(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記芳香族ポリフェノールの前記芳香環が、互いにメタ位に2個又は3個のヒドロキシル官能基を有し、かつ前記芳香族ポリフェノールの前記芳香環の残余部が置換されていない、請求項1又は2に記載の組成物。
前記芳香族ポリフェノールが、レゾルシノール、フロログルシノール、2,2',4,4'-テトラヒドロキシジフェニルスルフィド、2,2',4,4'-テトラヒドロキシベンゾフェノン及びこれらの化合物の混合物からなる群から選択される、請求項1〜3のいずれか1項に記載の組成物。
【発明を実施するための形態】
【0020】
I-水性接着剤組成物の配合
本明細書において、特に明確に示さない限り、示される百分率(%)は全て質量%である。
【0021】
「ジエン」エラストマー(又は、区別することなく、ゴム)は、ジエンモノマー(すなわち、2個の共役型又は非共役型の炭素−炭素二重結合を有するモノマー)に少なくとも部分的に由来するエラストマー(すなわち、ホモポリマー又はコポリマー)を意味するものと理解されたい。「イソプレンエラストマー」は、イソプレンホモポリマー又はコポリマー、つまり、天然ゴム(NR)、合成ポリイソプレン(IR)、各種イソプレンコポリマー及びこれらのエラストマーの混合物からなる群から選択されるジエンエラストマーを意味するものと理解されたい。
【0022】
「互いにメタ位」は、官能基、例えば芳香族ポリフェノールにおけるヒドロキシル官能基が、芳香環の1個の他の炭素によって互いに分離されている芳香環の炭素に結合していることを意味するものと理解されたい。
【0023】
「互いにパラ位」は、官能基が互いに反対側、すなわち、六員芳香環の1位及び4位にあることを意味するものと理解されたい。同様に、官能基に対する「パラ位」は、前記官能基を有する六員芳香環上の前記官能基の反対の位置である。
【0024】
「官能基に対するオルト位」は、官能基を有する芳香環の炭素にすぐ隣接している芳香環の炭素によって占められている位置を意味するものと理解されたい。同様に、官能基に対する「オルト位」は、官能基を有する芳香環上の前記官能基に隣接する位置である。
【0025】
環の「員」は、環の骨格を構成する原子を意味するものと理解されたい。したがって、例えば、ベンゼン環は6個の員を含み、各員は炭素原子からなる。他の例において、フラン環は5個の員を含み、4個の員はそれぞれ炭素原子からなり、残りの員は酸素原子からなる。
【0026】
「CHO」は、アルデヒド官能基を表す。
【0027】
「CH
2OH」は、ヒドロキシメチル官能基を表す。
【0028】
「化合物A1」は、本発明との関係においては、項I.1で定義される芳香族化合物を意味する。
【0029】
「化合物A2」は、本発明との関係においては、項I.2で定義される芳香族ポリフェノールをベースとする化合物を意味する。
【0030】
「化合物A2'」は、本発明との関係においては、項I.2で定義される芳香族モノフェノールをベースとする化合物を意味する。
【0031】
「芳香族ポリフェノール」は、1個を超えるヒドロキシル官能基を有する少なくとも1個のベンゼン環を含む芳香族化合物を意味するものと理解されたい。
【0032】
本発明との関係においては、本明細書で説明されるカーボンベース製品は、化石又は生物由来を起源としてもよい。後の場合において、それらはバイオマスから部分的に又は完全に由来してもよく、バイオマス由来の再生可能な出発材料から得られてもよい。
【0033】
更に、「aとbの間」なる表現によって示される値の範囲は、aを超え、b未満に至る値の範囲を表し(すなわち、限界値a及びbは除外される)、一方、「a〜b」なる表現によって示される値の範囲は、aからbまでに至る値の範囲を意味する(すなわち、厳格な限界値a及びbを含む)。
【0034】
「ベースとする組成物」なる表現は、勿論、この組成物に対して使用される各種ベース構成成分の混合物及び/又は反応生成物を含む組成物を意味するものとして理解すべきであり、これらベース構成成分のある種のものは、上記組成物、上記繊維材料又は上記複合体若しくはそのような複合体を含む最終物品の様々な製造段階の間、特に硬化工程の間に、少なくとも部分的に互いに又はこれら構成成分直近の化学環境物(chemical surroundings)と反応するか、反応できるものであり得る。
【0035】
このように、本発明に係る水性接着剤組成物は、少なくとも、一方にA)本発明に係る少なくとも1種の(すなわち1種以上の)熱硬化性樹脂と、他方にB)少なくとも1種の(すなわち1種以上の)不飽和エラストマーラテックスを含む。この熱硬化性樹脂は、少なくとも1種の(すなわち1種以上の)芳香族化合物及び少なくとも1種の(すなわち1種以上の)芳香族ポリフェノールをベースとする。これらの構成成分を以下で詳細に説明する。
【0036】
I.1-芳香族化合物A1
上記熱硬化性樹脂の第1の本質的な構成成分は、少なくとも2個の官能基を有する少なくとも1個の芳香環を含む芳香族化合物であって、これらの官能基の1個はヒドロキシメチル官能基であり、もう1個はアルデヒド官能基又はヒドロキシメチル官能基である。したがって、本発明によれば、それはヒドロキシメチル官能基及びアルデヒド官能基を有する前記芳香環である。したがって、本発明に係る上記化合物は、一般式(I)に対応する。
【化1】
(式中、Arは芳香環を表し、BはCHO又はCH
2OHを表す。)
【0037】
上記芳香環は、有利には五員環又は六員環であり、員として、炭素原子及び任意で1個以上のヘテロ原子、特に、N-オキシド又はS-オキシドの形態に酸化されていてもよい窒素、酸素又は硫黄原子を含む。ある態様において、上記芳香環は0、1又は2個のヘテロ原子を含む。上記芳香環の残余部は置換されていても置換されていなくてもよい。
【0038】
上記芳香環は、0、1又は2個のアルデヒド官能基、有利には0又は1個のアルデヒド官能基を有してもよい。
【0039】
上記芳香環は、1、2又は3個のヒドロキシメチル官能基、有利には1又は2個のヒドロキシメチル官能基を有してもよい。
【0040】
加えて、上記芳香環はまた、0、1又は2個の他の官能基、特にヒドロキシル官能基を有してもよい。
【0041】
上記芳香環が六員環である態様において、上記B及びヒドロキシメチル官能基は、有利には互いにメタ位又はパラ位である。
【0042】
上記芳香環が五員環である態様において、上記環は1種以上のヘテロ原子、特に、N-オキシド又はS-オキシドの形態に酸化されていてもよい窒素、酸素又は硫黄原子を含む。有利には、上記芳香環は1又は2個のヘテロ原子、好ましくは1個のヘテロ原子を含む。
【0043】
上記芳香環が五員環である態様において、以下の3つの条件のうち少なくとも1つを満たす。
・上記芳香環が0又は1個のアルデヒド官能基を含む;
・上記芳香環が1又は2個のヒドロキシル官能基を含む;
・上記アルデヒド及びヒドロキシル官能基の他に、上記芳香環の残余部は置換されていない。
【0044】
有利なことには、これらの条件の3つを満たす。
【0045】
第1の場合では、上記芳香環は、
・1個のアルデヒド官能基を含む;
・1個のヒドロキシメチル官能基を含む;
・上記アルデヒド及びヒドロキシル官能基の他に、上記芳香環の残余部は置換されていない。
【0046】
第2の場合では、上記芳香環は、
・0個のアルデヒド官能基を含む;
・2個のヒドロキシメチル官能基を含む;
・上記アルデヒド及びヒドロキシル官能基の他に、上記芳香環の残余部は置換されていない。
【0047】
有利なことには、上記化合物は一般式(II)である。
【化2】
(式中、BはCHO又はCH
2OHを表し、XはO、NR
1、NO、S、SO、SO
2、SR
2R
3を表し、R
1は水素、アルキル、アリール、アリールアルキル、アルキルアリール又はシクロアルキル基を表し、R
2、R
3はそれぞれ互いに独立して、水素、アルキル、アリール、アリールアルキル、アルキルアリール又はシクロアルキル基を表す。)
【0048】
有利なことには、上記化合物は一般式(II')である。
【化3】
(式中、X及びBは上記に定義した通りである。)
【0049】
特に有利な実施形態によれば、BはCHOを表す。他の実施形態において、BはCH
2OHを表す。
【0050】
好ましい実施形態によれば、XはOを表す。
【0051】
ある態様において、上記化合物は式(IIa)である。
【化4】
(式中、Bは上記に定義した通りである。)
そして、より好ましくは式(II'a1)又は(II'a2)である。
【化5】
【0052】
5-(ヒドロキシメチル)フルフラール(II'a1)は、この有機化合物が再生可能な資源から容易に誘導することができることを考慮すると、特に適切なアルデヒドである。実際に、フルクトース、グルコース、スクロース、セルロース及びイヌリン等の特定の糖の脱水から特に誘導される。
【0053】
他の実施形態において、XはNR
1又はNO、有利にはNR
1を表す。R
1は上記に定義した通りである。
【0054】
ある態様において、上記化合物は式(IIb)である。
【化6】
(式中、Bは上記に定義した通りである。)
そして、より特には式(II'b1)又は(II'b2)である。
【化7】
(式中、R
1は水素、アルキル、アリール、アリールアルキル、アルキルアリール又はシクロアルキル基を表す。有利には、R
1は水素又はC
1-C
6アルキル基を表す。)
【0055】
他の実施形態において、XはS、SO、SO
2又はSR
2R
3を表す。
【0056】
ある態様において、上記化合物は式(IIc)である。Bは上記に定義した通りである。
【化8】
(式中、XはS、SR
2R
3、SO、SO
2を表し、R
2、R
3はそれぞれ互いに独立して、水素、アルキル、アリール、アリールアルキル、アルキルアリール又はシクロアルキル基を表し、Bは上記に定義した通りである。)
そしてより特には式(II'c1)又は(II'c2)である。
【化9】
(式中、XはS、SR
2R
3、SO、SO
2を表し、R
2、R
3はそれぞれ互いに独立して、水素、アルキル、アリール、アリールアルキル、アルキルアリール又はシクロアルキル基を表す。)
【0057】
したがって、上記化合物は、以下のものであってもよい。
【化10】
【0058】
有利には、R
2及びR
3はそれぞれ互いに独立して、C
1-C
6アルキル基を表す。
【0059】
上記化合物は、有利には式(II'c1)又は(II'c2)である。
【0060】
他の態様において、上記芳香環は六員環であり、場合によっては0、1個又はそれ以上のヘテロ原子、特にN-オキシドの形態に酸化されていてもよい窒素を含む。ある態様において、上記芳香環は0、1又は2個のヘテロ原子を含む。
【0061】
上記B及びヒドロキシメチル官能基は、有利には互いにメタ又はパラ位である。
【0062】
上記芳香環は、0、1又は2個のアルデヒド官能基、有利には0又は1個のアルデヒド官能基を有してもよい。
【0063】
上記芳香環は、1、2又は3個のヒドロキシメチル官能基、有利には1又は2個のヒドロキシメチル官能基を有してもよい。
【0064】
加えて、上記芳香環はまた、0、1又は2個の他の官能基、特にヒドロキシル官能基を有してもよい。
【0065】
有利には、上記化合物は一般式(III)である。
【化11】
(式中、XはC又はNR
1を表し、nは0、1又は2であり、mは0又は1であり、pは1、2又は3である。R
1は水素、アルキル、アリール、アリールアルキル、アルキルアリール又はシクロアルキル基を表す。本発明によれば、p+n>1であり、p>0である。)
【0066】
有利には、R
1は水素又はC
1-C
6アルキル基を表す。
【0067】
ある態様において、nは1であり、mは0であり、pは1である。
【0068】
他の態様において、nは1であり、mは1であり、pは1である。
【0069】
他の態様において、nは2であり、mは1であり、pは1である。
【0070】
他の態様において、nは1であり、mは1であり、pは2である。
【0071】
他の態様において、nは0であり、mは0であり、pは2である。
【0072】
他の態様において、nは0であり、mは1であり、pは2である。
【0073】
他の態様において、nは1であり、mは1であり、pは2である。
【0074】
他の態様において、nは0であり、mは1であり、pは3である。
【0075】
好ましくは、上記アルデヒドの上記芳香環はベンゼン環である。より好ましくは、このアルデヒドは、2-ヒドロキシメチルベンゼン-1-カルボキシアルデヒド、3-ヒドロキシメチルベンゼン-1-カルボキシアルデヒド、4-ヒドロキシメチルベンゼン-1-カルボキシアルデヒド、3-ヒドロキシメチル-6-ヒドロキシベンゼン-1-カルボキシアルデヒド、3-ヒドロキシメチル-4-ヒドロキシベンゼン-1-カルボキシアルデヒド、3-ヒドロキシメチル-2-ヒドロキシベンゼン-1-カルボキシアルデヒド、3-ヒドロキシメチル-2-ヒドロキシベンゼン-1,5-ジカルボキシアルデヒド、5-ヒドロキシメチル-2-ヒドロキシベンゼン-1,3-ジカルボキシアルデヒド、3,5-ヒドロキシメチル-4-ヒドロキシベンゼン-1-カルボキシアルデヒド、3,5-ヒドロキシメチル-2-ヒドロキシベンゼン-1-カルボキシアルデヒド、1,2-ヒドロキシメチルベンゼン、1,3-ヒドロキシメチルベンゼン、1,4-ヒドロキシメチルベンゼン、1,3-ヒドロキシメチル-6-ヒドロキシベンゼン、1,3-ヒドロキシメチル-4-ヒドロキシベンゼン、1,3-ヒドロキシメチル-2-ヒドロキシベンゼン、1,3,5-ヒドロキシメチル-2-ヒドロキシベンゼン、1,3-ヒドロキシメチル-6-ヒドロキシベンゼン、1,3,5-ヒドロキシメチル-4-ヒドロキシメチルベンゼン、1,3,2-ヒドロキシメチル-2-ヒドロキシベンゼン及びこれらの化合物の混合物からなる群から選択される。
【0076】
更により好ましくは、使用する上記芳香族化合物は、式(IIIa)の1-ヒドロキシメチルベンゼン-4-カルボキシアルデヒド又は式(IIIb)の1,4-ヒドロキシメチルベンゼンである。
【化12】
【0077】
好ましくは、上記熱硬化性樹脂がポリフェノール及び1種以上の式(I)の化合物をベースとする場合、上記組成物はホルムアルデヒドを含まない。
【0078】
上記熱硬化性樹脂がポリフェノール、1種以上の式(I)の化合物及びアルデヒドをベースとする場合、各アルデヒドは、好ましくはホルムアルデヒド以外のアルデヒドである。その結果、上記組成物もまたホルムアルデヒドを含まない。
【0079】
つまり、好ましくは、アルデヒドが存在する場合、上記熱硬化性樹脂の上記アルデヒド又は各アルデヒドは、ホルムアルデヒド以外のアルデヒドである。
【0080】
ホルムアルデヒドを含まないとは、上記アルデヒドの合計質量に対するホルムアルデヒドの質量含有量が、10%以下、好ましくは5%以下、より好ましくは2%以下であることを意味し、これらの百分率は工業的に用いられるアルデヒド中に存在する可能性がある痕跡量に相当する。
【0081】
I.2-芳香族ポリフェノール及び/又は芳香族モノフェノール-化合物A2及び/又はA2'
ある実施形態において、上記熱硬化性樹脂の第2の本質的な構成成分は、1個以上の芳香環を含む芳香族ポリフェノールA2である。上記芳香族ポリフェノールは、互いにメタ位に少なくとも2個のヒドロキシル官能基を有する少なくとも1個の芳香環を含み、少なくとも1個の上記ヒドロキシル官能基に対する2つのオルト位は置換されていない。
【0082】
他の実施形態において、上記熱硬化性樹脂の第2の本質的な構成成分は、1個のヒドロキシル官能基を有する少なくとも1個の六員芳香環を含む芳香族モノフェノールA2'である。この芳香族モノフェノール上の、上記ヒドロキシル官能基に対する2つのオルト位は置換されていないか、又は上記ヒドロキシル官能基に対する少なくとも1つのオルト位及びパラ位は置換されていない。
【0083】
更に他の実施形態において、第2の本質的な構成成分は、上述した上記芳香族ポリフェノールA2及び上記芳香族モノフェノールA2'の混合物である。
【0084】
本発明によれば、上記化合物A2)は、ある実施形態において、1個以上の芳香環を含む単一の芳香族ポリフェノール分子であり、これらの芳香環の少なくとも1個、又は各芳香環は、互いにメタ位に少なくとも2個のヒドロキシル官能基を有し、少なくとも1個の上記ヒドロキシル官能基に対する2つのオルト位は置換されていない。
【0085】
同様に、上記化合物A2')は、ある実施形態において、1個以上の六員芳香環を含む単一の芳香族モノフェノール分子であり、これらの六員芳香環の少なくとも1個、又は各六員芳香環は、1個のヒドロキシル官能基を有し、上記ヒドロキシル官能基に対する2つのオルト位は置換されていないか、又は上記ヒドロキシル官能基に対する少なくとも1つのオルト位及びパラ位は置換されていない。
【0086】
そのような単一の分子は、繰り返し単位を含まない。
【0087】
本発明によれば、上記化合物A2)は、他の実施形態において、
互いにメタ位に少なくとも2個のヒドロキシル官能基を有する少なくとも1個の芳香環を含む少なくとも1種の芳香族ポリフェノールであって、少なくとも1個の上記ヒドロキシル官能基に対する2つのオルト位は置換されていない、芳香族ポリフェノール;及び
少なくとも1個のアルデヒド官能基を含む前記芳香族ポリフェノールと反応可能な少なくとも1種の化合物及び/又は芳香環上に少なくとも2個のヒドロキシメチル官能基を含む前記芳香族ポリフェノールと反応可能な少なくとも1種の化合物
をベースとする予備縮合された樹脂であってもよい。
【0088】
芳香族ポリフェノールをベースとするそのような予備縮合された樹脂は、本発明によれば、上述した単一の分子とは異なり、繰り返し単位であり、そのような繰り返し単位を含む。この場合には、上記繰り返し単位は、互いにメタ位に少なくとも2個のヒドロキシル官能基を有する少なくとも1個の芳香環を含む。
【0089】
同様に、本発明によれば、上記化合物A2')は、他の実施形態において、
1個のヒドロキシル官能基を有する少なくとも1個の六員芳香環を含む少なくとも1種の芳香族モノフェノールであって、上記ヒドロキシル官能基に対する2つのオルト位は置換されていないか、又は上記ヒドロキシル官能基に対する少なくとも1つのオルト位及びパラ位は置換されていない、芳香族モノフェノール;
少なくとも1個のアルデヒド官能基を含む前記芳香族モノフェノールと反応可能な少なくとも1種の化合物、及び/又は芳香環上に少なくとも2個のヒドロキシメチル官能基を含む前記芳香族モノフェノールと反応可能な少なくとも1種の化合物
をベースとする予備縮合された樹脂であってもよい。
【0090】
芳香族モノフェノールをベースとするそのような予備縮合された樹脂は、本発明によれば、上述した単一の分子とは異なり、繰り返し単位であり、そのような繰り返し単位を含む。この場合には、上記繰り返し単位は、1個のヒドロキシル官能基を有する少なくとも1個の六員芳香環を含む。
【0091】
他の実施形態において、上記化合物A2)及び/又はA2')は、単一の分子を形成する芳香族ポリフェノール及び芳香族ポリフェノールをベースとする予備縮合された樹脂の混合物である。
【0092】
以下の特定の実施形態において、上記芳香族ポリフェノール及び/又は上記芳香族モノフェノールの上記芳香環について説明する。明確にするために、上記「芳香族ポリフェノール」及び/又は上記「芳香族モノフェノール」は、単一の分子の形態で本明細書に記載されている。その場合、この芳香族ポリフェノール及び/又はこの芳香族モノフェノールは、縮合することができ、部分的に繰り返し単位を構成する。上記予備縮合された樹脂の特性を下記により詳細に説明する。
【0093】
芳香族ポリフェノールA2
好ましい実施形態において、上記芳香族ポリフェノールの上記芳香環は、互いにメタ位に3個のヒドロキシル官能基を有する。
【0094】
各ヒドロキシル官能基に対する2つのオルト位は、好ましくは置換されていない。これはヒドロキシル化された(すなわち、ヒドロキシル官能基を有する)炭素原子の両側(オルト位)に位置する2個の炭素原子は、1個だけの水素原子を有することを意味するものと理解されたい。
【0095】
更により好ましくは、上記芳香環の残余部は置換されていない。これは上記芳香環の残余部の他の(ヒドロキシル官能基を有する炭素原子以外の)炭素原子は、1個だけの水素原子を有することを意味するものと理解されたい。
【0096】
ある実施形態において、上記芳香族ポリフェノールは複数の芳香環を有し、これらの少なくとも2個は、それぞれ互いにメタ位に少なくとも2個のヒドロキシル官能基を有し、少なくとも1個の芳香環の少なくとも1個の上記ヒドロキシル官能基に対する2つのオルト位は置換されていない。
【0097】
好ましい実施形態において、上記芳香族ポリフェノールの少なくとも1個の上記芳香環は、互いにメタ位に3個のヒドロキシル官能基を有する。
【0098】
少なくとも1個の芳香環の各ヒドロキシル官能基に対する2つのオルト位は、好ましくは置換されていない。
【0099】
更により好ましくは、各芳香環の各ヒドロキシル官能基に対する2つのオルト位は置換されていない。
【0100】
更により好ましくは、各芳香環の残余部は置換されていない。これは各芳香環の残余部の(ヒドロキシル官能基を有するか、又は上記芳香環を互いに結合させる基を有する炭素原子以外の)他の炭素原子が、1個だけの水素原子を有することを意味するものと理解されたい。
【0101】
有利には、互いにメタ位に少なくとも2個のヒドロキシル官能基を有し、少なくとも1個の上記ヒドロキシル官能基に対する2つのオルト位が置換されていない上記芳香環は、ベンゼン環である。
【0102】
有利には、上記芳香族ポリフェノールの各芳香環は、ベンゼン環である。
【0103】
特に、ただ1個の芳香環を含む芳香族ポリフェノールの例として、それぞれ下記の拡大式(IV)及び(V)で表される、レゾルシノール及びフロログルシノールを挙げることができる。
【化13】
【0104】
例えば、上記芳香族ポリフェノールが複数の芳香環を含む場合、これらの芳香環の少なくとも2個は、同一又は異なって、下記一般式の芳香環から選択される。
【化14】
(式中、Z
1及びZ
2符号は、同一又は異なって、同じ芳香環上に複数のZ
1及びZ
2が存在する場合、定義によれば、上記芳香族ポリフェノールの残余部に少なくともこれら2個の芳香環を結合させる原子(例えば、炭素、硫黄又は酸素)又は少なくとも2価の結合基を表す。)
【0105】
芳香族ポリフェノールの他の例は、下記拡大式(VII)の2,2',4,4'-テトラヒドロキシジフェニルスルフィドである。
【化15】
【0106】
芳香族ポリフェノールの他の例は、下記拡大式(VIII)の2,2',4,4'-テトラヒドロキシジフェニルベンゾフェノンである。
【化16】
【0107】
各化合物VII及びVIIIは、(式VI-cの)2個の芳香環を含む芳香族ポリフェノールであり、それぞれが互いにメタ位に少なくとも2個(この場合は2個)のヒドロキシル官能基を有することに留意されたい。
【0108】
芳香族ポリフェノールが式VI-bに従う少なくとも1個の芳香環を含む場合、少なくとも1個の芳香環の各ヒドロキシル官能基に対する2つのオルト位は置換されていないことに留意されたい。芳香族ポリフェノールが式VI-bに従う複数の芳香環を含む場合、各芳香環の各ヒドロキシル官能基に対する2つのオルト位は置換されていない。
【0109】
本発明のある実施形態によれば、上記芳香族ポリフェノールは、レゾルシノール(IV)、フロログルシノール(V)、2,2',4,4'-テトラヒドロキシジフェニルスルフィド(VII)、2,2',4,4'-テトラヒドロキシベンゾフェノン(VIII)及びこれらの化合物の混合物からなる群から選択される。特に有利な実施形態において、上記芳香族ポリフェノールはフロログルシノールである。
【0110】
ある実施形態において、上記化合物A2)は、これらの実施形態のいずれかに記載の上記芳香族ポリフェノールをベースとする予備縮合された樹脂を含む。
【0111】
この予備縮合された樹脂は、有利には、
上記で定義された少なくとも1種の芳香族ポリフェノールであって、好ましくはレゾルシノール(IV)、フロログルシノール(V)、2,2',4,4'-テトラヒドロキシジフェニルスルフィド(VII)、2,2',4,4'-テトラヒドロキシベンゾフェノン(VIII)及びこれらの化合物の混合物からなる群から選択される、芳香族ポリフェノール;及び
少なくとも1個のアルデヒド官能基を含む前記芳香族ポリフェノールと反応可能な少なくとも1種の化合物及び/又は芳香環上に少なくとも2個のヒドロキシメチル官能基を含む前記芳香族ポリフェノールと反応可能な少なくとも1種の化合物
をベースとする。
【0112】
前記芳香族ポリフェノールと反応可能な上記化合物は、項I.1で上記に定義される芳香族化合物、式Ar-(CHO)
2の化合物であってArが上記の項I.1の芳香族化合物で定義される化合物、又はその他のアルデヒドであってもよい。有利には、前記化合物は、少なくとも2個の官能基を有する芳香環を含み、これらの官能基の1個がヒドロキシメチル官能基であり、もう1個がアルデヒド官能基又はヒドロキシメチル官能基である芳香族化合物、ホルムアルデヒド、フルフルアルデヒド、2,5-フランジカルボキシアルデヒド、1,4-ベンゼンジカルボキシアルデヒド、1,3-ベンゼンジカルボキシアルデヒド、1,2-ベンゼンジカルボキシアルデヒド及びこれらの化合物の混合物からなる群から選択される。特に有利には、上記化合物が、少なくとも2個の官能基を有する芳香環を含み、これらの官能基の1個がヒドロキシメチル官能基であり、もう1個がアルデヒド官能基又はヒドロキシメチル官能基である芳香族化合物である場合、この化合物は5-(ヒドロキシメチル)フルフラール、2,5-ジ(ヒドロキシメチル)フラン及びこれらの化合物の混合物からなる群から選択される。
【0113】
このように、芳香族ポリフェノールをベースとする上記予備縮合された樹脂において、上記繰り返し単位は、置換されていなかった上記芳香環の少なくとも1個の炭素原子が他の単位に接続されていることを除いて、上記に定義される上記芳香族ポリフェノールの特性と一致している。
【0114】
上記予備縮合された樹脂の中心の上記芳香族ポリフェノール以外の上記化合物に関係なく、この予備縮合された樹脂は遊離ホルムアルデヒドを含まない。実際、上記予備縮合された樹脂が前述したような芳香族ポリフェノール及びホルムアルデヒドをベースとする場合でさえ、上記ホルムアルデヒドは既に上記芳香族ポリフェノールと反応しているため、上記予備縮合された樹脂は、その後の工程で本発明の化合物A1と反応することができる可能性がある遊離ホルムアルデヒドを含まない。
【0115】
上記化合物A2)もまた、上述したように遊離芳香族ポリフェノール分子と芳香族ポリフェノールをベースとする予備縮合された樹脂との混合物を含んでもよい。特に、上記化合物A2)もまた、フロログルシノールとフロログルシノールをベースとする予備縮合された樹脂との混合物を含んでもよい。
【0116】
芳香族モノフェノールA2'
上記モノフェノールA2'は、2つの態様に従ってもよい。ある態様において、上記ヒドロキシル官能基に対する2つのオルト位は置換されていない。他の態様において、上記ヒドロキシル官能基に対する少なくとも1つのオルト位及びパラ位は置換されていない。
【0117】
有利には、上記ヒドロキシル官能基に対する少なくとも1つのオルト位及びパラ位が置換されていない態様において、1つのオルト位は置換されておらず、上記ヒドロキシル官能基に対するパラ位は置換されていない。
【0118】
好ましくは、上記態様に関わらず、上記ヒドロキシル官能基に対する2つのオルト位は置換されていない。これはヒドロキシル化された(すなわち上記ヒドロキシル官能基を有する)炭素原子の両側(オルト位)に位置する2個の炭素原子が、水素原子のみを有することを意味するものと理解されたい。
【0119】
更により好ましくは、上記芳香環の残余部は置換されていない。これは上記芳香環の残余部の他の(ヒドロキシル官能基を有する炭素原子以外の)炭素原子が水素原子のみを有することを意味するものと理解されたい。
【0120】
ある実施態様において、上記芳香族モノフェノールは複数の六員芳香環を含み、その少なくとも2個はそれぞれ1個のヒドロキシル官能基を有し、少なくとも1個の上記ヒドロキシル官能基に関しては、上記ヒドロキシル官能基に対する2つのオルト位は置換されていないか、又は上記ヒドロキシル官能基に対する少なくとも1つのオルト位及びパラ位は置換されていない。
【0121】
好ましくは、少なくとも1個の六員芳香環の各ヒドロキシル官能基に対する2つのオルト位は置換されていない。
【0122】
更により好ましくは、各六員芳香環の各ヒドロキシル官能基に対する2つのオルト位は置換されていない。
【0123】
更により好ましくは、各芳香環の残余部は置換されていない。これは各芳香環の残余部の他の(ヒドロキシル官能基を有するか又は上記芳香環を互いに結合させる基を有する炭素原子以外の)炭素原子が水素原子のみを有することを意味するものと理解されたい。
【0124】
有利には、上記芳香族モノフェノールの上記芳香環又は各芳香環は、ベンゼン環である。
【0125】
好ましくは、上記芳香族モノフェノールは、フェノール、オルトクレゾール、メタクレゾール、パラクレゾール、オルトクロロフェノール、メタクロロフェノール、パラクロロフェノール、2-ヒドロキシ安息香酸、3-ヒドロキシ安息香酸、4-ヒドロキシ安息香酸、4-ビニルフェノール、4-エチルフェノール、4-イソプロピルフェノール、4-イソブチルフェノール、パラクマリン酸、及びこれらの化合物の混合物からなる群から選択される。
【0126】
ある実施形態において、上記化合物A2')はこれらの実施形態のいずれかに記載の上記芳香族モノフェノールをベースとする予備縮合された樹脂を含む。
【0127】
この予備縮合された樹脂は、有利には、
上記に定義された少なくとも1種の芳香族モノフェノールであって、好ましくはフェノール、オルトクレゾール、メタクレゾール、パラクレゾール、オルトクロロフェノール、メタクロロフェノール、パラクロロフェノール、2-ヒドロキシ安息香酸、3-ヒドロキシ安息香酸、4-ヒドロキシ安息香酸、4-ビニルフェノール、4-エチルフェノール、4-イソプロピルフェノール、4-イソブチルフェノール、パラクマリン酸、及びこれらの化合物の混合物からなる群から選択される、芳香族モノフェノール;及び
少なくとも1個のアルデヒド官能基を含む前記芳香族モノフェノールと反応可能な少なくとも1種の化合物及び/又は芳香環上に少なくとも2個のヒドロキシメチル官能基を含む前記芳香族モノフェノールと反応可能な少なくとも1種の化合物
をベースとする。
【0128】
前記芳香族モノフェノールと反応可能な上記化合物は、項I.1で上記に定義される芳香族化合物、式Ar-(CHO)
2の化合物であってArが上記の項I.1の芳香族化合物で定義される化合物、又はその他のアルデヒドであってもよい。有利には、前記化合物は、少なくとも2個の官能基を有する芳香環を含み、これらの官能基の1個がヒドロキシメチル官能基であり、もう1個がアルデヒド官能基又はヒドロキシメチル官能基である芳香族化合物、ホルムアルデヒド、フルフルアルデヒド、2,5-フランジカルボキシアルデヒド、1,4-ベンゼンジカルボキシアルデヒド、1,3-ベンゼンジカルボキシアルデヒド、1,2-ベンゼンジカルボキシアルデヒド及びこれらの化合物の混合物からなる群から選択される。特に有利には、上記化合物が、少なくとも2個の官能基を有する芳香環を含み、これらの官能基の1個がヒドロキシメチル官能基であり、もう1個がアルデヒド官能基又はヒドロキシメチル官能基である芳香族化合物である場合、この化合物は5-(ヒドロキシメチル)フルフラール、2,5-ジ(ヒドロキシメチル)フラン及びこれらの化合物の混合物からなる群から選択される。
【0129】
このように、芳香族モノフェノールをベースとする上記予備縮合された樹脂において、上記繰り返し単位は、置換されていなかった六員芳香環の少なくとも1個の炭素原子が他の単位に接続されていることを除いて、上記に定義される上記芳香族モノフェノールの特性と一致している。
【0130】
上記予備縮合された樹脂の中心の上記芳香族モノフェノール以外の上記化合物に関係なく、この予備縮合された樹脂は遊離ホルムアルデヒドを含まない。実際、上記予備縮合された樹脂が前述したような芳香族モノフェノール及びホルムアルデヒドをベースとする場合でさえ、上記ホルムアルデヒドは既に上記芳香族モノフェノールと反応しているため、上記予備縮合された樹脂は、その後の工程で本発明の化合物A1と反応することができる可能性がある遊離ホルムアルデヒドを含まない。
【0131】
上記化合物A2')もまた、上述したように遊離芳香族モノフェノール分子と芳香族モノフェノールをベースとする予備縮合された樹脂との混合物を含んでもよい。特に、上記化合物A2')もまた、フェノールとフェノールをベースとする予備縮合された樹脂との混合物を含んでもよい。
【0132】
I.3-不飽和エラストマーラテックス
ラテックスは、一般的な水溶液中で懸濁状態にあるエラストマーの微粒子の安定な分散体であることが想起される。したがって、エラストマーラテックスは、液体溶媒、一般的には水と、エマルジョンを形成するように上記液体溶媒中に分散させた少なくとも1種のエラストマー又はゴムを含む液状の組成物である。このように、上記ラテックスは、少なくとも1種の他の成分が分散している、エラストマー又はゴムのマトリックスを含むゴム組成物ではない。ゴム組成物は未硬化(非架橋)状態においては塑性状態に、そして、硬化(架橋)状態においては弾性状態にあるが、ラテックスとは異なり、液体状態には決してならない。
【0133】
不飽和(すなわち、炭素−炭素二重結合を有する)エラストマーラテックス、特にジエンエラストマーラテックスは、当業者にとって周知である。これらは、特に、本明細書の導入部に記載したRFL接着剤のエラストマーベースを形成する。
【0134】
本発明によれば、上記ラテックスの不飽和エラストマーは、好ましくはジエンエラストマーであり、更に好ましくはポリブタジエン、ブタジエンコポリマー、ポリイソプレン、イソプレンコポリマー及びこれらのエラストマーの混合物からなる群から選択されるジエンエラストマーである。更により好ましくは、ブタジエンコポリマー、ビニルピリジン/スチレン/ブタジエンターポリマー、天然ゴム及びこれらのエラストマーの混合物からなる群から選択される。
【0135】
I.4-本発明の予備縮合された樹脂を含む水性接着剤溶液
本発明の他の主題は、
A1)少なくとも2個の官能基を有する少なくとも1種の芳香族化合物であって、これらの官能基の1個がヒドロキシメチル官能基であり、もう1個がアルデヒド官能基又はヒドロキシメチル官能基であり、少なくとも1個の芳香環を含む、芳香族化合物;及び
A2)互いにメタ位に少なくとも2個のヒドロキシル官能基を有する少なくとも1個の芳香環を含む少なくとも1種の芳香族ポリフェノールであって、少なくとも1個の上記ヒドロキシル官能基に対する2つのオルト位は置換されていない、芳香族ポリフェノール
をベースとする予備縮合された樹脂を含む水性接着剤溶液である。
【0136】
有利には、上記予備縮合された樹脂は、更に
A2')1個のヒドロキシル官能基を有する少なくとも1個の六員芳香環を含む少なくとも1種の芳香族モノフェノールであって、上記ヒドロキシル官能基に対する2つのオルト位は置換されていないか、又は上記ヒドロキシル官能基に対する少なくとも1つのオルト位及びパラ位は置換されていない、芳香族モノフェノール
をベースとする。
【0137】
上記芳香族化合物は上述した通りであり、特に、上記に定義される式(I)の化合物である。
【0138】
上記芳香族ポリフェノール及び/又は上記芳香族モノフェノールは上述した通りであり、特に、好ましくは単一の分子である芳香族ポリフェノール及び/又は芳香族モノフェノールである。
【0139】
N1は、上記芳香族化合物上の反応部位の数として、以下のように定義される。アルデヒド官能基は2個の反応部位を表し、ヒドロキシメチル官能基は1個の反応部位を表す。したがって、例えば、5-(ヒドロキシメチル)フルフラールはN1=3の反応部位を有し、2,5-ジ(ヒドロキシメチル)フランはN1=2の反応部位を有する。
【0140】
芳香族ポリフェノールの場合、N2は、上記芳香族ポリフェノールの反応部位の数として、以下のように定義される。上記芳香環上のヒドロキシル官能基に隣接する上記芳香環上の各自由な炭素(free carbon)は、反応部位を表し、各自由な炭素は、1個の隣接するヒドロキシル官能基に対する反応部位としてのみ数えることができる。したがって、例えば、レゾルシノール及びフロログルシノールはそれぞれN2=3の反応部位を有し、2,2',4,4'-テトラヒドロキシジフェニルスルフィドはN2=4の反応部位を有する。
【0141】
芳香族モノフェノールの場合、N'2は、上記芳香族モノフェノールの反応部位の数として、以下のように定義される。上記芳香環上の上記ヒドロキシル官能基に隣接する上記六員芳香環上の各自由な炭素は、反応部位を表し、上記ヒドロキシル官能基に対するパラ位の上記六員芳香環の上記自由な炭素は、反応部位を表す。したがって、例えば、フェノールはN'2=3の反応部位を有する。
【0142】
上記予備縮合された樹脂は、
上記芳香族化合物A1)、及び
上記芳香族ポリフェノールA2)、並びに任意で
上記芳香族モノフェノールA2')を、
塩基性溶媒中、好ましくはpHが8と13の間、より好ましくは9と12の間である塩基性溶媒中で、又は、酸性溶媒若しくは中性溶媒中、好ましくはpHが4と7の間、より好ましくは5と7の間である酸性溶媒若しくは中性溶媒中で混合することにより得られる。
【0143】
上記予備縮合された樹脂は、有利には、上記芳香族ポリフェノール及び任意で上記芳香族モノフェノールと上記芳香族化合物A1とを水溶液中で徐々に混合することにより調製する。
【0144】
第1の態様において、上記予備縮合された樹脂がベースとする上記成分を、好ましくはpHが8と13の間、より好ましくは9と12の間である、水酸化ナトリウム水溶液等の塩基性溶媒中で混合する。
【0145】
第2の態様において、上記予備縮合された樹脂がベースとする上記成分を、pHが4と7の間、好ましくは5と7の間である水溶液等の、酸性溶媒又は中性溶媒中で混合する。
【0146】
ある場合、例えば比較的高濃度、又は酸性溶媒の場合において、当業者は、上記予備縮合された樹脂の沈殿を制限するよう、カルボキシメチルセルロース等の増粘剤又はゼラチン等のゲル化剤を加えるための動機を見出すかもしれない。
【0147】
上記態様に関わらず、組み合わされた構成成分を、使用温度及び目標とする特定の組成物に応じて変化してもよい時間、例えば1分と6時間の間で変化してもよい時間の期間で、20℃と90℃の間、好ましくは20℃と60℃の間の温度で撹拌混合する。
【0148】
第1の態様において、塩基を中和して、保存でき、かつ続いて使用することができる予備縮合された樹脂を得るように、有利には続いて酸を加える。
【0149】
第2の態様において、酸を中和して、保存でき、かつ続いて使用することができる予備縮合された樹脂を得るように、有利には続いて塩基を加える。
【0150】
上記予備縮合された樹脂を調製するために、芳香族ポリフェノールA2のモル数n2、芳香族モノフェノールA2'のモル数n2'及び芳香族化合物A1のモル数n1は、[(n2*N2)+(n'2N'2)]/(n1*N1)>1、好ましくは1<[(n2*N2)+ )+(n'2N'2)]/(n1*N1)<5であるようにする。
【0151】
上記予備縮合された樹脂を続いて、一般的には水中に希釈する。
【0152】
このように調製された最終水性接着剤溶液において、本発明に係る予備縮合された樹脂の固体含量は、好ましくは2質量%と30質量%の間、より好ましくは5質量%と15質量%の間を表す。
【0153】
このように調製された最終水性接着剤溶液の含水量は、好ましくは70質量%と98質量%の間、より好ましくは85質量%と95質量%の間である。
【0154】
「水性接着剤溶液の含水量」は、上記接着剤溶液の合計質量に対する水の質量を意味するものと理解されたい。
【0155】
I.5-添加剤-水性接着剤組成物の製造
本発明に係る上記水性接着剤組成物は、勿論、従来のRFL接着剤において使用される添加剤等の、水性接着剤組成物用の標準的な添加剤の全て又は数種を含んでもよい。例えば、アンモニア水、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム又は水酸化アンモニウム等の塩基類、染料、カーボンブラック又はシリカ等のフィラー、酸化防止剤又は他の安定剤、組成物の粘度を増加することができる、カルボキシメチルセルロース等の増粘剤若しくはゼラチン等のゲル化剤を挙げることができる。更に、樹脂の硬化時間又はゲル化時間及びオープンタイムを変更することができる添加剤も挙げることができる。当業者に公知の通り、上記硬化時間又はゲル化時間は、その基材に上記樹脂を塗布することができる時間の長さであり、上記オープンタイムは、その基材に上記樹脂を塗布した後に、その後の相補的な基材との接着結合の品質に悪影響を与えることなく、外気中に上記樹脂を放置することができる時間の長さである。上記硬化時間又はゲル化時間及び上記オープンタイムは、特に温度、圧力又は他には上記樹脂の濃度に依存する。
【0156】
典型的には、第1の樹脂化工程の間、上記熱硬化性樹脂それ自体の上記構成成分を、有利には水中で混合する。
【0157】
この第1の樹脂化工程は、複数の実施形態に従って実行されてもよい。
【0158】
種々の実施形態を詳細に説明する前に、上記水性接着剤組成物の上記熱硬化性樹脂が、樹脂の構成成分、すなわち、上記に定義される前記芳香族化合物A1)、上記に定義される前記芳香族化合物A2)及び/又は上記に定義される前記芳香族化合物A2'を、塩基性溶媒中、好ましくはpHが8と13間、より好ましくは9と12の間である塩基性溶媒中、又は酸性溶媒若しくは中性溶媒中、好ましくはpHが4と7の間、より好ましくは5と7の間である酸性溶媒若しくは中性溶媒中で混合することにより得られてもよいようにまず特定される。この溶媒は、有利には塩基の添加により塩基性にした水又は酸の添加により酸性にした水である。
【0159】
第1の実施形態において、項I.2で定義されるような芳香族ポリフェノールをベースとする予備縮合された樹脂、すなわち、
互いにメタ位に少なくとも2個のヒドロキシル官能基を有する少なくとも1個の芳香環を含む少なくとも1種の芳香族ポリフェノールであって、少なくとも1個の上記ヒドロキシル官能基に対する2つのオルト位が置換されていない、芳香族ポリフェノール;及び
少なくとも1個のアルデヒド官能基を含む前記芳香族ポリフェノールと反応可能な少なくとも1種の化合物及び/又は芳香環上に少なくとも2個のヒドロキシメチル官能基を含む前記芳香族ポリフェノールと反応可能な少なくとも1種の化合物
をベースとして得られる、予備縮合された樹脂を使用する。
【0160】
芳香族ポリフェノールA2をベースとする上記予備縮合された樹脂は、有利には、上記芳香族ポリフェノール、少なくとも1個のアルデヒド官能基を含む上記化合物、例えばホルムアルデヒド、及び/又は芳香環上に少なくとも2個のヒドロキシメチル官能基を含む上記化合物を、上述したようなモル量で徐々に混合することにより調製する。
【0161】
第1の態様において、上記予備縮合された樹脂のベースとなる上記成分を、好ましくはpHが8と13の間、より好ましくは9と12の間である、水酸化ナトリウム水溶液等の塩基性溶媒中で混合する。
【0162】
したがって、上記予備縮合された樹脂は、
前記芳香族ポリフェノール、及び
前記芳香族ポリフェノールと反応可能な前記化合物を、
塩基性溶媒中、好ましくはpHが8と13の間、より好ましくは9と12の間である塩基性溶媒中で混合することにより得られる。
【0163】
第2の態様において、上記予備縮合された樹脂のベースとなる上記成分を、pHが4と7の間、好ましくは5と7の間である水溶液等の酸性溶媒又は中性溶媒中で混合する。
【0164】
したがって、上記予備縮合された樹脂は、
前記芳香族ポリフェノール、及び
前記芳香族ポリフェノールと反応可能な前記化合物を、
酸性溶媒又は中性溶媒中、好ましくはpHが4と7の間、より好ましくは5と7の間である酸性溶媒又は中性溶媒中で混合することにより得られる。
【0165】
ある場合において、例えば比較的高濃度、又は酸性溶媒の場合、当業者は、上記予備縮合された樹脂の沈殿を制限するよう、カルボキシメチルセルロース等の増粘剤又はゼラチン等のゲル化剤を加えるための動機を見出すかもしれない。
【0166】
上記態様に関わらず、組み合わされた構成成分を、使用温度及び目標とする特定の組成物に応じて変化してもよい時間、例えば1分と6時間の間で変化してもよい時間の期間で、20℃と90℃の間、好ましくは20℃と60℃の間の温度で撹拌混合する。
【0167】
上述したように、保存でき、かつ続いて使用することができる予備縮合された樹脂を得るように、有利には媒体を中和してもよい。
【0168】
次いで、この第1の実施形態において、上記接着剤組成物は、
この予備縮合された樹脂(化合物A2)、及び
上記芳香族化合物A1を、
塩基性溶媒中、好ましくはpHが8と13の間、より好ましくは9と12の間である塩基性溶媒中、又は酸性溶媒若しくは中性溶媒中、好ましくはpHが4と7の間、より好ましくは5と7の間である酸性溶媒若しくは中性溶媒中で混合することにより得られてもよい。
【0169】
特に、芳香族ポリフェノール(化合物A2)をベースとするこの予備縮合された樹脂を、好ましくはpHが8と13の間、より好ましくは9と12の間である水酸化ナトリウム水溶液等の塩基性溶媒中で、又は他にpHが4と7の間、好ましくは5と7の間である水溶液等の酸性溶媒若しくは中性溶媒中で、芳香族化合物A1とともに徐々に混合する。酸性媒体であるか塩基性媒体であるかに関わらず、全ての構成成分を、使用温度及び目標とする特定の組成物に応じて変化してもよい時間、例えば1分と6時間の間で変化してもよい期間で、20℃と90℃の間、好ましくは20℃と60℃の間の温度で撹拌混合する。当業者であれば、特に芳香族ポリフェノールA2をベースとする上記予備縮合された樹脂の性質の関数として、所望する用途に適切な架橋及び濃度を得るために、芳香族ポリフェノールA2及び上記芳香族化合物A1をベースとする上記予備縮合された樹脂のモル量をどのようにして調整するかを知っているだろう。
【0170】
第2の実施形態において、項I-4に記載の予備縮合された樹脂、すなわち、
A1)少なくとも2個の官能基を有する少なくとも1種の芳香族化合物であって、これらの官能基の1個がヒドロキシメチル官能基であり、もう1個がアルデヒド官能基又はヒドロキシメチル官能基であり、上記芳香族化合物は少なくとも1個の芳香環を含み、例えば5-(ヒドロキシメチル)フルフラールである、芳香族化合物、及び
A2)互いにメタ位に少なくとも2個のヒドロキシル官能基を有する少なくとも1個の芳香環を含む少なくとも1種の芳香族ポリフェノールであって、少なくとも1個の上記ヒドロキシル官能基に対する2つのオルト位は置換されていない、例えばフロログルシノールである、芳香族ポリフェノール
をベースとする予備縮合された樹脂を使用する。
【0171】
この第2の実施形態において、本発明に係る芳香族ポリフェノールをベースとする上記予備縮合された樹脂を、第1の実施形態の芳香族ポリフェノールをベースとする上記予備縮合された樹脂と類似した条件下で調製する。次いで、本発明に係る芳香族ポリフェノールA2をベースとするこの予備縮合された樹脂を、第1の実施形態と類似の条件下で上記芳香族化合物A1と徐々に混合する。ここでも、当業者であれば、特に芳香族ポリフェノールA2をベースとする上記予備縮合された樹脂の性質の関数として、所望する用途に適切な架橋及び濃度を得るために、芳香族ポリフェノールA2及び上記芳香族化合物A1をベースとする予備縮合された樹脂のモル量をどのようにして調整するかを知っているだろう。
【0172】
第3の実施形態において、単一の分子の形態の本発明に係る芳香族ポリフェノールA2、例えばフロログルシノールを使用する。
【0173】
第1の態様において、上記熱硬化性樹脂は、
単一の分子の形態の上記芳香族ポリフェノールA2)を、塩基性溶媒中、好ましくはpHが8と13の間、より好ましくは9と12の間である塩基性溶媒中、又は酸性溶媒若しくは中性溶媒中、好ましくはpHが4と7の間、より好ましくは5と7の間である酸性溶媒若しくは中性溶媒中で混合し、
次いで上記芳香族化合物A1)を添加する
ことにより得られる。
【0174】
特に、上記芳香族ポリフェノールA2を、好ましくはpHが8と13の間、より好ましくは9と12の間である、水酸化ナトリウム水溶液等の塩基性溶媒中で、又は他にpHが4と7の間、好ましくは5と7の間である水溶液等の、酸性溶媒若しくは中性溶媒中でまず混合する。
【0175】
ある場合において、例えば比較的高濃度、又は酸性溶媒の場合、当業者は、上記芳香族ポリフェノールA2の沈殿を制限するよう、カルボキシメチルセルロース等の増粘剤又はゼラチン等のゲル化剤を加えるための動機を見出すかもしれない。
【0176】
次いで、上記芳香族化合物A1)を添加する。特に、上記芳香族化合物A1を、第1の実施形態と類似の条件下で徐々に添加する。
【0177】
第2の態様において、上記熱硬化性樹脂は、
上記芳香族化合物A1)を、塩基性溶媒中、好ましくはpHが8と13の間、より好ましくは9と12の間である塩基性溶媒中、又は酸性溶媒若しくは中性溶媒中、好ましくはpHが4と7の間、より好ましくは5と7の間である酸性溶媒若しくは中性溶媒中で混合し、
次いで単一の分子の形態の上記芳香族ポリフェノールA2)を添加する
ことにより得られる。
【0178】
特に、上記芳香族化合物A1)を、水溶液中、好ましくは、例えば、好ましくはpHが8と13の間、より好ましくは9と12の間である、水酸化ナトリウム水溶液等の塩基性溶媒中でまず混合する。次いで、上記芳香族ポリフェノールA2を添加し、第1の実施形態と類似の条件下で上記成分を混合する。
【0179】
芳香族ポリフェノールA2のモル量n2及び芳香族化合物A1のモル量n1が、0.3≦(n2*N2)/(n1*N1)≦3、好ましくは1<(n2*N2)/(n1*N1)≦2となるように混合する。
【0180】
前の3つの各実施形態において、上記芳香族ポリフェノールは、1個のヒドロキシル官能基を有する少なくとも1個の六員芳香環を含み、上記ヒドロキシル官能基に対する2つのオルト位、又は上記ヒドロキシル官能基に対する少なくとも1つのオルト位及びパラ位が置換されていない芳香族モノフェノールによって、全部又は一部を置換することができる。
【0181】
この場合、単一の分子の形態の化合物を使用する上述した第3の実施形態において、芳香族ポリフェノールA2のモル量n2、芳香族モノフェノールA2'のモル量n'2及び芳香族化合物A1のモル量n1が、次いで、0.3≦[(n2*N2)+(n'2*N'2)]/(n1*N1)≦3、好ましくは1<[(n2*N2)+(n'2*N'2)]/(n1*N1)≦2となるように混合する。
【0182】
これら3つの実施形態のいずれかにおいて、本発明の上記水性接着剤組成物を形成するために、RFL接着剤の分野における当業者に周知の一般的な手順に従って、上記不飽和エラストマーラテックス又は(複数ある場合は)複数のラテックスに添加する前に、部分的に架橋した熱硬化性樹脂を水中で徐々に希釈する。
【0183】
好ましくは、上記水性接着剤組成物を形成するこの工程の間、確実に水性接着剤組成物のpHを、8と13の間、より好ましくは9と12の間にして、上記不飽和エラストマーラテックス又は複数のラテックスの一部の可能性のある沈殿を制限する。
【0184】
したがって、水性接着剤組成物を形成するこの工程の前の樹脂化工程の間に、中和された塩基性溶媒又は酸性溶媒若しくは中性溶媒を用いる場合には、上記不飽和エラストマーラテックス又は複数のラテックスを添加する前に、pHを8と13の間、より好ましくは9と12の間にすることが可能になるように塩基を加え、上記不飽和エラストマーラテックス又は複数のラテックスの一部の可能性のある沈殿を制限する。
【0185】
例えば、上記接着剤組成物の上記構成成分を、次の順序で添加する。水、存在する場合は水溶性添加剤(例えばアンモニア水)、ラテックス又は複数のラテックス(どの順序でもよい)、及び部分的に架橋した熱硬化性樹脂(希釈済み)。混合物を1〜30分間、例えば20℃で撹拌混合する。
【0186】
熟成工程と呼ばれる最終製造工程の間、前記水性接着剤組成物を、最終的に使用する前に、周囲温度(23℃)にて、典型的には1〜数時間、又は実に数日間までの範囲で変化し得る熟成時間の間保存する。
【0187】
このようにして調製された最終接着剤組成物は、その合計固体含量、有利には熱硬化性樹脂及びラテックスの固体含量が、5質量%と60質量%の間、より好ましくは10質量%と40質量%の間である。
【0188】
第1の実施形態において、上記合計固体含量、有利には熱硬化性樹脂及びラテックスの上記固体含量は、より好ましくは10質量%と30質量%の間である。
【0189】
第2の実施形態において、上記合計固体含量、有利には熱硬化性樹脂及びラテックスの上記固体含量は、より好ましくは15質量%と40質量%の間である。
【0190】
「接着剤組成物の合計固体含量」は、乾燥前の水性接着剤組成物の質量に対する、上記水性接着剤組成物を乾燥させた後に得られる残渣の質量の比を意味するものと理解されたい。
【0191】
「熱硬化性樹脂及びラテックスの固形含量」は、乾燥前の水性接着剤組成物の質量に対する、上記水性接着剤組成物を乾燥させた後に得られる熱硬化性樹脂及びラテックスの質量の比を意味するものと理解されたい。
【0192】
これらの2つの固体含量は、標準NF EN 827(3月 2006)に従って測定する。
【0193】
不飽和エラストマー(すなわち、ラテックス又は複数のラテックスの固体)の含量は、上記接着剤組成物の固体含量に対して、好ましくは40質量%と95質量%の間、より好ましくは70質量%と90質量%の間である。
【0194】
ラテックス固体に対する樹脂固体の質量比は、好ましくは0.1と2.0の間、より好ましくは0.15と1.0の間である。
【0195】
本発明の上記水性接着剤組成物の含水量は、好ましくは60質量%と90質量%の間、より好ましくは60質量%と85質量%の間である。
【0196】
「水性接着剤組成物の含水量」は、上記接着剤組成物の合計質量に対する水の質量を意味するものと理解されたい。
【0197】
II-本発明の繊維材料及び複合体
上記に示したように、本発明はまた、上述した上記水性接着剤組成物の、任意の繊維材料の不飽和ゴム組成物への接着結合のための、そのような材料の補強ゴム複合体の形成のための使用、及びまた、少なくとも一部が本発明に係る接着剤組成物で被覆された繊維材料それ自体にも関する。
【0198】
II.1-定義;繊維材料の例
本特許出願において、定義によれば、「繊維」又は「繊維材料」とは、当業者に周知の通り、任意の適切な変換方法によってスレッド、繊維又はフィルムに変換することができる、金属物質以外の物質から製造した、天然又は合成の任意の材料を意味するものと理解されたい。以下の例に限定されるものではないが、ポリマー紡糸法として例えば、溶融紡糸、溶液紡糸又はゲル紡糸等を挙げることができる。
【0199】
この繊維材料は、スレッド若しくは繊維、リボン若しくはフィルム、又は縦糸及び横糸を有する織物、若しくは交差糸を有する綾織物等の、スレッド若しくは繊維から製造される織布からなってもよい。
【0200】
好ましくは、本発明のこの繊維材料は、フィルム、モノフィラメント(又は個々のスレッド)、マルチフィラメント繊維、そのようなスレッド又は繊維のアセンブリ、及びそのような材料のアセンブリからなる群から選択される。より好ましくは、モノフィラメント、マルチフィラメント繊維又は合撚糸である。
【0201】
「スレッド」又は「繊維」という用語は、一般的に、円形、楕円形、長方形、正方形、又は平面状等の断面の形状にかかわらず、その断面に対して大きい長さを有する任意の細長い要素を意味することを意図しており、このスレッドは直線又は撚り形若しくは波形等の非直線であり得る。この断面の最大寸法は、好ましくは5mm未満、より好ましくは3mm未満である。
【0202】
このスレッド又は繊維は、任意の既知の形状を有してもよい。例えば、大直径(例えば、好ましくは50μm以上)の個々のモノフィラメント、マルチフィラメント繊維(典型的には30μm未満の小直径を有する複数の個々のフィラメントからなる)、一緒に撚り合わせたか、又はケーブル被覆した複数の織物繊維又はモノフィラメントから形成された織物合撚糸又はコード、又は他に例えば、一緒に集束させた、例えば直線又は非直線の主方向に沿って配列させた複数のこれらのモノフィラメント、繊維、合撚糸又はコードを含むバンド又はストリップ等のスレッド又は繊維のアセンブリ、束又は列であってもよい。
【0203】
「フィルム」又は「リボン」という用語は、一般的に、その断面に対して大きい長さを有する細長い要素を意味すると理解され、その断面のアスペクト比(厚みに対する幅)は、5を超え、好ましくは10を超え、その幅は、好ましくは少なくとも3mmに等しく、より好ましくは少なくとも5mmに等しい。
【0204】
本発明の上記水性接着剤組成物は、上述した任意の繊維材料に塗布することができ、タイヤ等の、有機又は高分子物質製、無機物質製等の繊維材料を含むゴム物品を補強することができる。
【0205】
無機物質の例として、ガラス又は炭素を挙げることができる。
【0206】
本発明は、好ましくは、熱可塑性及び非熱可塑性型の両方の高分子物質製の材料を用いて実施する。
【0207】
上記非熱可塑性型の高分子物質の例として、例えば、アラミド(芳香族ポリアミド)並びに天然及び人工両方の綿、レーヨン、亜麻又は麻等のセルロースを挙げることができる。
【0208】
好ましくは、上記熱可塑性型の高分子物質の例として、脂肪族ポリアミド及びポリエステルを挙げることができる。脂肪族ポリアミドのうち、ポリアミド4-6、6、6-6、11又は12を特に挙げることができる。ポリエステルのうち、例えば、PET(ポリエチレンテレフタレート)、PEN(ポリエチレンナフタレート)、PBT(ポリブチレンテレフタレート)、PBN(ポリブチレンナフタレート)、PPT(ポリプロピレンテレフタレート)、PPN(ポリプロピレンナフタレート)、PEF(ポリエチレンフラノエート)、PBF(ポリブチレンフラノエート)、及びPPF(ポリプロピレンフラノエート)を挙げることができる。
【0209】
好ましくは、上記繊維材料の上記物質は、ポリエステル、ポリアミド、ポリケトン、ポリビニルアルコール、セルロース及びこれらの材料の組み合わせからなる群から選択される。
【0210】
より好ましくは、上記繊維材料の上記物質は、ポリエステル、脂肪族ポリアミド及び芳香族ポリアミド並びにこれらの材料の組み合わせからなる群から選択される。
【0211】
II.2-繊維材料及び複合体の製造
本発明の被覆繊維材料は、一般にサイジング法と呼ばれる、本発明に係る接着剤組成物で出発(初期)繊維材料を被覆する少なくとも1つの工程を含むことを特徴とする製造方法に従って調製することができる。
【0212】
初期繊維材料(出発繊維材料)上に上記接着剤組成物を堆積させる工程は、特に、スプレー法、浸漬による含浸法、浴内前進法(forward progression in a bath)又は接着剤の薄膜若しくは超薄膜を堆積させる他の同等の技術又はこれらの技術の1以上の組み合わせ等の任意の既知の被覆技術によって、任意の適切な方法に従って行うことができる。
【0213】
浸漬による含浸法又は浴内前進法の間、前記浴は、有利には周囲温度、すなわち18℃〜25℃である。
【0214】
1キログラムの繊維材料に堆積させる上記水性接着剤組成物の固体含量は、好ましくは5gと100gの間、より好ましくは30gと70gの間、更により好ましくは40gと60gの間である。
【0215】
本発明はまた、出発繊維材料が、ある織物繊維(例えばPET又はアラミド繊維)の予備サイジングで当業者が一般に用いるような接着プライマーで予備被覆された場合にも適用する。そのように予備被覆された繊維は、次いで引き続き本発明に係る上記水性接着剤組成物による最終サイジングに供される。
【0216】
上記接着剤組成物の堆積の上述の工程の後、サイズ処理した材料を、溶媒又は水を除去する目的で、好ましくは110℃と260℃の間、より好ましくは130℃と250℃の間の温度で、例えば、繊維材料をRFL接着剤でサイズ処理した後の加熱処理で一般的に用いられるような、典型的には数メートルの長さを有するトンネル炉を通すことによって、第1の加熱処理に供する。
【0217】
このように、本発明は、乾燥後、すなわち本発明に係る上記繊維材料から水を除去することを目的とする加熱処理の後に得られ、少なくとも一部が本発明に係る接着剤を含む接着層で被覆されている、被覆繊維材料に関する。
【0218】
そのようにして得られた無水材料を、次いで第2の加熱処理に供し、その間、好ましくは上述のトンネル炉内の空気中で行われる上記熱硬化性樹脂の架橋を停止するために、上記無水被覆繊維材料を加熱する。上記処理の温度は、好ましくは150℃と350℃の間である。上記処理の時間は、状況に応じて、数秒〜数分(例えば10秒と10分の間)である。
【0219】
このように、本発明は、上記熱硬化性樹脂の架橋後、すなわち上記熱硬化性樹脂の架橋を停止することを狙いとした加熱処理後に得られる被覆繊維材料に関する。
【0220】
必要に応じて、当業者であれば、本発明の特定の操作条件に従って、特に、製造される繊維材料の正確な性質に応じて、特に上記処理をモノフィラメント、マルチフィラメント繊維、一緒に撚り合わせた複数本の繊維からなる合撚糸又はフィルムのいずれかに行うかに応じて、上記の加熱処理の温度及び期間をどのようにして調節するかは承知であろう。特に、当業者であれば、連続近似法によって、本発明の特定の実施形態ごとに最良の接着結果をもたらす操作条件を探すために上記処理の温度及び時間を調べる強みを有するだろう。
【0221】
そのようにサイズ処理された、本発明の上記被覆繊維材料は、好ましくは、ジエンゴム等の不飽和ゴム組成物に接着させて、本発明の他の主題を構成する補強ゴム組成物を形成することを意図している。
【0222】
本発明のこのゴム組成物は、少なくとも下記の工程:
第1の工程の間に、本発明に係る上記繊維材料の少なくとも一部を不飽和(架橋性)ゴム組成物と結合させて、上記繊維材料で補強されたゴム組成物を形成させる工程、
次いで、第2の工程の間に、このように硬化によって形成された上記複合体を、好ましくは圧力下で架橋させる工程
を含む方法に従って調製することができる。
【0223】
このように、本発明は、上述の方法によって得ることができる任意のタイプのゴム複合体であって、本発明に係る上記接着剤組成物をベースとする接着剤界面相を介して上記繊維材料に結合された、架橋性ゴム組成物製、特にジエンゴム組成物製のマトリックスを少なくとも含む任意のタイプのゴム複合体に適用する。
【0224】
上記複合体のジエンエラストマーは、好ましくはポリブタジエン(BR)、天然ゴム(NR)、合成ポリイソプレン(IR)、ブタジエン/スチレンコポリマー(SBR)、イソプレン/ブタジエンコポリマー(BIR)、イソプレン/スチレンコポリマー(SIR)、ブタジエン/スチレン/イソプレンコポリマー(SBIR)及びこれらのエラストマーの混合物からなる群から選択される。好ましい実施形態では、「イソプレン」エラストマー、すなわちイソプレンホモポリマー又はコポリマー、つまり天然ゴム(NR)、合成ポリイソプレン(IR)、イソプレンの各種コポリマー及びこれらのエラストマーの混合物からなる群から選択されるジエンエラストマーを用いる。上記イソプレンエラストマーは、好ましくは天然ゴム又はシス-1,4型の合成ポリイソプレンである。
【0225】
II.3-タイヤへの適用
本発明の上記繊維材料は、有利には全てのタイプの車両、特に乗用車又は大型車等の産業用車両用のタイヤを補強するために用いることができる。
【0226】
一例として、一つの添付図は、乗用車タイプの車両用の本発明に係るタイヤの半径断面を極めて略図的に(特定縮図に準じずに)示している。
【0227】
このタイヤ1は、クラウン補強材又はベルト6によって補強されたクラウン2、2枚の側壁3及び2個のビード4を有し、これらの各ビード4は、ビードワイヤ5によって補強されている。上記クラウン2はトレッドが取り付けられているが、この略図には示していない。カーカス補強材7は、各ビード4内の2本の上記ビードワイヤ5の周りに巻き付けられており、この補強材7の上返し8は、例えば、タイヤ1の外側に向かって位置しており、ここではその車輪リム9上に取り付けて示している。上記カーカス補強材7は、それ自体知られている通り、「ラジアル」コード、例えば繊維コードによって補強されている少なくとも1枚のプライで構成され、すなわち、これらのコードは、実質的に、互いに平行に配置されて一方のビードから他方のビードに延びて、円周正中面(2つの上記ビード4間の中間距離に位置し、上記クラウン補強材6の中央を通るタイヤの回転軸に対して垂直の面)と80°と90°の間の角度をなしている。
【0228】
本発明のこのタイヤ1は、例えば、少なくともクラウン補強材(6)及び/又はそのカーカス補強材(7)が本発明に係る繊維材料を含むという本質的な特徴を有する。本発明のもう1つの可能性のある実施例によれば、それは、例えば、本発明に係る繊維材料で全部又は一部が構成されていてもよい上記ビードワイヤ(5)である。
【0229】
勿論、本発明は、上述の物品、すなわち、上記繊維材料、並びに未硬化状態(硬化又は加硫前)及び硬化状態(硬化後)双方の上記繊維材料を含むタイヤ等のゴム複合体に関する。
【0230】
III-本発明の実施例及び比較試験
これらの試験は、本発明に係る水性接着剤組成物でサイズ処理した繊維コードのジエンエラストマー組成物に対する接着性が、RFLタイプの従来の接着剤組成物でサイズ処理したコードと比較して、同等であるか、又はある場合には改善さえされていることを実証する。
【0231】
これらの試験はまた、本発明に係る上記接着剤組成物の水中での可溶化方法が文献WO2013/017421に記載の接着剤組成物と比較して非常に容易であることを実証する。
【0232】
最後に、これらの試験は、上記繊維コードの濡れ性が、RFLタイプの従来の接着剤組成物と比較して同等であるか、又は改善さえされ、そして文献WO2013/017421に記載の接着剤組成物と比べて改善されていることを実証する。
【0233】
このために、8つの水性接着剤組成物、すなわち本発明に従う3通り(以下C-1、C-2及びC-3と示す)と、本発明に従わない5通り(対照組成物、以下T-1〜T-5と示す)を上記に示したように調製した。これらの配合は(質量パーセントで示す)、添付の表1に示している。この表に示している量は、水性接着剤の合計100質量部(すなわち、上記構成成分プラス水)に対する乾燥状態の上記構成成分の量である。
【0234】
接着剤組成物T-1は、RFLタイプの、ポリアミドコードをゴム組成物に接着するのに通常使用される対照組成物である。この接着剤組成物は、レゾルシノール及びホルムアルデヒドをベースとする。
【0235】
接着剤組成物T-2は、RFLタイプの、ポリアミドコードをゴム組成物に接着するのに通常使用される対照組成物である。この接着剤組成物は、予備縮合されたレゾルシノール−ホルムアルデヒド樹脂及びホルムアルデヒドをベースとする。
【0236】
接着剤組成物T-3は、出願WO2013/017421に記載のフェノール−アルデヒドタイプの対照組成物である。この接着剤組成物は、フロログルシノール及びテレフタルアルデヒドをベースとする。
【0237】
接着剤組成物T-4は、出願WO2013/017421に記載のフェノール−アルデヒドタイプの対照組成物である。この接着剤組成物は、予備縮合されたレゾルシノール−ホルムアルデヒド樹脂及びテレフタルアルデヒドをベースとする。
【0238】
接着剤組成物T-5は、出願WO2015/007641に記載のフェノール−アルデヒドタイプの対照組成物である。この接着剤組成物は、フロログルシノール及びフルフルアルデヒドをベースとする。
【0239】
本発明に係る水性接着剤組成物C-1は、フロログルシノール及び5-(ヒドロキシメチル)フルフラールをベースとする。
【0240】
本発明に係る水性接着剤組成物C-2は、予備縮合されたレゾルシノール−ホルムアルデヒド樹脂及び5-(ヒドロキシメチル)フルフラールをベースとする。
【0241】
本発明に係る水性接着剤組成物C-3は、1,3-ベンゼンジメタノール及びフロログルシノールをベースとする。
【0242】
これらの接着剤組成物C-1〜C-3及びT-1〜T-5は全て、更に天然ゴム(NR)ラテックス、スチレン/ブタジエンコポリマー(SBR)ラテックス及びビニルピリジン/スチレン/ブタジエン(VPSBR)ラテックスをベースとする。
【0243】
接着性試験
上記ポリアミド(ポリアミド-6,6又はナイロン-6,6)コードは、140×2(各ストランドの数は140texである)及び250/250(t/mでの撚り)構造の2本のストランドを含む合撚糸からなる。それらをこれら6通りの水性接着剤C-1〜C-3及びT-1〜T-5でサイズ処理し、次いで180℃の乾燥炉で60秒間乾燥させた。次いで、上記接着剤組成物を、上記繊維コードを230℃の処理炉に60秒間通すことによって架橋させた。次いで、加硫加熱処理によって天然ゴム組成物とともに硬化させることにより一体化させて、下記に記載の複合体試験標本を作製した。
【0244】
その後、上記ゴム組成物と上記繊維材料の間の結合の質を、繊維材料製のコードの切片を上記加硫ゴム組成物から引き抜くのに必要な力を評価する試験により測定する。このゴム組成物は、天然ゴム、カーボンブラック及び標準の添加剤をベースとする、タイヤカーカス補強材繊維プライのカレンダー処理に用いることができる従来の組成物である。
【0245】
更に具体的には、上記加硫物は、200mm×4.5mmで厚みが3.5mmの、硬化前に互いに貼り付けた2枚のシートからなるゴムブロックである(その結果、得られるブロックの厚みは7mmである)。このブロックの製造の間、上記繊維コード(合計15本の切片)を未硬化状態の2枚の上記ゴムシートの間に等間隔で入れ、その後の引張試験のために十分な長さで、これらのシートのいずれかの側面上にコードの末端が突出できるようにする。次いで、上記コードを含む上記ブロックを適切な鋳型内に置き、その後減圧下で硬化させる。硬化温度及び硬化時間を意図する試験条件に調節し、当業者の裁量に委ねる。例えば、本ケースにおいては、上記ブロックを160℃で15分間硬化させる。
【0246】
硬化させた結果として、加硫させたブロックと15本のコード切片からなる上記試験標本を適切な引張試験装置の挟持部材の間に置き、各切片を所定の速度及び所定の温度(例えば、本ケースにおいては、100mm/分及び20℃)で個別に試験できるようにする。
【0247】
接着レベルは、上記補強材を上記試験標本から引き離すための「引き離し」力(F
max)を測定することにより評価する。任意で100に設定した対照試験標本の値よりも大きい場合、改善された結果、すなわち、上記対照試験標本よりも大きい引き離し力を示している。上記対照標本で実行された上記接着性試験の結果を表1にまとめる。
【0248】
本発明に係る上記接着剤組成物C-1〜C-3でサイズ処理した上記繊維コードは、特に高く、当業者にも予期できない、引き離し力F
maxを有している。というのは、組成物C-1及びC-3のF
maxは対照のT-1又はT-3よりも小さいが、当業者にとって有意かつ十分であり、組成物C-2のF
maxは対照のT-2又はT-4よりも大きいからである。
【0249】
濡れ性試験
濡れ性試験は、標準ASTM D-1417-10に従って実行する。各接着剤組成物に対して、メートルに対するミリニュートン(又はセンチメートルに対するダイン)として表される表面張力を測定する。上記表面張力の値が高くなるほど、上記接着剤組成物は、被覆することが意図されている材料上に適切に広がることができなくなる。逆に、上記表面張力の値が低くなるほど、上記接着剤組成物の濡れ性が良好になる。
【0250】
任意で100に設定した組成物T-2を用いて行われた試験の値よりも大きい場合、改善された結果、すなわち、上記対照組成物よりも優れた濡れ性を示している。上記接着剤組成物で実行された上記試験の結果を表1にまとめる。「NM」の表示は、測定が行われていないことを意味する。
【0251】
驚くべきことに、上記対照組成物T-2及びT-3と比較して上記組成物C-1及びC-3の濡れ性が著しく改善している。上記組成物C-2もまた、上記対照組成物T-3と比較して濡れ性が著しく改善している。
【0252】
可溶化試験
各接着剤組成物の溶解性もまた、以下の手順に従って試験した。まず、上記接着剤組成物を、棒型のマグネチックスターラーの従来のスターラーを用いて、所定の撹拌速度で撹拌した。この撹拌速度で、この従来のスターラーを用いて上記接着剤組成物の可溶化がない場合には、撹拌速度を徐々に上げた。もし、上記従来のスターラーの最大撹拌速度で、上記接着剤組成物の可溶化が観測されない場合には、上記接着剤組成物をウルトラタラックス型のスターラーを用いて所定の撹拌速度で撹拌した。
【0253】
ウルトラタラックス型のスターラーを用いる必要性及び、上記接着剤組成物の可溶化に必要な撹拌速度を、下記の表1に示す。撹拌速度が小さい場合は「+」で示している。撹拌速度が中程度の場合は「++」で示している。撹拌速度が大きい場合は「+++」で示している。
【0254】
組成物C-1〜C-3は容易に可溶化し、水中で溶解するのに穏やかな撹拌のみが必要だが、対照組成物T-3又はT-4(対照組成物T-1及びT-2では、ホルムアルデヒドが容易に水に溶解する)は、残渣の出現を防ぐために激しい撹拌が必要である。
【0255】
結論として、これらの種々の試験の結果は、本発明に係る上記接着剤組成物が先行技術の接着剤の使用に対する極めて有益な代替品を構成することを明確に実証している。
【0257】
1) ホルムアルデヒド(Caldic製;36%に希釈);
2) 1,4-ベンゼンジカルボキシアルデヒド(ABCR製;98%の純度);
3) 1,3-ベンゼンジメタノール(Aldrich製;99%の純度);
4) フルフルアルデヒド;
5) HMF;
6) レゾルシノール(Sumitomo製;99.5%の純度);
7) フロログルシノール(Alfa Aesar製;99%の純度);
8) 予備縮合された樹脂SRF 1524(Schenectady製;75%に希釈);
9) 水酸化ナトリウム(Aldrich製;30%に希釈);
10)NRラテックス(Bee tex製の「Trang Latex」;61質量%に希釈);
11)SBRラテックス(Jubilant製の「Encord-201」;41質量%に希釈);
12)ビニルピリジン/スチレン/ブタジエンラテックス(Eliokem製の「VP 106S」;41%に希釈);
13)アンモニア水(Aldrich製;21%に希釈)。