特許第6903577号(P6903577)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6903577皮膚におけるc−Jun N末端キナーゼの阻害の測定方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6903577
(24)【登録日】2021年6月25日
(45)【発行日】2021年7月14日
(54)【発明の名称】皮膚におけるc−Jun N末端キナーゼの阻害の測定方法
(51)【国際特許分類】
   G01N 33/53 20060101AFI20210701BHJP
   A61K 31/505 20060101ALI20210701BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20210701BHJP
   A61P 1/16 20060101ALI20210701BHJP
   A61P 3/06 20060101ALI20210701BHJP
   A61P 11/00 20060101ALI20210701BHJP
   A61P 35/00 20060101ALI20210701BHJP
   A61P 31/04 20060101ALI20210701BHJP
   A61P 37/06 20060101ALI20210701BHJP
   A61P 25/32 20060101ALI20210701BHJP
   A61P 29/00 20060101ALI20210701BHJP
【FI】
   G01N33/53 Y
   A61K31/505
   A61P43/00 111
   A61P1/16
   A61P3/06
   A61P11/00
   A61P35/00
   A61P31/04
   A61P37/06
   A61P25/32
   A61P29/00
【請求項の数】14
【全頁数】37
(21)【出願番号】特願2017-532050(P2017-532050)
(86)(22)【出願日】2015年12月15日
(65)【公表番号】特表2018-500560(P2018-500560A)
(43)【公表日】2018年1月11日
(86)【国際出願番号】US2015065767
(87)【国際公開番号】WO2016100308
(87)【国際公開日】20160623
【審査請求日】2018年11月30日
(31)【優先権主張番号】62/092,531
(32)【優先日】2014年12月16日
(33)【優先権主張国】US
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】504135550
【氏名又は名称】シグナル ファーマシューティカルズ,エルエルシー
(74)【代理人】
【識別番号】100097456
【弁理士】
【氏名又は名称】石川 徹
(72)【発明者】
【氏名】ゲラルド スコット バーデン ホラン
(72)【発明者】
【氏名】イング イエ
【審査官】 北条 弥作子
(56)【参考文献】
【文献】 米国特許出願公開第2012/0129807(US,A1)
【文献】 特表2014−514322(JP,A)
【文献】 特表2012−517439(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 33/48〜33/98
A61K 31/33〜33/44
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
患者におけるJNKの阻害の評価方法であって、前記患者の皮膚の第1部分をUVB照射に曝露すること、前記患者の皮膚の前記第1部分から得られたサンプルを使用して、前記患者の皮膚の前記第1部分におけるリン酸化c−Junの量を測定すること、2−(tert−ブチルアミノ)−4−((1R,3R,4R)−3−ヒドロキシ−4−メチルシクロヘキシルアミノ)−ピリミジン−5−カルボキサミドまたは薬学的に許容可能なその立体異性体、互変異性体、固体形態、多形体、塩、水和物、クラスレート、もしくは溶媒和物が前記患者に投与された後に、前記患者の皮膚の第2部分をUVB照射に曝露すること、前記患者の皮膚の前記第2部分から得られたサンプルを使用して、前記患者の皮膚の前記第2部分におけるリン酸化c−Junの量を測定すること、ならびに前記患者の皮膚の前記第1部分におけるリン酸化c−Junのレベルと前記患者の皮膚の前記第2部分におけるリン酸化c−Junのレベルとを比較することによって、患者におけるJNKの阻害を測定することを含み、前記患者の皮膚の前記第1部分と比較した前記患者の皮膚の前記第2部分におけるリン酸化c−Junのレベルの減少が、JNKの阻害を示す、前記方法。
【請求項2】
前記皮膚を最小紅斑量(MED)の2倍のUVB照射に曝露する、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
2−(tert−ブチルアミノ)−4−((1R,3R,4R)−3−ヒドロキシ−4−メチルシクロヘキシルアミノ)−ピリミジン−5−カルボキサミドまたは薬学的に許容可能なその立体異性体、互変異性体、固体形態、多形体、塩、水和物、クラスレート、もしくは溶媒和物の投与の約2時間後に、UVB照射への皮膚の第2部分の曝露を行う、請求項に記載の方法。
【請求項4】
UVB照射に曝露する皮膚の部分が患者の臀部にある、請求項に記載の方法。
【請求項5】
前記第2の照射した皮膚のサンプルが、UVB照射への皮膚の第2部分の曝露の約8時間後に得られたサンプルである、請求項に記載の方法。
【請求項6】
前記皮膚におけるリン酸化c−Junの量の測定が免疫組織化学分析を含み、一次抗体が前記リン酸化c−Junに対するものであって抗体/リン酸化c−Jun複合体を形成し、発色酵素と結合した二次抗体とのインキュベーションにより着色して前記皮膚における前記一次抗体/リン酸化c−Jun複合体の場所を標示する、請求項に記載の方法。
【請求項7】
前記着色標示の主観的スコアリングまたはレーザー走査型サイトメーターを用いた定量分析をさらに含む、請求項に記載の方法。
【請求項8】
患者におけるJNKの阻害の評価方法であって、
1)UVB照射で照射した患者の皮膚の第1部分から得た第1皮膚サンプルにおけるリン酸化c−Junの量を測定すること、
2)2−(tert−ブチルアミノ)−4−((1R,3R,4R)−3−ヒドロキシ−4−メチルシクロヘキシルアミノ)−ピリミジン−5−カルボキサミドまたは薬学的に許容可能なその立体異性体、互変異性体、固体形態、多形体、塩、水和物、クラスレート、もしくは溶媒和物が前記患者に投与された後、UVB照射で照射した患者の皮膚の第2部分から得た第2皮膚サンプルにおけるリン酸化c−Junの量を測定すること、ならびに
3)前記第1皮膚サンプルにおけるリン酸化c−Junのレベルと前記第2皮膚サンプルにおけるリン酸化c−Junのレベルとを比較すること、
を含み、前記第1皮膚サンプルに対する前記第2皮膚サンプルにおけるリン酸化c−Junのレベルの減少が、JNKの阻害を示す、前記方法。
【請求項9】
前記皮膚サンプルの前記皮膚が最小紅斑量(MED)の2倍のUVB照射に曝露されている、請求項に記載の方法。
【請求項10】
前記第2皮膚サンプルの前記皮膚が、2−(tert−ブチルアミノ)−4−((1R,3R,4R)−3−ヒドロキシ−4−メチルシクロヘキシルアミノ)−ピリミジン−5−カルボキサミドまたは薬学的に許容可能なその立体異性体、互変異性体、固体形態、多形体、塩、水和物、クラスレート、もしくは溶媒和物の投与の約2時間後にUVB照射で照射されている、請求項8または9に記載の方法。
【請求項11】
前記皮膚サンプルが前記患者の臀部のUVB照射で照射した皮膚の部分から得られた、請求項8〜10のいずれかに記載の方法。
【請求項12】
前記第2皮膚サンプルが前記皮膚のUVB照射への曝露の約8時間後に得られる、請求項8〜11のいずれかに記載の方法。
【請求項13】
皮膚サンプルにおけるリン酸化c−Junの量の測定が免疫組織化学分析を含み、一次抗体が前記リン酸化c−Junに対して向けられ、抗体/リン酸化c−Jun複合体を形成し、発色酵素と結合した二次抗体でのインキュベーションにより着色して前記皮膚サンプルにおける前記一次抗体/リン酸化c−Jun複合体の場所を標示する、請求項8〜12のいずれかに記載の方法。
【請求項14】
前記着色標示の主観的スコアリングまたはレーザー走査型サイトメーターを用いた定量分析をさらに含む、請求項13に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は2014年12月16日に出願された米国仮出願第62/092,531号の利益を主張し、その全内容を参照により本明細書に援用する。
【0002】
1.技術分野
本明細書では、免疫組織化学を用いて皮膚におけるc−Jun N末端キナーゼ(JNK)の阻害を測定する方法を提供する。さらに本明細書では、2−(tert−ブチルアミノ)−4−((1R,3R,4R)−3−ヒドロキシ−4−メチルシクロヘキシルアミノ)−ピリミジン−5−カルボキサミドの用量反応関係の評価、ならびに2−(tert−ブチルアミノ)−4−((1R,3R,4R)−3−ヒドロキシ−4−メチルシクロヘキシルアミノ)−ピリミジン−5−カルボキサミドに感受性または非感受性の患者集団の特定及び選別に有用な、UVB照射及びホスホc−Jun(またはリン酸化c−Jun)免疫反応性の測定に基づくアッセイも提供する。
【背景技術】
【0003】
2.背景技術
異常なタンパク質リン酸化と疾患の原因または結果との間の関係が20年間以上知られている。したがって、タンパク質キナーゼが非常に重要な薬剤標的群となっている(Cohen,Nature,1:309−315(2002),Gaestel et al.Curr.Med.Chem.14:2214−223(2007);Grimminger et al.Nat.Rev.Drug Disc.9(12):956−970(2010)を参照)。様々なタンパク質キナーゼインヒビターが、多様な疾患、例えば癌ならびに関節リウマチ及び乾癬をはじめとした慢性炎症性疾患などの治療において臨床的に用いられている(Cohen,Eur.J.Biochem.,268:5001−5010(2001);Protein Kinase Inhibitors for the Treatment of Disease:The Promise and the Problems,Handbook of Experimental Pharmacology,Springer Berlin Heidelberg,167(2005)を参照)。
【0004】
JNKは普遍的に発現されるセリン/スレオニンキナーゼであり、ERK(細胞外調節キナーゼ)及びp38とともに分裂促進因子活性化タンパク質キナーゼ(MAPK)のファミリーに属する。Kyriakis JM,Sci.STKE(48):pe1(2000);Whitmarsh AJ,et al.Sci.STKE(1):pe1(1999);Schramek H,News Physiol.Sci.17:62−7(2002);Ichijo H,Oncogene18(45):6087−93(1999)。MAPKは細胞表面から核へのシグナル伝達の重要な媒介物であり、リン酸化カスケードを用いて、転写因子をはじめとする選択された細胞内タンパク質のリン酸化によって、外部刺激に対して細胞による調和のとれた反応を引き起こす。加えて、JNKは非核タンパク質、例えばIRS−1及びBcl−2ファミリーメンバーもリン酸化する。Davis RJ,Trends Biochem.Sci.9(11):470−473(1994);Seger R et al.,FASEB J.;9(9):726−35(1995);Fanger GR et al.,Curr.Opin.Genet.Dev.;7(1):67−74(1997)。
【0005】
分裂促進因子活性化タンパク質(MAP)キナーゼは細胞外刺激に反応した細胞核へのシグナルの伝達に関与する。ERK、p38及びJNKアイソフォームからのMAPキナーゼの例としては、分裂促進因子活性化タンパク質キナーゼ1(ERK2)、分裂促進因子活性化タンパク質キナーゼ8(JNK1)、分裂促進因子活性化タンパク質キナーゼ9(MAPK9またはJNK2)、分裂促進因子活性化タンパク質キナーゼ10(MAPK10またはJNK3)及び分裂促進因子活性化タンパク質キナーゼ14(MAPK14またはp38α)が挙げられるが、これらに限定されない。MAPキナーゼは、細胞外受容体または熱ショック、浸透圧ストレス、反応性酸化種(ROS)もしくはUV照射からのシグナル伝達を媒介するプロリン指向性セリン/スレオニンキナーゼのファミリーである。Sridhar et al.,Pharmaceutical Research,17:11 1345−1353(2000)を参照。MAPキナーゼは、MKK及びMEKKキナーゼをはじめとする上流の二重特異性タンパク質キナーゼによるセオニン(theonine)及びチロシンのリン酸化を介して活性化される。細胞増殖及び分化は複数のMAPキナーゼカスケードの調節制御下にあることが証明されている。Sridhar et al.,Pharmaceutical Research,17:11 1345−1353(2000)を参照。そのため、MAPキナーゼ経路は多くの病状において重要な役割を果たす。例えば、MAPキナーゼの活性の欠陥が異常細胞増殖及び発癌をもたらすことが証明されている。Hu et al.,Cell Growth Differ.11:191−200(2000);及びDas et al.,Breast Cancer Res.Treat.40:141(1996)を参照。さらに、MAPキナーゼ活性は、2型糖尿病及び肥満に関連するインスリン抵抗性にも関係があるとされている。Virkamaki et al.,J.Clin.Invest.103:931−943(1999)を参照。インスリン抵抗性の変化は肝臓におけるグルコース及び脂質の代謝に対して直接影響を及ぼす場合があり、肝繊維症に進行し得る脂肪症の発症の一因となる。Vallerie et al.Science Translational Medicine 2(60):1−7(2010)を参照。
【0006】
脂肪症は、飽和または不飽和いずれかの遊離脂肪酸(FFA)の存在下で発症し得る。FFAは肝臓における強力なJNK活性化を促進し、過剰な濃度のFFAは肝細胞アポトーシスをもたらし得る。JNK2−/−マウスは、不飽和FFAではなく飽和FFA(例えばステアリン酸)による脂肪症及びアポトーシスから部分的に保護されることが報告されている。Malhi et al.J.Biol.Chem.281:12093−12101(2006)。JNK1−/−マウスはFFA誘発障害から保護されなかった。JNK1及びJNK2の役割は、脂肪症から脂肪肝炎、肝線維症へと進行したCDAA給餌マウスにおいて試験されている。Kodama et al.,Gastroenterology 137:1467−1477(2009)。JNK1−/−及びJNK2−/−マウスの両方とも脂肪症を発症したが、JNK2−/−マウスではなくJNK1−/−マウスは肝炎及び線維症への進行に著しい耐性を示した。JNK1−/−欠失を骨髄細胞に限定したキメラマウスも同様に肝炎及び線維症に耐性があり、活性化されたクッパー細胞を脂肪症の先の疾患進行の主要な引き金として関係しているとされた。実際に、JNK1−/−マクロファージではLPSに反応したIL−1、IL−6、TNF及びNOの発現はなく、JNK1−/−マウスまたはJNKインヒビターSP600125で治療した野生型マウスに由来するクッパー細胞は、LPSに反応するTNF、IL−6及びIL−1発現の減少を示す。Sanchez−Tillo et al.,J Biol Chem.282(17):12566−73(2007);Kodama et al.,Gastroenterology 137:1467−1477(2009))。
【0007】
以前の試験では、特定のインヒビターを用いてまたは用いずにUVB照射に曝露した細胞内のIL−10、TNF−α及びNOのレベルが以前の試験で測定されており、p38 MAPKシグナル伝達経路の活性化を介して、UVBがこれらの炎症誘発性媒介物の産生を誘発したと考えられることを示している。Mutou Y,Tsukimoto M,Homma T,Kojima S,Immune Response Pathways in Human Keratinocyte(HaCat)Cells are Induced by Ultraviolet B via p38 Mitogen−activated Protein Kinase Activation,J.Health Science 2010;56(6):675−83。加えて、ヒト皮膚のUV照射後のc−Junタンパク質及びリン酸化の誘発が報告されている。Fisher G,Talwar H,Lin J,Lin P,McPhillips F,Wang Z,Li X,Wan Y,Kang S,and Voorhees J,Retinoic Acid Inhibits Induction of c−Jun Protein by Ultraviolet Radiation That Occurs Subsequent To Activation Of Mitogen−Activated Protein Kinase Pathways In Human Skin In Vivo,J.Clin Invest.1998;101(6):1432−40及びEinspahr J,Bowden T,Alberts D,McKenzie N,Saboda K,Warneke J,Salasche S,Ranger−Moore J,Lewandrowski C,Nagle R,Nickoloff B,Brooks,C,Dong Z,and Stratton S,Cross−Validation of Murine UV Signal Transduction Pathaways in Human Skin,Photochem.Photobiol.2008;84(2):463−76。
【0008】
薬剤候補の生物学的効果を評価するために臨床マーカーが必要とされている。本明細書に記載の方法は、例えば、JNKインヒビターのインビボ活性に従った、JNKインヒビター、特に経口JNKインヒビターによる治療に対する特定の患者集団の感受性を評価する直接的な手段を提供することなどによって、JNKインヒビターの生物学的効果の評価を可能とし、それゆえに臨床現場において有用である。
【0009】
本出願の第2節における任意の参照文献の引用または指定も、その参照文献が本出願の先行技術であることを認めるものと解釈されるべきではない。
【発明の概要】
【0010】
3.発明の概要
本明細書では、患者における2−(tert−ブチルアミノ)−4−((1R,3R,4R)−3−ヒドロキシ−4−メチルシクロヘキシルアミノ)−ピリミジン−5−カルボキサミドまたは薬学的に許容可能なその立体異性体、互変異性体、固体形態、多形体、塩、水和物、クラスレート、もしくは溶媒和物(「化合物1」)の効果の評価方法を提供し、この方法は患者の皮膚のUVB照射、化合物1の投与、及び免疫組織化学を用いた皮膚におけるリン酸化c−Jun発現の測定を含む。いくつかの実施形態において、化合物1を経口投与する。本明細書では、患者における2−(tert−ブチルアミノ)−4−((1R,3R,4R)−3−ヒドロキシ−4−メチルシクロヘキシルアミノ)−ピリミジン−5−カルボキサミドまたは薬学的に許容可能なその立体異性体、互変異性体、固体形態、多形体、塩、水和物、クラスレート、もしくは溶媒和物(「化合物1」)の効果の評価方法であって、1)UVB照射で照射した患者の皮膚の第1部分から得た第1皮膚サンプルにおけるリン酸化c−Jun発現を測定すること、2)患者に化合物1を投与した後、UVB照射で照射した患者の皮膚の第2部分から得た第2皮膚サンプルにおけるリン酸化c−Jun発現を測定すること、ならびに3)該第1皮膚サンプルにおけるリン酸化c−Junのレベルと該第2皮膚サンプルにおけるリン酸化c−Junのレベルとを比較することを含む、該方法も提供する。測定は免疫組織化学を用いた皮膚サンプルにおいて行われ得る。UVB照射は最小紅斑量の(MED)2倍のものであり得る。第2皮膚サンプルの皮膚は、2−(tert−ブチルアミノ)−4−((1R,3R,4R)−3−ヒドロキシ−4−メチルシクロヘキシルアミノ)−ピリミジン−5−カルボキサミドまたは薬学的に許容可能なその立体異性体、互変異性体、固体形態、多形体、塩、水和物、クラスレート、もしくは溶媒和物の投与の約2時間後にUVB照射で照射され得る。皮膚サンプルは患者の臀部のUVB照射で照射した皮膚の部分から得られ得る。第2皮膚サンプルは皮膚のUVB照射への曝露の約8時間後に得られ得る。皮膚サンプルにおけるリン酸化c−Junの量の測定は、免疫組織化学分析を含むことができ、一次抗体がリン酸化c−Junに対して向けられ、抗体/リン酸化c−Jun複合体を形成し、発色酵素と結合した二次抗体とのインキュベーションにより着色して皮膚サンプルにおける一次抗体/リン酸化c−Jun複合体の場所を標示する。測定は、着色標示の主観的スコアリングまたはレーザー走査型サイトメーターを用いた定量分析をさらに含む。化合物1は経口投与され得る。
【0011】
一実施形態において、化合物1に感受性のある患者(または患者集団)の特定方法を本明細書で提供し、この方法は、該患者の皮膚の第1部分をUVB照射に曝露すること、該患者の皮膚の該第1部分のサンプルを得ること、該患者の皮膚の該第1部分におけるリン酸化c−Junの量を測定すること、該患者に有効量の化合物1を投与すること、該患者の皮膚の第2部分をUVB照射に曝露すること、該患者の皮膚の該第2部分のサンプルを得ること、該患者の皮膚の該第2部分におけるリン酸化c−Junの量を測定すること、ならびに該患者の皮膚の該第1部におけるリン酸化c−Junのレベルと該患者の皮膚の該第2部分におけるリン酸化c−Junのレベルとを比較することを含み、該患者の皮膚の該第1部分と比較した該患者の皮膚の該第2部分におけるリン酸化c−Junのレベルの減少は、該患者が化合物1に感受性があることを示す。化合物1に感受性のある患者(または患者集団)の特定方法も本明細書で提供し、この方法は、1)UVB照射で照射した患者の皮膚の第1部分から得た第1皮膚サンプルにおけるリン酸化c−Junの量を測定すること、2)該患者に化合物1を投与した後、UVB照射で照射した患者の皮膚の第2部分から得た第2皮膚サンプルにおけるリン酸化c−Junの量を測定すること、ならびに3)該第1皮膚サンプルにおけるリン酸化c−Junのレベルと該第2皮膚サンプルにおけるリン酸化c−Junのレベルとを比較することを含み、該第1皮膚サンプルに対する該第2皮膚サンプルにおけるリン酸化c−Junのレベルの減少は、該患者が化合物1に感受性があることを示す。レベルの減少は少なくとも約5%、約10%、約15%、約20%、約25%、約30%、約35%、約40%、約45%、約50%以上とすることができる。
【0012】
別の実施形態では、患者の皮膚のUVB照射、化合物1の投与、及び免疫組織化学を用いた皮膚におけるリン酸化c−Jun発現の測定を含む、患者における化合物1の効果の評価方法を本明細書で提供する。患者に化合物1を投与した後、UVB照射で照射した皮膚サンプルにおいて免疫組織化学を用いてリン酸化c−Jun発現を測定することを含む、患者における化合物1の効果の評価方法も本明細書で提供する。
【0013】
別の実施形態では、患者の皮膚におけるリン酸化c−Junを測定することによって患者におけるJNKの阻害を評価する方法を本明細書で提供する。一実施形態において、該患者の皮膚の第1部分をUVB照射に曝露すること、該患者の皮膚の該第1部分のサンプルを得ること、該患者の皮膚の該第1部分におけるリン酸化c−Junの量を測定すること、該患者に化合物1を投与すること、該患者の皮膚の第2部分をUVB照射に曝露すること、該患者の皮膚の該第2部分のサンプルを得ること、該患者の皮膚の該第2部分におけるリン酸化c−Junの量を測定すること、ならびに該患者の皮膚の該第1部におけるリン酸化c−Junのレベルと該患者の皮膚の該第2部分におけるリン酸化c−Junのレベルとを比較することによって、患者におけるJNKの阻害を測定する方法を本明細書で提供するが、この方法では、該患者の皮膚の該第1部分と比較した該患者の皮膚の該第2部分におけるリン酸化c−Junのレベルの減少が、JNKの阻害を示す。
【0014】
別の実施形態では、患者における化合物1の投与のための用量反応関係を決定する方法を提供する。この方法は、該患者への様々な用量(例えば約1mg〜1000mg)の化合物1の投与と、該患者の皮膚の第1部分をUVB照射に曝露すること、該患者の皮膚の該第1部分のサンプルを得ること、該患者の皮膚の該第1部分におけるリン酸化c−Junの量を測定すること、該患者にある用量の化合物1を投与すること、該患者の皮膚の第2部分をUVB照射に曝露すること、該患者の皮膚の該第2部分のサンプルを得ること、該患者の皮膚の該第2部分におけるリン酸化c−Junの量を測定すること、ならびに該患者の皮膚の該第1部におけるリン酸化c−Junのレベルと該患者の皮膚の該第2部分におけるリン酸化c−Junのレベルとを比較することを含む、各用量の化合物1に起因する該患者におけるJNK阻害の量の決定とを含み、該患者の皮膚の該第1部分に対する該患者の皮膚の該第2部分におけるリン酸化c−Junのレベルの減少がJNKの阻害に比例する。化合物1の投与の用量反応関係の決定方法も本明細書で提供し、この方法は、1)UVB照射で照射した患者の皮膚の第1部分から得た第1皮膚サンプルにおけるリン酸化c−Junの量を測定すること、2)該患者に様々な用量の化合物1(例えば約1mg〜1000mg)を投与した後、UVB照射で照射した患者の皮膚の第2部分から得た第2皮膚サンプルにおけるリン酸化c−Junの量を測定すること、ならびに3)該第1皮膚サンプルにおけるリン酸化c−Junのレベルと該第2皮膚サンプルにおけるリン酸化c−Junのレベルとを比較することを含み、該患者の皮膚の該第1部分と比較した該患者の皮膚の該第2部分におけるリン酸化c−Junのレベルの減少はJNKの阻害に比例する。レベルの減少は少なくとも約5%、約10%、約15%、約20%、約25%、約30%、約35%、約40%、約45%、約50%以上であり得る。
【0015】
他の実施形態において、患者におけるJNKに関連する疾患または病態の治療または管理のための化合物1の有効量の決定方法を提供し、この方法は、該患者への様々な用量(例えば約1mg〜1000mg)の化合物1の投与と、該患者の皮膚の第1部分をUVB照射に曝露すること、該患者の皮膚の該第1部分のサンプルを得ること、該患者の皮膚の該第1部分におけるリン酸化c−Junの量を測定すること、該患者にある用量の化合物1を投与すること、該患者の皮膚の第2部分をUVB照射に曝露すること、該患者の皮膚の該第2部分のサンプルを得ること、該患者の皮膚の該第2部分におけるリン酸化c−Junの量を測定すること、ならびに該患者の皮膚の該第1部におけるリン酸化c−Junのレベルと該患者の皮膚の該第2部分におけるリン酸化c−Junのレベルとを比較することを含む、各用量の化合物1に起因する該患者におけるJNK阻害の量の決定とを含み、該患者の皮膚の該第1部分と比較した該患者の皮膚の該第2部分におけるリン酸化c−Junのレベルの50%の減少が、有効量の化合物1の投与を示す。化合物1の有効量の決定方法も本明細書で提供し、この方法は、1)UVB照射で照射した患者の皮膚の第1部分から得た第1皮膚サンプルにおけるリン酸化c−Junの量を測定すること、2)該患者に様々な用量の化合物1(例えば約1mg〜1000mg)を投与した後、UVB照射で照射した患者の皮膚の第2部分から得た第2皮膚サンプルにおけるリン酸化c−Junの量を測定すること、ならびに3)該第1皮膚サンプルにおけるリン酸化c−Junのレベルと該第2皮膚サンプルにおけるリン酸化c−Junのレベルとを比較することを含み、該第1皮膚サンプルに対する該第2皮膚サンプルにおけるリン酸化c−Junのレベルの50%の減少が有効量の化合物1の投与を示す。
【0016】
さらに別の実施形態では、化合物1による治療に対する患者のコンプライアンスの監視方法を提供する。この方法は、患者の皮膚のサンプル中で発現したリン酸化c−Junまたはc−Junのレベルを測定すること、及び対照非治療サンプルでの発現レベルと比較して、患者の皮膚のサンプルにおいて発現レベルが増加または減少しているかどうかを判定することを含み、発現の減少が、化合物1による治療に対する患者のコンプライアンスを示す。
【0017】
本明細書に提供される方法において有用なJNKインヒビターは、以下:
【化1】
【0018】
(代替名2−(tert−ブチルアミノ)−4−((1R,3R,4R)−3−ヒドロキシ−4−メチルシクロヘキシルアミノ)−ピリミジン−5−カルボキサミドもしくは2−[(1,1−ジメチルエチル)アミノ]−4−[[(1R,3R,4R)−3−ヒドロキシ−4−メチルシクロヘキシル]アミノ]−5−ピリミジンカルボキサミドを有する)、または薬学的に許容可能なその立体異性体、互変異性体、固体形態、多形体、塩、水和物、クラスレート、もしくは溶媒和物(本明細書では「化合物1」と総称する)である。化合物1は、2013年1月31日に公開された米国特許出願公開第2013/0029987号、及び国際公開第WO2012/145569号に開示されており、それぞれの全内容を参照により本明細書に援用する。
【図面の簡単な説明】
【0019】
4.図面の簡単な説明
図1】ドナー1のHEka細胞における、50mJ/cmのUVB放射線によるc−JunのSer63における活性化及び化合物1での阻害を示す(ウェスタンイムノブロッティングによって決定された)。
【0020】
図2】ドナー2のHEka細胞における、50mJ/cmのUVB放射線によるc−JunのSer63における活性化及び化合物1での阻害を示す(ウェスタンイムノブロッティングによって決定された)。
【0021】
図3】ドナー3のHEka細胞における、50mJ/cmのUVB放射線によるc−JunのSer63における活性化及び化合物1での阻害を示す(ウェスタンイムノブロッティングによって決定された)。
【0022】
図4】ドナー4のHEka細胞における、50mJ/cmのUVB放射線によるc−JunのSer63における活性化及び化合物1での阻害を示す(ウェスタンイムノブロッティングによって決定された)。
【0023】
図5】HEka細胞における、50mJ/cmのUVB放射線によって誘発されるc−JunのSer63におけるリン酸化の阻害を示す。
【発明を実施するための形態】
【0024】
5.詳細な説明
5.1.定義
用語「JNK」はJNK1、JNK2、またはJNK3遺伝子によって発現されるタンパク質またはそのアイソフォームを意味する(Gupta,S.,Barrett,T.,Whitmarsh,A.J.,Cavanagh,J.,Sluss,H.K.,Derijard,B.and Davis,R.J.The EMBO J.15:2760−2770(1996))。
【0025】
本明細書で用いる場合、用語「薬学的に許容可能な塩(複数可)」は、無機酸及び無機塩基ならびに有機酸及び有機塩基を含めた薬学的に許容可能な非毒性の酸または塩基から調製される塩のことをいう。式(I)の化合物の好適な薬学的に許容可能な塩基付加塩としては、アルミニウム、カルシウム、リチウム、マグネシウム、カリウム、ナトリウム及び亜鉛から調製される金属塩、またはリシン、N,N’−ジベンジルエチレンジアミン、クロロプロカイン、コリン、ジエタノールアミン、エチレンジアミン、メグルミン(N−メチルグルカミン)及びプロカインから調製される有機塩が挙げられるが、これらに限定されない。好適な非毒性酸としては、酢酸、アルギン酸、アントラニル酸、L−アスパラギン酸、ベンゼンスルホン酸、安息香酸、カンファースルホン酸、クエン酸、エテンスルホン酸、ギ酸、フマル酸、フロ酸、ガラクツロン酸、グルコン酸、グルクロン酸、グルタミン酸、グリコール酸、臭化水素酸、塩酸、イセチオン酸、乳酸、マレイン酸、リンゴ酸、マンデル酸、メタンスルホン酸、ムチン酸、硝酸、パモ酸、パントテン酸、フェニル酢酸、リン酸、プロピオン酸、サリチル酸、ステアリン酸、コハク酸、スルファニル酸、硫酸、酒石酸、及びp−トルエンスルホン酸などの無機酸及び有機酸が挙げられるが、これらに限定されない。具体的な非毒性酸としては、塩酸、臭化水素酸、マレイン酸、リン酸、硫酸、及びメタンスルホン酸が挙げられる。したがって、具体的な塩の例としては、塩酸塩及びメシル酸塩が挙げられる。その他のものが当該技術分野において公知であり、例えばRemington’s Pharmaceutical Sciences,18th eds.,Mack Publishing,Easton PA(1990)またはRemington:The Science and Practice of Pharmacy,19th eds.,Mack Publishing,Easton PA(1995)を参照されたい。
【0026】
本明細書で用いる場合、別途示されない限り、用語「立体異性体」または「立体異性的に純粋な」は、式(I)の化合物の1つの立体異性体であって、その化合物の他の立体異性体を実質的に含まないものを意味する。例えば、1つのキラル中心を有する立体異性的に純粋な化合物は、その化合物の反対のエナンチオマーを実質的に含まないことになる。2つのキラル中心を有する立体異性的に純粋な化合物は、その化合物の他のジアステレオマーを実質的に含まないことになる。典型的な立体異性的に純粋な化合物は、約80重量%超のその化合物の1つの立体異性体及び約20重量%未満のその化合物の他の立体異性体、約90重量%超のその化合物の1つの立体異性体及び約10重量%未満のその化合物の他の立体異性体、約95重量%超のその化合物の1つの立体異性体及び約5重量%未満のその化合物の他の立体異性体、または約97重量%超のその化合物の1つの立体異性体及び約3重量%未満のその化合物の他の立体異性体を含む。式(I)の化合物はキラル中心を有することができ、ラセミ体、個々のエナンチオマーまたはジアステレオマー、及びこれらの混合物として存在することができる。すべてのそのような異性体型が、それらの混合物を含め、本明細書に開示の実施形態の範囲内に含まれる。
【0027】
そのような式(I)の化合物の立体異性的に純粋な形態の使用及びそれらの形態の混合物の使用は、本明細書に開示の実施形態に包含される。例えば、式(I)の特定の化合物の等量または不等量のエナンチオマーを含む混合物が本明細書に開示の方法及び組成物に用いられ得る。こうした異性体は、不斉合成してもよく、またはキラルカラムもしくはキラル分割剤などの標準的な技術を用いて分割してもよい。例えば、Jacques,J.,et al.,Enantiomers,Racemates and Resolutions(Wiley Interscience,New York,1981);Wilen,S.H.,et al.,Tetrahedron 33:2725(1977);Eliel,E.L.,Stereochemistry of Carbon Compounds(McGraw Hill,NY,1962);及びWilen,S.H.,Tables of Resolving Agents and Optical Resolutions p.268(E.L.Eliel,Ed.,Univ.of Notre Dame Press,Notre Dame,IN,1972)を参照。
【0028】
式(I)の化合物は、E異性体及びZ異性体またはこれらの混合物、ならびにシス及びトランス異性体またはこれらの混合物を含むことができることにも留意すべきである。ある実施形態において、式(I)の化合物はE異性体またはZ異性体のいずれかとして単離されている。ある実施形態において、式(I)の化合物はE異性体とZ異性体との混合物である。
【0029】
用語「互変異性体」は、互いに平衡状態にある化合物の異性体型のことをいう。異性体型の濃度は化合物が存在する環境に依存することになり、例えば化合物が固体であるか、または有機溶液もしくは水溶液中にあるかに応じて異なり得る。例えば、水溶液中では、ピラゾールは互いに互変異性体と称される以下の異性体型を示し得る。
【化2】
【0030】
化合物1は1つ以上のキラル中心を含み、エナンチオマーのラセミ混合物、ジアステレオマーの混合物または鏡像異性的もしくは光学的に純粋な化合物として存在することができる。そのような化合物の立体異性的に純粋な形態の使用及びそれらの形態の混合物の使用は、本明細書に開示の実施形態に包含される。非限定例として、化合物1の等量または不等量のエナンチオマーを含む混合物が本明細書に開示の方法及び組成物に用いられ得る。こうした異性体は、不斉合成してもよく、またはキラルカラムもしくはキラル分割剤などの標準的な技術を用いて分割してもよい。例えば、Jacques,J.,et al.,Enantiomers,Racemates and Resolutions (Wiley Interscience,New York,1981);Wilen,S.H.,et al.,Tetrahedron 33:2725(1977);Eliel,E.L.,Stereochemistry of Carbon Compounds(McGraw Hill,NY,1962);及びWilen,S.H.,Tables of Resolving Agents and Optical Resolutions p.268(E.L.Eliel,Ed.,Univ.of Notre Dame Press,Notre Dame,IN,1972)を参照。
【0031】
本明細書で用いる場合、用語「治療」は、障害、疾患もしくは病態の、または障害、疾患もしくは病態に関連する1つ以上の症状の全体的なまたは部分的な緩和、またはこうした症状のさらなる進行もしくは悪化の遅延もしくは停止、または障害、疾患もしくは病態の原因(複数可)そのものの緩和もしくは根治を意味する。一実施形態において、障害は肝臓線維性障害、例えば非アルコール性脂肪肝炎、脂肪症(すなわち脂肪肝)、肝硬変、原発性硬化性胆管炎、原発性胆汁性肝硬変、肝炎、肝細胞癌、またはアルコールの慢性摂取もしくは反復摂取(アルコール性肝炎)、感染(例えばHCVなどのウイルス感染)、肝臓移植、もしくは薬物性肝障害(例えばアセトアミノフェン中毒)に伴う肝繊維症などである。いくつかの実施形態において、「治療」は、肝臓線維性障害、例えば非アルコール性脂肪肝炎、脂肪症(すなわち脂肪肝)、肝炎もしくは肝硬変などをもたらす糖尿病もしくは代謝症候群に関連する障害、疾患もしくは病態、または症状の全体的なもしくは部分的な緩和、またはこうした症状のさらなる進行もしくは悪化の遅延もしくは停止を意味する。一実施形態において、症状は黄疸である。別の実施形態では、「治療」は、JNK経路の阻害によって治療可能なまたは予防可能な疾患に関連する障害、疾患もしくは病態、または症状の全体的なまたは部分的な緩和を意味する。
【0032】
用語「予防」は、本明細書で用いる場合、障害、疾患もしくは病態の発症、再発もしくは蔓延を全体的にもしくは部分的に遅延及び/または防止する;対象が障害、疾患もしくは病態に罹患するのを阻止する;または対象が障害、疾患もしくは病態に罹患する対象リスクを減少させる方法を意味する。一実施形態において、障害は本明細書に記載の肝臓線維性障害、もしくは肝臓線維性障害をもたらす糖尿病もしくは代謝症候群、またはこれらの症状である。一実施形態において、障害は肝臓線維性障害、例えば非アルコール性脂肪肝炎、脂肪症(すなわち脂肪肝)、肝硬変、原発性硬化性胆管炎、原発性胆汁性肝硬変、肝炎、肝細胞癌、またはアルコールの慢性摂取もしくは反復摂取(アルコール性肝炎)、感染(例えばHCVなどのウイルス感染)、肝臓移植、もしくは薬物性肝障害(例えばアセトアミノフェン中毒)に伴う肝繊維症などである。別の実施形態では、障害はJNK経路の阻害によって治療可能なまたは予防可能な疾患である。
【0033】
治療に関して用いられる場合の用語「感受性」及び「感受性のある」は、治療されている疾患の症状の軽減または減少における化合物1の有効性の程度をいう相対語である。例えば、細胞または患者の治療に関して用いられる場合の用語「感受性の増加」は、当該技術分野において広く認められているまたは本明細書に開示の任意の方法を用いて測定した場合の、JNKに関連する疾患または病態の症状の軽減または減少における有効性の少なくとも5%以上の増加のことをいう。
【0034】
化合物1に関連する用語「有効量」は、本明細書に開示の障害、疾患もしくは病態、またはこれらの症状を治療または予防することが可能な量を意味する。
【0035】
本明細書で用いる場合、「UVB」は、約280nm〜約320nmにわたる紫外線スペクトルの領域にある電磁放射線のことをいう。
【0036】
用語「可能性」は一般に、ある事象の確率の増加をいう。患者反応の有効性に関して用いられる場合の用語「可能性」は一般に、JNKに関連する疾患または病態の症状が軽減または減少される確率の増加を企図する。
【0037】
用語「予測する」は一般に、事前に判断することまたは伝えることを意味する。化合物1による治療の有効性を「予測する」と用いる場合、例えば、用語「予測する」は、最初に、治療を開始する前に、または治療期間が実質的に進行する前に治療のアウトカムの可能性を判断できることを意味し得る。
【0038】
本明細書で用いる場合、用語「監視する」は一般に、活動の監視、管理、規制、観察、追跡、または監督のことをいう。例えば、用語「JNK」に関連する疾患または病態に対する治療の効果の監視」は、患者の治療における有効性の追跡のことをいう。同様に、個別または臨床試験のいずれかにおける患者のコンプライアンスに関連して用いられる場合の用語「監視」は、患者が実際に試験中の治療計画に処方されたように従っていることを追跡または確認することをいう。
【0039】
本明細書で用いる場合、用語「判定」、「測定」、「評価(evaluating)」、「評価(assessing)」及び「アッセイ」は一般に、任意の形態の測定のことをいい、ある要素が存在するか否かの判定を含む。これらの用語は定量的及び/または定性的判定の両方を含む。評価は相対的なものまたは絶対的なものであり得る。「の存在の評価」は、存在するものの量を判定すること、及びあるものが存在するかまたは存在しないかを判定することを含むことができる。
【0040】
「患者」または「対象」は本明細書では、動物、例えば哺乳類などを含むと定義し、限定はしないが霊長類(例えばヒト)、ウシ、ヒツジ、ヤギ、ウマ、イヌ、ネコ、ウサギ、ラット、マウス、サル、ニワトリ、シチメンチョウ、ウズラ、またはモルモットなどを含み、ある実施形態では哺乳類であり、別の実施形態ではヒトである。一実施形態において、対象は、間質性肺線維症、全身性硬化症、強皮症、慢性移植腎症、抗体関連型拒絶反応、または狼瘡を有するか、またはそれらを有するリスクがあるヒトである。別の実施形態では、対象は、肝臓線維性障害、または肝臓線維性障害をもたらす糖尿病もしくは代謝症候群、またはJNK経路の阻害によって治療可能なもしくは予防可能な疾患、またはこれらの症状を有するか、あるいはそれらを有するリスクがあるヒトである。一実施形態において、対象は絶食している。一実施形態において、対象は摂食している。
【0041】
5.2.c−Jun N末端キナーゼのバイオマーカーとしての使用
本明細書で提供される方法は、患者皮膚サンプルにおけるリン酸化c−Junまたはc−Junの存在及びレベルを、JNKの阻害を追跡するバイオマーカーとして利用することができるという発見に一部基づいている。特に、これらのバイオマーカーを用いて、患者における化合物1による治療、特に化合物1での経口治療の有効性を予測、評価、及び追跡する、または処方された化合物1による治療のレジメンに対する患者のコンプライアンスを監視することができる。
【0042】
健康なヒト皮膚におけるベースラインのリン酸化c−Jun免疫反応性はUVB曝露無しでは低い。UVB照射は、組織切片におけるリン酸化c−Jun免疫反応性の増加に反映されるように、リン酸化c−Junのレベルを確実に増加させる。増加はUVB曝露後およそ8時間でプラトーになり始める。JNKの阻害は用量依存性である。UVB照射によって誘発されるリン酸化c−Junの増加は、用量−反応の評価を含む、化合物1の評価を行うための、及び化合物1に感受性のある患者集団の特定を行うためのモデルとして用いることができる。
【0043】
UVB照射によって誘発されるリン酸化c−Junのレベルの、化合物1の有効性を評価するバイオマーカーとしての使用に関する方法を本明細書で提供する。リン酸化c−Jun及びc−Junのレベルを用いて、JNKに関連する疾患または病態において治療が成功する可能性があるかどうか判定することができる。
【0044】
ある実施形態において、本明細書で提供される方法により、化合物1の投与に起因するJNKのインビボ阻害の量の測定が可能となる。ある実施形態において、本明細書で提供されるアッセイは、該患者の皮膚の第1部分をUVB照射に曝露すること、該患者の皮膚の該第1部分のサンプルを得ること、該患者の皮膚の該第1部分におけるリン酸化c−Junまたはc−Junの量を免疫組織化学的に測定すること、該患者に化合物1を投与すること、該患者の皮膚の第2部分をUVB照射に曝露すること、該患者の皮膚の該第2部分のサンプルを得ること、該患者の皮膚の該第2部分におけるリン酸化c−Junまたはc−Junの量を免疫組織化学的に測定すること、ならびに該患者の皮膚の該第1部分におけるリン酸化c−Junまたはc−Junのレベルと該患者の皮膚の該第2部分におけるリン酸化c−Junまたはc−Junのレベルとを比較することを含み、該患者の皮膚の該第1部分と比較した該患者の皮膚の該第2部分におけるリン酸化c−Junまたはc−Junのレベルの減少が、JNKの阻害を示す。患者におけるJNKの阻害を評価するための方法も本明細書で提供され、この方法は、1)UVB照射で照射した患者の皮膚の第1部分から得た第1皮膚サンプルにおけるリン酸化c−Junまたはc−Junの量を測定すること、2)該患者に化合物1を投与した後、UVB照射で照射した患者の皮膚の第2部分から得た第2皮膚サンプルにおけるリン酸化c−Junまたはc−Junの量を測定すること、ならびに3)該第1皮膚サンプルにおけるリン酸化c−Junのレベルと該第2皮膚サンプルにおけるリン酸化c−Junのレベルとを比較することを含み、該第1皮膚サンプルに対する該第2皮膚サンプルにおけるリン酸化c−Junまたはc−Junのレベルの減少がJNKの阻害を示す。いくつかの実施形態において、減少は少なくとも約5%、約10%、約15%、約20%、約25%、約30%、約35%、約40%、約45%、約50%以上である。ある実施形態において、本明細書で提供されるアッセイはヒト皮膚モデル組織の使用を含む。そのような実施形態において、該アッセイは、該組織の第1サンプルをUVB照射に曝露すること、該組織の該第1部分のサンプルを得ること、該組織の該第1部分におけるリン酸化c−Junまたはc−Junの量を免疫組織化学的に測定すること、該組織に化合物1を投与すること、該組織の第2部分をUVB照射に曝露すること、該組織の該第2部分のサンプルを得ること、該組織の該第2部分におけるリン酸化c−Junまたはc−Junの量を免疫組織化学的に測定すること、ならびに該組織の該第1部分におけるリン酸化c−Junまたはc−Junのレベルと該組織の該第2部分におけるリン酸化c−Junまたはc−Junのレベルとを比較することを含み、該組織の該第1部分と比較した該組織の該第2部分におけるリン酸化c−Junまたはc−Junのレベルの減少がJNKの阻害を示す。いくつかの実施形態において、減少は少なくとも約5%、約10%、約15%、約20%、約25%、約30%、約35%、約40%、約45%、約50%以上である。
【0045】
そのような実施形態において、EpiDermFTなどのヒト皮膚モデル組織が用いられ得る。EpiDermFTは再構成ヒト皮膚等価物であり、ヒト皮膚に類似した形態的特徴及び成長特徴を示し、ヒト皮膚に関連する研究においてモデル組織系として広く用いられている(例えば、Zhao JF,Zhang YJ,Kubilus J,Jin XH,Santella RM,Athar M,Wang ZY,Bickers DR.Reconstituted 3−Dimensional Human Skin as a Novel in Vitro Model for Studies of Carcinogen,Biochemical and Biophysical Research Comms.1999;254:49−53;Mahns A,Wolber R,Stab F,Klotz LO,Sies H,Contribution of UVB and UVA to UV−dependent stimulation of cyclooxygenase−2 expression in articfical epidermis,Photochem.Photobiol.Sci.2004;3:257−62;Sedelnikova OA,Nakamura A,Kovalchuk O,Koturbash I,Mitchell SA,Marino SA,Brenner DJ,Bonner WM,DNA Double−Strand Breaks Form in Bystander Cells after Microbeam Irradiation of Three−dimensional Human Tissue Models,Cancer Res 2007;67(9):4295−4302;Hayden PJ,Burnham B,Klausner M,Kubilus J,Sheasgreen JE,Wound Healing Response of the EpiDerm Full Thickness(EpiDerm−FT)In Vitro Human Skin Equivalent after Solar UV Irradiation,Presented at the 5th World Congress,Berlin,Germany,August 2005及びThe Society of Investigative Dermatology Meeting,Providence,RI,April−May 2004,TR−328:1−10を参照)。EpiDermFTサンプルはMatTek Corporation(Ashland,MA)から得られ得る。
【0046】
いくつかの実施形態において、本明細書の方法によって提供される、JNK活性を評価するための皮膚生検の免疫組織化学的評価は、標的リン酸化c−Junまたはc−Junを対象とする一次抗体、及び発色酵素と結合した二次抗体を用いる二抗体IHCアッセイを含む。そのような実施形態において、二次抗体−レポーター結合体は基質反応混合物とともにインキュベートされた場合に赤色を沈着させ、これにより一次抗体標的複合体の場所をマーキングする。その後、例えばNikonの顕微鏡を用いた標準的な明視野照明でこの赤色を記録する。その後、顕微鏡画像を撮影し、電子画像は独立した熟練のスコアラによって、実施例で例示するようなガイドラインを用いてスコアリング(盲検)され得る。ある実施形態において、レーザー走査型サイトメーターを用いて探索的定量IHC分析が実施され得る。そのような実施形態において、上皮ケラチノサイトの核区画を画定するためにスライドをさらに処理する。そのような実施形態において、同じIHCスライドをヘマトキシリンで対比染色して核区画を標識し、その後、DAB染色(リン酸化c−Junまたはc−Junを対象とする一次抗体を標示する)には488nm、ヘマトキシリン染色には633nmの2つのフォトダイオードチャネルを用いて走査して、ヘマトキシリンシグナルに基づいて核を計数し、次いで上皮中の各核についてDABシグナルを積分する。
【0047】
いくつかの実施形態において、本明細書で提供される方法により、化合物1の投与の前後のリン酸化c−Junまたはc−Junのレベルの測定が可能となり、これを患者における化合物1によるJNKの阻害を測定するためのバイオマーカーとして用いることができる。
【0048】
本明細書で提供される方法のいくつかの実施形態において、該患者の皮膚の該第1部分と比較した該患者の皮膚の該第2部分におけるリン酸化c−Junまたはc−Junのレベルの減少が、化合物1によるJNKの阻害を示す。
【0049】
本明細書で提供される方法のいくつかの実施形態において、該患者の皮膚の該第1部分と比較した該患者の皮膚の該第2部分におけるリン酸化c−Junまたはc−Junのレベルの減少は、化合物1によるJNKの阻害に比例する。
【0050】
いくつかの実施形態において、本明細書で提供される方法により、化合物1の投与の前後のリン酸化c−Junまたはc−Junのレベルの測定が可能となり、これを患者が化合物1に感受性があるかどうか判定するためのバイオマーカーとして用いることができる。
【0051】
本明細書で提供される方法のいくつかの実施形態において、該患者の皮膚の該第1部分と比較した該患者の皮膚の該第2部分におけるリン酸化c−Junまたはc−Junのレベルの減少は、該患者が化合物1に感受性があることを示す。
【0052】
いくつかの実施形態において、本明細書で提供される方法により、化合物1の投与の前後のリン酸化c−Junまたはc−Junのレベルの測定が可能となり、これを用いて患者におけるJNKに関連する疾患または病態の治療または予防のための化合物1の有効量を決定することができる。
【0053】
本明細書で提供される方法のいくつかの実施形態において、該患者の皮膚の該第1部分と比較した該患者の皮膚の該第2部分におけるリン酸化c−Junまたはc−Junのレベルの減少が、有効量の化合物1の投与を示すことと関連する。
【0054】
5.3.化合物1
本明細書で提供される方法において有用なJNKインヒビターは以下:である。
【化3】
【0055】
(代替名2−(tert−ブチルアミノ)−4−((1R,3R,4R)−3−ヒドロキシ−4−メチルシクロヘキシルアミノ)−ピリミジン−5−カルボキサミドもしくは2−[(1,1−ジメチルエチル)アミノ]−4−[[(1R,3R,4R)−3−ヒドロキシ−4−メチルシクロヘキシル]アミノ]−5−ピリミジンカルボキサミドを有する)または薬学的に許容可能なその立体異性体、互変異性体、固体形態、多形体、塩、水和物、クラスレート、もしくは溶媒和物(本明細書では「化合物1」と総称する)である。化合物1は、2013年1月31日に公開された米国特許出願公開第2013/0029987号、及び国際公開第WO2012/145569号に開示されており、それぞれの全内容を参照により本明細書に援用する。
【0056】
一実施形態において、化合物1は遊離塩基である。ある実施形態において、遊離塩基は固体である。ある実施形態において、遊離塩基は非晶質固体である。さらに別の実施形態では、遊離塩基は結晶質である。
【0057】
別の実施形態では、化合物1は遊離塩基の薬学的に許容可能な溶媒和物である。一実施形態において、溶媒和物は水和物である。別の実施形態では、水和物は結晶形態である。
【0058】
描写された構造とその構造に与えられた名称との間に相違がある場合、描写された構造が重視されるものとすることに留意すべきである。さらに、構造のまたは構造の一部の立体化学が例えば太線または破線で示されていない場合、構造または構造の一部はその立体異性体をすべて包含すると解釈するものとする。
【0059】
5.4.化合物1の作製方法
化合物1は、当該技術分野において公知の試薬及び方法を用いた従来の有機合成を用いて作製することができ、それには、2013年1月31日に公開された米国特許出願公開第2013/0029987号、2014年1月30日に出願された米国仮特許出願第61/933,636号、2014年7月16日に出願された米国仮特許出願第62/025,161号、及び国際公開第WO2012/145569号に記載されている方法が挙げられ、それぞれの全内容を参照により本明細書に援用する。
【0060】
5.5.投与方法及び用量
化合物1は、従来の調製形態、例えばカプセル、マイクロカプセル、錠剤、顆粒、粉末、トローチ、丸薬、座薬、注入、懸濁液、シロップ、パッチ、クリーム、ローション、軟膏、ゲル、スプレー、溶液及び乳濁液などで経口的に、局所的に、または非経口的に対象に投与することができる。好適な製剤は、一般に採用される方法によって、従来の有機または無機添加剤、例えば賦形剤(例えばスクロース、デンプン、マンニトール、ソルビトール、ラクトース、グルコース、セルロース、タルク、リン酸カルシウムまたは炭酸カルシウム)、結合剤(例えばセルロース、メチルセルロース、ヒドロキシメチルセルロース、ポリプロピルピロリドン、ポリビニルピロリドン、ゼラチン、アラビアゴム、ポリエチレングリコール、スクロースまたはデンプン)、崩壊剤(例えばデンプン、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシプロピルデンプン、低置換度ヒドロキシプロピルセルロース、炭酸水素ナトリウム、リン酸カルシウムまたはクエン酸カルシウム)、滑沢剤(例えばステアリン酸マグネシウム、軽質無水ケイ酸、タルクまたはラウリル硫酸ナトリウム)、着香剤(例えばクエン酸、メントール、グリシンまたはオレンジ粉末)、保存剤(例えば安息香酸ナトリウム、亜硫酸水素ナトリウム、メチルパラベンまたはプロピルパラベン)、安定剤(例えばクエン酸、クエン酸ナトリウムまたは酢酸)、懸濁化剤(例えばメチルセルロース、ポリビニルピロリクロン(pyrroliclone)またはステアリン酸アルミニウム)、分散剤(例えばヒドロキシプロピルメチルセルロース)、希釈剤(例えば水)、及びベースワックス(例えばカカオバター、白色ワセリンまたはポリエチレングリコール)などを用いて調製することができる。医薬組成物中の化合物1の有効量は所望の効果を発揮することになるレベルであり得るが、例えば、経口投与及び非経口投与の両方について単位用量で、対象の体重に対して約0.005mg/kg〜対象の体重に対して約10mg/kgである。
【0061】
対象に投与される化合物1の用量はかなり広範にわたって変化し、医療従事者の判断に依存し得る。一般に、化合物1は、ある対象において対象の体重に対して約0.005mg/kg〜対象の体重に対して約10mg/kgの用量で1日1回〜4回投与することができるが、上記の用量は対象の年齢、体重、及び医学的状態、ならびに投与の種類に応じて適切に変更され得る。一実施形態において、用量は対象の体重に対して約0.01mg/kg〜対象の体重に対して約5mg/kg、対象の体重に対して約0.05mg/kg〜対象の体重に対して約1mg/kg、対象の体重に対して約0.1mg/kg〜対象の体重に対して約0.75mg/kg、または対象の体重に対して約0.25mg/kg〜対象の体重に対して約0.5mg/kgである。一実施形態において、投与が1日1回行われる。いかなる場合においても、投与される化合物1の量は、有効成分の溶解性、用いられる製剤、及び投与経路などの要因に依存することになる。一実施形態において、局所濃度を適用することにより、約0.01〜10μMの細胞内曝露または濃度がもたらされる。
【0062】
別の実施形態では、疾患または障害の治療または予防のための方法であって、それを必要としている対象に約0.375mg/日〜約750mg/日、約0.75mg/日〜約375mg/日、約3.75mg/日〜約75mg/日、約7.5mg/日〜約55mg/日または約18mg/日〜約37mg/日の化合物1を投与することを含む、該方法を本明細書で提供する。
【0063】
別の実施形態では、疾患または障害の治療または予防のための方法であって、それを必要としている対象に約1mg/日〜約1200mg/日、約10mg/日〜約1200mg/日、約100mg/日〜約1200mg/日、約400mg/日〜約1200mg/日、約600mg/日〜約1200mg/日、約400mg/日〜約800mg/日、約60mg/日〜約720mg/日、約240mg/日〜約720mg/日または約600mg/日〜約800mg/日の化合物1を投与することを含む、該方法を本明細書で提供する。
【0064】
別の実施形態では、化合物1の投与を含む、疾患または障害の治療または予防のための方法を本明細書で提供する。さらに別の実施形態では、1日あたり約10mg/日、約30mg/日、約60mg/日、約120mg/日、約160mg/日、約200mg/日、約240mg/日、約400mg/日、約480mg/日、または約720mg/日の化合物1の投与を含む、疾患または障害の治療及び予防のための方法を本明細書で提供する。特定の実施形態において、本明細書に開示の方法は、約400mg/日、約600mg/日または約800mg/日の化合物1の投与を、それを必要とする対象に対して行うことを含む。特定の実施形態において、本明細書に開示の方法は、約60mg/日、約160mg/日または約400mg/日の化合物1の投与を、それを必要とする対象に対して行うことを含む。
【0065】
別の実施形態では、約10mg/日〜約720mg/日、約10mg/日〜約480mg/日、約60mg/日〜約720mg/日または約240mg/日〜約720mg/日の化合物1の投与を、それを必要とする対象に対して行うことを含む、疾患または障害の治療または予防のための方法を本明細書で提供する。
【0066】
一実施形態において、約10mg/日、約30mg/日、約60mg/日、約120mg/日、約240mg/日、約480mg/日、または約720mg/日の化合物1の投与を、それを必要とする対象に対して行うことを含む、疾患または障害の治療または予防のための方法を本明細書で提供する。一実施形態において、約60mg/日、約160mg/日、または約400mg/日の化合物1の投与を、それを必要とする対象に対して行うことを含む、疾患または障害の治療または予防のための方法を本明細書で提供する。別の実施形態では、約200mg/日の化合物1の投与を、それを必要とする対象に対して行うことを含む、疾患または障害の治療または予防のための方法を本明細書で提供する。一実施形態において、約10mg/日、約30mg/日、約60mg/日、約120mg/日、約160mg/日、約200mg/日、約240mg/日、約400mg/日、約480mg/日、または約720mg/日の化合物1の投与を、それを必要とする対象に対して行うことを含む、疾患または障害の治療または予防のための方法を本明細書で提供する。
【0067】
別の実施形態では、約10mg〜約100mg、約1mg〜約200mg、約30mg〜約200mg、約35mg〜約1400mg、約125mg〜約1000mg、約250mg〜約1000mg、または約500mg〜約1000mgの化合物1を含む単位用量製剤を本明細書で提供する。
【0068】
別の実施形態では、約1mg、約5mg、約10mg、約15mg、約20mg、約30mg、約35mg、約50mg、約60mg、約70mg、約100mg、約120mg、約125mg、約140mg、約175mg、約200mg、約240mg、約250mg、約280mg、約350mg、約480mg、約500mg、約560mg、約700mg、約720mg、約750mg、約1000mgまたは約1400mgの化合物1を含む単位用量製剤を本明細書で提供する。
【0069】
別の実施形態では、約30mg、約100mgまたは約200mgの化合物1を含む単位剤形を本明細書で提供する。
【0070】
医薬組成物、及び様々な剤形の化合物1は、毎日1回、2回、3回、4回またはそれより多く投与することができる。一実施形態において、医薬組成物、及び様々な剤形の化合物1は、1日1回14日間投与することができる。
【0071】
化合物1は簡便性の理由から経口投与することができる。一実施形態において、経口投与する場合、食事及び水とともに化合物Aを投与する。別の実施形態では、化合物1(例えば顆粒または分散性錠剤)を水またはジュース(例えばリンゴジュースまたはオレンジジュース)中に分散させ、懸濁液として経口投与する。
【0072】
化合物1は、皮内、筋肉内、腹腔内、経皮、静脈内、皮下、鼻腔内、硬膜外、舌下、大脳内、膣内、経皮、経直腸、経粘膜、吸入によって、または耳、鼻、目、もしくは皮膚に局所投与することもできる。投与様式は医療従事者の裁量に委ねられ、部分的に内科的疾患の部位によって決定され得る。
【0073】
一実施形態において、追加の担体、賦形剤または媒体を含まずに化合物1を含有するカプセルを本明細書で提供する。
【0074】
別の実施形態では、有効量の化合物1及び薬学的に許容可能な担体または媒体を含む組成物を本明細書で提供し、薬学的に許容可能な担体または媒体は、賦形剤、希釈剤、またはこれらの混合物を含むことができる。一実施形態において、組成物は医薬組成物である。
【0075】
組成物は、錠剤、咀嚼錠、カプセル、溶液、非経口液、トローチ、座薬及び懸濁液などの形態とすることができる。組成物は、投与単位中に1日用量を含有するように、または1日用量の一部を好都合に含有するように製剤化することができ、単一の錠剤もしくはカプセルまたは都合の良い量の液体であり得る。一実施形態において、溶液は、水溶性塩、例えば塩酸塩などから調製される。一般に、すべての組成物は薬化学において公知の方法に従って調製される。カプセルは、化合物1と好適な担体または希釈剤とを混合し、適量の混合物をカプセル中に充填することによって調製することができる。通常の担体及び希釈剤としては、不活性粉末状物質、例えば多様な種類のデンプン、粉末状セルロース、特に結晶及び微結晶セルロース、糖、例えばフルクトース、マンニトール及びスクロースなど、穀粉及び類似の食用粉末などが挙げられるが、これらに限定されない。
【0076】
錠剤は、直接圧縮、湿式造粒、または乾式造粒によって調製することができる。その製剤は通常、希釈剤、結合剤、滑沢剤、及び崩壊剤、ならびに化合物を包含する。典型的な希釈剤としては、例えば、様々な種類のデンプン、ラクトース、マンニトール、カオリン、リン酸カルシウムまたは硫酸カルシウム、無機塩(例えば塩化ナトリウムなど)、及び粉糖が挙げられる。粉末状セルロース誘導体も有用である。典型的な錠剤結合剤は、デンプン、ゼラチン及び糖、例えばラクトース、フルクトース、グルコースなどの物質である。天然ガム及び合成ガムも都合がよく、これには、アカシア、アルギネート、メチルセルロース、ポリビニルピロリジンなどが挙げられる。ポリエチレングリコール、エチルセルロース及びワックスも結合剤の役割を果たすことができる。
【0077】
錠剤及びパンチがダイ中に付着するのを防止するために、錠剤製剤には滑沢剤が必要である場合もある。滑沢剤はタルク、ステアリン酸マグネシウム及びステアリン酸カルシウム、ステアリン酸、ならびに水素添加植物油などの滑りやすい固体から選択することができる。錠剤崩壊剤は、濡れた際に膨潤して錠剤を崩壊させ、化合物を放出する物質である。これには、デンプン、粘土、セルロース、アルギン及びガムが挙げられる。より具体的には、例えば、トウモロコシデンプン及びジャガイモデンプン、メチルセルロース、寒天、ベントナイト、木材セルロース、粉末状天然海綿、カチオン交換樹脂、アルギン酸、グアーガム、シトラスパルプ、ならびにカルボキシメチルセルロース、さらにラウリル硫酸ナトリウムを用いることができる。錠剤は、フレーバー及びシーラントとして糖でコーティングするか、または被膜形成保護剤でコーティングして錠剤の溶出特性を調整することができる。組成物は、例えばマンニトールなどの物質を製剤で用いることによって咀嚼錠として製剤化することもできる。
【0078】
化合物1を座薬として投与することが望ましい場合、典型的な基剤を用いることができる。カカオバターは従来の座薬基剤であり、ワックスの添加によって改質して融点をわずかに上昇させることができる。特に様々な分子量のポリエチレングリコールを含む水混和性座薬基剤が広く用いられている。
【0079】
化合物1の効果は適切な製剤によって遅延または延長させることができる。例えば、化合物1の徐溶解性ペレットを調製し、錠剤もしくはカプセル中に、または徐放性埋め込み型デバイスとして包含することができる。この技術は、複数の異なる溶出速度のペレットを作製し、カプセルにこれらのペレットの混合物を充填することも含む。錠剤またはカプセルは、予測可能な時間にわたって溶出を阻止する被膜でコーティングすることができる。非経口製剤であっても、化合物1を血清中に徐々に分散させる油性または乳化媒体中に化合物1を溶解または懸濁させることによって、長時間作用させることができる。
【0080】
5.6.使用方法
ヒト及び他の患者における化合物1の効果を判定するモデルとしての、皮膚のUVB照射及び免疫組織化学を用いたリン酸化c−Junの測定の使用方法を本明細書で提供する。このモデルにより、問題となっている化合物が患者においてJNK標的を捉えるかどうかが示され、また、臨床開発における用量選択の指針となる患者における用量−反応の評価が可能となるため、本明細書で提供される方法は化合物1の臨床開発を加速させることができる。
【0081】
健康なヒト皮膚におけるベースラインのリン酸化c−Jun免疫反応性はUVB曝露無しでは低い。UVB照射はリン酸化c−Jun免疫反応性を確実に増加させる。増加はUVB曝露後およそ8時間でプラトーになり始める。JNKの阻害は用量依存性である。したがって、UVB照射及びリン酸化c−Junは、用量−反応の評価を含む、化合物1の評価を行うための、及び化合物1に感受性のある患者集団の特定を行うためのモデルとして用いることができる。
【0082】
一実施形態において、化合物1に感受性のある患者(または患者集団)の特定方法を本明細書で提供し、この方法は、該患者の皮膚の第1部分をUVB照射に曝露すること、該患者の皮膚の該第1部分のサンプルを得ること、該患者の皮膚の該第1部分におけるリン酸化c−Junの量を測定すること、該患者に有効量の化合物1を投与すること、該患者の皮膚の第2部分をUVB照射に曝露すること、該患者の皮膚の該第2部分のサンプルを得ること、該患者の皮膚の該第2部分におけるリン酸化c−Junの量を測定すること、ならびに該患者の皮膚の該第1部におけるリン酸化c−Junのレベルと該患者の皮膚の該第2部分におけるリン酸化c−Junのレベルとを比較することを含み、該患者の皮膚の該第1部分と比較した該患者の皮膚の該第2部分におけるリン酸化c−Junのレベルの減少は、該患者が化合物1に感受性のあることを示す。ある実施形態において、この方法は、疾患の治療または予防に有効な量の化合物1の投与による本明細書で提供される疾患の治療または予防をさらに含む。化合物1に感受性のある患者の特定方法も本明細書で提供され、この方法は、1)UVB照射で照射した患者の皮膚の第1部分から得た第1皮膚サンプルにおけるリン酸化c−Junの量を測定すること、2)該患者に化合物1を投与した後、UVB照射で照射した患者の皮膚の第2部分から得た第2皮膚サンプルにおけるリン酸化c−Junの量を測定すること、ならびに3)該第1皮膚サンプルにおけるリン酸化c−Junのレベルと該第2皮膚サンプルにおけるリン酸化c−Junのレベルとを比較することを含み、該第1皮膚サンプルに対する該第2皮膚サンプルにおけるリン酸化c−Junのレベルの減少は、該患者が化合物1に感受性のあることを示す。本明細書に開示の疾患の治療または予防の方法に用いるための化合物1も本明細書で提供し、この方法は、化合物1に感受性のある患者を特定するための該方法を含む。
【0083】
ある実施形態において、患者の皮膚のUVB照射、化合物1の投与、及び免疫組織化学を用いた皮膚におけるリン酸化c−Jun発現の測定を含む、患者における化合物1の効果の評価方法を本明細書で提供する。患者に化合物1を投与した後、UVB照射で照射した皮膚サンプルにおいて免疫組織化学を用いてリン酸化c−Jun発現を測定することを含む、患者における化合物1の効果の評価方法も本明細書で提供する。一実施形態において、MAPキナーゼのインヒビター(複数可)と併せて化合物1を投与する。一実施形態において、化合物1の効果は、患者における化合物1の用量反応関係である。いくつかの実施形態において、化合物1を経口投与する。ある実施形態において、この方法は、疾患の治療または予防に有効な量の化合物1の投与による本明細書で提供される疾患の治療または予防をさらに含む。本明細書に開示の疾患の治療または予防の方法に用いるための化合物1も本明細書で提供し、この方法は患者における化合物1の効果を評価するための該方法を含む。
【0084】
さらに、患者の皮膚におけるリン酸化c−Junを測定することによって患者におけるJNKの阻害を評価する方法を本明細書で提供する。一実施形態において、該患者の皮膚の第1部分をUVB照射に曝露すること、該患者の皮膚の該第1部分のサンプルを得ること、該患者の皮膚の該第1部分におけるリン酸化c−Junの量を測定すること、該患者に化合物1を投与すること、該患者の皮膚の第2部分をUVB照射に曝露すること、該患者の皮膚の該第2部分のサンプルを得ること、該患者の皮膚の該第2部分におけるリン酸化c−Junの量を測定すること、ならびに該患者の皮膚の該第1部におけるリン酸化c−Junのレベルと該患者の皮膚の該第2部分におけるリン酸化c−Junのレベルとを比較することによって、患者におけるJNKの阻害を測定する方法を本明細書で提供するが、この方法では、該患者の皮膚の該第1部分と比較した該患者の皮膚の該第2部分におけるリン酸化c−Junのレベルの減少がJNKの阻害を示す。ある実施形態において、この方法は、疾患の治療または予防に有効な量の化合物1の投与による本明細書で提供される疾患の治療または予防をさらに含む。患者におけるJNKの阻害を評価するための方法も本明細書で提供され、この方法は、1)UVB照射で照射した患者の皮膚の第1部分から得た第1皮膚サンプルにおけるリン酸化c−Junの量を測定すること、2)該患者に化合物1を投与した後、UVB照射で照射した患者の皮膚の第2部分から得た第2皮膚サンプルにおけるリン酸化c−Junの量を測定すること、ならびに3)該第1皮膚サンプルにおけるリン酸化c−Junのレベルと該第2皮膚サンプルにおけるリン酸化c−Junのレベルとを比較することを含み、該第1皮膚サンプルに対する該第2皮膚サンプルにおけるリン酸化c−Junのレベルの減少が、JNKの阻害を示す。本明細書に開示の疾患の治療または予防の方法に用いるための化合物1も本明細書で提供し、この方法は患者におけるJNKの阻害を評価するための該方法を含む。
【0085】
別の実施形態では、患者における化合物1の投与のための用量反応関係を決定する方法を提供する。この方法は、該患者への様々な用量(例えば約1mg〜1000mg)の化合物1の投与と、該患者の皮膚の第1部分をUVB照射に曝露すること、該患者の皮膚の該第1部分のサンプルを得ること、該患者の皮膚の該第1部分におけるリン酸化c−Junの量を測定すること、該患者にある用量の化合物1を投与すること、該患者の皮膚の第2部分をUVB照射に曝露すること、該患者の皮膚の該第2部分のサンプルを得ること、該患者の皮膚の該第2部分におけるリン酸化c−Junの量を測定すること、ならびに該患者の皮膚の該第1部におけるリン酸化c−Junのレベルと該患者の皮膚の該第2部分におけるリン酸化c−Junのレベルとを比較することを含む、各用量の化合物1に起因する該患者におけるJNK阻害の量の決定とを含み、該患者の皮膚の該第1部分と比較した該患者の皮膚の該第2部分におけるリン酸化c−Junのレベルの減少は、化合物1によるJNKの阻害に比例する。ある実施形態において、この方法は、疾患の治療または予防に有効な量の化合物1の投与による本明細書で提供される疾患の治療または予防をさらに含む。化合物1の投与の用量反応関係の決定方法も本明細書で提供され、この方法は、1)UVB照射で照射した患者の皮膚の第1部分から得た第1皮膚サンプルにおけるリン酸化c−Junの量を測定すること、2)該患者にある用量の化合物1を投与した後、UVB照射で照射した患者の皮膚の第2部分から得た第2皮膚サンプルにおけるリン酸化c−Junの量を測定すること、ならびに3)該第1皮膚サンプルにおけるリン酸化c−Junのレベルと該第2皮膚サンプルにおけるリン酸化c−Junのレベルとを比較することを含み、該第1皮膚サンプルに対する該第2皮膚サンプルにおけるリン酸化c−Junのレベルの減少はJNKの阻害に比例する。本明細書に開示の疾患の治療または予防の方法に用いるための化合物1も本明細書で提供し、この方法は、化合物1の投与における用量反応関係を決定するための該方法を含む。
【0086】
他の実施形態において、患者におけるJNKに関連する疾患または病態の治療または管理のための化合物1の有効量の決定方法を提供し、この方法は、該患者への様々な用量(例えば約1mg〜1000mg)の化合物1の投与と、該患者の皮膚の第1部分をUVB照射に曝露すること、該患者の皮膚の該第1部分のサンプルを得ること、該患者の皮膚の該第1部分におけるリン酸化c−Junの量を測定すること、該患者にある用量の化合物1を投与すること、該患者の皮膚の第2部分をUVB照射に曝露すること、該患者の皮膚の該第2部分のサンプルを得ること、該患者の皮膚の該第2部分におけるリン酸化c−Junの量を測定すること、ならびに該患者の皮膚の該第1部におけるリン酸化c−Junのレベルと該患者の皮膚の該第2部分におけるリン酸化c−Junのレベルとを比較することを含む、各用量の化合物1に起因する該患者におけるJNK阻害の量の決定とを含み、該患者の皮膚の該第1部分と比較した該患者の皮膚の該第2部分におけるリン酸化c−Junのレベルの50%の減少が、有効量の化合物1の投与を示す。ある実施形態において、この方法は、疾患の治療または予防に有効な量の化合物1の投与による本明細書で提供される疾患の治療または予防をさらに含む。化合物1の有効量の決定方法も本明細書で提供され、この方法は、1)UVB照射で照射した患者の皮膚の第1部分から得た第1皮膚サンプルにおけるリン酸化c−Junの量を測定すること、2)該患者にある用量の化合物1を投与した後、UVB照射で照射した患者の皮膚の第2部分から得た第2皮膚サンプルにおけるリン酸化c−Junの量を測定すること、ならびに3)該第1皮膚サンプルにおけるリン酸化c−Junのレベルと該第2皮膚サンプルにおけるリン酸化c−Junのレベルとを比較することを含み、該第1皮膚サンプルに対する該第2皮膚サンプルにおけるリン酸化c−Junのレベルの50%の減少が、有効量の化合物1の投与を示す。本明細書に開示の疾患の治療または予防の方法に用いるための化合物1も本明細書で提供し、この方法は化合物1の有効量を決定するための該方法を含む。
【0087】
さらに別の実施形態では、化合物1による治療に対する患者のコンプライアンスの監視方法を提供する。この方法は、患者の皮膚のサンプル中で発現したリン酸化c−Junまたはc−Junのレベルを測定すること、及び対照非治療サンプルでの発現レベルと比較して、患者の皮膚のサンプルにおいて発現レベルが増加または減少するかどうか判定することを含み、発現の減少が、化合物1による治療に対する患者のコンプライアンスを示す。ある実施形態において、この方法は、疾患の治療または予防に有効な量の化合物1の投与による本明細書で提供される疾患の治療または予防をさらに含む。
【0088】
別の実施形態では、化合物1に反応する可能性を有すると判定されている、または感受性があると判定されている患者(または患者集団)への化合物1の投与を含む、患者(または患者集団)の治療方法を本明細書で提供する。
【0089】
本明細書で提供される方法によって治療可能または予防可能な疾患としては、肝臓線維性障害、例えば非アルコール性脂肪肝炎、脂肪症(すなわち脂肪肝)、肝硬変、原発性硬化性胆管炎、原発性胆汁性肝硬変、肝炎、肝細胞癌など、及びアルコールの慢性摂取もしくは反復摂取(アルコール性肝炎)、感染(例えばHCVなどのウイルス感染)、肝臓移植、もしくは薬物性肝障害(例えばアセトアミノフェン中毒)に伴う肝繊維症が挙げられる。いくつかのそのような態様において、本明細書で提供される方法によって治療可能または予防可能な疾患としては、肝臓線維性障害、例えば非アルコール性脂肪肝炎、脂肪症(すなわち脂肪肝)、肝硬変、原発性硬化性胆管炎、原発性胆汁性肝硬変、及び肝炎などをもたらす糖尿病または代謝症候群が挙げられる。
【0090】
別の態様では、本明細書で提供される方法によって治療可能または予防可能な疾患としては、間質性肺線維症、全身性硬化症、強皮症、慢性移植腎症、抗体関連型拒絶反応、または狼瘡が挙げられる。いくつかのそのような実施形態において、狼瘡は紅斑性狼瘡(例えば円板状紅斑性狼瘡、もしくは皮膚紅斑性狼瘡など)または全身性狼瘡である。
【0091】
別の態様では、本明細書で提供される方法によって治療可能または予防可能な疾患または病態としては、JNK1及び/またはJNK2の阻害によって治療可能または予防可能なものが挙げられる。そのような疾患の例としては、関節リウマチ;リウマチ性脊椎炎;骨関節炎;喘息、気管支炎;アレルギー性鼻炎;慢性閉塞性肺疾患;嚢胞性線維症;炎症性腸疾患;過敏性腸症候群;粘液性大腸炎;潰瘍性大腸炎;クローン病;ハンチントン病;肝炎;膵炎;腎炎;多発性硬化症;紅斑性狼瘡;2型糖尿病;肥満症;アテローム性動脈硬化症;血管形成術後の再狭窄;左心室肥大;心筋梗塞;卒中;心臓、肺、腸、腎臓、肝臓、膵臓、脾臓及び脳の虚血性障害;急性または慢性臓器移植拒絶反応;移植のための臓器の保存;臓器不全または四肢喪失(例えば限定はしないが虚血再灌流障害、外傷、全身性障害、自動車事故、圧挫損傷または移植不全に起因するものを含む);移植片対宿主病;エンドトキシンショック;多臓器不全;乾癬;火、化学物質または放射線への曝露による熱傷;湿疹;皮膚炎;皮膚移植;虚血;手術または外傷性損傷(例えば車両事故、銃創、四肢挫傷)に関連する虚血状態;癲癇;アルツハイマー病;パーキンソン病;細菌またはウイルス感染に対する免疫反応;悪液質;血管新生疾患及び増殖性疾患;固形腫瘍;ならびに結腸、直腸、前立腺、肝臓、肺、気管支、膵臓、脳、頭、首、胃、皮膚、腎臓、子宮頚部、血液、喉頭、食道、口、咽頭、膀胱、卵巣または子宮などの様々な組織の癌が挙げられる。
【実施例】
【0092】
6.実施例
以下の実施例は、別途詳細に記載する場合を除いて標準的な技術を用いて実施した。実施例は単に例示的なものであることを意図する。
【0093】
6.1.UV照射方法
成人正常ヒト新生児ケラチノサイト(HEKa)をScienCellから入手した。細胞を10cmディッシュに播種し、インキュベートして付着させ、その後、一晩血清飢餓にした。細胞に50mJ/cmのUVBを照射する1時間前に化合物1を添加した。UVB照射後さらに30分間、細胞を化合物1でインキュベートした。その後、Active Motifの核抽出キットを用いて細胞を溶解させ、核及び細胞質タンパク質を単離した。タンパク質を10%トリス・グリシンゲルで泳動させ、ニトロセルロース膜に転写した。ブロットを1時間ブロッキングした。全c−Jun一次抗体及びリン酸化c−Jun一次抗体を添加して一晩インキュベートした。Licor二次抗体を添加してブロットをLi−Cor Odysseyで読み取った。4ドナーからのHEKa細胞についての結果を図1〜5に示す。50mJ/cmのUVB放射線によるc−JunのSer63におけるリン酸化の増加、及び化合物1による阻害が認められた(図1〜5)。核及び細胞質タンパク質の分離も良好であった(c−Junは核内のみにある)(図1〜4)。化合物1は用量に依存する形でc−JunのSer63におけるリン酸化を阻害する(図5)。
【0094】
6.2.臨床試験実施計画書:健康な被検者における化合物1の複数回投与の薬物動態及び薬力学ならびに食物及び製剤が化合物1の単回投与の薬物動態に及ぼす影響を評価する2部構成第1相試験
主要目的:
【0095】
第1部:ヒト皮膚の紫外線(UV)照射後の化合物1の複数回経口投与がJNK活性に及ぼす影響の評価
【0096】
第2部:食物の存在下における製剤化した化合物1錠剤の薬物動態、及び単回経口投与後の製剤化した化合物1錠剤のカプセル中有効成分(AIC)製剤と比較した相対的生物学的利用能の評価。
【0097】
副次的目的:
【0098】
第1部:化合物1の単回及び複数回経口投与の安全性の評価
【0099】
第2部:食物とともに投与した場合の製剤化した化合物1錠剤の安全性及び忍容性の評価
【0100】
試験デザイン:本試験は、健康な被検者における化合物1の複数投与の薬物動態及び薬力学ならびに食物及び製剤が化合物1の単回投与の薬物動態に及ぼす影響を評価する2部構成第1相試験である。
【0101】
第1部:第1部は、UV照射後のJNK活性に対する化合物1の効果を評価するための非盲検複数回投与3期固定順序試験である。
【0102】
本試験は、スクリーニング段階(−21〜−2日目)、投与前の最小紅斑量(MED)決定、ベースライン(−1日目)、化合物1の用量を増加させて投与する3つの治療/評価期間、及び追跡調査来院からなる。期間中に休薬期間はないものとする。
【0103】
投与後第1日目(ベースライン)、及び各投与期間の第6日目(6、12、及び18日目)に、MED強度の2倍のUV光を被検者の臀部の線引きした部位に照射する。ベースライン(−1日目)の照射は、6、12、及び18日目に予定される照射の時間とほぼ同じ時間、すなわち投与の2時間前に行うこと。UV照射の8時間後、UV曝露部位から皮膚パンチ生検を採取する。入院は19日目に終了する。期間3の最後の投与の7〜10日後(すなわち25日目〜28日目)に、追跡調査委来院を実施する。中止の日から10日以内に、早期中止(ET)来院を実施する。
【0104】
MEDは期間1の投与の10日以内に決定する。MEDが最初の試行で失敗する場合に備えて、MEDを−2日目よりも早く行うことが推奨される。MED評価には入院を必要としない。
【0105】
MEDが適正である16名の健康で適格なスクリーニングされた被検者が、ベースライン評価(生検を2倍のMEDで照射することを含む)について期間1の−1日目に試験実施施設に報告し、入院を開始するものとする。
【0106】
予定されたチェックイン処置後、被検者のベルトラインと臀裂との間の右側上臀部の皮膚試験部位に線引きする。試験部位は最低3cm×3cmとし、被検者をうつ伏せにさせてインクで(皮膚マーカーを用いて)輪郭を描く。被検者は臀部の一方の部位に2倍のMEDのUV照射を受けることになる。UV照射の8時間(+/−10分)後、UV曝露部位から1つのベースライン皮膚パンチ生検を採取する。
【0107】
1日目に、最低8時間の絶食後、被検者はおよそ8AMに試験薬の最初の投与を受ける。
【0108】
すべての被検者は、以下の用量の化合物1を以下の固定順序で投与される。
【0109】
治療A:カプセル中有効成分(AIC)としての60mgの化合物1、1日1回6日間、その後
【0110】
治療B:AICとしての160mgの化合物1、1日1回6日間、その後
【0111】
治療C:AICとしての400mgの化合物1、1日1回6日間
【0112】
各期間中、−1日目から(またはベースラインの2倍のMEDが−1日目の日の早くに予定されている場合には早くも2日目から)、被検者を試験実施施設に居住させてもよく、安全性を十分に検討した上で試験に関する処置が完了した後、19日目に退院させる。
【0113】
試験薬(AICとして)はおよそ240mLの無炭酸水(室温)で経口投与する。各投与期間の第6日目朝の投与後の最初の食事は、投与の4時間後に実施することとする。すべて他の投与日には、投与後最低2時間の絶食の後、次の食事/軽食を出すことができる。
【0114】
ベースライン(−1日目)、6、12、及び18日目に、被検者のベルトラインと臀裂との間の右側上臀部の皮膚試験部位に線引きする。臀部右側を3つの異なる試験部位に分け、ベースライン及び3つの期間のそれぞれ(6日目、12日目、及び18日目)での2倍のMED照射に対して位置を決めた部位1つを割り当てる。各試験部位は可能な限り大きくする(最低3cm×3cm)。被検者をうつ伏せにしてインクで(皮膚マーカーを用いて)試験部位領域に輪郭を描く。
【0115】
被検者は、6、12、及び18日目の試験薬投与の2時間(+/−10分)後に、臀部の一方の部位に2倍のMEDのUV照射を受けることになる。ベースラインでの紫外線照射は、1日目に計画されている投与時間のおよそ2時間後に実施すること。UV曝露部位は左端開始して右端へと移行する順番(すなわちベースラインでは曝露部位1、期間3では曝露部位4)で実施することが推奨される。
【0116】
UV照射の8時間(+/−10分)後、UV曝露部位から1つの皮膚パンチ生検を採取する。試験全体を通して4つの生検を採取することになる、すなわち、ベースライン及び1期間につき1つの生検である。生検は、Celgeneによって指定される第三者によって組織スライドへと処理され、免疫組織化学(ICH)によって分析される。この第三者は治療期間(ベースライン及び投与)に対して盲検化されることとなる。
【0117】
すべての予定された処置が完了した後、19日目に被検者を臨床施設から退院させる。
【0118】
安全性評価のために指定された時点で、有害事象(AE)監視、理学的検査、バイタルサイン、心電図(ECG)、安全性臨床検査評価、及び創傷治癒の評価を行う。
【0119】
化合物1レベルの分析のために、血液サンプルを所定の時点(6、12、及び18日目:投与前、投与0.5、2、4、6、10、12、及び24時間後)で連続して収集する。すべての評価は、事象及び処置の表に従って行う。
【0120】
処置(治療における変更を除く)は、3つの期間全体を通して一貫したものとする。
【0121】
治療期間の間の活動、環境、食物、処置、及びスケジュールは、可能な限り一貫性を維持するべきである。
【0122】
第2部:第2部は3つの期間による非盲検無作為化クロスオーバー試験である。この試験は、スクリーニング段階(−21〜−2日目)、ベースライン(−1日目)、3つの治療/評価期間、及び電話による追跡調査からなる。
【0123】
12名の適格な被検者がベースライン評価のために期間1の1日目に試験実施施設にチェックインすることとする。期間1の1日目に、引き続き試験への参加に適格であるとされた被検者を3つの投与順序の1つに無作為に割り当て、その間、被検者は以下の投与レジメンの1つを受けることとなる。
【0124】
治療D:AICとして100mgの化合物1(×2)の単回経口投与を絶食状態の下で行う。
【0125】
治療E:200mgの化合物1(×1)(製剤化錠剤(複数可))の単回経口投与を絶食状態の下で行う。
【0126】
治療F:200mgの化合物1(×1)(製剤化錠剤(複数可))の単回経口投与を摂食状態(標準的な高脂肪朝食)の下で行う。
【0127】
【表1】
【0128】
すべての被検者は投与前の少なくとも10時間一晩絶食する。治療D及びE(絶食)を受ける被検者は投与後少なくとも4時間絶食を継続する。
【0129】
治療Fについては、投与前30分以内に被検者は標準的な高脂肪(食事の総カロリー含有量のおよそ50%)、高カロリー(およそ800〜1000カロリー)の朝食を摂取する(FDA Center for Drug Evaluation and Research Food Effect Guidance,(FDA,2002)に基づく)。食事は、タンパク質、炭水化物、及び脂質からそれぞれおよそ150、250、及び500〜600カロリーが得られるものとすべきである。被検者は食事を提供されてから30分以内にすべての食事を摂取しなければならない。投与は食事を提供されてから30分(±5分)後に行わなければならない。
【0130】
各試験期間中、被検者は−1日目に試験実施施設に入院する。最後の期間の5日目に試験処置が完了した時点で被検者を試験実施施設から退院させる。最後の化合物1投与から次の予定されている投与まで、少なくとも7日〜10日未満のウォッシュアウト期間によって各治療期間を区切る。各期間中、投与前、投与0.5、1、1.5、2、2.5、3、5、8、12、24、36、48、72、及び96時間後に血液サンプルを連続して収集し、血漿中の化合物1のレベルを測定する。
【0131】
必要であれば、予定された処置の後、期間1及び/または2の5日目の朝に被検者は施設を退院して、次の期間に戻ってきてもよい。ある場合において、互いに合意の上で、より長いウォッシュアウトが許容され得る。
【0132】
試験対象集団:健康な男性及び女性被検者。16名の被検者が第1部に登録する。12名の志願者が第2部に登録する。被検者は第1部または第2部のいずれかのみに参加することができる。
【0133】
試験の期間:第1部:およそ7週間(スクリーニングを含む)。第2部:およそ6週間(スクリーニングを含む)。
【0134】
試験の終了は、試験実施計画書及び/または統計解析計画書に予め規定されるように、試験が完了する最後の被検者の最後の来院日、または最後の被検者から一次、二次及び/または探索的分析に必要な最後のデータポイントを受け取った日のいずれか遅い日と定義する。
【0135】
試験薬:AIC(30mg及び100mgの用量含量)及び製剤化錠剤(200mg)としての化合物1はCelgeneによりバルク容器で供給される。
【0136】
第1部:治療A(60mg):AICとしての30mgの化合物1(×2)、1日1回6日間;治療B(160mg):AICとしての30mgの化合物1(×2)+100mgの化合物1(×1)、1日1回6日間;治療C(400mg):AICとしての100mgの化合物1(×4)、1日1回6日間
【0137】
第2部:治療D:AICとしての100mgの化合物1(×2)(200mg)、絶食状態で1日1回投与;治療E:製剤化錠剤としての化合物1(1×200mg)、絶食状態で1日1回投与;治療F:製剤化錠剤としての化合物1(1×200mg)、摂食状態で1日1回投与
【0138】
安全性評価の概要:試験全体を通して安全性を監視する。安全性評価は、有害事象(AE)報告、PE、バイタルサイン、12誘導ECG、安全性臨床検査(標準的な臨床化学、血液学、及び尿検査に加えて肝機能検査(LFT)、総コレステロール、トリグリセリド、高密度リポタンパク質(HDL)、及び低密度リポタンパク質(LDL)を含む)、併用薬/処置の検討、創傷治癒の評価、ならびに女性被検者に対する妊娠検査を含む。
【0139】
同意文書(ICF)に署名した時点から試験が完了するまでの試験全体を通して、かつ化合物1の最後の投与の後28日以内に試験責任医師が知るところとなった場合に、すべてのAE(及びその後のあらゆる時点で試験責任医師が知るところとなった、IPに関連すると疑われる重篤な有害事象(SAE))を監視して記録する。被検者がICFに署名した時点から研究が完了するまで、すべての併用薬及び処置を検討して記録する。追跡調査来院(第1部)または電話による追跡調査(第2部)をすべての被検者に対して計画する。被検者が何らかの理由で試験を中止した場合、ET来院を実施する。
【0140】
薬物動態評価の概要:試験の両方の部において、指定の時間に血液サンプルを収集して化合物1の血漿レベルを測定する。
【0141】
第1部:6、12、及び18日目の投与前、投与0.5、2、4、6、10、12、及び24時間後に血液/血漿を収集する。
【0142】
定常状態における血漿PKパラメータとしては、次のAUCτ(時間ゼロからタウまでの血漿中濃度−時間曲線下面積、ここでタウは投与間隔である);Cmax(観察された最高血中濃度)、Cmin(観察された最低血中濃度)、Tmax(Cmaxに到達するまでの時間)が挙げられるがこれらに限定されない。
【0143】
第2部:各期間において投与前、投与0.5、1、1.5、2、2.5、3、5、8、12、24、36、48、72、及び96時間後に血液/血漿を収集する。
【0144】
定常状態におけるPKパラメータとしては、次のAUC0−t(時間ゼロから定量化可能な最終濃度までの血漿中濃度−時間曲線下面積);AUC(時間ゼロから無限大時間まで外挿した血漿中濃度−時間曲線下面積);CL/F(経口投与した場合の見かけの総血漿クリアランス);V/F(終末相に基づく、経口投与した場合の見かけの総分布容積);t1/2(終末相排泄半減期);Cmax(観察された最高血中濃度);及びTmax(Cmaxに到達するまでの時間)が挙げられるが、これらに限定される。
【0145】
薬力学評価の概要:MED決定のための個別の紫外線B(UVB)曝露:
【0146】
期間1の最初の投与の10日以内のUVB曝露はUV強度を漸増させたUVBに左臀部の6部位を曝露することからなる。
【0147】
UVB曝露のおよそ24時間後にMED決定。
【0148】
個別のUVB曝露(2倍のMED):
【0149】
ベースライン(−1日目)、ならびに6、12、及び18日目:化合物1投与の2時間後に上臀部の単一部位を2倍のMEDのUVBに曝露。
【0150】
生検の収集:ベースライン(−1日目)、ならびに6、12、及び18日目:UVB照射の8時間後に各試験部位から1つのパンチ生検(直径およそ3mm、深さおよそ0.8mm)を収集する(全部で4つのパンチ生検)。
【0151】
生検サンプルの分析:免疫組織化学(IHC)アッセイによって生検を分析し、リン酸化c−Jun発現を分析する。同一の皮膚生検を用いて、他のバイオマーカー、例えば限定はしないがc−Junなどを調査してよく、別々に報告してよい。
【0152】
リン酸化c−JunのIHCデータは、治療に対して盲検化した熟練者による、アナログスコアリングシステムまたは積分光学密度の自動測定のいずれによっても分析され得る。第1部についてのみ、治療に対して盲検化した熟練者が、組織切片内の染色された表皮ケラチノサイト核の強度及び数に基づいてリン酸化c−JunのIHCデータを0〜4段階で主観的スコアリングを行う。
【0153】
6.3.UV照射の処置
この節は第1部の被検者にのみ適用される。
【0154】
紫外線源:
【0155】
Kodacelフィルターを備えたDermaPal(Daavlin製)(UVランプ)をこの試験において紫外線源として用いる。このランプは、選択する理由は、JNKの活性化を実証している有効な先行試験において用いられたランプと類似するスペクトルを発生させるためである。
【0156】
試験中はすべての被検者のUV照射で同一の紫外線源を用いるべきである。
【0157】
限局された領域のみを確実に曝露するための装置をUVランプに取り付ける。さらに、皮膚の他の領域の不必要な曝露を回避するために適切なシールドを用いる。この装置は原資料に記録する。
【0158】
UVランプの光学的出力のスペクトル分布は試験開始前に(第三者によって)較正されるべきであり、こうした報告書は試験ファイルに保管する。こうした報告書のコピーを試験ファイル中に入れて、試験報告書中で参照すべきである。
【0159】
紫外線源の詳細を原資料及び試験報告書に記録する。
【0160】
非保護皮膚の最小紅斑量(MED)の決定:
【0161】
期間1への登録の7日以内(すなわち−7〜−1日目)に、UV強度を漸増させたUVBに左臀部の6つの非保護部位を曝露する。
【0162】
UV強度の測定:
【0163】
MED決定のためのUV曝露の前に、かつ6日目の2倍のMEDでのUV照射の前に、較正したUVランプから強度測定値(複数可)を取得する。
【0164】
ランプは使用前に少なくとも15分間暖機すべきである。
【0165】
曝露中の被検者の皮膚と同じだけランプから離れた距離で測定値を取得する。強度測定値を原資料に記録して、症例報告書(CRF)に記録する。
【0166】
曝露中は被検者をうつ伏せにするべきである。
【0167】
DermaPalに直接取り付けられた照射プレートに、吸光度:0.0、0.1、0.2、0.3、0.4、及び0.5の6つの直径12.5mmの中性濃度フィルターを装着する。この装置は皮膚に一連のUV強度(例えば100.0%、80.0%、64.0%、51.2%、41.0%及び32.8%)を与える。この装置により、1回の曝露で各被検者の臀部に6つの異なるUVB線量を同時に送達することが可能となる。
【0168】
曝露の継続時間は、フィッツパトリック皮膚タイプに基づいて試験開始前に決定し、E分として試験記録及びCRFに記録する。
【0169】
曝露の開始及び終了時間を原資料及びCRFに各試験部位について記録する。被検者からのランプの距離は一定とする。この距離を測定して原資料及びCRFに記録する。
【0170】
照射のおよそ24時間(±1時間)後、100ワット白熱白色電球で部位を照らし、適格な評価者が紅斑を目視で評価する。
【0171】
MEDは、最小限に認識可能な皮膚発赤を引き起こす(すなわち最小線量のエネルギーを用いて曝露部位の境界の均一な発赤、紅斑等級1を生じる)最低UV線量である。
【0172】
例えば、MEDが第3曝露部位で決定された場合、MEDは総曝露量の64%(または0.64×E分)となる。この例では、2倍のMED曝露は2×0.64×E分となる。これがこの被検者の残りの曝露に用いられる曝露の継続時間となる。
【0173】
最初の曝露後にMEDの決定が不可能であった場合、被検者は最初の曝露から1週間以内に臀部の未処置の部位が再曝露され得る。新たな曝露の継続時間は、最初の曝露の継続時間の±35%以内とすべきである。
【0174】
被検者を再スクリーニングする場合(例えばその後の投与コホートのため)、少なくとも1週間の間隔を空けて追加の曝露が実施され得る。
【0175】
MEDが適正なものとなるために:
【0176】
a.6つの曝露部位のうち少なくとも1つが最小限に認識可能な紅斑の定義を満たさなければならず、かつ
【0177】
b.この部位が最低強度のUVが曝露される場所であってはならない。
【0178】
2倍の曝露中は中性濃度フィルターを用いない。各被検者のMED及び曝露の時間を原資料及びCRFに記録する。
【0179】
MED決定のために被検者を入院させてもよい。
【0180】
紅斑等級段階:
【0181】
以下の段階に従ってUV曝露の24時間(±1時間)後に紅斑を評価する。
【0182】
【表2】
【0183】
いくつかの参照文献を引用したが、その開示全体を参照により本明細書に援用する。
本件出願は、以下の構成の発明を提供する。
(構成1)
2−(tert−ブチルアミノ)−4−((1R,3R,4R)−3−ヒドロキシ−4−メチルシクロヘキシルアミノ)−ピリミジン−5−カルボキサミドまたは薬学的に許容可能なその立体異性体、互変異性体、固体形態、多形体、塩、水和物、クラスレート、もしくは溶媒和物に感受性のある患者の特定方法であって、前記患者の皮膚の第1部分をUVB照射に曝露すること、前記患者の皮膚の前記第1部分のサンプルを得ること、前記患者の皮膚の前記第1部分におけるリン酸化c−Junの量を測定すること、前記患者に有効量の2−(tert−ブチルアミノ)−4−((1R,3R,4R)−3−ヒドロキシ−4−メチルシクロヘキシルアミノ)−ピリミジン−5−カルボキサミドまたは薬学的に許容可能なその立体異性体、互変異性体、固体形態、多形体、塩、水和物、クラスレート、もしくは溶媒和物を投与すること、前記患者の皮膚の第2部分をUVB照射に曝露すること、前記患者の皮膚の前記第2部分のサンプルを得ること、前記患者の皮膚の前記第2部分におけるリン酸化c−Junの量を測定すること、ならびに前記患者の皮膚の前記第1部分におけるリン酸化c−Junのレベルと前記患者の皮膚の前記第2部分におけるリン酸化c−Junのレベルとを比較することを含み、前記患者の皮膚の前記第1部分と比較した前記患者の皮膚の前記第2部分におけるリン酸化c−Junのレベルの減少は、前記患者が2−(tert−ブチルアミノ)−4−((1R,3R,4R)−3−ヒドロキシ−4−メチルシクロヘキシルアミノ)−ピリミジン−5−カルボキサミドまたは薬学的に許容可能なその立体異性体、互変異性体、固体形態、多形体、塩、水和物、クラスレート、もしくは溶媒和物に感受性があることを示す、前記方法。
(構成2)
患者におけるJNKの阻害の評価方法であって、前記患者の皮膚の第1部分をUVB照射に曝露すること、前記患者の皮膚の前記第1部分のサンプルを得ること、前記患者の皮膚の前記第1部分におけるリン酸化c−Junの量を測定すること、前記患者に2−(tert−ブチルアミノ)−4−((1R,3R,4R)−3−ヒドロキシ−4−メチルシクロヘキシルアミノ)−ピリミジン−5−カルボキサミドまたは薬学的に許容可能なその立体異性体、互変異性体、固体形態、多形体、塩、水和物、クラスレート、もしくは溶媒和物を投与すること、前記患者の皮膚の第2部分をUVB照射に曝露すること、前記患者の皮膚の前記第2部分のサンプルを得ること、前記患者の皮膚の前記第2部分におけるリン酸化c−Junの量を測定すること、ならびに前記患者の皮膚の前記第1部分におけるリン酸化c−Junのレベルと前記患者の皮膚の前記第2部分におけるリン酸化c−Junのレベルとを比較することによって、患者におけるJNKの阻害を測定することを含み、前記患者の皮膚の前記第1部分と比較した前記患者の皮膚の前記第2部分におけるリン酸化c−Junのレベルの減少が、JNKの阻害を示す、前記方法。
(構成3)
患者における2−(tert−ブチルアミノ)−4−((1R,3R,4R)−3−ヒドロキシ−4−メチルシクロヘキシルアミノ)−ピリミジン−5−カルボキサミドまたは薬学的に許容可能なその立体異性体、互変異性体、固体形態、多形体、塩、水和物、クラスレート、もしくは溶媒和物の投与の用量反応関係の決定方法であって、前記患者に様々な用量の2−(tert−ブチルアミノ)−4−((1R,3R,4R)−3−ヒドロキシ−4−メチルシクロヘキシルアミノ)−ピリミジン−5−カルボキサミドまたは薬学的に許容可能なその立体異性体、互変異性体、固体形態、多形体、塩、水和物、クラスレート、もしくは溶媒和物を投与することと、前記患者の皮膚の第1部分をUVB照射に曝露すること、前記患者の皮膚の前記第1部分のサンプルを得ること、前記患者の皮膚の前記第1部分におけるリン酸化c−Junの量を測定すること、前記患者にある用量の2−(tert−ブチルアミノ)−4−((1R,3R,4R)−3−ヒドロキシ−4−メチルシクロヘキシルアミノ)−ピリミジン−5−カルボキサミドまたは薬学的に許容可能なその立体異性体、互変異性体、固体形態、多形体、塩、水和物、クラスレート、もしくは溶媒和物を投与すること、前記患者の皮膚の第2部分をUVB照射に曝露すること、前記患者の皮膚の前記第2部分のサンプルを得ること、前記患者の皮膚の前記第2部分におけるリン酸化c−Junの量を測定すること、ならびに前記患者の皮膚の前記第1部分におけるリン酸化c−Junのレベルと前記患者の皮膚の前記第2部分におけるリン酸化c−Junのレベルを比較することを含む、各用量の2−(tert−ブチルアミノ)−4−((1R,3R,4R)−3−ヒドロキシ−4−メチルシクロヘキシルアミノ)−ピリミジン−5−カルボキサミドまたは薬学的に許容可能なその立体異性体、互変異性体、固体形態、多形体、塩、水和物、クラスレート、もしくは溶媒和物に起因する前記患者におけるJNK阻害の量を決定することと、を含み、前記患者の皮膚の前記第1部分と比較した前記患者の皮膚の前記第2部分におけるリン酸化c−Junのレベルの減少は、JNKの阻害に比例する、前記方法。
(構成4)
患者におけるJNKに関連する疾患または病態の治療または管理のための、2−(tert−ブチルアミノ)−4−((1R,3R,4R)−3−ヒドロキシ−4−メチルシクロヘキシルアミノ)−ピリミジン−5−カルボキサミドまたは薬学的に許容可能なその立体異性体、互変異性体、固体形態、多形体、塩、水和物、クラスレート、もしくは溶媒和物の有効量の決定方法であって、前記患者に様々な用量の2−(tert−ブチルアミノ)−4−((1R,3R,4R)−3−ヒドロキシ−4−メチルシクロヘキシルアミノ)−ピリミジン−5−カルボキサミドまたは薬学的に許容可能なその立体異性体、互変異性体、固体形態、多形体、塩、水和物、クラスレート、もしくは溶媒和物を投与することと、前記患者の皮膚の第1部分をUVB照射に曝露すること、前記患者の皮膚の前記第1部分のサンプルを得ること、前記患者の皮膚の前記第1部分におけるリン酸化c−Junの量を測定すること、前記患者にある用量の2−(tert−ブチルアミノ)−4−((1R,3R,4R)−3−ヒドロキシ−4−メチルシクロヘキシルアミノ)−ピリミジン−5−カルボキサミドまたは薬学的に許容可能なその立体異性体、互変異性体、固体形態、多形体、塩、水和物、クラスレート、もしくは溶媒和物を投与すること、前記患者の皮膚の第2部分をUVB照射に曝露すること、前記患者の皮膚の前記第2部分のサンプルを得ること、前記患者の皮膚の前記第2部分におけるリン酸化c−Junの量を測定すること、ならびに前記患者の皮膚の前記第1部分におけるリン酸化c−Junのレベルと前記患者の皮膚の前記第2部分におけるリン酸化c−Junのレベルとを比較することを含む、各用量の2−(tert−ブチルアミノ)−4−((1R,3R,4R)−3−ヒドロキシ−4−メチルシクロヘキシルアミノ)−ピリミジン−5−カルボキサミドまたは薬学的に許容可能なその立体異性体、互変異性体、固体形態、多形体、塩、水和物、クラスレート、もしくは溶媒和物に起因する前記患者におけるJNK阻害の量を決定することと、を含み、前記患者の皮膚の前記第1部分と比較した前記患者の皮膚の前記第2部分におけるリン酸化c−Junのレベルの50%の減少が、有効量の2−(tert−ブチルアミノ)−4−((1R,3R,4R)−3−ヒドロキシ−4−メチルシクロヘキシルアミノ)−ピリミジン−5−カルボキサミドまたは薬学的に許容可能なその立体異性体、互変異性体、固体形態、多形体、塩、水和物、クラスレート、もしくは溶媒和物の投与を示す、前記方法。
(構成5)
2−(tert−ブチルアミノ)−4−((1R,3R,4R)−3−ヒドロキシ−4−メチルシクロヘキシルアミノ)−ピリミジン−5−カルボキサミドまたは薬学的に許容可能なその立体異性体、互変異性体、固体形態、多形体、塩、水和物、クラスレート、もしくは溶媒和物による治療に対する患者のコンプライアンスの監視方法であって、前記患者の皮膚のサンプル中で発現したリン酸化c−Junまたはc−Junのレベルを測定すること、及び対照非治療サンプルでの発現レベルと比較して、前記患者の皮膚の前記サンプルにおいて発現レベルが増加または減少しているかどうかを判定することを含み、発現の減少が、2−(tert−ブチルアミノ)−4−((1R,3R,4R)−3−ヒドロキシ−4−メチルシクロヘキシルアミノ)−ピリミジン−5−カルボキサミドまたは薬学的に許容可能なその立体異性体、互変異性体、固体形態、多形体、塩、水和物、クラスレート、もしくは溶媒和物による治療に対する患者のコンプライアンスを示す、前記方法。
(構成6)
JNKに関連する疾患もしくは病態またはその症状の治療のための、有効量の2−(tert−ブチルアミノ)−4−((1R,3R,4R)−3−ヒドロキシ−4−メチルシクロヘキシルアミノ)−ピリミジン−5−カルボキサミドまたは薬学的に許容可能なその立体異性体、互変異性体、固体形態、多形体、塩、水和物、クラスレート、もしくは溶媒和物の投与をさらに含む、構成1〜5のいずれかに記載の方法。
(構成7)
2−(tert−ブチルアミノ)−4−((1R,3R,4R)−3−ヒドロキシ−4−メチルシクロヘキシルアミノ)−ピリミジン−5−カルボキサミドまたは薬学的に許容可能なその立体異性体、互変異性体、固体形態、多形体、塩、水和物、クラスレート、もしくは溶媒和物を1日約10mg〜約1200mgの量で投与する、構成6に記載の方法。
(構成8)
2−(tert−ブチルアミノ)−4−((1R,3R,4R)−3−ヒドロキシ−4−メチルシクロヘキシルアミノ)−ピリミジン−5−カルボキサミドまたは薬学的に許容可能なその立体異性体、互変異性体、固体形態、多形体、塩、水和物、クラスレート、もしくは溶媒和物を約60mg/日、約160mg/日または約400mg/日の量で投与する、構成7に記載の方法。
(構成9)
2−(tert−ブチルアミノ)−4−((1R,3R,4R)−3−ヒドロキシ−4−メチルシクロヘキシルアミノ)−ピリミジン−5−カルボキサミドまたは薬学的に許容可能なその立体異性体、互変異性体、固体形態、多形体、塩、水和物、クラスレート、もしくは溶媒和物を経口投与する、構成8に記載の方法。
(構成10)
2−(tert−ブチルアミノ)−4−((1R,3R,4R)−3−ヒドロキシ−4−メチルシクロヘキシルアミノ)−ピリミジン−5−カルボキサミドまたは薬学的に許容可能なその立体異性体、互変異性体、固体形態、多形体、塩、水和物、クラスレート、もしくは溶媒和物をカプセルまたは錠剤の形態で投与する、構成9に記載の方法。
(構成11)
前記皮膚を最小紅斑量(MED)の2倍のUVB照射に曝露する、構成1に記載の方法。
(構成12)
2−(tert−ブチルアミノ)−4−((1R,3R,4R)−3−ヒドロキシ−4−メチルシクロヘキシルアミノ)−ピリミジン−5−カルボキサミドまたは薬学的に許容可能なその立体異性体、互変異性体、固体形態、多形体、塩、水和物、クラスレート、もしくは溶媒和物の投与の約2時間後に、UVB照射への皮膚の第2部分の曝露を行う、構成11に記載の方法。
(構成13)
UVB照射に曝露する皮膚の部分が患者の臀部にある、構成12に記載の方法。
(構成14)
UVB照射への皮膚の第2部分の曝露の約8時間後に、前記第2の照射した皮膚のサンプルを得る、構成13に記載の方法。
(構成15)
前記皮膚におけるリン酸化c−Junの量の測定が免疫組織化学分析を含み、一次抗体が前記リン酸化c−Junに対するものであって抗体/リン酸化c−Jun複合体を形成し、発色酵素と結合した二次抗体とのインキュベーションにより着色して前記皮膚における前記一次抗体/リン酸化c−Jun複合体の場所を標示する、構成14に記載の方法。
(構成16)
前記着色標示の主観的スコアリングまたはレーザー走査型サイトメーターを用いた定量分析をさらに含む、構成15に記載の方法。
(構成17)
JNKに関連する前記疾患または病態が、肝臓線維性障害、脂肪症、肝硬変、原発性硬化性胆管炎、原発性胆汁性肝硬変、肝炎、肝細胞癌、またはアルコールの慢性摂取もしくは反復摂取、感染、肝臓移植、もしくは薬物性肝障害に伴う肝繊維症である、構成6に記載の方法。
(構成18)
2−(tert−ブチルアミノ)−4−((1R,3R,4R)−3−ヒドロキシ−4−メチルシクロヘキシルアミノ)−ピリミジン−5−カルボキサミドまたは薬学的に許容可能なその立体異性体、互変異性体、固体形態、多形体、塩、水和物、クラスレート、もしくは溶媒和物に感受性のある患者の特定方法であって、
1)UVB照射で照射した患者の皮膚の第1部分から得た第1皮膚サンプルにおけるリン酸化c−Junの量を測定すること、
2)前記患者に2−(tert−ブチルアミノ)−4−((1R,3R,4R)−3−ヒドロキシ−4−メチルシクロヘキシルアミノ)−ピリミジン−5−カルボキサミドまたは薬学的に許容可能なその立体異性体、互変異性体、固体形態、多形体、塩、水和物、クラスレート、もしくは溶媒和物を投与した後、UVB照射で照射した患者の皮膚の第2部分から得た第2皮膚サンプルにおけるリン酸化c−Junの量を測定すること、ならびに
3)前記第1皮膚サンプルにおけるリン酸化c−Junのレベルと前記第2皮膚サンプルにおけるリン酸化c−Junのレベルとを比較すること、
を含み、前記第1皮膚サンプルに対する前記第2皮膚サンプルにおけるリン酸化c−Junのレベルの減少が、前記患者は2−(tert−ブチルアミノ)−4−((1R,3R,4R)−3−ヒドロキシ−4−メチルシクロヘキシルアミノ)−ピリミジン−5−カルボキサミドまたは薬学的に許容可能なその立体異性体、互変異性体、固体形態、多形体、塩、水和物、クラスレート、もしくは溶媒和物に感受性があることを示す、前記方法。
(構成19)
患者におけるJNKの阻害の評価方法であって、
1)UVB照射で照射した患者の皮膚の第1部分から得た第1皮膚サンプルにおけるリン酸化c−Junの量を測定すること、
2)前記患者に2−(tert−ブチルアミノ)−4−((1R,3R,4R)−3−ヒドロキシ−4−メチルシクロヘキシルアミノ)−ピリミジン−5−カルボキサミドまたは薬学的に許容可能なその立体異性体、互変異性体、固体形態、多形体、塩、水和物、クラスレート、もしくは溶媒和物を投与した後、UVB照射で照射した患者の皮膚の第2部分から得た第2皮膚サンプルにおけるリン酸化c−Junの量を測定すること、ならびに
3)前記第1皮膚サンプルにおけるリン酸化c−Junのレベルと前記第2皮膚サンプルにおけるリン酸化c−Junのレベルとを比較すること、
を含み、前記第1皮膚サンプルに対する前記第2皮膚サンプルにおけるリン酸化c−Junのレベルの減少が、JNKの阻害を示す、前記方法。
(構成20)
患者における2−(tert−ブチルアミノ)−4−((1R,3R,4R)−3−ヒドロキシ−4−メチルシクロヘキシルアミノ)−ピリミジン−5−カルボキサミドまたは薬学的に許容可能なその立体異性体、互変異性体、固体形態、多形体、塩、水和物、クラスレート、もしくは溶媒和物の投与の用量反応関係の決定方法であって、
1)UVB照射で照射した患者の皮膚の第1部分から得た第1皮膚サンプルにおけるリン酸化c−Junの量を測定すること、
2)前記患者にある用量の2−(tert−ブチルアミノ)−4−((1R,3R,4R)−3−ヒドロキシ−4−メチルシクロヘキシルアミノ)−ピリミジン−5−カルボキサミドまたは薬学的に許容可能なその立体異性体、互変異性体、固体形態、多形体、塩、水和物、クラスレート、もしくは溶媒和物を投与した後、UVB照射で照射した患者の皮膚の第2部分から得た第2皮膚サンプルにおけるリン酸化c−Junの量を測定すること、ならびに
3)前記第1皮膚サンプルにおけるリン酸化c−Junのレベルと前記第2皮膚サンプルにおけるリン酸化c−Junのレベルとを比較すること、
を含み、前記第1皮膚サンプルに対する前記第2皮膚サンプルにおけるリン酸化c−Junのレベルの減少がJNKの阻害に比例する、前記方法。
(構成21)
患者におけるJNKに関連する疾患または病態の治療または管理のための、2−(tert−ブチルアミノ)−4−((1R,3R,4R)−3−ヒドロキシ−4−メチルシクロヘキシルアミノ)−ピリミジン−5−カルボキサミドまたは薬学的に許容可能なその立体異性体、互変異性体、固体形態、多形体、塩、水和物、クラスレート、もしくは溶媒和物の有効量の決定方法であって、
1)UVB照射で照射した患者の皮膚の第1部分から得た第1皮膚サンプルにおけるリン酸化c−Junの量を測定すること、
2)前記患者にある用量の2−(tert−ブチルアミノ)−4−((1R,3R,4R)−3−ヒドロキシ−4−メチルシクロヘキシルアミノ)−ピリミジン−5−カルボキサミドまたは薬学的に許容可能なその立体異性体、互変異性体、固体形態、多形体、塩、水和物、クラスレート、もしくは溶媒和物を投与した後、UVB照射で照射した患者の皮膚の第2部分から得た第2皮膚サンプルにおけるリン酸化c−Junの量を測定すること、ならびに
3)前記第1皮膚サンプルにおけるリン酸化c−Junのレベルと前記第2皮膚サンプルにおけるリン酸化c−Junのレベルとを比較すること、
を含み、前記第1皮膚サンプルに対する前記第2皮膚サンプルにおけるリン酸化c−Junのレベルの50%の減少が、有効量の2−(tert−ブチルアミノ)−4−((1R,3R,4R)−3−ヒドロキシ−4−メチルシクロヘキシルアミノ)−ピリミジン−5−カルボキサミドまたは薬学的に許容可能なその立体異性体、互変異性体、固体形態、多形体、塩、水和物、クラスレート、もしくは溶媒和物の投与を示す、前記方法。
(構成22)
前記皮膚サンプルの前記皮膚が最小紅斑量(MED)の2倍のUVB照射に曝露されている、構成18〜21のいずれかに記載の方法。
(構成23)
前記第2皮膚サンプルの前記皮膚が、2−(tert−ブチルアミノ)−4−((1R,3R,4R)−3−ヒドロキシ−4−メチルシクロヘキシルアミノ)−ピリミジン−5−カルボキサミドまたは薬学的に許容可能なその立体異性体、互変異性体、固体形態、多形体、塩、水和物、クラスレート、もしくは溶媒和物の投与の約2時間後にUVB照射で照射されている、構成18〜22のいずれかに記載の方法。
(構成24)
前記皮膚サンプルが前記患者の臀部のUVB照射で照射した皮膚の部分から得られた、構成18〜23のいずれかに記載の方法。
(構成25)
前記第2皮膚サンプルが前記皮膚のUVB照射への曝露の約8時間後に得られる、構成18〜24のいずれかに記載の方法。
(構成26)
皮膚サンプルにおけるリン酸化c−Junの量の測定が免疫組織化学分析を含み、一次抗体が前記リン酸化c−Junに対して向けられ、抗体/リン酸化c−Jun複合体を形成し、発色酵素と結合した二次抗体でのインキュベーションにより着色して前記皮膚サンプルにおける前記一次抗体/リン酸化c−Jun複合体の場所を標示する、構成18〜25のいずれかに記載の方法。
(構成27)
前記着色標示の主観的スコアリングまたはレーザー走査型サイトメーターを用いた定量分析をさらに含む、構成26に記載の方法。
(構成28)
構成18〜27のいずれか1項に記載の方法を含むJNKに関連する疾患もしくは病態またはその症状の治療方法において用いるための、2−(tert−ブチルアミノ)−4−((1R,3R,4R)−3−ヒドロキシ−4−メチルシクロヘキシルアミノ)−ピリミジン−5−カルボキサミドまたは薬学的に許容可能なその立体異性体、互変異性体、固体形態、多形体、塩、水和物、クラスレート、もしくは溶媒和物。
(構成29)
前記方法が1日約10mg〜約1200mgの量の前記化合物または前記薬学的に許容可能なその立体異性体、互変異性体、固体形態、多形体、塩、水和物、クラスレート、もしくは溶媒和物を投与することを含む、構成28に記載の使用のための2−(tert−ブチルアミノ)−4−((1R,3R,4R)−3−ヒドロキシ−4−メチルシクロヘキシルアミノ)−ピリミジン−5−カルボキサミドまたは薬学的に許容可能なその立体異性体、互変異性体、固体形態、多形体、塩、水和物、クラスレート、もしくは溶媒和物。
(構成30)
前記方法が約60mg/日、約160mg/日または約400mg/日の量の前記化合物または前記薬学的に許容可能なその立体異性体、互変異性体、固体形態、多形体、塩、水和物、クラスレート、もしくは溶媒和物を投与することを含む、構成29に記載の使用のための2−(tert−ブチルアミノ)−4−((1R,3R,4R)−3−ヒドロキシ−4−メチルシクロヘキシルアミノ)−ピリミジン−5−カルボキサミドまたは薬学的に許容可能なその立体異性体、互変異性体、固体形態、多形体、塩、水和物、クラスレート、もしくは溶媒和物。
(構成31)
前記方法が前記化合物または前記薬学的に許容可能なその立体異性体、互変異性体、固体形態、多形体、塩、水和物、クラスレート、もしくは溶媒和物を経口的に投与することを含む、構成29または30に記載の使用のための2−(tert−ブチルアミノ)−4−((1R,3R,4R)−3−ヒドロキシ−4−メチルシクロヘキシルアミノ)−ピリミジン−5−カルボキサミドまたは薬学的に許容可能なその立体異性体、互変異性体、固体形態、多形体、塩、水和物、クラスレート、もしくは溶媒和物。
(構成32)
前記方法が前記化合物または前記薬学的に許容可能なその立体異性体、互変異性体、固体形態、多形体、塩、水和物、クラスレート、もしくは溶媒和物をカプセルまたは錠剤の形態で投与することを含む、構成31に記載の使用のための2−(tert−ブチルアミノ)−4−((1R,3R,4R)−3−ヒドロキシ−4−メチルシクロヘキシルアミノ)−ピリミジン−5−カルボキサミドまたは薬学的に許容可能なその立体異性体、互変異性体、固体形態、多形体、塩、水和物、クラスレート、もしくは溶媒和物。
(構成33)
JNKに関連する前記疾患または病態が、肝臓線維性障害、脂肪症、肝硬変、原発性硬化性胆管炎、原発性胆汁性肝硬変、肝炎、肝細胞癌、またはアルコールの慢性摂取もしくは反復摂取、感染、肝臓移植、もしくは薬物性肝障害に伴う肝繊維症からなる群から選択される、構成29〜32のいずれかに記載の使用のための2−(tert−ブチルアミノ)−4−((1R,3R,4R)−3−ヒドロキシ−4−メチルシクロヘキシルアミノ)−ピリミジン−5−カルボキサミドまたは薬学的に許容可能なその立体異性体、互変異性体、固体形態、多形体、塩、水和物、クラスレート、もしくは溶媒和物。
図1
図2
図3
図4
図5