(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6903655
(24)【登録日】2021年6月25日
(45)【発行日】2021年7月14日
(54)【発明の名称】検体抽出デバイス及びその使用の方法
(51)【国際特許分類】
G01N 1/00 20060101AFI20210701BHJP
G01N 37/00 20060101ALI20210701BHJP
G01N 1/44 20060101ALI20210701BHJP
【FI】
G01N1/00 101H
G01N37/00 101
G01N1/00 101G
G01N1/44
【請求項の数】23
【全頁数】19
(21)【出願番号】特願2018-523393(P2018-523393)
(86)(22)【出願日】2016年7月25日
(65)【公表番号】特表2018-525647(P2018-525647A)
(43)【公表日】2018年9月6日
(86)【国際出願番号】US2016043855
(87)【国際公開番号】WO2017019598
(87)【国際公開日】20170202
【審査請求日】2019年6月27日
(31)【優先権主張番号】62/196,816
(32)【優先日】2015年7月24日
(33)【優先権主張国】US
(31)【優先権主張番号】62/261,577
(32)【優先日】2015年12月1日
(33)【優先権主張国】US
(31)【優先権主張番号】62/331,635
(32)【優先日】2016年5月4日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】518026017
【氏名又は名称】ノベル マイクロデバイシズ,エルエルシー (ディービーエー ノベル デバイシズ)
【氏名又は名称原語表記】NOVEL MICRODEVICES, LLC (DBA NOVEL DEVICES)
(74)【代理人】
【識別番号】100107364
【弁理士】
【氏名又は名称】斉藤 達也
(72)【発明者】
【氏名】パイス,アンドレア マリア,ドミニク
(72)【発明者】
【氏名】パイス,ロハン ジョセフ,アレキサンダー
(72)【発明者】
【氏名】チョウ,チェルシー,チィンジェ
【審査官】
岡村 典子
(56)【参考文献】
【文献】
特表2015−513102(JP,A)
【文献】
米国特許出願公開第2008/0206740(US,A1)
【文献】
特開2013−228235(JP,A)
【文献】
米国特許出願公開第2013/0309136(US,A1)
【文献】
特開2013−217707(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 1/00,1/28,1/44
G01N 37/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の末端、ストッパー、及び第2の末端を含むスワブ軸と、
前記スワブ軸の前記第1の末端に取り付けられた蓋(前記蓋は前記スワブ軸に沿ってスライド可能である)と、
前記蓋の内側に配置されたOリングと、
前記スワブ軸の前記第2の末端のスワブ先端と、
液体媒体及び搾り構造を含む検体抽出容器(前記搾り構造は前記スワブ先端よりも小さい開口を含む)と、
を含み、
前記Oリングは、前記蓋を前記検体抽出容器と前記スワブ軸とに対して密封するように、前記検体抽出容器に前記蓋を締め付ける際に押しつぶされるように構成されている、
検体抽出デバイス。
【請求項2】
前記蓋がネジ式キャップ蓋又はプレスフィット蓋である、
請求項1に記載の検体抽出デバイス。
【請求項3】
前記搾り構造がOリングである、
請求項1〜2のいずれか一項に記載の検体抽出デバイス。
【請求項4】
前記液体媒体が2つの易破壊性シールの間に位置する、
請求項1〜3のいずれか一項に記載の検体抽出デバイス。
【請求項5】
前記検体抽出容器がさらに出口ポートを含む、
請求項1〜4のいずれか一項に記載の検体抽出デバイス。
【請求項6】
前記出口ポートがフィッティングコネクターを通してマイクロ流体デバイスに流体接続される、
請求項5に記載の検体抽出デバイス。
【請求項7】
前記フィッティングコネクターがルアー、ネジ、プレスフィット、又はスナップフィットである、
請求項6に記載の検体抽出デバイス。
【請求項8】
前記マイクロ流体デバイスが、前記検体抽出容器内の易破壊性シールを破断して、前記マイクロ流体デバイス内への前記液体媒体の移動を許すことができる鋭利な構造を含む、
請求項7に記載の検体抽出デバイス。
【請求項9】
前記液体媒体の逆流を防ぐ為に、前記検体抽出容器と前記マイクロ流体デバイスとの間に逆止弁をさらに含む、
請求項7〜8のいずれか一項に記載の検体抽出デバイス。
【請求項10】
前記マイクロ流体デバイスが、望まれない材料を濾過除去する為のフィルター、半透膜、又は多孔膜をさらに含む、
請求項7〜9のいずれか一項に記載の検体抽出デバイス。
【請求項11】
前記マイクロ流体デバイスが、試薬パウチ内のオンボードの貯蔵された試薬と、検出の為の一体化された核酸ラテラルフローストリップと、1つ以上のアクチュエーター素子とを有するマイクロ流体カートリッジをさらに含む、
請求項7〜10のいずれか一項に記載の検体抽出デバイス。
【請求項12】
前記検体抽出容器の周りにジャケットシースを形成するリング形状のヒーターをさらに含む、
請求項7〜11のいずれか一項に記載の検体抽出デバイス。
【請求項13】
前記ヒーターが、熱伝導性材料のブロック中に埋め込まれた抵抗器を含む抵抗加熱素子である、
請求項12に記載の検体抽出デバイス。
【請求項14】
前記ヒーターが薄膜抵抗ヒーター又はペルティエ素子又は自己制御型の正温度係数(PTC)ヒーターである、
請求項12に記載の検体抽出デバイス。
【請求項15】
前記ヒーターが密封されたパウチ内の相変化材料を含む、
請求項12に記載の検体抽出デバイス。
【請求項16】
前記搾り構造が狭いスリーブを含み、
前記狭いスリーブが、それが前記搾り構造中に挿入されるときに前記スワブ先端の周りにきつい嵌合を形成し、それによって前記スワブ先端を変形させ、搾るように構成される、
請求項1〜15のいずれか一項に記載の検体抽出デバイス。
【請求項17】
前記液体媒体がチャネルを介して前記スリーブの上側に流体接続される、
請求項16に記載の検体抽出デバイス。
【請求項18】
前記搾り構造がOリングを含み、前記検体抽出容器がピストンプランジャーを含む、
請求項1〜15のいずれか一項に記載の検体抽出デバイス。
【請求項19】
a. 前記スワブ先端を前記検体抽出容器内に挿入するステップと、
b. 前記スワブ先端を前記搾り構造を通して前記液体媒体中に押し込むステップと、
c. 前記蓋を前記スワブ軸に沿ってスライドさせ、前記蓋を閉め、それによって前記スワブ軸と前記検体抽出容器との間に気密シールを形成するステップと、
d. 前記ストッパーが前記蓋の内側との接触をなすまで前記スワブ先端を引き出すステップと、
e. マイクロ流体デバイスの入口に前記検体抽出デバイスを接続するステップと、
を含む、
請求項1〜18のいずれか一項に記載の検体抽出デバイスの使用を含むスワブ先端からの検体抽出の為の方法。
【請求項20】
ステップ(c)及び(d)が1回以上繰り返される、
請求項19に記載の方法。
【請求項21】
前記スワブ軸が、切れ目付きの破断点を含む破断可能なスワブ軸である、
請求項1〜18のいずれか一項に記載の検体抽出デバイス。
【請求項22】
a. 前記検体抽出容器の前記蓋を開けるステップと、
b. 前記スワブ先端を前記搾り構造を通して前記液体媒体中に挿入するステップと、
c. 前記スワブ先端を前記搾り構造から再び引き抜くステップと、
d. 前記破断可能なスワブ軸を前記切れ目付きの破断点において破断し、前記スワブ先端が前記搾り構造の上側に留まることを許すステップと、
e. 前記検体抽出容器の前記蓋を閉めるステップと、
f. 前記検体抽出デバイスをマイクロ流体デバイス上の入口に接続するステップと、
を含む、
請求項21に記載の検体抽出デバイスの使用を含むスワブ先端からの検体抽出の為の方法。
【請求項23】
ステップ(b)及び(c)が1回以上繰り返される、
請求項22に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、検体抽出デバイス及びその使用の方法に関する。
【0002】
関連出願の相互参照
本願は、2015年7月23日出願のU.S.仮出願No.62/196,816、2015年12月1日出願のU.S.仮出願No.62/261,577、及び2016年5月4日出願のU.S.仮出願No.62/331,635の利益を主張する。それらの内容全体はそのまま参照によって本願に組み込まれる。
【背景技術】
【0003】
スワブは生物学的検体採集デバイスとして主に用いられている。コパン(COPAN)社FLOQスワブ(商標)等のスワブは、検体全体が速やかで完全な溶出の為に表面に近く留まるように工夫されているが、一方で、移動培地又は緩衝液中への検体の溶出を最大化する為に物理的な力が用いられることを必要とする。典型的には、輸送培地中でスワブを激しく振盪することによる手作業での撹拌、又はボルテックスが、スワブから溶液中への検体の溶出を最大化する為に実験室において用いられる。スワブは手作業で圧搾され、それから、検体を含有する溶液が吸い取られ、さらにアッセイの種類に応じて処理される。
【0004】
ポイントオブケア(「POC」)及び低リソース条件においては、検体をボルテックスすることは検体を液体媒体中に溶出することにとって好都合な方法ではなく、手作業での振盪はオペレーターからオペレーターへの非一貫性をもたらし得る。その上に、スワブは吸水性であるので、溶液中の検体の一定量は、それがスワブ上に残留する為に失われる。これは、アナライトが非常に低濃度で存在するケースにおいては、アナライトの不十分な量がスワブから溶液中に溶出されることが原因で、低下した感度をもたらし得る。
【0005】
試薬体積が最小化されたマイクロ流体システムにおいては、アナライトのより多くをより小体積に濃縮することが、同体積でのシステム内へのより多くのアナライトの追加を可能にする。しかしながら、かかるマイクロ流体システムでは、スワブから抽出される検体の量を最大化する為にスワブから液体を搾り出すことが必要である。
【0006】
従って、検体抽出の為の改善されたデバイス及び方法のニーズがある。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明によれば、検体抽出デバイス及びその使用の方法の種々の実施形態が開示される。1つの実施形態においては、検体抽出デバイスが提供され、
第1の末端、ストッパー、及び第2の末端を含むスワブ軸と、
スワブ軸の第1の末端に取り付けられた蓋(蓋はスワブ軸に沿ってスライド可能である)と、
蓋の内側のクラッシュOリングと、
スワブ軸の第2の末端のスワブ先端と、
液体媒体と搾り構造とを含む検体抽出容器(搾り構造はスワブ先端よりも小さい開口を含む)と、
を含む。
【0008】
本発明の検体抽出デバイスのいくつかの実施形態において、蓋はネジ式キャップ蓋又はプレスフィット蓋であり得る。他の実施形態において、搾り構造はOリングである。他の実施形態において、液体媒体は2つの易破壊性シールの間に位置する。
【0009】
他の実施形態において、検体抽出容器はさらに出口ポートを含む。他の実施形態において、出口ポートはフィッティングコネクターを通してマイクロ流体デバイスに流体接続される。他の実施形態において、フィッティングコネクターはルアー、ネジ、プレスフィット、又はスナップフィットである。他の実施形態において、マイクロ流体デバイスは、検体抽出容器内の易破壊性シールを破断して、マイクロ流体デバイス内への液体媒体の移動を許すことができる鋭利な構造を含む。他の実施形態において、検体抽出デバイスは、液体媒体の逆流を防ぐ為に、検体抽出容器とマイクロ流体デバイスとの間に逆止弁をさらに含む。他の実施形態において、マイクロ流体デバイスは、望まれない材料を濾過除去する為のフィルター、半透膜、又は多孔膜をさらに含む。他の実施形態において、マイクロ流体デバイスは、試薬パウチ内のオンボードの貯蔵された試薬と、検出の為の一体化された核酸ラテラルフローストリップと、1つ以上のアクチュエーター素子とを有するマイクロ流体カートリッジをさらに含む。
【0010】
他の実施形態において、検体抽出デバイスは、検体抽出容器の周りにジャケットシースを形成するリング形状のヒーターをさらに含む。他の実施形態において、ヒーターは、熱伝導性材料のブロック中に埋め込まれた抵抗器を含む抵抗加熱素子である。他の実施形態において、ヒーターは薄膜抵抗ヒーター又はペルティエ素子である。他の実施形態において、ヒーターは自己制御型の正温度係数素子である。他の実施形態において、ヒーターは密封されたパウチ内に相変化材料を含む。
【0011】
他の実施形態において、搾り構造は狭いスリーブを含み、狭いスリーブは、それが搾り(squeexing)構造中に挿入されるときにスワブ頭部の周りにきつい嵌合を形成し、それによってスワブ頭部を変形させ、搾るように構成される。他の実施形態において、液体媒体はチャネルを介してスリーブの上側に流体接続される。他の実施形態において、搾り構造はOリングを含み、検体抽出容器はピストンプランジャーを含む。他の実施形態において、検体抽出容器はさらにバネ仕掛けのペッスル及びおろし金を含む。
【0012】
他の実施形態においては、本願に記載される検体抽出デバイスのいずれかの使用を含むスワブ先端からの検体抽出の為の方法が提供され、
a. スワブ先端を検体抽出容器内に挿入するステップと、
b. 搾り構造を通して液体媒体中にスワブ先端を押し込むステップと、
c. スワブ軸に沿って蓋をスライドさせ、蓋を閉め、それによってスワブ軸と検体抽出容器との間に気密シールを形成するステップと、
d. ストッパーが蓋の内側との接触をなすまで、スワブ先端を引き出すステップと、
e. マイクロ流体デバイスの入口に検体抽出デバイスを接続するステップと、
を含む。いくつかの実施形態において、ステップ(c)及び(d)は1回以上繰り返される。
【0013】
他の実施形態において、本願に記載される検体抽出デバイスのスワブ軸は、切れ目付きの破断点を含む破断可能なスワブ軸である。さらなる実施形態においては、破断可能なスワブ軸を含む本願に記載される検体抽出デバイスの使用を含むスワブ先端からの検体抽出の為の方法が提供され、方法は、
a. 検体抽出容器の蓋を開けるステップと、
b. 搾り構造を通して液体媒体中にスワブ先端を挿入するステップと、
c. スワブ先端を搾り構造から再び引き抜くステップと、
d. 破断可能なスワブ軸を切れ目付きの破断点において破断し、スワブ先端が搾り構造の上側に留まることを許すステップと、
e. 検体抽出容器の蓋を閉めるステップと、
f. マイクロ流体デバイスの入口に検体抽出デバイスを接続するステップと、
を含む。いくつかの実施形態において、ステップ(b)及び(c)は1回以上繰り返される。
【0014】
本開示の主題のある種の態様が以上で述べられており、それらは本開示の主題によって全体的に又は部分的に対象とされる。他の態様は、本願において下で最良に記載されるように、付属する実施例及び図面と併せて考えられるときに、記載が進むにつれて明らかになるであろう。
【0015】
ここまで本開示の主題を一般的な点で記載した。ここで、付属する図面の参照がなされる。これらは必ずしも縮尺を合わせて作図されてはいない。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】
図1は、スワブ検体抽出の為の例示的な検体抽出デバイスの断面及び詳細図を示している。
【
図2】
図2は、スワブ検体からの検体抽出の為の例示的なステップバイステップのシーケンスを示している。
【
図3】
図3は、破断可能な軸を有するスワブからの検体抽出の為の例示的なステップバイステップのシーケンスを示している。
【
図4】
図4は、一体化されたヒーターを有するマイクロ流体デバイスに接続された例示的な検体抽出容器の側面図を示している。
【
図5】
図5は、スワブを搾り、変形させる為のきつい嵌合のスリーブを有する検体抽出容器の模式図を示している。
【
図6B】
図6Aは、スワブ検体抽出の為のピストンプランジャーを有する検体抽出デバイスの模式図を示している。
図6Bは、ピストンプランジャーを有する例示的な検体抽出デバイスによるスワブ検体抽出の為のステップバイステップのシーケンスを示している。
【
図7】
図7は、スワブ検体からのSample−to−Answer型核酸増幅検査(NAAT)アッセイの為の一体化されたマイクロ流体デバイスの模式的な描画を示している。
【
図8】
図8は、アクチュエーションされたランセットを用いる流体ウェルからラテラルフローストリップへのマイクロ流体デバイス上の流体移動の原理を示している。
【
図9】
図9は、検体ホモジナイゼーションの為のバネ仕掛けのペッスル及びおろし金を有する検体抽出容器のある実施形態の模式図を示している。
【発明を実施するための形態】
【0017】
ここで、以下では付属の図面の参照によって本開示の主題がより詳しく記載される。そこでは、本開示の主題の全てではないがいくつかの実施形態が示されている。類似の数は一貫して類似の要素を言う。本開示の主題は多くの異なる形態で実施され得、本願において示されている実施形態に限定されると解釈されるべきではない。寧ろ、それらの実施形態は、本開示が適用法の要件を満たすように提供される。実際に、本願に示されている本開示の主題の多くの改変及び他の実施形態が、先行する記載及び関連の図面において与えられる教示の利益を有する本開示の主題が関わる分野の業者には思い浮かぶであろう。よって、本開示の主題は開示されている具体的な実施形態に限定されないということと、改変及び他の実施形態は添付の請求項の範囲内に包含されることが意図されているということとは理解されるべきである。
【0018】
検体抽出デバイス及び方法
開示される発明は、スワブ検体上の採集された材料を抽出する為である。スワブ検体は、診断検査の為に必要とされる生物学的材料を採集する為に共通に用いられる方法である。それらの検体は、検査が行われるときに先立つ時点で、又は検査の時点で採集され得る。スワブ上にトラップされた生物学的材料は、粘度、乾燥度、固体含量、及びスワブへの付着が様々であり得る。
【0019】
本願には、生物学的検体処理の間のスワブからの検体溶出を最大化する為の方法及びデバイスが記載される。1つの実施形態において、検体調製方法は、第1に、検体処理ステップに関わる緩衝液を含有する検体抽出容器(SEC)内にスワブを挿入することを含む。容器寸法は、アッセイを行う為に要求される緩衝液の体積中にスワブの先端が完全に浸され得るように選択される。これはスワブに加水し、その上にトラップされた生物学的材料を解す為に役立つ。スワブからの検体の抽出を容易化する為に、容器は、場合によっては、緩衝液の液体の水面及びそれよりも下に1つ以上の構造を含む。構造の寸法及び形状は、それがSEC内に押し下げられ、それから引き上げられるときに、それらがきつい嵌合を形成し、スワブ先端を押さえつけて搾るように選択される。液体の水面の構造の寸法及び形状は、それがそれを通して動くときに、それらがスワブ先端とのきつい嵌合を形成し、それゆえにスワブから液体及び固体材料を搾り出すように設計される。
【0020】
図1を参照すると、スワブ検体抽出の為の検体抽出ユニット101の断面及び詳細図が示されている。1つの実施形態においては、ネジ式キャップ又はプレスフィット蓋102が、断面AA’に図示されているようにスワブ軸103に取り付けられる。クラッシュOリング104が蓋の内側においてスワブ軸と蓋との間の境界面に存在する。スワブは、検体を溶出する為の液体媒体又は緩衝液を含有する検体抽出容器106内に挿入され得る。スワブ軸上の蓋は軸上を上下にスライドすることができる。蓋が締められるときに、Oリングは押しつぶされて、検体抽出容器及びスワブ軸との気密シールをなす。抽出されることを必要とする検体はスワブ先端105上に存在する。詳細Aに図示されているように、検体抽出容器はスワブ先端よりも小さい開口を有する搾り構造107を有し、その結果、スワブ先端はそれがそれの中を押し通されるにつれて変形させられ、搾られる。これは、採集された検体がスワブから脱離し、検体抽出容器の底ユニット108内に含有される溶液中に溶出することを強いる。搾り構造の形状の限定しない例が詳細Bに示されている。いくつかの実施形態において、搾り構造はOリングであり得る。搾り構造は、スワブの形状、構造、及び材料に基づいて設計され得る。スワブ先端から検体を抽出する為には、ユーザーはスワブをスワブ抽出容器内に置き、スライド蓋を閉め、ストッパー106が蓋の底との接触をなすまでスワブ軸を再び引き出す。検体抽出容器の底は易破壊性又は穿孔可能シール材料109によって密封され、それがさらなる処理の為にマイクロ流体カートリッジ等の流体ユニットに接続されることを許す出口ポート110とのフィッティングを有し得る。いくつかの実施形態においては、上側の易破壊性シール111が存在し得、その結果、検体抽出容器内側の液体媒体が2つの易破壊性シールの間の体積中に貯蔵される。これは、出荷、輸送の間、及び使用前の蓋及び壁への液体の動き及びくっ付きを防ぎ、液体媒体を検体抽出容器の底に束縛するように働く。易破壊性シールは、スワブが検体抽出容器内に挿入されるときにスワブによって破られて、その液体内容を放出し得る。
【0021】
図2を参照すると、スワブ検体からの検体抽出の為のステップバイステップのシーケンス201が示されている。ステップ1−スワブが検体抽出容器内に挿入される。ステップ2−スワブが搾り構造を通して検体抽出容器の底に含有される溶液中に押し下げられる。これは、溶液が底から運動させられ、スワブ先端を完全に浸し加水するように上昇することをもまた引き起こす。ステップ3−スワブ軸に取り付けられた蓋が、スワブ軸と検体抽出容器との間に気密シールを形成するように下にスライドされ、閉められる。ステップ4−ストッパーが蓋の底との接触をなすまでスワブが引き出される。これは、それが検体を含有する溶液(この中でそれが浸され、加水される)を吸収することを防ぐように、スワブが搾りきられることを引き起こす。ステップ3及び4は、要求される場合には検体溶出効率を最大化する為に複数回繰り返され得、検体をホモジナイゼーションするようにもまた機能し得る。ステップ5−それから、検体抽出デバイスがマイクロ流体デバイス上のフィッティング203を通してマイクロ流体デバイス202上の入口に接続される。
【0022】
代替的な実施形態においては、破断可能な軸を有するスワブが用いられ得る。破断可能な軸を有するスワブからの検体抽出の為のステップバイステップのシーケンス301が
図3に図示されている。ステップ1−検体抽出容器の蓋が開けられる。ステップ2−スワブが搾り構造を通して検体抽出容器内に完全に挿入される。ステップ3−スワブが搾り構造を通して引き上げられる。検体をホモジナイゼーションする為に必要である場合には、ステップ2及び3は複数回繰り返され得る。スワブが搾りきられた後に、軸はステップ4において切れ目付きの破断点302において破断され、検体抽出容器の蓋がステップ5において閉められる。スワブは搾り構造よりも上に納まり、それよりも下の溶液との接触をしない。それから、検体抽出容器がマイクロ流体デバイスに接続されて、その中へのその内容の移動を可能にする。
【0023】
図4に見られるように、スワブ抽出チャンバーの出口ポートは、ルアー、ネジ、プレス、又はスナップフィット等のフィッティングコネクター402を通してマイクロ流体デバイス401への流体接続をなす。マイクロ流体デバイスは、その内容がマイクロ流体デバイス内に移動させられることを可能にするように、検体抽出容器の底の易破壊性材料を破断又は穿孔し得る注射針又はピン等の鋭利な構造を含有し得る。代替的には、マイクロ流体デバイス上のフィッティングに検体抽出容器を接続するときに掛かる捩り又は押圧力が、それを密封している易破壊性材料を破り得る。逆止弁406が、内容の逆流を防ぐように、マイクロ流体デバイス上において、検体抽出容器と流体ウェル405に接続する流体流路403との間の境界面に存在し得る。いくつかの実施形態においては、フィルター、半透、又は多孔膜がマイクロ流体デバイス上に存在して、マイクロ流体デバイス内に入ることによって下流の診断アッセイを阻害し得る検体抽出容器内の望まれない材料を濾過除去し得る。フィルター又は膜は、検体抽出容器からマイクロ流体デバイス内への入口と流体流路から流体ウェル405内への出口との間の経路において、マイクロ流体デバイス上の何処かに置かれ得る。
【0024】
マイクロ流体デバイス内で流体を動かすことは難問であり、精巧なポンプ及びアクチュエーターの使用を要求する。例示的な実施形態においては、熱エネルギーが用いられて検体抽出容器を加圧し得、検体がマイクロ流体デバイス内に移動させられることを引き起こす。同時に、加熱は、細胞をリシスして下流の核酸増幅検査(NAAT)の為に核酸を放出する為、及び検体中に存在する阻害物質を不活性化する為にもまた用いられ得る。いくつかの実施形態においては、弁がマイクロ流体デバイス上に存在し得、これがアクチュエーションされて検体を検体抽出容器からマイクロ流体デバイス内に移動させ得る。この追加の弁は、それがマイクロ流体デバイス内に移動させられ得る前に検体が所定の時間加熱されることを必要とするときに有利である。それから、検体抽出容器内において増大した圧力は、弁がアクチュエーションされたときに検体をマイクロ流体デバイス内に押し込むように働く。
図8に見られるように、例示的なリング形状のヒーター404はマイクロ流体デバイス及び検体抽出容器の境界面に存在する。ヒーターは検体抽出容器の周りにジャケットシースを形成し、底が中空であり、それゆえに検体抽出容器がマイクロ流体デバイスに接続されることを許す。1つの実施形態において、ヒーターは、金属、金属酸化物、又は合金等の熱伝導性材料のブロック中に埋め込まれた抵抗器を含む抵抗加熱素子であり得る。ヒーターは薄膜抵抗ヒーター又はペルティエ素子でもまたあり得る。他の実施形態において、ヒーターは自己制御型の正温度係数素子である。ヒーターは、マイクロ流体デバイスの一部として一体化され、単回使用の使い捨て素子として意図され得る。追加の実施形態においては、相変化材料が用いられて、リシス及び検体移動の為の熱エネルギーを発生させ得る。相変化材料は、熱エネルギー貯蔵を要求する種々の用途に広く用いられ、温度の幅広い範囲(−40℃から150℃超)での使用について開発されて来た。相変化材料は有利である。なぜなら、それらは高密度エネルギー貯蔵を提供し、狭い温度範囲内で熱を貯蔵するからである。加えて、それらは高価ではなく、非毒性であり、熱を発生させる為の電気エネルギーを要求しない。その為、それらは、ポイントオブケア条件にとって、及び熱エネルギーを要求する単回使用デバイスにとって魅力的な選択肢である。追加の実施形態においては、密封されたパウチ内に含有された相変化材料が用いられて、検体抽出容器の周りにジャケットシースを形成する。相変化材料のジャケットは、マイクロ流体デバイスの一部として、又は検体抽出容器の一部としてどちらかで存在し得る。検体抽出容器をマイクロ流体デバイスに接続する行為は、核生成部位を作り出すように働く。これは翻って相変化材料を活性化させ、それが温度上昇し、検体を加熱することを引き起こす。これは、相変化材料を含有するパウチ内に、検体抽出容器がマイクロ流体デバイスに接続されたときに作動する金属片をパッケージングすることによって達成され得る。相変化材料は、マイクロ流体デバイス内のアクチュエーション素子上に存在する外部のアクチュエーターによってもまた活性化され得る。いくつかの実施形態においては、好適な相変化材料が活性化されて、その分解を防ぐ為に検体を冷却し得る。いくつかの実施形態において、ヒーターは、検体を加熱リシスし、マイクロ流体デバイス上の流体ウェルに移動させる為、及びマイクロ流体デバイス上でNAATを実行する為に役立ち得る。
【0025】
追加の実施形態においては、検体抽出容器の蓋で起こるガスを放出する化学反応又は発熱反応が、容器を加圧し、検体を第2の流体チャンバー内に移動させる為に用いられ得る。
【0026】
図5に示されている追加の実施形態において、搾り構造は狭いスリーブ502であり得、これは、それがその中に挿入されるときにスワブ頭部の周りにきつい嵌合を形成し、それゆえにスワブ頭部を変形させ、搾る。スワブがきつい嵌合のスリーブ中に押し込まれると、検体がスワブの表面から搾り出され、スリーブの上側に集まる。検体抽出容器内側の液体媒体はチャネル504を通してスリーブの上側まで流れる。きつい嵌合のスリーブを通して繰り返される押し引きが、検体をホモジナイゼーションし、溶出を最大化する為にされ得る。検体抽出容器は底の易破壊性又は穿孔可能膜シール503と第2の流体デバイスに接続し得る出口505とを有する。
【0027】
図6Aに示されているスワブ検体抽出の為の検体抽出デバイス601の追加の実施形態において、スワブから検体及び液体を搾り出す為の搾り構造は、詳細Cに見られるように、スワブ軸に取り付けられたコネクター606の一部であるOリング605である。検体抽出容器は1つの末端にピストンプランジャー604を有し、スワブ上の検体を溶出する為の液体媒体又は緩衝液603を充填され、蓋602によってキャップをされる。
図6Bは、機械的に/手作業でアクチュエーションされるピストンプランジャーを有する例示的な検体抽出デバイスによる、スワブ検体抽出の為のステップバイステップのシーケンスを示している。いくつかの実施形態において、ピストンプランジャーは空気圧によってアクチュエーションされ得、例えば搾り可能なバルブを用いて空気を押し、プランジャーを運動させることによる。
【0028】
NAATは高度に感受性であり特異的であるが、一方で、それらの実装は主に実験室に限られて来た。これは、NAATは熟練の労働力及び高価な実験室設備が行うことを要求する複雑な検査であるからである。等温増幅アッセイ技術の最近の進歩は、NAATを行う為の機器要件を単純化した。しかしながら、真のSample−to−Answer型システムは、外部の機器に頼るアッセイステップの自動化を尚要求する。検体調製はNAATを行う為のボトルネックとして見られており、NAATの為に検体調製のステップを単純化及び自動化する為の方法が、ポイントオブケア条件におけるそれらの実装を容易化する為に要求される。ここに開示される本発明のモジュールは、ポイントオブケア条件の為のNAATのSample−to−Answer型自動化を行う為に一体化され得る。
【0029】
例示的な実施形態においては、Sample−to−Answer型核酸増幅アッセイがスワブ検体に対して行われ得る。
図7は、スワブ検体からのSample−to−Answer型NAATアッセイの為の一体化されたマイクロ流体デバイスの模式的な描画である。
【0030】
マイクロ流体デバイスは、試薬パウチ708内のオンボードの貯蔵された試薬と、検出の為の一体化された核酸ラテラルフローストリップ707と、上側アクチュエーター素子703と、底アクチュエーター素子704とを有するマイクロ流体カートリッジ702を含む。スワブ検体はマイクロ流体デバイス上の検体抽出容器705内に挿入され、スワブは本開示の種々の実施形態に記載される方法の1つによってからからに搾られ、それによって、検体抽出容器内側に貯蔵された細胞リシス緩衝液中に検体を溶出する。検体抽出容器を加熱することは細胞リシスを引き起こし、容器内において増大した圧力は、ライセートを流体流路を通して核酸抽出及び精製の為の磁性ビーズを含有するマイクロ流体デバイス上の流体ウェル内に追い込む。フィルター706がマイクロ流体デバイス上に存在して、阻害物質を濾過除去し、核酸のみが結合緩衝液及び磁性ビーズを含有するウェルに入ることを許す。マイクロ流体カートリッジがアクチュエーター素子の近接までスライドすると、所定のアッセイシーケンスが自動的に行われる。シーケンスはアッセイ要件に応じてユーザーによって設計され得る。例示的なシーケンスは次の通りである:結合緩衝液、洗浄緩衝液1、洗浄緩衝液2、溶出緩衝液が、貯蔵された試薬のパウチから分注され、平行してそれらのそれぞれの流体ウェル内に充填される。混和性試薬の分注に続いて、ミネラルオイル等の非混和性液体が分注され。その結果、混和性試薬は互いに混合することなしに流体回路を形成する。なぜなら、それらは非混和性の油相によって互いから分離されるからである。
【0031】
所与のpHにおいて正味の正電荷を有するイオン化可能な基を有する磁性ビーズが、DNAを結合する為に用いられる。磁性ビーズのかかる種類の例はChargeSwitch磁性ビーズである(ライフテクノロジーズ・インコーポレイテッド(Life Technologies, Inc.)、カールスバッド、CA)。DNAは、ビーズ上に正味の正電荷を作り出すことができる結合緩衝液の存在下において磁性ビーズのかかる種類に結合し、DNAは、ビーズ上に正味の中性又は負電荷を作り出すことができる溶出緩衝液の存在下において溶出される。この実施形態においては、DNAがpH<5を有する緩衝液の存在下においてそれらに結合し、pH>8を有する緩衝液の存在下においてそれらから溶出することを引き起こすChargeSwitch磁性ビーズが用いられる。磁性ビーズは、本開示に記載される方法によって、マイクロ流体カートリッジ上の全てのウェルを通して順に動かされる。DNAは、第1に、結合緩衝液の存在下において磁性ビーズに結合することを許される。それから、ビーズが洗浄緩衝液を含有する2つのウェル内及びそれらの外に動かされて、ビーズから不純物を洗浄する。不純物は洗浄緩衝液溶液中に取り残される。それから、洗浄されたビーズは溶出緩衝液を含有するウェルまで動かされ、そこではDNAがビーズから溶出緩衝液中に溶出される。それから、溶出したDNAは、核酸増幅検査(NAAT)の為の凍結乾燥された試薬に加水する為に用いられ得る。いくつかの実施形態において、磁性ビーズは増幅ウェル内に直接的に溶出され得る。1つ以上のヒーターが自動化シーケンスの一部としてオンにされて、増幅の為の温度を供給する。
【0032】
検出の種々の方法が、増幅産物を検出する為に用いられ得、pH感受性色素又は金属感受性インジケータを用いる視覚的検出、電気化学的検出、インターカレーション色素又は蛍光プローブを用いる光検出、濁度測定法、ラテラルフローストリップ検出を包含する。この例においては、ラテラルフローストリップが、増幅された核酸を検出する為に用いられる。ビオチン及びFAM/FITC修飾FIP及びBIPプライマーがそれぞれLAMP反応に用いられ得る。サンドイッチフォーマットラテラルフロー検査が用いられ得る。増幅産物はラテラルフローストリップ検出前に希釈又は泳動緩衝液と混合され得る。弁は、アッセイ自動化シーケンスの一部として存在し、アクチュエーションされて、増幅産物がラテラルフローストリップ上を流れることを許し得る。代替的には、セプタムが穿孔されて、増幅産物がラテラルフローストリップ上を流れることを許し得る。
【0033】
1つの実施形態においては、中空チャネルを有するランセット又は注射針がアクチュエーション素子によってアクチュエーションされて、増幅チャンバーの壁を穿孔し、検出の為のラテラルフローストリップまで流体を移動させ得る。
図8は、検出されるべきアナライトを含有する液体産物を流体ウェル802からラテラルフローストリップ803まで動かす原理を記載している。
図8Aは、アクチュエーション前の中空チャネル804を有するランセット805を示している。
図8Bは、アクチュエーション後の中空のランセットを示しており、これはラテラルフローストリップと流体ウェルの底とを穿孔し、それゆえにラテラルフローストリップへの流体の流れの為の流路を作り出す。
【0034】
組織、植物、食品、土壌、及び小生物等のいくつかの検体については、スワブは好ましい検体採集デバイスではあり得ない。加えて、それらの検体は、検体調製の間にホモジナイゼーションされることを必要とする。
図9は、蓋に取り付けられたバネ仕掛けのペッスル902を有する検体抽出容器の実施形態を示している。検体に基づいて選択される多数の微小な穴、セレーション、ブレード、及び類似物を含むおろし金903が容器内側に存在する。容器は、リシス緩衝液又は液状化緩衝液等の緩衝液を充填され得る。容器を閉める為に蓋を回す行為はバネを圧縮し、それによって、蓋がねじって閉じられる間にペッスルを底のおろし金に押し付ける。ペッスルとおろし金との間にトラップされたいずれかの検体材料は、蓋がひねって閉じられるにつれて、ペッスルとおろし金との間の相対的動きが原因で圧縮され、押しつぶされ、剪断されて行く。それから、緩衝液中の調製されたホモジナイゼーションされた検体は、流体カートリッジ又は他のシステム内どちらかにおけるさらなる下流処理の為に移動させられ得る。
【0035】
用途及びユーザー要件に応じて、検体処理システムはモーター、アクチュエーター、加熱素子、熱電対、ファン、冷却ユニット、マイクロコントローラ、光検出器、電極、フィルター、光源、電池パック、ワイヤレスモジュール、及び電子機器を一体化し得、その結果、それは生物学的検体処理を行う為の単一の自給式で自立した一体化されたシステムを形成する。試薬パウチ、レザーバ、及び流体ウェルの体積は、バイオアッセイ及びユーザーのニーズに応じて様々であり得る。典型的な体積は1ulから10mlまで、又は5ulから1mlまでの範囲であり得る。
【0036】
マイクロ流体デバイスにとって多くの好適な材料がある。熱可塑性材料等のプラスチックは、それらの低コスト及び大量生産される能力が原因で、単回使用の使い捨てデバイスにとっての良い選択肢である。
【0037】
完全に一体化されたSample−to−Answer型マイクロ流体デバイスの為の好適な材料は、ガラス、ポリプロピレン、ポリカーボネート、PMMA、COC、シリコン、又は材料の1つ以上の組み合わせ等の材料を包含する。マイクロ流体デバイスはポリマー射出成形され得、一体化されたシリコン又はガラスMEMS機能性電極アレイ若しくはマイクロアレイ、又はラテラルフローストリップを検出の為に有する。材料は、ユーザー及びそれによって行われようとするアッセイの要件に基づき、その生体適合性、化学物質適合性に基づいて選ばれ得る。
【0038】
マイクロ流体デバイスのフットプリントは、ユーザー要件及び検体処理用途に応じて数平方ミリメートルから数10平方センチメートルの範囲であり得る。いくつかの実施形態においては、複数のマイクロ流体デバイスが積層化又はアレイ化され、平行して処理され得る。検体処理システム内の永久磁石の吸引力、形状、及びサイズは、検体の処理ニーズ、形状、サイズ、体積、材料特性、及び易破壊性シールの破裂圧力に応じて選ばれ得る。易破壊性シール材料は、アルミ箔、ポリマー、ゴム、金属、粘着テープ、金属酸化物、又は材料の組み合わせを包含する。
【0039】
一般的な定義
具体的な用語が本願において使用されているが、それらは限定の目的ではなく全般的及び記述的な意味でのみ用いられている。別様に定義されていない限り、本願において用いられる全ての技術及び科学用語は、本願の主題が属する分野の業者によって共通に理解される同じ意味を有する。
【0040】
本願において用いられる「核酸」は、ヌクレオチドと呼ばれる共有結合的にリンクされたサブユニットを含むポリマー性化合物を意味する。「ヌクレオチド」は、リン酸基にリンクされたヌクレオシド(即ち、糖、通常はリボース又はデオキシリボースにリンクされたプリン又はピリミジン塩基を含む化合物)を含む分子、又はより大きい核酸分子中の個々のユニットである。
【0041】
「ポリヌクレオチド」又は「オリゴヌクレオチド」或は「核酸分子」は、本願において交換可能に用いられて、一本鎖又は二本鎖形態どちらかの、リボヌクレオシド(アデノシン、グアノシン、ウリジン、又はシチジン。「RNA分子」若しくは単に「RNA」)又はデオキシリボヌクレオシド(デオキシアデノシン、デオキシグアノシン、デオキシチミジン、又はデオキシシチジン。「DNA分子」若しくは単に「DNA」)のリン酸エステルポリマー形態、或はホスホロチオエート及びチオエステル等のそのいずれかのホスホエステルアナログを意味する。いずれかの長さのRNA、DNA、又はRNA/DNAハイブリッド配列を含むポリヌクレオチドが可能である。本発明への使用の為のポリヌクレオチドは、天然に存在するか、合成か、組換えか、エクスビボで発生したか、又はその組み合わせであり得、当分野において公知のいずれかの精製方法を利用して精製もまたされ得る。従って、用語「DNA」は、ゲノムDNA、プラスミドDNA、合成DNA、半合成DNA、相補的DNA(「cDNA」。メッセンジャーRNA鋳型から合成されるDNA)、及び組換えDNA(人工的に設計され、よって、その天然のヌクレオチド配列からの分子生物学的操作を経たDNA)を包含するが、これに限定されない。
【0042】
「増幅する」、「増幅」、「核酸増幅」、又は類似物は、核酸鋳型(例えば、鋳型DNA分子)の複数コピーの産生、又は核酸鋳型(例えば、鋳型DNA分子)に対して相補的である複数の核酸配列コピーの産生を言う。
【0043】
用語「上側」、「底」、「上方」、「下」、及び「上」は、本明細書においては、記載されるデバイスのコンポーネントの相対的位置、例えばデバイス内の上側及び底基材の相対的位置の言及に用いられる。デバイスがそれらの空間的向きに関わらず機能的であるということは理解されるであろう。
【0044】
長年の特許法の慣習に倣って、用語「a」、「an」、及び「the」は、請求項を包含する本願において用いられるときには「1つ以上」を言う。それゆえに、例えば、「対象」の言及は、文脈が明瞭にそれと反対でない限り(例えば、複数の対象)は、複数の対象等を包含する。
【0045】
本明細書及び請求項において、用語「含む(comprise)」、「含む(comprises)」、及び「含む(comprising)」は、文脈が別様に要求するところを除いては、非排他的な意味で用いられる。同様に、用語「包含する」及びその文法的変形は非限定的であることを意図されており、その結果、あるリスト中の項目の記述は、リスト化された項目に置換又は追加され得る他の類似の項目の排除にはならない。
【0046】
本明細書及び添付の請求項の目的の為には、別様に示されていない限り、明細書及び請求項において用いられている量、サイズ、寸法、割合、形状、配合、パラメータ、パーセンテージ、パラメータ、数量、特徴、及び他の数値を表現する全ての数は、用語「約」が値、量、又は範囲と一緒にわざわざ記載されていないとしても、全ての場合に用語「約」によって修飾されていると理解されるべきである。従って、それと反対に示されていない限り、次の明細書及び添付の請求項において示されている数的パラメータは厳密ではなく、厳密であることを必要とせず、近似的であり、及び/又は、許容誤差、換算係数、丸め、測定誤差、及び類似物、並びに当業者に公知の他の因子を反映して、本開示の主題によって得られることを求められる所望の特性に応じて、所望ならばより大きいか若しくはより小さくあり得る。例えば、用語「約」は、ある値を言うときに、指定されている量から、いくつかの実施形態においては±100%、いくつかの実施形態においては±50%、いくつかの実施形態においては±20%、いくつかの実施形態においては±10%、いくつかの実施形態においては±5%、いくつかの実施形態においては±1%、いくつかの実施形態においては±0.5%、いくつかの実施形態においては±0.1%の変動を包摂するということを、かかる変動が開示される方法を実施又は開示される組成物を使用する為に適当であるならば意味され得る。
【0047】
さらに、用語「約」は、1つ以上の数又は数的範囲と併せて用いられるときには、全てのかかる数を言うと理解されるべきであり、ある範囲内の全ての数を包含し、示されている数値よりも上及び下に限界を広げることによってその範囲を改変する。エンドポイントによる数的範囲の記述は、その範囲内に含められる全ての数、例えばその分数を包含する整数(例えば、1から5という記述は、1、2、3、4、及び5、並びにその分数、例えば1.5、2.25、3.75、4.1、及び類似物を包含する)と、その範囲内のいずれかの範囲とを包含する。
【0048】
本明細書において挙げられる全ての刊行物、特許出願、特許、及び他の参照は、本開示の主題が関わる分野の業者の水準を示している。全ての刊行物、特許出願、特許、及び他の参照は、それぞれの個々の刊行物、特許出願、特許、及び他の参照が参照によって組み込まれると具体的に個々に示される場合と同じ程度に、参照によって本願に組み込まれる。いくつもの特許出願、特許、及び他の参照が本願において参照されているが、かかる参照はそれらの文書のいずれかが当分野の共通の一般的知識の一部を形成するという承認には当たらないということは理解されるであろう。
【0049】
先行する主題は理解の明瞭性の目的の為に説明及び例として若干詳細に記載されたが、ある種の変更及び改変が添付の請求項の範囲内で実施され得るということは当業者によって理解されるであろう。
(付記)
付記1の検体抽出デバイスは、
第1の末端、ストッパー、及び第2の末端を含むスワブ軸と、
前記スワブ軸の前記第1の末端に取り付けられた蓋(前記蓋は前記スワブ軸に沿ってスライド可能である)と、
前記蓋の内側のクラッシュOリングと、
前記スワブ軸の前記第2の末端のスワブ先端と、
液体媒体及び搾り構造を含む検体抽出容器(前記搾り構造は前記スワブ先端よりも小さい開口を含む)と、
を含む。
付記2の検体抽出デバイスは、付記1に記載の検体抽出デバイスにおいて、前記蓋がネジ式キャップ蓋又はプレスフィット蓋である。
付記3の検体抽出デバイスは、付記1〜2のいずれか一項に記載の検体抽出デバイスにおいて、前記搾り構造がOリングである。
付記4の検体抽出デバイスは、付記1〜3のいずれか一項に記載の検体抽出デバイスにおいて、前記液体媒体が2つの易破壊性シールの間に位置する。
付記5の検体抽出デバイスは、付記1〜4のいずれか一項に記載の検体抽出デバイスにおいて、前記検体抽出容器がさらに出口ポートを含む。
付記6の検体抽出デバイスは、付記5に記載の検体抽出デバイスにおいて、前記出口ポートがフィッティングコネクターを通してマイクロ流体デバイスに流体接続される。
付記7の検体抽出デバイスは、付記6に記載の検体抽出デバイスにおいて、前記フィッティングコネクターがルアー、ネジ、プレスフィット、又はスナップフィットである、
付記8の検体抽出デバイスは、付記7に記載の検体抽出デバイスにおいて、前記マイクロ流体デバイスが、前記検体抽出容器内の易破壊性シールを破断して、前記マイクロ流体デバイス内への前記液体媒体の移動を許すことができる鋭利な構造を含む。
付記9の検体抽出デバイスは、付記7〜8に記載の検体抽出デバイスにおいて、前記液体媒体の逆流を防ぐ為に、前記検体抽出容器と前記マイクロ流体デバイスとの間に逆止弁をさらに含む。
付記10の検体抽出デバイスは、付記7〜9に記載の検体抽出デバイスにおいて、前記マイクロ流体デバイスが、望まれない材料を濾過除去する為のフィルター、半透膜、又は多孔膜をさらに含む。
付記11の検体抽出デバイスは、付記7〜10に記載の検体抽出デバイスにおいて、前記マイクロ流体デバイスが、試薬パウチ内のオンボードの貯蔵された試薬と、検出の為の一体化された核酸ラテラルフローストリップと、1つ以上のアクチュエーター素子とを有するマイクロ流体カートリッジをさらに含む。
付記12の検体抽出デバイスは、付記7〜11に記載の検体抽出デバイスにおいて、前記検体抽出容器の周りにジャケットシースを形成するリング形状のヒーターをさらに含む。
付記13の検体抽出デバイスは、付記12に記載の検体抽出デバイスにおいて、前記ヒーターが、熱伝導性材料のブロック中に埋め込まれた抵抗器を含む抵抗加熱素子である。
付記14の検体抽出デバイスは、付記12に記載の検体抽出デバイスにおいて、前記ヒーターが薄膜抵抗ヒーター又はペルティエ素子又は自己制御型の正温度係数(PTC)ヒーターである。
付記15の検体抽出デバイスは、付記12に記載の検体抽出デバイスにおいて、前記ヒーターが密封されたパウチ内の相変化材料を含む。
付記16の検体抽出デバイスは、付記1〜15のいずれか一項に記載の検体抽出デバイスにおいて、前記搾り構造が狭いスリーブを含み、
前記狭いスリーブが、それが前記搾り構造中に挿入されるときに前記スワブ頭部の周りにきつい嵌合を形成し、それによって前記スワブ頭部を変形させ、搾るように構成される。
付記17の検体抽出デバイスは、付記16に記載の検体抽出デバイスにおいて、前記液体媒体がチャネルを介して前記スリーブの上側に流体接続される。
付記18の検体抽出デバイスは、付記1〜15のいずれか一項に記載の検体抽出デバイスにおいて、前記搾り構造がOリングを含み、前記検体抽出容器がピストンプランジャーを含む。
付記19の検体抽出デバイスは、付記1〜18のいずれか一項に記載の検体抽出デバイスにおいて、 前記検体抽出容器がバネ仕掛けのペッスル及びおろし金をさらに含む。
付記20の方法は、
a. 前記スワブ先端を前記検体抽出容器内に挿入するステップと、
b. 前記スワブ先端を前記搾り構造を通して前記液体媒体中に押し込むステップと、
c. 前記蓋を前記スワブ軸に沿ってスライドさせ、前記蓋を閉め、それによって前記スワブ軸と前記検体抽出容器との間に気密シールを形成するステップと、
d. 前記ストッパーが前記蓋の内側との接触をなすまで前記スワブ先端を引き出すステップと、
e. マイクロ流体デバイスの入口に前記検体抽出デバイスを接続するステップと、
を含む、
付記1〜19のいずれか一項に記載の検体抽出デバイスの使用を含むスワブ先端からの検体抽出の為の方法である。
付記21の方法は、付記20に記載の方法において、ステップ(c)及び(d)が1回以上繰り返される。
付記22の検体抽出デバイスは、付記1〜19のいずれか一項に記載の検体抽出デバイスにおいて、前記スワブ軸が、切れ目付きの破断点を含む破断可能なスワブ軸である。
付記23の方法は、
a. 前記検体抽出容器の前記蓋を開けるステップと、
b. 前記スワブ先端を前記搾り構造を通して前記液体媒体中に挿入するステップと、
c. 前記スワブ先端を前記搾り構造から再び引き抜くステップと、
d. 前記破断可能なスワブ軸を前記切れ目付きの破断点において破断し、前記スワブ先端が前記搾り構造の上側に留まることを許すステップと、
e. 前記検体抽出容器の前記蓋を閉めるステップと、
f. 前記検体抽出デバイスをマイクロ流体デバイス上の入口に接続するステップと、
を含む、
付記22に記載の検体抽出デバイスの使用を含むスワブ先端からの検体抽出の為の方法である。
付記24の方法は、付記23に記載の方法において、ステップ(b)及び(c)が1回以上繰り返される。
【符号の説明】
【0050】
101 スワブ検体抽出の為の検体抽出ユニット
102 ネジ式キャップ又はプレスフィット蓋
103 スワブ軸
104 クラッシュOリング
105 スワブ先端
106 検体抽出容器又はストッパー
107 搾り構造
108 検体抽出容器の底ユニット
109 易破壊性又は穿孔可能シール材料
110 流体ユニットに接続されることを許す出口ポート
111 上側の易破壊性シール
201 スワブ検体からの検体抽出のシーケンス
202 マイクロ流体デバイス
203 マイクロ流体デバイス上のフィッティング
301 破断可能な軸を有するスワブからの検体抽出のシーケンス
302 切れ目付きの破断点
401 マイクロ流体デバイス
402 フィッティングコネクター
403 流体流路
404 リング形状のヒーター
405 流体ウェル
406 逆止弁
502 狭いスリーブ
503 易破壊性又は穿孔可能膜シール
504 チャネル
505 第2の流体デバイスに接続し得る出口
601 スワブ検体抽出の為の検体抽出デバイス
602 蓋
603 スワブ上の検体を溶出する為の液体媒体又は緩衝液
604 ピストンプランジャー
605 Oリング
606 スワブ軸に取り付けられたコネクター
702 マイクロ流体カートリッジ
703 上側アクチュエーター素子
704 底アクチュエーター素子
705 マイクロ流体デバイス上の検体抽出容器
706 フィルター
707 核酸ラテラルフローストリップ
708 試薬パウチ
802 流体ウェル
803 ラテラルフローストリップ
804 中空チャネル
805 ランセット
902 蓋に取り付けられたバネ仕掛けのペッスル
903 容器内側に存在するおろし金