特許第6903651号(P6903651)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ センター フォア アブラシブズ アンド リフラクトリーズ リサーチ アンド ディベロップメント ツェー アー エァ エァ デー ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツングの特許一覧

特許6903651インベストメントキャスティング用モールド、このようなモールドを作製する方法及びその使用
<>
  • 特許6903651-インベストメントキャスティング用モールド、このようなモールドを作製する方法及びその使用 図000005
  • 特許6903651-インベストメントキャスティング用モールド、このようなモールドを作製する方法及びその使用 図000006
  • 特許6903651-インベストメントキャスティング用モールド、このようなモールドを作製する方法及びその使用 図000007
  • 特許6903651-インベストメントキャスティング用モールド、このようなモールドを作製する方法及びその使用 図000008
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6903651
(24)【登録日】2021年6月25日
(45)【発行日】2021年7月14日
(54)【発明の名称】インベストメントキャスティング用モールド、このようなモールドを作製する方法及びその使用
(51)【国際特許分類】
   B22C 9/04 20060101AFI20210701BHJP
【FI】
   B22C9/04 E
【請求項の数】16
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2018-520650(P2018-520650)
(86)(22)【出願日】2016年7月8日
(65)【公表番号】特表2018-520887(P2018-520887A)
(43)【公表日】2018年8月2日
(86)【国際出願番号】EP2016066241
(87)【国際公開番号】WO2017009216
(87)【国際公開日】20170119
【審査請求日】2019年7月4日
(31)【優先権主張番号】15306147.8
(32)【優先日】2015年7月10日
(33)【優先権主張国】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】514131294
【氏名又は名称】センター フォア アブラシブズ アンド リフラクトリーズ リサーチ アンド ディベロップメント ツェー アー エァ エァ デー ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング
(74)【代理人】
【識別番号】100094569
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 伸一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100088694
【弁理士】
【氏名又は名称】弟子丸 健
(74)【代理人】
【識別番号】100103610
【弁理士】
【氏名又は名称】▲吉▼田 和彦
(74)【代理人】
【識別番号】100084663
【弁理士】
【氏名又は名称】箱田 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100093300
【弁理士】
【氏名又は名称】浅井 賢治
(74)【代理人】
【識別番号】100119013
【弁理士】
【氏名又は名称】山崎 一夫
(74)【代理人】
【識別番号】100123777
【弁理士】
【氏名又は名称】市川 さつき
(74)【代理人】
【識別番号】100111796
【弁理士】
【氏名又は名称】服部 博信
(72)【発明者】
【氏名】クルムライ トマス
(72)【発明者】
【氏名】グラディック スコット
(72)【発明者】
【氏名】フルッリ ダニーロ
(72)【発明者】
【氏名】ヴォルフ ヨアヒム
【審査官】 池ノ谷 秀行
(56)【参考文献】
【文献】 特表2004−528988(JP,A)
【文献】 特表2003−507189(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2014/0194328(US,A1)
【文献】 特表2004−519334(JP,A)
【文献】 国際公開第2014/094722(WO,A2)
【文献】 特開平07−047444(JP,A)
【文献】 米国特許第05677371(US,A)
【文献】 RU 2146983 C1,ロシア,2000年 3月27日
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B22C 1/00−9/30
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
炉ダストを含むインベストメントキャスティング用モールドを調製するためのスラリーであって、前記炉ダストが、ZrO2含むことを特徴とするスラリー
【請求項2】
金属酸化物ダストを含むインベストメントキャスティング用モールドを調製するためのスラリーであって、前記金属酸化物ダストが、ZrO2、ならびにアルミナ、シリカ及びアルミノケイ酸塩から選択される1種又は複数の物質を含み、前記金属酸化物ダストが10μm以下のd50を有することを特徴とするスラリー
【請求項3】
前記炉ダスト又は金属酸化物ダストが、前記インベストメントキャスティング用モールドの全固体含有量に対して、0.5〜25質量%の量で存在するように配合された、請求項1又は2に記載のスラリー
【請求項4】
前記金属酸化物ダストが、75質量%超のシリカ及び最大で25質量%のZrO2を含む、請求項2又は3に記載のスラリー
【請求項5】
前記金属酸化物ダストが、40質量%超のアルミナ、25〜50質量%のシリカ及び5〜25質量%のZrO2を含む、請求項2又は3に記載のスラリー
【請求項6】
前記炉ダスト又は金属酸化物ダストが、アルミナ、シリカ、アルミノケイ酸塩及びZrO2以外の不純物を3質量%以下含む、請求項1〜5のいずれか1項に記載のスラリー
【請求項7】
前記炉ダスト又は金属酸化物ダストが5μm以下のd50を有する、は前記炉ダスト又は金属酸化物ダストが50μm以下のd90を有する、は前記炉ダスト又は金属酸化物ダストが100μm以下のd99を有する、請求項1〜6のいずれか1項に記載のスラリー
【請求項8】
前記炉ダスト又は金属酸化物ダストが、ルチモーダル粒子サイズ分布を有する、請求項1〜7のいずれか1項に記載のスラリー
【請求項9】
メタ)カオリンをさらに含、請求項1〜8のいずれか1項に記載のスラリー
【請求項10】
前記金属酸化物ダストが、溶融ジルコニア又は溶融アルミナ−ジルコニアの生成からの副生成物として得られるダストである、請求項2〜9のいずれか1項に記載のスラリー
【請求項11】
セラミック繊維及び/又は有機繊維をさらに含む、請求項1〜10のいずれか1項に記載のスラリー
【請求項12】
水ベーススラリー又はアルコールベーススラリーある、請求項1〜11のいずれか1項に記載のスラリー
【請求項13】
前記スラリーの全量に対して60質量%以上のフィラー充填量、及びザーン4に準拠した35秒以下の粘度を有する請求項1又は1に記載のスラリー
【請求項14】
インベストメントキャスティング用モールドを生成するための、請求項1〜1のいずれか1項に記載のスラリーの使用。
【請求項15】
求項1〜1のいずれか1項に記載のスラリーの施用を含む、インベストメントキャスティング用モールドを形成する方法。
【請求項16】
キャスト物品の生成における、請求項1〜1のいずれか1項に記載のスラリーの使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ZrO2含有金属酸化物ダストを含むインベストメントキャスティング用モールド(investment casting mould)に関する。本発明はまた、インベストメントキャスティング用モールドを生成するための、ZrO2含有及び/もしくはAl23含有金属酸化物ダスト又は炉ダストを含む組成物、ならびにこのような組成物及びインベストメントキャスティング用モールドにおいて、ある種の金属酸化物の生成法及び処理法で副生物として生成する、例えば炉ダストなどの金属酸化物ダストの使用に関する。同様に、本発明によるインベストメントキャスティング用モールドの使用、及びそれから得られる生成物も開示される。
【背景技術】
【0002】
アーク炉技法による、例えば、溶融ジルコニア、溶融アルミナ−ジルコニア又は褐色溶融アルミナ及び半脆弱性(semi−friable)アルミナなどの様々な溶融金属酸化物の製造により、副生物として炉ダストが得られる。ほとんどの工業先進国におけるプラントでは、環境規制に従ってこれらの炉ダストを回収し、ある方法で廃棄又は使用する必要がある。その問題の初期の議論では、米国特許第4,297,309号は、容易な保管及び輸送のために、電気炉から生じるシリカダストを圧縮して乾燥する方法を開示している。しかし、これらの副生物を再利用する用途又は機会は、ほとんど知られていない。
ロストワックスキャスティングとしても知られているインベストメントキャスティングは、公知の最も古い金属成形技法の1つである。インベストメントキャスティングにより、高精度及び再現性を備えた小型のキャスティング物の生成が可能になる。インベストメントキャスティングは、他の技法を用いて得ることが困難又は不可能と思われる、複雑な形状を得るために使用することができる。
【0003】
一般に、インベストメントキャスティング用モールドは、(a)スタッコ(stucco)、(b)セラミックスラリーからのフィラー充填物、及び(c)セラミックスラリーからの結合材の固形部分に由来する固体から形成され、パターン消耗品をセラミックスラリーに繰り返し浸漬することによって生成される。各浸漬工程の後、上記のパターンに付着しているスラリーは、乾燥されて、固形のグリーンセラミック層を形成する。乾燥前に、このスラリーは、乾燥した耐火性微粒子組成物であるスタッコにより被覆されてもよく、又は被覆されなくてもよい。このように、インベストメントキャスティング用モールドは、層ごとに生成される。その後のスラリー及びスタッコ層の施用の前には、前の層は乾燥していなければならない。インベストメントキャスティングにおいて使用するためのセラミックスラリーは、水ベース又はアルコールベース無機結合材(コロイド状シリカなど)、耐火性フィラー粉末及び有機添加物(湿潤剤、消泡剤、殺生物剤など)、ならびに/又は液状ポリマーなどのグリーン強度強化剤を用いて通常、作製される。
【0004】
米国特許第8,087,450(B2)号は、インベストメントキャスティング用モールドを形成するためのスラリー中に、結合材及び耐火性フィラーに加えて、追加の構成成分として、例えばヒュームドシリカなどの、ヒュームド金属酸化物の使用を開示している。ヒュームド金属酸化物又は熱分解法(pyrogenic)金属酸化物は意図的に生成され、その生成法のためにかなり高価である。
インベストメントキャスティング用モールドを生成するために、スラリー中でマイクロシリカ又はシリカヒュームを使用することが、例えば、米国特許第6,540,013(B1)号などに広範に記載されている。インベストメントキャスティングシェルに少なくとも1種のマイクロシリカを約5質量%組み込むと、該シェルの強度及び固体レベルが、効果的に向上することが見出された。
【0005】
国際公開第2006/107345号は、インベストメントキャスティングシェルモールド及びその製造方法において、繊維を使用することをさらに開示している。この繊維は、小さく刻まれているか、又はミル粉砕されている有機物又は無機物とすることができる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
一層優れた強度及びより高い固体レベルを得る方法、ならびにより効率的な形成方法が、常に、求められている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、添付の特許請求の範囲において定義される。
特に、本発明は、ZrO2及び/又はAl23を含む炉ダストを含むインベストメントキャスティング用モールドによって具体化される。
【0008】
本発明は、金属酸化物ダストを含むインベストメントキャスティング用モールドによってさらに具体化され、金属酸化物ダストは、ZrO2、ならびにアルミナ、シリカ及びアルミノケイ酸塩から選択される1種又は複数の物質を含み、金属酸化物ダストは、10μm以下のd50を有する。
本発明によるインベストメントキャスティング用モールドは、従来技術によるものよりも、改善された又は同等の強度、及び改善された又は良好な固体レベルを有することが見出された。形成方法がより迅速となることも見出された。
本発明の一実施形態によれば、金属酸化物ダスト又は炉ダストは、インベストメントキャスティング用モールド中に、該モールドの全固体含有量に対して、0.5〜25質量%の量で存在する。金属酸化物ダストのこうした量により、利点が最も顕著に得られたことが分かった。
【0009】
本発明の一実施形態によれば、インベストメントキャスティング用モールド中に存在する金属酸化物ダストは、75質量%超のシリカ及び最大25質量%のZrO2を含む。本発明の一実施形態によれば、インベストメントキャスティング用モールド中に存在する金属酸化物ダストは、40質量%超のアルミナ、25〜50質量%のシリカ及び5〜25質量%のZrO2を含む。このような組成物により、従来技術よりも、とりわけ大きな改善がもたらされることが分かった。
本発明の一実施形態によれば、インベストメントキャスティング用モールドに含まれる金属酸化物ダスト又は炉ダストは、アルミナ、シリカ、アルミノケイ酸塩及びZrO2以外の不純物を3質量%以下含む。より高い不純物レベルでは、従来技術を超える改善は、望まれるほど顕著ではないことが分かった。
【0010】
本発明の一実施形態によれば、インベストメントキャスティング用モールドに含まれる金属酸化物ダスト又は炉ダストは、5μm以下のd50を有する。本発明の一実施形態によれば、インベストメントキャスティング用モールドに含まれる金属酸化物ダスト又は炉ダストは、50μm以下のd90を有する。本発明のさらなる一実施形態によれば、インベストメントキャスティング用モールドの金属酸化物に含まれる金属酸化物ダスト又は炉ダストは、100μm以下のd99を有する。このような特定の粒子サイズ分布を有する金属酸化物ダスト又は炉ダストを特に用いると、利点が得られることが分かった。本発明によれば、d50、d90及びd99に関する明記された値は、独立して、又は組み合わせて存在することができる。
本発明の一実施形態によれば、インベストメントキャスティング用モールドに含まれる金属酸化物ダスト又は炉ダストは、例えばバイモーダル粒子サイズ分布などのマルチモーダル粒子サイズ分布を有する。このような粒子サイズ分布を用いると、良好な改善を得ることができることが分かった。
【0011】
本発明の一実施形態によれば、本インベストメントキャスティング用モールドは、カオリンをさらに含む。本発明のさらなる実施形態によれば、本インベストメントキャスティング用モールドは、いかなるヒュームドシリカも含まない。カオリン、又はやはり考えられるメタカオリンの存在により、最終生成物に良好な特性がもたらされることが分かった。
【0012】
本発明の一実施形態によれば、インベストメントキャスティング用モールドに含まれている金属酸化物ダストは炉ダストである。炉ダストは、例えば、電気アーク炉において、溶融ジルコニア又は溶融アルミナ−ジルコニアの生成から、副生物として得ることができる。炉ダストは、本発明における用途に好適であること、及び本発明は、前記炉ダストを再利用する方法を提供することを見出した。
本発明の一実施形態によれば、前記インベストメントキャスティング用モールドは、有機繊維及び/又はセラミック繊維をさらに含む。このような繊維を添加すると、モールドに安定性がもたらされる。
本発明はまた、インベストメントキャスティング用モールドを生成するための組成物を提供する。本発明による組成物は、上で定義されている金属酸化物ダストを含み、カオリン又はメタカオリンを含んでもよい。
【0013】
本発明の一実施形態によれば、本発明の組成物は、インベストメントキャスティング用モールドを形成するためのスラリーである。例えば、本組成物は、水ベーススラリー又はアルコールベーススラリーとすることができる。インベストメントキャスティング用モールドを形成するためのスラリーにおける本発明の組成物の使用は、従来技術の組成物よりも利点があるものとして示される。
本発明の一実施形態によれば、本発明の組成物は、60質量%以上のフィラー充填量、及びザーンカップ4に準拠した35秒以下の粘度を有するスラリーである。より多量のフィラー充填量を含むスラリーが、インベストメントキャスティング用モールドの形成には有利である。本明細書に記載されている金属酸化物ヒュームの使用により、粘度を許容可能なレベルに維持しながら、フィラー充填量が改善された組成物になることが分かった。
本発明の一実施形態によれば、本発明の組成物は、有機繊維及び/又はセラミック繊維をさらに含む。このような繊維を添加すると、モールドに追加の安定性がもたらされる。
【0014】
同様に、本発明の一部は、インベストメントキャスティング用モールドを生成するための、本明細書で定義されている金属酸化物ダスト又は炉ダストの使用である。この実施形態によれば、そうでなければ、廃棄しなければならないと思われる容易に入手可能な生成物を同時に再利用しながら、インベストメントキャスティング用モールドを作製するための改善された方法及び改善された組成物が得られた。同様に、本明細書で定義されている金属酸化物ダスト又は炉ダストを使用することにより、改善されたインベストメントキャスティング用モールドを得ることができる。
同様に、本発明の一部は、インベストメントキャスティング用モールドを形成する方法であって、本明細書で定義されている金属酸化物ダスト又は炉ダストを施用して、スラリーを形成することを含む、方法である。
同様に、本発明の一部は、キャスト物品の生成において本明細書に記載されているインベストメントキャスティング用モールドを使用すること、同様に、このようなインベストメントキャスティング用モールドから得られるキャスト物品である。
本発明は、以下の図面を参照することにより、さらに例示される。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】本発明において使用するための金属酸化物ダスト組成物のレーザー散乱法によって測定された粒子サイズ分布を示すグラフである(組成物A)。
図2】本発明において使用するための金属酸化物ダスト組成物のレーザー散乱法によって測定された粒子サイズ分布を示すグラフである(組成物B)。
図3】本発明において使用するための金属酸化物ダスト組成物のレーザー散乱法によって測定された粒子サイズ分布を示すグラフである(組成物C)。
図4】金属酸化物ダスト組成物のレーザー散乱法によって測定された粒子サイズ分布を示すグラフであり、その組成物の使用は、本発明の範囲内に収まらない(組成物D)。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下の説明及び図面の参照は、本発明の例示的な実施形態に関するものであり、特許請求の範囲に限定されるべきではないことが理解される。
【0017】
本明細書で使用する場合、用語「シリカヒューム」(CAS番号69012−64−2)又はマイクロシリカは、二酸化ケイ素(SiO2)のアモルファス多形を表し、これは、約150nm、より一般には、80nm〜5μmの平均一次粒子サイズを有する粉末である。シリカヒューム粒子は、最大50μmの直径を有する凝集体を形成する強い傾向を有する。シリカヒュームは、15m2/g超、及び通常、最大30m2/gのBET表面積を有しており、例えば、ケイ素、フェロケイ素又は溶融シリカの生成から副生物として得ることができる。
【0018】
本明細書で使用する場合、用語「ヒュームドシリカ」(CAS番号112945−52−5)又は熱分解法シリカは、凝集する傾向を有する、分岐鎖様粒子に溶融されたアモルファスシリカの微小滴を表す。一次粒子サイズは、5〜50nmの範囲であり、BET表面積は、通常、50〜600m2/gである。ヒュームドシリカは、かなり複雑な熱分解法によって生成される。
本明細書で使用する場合、「コロイド状シリカ」は、水中又はアルコール中などの液相中で、アモルファス性の非多孔質シリカ粒子の懸濁液を表す。
本明細書で使用する場合、用語「溶融シリカ」又は溶融石英は、アモルファス性シリカのガラスを表す。
本明細書で使用する場合、用語「炉ダスト」は、例えば、溶融金属酸化物の製造において使用される電気アーク炉などの炉の作業において、副生物として得られる、任意の微細な微粒子組成物を表す。多くの行政管轄区では、炉ダストは、大気中に放出されるよりはむしろ、環境法に従って回収される。
【0019】
本明細書で使用する場合、用語「金属酸化物ダスト」は、70質量%超の金属酸化物、又は80質量%超の金属酸化物、又は90質量%超の金属酸化物、又は95質量%超の金属酸化物、又は99質量%超の金属酸化物を含むダストなどの、金属酸化物の大部分を含むダストを表す。金属酸化物ダストは、炉ダストとすることができ、いくつかの金属酸化物の混合物を含有していることがある。本明細書で使用する場合、金属酸化物ダストは、d50が50μm以下、又は30μm以下、又は20μm以下、又は15μm以下、又は10μm以下、又は5μm以下となるような、粒子サイズ分布を有することができる。
本明細書で使用する場合、組成物のアルミナ含有量は、組成物中の酸化アルミニウム、及びアルミノケイ酸塩の任意の酸化アルミニウム部分の量を記載している。
本明細書で使用する場合、組成物のシリカ含有量は、組成物中の二酸化ケイ素、及びアルミノケイ酸塩の任意の二酸化ケイ素部分の量を記載している。
本出願の全体にわたり、粒子サイズ分布は、Malvern Mastersizer2000により、レーザー光散乱法を使用して測定した。測定前に、試料を水中で分散し、試料の完全な脱凝集化を行うために、超音波処理を適用した。本明細書で使用する場合、粒子サイズ分布を記載する場合の、値d10、d50、d90及びd99は、場合に応じて、粒子の10%、又は粒子の50%、又は粒子の90%、又は粒子の99%が、その値よりも小さいとすることができる、粒子サイズを定義する。
【0020】
添付の特許請求の範囲による本発明は、インベストメントキャスティングにおいて使用するためのモールドを提供する。本発明の一実施形態によれば、前記インベストメントキャスティング用モールドは、ZrO2含有及び/又はAl23含有炉ダストを含む。本発明の一実施形態によれば、前記インベストメントキャスティング用モールドは、ZrO2含有金属酸化物ダストを含む。金属酸化物ダストは、通常、本発明によるインベストメントキャスティング用モールドに再利用され得る、炉ダストとすることができる。
【0021】
本発明のインベストメントキャスティング用モールドの生成では、金属酸化物ダスト又は炉ダストは、モールド成形用スラリーに組み込まれる。添加物としてのこれらのダストの存在は、スラリーに可塑化作用を及ぼし、粘度の低下、又は逆に言えば、許容可能な粘度において、より多量の固体含有量及び少ない液体含有量を有する安定なスラリーが形成する可能性をもたらす。本発明によるインベストメントキャスティング用モールドを形成するためのセラミックスラリー中の金属酸化物ダスト又は炉ダストの存在により、セラミックスラリーにパターン消耗品を浸漬する工程の後ごとに、層の厚さを増大させることが可能となる。したがって、浸漬工程をほとんど使用しないで、モールドの最終厚さが得られ、これにより、製造方法において、数例を挙げると、モールドの形成方法の利便性(useability)の改善、必要な時間、費用及び作業量、ならびに間違い又は事故を起こす傾向の低下をもたらす。さらに、浸漬工程間のセラミックスラリーに含有する低下した液量を蒸発させるのに、より少ないエネルギーを必要とする。最後に、パターン消耗品における鋭い表面のより均一なコーティングが、本発明によるインベストメントキャスティング用モールドで得られたことが分かった。
理論によって拘泥されることを望むものではないが、スラリーに金属酸化物ダスト又は炉ダストを添加すると、粒子の沈降過程に影響を及ぼすことによる、スラリーのレオロジーが改善されると考えられる。特に、有意な量の粗粒子を含む固体含有物の幅広い粒子サイズ分布を有するスラリーは、粗粒子の沈降速度の低下によって安定化する。
【0022】
本発明によれば、金属酸化物ダスト又は炉ダストは、インベストメントキャスティング用モールドを形成するための浸漬用スラリー中の添加物として使用される。一実施形態では、この施用に使用するための炉ダストは、それらがZrO2含有物及び/又はAl23含有物を含むという点で、特有なものである。一実施形態では、この施用において使用するための金属酸化物ダストは、それらがZrO2含有物、ならびにアルミナ、シリカ及びアルミノケイ酸塩から選択される1種又は複数の物質を含むこと、及びそれらが10μm以下のd50を有するという点で、特有なものである。
【0023】
本発明によれば、浸漬用スラリーに使用するための、金属酸化物ダスト又は炉ダストのZrO2含有量は、金属酸化物ダスト中の固体の総量に対して、1質量%〜25質量%とすることができる。例えば、金属酸化物ダストのZrO2含有量は、金属酸化物ダスト中、2質量%〜22.5質量%、又は3質量%〜20質量%、又は4質量%〜17.5質量%、又は5質量%〜15質量%、又は10質量%〜25質量%、又は10質量%〜20質量%、又は10質量%〜15質量%(例えば、約2.5質量%、又は約5質量%、又は約10質量%、又は約15質量%など)のZrO2含有量とすることができる。
本発明によれば、インベストメントキャスティング用モールドの浸漬用スラリーに使用するための、金属酸化物ダスト又は炉ダストは、d50が10μm以下(例えば、d50が0.5μm〜10μm、又はd50が0.75μm〜8μm、又はd50が1μm〜6μm、又はd50が1.5μm〜5μm、又はd50が0.5μm〜2.5μm、又はd50が0.5μm〜2.0μmなど、例えば、d50が約1μm、又は約2μm、又は約3μm、又は約4μm、又は約5μm、又は約6μm、又は約7μm、又は約8μm、又は約9μm、又は約10μmなど)を有することができる。
【0024】
さらに、インベストメントキャスティング用モールドの浸漬用スラリーに使用するための、金属酸化物ダスト又は炉ダストは、d10が1μm以下(例えば、d10が0.01μm〜1μm、又はd10が0.05μm〜0.9μm、又はd10が1μm〜0.8μm、又はd10が0.2μm〜0.7μm、又はd10が0.1μm〜0.4μmなど、例えば、d10が約0.3μm、又は約0.4μm、又は約0.5μm、又は約0.6μm、又は約0.7μm、又は約0.8μm、又は約0.9μm、又は約1μmなど)を有することができる。
さらに、インベストメントキャスティング用モールドの浸漬用スラリーに使用するための、金属酸化物ダスト又は炉ダストは、d90が50μm以下(例えば、d90が1μm〜50μm、又はd90が2.5μm〜40μm、又はd90が5μm〜30μm、又はd90が10μm〜25μmなど、例えば、d90が約3μm、又は約5μm、又は約10μm、又は約20μm、又は約30μm、又は約40μmなど)を有することができる。
【0025】
さらに、インベストメントキャスティング用モールドの浸漬用スラリーに使用するための、金属酸化物ダスト又は炉ダストは、d99(トップカット(top cut))が100μm以下(例えば、d99が10μm〜100μm、又はd99が20μm〜80μm、又はd99が25μm〜75μm、又はd99が30μm〜70μmなど、例えば、d99が約10μm、又は約20μm、又は約30μm、又は約40μm、又は約50μm、又は約60μm、又は約70μm、又は約80μm、又は約90μm、又は約100μmなど)を有することができる。
【0026】
本発明の一実施形態によれば、インベストメントキャスティング用モールドの浸漬用スラリーに使用するための、金属酸化物ダスト又は炉ダストは、マルチモーダル粒子サイズ分布を有することができる。例えば、粒子サイズ分布はバイモーダルであってもよく、又は粒子サイズ分布はトリモーダルであってもよく、又は粒子サイズ分布はトリモーダルより高いモーダリティを有してもよい。
本明細書で使用する場合、マルチモーダル粒子サイズ分布は、レーザー光散乱法によって得られる粒子のサイズ分布の包絡曲線が、いくつかの別個のピークを示す、粒子サイズ分布である。本明細書で使用する場合、「粒子サイズ分布の包絡曲線」は、指定した試料における粒子のすべてのサイズ分布の曲線を表す。例えば、トリモーダル粒子サイズ分布の場合、レーザー光散乱法によって得られる粒子のサイズ分布の包絡曲線は、3つの別個のピークを示し、バイモーダル粒子サイズ分布の場合、レーザー光散乱法によって得られる粒子のサイズ分布の包絡曲線は、2つの別個のピークを示す。
【0027】
本発明の一実施形態によれば、インベストメントキャスティング用モールドの浸漬用スラリーに使用するための、金属酸化物ダスト又は炉ダストは、BET表面積が5〜20m2/g(例えば、10〜15m2/g、又は10〜20m2/g、又は5〜15m2/gなど、例えば、約7m2/g、又は約8m2/g、又は約9m2/g、又は約10m2/g、又は約11m2/g、又は約12m2/g、又は約13m2/g、又は約14m2/g、又は約15m2/g、約16m2/g、又は約17m2/g、又は約18m2/g、又は約19m2/g、又は約20m2/gなど)を有することができる。
一般に、本発明による使用のための金属酸化物ダスト又は炉ダストは、市販のシリカヒュームより粗くてもよい。
本発明によれば、ZrO2含有金属酸化物ダスト又は炉ダストは、シリカ、アルミナ又はアルミノケイ酸塩のうちの少なくとも1種をさらに含む。例えば、本発明中において使用するためのZrO2含有金属酸化物ダストは、例えば、ジルコニア及びシリカを含有していてもよく、又はそれは、ジルコニア及びアルミナを含有していてもよく、又はそれは、ジルコニア及びアルミノケイ酸塩を含有していてもよく、又はそれは、ジルコニア、アルミナ及びシリカを含有していてもよい。
【0028】
本発明によれば、Al23含有炉ダストは、シリカ又はアルミノケイ酸塩のうちの少なくとも1種をさらに含む。例えば、本発明において使用するためのAl23含有炉ダストは、例えば、Al23及びシリカを含有していてもよく、又はそれは、Al23及びアルミノケイ酸塩を含有していてもよく、又はそれは、Al23、アルミノケイ酸塩及びシリカを含有していてもよい。
【0029】
ある種の実施形態では、本発明において使用するための金属酸化物ダスト又は炉ダストは、25質量%超のシリカ(例えば、25質量%〜50質量%のシリカ、又は30質量%〜45質量%のシリカ、又は35質量%〜40質量%のシリカなど)、又は例えば75質量%超のシリカもしくは80質量%超のシリカ(75質量%〜95質量%のシリカ、又は75質量%〜90質量%のシリカ、又は75質量%〜85質量%のシリカ、又は80質量%〜95質量%のシリカ、又は85質量%〜95質量%のシリカなど)を含むことができる。例えば、本発明において使用するための金属酸化物ダストは、約25質量%のシリカ、又は約30質量%のシリカ、又は約35質量%のシリカ、又は約40質量%のシリカ、又は約45質量%のシリカ、又は約50質量%のシリカ、又は約55質量%のシリカ、又は約60質量%のシリカ、又は約65質量%のシリカ、又は約70質量%のシリカ、又は約75質量%のシリカ、又は約80質量%のシリカを含むことができる。
【0030】
ある種の他の実施形態では、本発明において使用するための金属酸化物ダスト又は炉ダストは、40質量%超のアルミナ(例えば、45質量%超のアルミナ、又は50質量%超のアルミナ、例えば40質量%〜60質量%のアルミナ、又は40質量%〜55質量%のアルミナ、又は40質量%〜50質量%のアルミナ、又は45質量%〜55質量%のアルミナ、又は50質量%〜60質量%のアルミナなど)を含むことができる。例えば、本発明において使用するための金属酸化物ダスト又は炉ダストは、約40質量%のアルミナ、又は約41質量%のアルミナ、又は約42質量%のアルミナ、又は約43質量%のアルミナ、又は約44質量%のアルミナ、又は約45質量%のアルミナ、又は約46質量%のアルミナ、又は約47質量%のアルミナ、又は約48質量%のアルミナ、又は約49質量%のアルミナ、又は約50質量%のアルミナを含むことができる。
ケイ素原子及びアルミニウム原子は、アルミノケイ酸塩の形態の金属酸化物ダストで存在することができる。したがって、本明細書に記載されている通り、ある量のシリカの存在を示す記載はまた、これがアルミノケイ酸塩の酸化ケイ素部分に関する場合も含んでいる。同様に、本明細書に記載されている通り、ある量のアルミナの存在を示す記載はまた、これがアルミノケイ酸塩の酸化アルミニウム部分に関する場合も含んでいる。
本発明によれば、本明細書の上に記載されているZrO2、シリカ及びアルミナの量の可能な組合せのいずれかを有する金属酸化物ダスト又は炉ダストが使用され得る。
【0031】
本発明の一実施形態によれば、金属酸化物ダスト又は炉ダストは、カオリン及びメタカオリンから選択される1種又は複数の物質をさらに含んでもよい。前記カオリンは焼成されてもよく、例えば、完全に焼成されてもよく、又は一部が焼成されてもよい。例えば、カオリン質クレイは、本発明の一実施形態によれば、前記金属酸化物ダストに含まれてもよい。
当業者は、インベストメントキャスティング用モールドが、(a)スタッコ、(b)スラリーからのフィラー充填物、及び(c)スラリーからの結合材の固形部分に由来する固体から形成され得ることを認識しているであろう。したがって、スタッコによって得られるインベストメントキャスティング用モールド中の材料の比は、例えば約60質量%などの30〜80質量%の範囲にあることができる。スラリー中のフィラー部分によって得られるインベストメントキャスティング用モールド中の材料の比は、例えば約30質量%などの10〜50質量%の範囲にあることができる。最後に、スラリー中の固体結合材部分によって得られるインベストメントキャスティング用モールド中の材料の比は、例えば約10質量%などの5〜20質量%の範囲にあることができる。
【0032】
本発明によれば、インベストメントキャスティング用モールドは、インベストメントキャスティング用モールドの全固体含有量に対して、最大約25質量%の前記金属酸化物ダスト、又は炉ダスト(例えば、インベストメントキャスティング用モールドの全固体含有量に対して、0.5質量%〜20質量%、又は0.75質量%〜15質量%、又は1質量%〜10質量%、又は1質量%〜8質量%など、例えば、約0.5質量%、又は約1質量%、又は約1.5質量%、又は約2質量%、又は約3質量%、又は約4質量%、又は約5質量%、又は約6質量%、又は約7質量%、又は約8質量%、又は約9質量%、又は約10質量%、又は約11質量%、又は約12質量%、又は約13質量%、又は約14質量%、又は約15質量%、又は約16質量%、又は約17質量%、又は約18質量%、又は約19質量%、又は約20質量%の金属酸化物ダスト又は炉ダストなど)を含むことができる。
【0033】
本発明の一実施形態によれば、本発明において使用するための金属酸化物ダストは、3質量%以下の不純物を含有し得る。本明細書で使用する場合、金属酸化物ダスト中の不純物は、ZrO2、シリカ、アルミナ又はアルミノケイ酸塩以外の何かが考えられる。例えば、本発明において使用するための金属酸化物ダストは、2質量%以下の不純物、又は1質量%以下の不純物、又は0.5質量%以下の不純物を含有し得る。同様に、本発明の一部は、本発明のインベストメントキャスティング用モールドを作製するための組成物である。これらの組成物は、水ベース又はアルコールベーススラリーとすることができる。前記組成物が、スタッコする際には、乾燥微粒子粉末で使用されることも考えられる。明記したスラリーは、本発明において使用するための金属酸化物ダスト又は炉ダストを、該スラリーのフィラー充填量に対して、最大約25質量%の前記金属酸化物ダスト又は炉ダスト(例えば、スラリーのフィラー充填物の含有量に対して、0.5質量%〜20質量%、又は0.75質量%〜15質量%、又は1質量%〜10質量%、又は1質量%〜8質量%など、例えば、約0.5質量%、又は約1質量%、又は約1.5質量%、又は約2質量%、又は約3質量%、又は約4質量%、又は約5質量%、又は約6質量%、又は約7質量%、又は約8質量%、又は約9質量%、又は約10質量%、又は約11質量%、又は約12質量%、又は約13質量%、又は約14質量%、又は約15質量%、又は約16質量%、又は約17質量%、又は約18質量%、又は約19質量%、又は約20質量%などの金属酸化物ダスト又は炉ダスト)の量で含むことができる。
【0034】
インベストメントキャスティング用モールドを形成するためのスラリー中の、本明細書に記載されている金属酸化物ダスト又は炉ダストの存在は、スラリーに可塑化効作用を及ぼすことが本発明者らによって見出された。言い換えると、これらの金属酸化物ダスト又は炉ダストを含むスラリーは、より低い粘度を有する、又は前記金属酸化物ダストを含まないスラリーと同じ粘度の場合、フィラー充填量及びより少ない液体含有量を有することができる。これにより、より高いフィラー充填量を含むスラリーを実現することが可能となり、これにより、インベストメントキャスティング用モールドの生成法の改善をもたらし、同時に、該インベストメントキャスティング用モールドは同等の又は改善された特性を有する。
【0035】
本発明による組成物は、60質量%以上(例えば、固体含有量が、60質量%〜75質量%、又は例えば65質量%〜73質量%、又は例えば70質量%〜72質量%など、例えば、固体含有量が約60質量%、又は約65質量%、又は約66質量%、又は約67質量%、又は約68質量%、又は約69質量%、又は約70質量%、又は約71質量%、又は約72質量%、又は約73質量%、又は約74質量%、又は約75質量%など)のフィラー充填量を有するスラリーとすることができる。
本発明による組成物は、ザーン4に準拠した35秒以下の粘度(例えば、ザーン4に準拠した粘度が、7秒〜35秒、又は例えば、ザーン4に準拠した粘度が、8秒〜30秒、又は9秒〜25秒、又は10秒〜20秒など、例えば、約10秒、又は約12秒、又は約14秒、又は約16秒、又は約18秒、又は約20秒など)を有するスラリーとすることができる。
【0036】
インベストメントキャスティング用モールドの形成に使用されるスラリーのより高いフィラー充填量により、例えば、各浸漬事象後に得られる層厚さの改善がもたらされ、ひいては、必要な厚さを有するインベストメントキャスティング用モールドが形成するまでの必要な浸漬数が低減する。同様に、スラリー中の液体量の減少は、各浸漬後に形成される層の硬化に必要な時間とエネルギーの両方の低下をもたらす。本発明により使用される金属酸化物ダストの容易な利用性が、追加の利点である。
【0037】
本発明の一実施形態によれば、インベストメントキャスティング用モールド、及びこのようなインベストメントキャスティング用モールドを作製するための組成物は、セラミック繊維及び/又は有機繊維をさらに含む。このような繊維は、例えば、国際公開第2006/107345号から公知であり、脆弱性、及び破損する傾向を低減する一助となる。有機繊維及び/又は無機繊維の存在により、より厚いコーティングの施用を行うことが可能になる。
添加される繊維は、小さく刻まれているか、又はミル粉砕されている有機物又は無機物とすることができる。それらは、セラミック繊維、又はナイロンもしくはポリプロピレンなどの有機繊維から選択することができる。
【0038】
例えば、ウォラストナイト繊維、金属繊維、アラミド繊維、炭素繊維、耐火性繊維、及びアルミノケイ酸塩(ムライトなど)、酸化物(アルミナ及びジルコニアなど)、窒化物(窒化ケイ素など)、炭素、及び炭化物(炭化ケイ素など)、ならびにそれらの混合物などの小さく刻まれているか又はミル粉砕されているセラミック繊維などの、本発明において使用するのに好適なセラミック繊維は、約20:1の長さと幅のアスペクト比を有することができる。小さく刻まれている及びミル粉砕されているセラミック繊維は、多数の供給元から市販されている。
本発明において使用するのに好適なガラス繊維は、E−ガラス繊維及びS−ガラス繊維などの、切り刻まれた及びミル粉砕されたガラス繊維、ならびにそれらの混合物を含む。ガラス繊維は、例えば、約3mm〜約6mmの長さ、及び/又は約10μmの直径を有することができる。
本発明において使用するのに好適な有機繊維は、オレフィン、アミド、アラミド、ポリエステル及びセルロース繊維を含む。オレフィンの例は、ポリエチレン及びポリプロピレンを含むことができる。アミド繊維の例は、ナイロンを含むことができる。アラミド繊維の例は、ケブラー及びトワロンを含むことができる。
本発明による組成物中の繊維の量は、当業者に公知の通り、幅広い範囲にわたり、様々となり得る。
本発明は、本発明において言及されている特徴及び/又は限定の任意の組合せを、相互に成立し得ないこのような特徴の組合せを除いて、含むことができることに留意すべきである。上述の説明は、本発明を例示するために、本発明の特定の実施形態を対象としている。しかし、本明細書に記載されている実施形態に対して、多数の修正及び改変が可能であることが、当業者には明白であろう。このような修正及び改変は、添付の特許請求の範囲において定義されている通り、本発明の範囲内にあることが意図されている。
【実施例】
【0039】
以下において、以下に記載されている通りに生成したシェル試料に関して、3点抗折試験装置により、破裂係数(CMOR)を測定した。
本明細書で使用する場合、「ザーンに準拠する」粘度は、規格ASTM D4212に準拠して決定する。
【0040】
2つの組成物A及びBを金属酸化物ダストとして使用した。組成物Aは、ジルコニア生成に由来する副生物であり、組成物Bは、アルミナ−ジルコニア生成に由来する副生物である。組成物Cは、金属酸化物ダストと組み合わせて使用するための未加工のカオリンである。組成物Dはマイクロシリカであり、比較例で使用される。これらの特性は表Iに示されている。Al23、ZrO2及びSiO2の含有量は、ARL Advant XP(Thermo Scientific)でXRFを使用して測定した。これらの組成物の粒子サイズ分布は、図1〜3においてグラフで示されている。
【表1】
【0041】
試験されるスラリー用のベースフィラー混合物を使用した。このベースフィラー混合物は、約50質量%のアルミナ−シリカ(200メッシュ)及び約50質量%の溶融シリカ(120メッシュ及び50〜100メッシュ)を含む。水性無機結合材と一緒にスラリーにすると、ベース固体混合物は、撹拌を停止するとほとんど直ちに、より粗いフラクションの沈降を示す。
【0042】
組成物A、B、C及び/又はDを、場合に応じて、5質量%、10質量%又は20質量%の組成物A、B、C及び/又はCを含むフィラーのフラクションを得るために、前記のベースフィラー混合物に混合した。組成物A、B、C及び/又はDを添加すると、スラリー中の沈降速度の減速がもたらされる。
【0043】
これらのスラリーを、インベストメントキャスティングシェル生成において試験した。本発明による様々なスラリーを調製し、安定なスラリーとして維持することができるフィラー充填量にした。これらのスラリーの特性は、表IIに列挙されている。
【表2】

本発明(実施例1〜5)による組成物はすべて、比較例1(添加物なし)及び2(シリカヒューム)と比較すると、同じ粘度において、改善されているか又は同等のフィラー充填量を有している。
【0044】
次の工程では、インベストメントキャスティングシェルを、共通のインベストメントキャスティング手順に従って生成した。ワックスのパターンを約30秒間、それぞれのスラリーに浸漬し、次に、このパターンから過剰のスラリーを切った。まだ濡れているスラリー層の上に、スタッコ砂(アルミノケイ酸塩)をレインフォールサンダー(rain−fall sander)により施用した。次に、これらを45〜55%の相対湿度及び20〜22℃の温度で3〜4時間、乾燥した。シェルはすべて、合計で6回の浸漬で構築した。最初の浸漬に0.2〜0.5mmの砂を用いてスタッコを施し、その後の4回の浸漬に0.5〜1.0mmの砂でスタッコを施した。6回目及び最後の浸漬は、スタッコせずに、シールコーティングとして施用した。
【0045】
この手順の後、次に、完成したシェルのシェル厚さ及び冷破裂係数(CMOR)を測定した。CMORは、グリーン生成物に対して、及び1350℃で焼きを行った後に測定した。それらの結果が表IIIに示されている。
【表3】
【0046】
本発明(実施例1、2、4及び5)による組成物はすべて、比較例1(添加物なし)及び2(シリカヒューム)よりも、改善されているか又は同等のシェル厚さ及び破裂係数を有する。
図1
図2
図3
図4