(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6903673
(24)【登録日】2021年6月25日
(45)【発行日】2021年7月14日
(54)【発明の名称】要素、及び分解溝を作製する方法
(51)【国際特許分類】
F16B 12/26 20060101AFI20210701BHJP
B23C 3/30 20060101ALI20210701BHJP
B27C 5/00 20060101ALI20210701BHJP
F16B 5/10 20060101ALI20210701BHJP
F16B 12/12 20060101ALI20210701BHJP
B27M 1/00 20060101ALI20210701BHJP
【FI】
F16B12/26
B23C3/30
B27C5/00
F16B5/10 J
F16B12/12 C
B27M1/00 C
【請求項の数】12
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2018-540122(P2018-540122)
(86)(22)【出願日】2017年2月9日
(65)【公表番号】特表2019-507296(P2019-507296A)
(43)【公表日】2019年3月14日
(86)【国際出願番号】SE2017050124
(87)【国際公開番号】WO2017138874
(87)【国際公開日】20170817
【審査請求日】2019年11月22日
(31)【優先権主張番号】1650159-5
(32)【優先日】2016年2月9日
(33)【優先権主張国】SE
(73)【特許権者】
【識別番号】504033441
【氏名又は名称】ベーリンゲ、イノベイション、アクチボラグ
【氏名又は名称原語表記】VAELINGE INNOVATION AB
(74)【代理人】
【識別番号】100091982
【弁理士】
【氏名又は名称】永井 浩之
(74)【代理人】
【識別番号】100091487
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 行孝
(74)【代理人】
【識別番号】100082991
【弁理士】
【氏名又は名称】佐藤 泰和
(74)【代理人】
【識別番号】100105153
【弁理士】
【氏名又は名称】朝倉 悟
(74)【代理人】
【識別番号】100164688
【弁理士】
【氏名又は名称】金川 良樹
(72)【発明者】
【氏名】マグヌス、フリードルンド
【審査官】
熊谷 健治
(56)【参考文献】
【文献】
特開2011−001994(JP,A)
【文献】
国際公開第2012/095454(WO,A1)
【文献】
国際公開第2015/038059(WO,A1)
【文献】
米国特許出願公開第2010/0083603(US,A1)
【文献】
国際公開第2015/105449(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16B 5/00− 5/12
F16B 12/00−12/60
B23C 3/30
B23C 5/00
B27M 1/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
可撓性タング(50)を有する係止構造により他の要素(7)に係止される要素(1)に分解溝(4)を作製する方法であって、
前記係止構造は、前記他の要素(7)の縁部(8)が挿入される前記要素(1)の縁部溝(9)と、前記要素(1)に設けられた前記縁部溝(9)内の挿入溝(2)と、前記挿入溝(2)に配置された前記可撓性タング(50)と、前記他の要素(7)の前記縁部(8)に設けられたタング溝(3)と、を有し、前記可撓性タング(50)は、前記他の要素(7)の前記縁部(8)が前記要素(1)の前記縁部溝(9)に挿入される時、前記挿入溝(2)に押し込まれ、前記要素(1)と前記他の要素(7)とが接続状態に到達した時に、バネの力で前記タング溝(3)に入り込むものであり、前記係止構造は、前記接続状態において前記可撓性タング(50)が前記タング溝(3)に入り込むことで、前記要素(1)と前記他の要素(7)とを係止するように構成されるものであり、
第1側面(5)と、対向する第2側面(6)とを有する前記要素(1)を作製する工程と、
前記挿入溝(2)を前記要素(1)に作製する工程であって、前記挿入溝(2)は、前記要素(1)に沿って前記第1側面(5)と前記第2側面(6)との間に延びるとともに、前記要素(1)を前記他の要素(7)に係止するための前記可撓性タング(50)を受容するように構成される工程と、
分解溝(4)を前記要素(1)に作製する工程であって、前記分解溝(4)は、前記第1側面(5)から前記挿入溝(2)に前記挿入溝(2)の一部に沿って延びるとともに、前記要素(1)を前記他の要素(7)から取り外すための分解ツール(60)を受容するように構成される工程と、
を備える方法。
【請求項2】
前記挿入溝(2)をフライス加工するための第1切削面(21)と、前記分解溝(4)をフライス加工するための第2切削面(22)とを有する単独のフライス加工ツール(20)を用いたフライス加工によって前記挿入溝(2)及び前記分解溝(4)を作製する工程と、
第1位置にある前記フライス加工ツール(20)を用いて前記挿入溝(2)をフライス加工し、前記フライス加工ツール(20)をその長手方向軸に対して径方向に第2位置に移動させることにより前記分解溝(4)をフライス加工する工程と、
を備える請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記要素(1)内に前記挿入溝(2)全体に沿った少なくとも第1深さを有する前記挿入溝(2)を作製する工程と、
前記要素(1)内に前記分解溝(4)の位置における第2深さを有する前記挿入溝(2)を作製する工程であって、前記第2深さは前記第1深さより深くする工程と、
を備える請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
前記分解溝(4)を作製する工程は、前記第1側面(5)から前記第2側面(6)に向かって延びるガイド面(11)であって、前記第1側面(5)に対して少なくとも部分的に90度未満で角度を付けられるガイド面(11)を作製する工程を備える、
請求項1乃至3のいずれかに記載の方法。
【請求項5】
前記第1側面(5)は前記縁部溝(9)を備え、前記他の要素(7)は前記縁部(8)を備え、
前記他の要素(7)と前記要素(1)とを一体に第1方向において係止するように、前記縁部(8)は、前記縁部溝(9)と協働するように構成される、
請求項1乃至4のいずれかに記載の方法。
【請求項6】
前記縁部溝(9)は、前記挿入溝(2)を備える、
請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記縁部(8)は、前記タング溝(3)を備え、
前記他の要素(7)と前記要素(1)とを一体に、前記第1方向に対して直交する第2方向において係止するように、前記可撓性タング(50)は、前記タング溝(3)と協働するように構成される、
請求項5又は6に記載の方法。
【請求項8】
可撓性タング(50)を有する係止構造により他の要素(7)に係止される要素(1)であって、
前記係止構造は、前記他の要素(7)の縁部(8)が挿入される前記要素(1)の縁部溝(9)と、前記要素(1)に設けられた前記縁部溝(9)内の挿入溝(2)と、前記挿入溝(2)に配置された前記可撓性タング(50)と、前記他の要素(7)の前記縁部(8)に設けられたタング溝(3)と、を有し、前記可撓性タング(50)は、前記他の要素(7)の前記縁部(8)が前記要素(1)の前記縁部溝(9)に挿入される時、前記挿入溝(2)に押し込まれ、前記要素(1)と前記他の要素(7)とが接続状態に到達した時に、バネの力で前記タング溝(3)に入り込むものであり、前記係止構造は、前記接続状態において前記可撓性タング(50)が前記タング溝(3)に入り込むことで、前記要素(1)と前記他の要素(7)とを係止するように構成されるものであり、
前記要素(1)は、
第1側面(5)及び対向する第2側面(6)と、
前記第1側面に設けられた前記縁部溝(9)と、
前記縁部溝(9)内に設けられて、前記要素(1)に沿って前記第1側面(5)と前記第2側面(6)との間で延びる前記挿入溝(2)であって、前記要素(1)を前記他の要素(7)に係止するための前記係止構造の前記可撓性タング(50)を受容するように構成される前記挿入溝(2)と、
前記第1側面(5)から前記挿入溝(2)に前記挿入溝(2)の一部に沿って延びる分解溝(4)であって、前記要素(1)を前記他の要素(7)から取り外すための分解ツール(60)を受容するように構成される分解溝(4)と、
を備える要素。
【請求項9】
前記挿入溝(2)の深さは、前記分解溝(4)の位置においてさらに深くなる、
請求項8に記載の要素。
【請求項10】
前記第1側面(5)から前記挿入溝(2)に向かって延びる前記分解溝(4)のガイド面(11)は、前記第1側面(5)に対して少なくとも部分的に90度未満において角度が付けられる、
請求項8又は9に記載の要素。
【請求項11】
前記要素と前記他の要素とを一体に第1方向において係止するように、前記縁部溝(9)は、前記他の要素の縁部(8)と協働するように構成される、
請求項8に記載の要素。
【請求項12】
前記要素(1)と前記他の要素(7)とを一体に、前記第1方向に対して直交する第2方向において係止するように、前記可撓性タング(50)は、前記他の要素の縁部におけるタング溝(3)と協働するように構成される、
請求項11に記載の要素。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、可撓性タングを有する係止構造により係止される複数の要素によって組み立てられる製品のためのパネル形状要素等の要素に分解溝を作製するための方法に関する。また、本発明の実施形態は、タングを受容するための挿入溝と、分解ツールを受容するための分解溝とを同一の要素に備えるこのような要素に関する。分解ツールを使用してタングを挿入溝に押し込むことにより、要素は分解され得る。
【背景技術】
【0002】
従来の家具製品は、複数の要素又はパネルによって組み立てられ得る。パネルは、例えばWO2012/154113号に開示されたような機械的係止システムを用いて組み立てられ得る。製品は、挿入溝内に可撓性タングを備える機械的係止システムによって第2パネルに対して直交して接続される第1パネルを備える。
【0003】
状況により、製品の組立後にこれを解体又は分解することが望ましい場合がある。WO2015/038059号は、挿入溝に可撓性タングを備える機械的係止システムによって係止される複数の要素によって組み立てられる製品を開示している。挿入溝は第1要素に作製され、分解溝が第2要素に作製される。分解溝は、可撓性タングを挿入溝に挿入し、要素の分解を容易にする分解ツールの挿入に適したものとされている。
【0004】
一般に、要素は連続する製造プロセスにおいて製造される。WO2015/038059号の挿入溝及び分解溝は、別箇の要素に別箇のツールを使用して作製される。
【0005】
本発明の実施形態は、タングによって他の要素に係止され得る要素であって、組み立てられた要素を分解するツールを使用して分解され得る要素の効率的な製造方法及び設計を提供することに対する広く認識された需要に取り組むものである。
【発明の概要】
【0006】
したがって、好適には、本発明の実施形態は、同一要素に分解溝及び挿入溝を作製する方法、及び分解溝及び挿入溝を同一要素に備える要素を作製することにより、上述のような公知技術の欠陥、デメリット、又は問題の一つ又は複数を単独で又は組み合わせて緩和、軽減、又は解消することを目指す。
【0007】
例えば、本発明の実施形態は、利用可能なフライス加工ツール位置の個数に適した既存の製造設備において、新製品が製造されることを可能にする。
【0008】
実施形態は、可撓性タングを有する係止構造により係止される複数の要素によって組み立てられる製品のための要素に分解溝を作製する方法を備え得る。本方法は、第1側面と、対向する第2側面とを有する要素を作製する工程と;挿入溝を前記要素に作製する工程であって、前記挿入溝は、前記要素に沿って前記第1側面と前記第2側面との間に延びるとともに、前記要素をタング溝を有する他の要素に係止するための係止構造の可撓性タングを受容するように構成される工程と;分解溝を前記要素に作製する工程であって、前記分解溝は、前記第1側面から前記挿入溝に前記挿入溝の一部に沿って延びるとともに、前記要素を前記他の要素から取り外すための分解ツールを受容するように構成される工程と、を備え得る。本要素は、単数又は複数の前記分解溝を備え得る。
【0009】
前記挿入溝及び前記分解溝は、前記挿入溝をフライス加工するための第1切削面と、前記分解溝をフライス加工するための第2切削面とを有する単独のフライス加工ツールを用いたフライス加工によって作製され得る。前記挿入溝は、第1位置にある前記フライス加工ツールを用いてフライス加工され得る。前記分解溝は、前記フライス加工ツールをその長手方向軸に対して径方向に第2位置に移動させることによりフライス加工され得る。次いで、前記ツールは、前記分解溝の長さが所望の長さまで延びるように、前記要素に沿って移動され得る。
【0010】
前記挿入溝は、前記要素内に前記挿入溝全体に沿った少なくとも第1深さを有して作製され得る。また、挿入溝は、前記要素内の前記分解溝の位置における第2深さを有して作製され得る。前記第2深さは前記第1深さより深い。
【0011】
前記分解溝を作製する工程は、前記第1側面から前記第2側面に向かって延びるガイド面であって、前記第1側面に対して少なくとも部分的に90度未満で角度を付けられるガイド面を作製する工程を備え得る。
【0012】
単独のフライス加工ツールを制御して、前記挿入溝及び前記分解溝は、連続的なフライス加工動作においてフライス加工され得る。
【0013】
実施形態は、可撓性タングを有する係止構造により係止される複数の要素によって組み立てられる製品のための要素を備え得る。前記要素は、第1側面及び対向する第2側面と;
前記要素に沿って前記第1側面と前記第2側面との間で延びる挿入溝であって、前記要素を他の要素に係止するための係止構造の可撓性タングを受容するように構成される挿入溝と;前記第1側面から前記挿入溝に前記挿入溝の一部に沿って延びる分解溝であって、前記要素を前記他の要素から取り外すための分解ツールを受容するように構成される分解溝と、を備え得る。
【0014】
前記挿入溝の深さは、前記分解溝の位置において延び得る。
【0015】
前記分解溝のガイド面は、前記第1側面から前記挿入溝に向かって延び得るとともに、前記第1側面に対して少なくとも部分的に90度未満において角度が付けられ得る。
【0016】
前記第1側面は、好適には前記挿入溝を備える縁部溝を備え得る。
【0017】
前記他の要素と前記要素とを一体に第1方向において係止するように、前記縁部溝は、好適には前記他の要素の縁部と協働するように構成され得る。
【0018】
前記他の要素と前記要素とを一体に、前記第1方向に対して直交する第2方向において係止するように、前記可撓性タングは、好適には前記縁部におけるタング溝と協働するように構成される。
【0019】
前記要素と前記他の要素との組立中及び/又は分解中に、前記他の要素の縁部が、前記要素の前記縁部溝に挿入される時、前記可撓性タングは前記挿入溝に押し込まれるように構成され得る。
【0020】
前記要素と前記他の要素とが接続状態に到達した時、前記可撓性タングは、バネの力で戻って前記タング溝に入るように構成され得る。
【0021】
いくつかの実施形態は、可撓性タング用の挿入溝と、可撓性タングによって係止された組み立てられた要素を分解するための分解ツールを受容するための分解溝とを有する要素に対する効率的な製造方法及びその設計を提供する。また、分解溝及び挿入溝は同一要素に作製されるため、効率的な製造方法が容易化される。分解溝及び挿入溝の両方を作製するための単独ツールの使用が容易化され、製造方法は更に効率的にされ得る。また、本要素は、既に挿入溝を有する要素を製造する製造ラインにおいて製造され得る。このような既存の製造ラインを、新しいツールについてアップデートし、このツールを制御して分解溝を生成するようにプログラミングすればよいだけである。したがって、既存の製造ラインへの実施は時間についてもコストについても効率的である。本要素の設計により、本要素を他の要素に組み付けて安定した製品を得ることが可能となり、この製品は必要に応じて分解され得る。
【0022】
本明細書で使用される場合の「備える/備え」という用語は、記載の特徴、整数、工程又は部品の存在を特定するものであるが、単数又は複数の他の特徴、整数、工程、部品又はそれらのグループの存在や付加を除外するものではない。
【0023】
本発明の実施形態が実現可能なこれらの及び他の態様、特徴、及び利点が、添付図面を参照しつつなされる本発明についての以下の説明から明瞭且つ明確になるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【
図1】一要素及び他の要素の断面図であって、挿入溝及び分解溝を示す図。
【
図2】要素と挿入溝及び分解溝を作製するためのツールの部分断面図であって、ツールが挿入溝のみを作製する位置にある図。
【
図3】要素と挿入溝及び分解溝を作製するためのツールの断面図であって、ツールが、分解溝が作製された後の位置にあって、挿入溝を作製するために配置されている場合の図。
【
図4a】隣接要素に接続された要素の斜視図であって、要素1の一部の縁部に沿った分解溝を示す図。
【
図4b】隣接要素に接続された要素の平面図であって、要素1の一部の縁部に沿った分解溝を示す図。
【
図5a】接続状態にある要素と他の要素との断面図。
【
図5b】分解ツールを挿入する際の要素と他の要素との断面図。
【発明を実施するための形態】
【0025】
本発明の特定の実施形態を、添付図面を参照しつつ説明する。しかしながら、本発明は、多くの異なる形態において具現化され得るものであり、本明細書に記載の実施形態に限定されると解釈すべきではない。むしろ、これらの実施形態は、本開示が完全且つ完璧であるように提供され、当業者に本発明の範囲を十分に伝達するであろう。添付図面に記載の実施形態の詳細な説明において使用される技術用語は、本発明を限定することを意図しない。図面において、同様の数字が同様の要素に付される。
【0026】
本明細書の実施形態を、例えばパネル形状要素であるパネル1を参照して説明する。パネル1は、他のパネル形状要素7に垂直に配設され得る。これらの要素は、単なる例としての機械的係止装置によって一体に係止され得る。本棚、食器棚、箪笥、ボックス、引出、又は家具部品等の家具等の製品を得るように、パネルは一体に組み立てられ係止され得る。係止装置は可撓性タングを備え得る。しかしながら、本発明の実施形態は厳密に家具に限定されるものではなく、要素が係止装置によって組み立てられるようなあらゆる製品に容易に適合され得ることに留意されたい。製品及び機械的係止装置の更なる例が、WO2015/105449号及びWO2015/038059号に見い出され得る。これらの文献は、参照により、全ての目的のために、特に、他の要素のタング溝3における係止のために可撓性タングを挿入溝2に配設することに関して本明細書に組込まれる。
【0027】
図1は、要素1を示す。要素1は、分解溝4、及び当該同一の要素1に存在する挿入溝2を備える。挿入溝2は、要素1に沿って、要素1の第1側面5から第2側面6に延びる。また、挿入溝2は、要素の縁部に沿って延び得るとともに、この縁部から距離を置いて配置され得る。分解溝4は、第1側面5から挿入溝2に延びる。分解溝4は、タングを押してタング溝3から離間させる分解ツール(図示せず)を受容するように構成される。挿入溝2及び分解溝4は同一の要素に作製されるため、製造プロセスが単純化され得る。こうして製造がより効率的になるとともに、コスト効率がより良好となり得る。特に、本実施形態において、挿入溝2並びに分解溝4を作製するのに、単独のツールしか使用しないことが可能とされる。このことは、要素が挿入溝2を有するように製造されるが、分解溝4を作製するための別箇のツールを付加することができない、又は付加することが非常に困難である既存の製造設備において、パネルが製造されることに非常に適していることを意味する。しかしながら、いくつかの実施形態において、挿入溝2及び分解溝4は、別箇のツールを使用して作製され得る。これは、挿入溝及び分解溝を別箇の要素に作製するよりずっと効率的であり得る。
【0028】
図1は、要素1を隣接要素7に係止するための係止装置を使用する組立のため配設される要素1の実施形態を示す。要素1及び隣接要素7は、互いに対して垂直に、すなわち、要素1の主面が隣接要素7の主面に対して垂直な状態で接続された家具製品のボード又はパネルであり得る。隣接要素7の縁部8が、要素1の縁部溝9に配設されて、隣接要素7と要素1とが一体に第1方向において係止されている。可撓性タングの形状にある係止装置が、縁部溝9内の挿入溝2に配設され得るとともに、縁部8におけるタング溝3に延びて入り得る。タング溝3と、タング溝3に延び入るタングの先端は、相補的な形状を有し得る。要素1と隣接要素7とを一体に、第1方向に対して本質的に垂直である第2方向において係止するように、可撓性タングとタング溝3とは協働する。要素1と隣接要素7との組立中に、縁部8が縁部溝9に挿入される時、可撓性タングは挿入溝2に押し込まれる。要素1と隣接要素7とが接続状態に到達した時、可撓性タングはバネの力で戻ってタング溝3に入る。
【0029】
図2及び3は、分解溝4を要素1に作製する方法の実施形態を示す。要素1は、第1側面5と対向する第2側面6とを有するパネル形状であり得る。例えば縁部溝9等の種々の他の溝及び/又は賦形部が要素1に既に存在していてもよい。挿入溝2及び分解溝4は、フライス加工ツールを使用して作製され得る。要素1に沿って種々の溝、凹部、及び賦形部が作製されるように、多数のフライス加工ツールが存在する製造ラインに、要素1を通してもよい。
【0030】
図2に示すように、挿入溝2は、これが要素1に沿って、例えば要素1の縁部に沿って、第1側面と第2側面との間に延在するように、要素1に作製される。また、挿入溝2は、要素1をタング溝3を有する隣接要素7に係止するために係止構造の可撓性タングを受容するように構成される。挿入溝2は、タングが隣接要素7に対して非垂直方向に配設されるように、第1側面5に対して非垂直な角度を以て延在するように作製され得る。例えば、挿入溝2は、20°乃至70°、例えば30乃至45°の角度において延在するように作製され得る。分解溝4は、挿入溝2と同一の要素1に、第1側面から挿入溝2に延びるように作製される。したがって、要素1の第1側面5から挿入溝2への、そしてこれに配設された場合のタングへのアクセスが提供される。
【0031】
分解溝4は、要素1を隣接要素7取り外すための分解ツール(図示せず)を受容するように構成される。例えば、少なくとも1つの分解溝4が、挿入溝2の一部に沿って延び得る。例えば、分解溝4は、挿入溝の長さの2乃至20%、例えば挿入溝の長さの5乃至10%であり得る。複数のタングが、挿入溝2内で離間して配設され得る。それぞれのタングは、例えば約20‐400mmの長さであり得る。複数のタングが同一要素1に設けられる場合、タングは、タングの長さの例えば0.5‐1倍離間している。2つのタング間の距離は、係止構造の所望の強度に依存する。距離が空いていないか、約1mm乃至5mmという短い距離であれば、より強力な係止構造が得られる。
【0032】
分解溝4は、2つのタングの位置の間にある位置に一致するように設けられてよい。したがって、分解溝4は、約20‐80mmの長さか、2つのタングの間の距離と大体同じか、又はこれより短い。これにより、分解ツールが分解溝4に挿入され、分解ツールが挿入溝2に沿って押される。分解溝が、要素1の上面に設けられて要素1の使用中に見える場合、分解溝4は、約20‐50mmの長さであり得る。分解溝が要素1の底面に設けられて要素1の使用中に見えない場合、分解溝4は、約20‐80mmの長さであり得る。したがって、強度を最適化すると同時に使用される表面に対する衝撃を減少させるように、異なる要素が異なる分解溝4の長さを有し得る。例えば、目に見える表面での長さを小さくすれば、このような表面における埃や粒子の凝集が生じる可能性が低くなる。
【0033】
分解ツールは、例えば、挿入溝2の断面形状の一部に実質的に一致する断面形状を有するロッド形状であり得る。分解ツールがタングとタング溝3との間に配置されると、タングが挿入溝2に押し込まれてタング溝3から離間するように、分解ツールの先端は尖ったものであり得る。
【0034】
分解溝4は、分解ツールを受容するように十分に幅が広く、約1‐3mm、好適には2mmであり得る。縁部溝9から第1側面5に対して平行に測定された分解溝4は、第1幅を有する。縁部溝9から第1側面5に対して平行に測定された挿入溝2は、第2幅を有する。第2幅は第1幅より大きい。したがって、分解ツールが挿入溝2に受容された時、挿入溝2は、分解ツールと挿入溝2の底壁10(
図1)との間に受容され得る可撓性タングに適するように構成され得る。
図1は、要素1の断面を示す。同図において、分解溝4の位置で、分解溝2の底部が第2の深さまで要素1において延びており、これによって、分解溝4に一致するより深い底壁15が挿入溝2の一部に提供される。
【0035】
いくつかの実施形態において、挿入溝2及び分解溝4は、
図3の実施形態に示すような単独のフライス加工ツール20を用いたフライス加工によって作製される。フライス加工ツール20は、挿入溝2をフライス加工するための第1切削面21と、分解溝4をフライス加工するための第2切削面22とを有し得る。挿入溝2は、例えば
図2‐3に示す位置である第1位置にあるフライス加工ツール20によってフライス加工され得る。分解溝4は、要素1及び/又はツールを要素1に沿って移動させつつ、フライス加工ツールをその長手方向軸に対して径方向に第2位置に移動させることにより、フライス加工され得る。分解溝4の長さが作製されたら、フライス加工ツール20を第1位置に戻す。したがって、フライス加工ツール20が第2位置にある間に、挿入溝2及び分解溝4が同時に生成され得る。これにより、要素1の製造がより効率的になる。また、固定された関係で作製され得る挿入溝2と分解溝4との高い製造許容差が得られる。これにより、安定した組立製品となる。フライス加工ツールが第1位置にある時、挿入溝2のみが作製され得るが、分解溝4は作製されない。したがって、フライス加工ツール20は、CNCフライス加工によって挿入溝2及び分解溝4を、例えば要素1が製造ラインに沿って通っている間に、連続的なフライス加工動作においてフライス加工するように制御され得る。
【0036】
いくつかの実施形態において、挿入溝2は、挿入溝2に沿って要素1内に延びる第1深さを有するように作製される。分解溝4の位置で、挿入溝2の深さは、要素1内の第2深さまで延び得る。第2深さは、第1深さより深い。例えば、第2深さと第1深さの差は、挿入溝2の幅に相関し得る。したがって、挿入溝2及び分解溝4は、単独のツールを用いて、連続的な、又は実質的に連続的な動作において作製され得る。
【0037】
図1に示すようないくつかの実施形態において、分解溝4は、要素1の第1側面5から要素1の第2側面6に向かって挿入溝2に沿って延びるガイド面11を有するように作製される。ガイド面は、要素1の第1側面5に対して90度未満の角度を付けられ得る。例えば、ガイド面は、要素1の第1側面5に対して、45乃至85度、例えば60乃至80度の角度を付けられ得る。分解溝4は、要素1の第1側面において開口を有する。開口は、分解溝4において挿入溝2に向かう案内面を形成する下側の部分より幅が広い。これにより、分解ツールが挿入溝2に向かって案内される。いくつかの実施形態において、ガイド面はまっすぐである。
図3に示す他の実施形態において、案内面11は、第1側面5と挿入溝2との間で湾曲している。これにより、分解溝の幅狭部分が形成される。これにより、分解ツールを幅狭部分の下方に配置してタングを挿入溝2に押し込む時に、ツールをこれがつかえることなく挿入溝内の的確な位置に案内することが更に容易化される。分解溝4が幅広部分を有して挿入溝2に向かって湾曲している場合、案内面は、最初は第1側面5に対して第1側面において90度未満の角度を付けられ得るとともに、挿入溝2に到達した時に第1側面5に対して90度より大きな角度を成すように、幅狭部分から挿入溝2に向かって徐々に幅を拡大し得る。このような湾曲したガイド面は、湾曲形状を有するツール20の第2切削面22を用いて作製され得る。
【0038】
上述の方法の実施形態は、木、合成木、ラミネート、プラスチック等に要素1を製造するように利用され得る。要素は、MDF又はHDFパネル、パーチクルボード、又は合板等の木質系材料からなるパネルであり得る。パネルは、装飾層で被覆され得る。要素1は、フライス加工が必要とされない押出等の他の製造技術を利用して製造され得る。このような要素1は、第1側面5と、対向する第2側面6とを備える。挿入溝2は、要素1に沿って、第1側面5と第2側面6との間に延びる。挿入溝2は、第1側面5に対して非垂直の角度において延び得る。また、挿入溝2は、要素1を隣接要素7等の他の要素に係止するための係止構造の可撓性タングを受容するように構成される。分解溝4は、第1側面5から挿入溝2に、挿入溝2の一部に沿って延びる。
【0039】
分解溝4は、要素1を他の要素から取り外すための分解ツールを受容するように構成される。分解溝4は、要素1の縁部溝9に向かって開口し得る。したがって、分解溝4は、要素1の第1側から挿入溝2に延びる、及び分解溝4の一端部から分解溝4の他端部に挿入溝2に沿って延びる単数又は複数の壁4a、4b、4c(
図4c)を有し得る。したがって、分解溝4は、第1側面5に対して平行に見たときに実質的にU字形状断面を有し得る。
【0040】
隣接パネル7が縁部溝9に配置される時、隣接パネル7は、縁部溝9の上側側面12によって支持される。上側側面12は、挿入溝2のみが配置される、すなわち、分解溝4が配置されない位置において、第1側面5に対して実質的に垂直であり得る。また、隣接パネル7は、上側側面12に対して平行である、縁部溝9の下側側面13によって支持される。分解溝4の位置において、隣接パネル7は、下側側面13によって支持されるだけである。これにより、隣接パネル7の十分な安定性が提供され、更に挿入溝2及び分解溝4を有する要素1の効率的な製造が提供される。
【0041】
図4a‐4cは、隣接パネル7に接続された要素1を示す。単独の分解溝4が、要素1において2つの挿入溝(図示せず)の間に設けられている。上述のように複数の分解溝4が設けられ得る。
図4a及び4bに示すように、分解溝4は、要素1に沿って延びている。更に、分解溝4は、隣接要素7に向かって開口している。
図4cに示すように、要素1の第1側面5における分解溝4の縁部は、例えば分解溝4の各端部における湾曲部分と、それらの間の実質的にまっすぐな部分とを有して部分的に湾曲し得る。
【0042】
図面に示すように、要素1と他の要素7とは、分解溝4を有する第1側面5が上方を向くように配設され得る。例えば、分配溝4を有する第1側面5が下方を向くように、これらの要素は任意の態様で配設され得る。下方を向く分解溝は、分解溝が目につきにくい、及び/又は埃等の粒子が挿入溝に堆積しにくいという点で利点を有し得る。
【0043】
図5aは、接続状態にある要素1及び他の要素2の断面図である。隣接する要素7と要素1とを一体に第2方向において係止するように、可撓性タング50がタング溝3と協働している。
【0044】
図5bは、分解ツール60の分解溝及び挿入溝2への挿入時における、要素1及び他の要素7の断面図である。
【0045】
上述の説明及び/又は上述の図面及び/又は以下の請求項で開示される特徴が、単独で又は組み合わせて本発明をその種々の態様において実現するために重要であることを理解されたい。以下の請求項において、「備える」、「含む」、「有する」という用語及びそれらの派生語は、「含むがこれに限定されない」ということを意味する。
【0046】
本発明を特定の実施形態を参照して説明した。しかしながら、上記以外の実施形態も、同様に本発明の範囲において可能である。上記と異なる方法の工程も、本発明の範囲に含まれ得る。本発明の種々の特徴及び工程は、上記以外の組み合せと組み合わせられ得る。本発明の範囲は、添付の特許請求項によってのみ限定される。