(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記運搬及び帰還ステップでは、前記編成の車両を、複数編成、前記発進基地と前記作業場所との間に、すれ違い可能として、走行させることを特徴とする、請求項1記載の工事用運搬車両の運行方法。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、発進基地と作業場所との間の経路(坑道)には、急勾配の箇所もあり、1台の駆動車では、運搬に時間がかかったり、運搬量が制限されたり、運行自体が困難となる場合もある。
【0005】
そこで、少なくとも1台(通常は複数台)の台車に2台の駆動車を連結してなる編成の車両(列車)で、運搬を行うことが考えられた。
【0006】
本発明は、このような実状に鑑み、1編成に2台の駆動車を用いることで、運搬及び帰還のスピードアップ(運搬及び帰還時間の短縮)等を図る一方、2台の駆動車を用いる場合に、最適な運行方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係る工事用運搬車両の運行方法は、次の(1)〜(5)のステップを含む。
(1)資材運搬用の少なくとも1台の台車の前後に2台の駆動車を連結してなる編成の車両で、一方の駆動車を先頭にして、発進基地から作業場所へ、資材を運搬すると共に、他方の駆動車を先頭にして、発進基地側へ帰還する、運搬及び帰還ステップ
(2)前記運搬及び帰還ステップ中に、発進基地側の積込み位置にて、少なくとも1台の別の台車に資材を積込む、積込みステップ
(3)前記帰還した台車から1台の駆動車を切り離して、前記積込み位置にて資材の積込みを終えた積込済みの台車の先頭側に連結する、第1の発進準備ステップ
(4)前記積込済みの台車と前記帰還した台車とをそれぞれ1台の駆動車により牽引又は押動して、前記積込済みの台車を発進位置へ、前記帰還した台車を前記積込み位置へ移動させる、第2の発進準備ステップ
(5)前記積込み位置へ移動させた前記帰還した台車からもう1台の駆動車を切り離して、前記発進位置へ移動させた前記積込済みの台車の後尾側に連結し、前記積込済みの台車を2台の駆動車により発進可能とする、第3の発進準備ステップ
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、発進基地と作業場所との間を走行(長距離走行)するときは、前後2台の駆動車により牽引及び押動して、運搬及び帰還のスピードアップ(運搬及び帰還時間の短縮)、運搬量の増大などを図ることができる。
また、運搬及び帰還中に、別の台車への積込み作業を行っていて、発進基地に戻ったときは、帰還した空の台車と積込済みの台車とを入れ替えて、速やかに再発進できるので、積込み時間の分、運搬のサイクルタイムを短縮することができる。
また、発進基地での帰還した空の台車と積込済みの台車との入れ替えは、高速走行が要求されないことから、それぞれの台車を各1台の駆動車より牽引又は押動して行うので、最小数の駆動車で、したがって小スペースで、効率良く実施可能となる。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の実施の形態について、詳細に説明する。
図1は本発明の一実施形態を示す工事用運搬車両の走行経路の概略図、
図2は工事用運搬車両の編成例を示す図である。
【0011】
本実施形態の工事用運搬車両1は、シールドトンネル工事用運搬車両であり、立坑を含む発進基地100と切羽近くの作業場所120との間を、坑道110内に敷設した一対のレールからなる軌道Rに沿って走行し、主にシールドトンネル工事用の資材であるセグメント(
図2のS)の搬入を行う。すなわち、発進基地100にてセグメントを積込んで、作業場所120まで走行し、荷卸しを行う。
【0012】
この工事用運搬車両1は、
図2に示すように、セグメント運搬用の少なくとも1台(通常は複数台、図では2台)の台車Cの前後に2台の駆動車A、Bを連結してなる編成の車両(列車)である。
【0013】
2台の駆動車A、Bは互いに同一構造であり、代表して、駆動車Aについて説明する。
駆動車Aは、前後いずれの方向にも走行できるように、前後対称で、前後方向中央に運転席11を有している。
駆動車Aはまた、例えばディーゼルエンジンを駆動源とする発電機(図示せず)から供給される電力で作動する自走用のモータ12を有し、このモータ12により車輪(軌道輪)13を駆動してレール上を走行する。
駆動車Aはまた、モータ12による車輪13の回転方向を切換可能に構成されていて、これにより、前後を入れ替えることなく、走行方向の切換えが可能である。
駆動車Aはまた、前後に連結器(符号なし)を有し、前後いずれの方向にも台車Cを連結可能である。
尚、運転手は、2台の駆動車A、Bのうち、少なくとも走行方向先頭側の駆動車の運転席11に搭乗する。
【0014】
台車Cは、シールドトンネル工事用の資材であるセグメントSを積載して運搬するもので、駆動車A、Bにより牽引及び押動される。
従って、駆動車A、Bは、走行方向先頭側のときに、台車Cを牽引し、走行方向後尾側のときに、台車Cを押動(後押し)することができる。
【0015】
また、本実施形態での工事用運搬車両1の運行にあたっては、少なくとも1台の台車Cの前後に2台の駆動車A、Bを連結してなる編成の車両1とは別に、
図2に示されているように、少なくとも1台(図では2台)の台車Dが用いられる。台車Dは台車Cと同一構造である。台車Cをセグメントの運搬に用いているとき、台車Dは、次の運搬のためセグメントの積込み位置に待機している。
【0016】
次に発進基地100の構成について
図1により説明する。
本実施形態では、発進基地100側に、積込み位置101と、発進位置102と、帰還位置103とが設定される。
【0017】
積込み位置101は、発進基地100内の奥部の軌道Rの始端部付近に設定される。積込み位置101の上方は立坑とつながっている。そして、積込み位置101上方の立坑には、地上側からセグメントを供給するエレベータ(セグメントリフト)が設けられ、積込み位置の台車Dにセグメントを積込み可能となっている。
【0018】
発進位置102及び帰還位置103は、発進基地100内の積込み位置101の前方(切羽側の前方)にて、軌道Rを並列に分岐させることで、並列に設けられる。
具体的には、発進基地100内の、積込み位置101の軌道は、その前方(切羽側の前方)にて、並列な2つの軌道、すなわち発進位置102側の軌道と、帰還位置103側の軌道とに分岐している。そして、発進位置102側の軌道と帰還位置103側の軌道とは、発進基地100の出口側で、1本の軌道に合流している。
【0019】
従って、発進位置102側の軌道から発進して、作業場所120へ走行できると共に、作業場所120側から発進基地100へ帰還する際に、帰還位置103側の軌道へ進入することができる。
また、帰還位置103側の軌道から積込み位置101側の軌道へ進入可能であると共に、積込み位置101側の軌道から発進位置102側の軌道へ進入可能である。
【0020】
次に、1編成に2台の駆動車を用いた場合の運行方法について、
図3により説明する。
図3の運行例では、
図2に示したように、2台の台車Cの前後に2台の駆動車A、Bを連結してなる編成の車両1と、この車両1の運搬及び帰還中に積込みを行う、別の2台の台車Dとが用いられる。
【0021】
図3(a)では、2台のセグメント積込済みの台車Cの前後に2台の駆動車A、Bを連結してなる編成の車両1により、先頭側の駆動車Aにより牽引、後尾側の駆動車Bにより押動して、発進基地100から作業場所120へ、セグメントを運搬する。
【0022】
図3(b)では、前記車両1の作業場所120への到着後に、セグメントの荷卸しを行う。
【0023】
図3(c)では、前記荷卸し後に、走行方向のみを切換えて、駆動車Bを先頭側、駆動車Aを後尾側にし、駆動車Bにより牽引、駆動車Aにより押動して、作業場所120から発進基地100へ帰還する。このときは発進基地100の帰還位置103へ向かう。このとき、台車Cは、荷卸し後であるので、基本的に空の台車である。但し、帰還する台車Cに作業場所120にて不要となった資材(機材を含む)を積込んで、発進基地100側へ運搬するために用いてもよい。
【0024】
その一方、
図3(a)〜(c)の運搬及び帰還ステップと並行して、発進基地100側の積込み位置101にて、別の空の台車Dへのセグメントの積込みがなされる。従って、運搬及び帰還ステップと積込みステップとは並行してなされる。
【0025】
図3(d)では、前記車両1が発進基地100の帰還位置103に帰還する。このときには、積込み位置101での別の台車Dへのセグメントの積込みが終了していて、積込み位置101に積込済みの台車Dが待機している。
【0026】
次いで、
図3(e)〜(h)に示されるように、再発進の準備(車両の再編成)が行われる。
図3(e)では、帰還した台車Cから帰還時の先頭側の1台の駆動車Bを切り離して、積込み位置101の積込済みの台車Dの先頭側に連結する(第1の発進準備ステップ)。
言い換えれば、帰還位置103に帰還した台車Cから切り離した1台の駆動車Bを、帰還位置103から積込み位置101へ移動させ、積込済みの台車Dの先頭側に連結する。
これにより、帰還した台車(空の台車)Cは駆動車Aにより、積込済みの台車Dは駆動車Bにより、それぞれ移動可能となる。
【0027】
図3(f)、(g)では、積込済みの台車Dと帰還した台車Cとをそれぞれ1台の駆動車により牽引又は押動して、積込済みの台車Dを発進位置102へ、帰還した台車Cを積込み位置101へ移動させる(第2の発進準備ステップ)。
詳しくは、先ず、
図3(f)のように、積込済みの台車Dを駆動車Bにより牽引して、積込み位置101から発進位置102へ移動させる。
次いで、
図3(g)のように、帰還した台車Cを駆動車Aにより押動して、帰還位置103から積込み位置101へ移動させる。
【0028】
図3(h)では、積込み位置101へ移動させた帰還した台車Cからもう1台の駆動車Aを切り離して、発進位置102へ移動させた積込済みの台車Dの後尾側に連結し、積込済みの台車Dを2台の駆動車B、Aにより発進可能とする(第3の発進準備ステップ)。
言い換えれば、積込み位置101へ移動させた帰還した台車Cから切り離したもう1台の駆動車Aを、積込み位置101から発進位置102へ移動させて、積込済みの台車Dの後尾側に連結する。
これにより、発進位置102に移動させた積込済みの台車Dの前後に2台の駆動車B、Aが連結され、工事用運搬車両1が再編成されて、発進可能となる。
【0029】
図3(i)では、積込済みの台車Dの前後に2台の駆動車B、Aを連結してなる編成の車両1により、先頭側の駆動車Bにより牽引、後尾側の駆動車Aにより押動して、発進基地100から作業場所120へ、セグメントを運搬する。これは、
図3(a)に対し、駆動車AとBの前後が入れ替わっただけである。そして、かかる運搬中に、積込み位置101の帰還した台車(空の台車C)に対するセグメントの積込みが開始される。
【0030】
従って、本実施形態によれば、発進基地100と作業場所120との間を走行(長距離走行)するときは、前後2台の駆動車A、Bにより台車Cを牽引及び押動して、運搬及び帰還のスピードアップ(運搬及び帰還時間の短縮)、運搬量の増大などを図ることができる。また、走行方向先頭側に常に駆動車があり、先頭車に運転手を配置できるため、前方を確認しながら走行でき、安全運行という点でも利点がある。
【0031】
また、本実施形態によれば、運搬及び帰還中に、別の台車Dへの積込み作業を行っていて、発進基地100に戻ったときは、帰還した空の台車Cと積込済みの台車Dとを入れ替えて、速やかに発進できるので、積込み時間の分、運搬のサイクルタイムを短縮することができる。
【0032】
また、本実施形態によれば、発進基地100での帰還した空の台車Cと積込済みの台車Dとの入れ替えは、高速走行が要求されないことから、それぞれの台車を各1台の駆動車より牽引又は押動して行うので、最小数の駆動車で、したがって小スペースで、効率良く実施可能となる。
【0033】
次に複数編成の車両で実施する場合について
図4及び
図5により説明する。
図4はその場合の編成例を示す図、
図5はその場合の運行方法の説明図である。
【0034】
図2の編成例では、少なくとも1台の台車Cと2台の駆動車A、Bとからなる1編成の車両1を用い、更に、この車両1の走行中に発進基地にて積込みを行うため、別の台車Dを用いている。
これに対し、
図4の編成例では、少なくとも1台の台車Cと2台の駆動車A、Bとからなる編成の車両1と、少なくとも1台の台車Eと2台の駆動車A、Bとからなる編成の車両2とを用い、これら2編成の車両1、2を発進基地100と作業場所120との間を走行させる。そして更に、これらの車両1、2の走行中に発進基地にて積込みを行うため、別の台車Dを用いている。
【0035】
図5の運行例では、駆動車A、Bと台車Cとからなる編成の車両1の作業場所120への運搬中に、駆動車A、Bと台車Eとからなる編成の車両2が発進基地100へ向かって帰還する。
【0036】
但し、2編成の車両1、2を用いる場合には、発進基地100と作業場所120との間で、車両1、2をすれ違い可能とする必要がある。すれ違い可能とする方法としては、軌道Rの複線化、あるいは、分岐ラインによるすれ違いポイントの設定などを挙げることができる。
【0037】
図5の運行例では、車両1と車両2が、坑道110の途中に設けた分岐ライン(すれ違いポイント)ですれ違うようにしている。
【0038】
図5の運行例の場合、車両2(台車E)が帰還すると、空の台車Eと積込済みの台車Dとを入れ替えて、発進する一方、台車Eへの積込みを行う。
次に車両1(台車C)が帰還すると、空の台車Cと積込済みの台車Eとを入れ替えて、発進する一方、台車Cへの積込みを行う。
このように、2編成の車両1、2を用いることで、全体での運搬量を増大させることができる。
【0039】
2編成以上のn編成の車両で実施することも可能である。この場合、全体で、駆動車は、2×n台、台車は、n+1編成あることが好ましい。本実施形態では、台車C〜Eは2台の台車の編成としたが、2台に限らず、1台以上であればよい。また、各編成で駆動車の数は同じ(2台)であるが、台車の数は異ならせてもよい。
【0040】
尚、図示の実施形態はあくまで本発明を例示するものであり、本発明は、説明した実施形態により直接的に示されるものに加え、特許請求の範囲内で当業者によりなされる各種の改良・変更を包含するものであることは言うまでもない。
例えば、上記の実施形態では、車両は軌道上を走行するものとしたが、タイヤ車輪により路面上を走行するものであってもよく、この場合も旋回スペースを設けることなく実施できる。