けられた「飛行経路R1−1」としては、平日日中に人が集まる学校C1の周辺を周回する経路を含む飛行経路が用いられる。また、「平日夜間、休日夜間」に対応付けられた「飛行経路R1−2」及び「飛行経路R2−2」は、夜間に人がいる民家のある地域を重点的に飛行する飛行経路が用いられる。また、「休日日中」に対応付けられた「飛行経路R1−3」は、休日日中に人が集まる海岸及び公園の周辺を飛行する経路を含む飛行経路が用いられる。
【0102】
飛行経路決定部102は、取得された防災情報が示す事象及び現在の時間帯に対応付けて記憶されている飛行経路を決定する。飛行経路決定部102は、例えば平日の日中に津波警報を示す防災情報が取得された場合は、「平日日中」及び「津波」に対応付けて記憶されている「飛行経路R1−1」を防災ドローン10の飛行経路として決定する。また、飛行経路決定部102は、休日の夜間に土砂崩れを示すエリアメールが取得された場合は、「休日夜間」及び「土砂崩れ」に対応付けて記憶されている「飛行経路R2−2」を防災ドローン10の飛行経路として決定する。
【0103】
被害予測地域においては、時間帯によって人が集まる場所が異なる場合がある。例えば平日日中は学校及びオフィス街等に人が集まり、休日日中は海岸、公園及び遊園地等の遊ぶ場所に人が集まる。また、夜間は民家及びホテル等の就寝場所に人がいる。本変形例では、時間帯に対応付けられた飛行経路が決定されるので、各時間帯で人が集まる場所を通る飛行経路を用いることで、時間帯が違っても飛行経路が一律の場合に比べて、より多くの人に災害に関する報知を伝えることができる。
【0104】
[3−2]臨時飛行経路
実施例では決定された飛行経路に沿って防災ドローンが飛行したが、飛行経路から離れた場所に人又は車両が見つかった場合に、その場所まで臨時に飛行する臨時飛行経路が用いられてもよい。ここでいう車両とは、例えば車又はバイク等であり、人が乗って移動する乗り物のことである。
【0105】
図13は本変形例の防災ドローン10bが実現する機能構成を表す。防災ドローン10bは、
図3に表す各部に加えて人・車両検知部105を備える。人・車両検知部105は、人又は車両の少なくとも一方の場所を検知する。人・車両検知部105は本発明の「検知部」の一例である。防災ドローン10bでは、センサ装置16が例えば撮像装置を備え、人・車両検知部105が、撮像装置で撮影された画像からパターン認識の技術等を用いて人又は車両が写っているか否かを判断する。
【0106】
人・車両検知部105は、人又は車両が写っていると判断した場合、画像中でその対象が映っている位置と、現在の飛行高度及び自機が向いている方向から、対象までの距離及び方向を判断する。人・車両検知部105は、判断した対象までの距離及び方向を示す対象情報を飛行制御部111に供給する。飛行制御部111は、飛行経路を飛行させている途中で前述した対象の場所が検知された場合に、その場所まで飛行してから飛行経路に戻る制御を行う。
【0107】
飛行制御部111は、例えば、対象情報が供給されると、その対象情報が示す方向に自機の向きを変え、その対象情報が示す距離だけその方向に自機を飛行させることで、検知された対象の場所まで自機を到達させる。飛行制御部111は、対象の場所に到達すると、例えば自機の向きを180度反転して、飛行経路に戻るまで自機を飛行させる。この制御により防災ドローン10bが飛行する飛行経路は、検知された対象の場所まで臨時に飛行する臨時飛行経路となっている。
【0108】
なお、上記の例では飛行経路自体に変更はなかったが、人・車両検知部105が飛行経路決定部102に対象情報を供給し、飛行経路決定部102が、臨時飛行経路を含む新たな飛行経路を生成し、防災ドローン10bの飛行経路として元の飛行経路を破棄して新たな飛行経路を決定してもよい。この場合でも、飛行制御部111は、対象の場所まで飛行してから飛行経路に戻る制御を行うことになる。
【0109】
飛行経路は、できるだけ多くの人に災害に関する報知がされるように、なるべく人がいると思われる場所の近くを通るように定められる。しかし、例えば学校の周辺を飛行する飛行経路が決定されても、課外授業等でたまたま生徒達が学校から少し離れた場所にいたという場合に、決定された飛行経路だけを飛行していてはそれらの生徒達に報知することができないということが起こりうる。本変形例では、飛行経路から離れた場所であっても、上記のとおり検知された人又は車両の場所であれば防災ドローン10bがその場所まで飛行して災害に関する報知が行われる。これにより、臨時飛行経路を飛行しない場合に比べて、想定していない場所にいる人々にも災害に関する報知が伝わりやすいようにすることができる。
【0110】
また、飛行制御部111は、検知された対象の場所までの往復距離が、自機の最長航続距離と飛行経路との差分よりも短い場合に、前述した臨時飛行経路を飛行する制御を行ってもよい。これにより、臨時飛行経路を飛行したためにバッテリーが足りなくなり帰投できなくなることを防ぐことができる。
【0111】
また、人・車両検知部105は、車両が画像に写っていると判断した場合、その車両が動いているときにのみ、その車両の場所を検知してもよい。例えば人・車両検知部105は、人又は車両が写っているか否かの判断を一定の時間間隔で繰り返し行い、画像に写っていると判断した車両の自機から見た向き及び距離の変化と、自機の飛行方向及び飛行速度から、その車両が移動しているか否かを判断する。
【0112】
人・車両検知部105は、車両が移動していると判断した場合に、その車両の場所を検知する。これにより、例えば放棄されて停止している車両は検知されなくなるので、人がいない車両に向かう臨時飛行経路を飛行してしまい、本来の飛行経路をまっすぐ飛行した場合に比べて、残りの飛行経路の周辺にいる人々に災害に関する報知を伝えるのが遅くなることを防ぐことができる。
【0113】
なお、臨時飛行経路は、上記の例のように往復する経路でなくてもよい。飛行制御部111は、例えば決定された飛行経路の或る地点から検知された対象の場所に自機を飛行させて到着した後、進んできた経路とは異なる経路を通って元の飛行経路に戻る経路を飛行するように飛行制御を行う。その場合に、飛行制御部111は、元の飛行経路の一部をカットして通らないように飛行制御を行う。これにより、同じ経路を往復する臨時飛行経路が用いられる場合に比べて、臨時飛行経路を飛行したことによる遅れを減らすことができる。
【0114】
[3−3]新たな事象の発生
防災ドローンが出発した後に、新たな地震等の事象が発生する場合がある。例えば地震の発生により災害地域に向けて出発した後に津波が発生する場合や、大雨による洪水の発生により災害地域に向けて出発した後に土砂崩れが発生する場合等である。その場合に、防災ドローンが、新たな事象による被害予測地域を飛行するように飛行経路が変更されてもよい。
【0115】
本変形例では、飛行経路決定部102が、決定した飛行経路の飛行中に飛行前とは異なる事象を原因とした災害についての防災情報が防災情報取得部101により取得された場合に、その防災情報が示す地域を飛行する飛行経路を決定する。この新たな飛行経路の決定は、実施例と同じ方法で行われればよい。そして、飛行制御部111が、飛行経路決定部102により新たに決定された飛行経路に沿った飛行の制御を行う。
【0116】
飛行制御部111がこのように飛行経路を切り替える制御を行うことで、例えば防災ドローン10が帰投した後に再度出発して新たな飛行経路を飛行する場合に比べて、その新たな飛行経路の飛行をより早く開始することができる。なお、飛行制御部111は、新たな飛行経路が決定された場合に、飛行経路の切り替えを行うか否かを判断してもよい。飛行制御部111は、例えば、地震等の事象に対して予め定められた優先順位を記憶しておく。
【0117】
飛行制御部111は、新たな飛行経路の決定に用いられた防災情報が示す事象の優先順位が、現在飛行中の飛行経路の決定に用いられた防災情報が示す事象の優先順位よりも高い場合に、飛行経路の切り替えを行う。これにより、発生した事象における災害に関する報知が、それよりも優先順位が低い事象の発生によって途中で途切れないようにすることができる。
【0118】
なお、優先順位の決め方はこれに限らない。飛行制御部111は、例えば、取得された防災情報が示す被害予測地域が広い方(対象地域の面積又は災害地域に含まれる地方公共団体の数等を比較して判断する)を優先順位が高いと判断してもよい。その場合、被害予測地域が広い方の事象が新たに発生したのであれば、飛行経路の切り替えが行われる。これにより、発生した事象における災害に関する報知が、その事象より被害予測地域が狭い事象の発生によって途中で途切れないようにすることができる。
【0119】
[3−4]報知方法
報知部122は、実施例で述べたように報知を行う方法を複数(メッセージ音声を出力する方法、サイレンの音を出力する方法、メッセージ文字列を表示する方法、及び、共にLEDを点滅させる方法)有している。報知部122は、これら複数の報知方法を常に全部用いると電力の消費量が大きすぎるため、状況に応じて用いる報知方法を変化させてもよい。
【0120】
報知部122は、例えば、飛行経路上の各区域における報知の優先度と報知方法とを対応付けた報知方法テーブルを用いる。報知の優先度とは、その優先度が高い区域ほど報知内容を人々に伝える必要性が高いことを意味している。例えば河川敷区域と住宅密集区域であれば、住宅密集区域の方が報知の優先度が高いという具合である。
【0121】
図14は報知方法テーブルの一例を表す。
図14の例では、報知方法の優先度が「1」であれば「メッセージ音声+メッセージ文字列+LED」を報知方法とし、報知方法の優先度が「2」であれば「メッセージ音声+メッセージ文字列」を報知方法とし、報知方法の優先度が「3」であれば「メッセージ音声」を報知方法とするという対応付けがされている。報知の優先度は、例えば飛行経路記憶部103に記憶されている飛行経路ごとに予め定められている。
【0122】
図15は飛行経路について定められた報知の優先度の一例を表す。
図15では、
図1に表す飛行経路R1について定められた報知の優先度が表されている。飛行経路R1では、出発地点から津波被害予測地域A1に至るまでと津波被害予測地域A1から到着地点に至るまでの被害予測地域外の優先度が「3」と定められている。また、学校C1の周辺の学校区域と住宅が密集している住宅密集区域の優先度が「1」と定められ、海岸区域の優先度が「2」と定められている。
【0123】
この区域毎の優先度は、例えば防災ドローンの運用者が予め定め、その優先度を示す優先度データを防災ドローンに記憶させておく。なお、区域毎の優先度の定め方はこれに限らない。例えば地図上のエリア情報として区域毎に優先度を事前に定めた地図データを防災ドローンが記憶しておき、飛行経路が決定された後に、例えば報知部122が、決定された飛行経路が定められた前述のエリア情報と重なる区域に設定された優先度を地図データから抽出して、それらの区域の優先度として定めてもよい。
【0124】
図15の例では、津波被害予測地域A1においては、飛行経路R1上の各区域における人の密集度が高いほど報知の優先度が高くなるよう定められている(学校区域、住宅密集区域の方が海外区域よりも人が密集している)。また、津波被害予測地域A1内の区域の方が津波被害予測地域A1の外の区域に比べて優先度が高くなるよう定められている。報知部122は、
図14に表す報知方法テーブルを用いて、例えば飛行経路R1において海岸区域を飛行するときには、優先度「2」に対応付けられているメッセージ音声とメッセージ文字列を出力することで災害に関する報知を行う。
【0125】
また、報知部122は、飛行経路R1において学校区域又は住宅密集区域を飛行するときには、優先度「1」に対応付けられているメッセージ音声とメッセージ文字列を出力し、LEDを点滅させることで災害に関する報知を行う。このように、報知部122は、津波被害予測地域A1においては、報知の優先度が高い区域を飛行しているときほど多くの方法を用いて災害に関する報知を行う。
【0126】
これにより、報知の優先度が高い区域では、報知の優先度が低い区域に比べて報知内容がより多くの人に伝わりやすいようにすることができる。また、本変形例では、人の密集度が高い区域ほど報知の優先度を高くすることで、より多くの人がいる区域において報知内容がより多くの人に伝わりやすいようにしている。これにより、人の密集度を踏まえずに優先度を定める場合に比べて、防災ドローン10が有する限られた電力をより有効に利用して、災害に関する報知を被害予測地域にいるより多くの人々に伝えることができる。
【0127】
なお、各区域における報知の優先度を定める際に用いる要素は、人の密集度に限らない。例えば人が密集していても避難場所が近くにあって避難が容易な区域よりも、人が少なくても避難場所が近くになくて避難が難しい区域の優先度を高くしてもよい(優先度を決める要素=避難の困難度)。同じ理由で、老人、子供及び病人といった避難に時間がかかる人々が集まっている区域(小学校、老人ホーム及び病院等)の優先度を他の区域よりも高くしてもよい。
【0128】
また、公共性の高い建物等がある区域の優先度を他の区域よりも高くしてもよい(優先度を決める要素=公共性)。また、防災無線の音が届かない区域の優先度を他の区域よりも高くしてもよい(優先度を決める要素=防災無線の音の伝播性)。また、これらの各要素(人の密集度、避難の困難性、公共性、防災無線の音の伝播性)のうちの2以上の要素をポイントで表して、ポイントの合計が大きい区域ほど優先度を高くしてもよい。いずれの場合も、災害に関する報知をより確実に伝えたい人々がいる区域ほど優先度を高くすることで、限られた電力をより有効に利用して人々の避難を促進することが望ましい。
【0129】
[3−5]飛行開始の指示
第1実施例では防災ドローン10が自機に対して飛行開始の指示を行い、第2実施例ではサーバ装置20が飛行開始の指示を行ったが、これに限らない。例えば第2実施例でも防災ドローン10が自機に対して飛行開始の指示を行ってもよい。また、装置ではなく、オペレータ等の人が防災ドローン10又はサーバ装置20を操作して飛行開始を指示してもよい。
【0130】
例えば、消防署の消防員が、火事のポイントと影響するエリア及び災害の原因となる事象(火事)を示す情報をスマートフォン等の通信端末を用いてサーバ装置20に送信し、飛行開始を指示してもよい。又、雪山で雪崩が起きた時に、消防員が、雪崩の影響が出るエリア及び災害の原因となる事象(雪崩)を示す情報をスマートフォン等の通信端末を用いてサーバ装置20に送信し、飛行開始を指示してもよい。
【0131】
[3−6]飛行経路の生成
第2実施例では、サーバ装置20の飛行経路生成部202が飛行経路を予め生成しておいたが、これに限らず、例えば防災情報が取得されてから飛行経路生成部202がリアルタイムに飛行経路を生成してもよい。そうすることで、最新のドローン登録情報と最新のハザードマップに基づく飛行経路を生成することができる。また、防災ドローンが飛行経路生成部202及びハザードマップ記憶部203を備え、ハザードマップが表す被害予測地域に基づいて飛行経路を生成してもよい。
【0132】
また、第2実施例では、ハザードマップに表された被害予測地域が用いられたが、これに限らない。例えば防災情報が示す被害予測地域は、災害の原因となる事象の規模によって範囲が異なる場合がある(例えば被害予測地域に含まれる地区の数が異なる等)。予めあらゆる規模の災害を想定して飛行経路を生成しておいてもよいが、それでも想定外の規模の災害が発生する可能性がある。
【0133】
そこで、飛行経路生成部202は、取得された防災情報が示す被害予測地域を特定し、配置位置から特定した被害予測地域までの距離が最長航続距離の所定の割合未満となる防災ドローンを抽出する。飛行経路生成部202は、あとは第2実施例で述べた方法で飛行経路を生成する。こうして飛行経路生成部202は、抽出した防災ドローンの飛行経路として、特定した被害予測地域を飛行する飛行経路を生成する。
【0134】
このように、飛行経路生成部202は、第2実施例では防災ドローンごとに飛行経路を生成したが、本実施例では、防災情報が示す被害予測地域ごとにリアルタイムに飛行経路を生成する。これにより、災害の規模及び場所に合わせた飛行経路が生成されるので、予め用意された飛行経路だけを用いる場合に比べて、より避難が必要な地域において災害に関する報知を行うことができる。
【0135】
[3−7]飛行経路の生成方法
飛行経路の生成方法は上述した方法に限らない。飛行経路生成部202は、例えば、ビックデータから現在の時刻に人がいる場所を特定し、特定した場所を通る飛行経路を生成してもよい。また、飛行経路生成部202は、住民基本台帳に記載された居住場所を地図に反映させた地図データから被害予測地域に含まれる居住場所を特定し、特定した居住場所を通る飛行経路を生成してもよい。
【0136】
また、飛行経路生成部202は、住宅等の建物の位置を示す地図データから被害予測地域に含まれる建物を特定し、特定した建物の位置を通る飛行経路を生成してもよい。また、飛行経路生成部202は、航空写真の地図データから建物を推定し、推定した建物の位置を通る飛行経路を生成してもよい。また、飛行経路生成部202は、避難所の場所、公共の建物、公園、レジャースポットの位置を記憶しておき、被害予測地域に含まれるそれらの位置を通る飛行経路を生成してもよい。
【0137】
また、飛行経路生成部202は、地方公共団体が町内会から集めた情報として、一人暮らし世帯の位置を示す地図データから被害予測地域に含まれるそれらの世帯の位置を特定し、特定した世帯の位置を通る飛行経路を生成してもよい。また、飛行経路生成部202は、防災無線の音が届かない区域を示すデータから被害予測地域に含まれるそれらの区域を特定し、特定した区域を通る飛行経路を生成してもよい。
【0138】
また、飛行経路生成部202は、航空法で飛行禁止となっている飛行禁止区域(空港付近等)を示すデータから被害予測地域に含まれる飛行禁止区域を特定し、特定した飛行禁止区域を通らない飛行経路を生成してもよい。また、飛行経路生成部202は、飛行経路が飛行禁止になる時間帯を示すデータから現在時刻が飛行禁止であるか否かを判断し、飛行禁止であると判断した場合はその飛行禁止区域を通らない飛行経路を生成し、飛行禁止でないと判断した場合はその飛行禁止区域を通る飛行経路を生成する。
【0139】
また、飛行経路生成部202は、報知部122及び位置測定部113から報知済みの位置を示す報知状況を(情報通信部を介して)取得し、防災情報取得部101により新たに防災情報が取得された場合に、取得された報知状況が示す報知済みの位置を通る飛行経路を生成してもよい。
【0140】
また、飛行経路生成部202は、防災ドローンによる報知が済んでいる飛行経路のうち、報知済みの防災情報(報知の元になった防災情報)と新たな防災情報の内容が変わらない場所がある場合は、その場所を省いた空域を範囲とする条件で飛行経路を新たに生成してもよい。また、飛行経路生成部202は、上述した飛行経路の生成方法で用いた各情報を組み合わせて用いて飛行経路を生成してもよい。
【0141】
[3−8]区域メッセージDB
災害の原因となる事象の規模及び組合せによって避難場所が異なる場合がある。そこで、報知データ記憶部123は、例えば、災害の原因となる事象の規模及び組合せと避難場所とメッセージとを対応付けた区域メッセージDB125を記憶してもよい。
【0142】
図16は本変形例の区域メッセージDB125に格納されているある場所での情報の一例を表す。
図16の例では、「地震(震度6未満)」、「地震(震度6以上)」という災害の原因となる事象に対して、「一時避難場所」、「広域避難場所」という避難場所と、「学校・公園・公民館が一時避難場所になっています。」、「学校C1が広域避難場所になっています。」というメッセージが対応付けられている。
【0143】
また、「津波(1m未満)」、「津波(1m以上)」という災害の原因となる事象に対して、「なし」、「高台・津波避難施設」という避難場所と、「海岸に近づかないでください。」、「M2山、津波避難施設C2又は近くの高台に避難してください。」というメッセージが対応付けられている。また、「地震(震度6以上)・津波(1m以上)」という災害の原因となる事象の組合せに対しては、津波避難施設C2が震度6以上には耐えられない設計であり地震により破損している可能性があるので、「高台」という避難場所と、「M2山又は近くの高台に避難してください。」というメッセージが対応付けられている。
【0144】
報知データ取得部121は、取得された防災情報が示す災害の原因となる事象及びその規模に対応付けて記憶されているメッセージを取得する。これにより、災害の原因となる事象の規模及び組合せに合った避難場所に関するメッセージを報知することができる。なお、例えば「地震(震度6未満)」と「津波(1m以上)」というように組合せが規定されていない事象が共に発生した場合には、各事象に予め優先度を定めておき、報知データ取得部121が、優先度が高い方の事象に対応付けて記憶されているメッセージを取得する。
【0145】
また、上記変形例で述べた飛行経路の生成方法に追加して、飛行経路生成部202が、災害の原因となる事象の規模及び組合せに応じて決まる避難場所を通る飛行経路を生成してもよい。これにより、災害の原因となる事象の規模及び組合せに合った避難場所の近くで防災ドローンを飛行させながら、その避難場所への避難を呼びかけるメッセージを報知することができる。
【0146】
[3−9]飛行距離
飛行経路生成部202は、帰投までの飛行距離を踏まえて飛行経路を生成してもよい。例えば、飛行経路生成部202は、上記の複数の生成方法のそれぞれで飛行経路を生成した場合に最も飛行距離が短くなる飛行経路を選択して生成する。また、本変形例では、防災ドローンが人・車両検知部105及び情報通信部100を備え、サーバ装置20が飛行経路生成部202等を備えているものとする。
【0147】
上記の変形例では、
図13に表す人・車両検知部105が人又は車両の場所を検知したが検知された対象の場所までの往復距離が自機の最長航続距離と飛行経路との差分よりも短い場合、上記変形例では、バッテリーが足りなくなる恐れがあるので臨時飛行経路を飛行しなかった。本変形例では、その場合に、飛行制御部111が臨時飛行経路を飛行する飛行制御を行い、情報通信部100が飛行経路及び現在位置と、残りの飛行経路を他の防災ドローンに飛行してもらう要求とを示す要求データをサーバ装置20に送信する。
【0148】
サーバ装置20の飛行経路生成部202は、この要求データを受信すると、登録情報記憶部201に記憶されている登録情報が示す防災ドローンの配置位置から残りの飛行経路を飛行可能な防災ドローンがあるか否かを判断する。飛行経路生成部202は、飛行可能な防災ドローンがあり、その防災ドローンに対して飛行開始指示部104から飛行開始指示が出ていない場合に、その防災ドローンの配置位置を出発地点及び到着地点として前述した残りの飛行経路を含む飛行経路を生成する。
【0149】
こうして生成された飛行経路で防災ドローンが飛行することで、先に飛行していた防災ドローンが検知された場所にいる人に対して災害に関する報知を行うことができるし、さらにその防災ドローンが行う予定であった残りの飛行経路における報知も別の防災ドローンによって行うことができる。
【0150】
[3−10]飛行速度及び飛行高度
飛行制御部111は、飛行経路上の各区域について定められた飛行速度及び飛行高度(地上からの高さ)でその区域を飛行してもよい。例えば人が大勢いる区域、音の伝達性が低い区域又は上空の見通しが低い区域(住宅密集区域等)では飛行速度を遅くし、且つ、飛行高度を低くして、報知内容が区域内の人々に伝達しやすいようにする。なお、飛行高度は低くし過ぎると障害物に衝突する恐れがあるので、区域毎に最低飛行高度を定めておき、それよりも低くは飛行しないようにしてもよい。
【0151】
一方、人が少ない区域、音の伝達性が高い区域又は上空の見通しが高い区域(海岸沿い等)では飛行高度を高くして報知内容が離れた人にも伝達するようにしつつ、飛行速度を速くして次の区域での報知を早く行うようにする。なお、飛行速度及び飛行高度については、飛行経路生成部202が飛行経路を生成する際に定めてもよい。その場合、飛行経路生成部202は、飛行経路を生成すると共に飛行経路上の各区域における飛行速度及び飛行高度を定め、それらの飛行経路、飛行速度及び飛行高度を示す経路情報を飛行経路記憶部103に記憶させる。
【0152】
飛行経路生成部202は、例えば地形及び建物等の情報を含む地図データを記憶しておき、地形及び建物の密集度等から人の密集度、音の伝達性又は上空の見通しを判定する。例えば住宅地及び街中だと人の密集度が高く、音の伝達性及び上空の見通しが低い(建物が密集するほどこの傾向が高まる)。海岸沿いだと人の密集度が低く、音の伝達性及び上空の見通しが高い。一方、山及び森等だと人の密集度、音の伝達性及び上空の見通しのいずれも低い、と言う具合である。
【0153】
飛行経路生成部202は、さらに、飛行高度、その場所での音の伝達性(地形、建物の密集度、住宅地、街中)と、音がどの距離まで伝達できるかの関係とを表すデータテーブルを記憶している。飛行経路生成部202は、このテーブルを用いて、報知ポイントでの音の伝達性を考慮した飛行ルートの生成を行うことにより、音の伝達性が高い区域ほど速い飛行速度及び高い飛行高度を定める。
【0154】
こうして飛行経路生成部202が飛行速度及び飛行高度を定めることで、想定されていなかった飛行経路が生成された場合でも、上記のとおり報知内容が伝達しやすく、報知内容が離れた人にも伝達し、又は、次の区域の報知が早く行われる飛行速度及び飛行高度で防災ドローンを飛行させることができる。
【0155】
[3−11]飛行体
実施例では、自律飛行を行う飛行体として回転翼機型の飛行体が用いられたが、これに限らない。例えば飛行機型の飛行体であってもよいし、ヘリコプター型の飛行体であってもよい。また、自律飛行の機能も必須ではなく、割り当てられた飛行空域を割り当てられた飛行許可期間に飛行することができるのであれば、例えば遠隔から操縦者によって操作されるラジオコントロール型(無線操縦型)の飛行体が用いられてもよい。
【0156】
[3−12]各部を実現する装置
図3及び
図10に表す各機能を実現する装置がそれらの図とは異なっていてもよい。例えば防災ドローン10が備える防災情報取得部101を外部装置が備えていて、その外部装置が取得した防災情報を防災ドローン10が取得してもよい。この場合の防災ドローン10は、防災行政無線を受信する機能を有していなくてもよく、この外部装置と通信する機能だけを有していればよい。また、
図10に表す防災システムにおいては、サーバ装置20が備える各機能を2以上の装置がそれぞれ実現してもよい。要するに、防災システム全体として
図10に表す機能が実現されていれば、防災システムが何台の装置を備えていてもよい。
【0157】
[3−13]発明のカテゴリ
本発明は、サーバ装置と、防災ドローン10という飛行体の他、それらの装置及び飛行体を備える防災システムのような情報処理システムとしても捉えられる。また、本発明は、各装置が実施する処理を実現するための情報処理方法としても捉えられるし、各装置を制御するコンピュータを機能させるためのプログラムとしても捉えられる。このプログラムは、それを記憶させた光ディスク等の記録媒体の形態で提供されてもよいし、インターネット等のネットワークを介してコンピュータにダウンロードさせ、それをインストールして利用可能にするなどの形態で提供されてもよい。
【0158】
[3−14]処理手順等
本明細書で説明した各実施例の処理手順、シーケンス、フローチャートなどは、矛盾がない限り、順序を入れ替えてもよい。例えば、本明細書で説明した方法については、例示的な順序で様々なステップの要素を提示しており、提示した特定の順序に限定されない。
【0159】
[3−15]入出力された情報等の扱い
入出力された情報等は特定の場所(例えばメモリ)に保存されてもよいし、管理テーブルで管理してもよい。入出力される情報等は、上書き、更新、又は追記され得る。出力された情報等は削除されてもよい。入力された情報等は他の装置へ送信されてもよい。
【0160】
[3−16]ソフトウェア
ソフトウェアは、ソフトウェア、ファームウェア、ミドルウェア、マイクロコード、ハードウェア記述言語と呼ばれるか、他の名称で呼ばれるかを問わず、命令、命令セット、コード、コードセグメント、プログラムコード、プログラム、サブプログラム、ソフトウェアモジュール、アプリケーション、ソフトウェアアプリケーション、ソフトウェアパッケージ、ルーチン、サブルーチン、オブジェクト、実行可能ファイル、実行スレッド、手順、機能などを意味するよう広く解釈されるべきである。
【0161】
また、ソフトウェア、命令などは、伝送媒体を介して送受信されてもよい。例えば、ソフトウェアが、同軸ケーブル、光ファイバケーブル、ツイストペア及びデジタル加入者回線(DSL)などの有線技術及び/又は赤外線、無線及びマイクロ波などの無線技術を使用してウェブサイト、サーバ、又は他のリモートソースから送信される場合、これらの有線技術及び/又は無線技術は、伝送媒体の定義内に含まれる。
【0162】
[3−17]情報、信号
本明細書で説明した情報、信号などは、様々な異なる技術のいずれかを使用して表されてもよい。例えば、上記の説明全体に渡って言及され得るデータ、命令、コマンド、情報、信号、ビット、シンボル、チップなどは、電圧、電流、電磁波、磁界若しくは磁性粒子、光場若しくは光子、又はこれらの任意の組み合わせによって表されてもよい。
【0163】
[3−18]システム、ネットワーク
本明細書で使用する「システム」及び「ネットワーク」という用語は、互換的に使用される。
【0164】
[3−19]「に基づいて」の意味
本明細書で使用する「に基づいて」という記載は、別段に明記されていない限り、「のみに基づいて」を意味しない。言い換えれば、「に基づいて」という記載は、「のみに基づいて」と「に少なくとも基づいて」の両方を意味する。
【0165】
[3−20]「及び」、「又は」
本明細書において、「A及びB」でも「A又はB」でも実施可能な構成については、一方の表現で記載された構成を、他方の表現で記載された構成として用いてもよい。例えば「A及びB」と記載されている場合、他の記載との不整合が生じず実施可能であれば、「A又はB」として用いてもよい。
【0166】
[3−21]態様のバリエーション等
本明細書で説明した各実施例は単独で用いてもよいし、組み合わせて用いてもよいし、実行に伴って切り替えて用いてもよい。また、所定の情報の通知(例えば、「Xであること」の通知)は、明示的に行うものに限られず、暗黙的(例えば、当該所定の情報の通知を行わない)ことによって行われてもよい。
【0167】
以上、本発明について詳細に説明したが、当業者にとっては、本発明が本明細書中に説明した実施例に限定されるものではないということは明らかである。本発明は、特許請求の範囲の記載により定まる本発明の趣旨及び範囲を逸脱することなく修正及び変更態様として実施することができる。従って、本明細書の記載は、例示説明を目的とするものであり、本発明に対して何ら制限的な意味を有するものではない。