(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6903668
(24)【登録日】2021年6月25日
(45)【発行日】2021年7月14日
(54)【発明の名称】ホイールサスペンション
(51)【国際特許分類】
B60G 3/20 20060101AFI20210701BHJP
【FI】
B60G3/20
【請求項の数】15
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2018-535316(P2018-535316)
(86)(22)【出願日】2016年12月8日
(65)【公表番号】特表2019-501069(P2019-501069A)
(43)【公表日】2019年1月17日
(86)【国際出願番号】EP2016080214
(87)【国際公開番号】WO2017118518
(87)【国際公開日】20170713
【審査請求日】2019年8月15日
(31)【優先権主張番号】102016200095.0
(32)【優先日】2016年1月7日
(33)【優先権主張国】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】500045121
【氏名又は名称】ツェットエフ、フリードリッヒスハーフェン、アクチエンゲゼルシャフト
【氏名又は名称原語表記】ZF FRIEDRICHSHAFEN AG
(74)【代理人】
【識別番号】100069556
【弁理士】
【氏名又は名称】江崎 光史
(74)【代理人】
【識別番号】100111486
【弁理士】
【氏名又は名称】鍛冶澤 實
(72)【発明者】
【氏名】ハッカー・クレメンス
(72)【発明者】
【氏名】シディキ・サミ・ウッデイン
(72)【発明者】
【氏名】フィンクバイナー・エヴゲニ
(72)【発明者】
【氏名】メラー・マティアス
【審査官】
佐々木 智洋
(56)【参考文献】
【文献】
特開昭63−284008(JP,A)
【文献】
特開平06−344737(JP,A)
【文献】
独国特許出願公開第102013211535(DE,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60G 3/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ホイールキャリヤ(3)を有し、このホイールキャリヤは、ホイールキャリヤ(3)が、第1の結合領域(19)内で直接的にホイールガイドリンク(4)と結合され、第2の結合領域内でインテグラルリンク(5,15,16)を介して間接的にホイールガイドリンク(4)と結合されていることによって、ホイールガイドリンク(4)に対して旋回運動可能に支承され、ホイールガイドリンク(4)が、前方ボディ側軸受(11)を有するトレーリングリンク領域(4a)と後方ボディ側軸受(12)を有するラテラルリンク領域(4b)を有し、後方ボディ側軸受(12)が、両ボディ側軸受(11,12)を経て延在するホイールガイドリンク(4)の回転軸(20)に対して平行に軸方向に整向されている、自動車用のホイールサスペンション(1)において、
インテグラルリンク(5)の一端及び他端のジョイント(15,16)の軸(21,22)が、ホイールサスペンション(1)に対する側面図で、車両縦方向(x)に関してホイール中心(23)の前に位置する点(S)で交差するように整向されていること、を特徴とするホイールサスペンション。
【請求項2】
ホイールガイドリンク(4)は、トレーリングリンク領域(4a)がL字の長い方の脚を構成し、ラテラルリンク領域(4b)がL字の短い方の脚を構成することによって、L字状に形成されていること、を特徴とする請求項1に記載のホイールサスペンション。
【請求項3】
ホイールガイドリンク(4)の後方ボディ側軸受(12)が、車両横方向(y)に関して、前方ボディ側軸受(11)よりも車両中心の近くに配置され、これにより、ホイールガイドリンク(4)の回転軸(20)が、車両縦方向(x)に対して角度(α)の分だけ傾斜していること、を特徴とする請求項1又は2に記載のホイールサスペンション。
【請求項4】
後方ボディ側軸受(12)と前方ボディ側軸受(11)が、エラストマー軸受として形成されていること、を特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載のホイールサスペンション。
【請求項5】
ホイールガイドリンク(4)が、後方ボディ側軸受(12)を介してアクスルキャリヤ(2)に結合され、前方ボディ側軸受(11)を介してボディに結合されていること、を特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載のホイールサスペンション。
【請求項6】
ホイールガイドリンク(4)のラテラルリンク領域(4b)が、車両縦方向(x)に関して、車両高さ方向(z)又は車両横方向(y)よりも高い弾性を備えること、を特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載のホイールサスペンション。
【請求項7】
両結合領域(19;5,15,16)が、車両縦方向(x)に互いに離隔され、結合領域の一方が、ホイール中心(23)の前に形成され、他方が、ホイール中心(23)の後に形成されていること、を特徴とする請求項1〜6のいずれか1項に記載のホイールサスペンション。
【請求項8】
インテグラルリンク(5)が、ホイールキャリヤ(3)の揺動されない状態で、車両高さ方向(z)に延在すること、を特徴とする請求項1〜7のいずれか1項に記載のホイールサスペンション。
【請求項9】
インテグラルリンク(5)が、一端を、ジョイント(15)を介してホイールキャリヤ(3)と結合され、他端を、ジョイント(16)を介してホイールガイドリンク(4)と結合されていること、を特徴とする請求項1〜8のいずれか1項に記載のホイールサスペンション。
【請求項10】
インテグラルリンク(5)の一端及び他端のジョイント(15,16)の軸(21,22)が、ホイールサスペンション(1)に対する平面図で、ホイールガイドリンク(4)の回転軸(20)に対してほぼ平行に整向されていること、を特徴とする請求項1〜9のいずれか1項に記載のホイールサスペンション。
【請求項11】
インテグラルリンク(5)のリンク側のジョイント(16)の軸(22)が、ホイールサスペンション(1)に対する側面図で、ホイールガイドリンク(4)の回転軸(20)に対してほぼ平行に整向されていること、を特徴とする請求項1〜10のいずれか1項に記載のホイールサスペンション。
【請求項12】
ホイールキャリヤ(3)が、付加的にキャンバーリンク(8)を介してアクスルキャリヤ(2)と結合され、キャンバーリンク(8)が、上のリンク平面に付設され、ホイールガイドリンク(4)が、その下のリンク平面に付設されていること、を特徴とする請求項1〜11のいずれか1項に記載のホイールサスペンション。
【請求項13】
ホイールサスペンションに操舵手段(9)が付設され、この操舵手段が、ホイール中心(23)の後でホイールキャリヤ(3)と関節式に結合されていること、を特徴とする請求項1〜12のいずれか1項に記載のホイールサスペンション。
【請求項14】
操舵手段が、トーリンク(9)として形成され、このトーリンクが、能動的な操舵のためにアクチュエータを介して操作可能であること、を特徴とする請求項13に記載のホイールサスペンション。
【請求項15】
操舵手段が、ホイールストロークを介する受動的な操舵のためのタイロッドとして形成されていること、を特徴とする請求項13に記載のホイールサスペンション。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、請求項1の上位概念による自動車用のホイールサスペンションと、請求項17の上位概念によるホイールガイドリンクに関する。
【背景技術】
【0002】
請求項1の上位概念の特徴による自動車用のホイールサスペンションは、従来技術から既知である。これに関して、自動車用の操舵可能なリヤホイールサスペンションを開示する独国特許出願公開第10 2013 211 535号明細書の参照を指摘したい。これに記載されたホイールサスペンションは、特にホイールガイドリンクを有し、このホイールガイドリンクは、トレーリングリンク領域とラテラルリンク領域を備え、トレーリングリンク領域は、前方ボディ側軸受を備え、ラテラルリンク領域は、これに比して更に内側に位置する後方ボディ側軸受を備えている。このように構成された実質的にL字状のホイールガイドリンクは、前方ボディ側軸受と後方ボディ側軸受を経て延在する回転軸を中心としてボディ構造に対して旋回可能である。例えば底の
図4からわかるように、ホイールガイドリンクのラテラルリンク領域は、いわゆる“剣型リンク”として形成され、その車両中心に向いた終端に、後方ボディ側軸受が形成されている。1つの穴だけによって図示されたこの軸受の精確な形態は、この文献から読み取ることはできない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】独国特許出願公開第10 2013 211 535号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の課題は、一方では十分な縦方向の快適性を達成することができ、加えて低い2次バネ定数を備える冒頭で述べた形式のホイールサスペンションを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
前記課題は、請求項1の特徴によるホイールサスペンションによって解決される。本発明によれば、これにより、ホイールキャリヤを備え、このホイールキャリヤが、ホイールガイドリンクに対して旋回運動可能に支承され、ホイールガイドリンクが、前方ボディ側軸受を有するトレーリングリンク領域と後方ボディ側軸受を有するラテラルリンク領域を有する、自動車用のホイールサスペンションであって、後方ボディ側軸受が、両ボディ側軸受を経て延在するホイールガイドリンクの回転軸に対して平行に軸方向に整向されていること、を特徴とするホイールサスペンションが説明される。
【0006】
十分な縦方向の快適性を達成するために、トレーリングリンクがボディ側をゴム軸受を介して結合することが一般的に知られているので、トレーリングリンクは、例えば制動過程時に、ボディ構造に対して車両縦方向にある程度の可撓性を備える。このような縦方向の可撓性を可能にするために、例えば独国特許出願公開第10 2013 211 535号明細書から知られたホイールサスペンションの場合、ホイールガイドリンクのラテラルリンク領域は、車両縦方向に曲げ易い板材(“剣型リンク”とも呼ばれる)として形成されているので、これは、車両の制動時に車両縦方向に変形することができる。付加的にトレーリングリンク領域がゴム軸受を介してボディ側を結合することができることにより、ラテラルリンク領域の変形下で、少なくともホイールガイドリンクのトレーリングリンク領域が車両縦方向に少なくとも極僅かに可撓性を有し、これが、車両の走行の快適性の向上に寄与する。
【0007】
本発明によれば、トレーリングリンク領域の前方ボディ側軸受とラテラルリンク領域の後方ボディ側軸受を経て延在する回転軸に対して平行であるように、ラテラルリンク領域の後方ボディ側軸受を軸方向に整向することが、有利であると見なされた。実質的に、後方ボディ側軸受の軸受軸、即ち軸受が回転に対して最小の抵抗を与える軸は、ホイールガイドリンクの回転軸と一致する。本発明の有利な発展形によりエラストマー軸受として形成されている後方ボディ側軸受が、ホイールガイドリンクのバウンド運動時に僅かにしか応力を受けないことが、この配置の効果であり、これにより、ホイールサスペンションの2次バネ定数(即ち、ボディバネ剛性を考慮せずにホイールガイドリンクのバウンド運動に抵抗する剛性)は、特に低い。これは、ホイールガイドリンクのバウンド運動時に後方ボディ側軸受がその軸受軸を中心として−即ち小さい抵抗及び少ない摩耗で−回転されることによる。これとは十分無関係に、ホイールサスペンションの縦方向の快適性は、ホイールガイドリンクのラテラルリンク領域の弾性変形能力によって有利に保証される。従って、2次バネ定数は、縦方向の快適性にマイナスの影響を与えることなく低く保つことができる。
【0008】
ホイールサスペンションの好ましい発展形によれば、ホイールガイドリンクは、トレーリングリンク領域がL字の長い方の脚を構成し、ラテラルリンク領域がL字の短い方の脚を構成することによって、実質的にL字状に形成されている。実質的にL字状との表現は、これに関して広く解釈することができることを指摘するが、特に、トレーリングリンク領域とラテラルリンク領域がそれぞれ1つの実質的に細長い延在部を備え、ほぼ直角に互いに結合されていると、理解されるべきである。トレーリングリンク領域とラテラルリンク領域は、必ずしもその全長にわたって直線的に延在する必要はないが、例えば取付けスペースの要求に起因して純粋に直線的な形状から外れることもできる。ホイールガイドリンクの全体で見てほぼL字形であることに基づいて、ホイールガイドリンクは、台形リンクと呼ぶこともできる。
【0009】
既に述べたように、ホイールガイドリンクのトレーリングリンク領域は、前方ボディ側軸受を備え、ラテラルリンク領域は、後方ボディ側軸受を備えている。好ましい構造的な形成によれば、ホイールガイドリンクの後方ボディ側軸受が、車両横方向に関して、前方ボディ側軸受よりも車両中心の近くに配置され、これにより、特に、ホイールガイドリンクの回転軸が、車両縦方向に対して角度の分だけ傾斜している配置が得られる。これにより、運動学的には、ホイールガイドリンクは、いわゆる“ゼミトレーリングリンク”である。
【0010】
少なくとも後方ボディ側軸受が、好ましくは前方ボディ側軸受も、エラストマー軸受として形成されていることによって、ホイールサスペンションは、特に高い走行快適性を提供する。特にエラストマー軸受として前方ボディ側軸受を形成することは、ホイールガイドリンクが、車両縦方向に少なくとも極僅かボディ構造に対して可動(可撓性)であることを可能にする。機械的弾性以外に、エラストマー軸受の使用は、有利にはアクスルキャリヤもしくはボディに対するホイールガイドリンクの音響的切離を生じさせる。
【0011】
ホイールガイドリンクは、種々の方法でボディ構造側に結合され得る。本発明の好ましい発展形は、ホイールガイドリンクが、後方ボディ側軸受を介してアクスルキャリヤに結合され、前方ボディ側軸受を介してボディに結合されていることを企図する。これに対して選択的に、前方ボディ側軸受は、アクスルキャリヤに結合することもでき、これにより、ボディへの全構造ユニットとしてのホイールサスペンションの組立ては、単純化することができる。これに対して、前方ボディ側軸受をボディに直接的に結合することは、アクスルキャリヤをより小さく形成することができ、場合によっては、ボディへの既存の結合箇所を利用することができるとの利点を有する。このため更にまた選択的に、後方ボディ側軸受と前方ボディ側軸受の両方をボディに直接的に結合することが考えられる。
【0012】
ホイールサスペンションの十分な縦方向の快適性を達成するために、有利には、ホイールガイドリンクのラテラルリンク領域が、車両縦方向に関して、車両高さ方向又は車両横方向よりも明らかに高い弾性を備えることが企図されている。これは、ホイールガイドリンクのラテラルリンク領域が、車両縦方向に曲げ易い板材(“剣型リンク”とも呼ばれる)の形式で形成されていることによって達成することができる。
【0013】
ホイールサスペンションの一般的な形態によれば、ホイールキャリヤは、ホイールガイドリンクに対して一般的に旋回運動可能に支承されている。ホイールサスペンションの好ましい発展形は、ホイールキャリヤが、第1の結合領域内で直接的に特にボールジョイントを介してホイールガイドリンクと結合され、第2の結合領域内で間接的にインテグラルリンクを介してホイールガイドリンクと結合されていること、を企図する。即ち、ホイールキャリヤとホイールガイドリンクは、2つの結合領域内で互いに結合され、この結合部は、第1の結合領域内で直接的に、第2の結合領域内で間接的に形成されている。第1の結合領域内では、例えばボールジョイント又はゴム軸受が使用され、これにより、ホイールキャリヤとホイールガイドリンクの間に3つの回転自由度が実現することができる。第2の結合領域内では、インテグラルリンクが使用され、特に、リンク部品、例えば、一端が、ジョイントを介してホイールキャリヤと結合され、他端が、ジョイントを介してホイールガイドリンクと結合された2点リンクである。結合領域の相応の形成及び配置により、ホイールキャリヤがホイールガイドリンクに対して仮想の操舵軸を中心として旋回可能であるとの効果を達成することができる。
【0014】
この場合、合目的に、両結合領域が、車両縦方向に互いに離隔され、好ましくは領域の一方が、ホイール中心の前に形成され、他方が、ホイール中心の後に形成されている。これにより、第1の結合領域と第2の結合領域の間に十分大きい間隔を提供することができ、これにより、インテグラルリンクに作用する支持力を低減することができる。
【0015】
ホイールサスペンションは、インテグラルリンクが、ホイールキャリヤの揺動されない状態で、実質的に車両高さ方向に延在する場合に、特にコンパクトに形成することができる。これにより、それ以外に、ほぼ同じ大きさの最大の正もしくは負の操舵角を達成することができる。
【0016】
ホイールサスペンションのできるだけ低い2次バネ定数を達成するために、有利な発展形によれば、インテグラルリンクのジョイントの軸が、ホイールサスペンションに対する平面図で、ホイールガイドリンクの回転軸に対してほぼ平行に整向されている。
【0017】
同様に2次バネ定数を低減するために、ホイールサスペンションの更に有利な形成によれば、インテグラルリンクのジョイントの軸が、ホイールサスペンションに対する側面図で、車両縦方向に関してホイール中心の前に位置する点で交差するように整向され、インテグラルリンクのリンク側のジョイントの軸が、ホイールサスペンションに対する側面図で、好ましくはホイールガイドリンクの回転軸に対してほぼ平行に整向されている。
【0018】
インテグラルリンクのジョイント軸の前記整向は、インテグラルリンクの軸受−これは好ましくはエラストマー軸受である−が、カルダン的でほとんど応力を受けず、これが、同様にホイールサスペンションの2次バネ定数の低減のために寄与するとの結果をもたらす。これにより、加えて、エラストマー軸受の寿命が増加する。更に、車両は、低い2次バネ定数に基づいて良好に調整することができる。
【0019】
合目的に、ホイールキャリヤが、付加的にキャンバーリンクを介してアクスルキャリヤ及び/又はボディと結合され、キャンバーリンクが、上のリンク平面に付設され、ホイールガイドリンクが、その下のリンク平面に付設されている。これにより、ホイールサスペンションは、全体的にコンパクトに形成することができる。
【0020】
操舵軸を中心としてホイールサスペンションを操舵するために、ホイールサスペンションに操舵手段が付設され、この操舵手段が、好ましくはホイール中心の後でホイールキャリヤと関節式に結合されていること、が有利である。これは、基本的に異なった形式の操舵手段であり得る。
【0021】
ホイールサスペンションの好ましい発展形によれば、操舵手段が、トーリンクとして形成され、このトーリンクが、能動的な操舵のためにアクチュエータを介して操作可能である。その場合、アクチュエータを介する操作は、特に、車両横方向のトーリンクの並進運動を生じさせ、これにより、トーリンクの運動を介してホイールキャリヤに、従ってこれに支承されたホイールに操舵運動を導入する。
【0022】
選択的に、操舵手段が、ホイールストロークを介する受動的な操舵のためのタイロッドとして形成されていること、が考えられる。これにより、ホイールサスペンションは、特に安価に形成することができる。
【0023】
ホイールサスペンションは、操舵手段が特に直接的にホイールキャリヤと結合されている場合に、特にコンパクトに形成することができる。このようにして、ホイールキャリヤに対する操舵手段の直接的な作用によって、操舵軸を中心とするホイールキャリヤの特に正確な操舵をおこなうことができる。この場合、有利には、操舵手段は、ホイール中心の後に配置され、これにより、ホイール駆動するために十分な取付けスペースが生じる。選択的に、操舵手段は、例えば操舵手段がインテグラルリンクと結合されていることによって、間接的にホイールキャリヤと協働することもできる。
【0024】
ホイールガイドリンクのラテラルリンク領域が好ましくはホイール中心の後に配置されていることによって、ホイール中心の領域に任意の駆動手段のために十分な取付けスペースを提供することができる。有利には、ホイールガイドリンクのトレーリングリンク領域は、ホイール中心の前まで延在する。トレーリングリンク領域により、特に、生じる制動及び加速トルクもしくは制動及び加速力を支持することができる。
【0025】
前記ホイールサスペンション以外に、本発明は、更に請求項17の特徴によるホイールガイドリンクに関する。このホイールガイドリンクは、特に、前記ホイールサスペンションのホイールキャリヤを支承するために適している。本発明によるホイールガイドリンクは、それぞれ1つの終端側の軸受を有するトレーリングリンク領域とラテラルリンク領域を備え、終端側の軸受が、軸受を経て延在する回転軸に対して平行に整向されていること、によって際立っている。繰り返しを避けるため、ホイールガイドリンクの有利な別の形成は、その他の明細書の参照を指摘したい。
【0026】
本発明を、以下で、図面に図示した実施例により詳細に説明する。これから、本発明の有利な別の効果も生じる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【
図1】唯一の実施例によるホイールサスペンションの斜め後方から見た斜視図
【
図3】ホイールサスペンションの領域に対する側面図
【
図4】ホイールサスペンションにおいて使用されるホイールガイドリンクの個別図示の平面図
【発明を実施するための形態】
【0028】
図1〜4に、本発明の唯一の実施例による自動車用のホイールサスペンションが、種々の様相で示され、以下で説明される。4つの図が、本発明の唯一の実施例に関するので、図面内で同じ部品が同じ符号で示され、これにより、符号もしくは対応する部品に対してなされる記述は、等しく全ての図に当て嵌まり、相応に各図のために繰り返されない。全ての図で、座標系を指示することによって、向き定義されており、xが車両縦方向に、yが車両横方向に、そしてzが車両高さ方向に一致する。
【0029】
図1は、アクスルキャリヤ2に取り付けられた自動車用のホイールサスペンション1を示し、明瞭さの理由から、−(図示されてない)自動車に関して−左側のホイールサスペンション1が取り付けられているに過ぎない。ホイールサスペンション1が取り付けられたアクスルキャリヤ2は、実質的に互いに溶接された4つのチューブから成り、そのうちの、前方の1つのチューブと後方の1つのチューブが、実質的に車両横方向に延在し、これと比べて短い実質的に車両縦方向に延在する2つのチューブによって互いに1つの高剛性のフレームに溶接されている。車両横方向に延在するチューブの外端に、それ自身普通の方法で、4つの結合箇所が存在し、これら結合箇所により、アクスルキャリヤ2は、それ自身知られた方法で、自動車の(図示してない)ボディに取り付けることができる。
【0030】
図示したホイールサスペンション1は、ホイールガイドリンク4に対して旋回運動可能に支承されたホイールキャリヤ3を備える。ホイールガイドリンク4は、トレーリングリンク領域4aとラテラルリンク領域4bを備える実質的にL字状に形成された部品である。これに関して、個別図示のホイールガイドリンク4を平面図で示す
図4の参照を指摘したい。これから、ホイールガイドリンク4が、実質的に、トレーリングリンク領域4aを構成するチューブ状の部品と、この部品と不動に結合された、ラテラルリンク領域4bを構成する剣状の部品から構成されることがわかる。トレーリングリンク領域4aがそのチューブ状の形成に基づいて特に捩り剛性を有するが、ラテラルリンク領域4bは、特に車両縦方向xに関して比較的高い弾性を、従って柔軟性を備える。ホイールガイドリンク4が、全体として、トレーリングリンク領域4aがL字の長い方の脚を構成し、ラテラルリンク領域4bが短い方の脚を構成する実質的にL字状の部品と見なすことができるが、トレーリングリンク領域4aは、実質的に細長いその延在部にもかかわらず、若干のS字形状(連続する右湾曲と左湾曲)を備える。このS字形状は、ホイールキャリヤ3用のジョイント収容部19が、特にホイール近く(車両外側)に配置され、同時に、(車両縦方向xに関して)更に前方で内側に向かって湾曲した領域に、ホイールキャリヤ3に取り付けられるホイールのために十分なスペースが提供されることを可能にする。車両縦方向xに関して更に後方に位置するように、トレーリングリンク領域4aでL字の角の近くに、更に説明すべきインテグラルリンク5のためのリンク側のジョイント16用の収容部が設けられている。更に、トレーリングリンク領域4aのこの部分に、ダンパ6用の下の収容部が存在する。チューブ状のトレーリングリンク領域4aと剣状のラテラルリンク領域4bによって構成されるL字の角に、更に、螺旋バネ7(
図1及び2に図示された)を下から支持するために使用される収容プレートが配置されている。
【0031】
更に
図4からわかるように、ホイールガイドリンク4は、トレーリングリンク領域4aの前端に前方ボディ側軸受11(
図4では、軸受収容部が図で示されているに過ぎない)を備える。この前方ボディ側軸受11は、エラストマー軸受として形成され、その軸受軸は、
図2に図示したように、傾斜角αの分だけ(
図2参照)車両縦方向xに対して傾斜している。
【0032】
更にまた
図4に関して、そこの図示から、ホイールガイドリンク4がその車両内側に向いたラテラルリンク領域4bの終端に、後方ボディ側軸受12を備えることを読み取ることができる。この後方ボディ側軸受12(
図4では、軸受収容部が図で示されているに過ぎない)も、エラストマー軸受として形成されている。後方ボディ側軸受12も、この後方ボディ側軸受が、前方ボディ側軸受11と後方ボディ側軸受12の中心を経て延在する回転軸20に対して平行に整向されていることによって、特別な軸方向の整向を備える。従って、後方ボディ側軸受12の軸受軸は、ラテラルリンク領域4bの主延在方向に対して直角ではなく、このラテラルリンク領域に対して90°未満の角度βを成す。
【0033】
図2からわかるように、ホイールガイドリンク4は、前方ボディ側軸受11と後方ボディ側軸受12を介してボディもしくはアクスルキャリヤ2(まとめてボディ構造)と結合されている。従って、ホイールガイドリンク4は、回転軸20を中心としてボディ構造に対して旋回可能であり、これにより、ホイールガイドリンク4のバウンドが(このホイールガイドリンクと結合されたホイールキャリヤ3と共に)可能である。ホイールガイドリンク4の後方ボディ側軸受12が車両横方向yに関して前方ボディ側軸受11よりも車両中心の近くに配置されているので、ホイールガイドリンク4の回転軸20は、車両縦方向xに対して角度αの分だけ傾斜している。
【0034】
ここで説明した実施例で、ホイールガイドリンク4は、後方ボディ側軸受12を介してアクスルキャリヤ2に結合されているが、前方ボディ側軸受11は、(図示してない)ボディに直接的に結合されている。考え得る選択的な実施形態によれば、アクスルキャリヤは、また、前方ボディ側軸受11もアクスルキャリヤに結合されているように形成することができる。ホイールガイドリンク4の支承部の運動学は、その影響を受けないままである。
【0035】
図4に関して既に述べたように、ホイールガイドリンク4のラテラルリンク領域4bは、車両縦方向に関して車両高さ方向z又は所領横方向yよりも明らかに高い弾性を備える。
図2及び4からもっともよくわかるように、ホイールガイドリンク4のラテラルリンク領域4bは、“剣”の形式で形成されている。加えて、ホイールガイドリンク4の前方ボディ側軸受11は、軸受軸(回転軸20と一致する)の方向に可撓性を備える。ラテラルリンク領域4bの比較的高い弾性と前方ボディ側軸受11の縦方向可撓性は、トレーリングリンク4が車両縦方向の衝撃時に、ホイールガイドリンク4のラテラルリンク領域4bの変形下で、少なくともある程度車両縦方向に可動であり、これにより、ホイールサスペンション1の縦方向の快適性が向上するために寄与する。この場合、後方ボディ側軸受12の前記整向は、有利には、ラテラルリンク領域4bと軸受12のエラストマー体がホイールガイドリンク4のバウンドもしくはリバウンド時に全く又はほとんど変形されないことを保証する。軸受12の作動に起因する応力は、これにより有利に低減され、ホイールサスペンション1の2次バネ定数は、全体的に低下する。継続的な縦方向可動性(トレーリングリンク領域4bの変形能力)に基づいて、ホイールサスペンション1の縦方向の快適性は高いままである。
【0036】
既に前で述べたように、ホイールキャリヤ3は、ホイールガイドリンク4に対して旋回運動可能に支承されている。この目的のため、ホイールサスペンション1の図示した実施例では、ホイールキャリヤ3が、ホイールガイドリンク4と2つの結合領域で結合されているので、ホイールキャリヤ3は、仮想の操舵軸を中心としてホイールガイドリンク4に対して旋回可能である。この場合、ジョイント収容部19とキャンバーリンク8のホイールキャリヤ側のジョイント14との間の仮想の接続線は、ホイールキャリヤ3の仮想の操舵軸である。
【0037】
図4に関して既に述べたように、ホイールガイドリンク4のトレーリングリンク領域4aには、ボールジョイントを収容するためのジョイント収容部19が形成され、このボールジョイントは、ホイールキャリヤ3をこの第1の結合領域19でホイールガイドリンク4とボールジョイントで結合するために使用される。
【0038】
図3から、ホイールキャリヤ3が、加えて第2の結合領域で間接的にインテグラルリンク5を介してホイールガイドリンク4と結合されていることを読み取ることができる。インテグラルリンク5は、いわゆる2点リンクとして形成され、上のジョイント15がホイールキャリヤ3と結合され、下端がジョイント16を介してホイールガイドリンク4と結合されている。インテグラルリンク5は、実質的に細長い延在部を備える。しかしながら、純粋に真直ぐな延在部とは違って、インテグラルリンク5は、ほぼ中心の領域で若干湾曲している。
図3内の図示によれば、インテグラルリンク5のジョイント15,16の軸21,22は、ホイールサスペンション1に対する側面図で、車両縦方向xに関してホイール中心23の前に位置する点Sで交差するように整向されている。インテグラルリンク5のリンク側のジョイント16の軸22は、ホイールサスペンション1に対する側面図で、ホイールガイドリンク4の回転軸20に対してほぼ平行に延在する。
【0039】
図2の図示によれば、インテグラルリンク5のジョイント15,16の軸21,22は、ホイールサスペンション1に対する平面図で、ホイールガイドリンク4の回転軸20に対してほぼ平行に整向されている。インテグラルリンクのジョイント軸のこの整向により、ホイールサスペンション1の2次バネ定数の更なる減少が達成される。何故なら、インテグラルリンクの好ましくは使用されるエラストマー軸受が、カルダン的でほとんど応力を受けないからである。これにより、エラストマー軸受の寿命と走行快適性の両方が向上する。加えて、ホイールサスペンション1を装備した車両は、低い2次バネ定数に基づいて良好に調整することができる。
【0040】
両(第1及び第2の)結合領域−これら領域でホイールキャリヤとホイールガイドリンクが結合されている−は、
図3からわかるように、車両縦方向xに互いに離隔されている。これにより、回転軸を中心とするホイールキャリヤ3の回転が回避され、第2の結合領域に配置されたインテグラルリンク5が支持要素として使用される。第1のジェ都合領域は、
図3からわかるように、ホイール中心23の前に配置されているが、インテグラルリンク5によって構成される第2の結合領域は、ホイール中心23の後に−それぞれ車両縦方向xに関して−配置されている。ホイールキャリヤ3の揺動されない状態で、インテグラルリンク5は、実質的に車両高さ方向zに延在する。
【0041】
図1及び2で最も明らかに見られるように、ホイールキャリヤ3は、キャンバーリンク8を介して付加的にアクスルキャリヤ2と結合されている。キャンバーリンク8は、若干“C”字の形状を備える2点リンクである。キャンバーリンク8のアクスルキャリヤ2の方を向いた終端は、ボディ側のジョイント13を介してアクスルキャリヤ2と関節式に結合されている。キャンバーリンク8のホイールキャリヤの側の終端は、ホイールキャリヤ側のジョイント14を介してホイールキャリヤ3と関節式に結合されている。仮想の下のリンク平面内に配置されたホイールガイドリンク4と比べて、キャンバーリンク8は、それに対して上のリンク平面に付設することができる。
【0042】
キャンバーリンク8を介する結合と共にホイールガイドリンク4へのホイールキャリヤの前記間接的及び直接的な連結は、点19及び14を経て延在する仮想の操舵軸を中心とするホイールガイドリンク4に対するホイールキャリヤ3の旋回運動を可能にする。このような操舵運動の実行時に、インテグラルリンク5は、リンク側のジョイント16の軸22を中心として旋回し、この操舵運動を制御するために、操舵手段9が付設されている。示した実施例で、これは、能動的な操舵のために(詳細には図示してない)アクチュエータを介して操作することができるトーリンク9である。トーリンク9は、その車両外側の終端においてホイール中心23の後に配置されたエンドジョイント17を介してホイールキャリヤ3と関節式に結合されている。選択的に、トーリンク9は、ここには図示してないバリエーションにより、そのリンク側のジョイント16から離隔したインテグラルリンク5に直接的に作用することもできる。
【0043】
図1及び2からわかるように、ホイールガイドリンク4にはバネ7とダンパ6が付設されている。これらは、それぞれ実質的に車両高さ方向zに延在し、そのそれぞれの下端においてホイールガイドリンク4に対して支持される。
図2に対応するホイールサスペンション1に対する平面図で見て、バネ7とダンパ6は、アクスルキャリヤ2とキャンバーリンク8とホイールキャリヤ3とトーリンク9の間に配置されている。
【符号の説明】
【0044】
1 ホイールサスペンション
2 アクスルキャリヤ
3 ホイールキャリヤ
4 ホイールガイドリンク
4a トレーリングリンク領域
4b ラテラルリンク領域
5 インテグラルリンク
6 ダンパ
7 バネ
8 キャンバーリンク
9 トーリンク
10 スタビライザ
11 前方ジョイント
12 後方ジョイント
13 ボディ側ジョイント
14 ホイールキャリヤ側ジョイント
15 ホイールキャリヤ側ジョイント
16 リンク側ジョイント
17 エンドジョイント
18 内側リンク
19 ホイールキャリヤのジョイント収容部
20 軸
21 軸
22 軸
23 ホイール中心
S 交点
α,β 傾斜角
x 車両縦方向
y 車両横方向
z 車両高さ方向