(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6903691
(24)【登録日】2021年6月25日
(45)【発行日】2021年7月14日
(54)【発明の名称】ガラス容器の容量を確定するための方法
(51)【国際特許分類】
G01B 15/00 20060101AFI20210701BHJP
G01N 23/046 20180101ALI20210701BHJP
【FI】
G01B15/00 H
G01N23/046
【請求項の数】13
【全頁数】15
(21)【出願番号】特願2018-564282(P2018-564282)
(86)(22)【出願日】2017年6月5日
(65)【公表番号】特表2019-517675(P2019-517675A)
(43)【公表日】2019年6月24日
(86)【国際出願番号】FR2017051414
(87)【国際公開番号】WO2017212156
(87)【国際公開日】20171214
【審査請求日】2020年5月18日
(31)【優先権主張番号】1655290
(32)【優先日】2016年6月9日
(33)【優先権主張国】FR
(73)【特許権者】
【識別番号】509083201
【氏名又は名称】ティアマ
(74)【代理人】
【識別番号】100107641
【弁理士】
【氏名又は名称】鎌田 耕一
(72)【発明者】
【氏名】コノー,ローラン
(72)【発明者】
【氏名】コル,オリヴィエ
【審査官】
國田 正久
(56)【参考文献】
【文献】
特開2011−247715(JP,A)
【文献】
米国特許出願公開第2008/0004833(US,A1)
【文献】
特開昭55−043492(JP,A)
【文献】
特開平07−027594(JP,A)
【文献】
特開2018−194360(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01B 15/00
G01N 23/046
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ガラス容器(1)の容量を求める方法であって、
‐X線コンピュータトモグラフィー装置(10)を用いて、容器の複数のX線画像(I)を異なる投影角度で取得する工程と、
‐前記X線画像をコンピュータ(17)に送信する工程と、
‐前記X線画像を前記コンピュータによって解析する工程と、を含み、
前記方法は、
‐前記X線画像(I)を空の容器について、前記容器の素材のみを前記X線画像中に出現させるように取得し、
‐前記容器の支持面を決定し、
‐前記X線画像の解析であって、
‐前記X線画像から前記容器のデジタルモデル(M)を構築し、
‐前記容器の前記デジタルモデルの内面(Sf)を決定し、
‐前記容器の前記デジタルモデル上に、充填液位平面(Pn)を前記支持面と平行に、かつ前記容器の前記デジタルモデルの上端から所定の距離(Hn)に配置し、
‐前記容器の前記デジタルモデルの前記内面(Sf)と前記充填液位平面とによって定められる前記デジタルモデルの内容積の測定、ここでこの測定値は前記容器の充填容量(Cn)である、を演算によって行う、
ための解析を行うことを特徴とする方法。
【請求項2】
前記容器の前記デジタルモデルの容積を求めるために、
a)所定の厚さの複数の切片(T)であって、各切片の各点が測定用の密度を持つ複数の切片(T)の完全集合を、前記容器の複数のX線画像を用いて決定する工程と、
b)前記切片(T)のそれぞれについて、前記容器の閉じた内面(Sf)を密度が空気の密度と等しい領域の境界として決定する工程と、
c)前記切片のそれぞれについて、前記切片の厚さに前記閉じた内面を乗じた積に相当する内容積を求める工程と、
a)前記容器の容積を、少なくとも1組の互いに結合した複数の切片の内容積の合計に少なくとも相当するものとして求める工程と、
を行うことを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
a)前記容器の前記X線画像の取得を、前記容器が該容器の底部で機械的な支持面上に立っている状態で、かつ、X線画像の逐次的な取得と取得の間に前記容器を前記機械的な支持面に直交する回転軸の周りに回転運動させながら、行うことと、
b)互いに結合した複数の切片であって、前記機械的な支持面に平行な共有面によってそれぞれが定められる互いに結合した複数の切片を決定することと、
c)前記機械的な支持面と前記充填液位平面との間にある前記切片の全ての内容積を合計することによって前記容器の内容積を求めることと、
を含むことを特徴とする、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記機械的な支持面と前記充填液位平面との間にある完全な前記切片の全ての合計を求め、
‐前記充填液位平面が切片の平面内にない場合は、上端の切片であって、該上端の切片と該上端の切片に隣接する完全な切片との間の前記共有面と前記充填液位平面(Pn)との間に位置する上端の切片の容積(Vis)を前記合計に加算することによって前記容器の内容積を求め、
‐前記支持面が切片の平面内にない場合は、下端の切片であって、該下端の切片と該下端の切片に隣接する完全な切片との間の前記共有面と前記支持面(Pp)との間に位置する下端の切片の内容積(Vif)、この場合は該下端の切片の内容積(Vif)は前記容器の前記底部の内面(Sf)によって定められる、を前記合計に加算することによって前記容器の内容積を求めること、
を含むことを特徴とする、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記容器の前記デジタルモデルの内容積を求めるために、
a)前記容器の三次元デジタルモデル(M)を構築する工程と、
b)前記容器の前記三次元デジタルモデルの内面(Sf)を前記容器の内面として決定する工程と、
c)前記容器の前記三次元デジタルモデルの前記内面を閉じる前記充填液位平面を配置する工程と、
d)前記三次元デジタルモデルの前記内面と前記充填液位平面とによって定められる容積であって、前記容器の前記充填容量(Cn)に相当する容積を演算によって測定する工程と、
を行うことを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
a)仮想空間内の水平であると仮定された仮想支持面(Pr)上に、前記容器の前記三次元デジタルモデル(M)であって該三次元デジタルモデル(M)の底部で立っている前記三次元デジタルモデル(M)を配置することと、
b)前記容器の前記三次元デジタルモデルの上端からある距離(Hn)で前記三次元デジタルモデルの前記内面を閉じるように、前記仮想支持面の平面に平行な前記充填液位平面(Pn)を配置することと、
を特徴とする、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
重力をシミュレートしたときに、所定の密度の液体で前記充填液位平面(Pn)まで仮想的に充填した場合の前記容器の前記三次元デジタルモデルが該三次元デジタルモデルの底部の3点で前記仮想支持面に接して静的平衡状態で直立するように、前記容器の前記三次元デジタルモデルを前記仮想支持面上に配置することを特徴とする、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
重力をシミュレートしたときに、前記容器の前記三次元デジタルモデルが該三次元デジタルモデルの底部の3点で前記仮想支持面に接して静的平衡状態で直立するように、前記容器の前記三次元デジタルモデルを前記仮想支持面上に配置することを特徴とする、請求項6に記載の方法。
【請求項9】
前記機械的な支持面の前記仮想空間における表現である仮想支持面上に、前記容器の前記三次元デジタルモデル(M)を該三次元デジタルモデルの底部で立つように配置することを特徴とする、請求項6に記載の方法。
【請求項10】
前記容器の前記三次元デジタルモデルの前記上端を、
a)前記三次元デジタルモデルにおける前記仮想支持面から最も遠い点、または、
b)前記三次元デジタルモデルの口天面の平面と前記モデルの対称軸との交点、ここで、前記対称軸は、前記仮想支持面に実質的に直交し、前記口天面の前記平面は、
i)前記口天面の3点を通る平面、
ii)前記口天面の平均平面、または
iii)前記口天面上に静的平衡状態で配置された平面、
として定められる、
として決定することを特徴とする、請求項6に記載の方法。
【請求項11】
前記容器の縁一杯の容量を測定するために、前記三次元デジタルモデルの前記上端からゼロ距離(Hn)に前記充填液位平面(Pn)を配置することを含むことを特徴とする、請求項6に記載の方法。
【請求項12】
前記容器のデジタルモデルの容量以外の少なくとも1つの寸法特徴を求めるために、X線画像から前記容器の前記デジタルモデルを構築することを含むことを特徴とする、請求項1〜11のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
前記容器の前記デジタルモデルの寸法特徴として、前記容器の壁部の厚さ、前記容器の胴部の外径、前記容器の首部の内径、前記容器の前記胴部または前記首部の垂直性、および/または前記容器の口天面の平坦性を求めることを含む、請求項12に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一般的には、ガラス容器の寸法を検査する技術分野に関し、本発明は、より詳細には、そのような容器の容量を測定することに関する。
【背景技術】
【0002】
容器の容量とは、容器を液体で縁まで充填した場合、または容器の口天部(bague)の面の下方の所定の高さまで充填した場合に、容器が収容する液体の最小体積のことである。規則上または管理上の要求から、容器の容量を正確に知る必要がある。容器の実際の容量は、容器に示されている容量、例えば容器に刻まれているか、または容器に貼り付けられたラベルに記載されている容量と一致しなければならない。
【0003】
容器を製造する方法におけるずれによって、容器の容量が変動する。ガラスの体積が一定の場合、鋳型の容積が摩耗の結果大きくなると、容器の内容積は大きくなる。鋳型の容積が一定の場合、ガラスの体積が大きくなると、容器の容量は小さくなる。同様に、形状(高さ、胴部の楕円度など)の変化も容器の容量に影響し得る。鋳型の容積特性を測定するために、特許FR2717574は、ガラス製造用鋳型のキャビティの寸法を計測するための方法および装置を教示している。
【0004】
例えば、容器の容量を測定するための公知の機器が、AGR International社によって販売されており(http://www.agrintl.com/products/view/10/Fill−Height−Tester)、この機器は計量の原理に依拠している。該機器は、計量用スラブを有しており、空の容器を該容器の底部で該スラブに立つようにして載せ、容器が水平な支持面上で重力に対して静的平衡状態となるようにする。その後、計量用スラブによって定められる基準平面に対して測定された公称の液位まで、密度が既知の液体で容器を充填する。公称の液位までの容器の充填は、該液位よりも高い位置まで容器を充填し、ピペットの開口部が基準平面に対して上記公称の液位に位置するようにピペットを容器の口天部の面にあて、このピペットを用いて余分な量の液体を除去することによって行われる。該機器は、既知の温度で計量することにより、容器内に実際に含まれている液体の量であって、容器の有効容量に相当する液体の量を測定する。
【0005】
上記機器には、測定を行うのに必要とされる時間に関して欠点がある。さらに、上記機器には、容器が空であるときの該容器の重量以外の他の寸法の測定を行えないという欠点がある。そのため、上記機器は、光学式または接触式の自動寸法検査装置と合わせて用いられるが、その場合でも容器の容量は測定できない。
【0006】
また、文献US2014/211980から、ボトルを部分的に満たしている液体の体積を、特にボトル内の液体の液面を検出することによって測定するためのX線による方法および装置が知られている。この方法によれば、ボトル内の液体の体積を測定することは可能であるが、この技術では、第一に、ボトルの実際の容量を測定できず、第二に、標準化された測定条件での測定ができない。
【0007】
特許出願US2010/303287には、ある物体が液体を収容しているかどうかを判定するよう構成されたX線装置が記載されている。この文献によれば、ボトル内に収容されている液体の体積を測定することは可能であるが、この文献に記載された技術には特許出願US2014/211980と同様の欠点がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、ガラス容器の容量を正確かつ迅速に求めるための新規の方法を提案することによって、従来技術の欠点を改善することを目的とする。
【0009】
本発明の別の目的は、容器に関する測定サイクルにかかる時間を抑えるために、容器の容量を求めることと容器の他の様々な寸法を測定することの双方に適した方法を提案することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するために、本発明の方法は、
a)X線コンピュータトモグラフィー装置を用いて、容器の複数のX線画像を異なる投影角度で取得する工程と、
b)前記X線画像をコンピュータに送信する工程と、
c)前記X線画像を前記コンピュータによって解析する工程と、を含む。
【0011】
本発明によれば、前記方法は、
前記X線画像を空の容器について、前記容器の素材のみを前記X線画像中に出現させるように取得することと、
前記容器の支持面を決定することと、
前記X線画像の解析であって、
i)前記X線画像から前記容器のデジタルモデルを構築し、
ii)前記容器の前記デジタルモデルの内面を決定し、
iii)前記容器の前記デジタルモデル上に、充填液位平面を前記支持面と平行に、かつ前記容器の前記デジタルモデルの上端から所定の距離に配置し、
iv)前記容器の前記デジタルモデルの前記内面と前記充填液位平面とによって定められる前記デジタルモデルの内容積の測定、ここでこの測定値は前記容器の充填容量である、を演算によって行う、
ための解析を行うことと、を含む。
である。
【0012】
本発明の方法によれば、容器を液体で充填する必要なく、容器の容量の測定に関する標準化された条件を満たすことができる。
【0013】
さらに、本発明の装置は、以下の追加的な特徴のうち、1つまたは複数を組み合わせて有し得る。
【0014】
前記容器の前記デジタルモデルの容積を求めるために、
a)所定の厚さの複数の切片であって、各切片の各点が測定用の密度(measure de densite)を持つ複数の切片の完全集合を、前記容器の複数のX線画像を用いて決定する工程と、
b)前記切片のそれぞれについて、前記容器の閉じた内周面を密度が空気の密度と等しい領域の境界として決定する工程と、
c)前記切片のそれぞれについて、前記切片の厚さに前記閉じた周面の面積を乗じた積に相当する内容積を求める工程と、
d)前記容器の容積を、少なくとも1組の互いに結合した複数の切片の内容積の合計に少なくとも相当するものとして求める工程と、
を行う。
【0015】
この変形実施形態によれば、本方法は、
a)前記容器の前記X線画像の取得を、前記容器が該容器の底部で機械的な支持面上に立っている状態で、かつ、X線画像の逐次的な取得と取得の間に前記容器を前記機械的な支持面に直交する回転軸の周りに回転運動させながら、行うことと、
b)互いに結合した複数の切片であって、前記機械的な支持面に平行な共有面によってそれぞれが定められる互いに結合した複数の切片を決定することと、
c)前記機械的な支持面と前記充填液位平面との間にある前記切片の全ての内容積を合計することによって前記容器の内容積を求めることと、
を含む。
【0016】
有利には、本方法は、
前記機械的な支持面と前記充填液位平面との間にある完全な前記切片の全ての合計を求め、
‐前記充填液位平面が切片の平面内にない場合は、上端の切片であって、該上端の切片と該上端の切片に隣接する完全な切片との間の前記共有面と前記充填液位平面との間に位置する上端の切片の容積を前記合計に加算することによって前記容器の内容積を求め、
‐前記機械的な支持面が切片の平面内にない場合は、下端の切片であって、該下端の切片と該下端の切片に隣接する完全な切片との間の前記共有面と前記機械的な支持面との間に位置する下端の切片の内容積、この場合は該下端の切片の内容積は前記容器の前記底部の内面によって定められる、を前記合計に加算することによって前記容器の内容積を求めること、
を含む。
【0017】
別の変形実施形態によれば、
a)前記容器の三次元デジタルモデルを構築し、
b)前記容器の前記三次元デジタルモデルの内面を前記容器の内面として決定し、
c)前記容器の前記三次元デジタルモデルの前記内面を閉じる前記充填液位平面を配置し、
d)前記三次元デジタルモデルの前記内面と前記充填液位平面とによって定められる容積であって、前記容器の前記充填容量に相当する容積を演算によって測定することによって、
前記容器の前記デジタルモデルの内容積を求める。
【0018】
この変形実施形態では、
a)仮想空間内の水平であると仮定された仮想支持面上に、前記容器の前記三次元デジタルモデルであって前記三次元デジタルモデルの底部で立っている前記三次元デジタルモデルを配置する工程と、
b)前記容器の前記三次元デジタルモデルの上端からある距離で前記三次元デジタルモデルの前記内面を閉じるように、前記仮想支持面の平面に平行な前記充填液位平面を配置する工程と、
を行う。
【0019】
第1の実施形態では、本方法は、重力をシミュレートしたときに、所定の密度の液体で前記充填液位平面まで仮想的に充填した場合の前記容器の前記三次元デジタルモデルが該三次元デジタルモデルの底部の3点で前記仮想支持面に接して静的平衡状態で直立するように、前記容器の前記三次元デジタルモデルを前記仮想支持面上に配置することを含む。
【0020】
別の実施形態では、本方法は、重力をシミュレートしたときに、前記容器の前記三次元デジタルモデルが該三次元デジタルモデルの底部の3点で前記仮想支持面に接して静的平衡状態で直立するように、前記容器の前記三次元デジタルモデルを前記仮想支持面上に配置することを含む。
【0021】
別の実施形態では、前記X線画像を取得する間、前記容器は機械的な支持面上に立っているものと想定し、前記容器の前記三次元デジタルモデルは仮想支持面上に立つが、この仮想支持面は、既知の機械的な支持面の単なる(仮想的な)表現である。換言すれば、この簡略化された実施形態では、前記仮想支持面が前記機械的な支持面の仮想空間における表現である。すなわち、重力をシミュレートする工程を行う必要がない。
【0022】
有利には、前記容器の前記三次元デジタルモデルの前記上端を、
a)前記三次元デジタルモデルにおける前記仮想支持面から最も遠い点、または、
b)前記三次元デジタルモデルの口天面(surface de bague)の平面と前記モデルの対称軸との交点、ここで、前記対称軸は、前記仮想支持面に実質的に直交し、前記口天面の前記平面は、
i)前記口天面の3点を通る平面、
ii)前記口天面の平均平面(plan moyen)、または
iii)前記口天面上に静的平衡状態で配置された平面、
として定められる、
として決定する。
【0023】
容器の公称の容量を測定する場合には前記充填液位平面を前記三次元デジタルモデルの上端から所定の距離に配置することから、容器の縁一杯の容量を測定する場合には、前記充填液位平面を前記三次元デジタルモデルの上端からゼロ距離に配置する。
【0024】
本発明の別の有利な特徴によれば、本方法は、前記容器のデジタルモデルの容量以外の少なくとも1つの寸法特徴を求めるために、X線画像から前記容器の前記デジタルモデルを構築することを含む。
【0025】
例えば、本方法は、前記容器の前記デジタルモデルの寸法特徴として、前記容器の壁部の厚さ、前記容器の胴部の外径、前記容器の首部の内径、前記容器の前記胴部または前記首部の垂直性、および/または前記容器の口天面の平坦性を求めることを含む。
【0026】
他の様々な特徴は、本発明の実施形態を非限定的な例として示す添付の図面を参照してなされる以下の説明から明らかになる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【
図1】
図1は、測定対象の容器の容量を示す図である。
【
図2A】
図2Aは、本発明の測定方法を実施するためのコンピュータトモグラフィー装置であって、検査対象である容器のサイズよりも大きな寸法のX線センサを備える装置を示す概略図である。
【
図2B】
図2Bは、本発明の測定方法を実施するためのコンピュータトモグラフィー装置であって、検査対象である容器のサイズよりも小さな寸法のX線センサを備える装置を示す概略図である。
【
図3】
図3は、トモグラフィー装置によって得られる容器の三次元デジタルモデルの例を示す図である。
【
図4A】
図4Aは、切片を合計することによって得られる容器のデジタルモデルの例を示す図である。
【
図4B】
図4Bは、容器の下端の切片の内容積を該端部切片の位置に応じてどのように考慮するかを示す図である。
【
図4C】
図4Cは、容器の下端の切片の内容積を該端部切片の位置に応じてどのように考慮するかを示す図である。
【
図4D】
図4Dは、容器のパント(piqure)を通る容器の切片の容積をどのように考慮するかを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
本発明は、ガラスでできたボトル、ジャー、またはフラスコなどのガラス容器1の容量を求める方法を提供する。
図1に見られるように、容器1は、中空の物体であって、従来通り、底部2を有し、該底部から胴部3が立ち上がり、該胴部は首部4まで延び、該首部の末端に口天部5があり、該口天部により、容器を充填したり空にしたりすることを可能にする開口または口が定められている。容器1の容量とは、該容器がその底部で立っており、機械的な支持面Ppと称される水平面上で重力に対して静的平衡状態にあるときに、該容器がその壁部の内面Sfによって収容する液体の体積のことである。
【0029】
容器1の縁一杯の容量は、容器の口天部5を含む「口天面」の平面Pbまで容器を満たしている液体の体積に相当する。容器1の公称の容量Cnは、液体の充填のための液位平面Pnまで容器を満たしている液体の体積に相当し、該液位平面Pnは、口天面の平面Pbから下方に向かって所定の距離Hnに位置している。
【0030】
そこで、本発明の方法は、コンピュータトモグラフィー(CT)として知られているコンピュータによる断層撮影技術を用いて容器1の容量を求めることを目的とする。このコンピュータトモグラフィーによる非破壊的な検査の技術は、論文“Computed tomography for dimensional metrology”(J.P. Kruth et al., CIRP Annals − Manufacturing Technology 60 (2011) pp.821−842.)に詳述されている。
【0031】
本発明によれば、容器1が空の状態、すなわち、容器1が液体ではなく周囲空気で満たされている状態で、容器1の容量を求める。
【0032】
図2Aおよび
図2Bにおいてより明確に見られるように、コンピュータトモグラフィー装置10は、従来通り、少なくとも1つの発生源11を収容しているX線筐体を備え、該発生源11はその出射焦点から発せられるX線を発生させる発生源であり、装置10は該X線筐体とともに、X線を感知可能な少なくとも1つの線形センサまたはマトリックスセンサ12を備えている。装置1はさらに、容器1のための機械的な支持面Ppとして機能する支持部13を有し、該支持部13は発生源11とセンサ12の間に配置されるように構成されており、そのような状態で容器1にX線が照射される。空の容器1の素材を通過するX線は、X線が通過する素材の原子量および厚みに応じて、吸収および散乱によって減衰する。容器が空であるため、X線を減衰させるのは容器の素材のみである。容器に関して筒体の反対側に位置するX線感知センサ12が減衰したX線を受け、素材によって生じた減衰の画像、すなわち容器1の壁部のX線画像Iを生成する。
【0033】
装置10はさらに、容器1と、発生源11およびセンサ12によって構成される対とを相対運動させるための運動システム15を有する。従来通り、このシステム15は、固定されたままの発生源‐センサ対11,12に対して、容器1を既知の量だけ相対的に運動させる。有利には、運動システム15は、容器を固定された回転軸の周りに自転させるように機能する。該回転軸は、必ずしも限定されないが、容器の鉛直対称軸に一致することが好ましい。
【0034】
装置10はさらに、装置を運転させてX線画像を取得できるように発生源11、センサ12、および運動システム15を制御するための制御ユニット16を有する。そこで、制御ユニット16は、容器の投影画像が複数の異なる角度で撮影されるように、公知の仕方で容器1を発生源11およびセンサ12に対して相対的に運動させる。制御ユニット16は、この運動中に複数のX線画像が取得されるようにする。そのため、容器1は、逐次的なX線画像の取得と取得の間に、X線画像がそれぞれ互いに異なる各方向における容器の投影画像となるように動かされる。空の容器の取得されたX線画像は、解析および処理のためのコンピュータ17へ送信される。
【0035】
図2Aに示される例では、センサ12が、容器1のサイズを超える高さの視野(champ)を有していることに留意されたい。運動システム15は、容器を典型的には回転板上で自転させるように制御され、ユニット16は、360°回転の間に容器の複数の異なる投影画像を取得するように機能する。
【0036】
図2Bに示される実施形態では、センサ12は、容器1のサイズを下回る高さの視野を有する。この例では、運動システム15は、容器1の全体を走査するために、容器1と発生源11および/またはセンサ12とを鉛直方向にも相対運動させるよう構成されている。
【0037】
例えば、運動システム15は、容器1を自転させるとともに、固定されたままの発生源‐センサ対11,12に対して鉛直方向に相対的に並進運動させるように機能する。センサ12が横型の視野を有する線形センサである場合、ユニット16は、容器の上端がセンサ12の視野内に位置するよう運動システムに容器を配置させる。その後、ユニット16は、容器を1回自転させ、その自転の間にセンサによって容器の投影画像を取得する。次いで、運動システム15は、容器を自転させて容器の投影画像が取得されるようにする前に、容器を下方へ1段階移動させる。容器の下端がセンサ12の視野内に収まるまで、この運動工程と取得工程とが繰り返される。
【0038】
センサ12が横型の視野を有する線形センサである場合、ユニット16は、容器の軸周りの回転運動を該軸に沿った並進運動と連続的に組み合わせて容器をらせん状に運動させるように運動システムを制御して、それにより、容器のX線画像または投影画像を多数取得できるようにしてもよい。
【0039】
上述したような公知のコンピュータトモグラフィー装置は、RX Solutions社により、「EasyTom」という商品名で販売されている。
【0040】
このようなコンピュータトモグラフィー装置10は、ガラス容器1の容量を求める方法を実施する機能を果たす。
【0041】
本方法は、様々な工程を含み、そのうち第1の工程は、X線コンピュータトモグラフィー装置10を用いて、容器1の複数のX線画像Iを異なる投影角度で取得することである。この工程は、容器1が空の状態で行われる。次の工程は、X線画像をコンピュータ17に送信することである。その後、容器1の充填容量を求めるためにコンピュータがX線画像を解析する。
【0042】
上記解析は、
‐空の容器1のX線画像から容器1のデジタルモデルを構築し、
‐容器のデジタルモデルの内面Sfを決定し、
‐容器のデジタルモデル内に、充填液位平面Pnを支持面と平行に、かつ容器のデジタルモデルの上端から距離Hnに配置し、
‐内面Sfと充填液位平面とによって定められる容器のデジタルモデルの内容積を演算によって測定するために行われる。この測定値が容器の充填容量Cnに相当することが理解される。
【0043】
容器1が空の状態でX線画像を撮影するため、該X線画像Iが示すのは空気に対してコントラストされた容器の素材のみであり、空気による減衰は容器を構成しているガラスによる減衰と比べて無視できる程度である。そのため、容器のデジタルモデルMにおいて容器の内面Sfを容易かつ正確に決定できる。したがって、空の容器の決定された内面Sfに基づいて、容積が高い精度で求められる。
【0044】
以下の説明は、デジタルモデルMを構築するための2つの変形実施形態に関する。
図3に示される有利な第1の変形実施形態では、内面Sfを決定するために構築されるデジタルモデルMが三次元モデルであり、充填液位平面Pnが支持面に平行で、該支持面が仮想支持面または基準平面Prである。この仮想支持面は、X線画像を取得する間容器が立っている機械的な支持面の(仮想空間における)表現に相当するものであり得ることに留意されたい。
図4A〜
図4Dに示される第2の変形実施形態では、内面Sfを決定するためのデジタルモデルMが、容器の複数の切片を合計することによって構築され、充填液位平面Pnが、容器の機械的な支持面に相当する支持面に平行である。
【0045】
図3に示される第1の変形実施形態では、本発明の方法は、容器の充填容量を求めるために、X線画像から容器の三次元デジタルモデルを構築することを含む。
【0046】
なお、空の容器1のX線画像を解析することで、容器の三次元デジタルモデルを「ボクセル」の集合(複数の単位体積であって、単位体積それぞれによるX線吸収によって値が定まる複数の単位体積)として再構築でき、それにより、密度分布に極めて類似した体積分布の関数が得られることに留意されたい。
【0047】
三次元デジタルモデルの作成は、数学的、グラフィック的、およびデータ構造的見地から三次元物体をコンピュータメモリ内で表現し操作する方法である。三次元デジタルモデルは、寸法(長さ、面積、厚さ、体積)を測定するために、異なる密度の複数の領域にセグメント化されて解析される。セグメンテーション後、三次元デジタルモデルは体積モデルのままであってもよく、表面モデル、すなわち均一な体積同士の間に存在する表面がモデル化されたモデルに変換されてもよい。
【0048】
表面モデルの場合、物体が包絡線と、内側/外側の概念の把握を可能にする境界面と、体積を定める閉じた面とによって画定され、該体積には、例えば、素材の密度が既知である場合には重量を割り当てることができる。表面は様々な仕方でモデル化でき、例えば、多角形によるモデル化、曲線によるモデル化、パラメトリックな面(柱体、錐体、球体、スプラインなど)によるモデル化、または表面を分割することによるモデル化がある。複数の多角形からなるメッシュ、例えば複数の三角形からなるメッシュを用いると、物体の表面が、それぞれの縁部で互いに結合している複数の平面の集合として表現される。
【0049】
体積モデル化では、「ボクセル」と称される互いに同様な複数の個別の体積の集合に基づいて表現が行われる。
【0050】
長さの測定に関しては様々な手法が存在する。
【0051】
体積に基づく第1の方法の場合、素材−空気間の境界ボクセルを決定するために、1本の線または複数の線の束に沿って体積モデルを走査することが可能である。
【0052】
表面に基づく第2の方法の場合、ある線と表面モデルの表面との交点を端部とするセグメントを算出することが可能である。トポロジー的な問題は、アルゴリズムによって十分に解決される。点は、一意に定まる(Le point est unique)。さらに、体積モデルを表面モデルに変換し、それから第2の方法を適用する複合的な方法もある。
【0053】
本方法は、容器の三次元デジタルモデルMをX線画像から構築した後、容器の三次元デジタルモデルの内面Sfを容器の内面に相当するものとして決定することを含む。
【0054】
本方法は、次いで、容器の三次元デジタルモデルの内面を閉じるように充填液位平面Pnを配置することを含む。これにより、容器の充填容積を囲む、または完全に内包する閉じた面が定められる。
【0055】
本方法は、その後、上記閉じた面によって定められる内容積、すなわち、三次元デジタルモデルの内面と充填液位平面とによって定められる内容積を演算によって測定することを含む。具体的には、上記閉じた面によって定められる内容積は、容器の充填液位までの充填内容積に相当する。
【0056】
実施形態の有利な特徴によれば、本方法は、容器の三次元デジタルモデルMであって該三次元デジタルモデルMの底部で立った三次元デジタルモデルMを、仮想空間内の水平であると仮定された基準平面Prに配置することを含む。この基準平面は機械的な支持面における容器の起立をシミュレートするものであるため、この実施形態に関する以下の説明では、該基準平面Prを「仮想支持面」ともいう。
【0057】
別の実施形態では、上記仮想支持面が、仮想空間における機械的な支持面の表現である。
【0058】
その後、充填液位平面Pnを、仮想支持面または基準平面Prに平行に、かつ容器の三次元デジタルモデルの上端から距離Hnに配置する。
【0059】
有利な変形実施形態によれば、本方法は、重力をシミュレートしたときに、容器の三次元モデルMが該三次元モデルMの底部の3点で仮想支持面または基準平面Prに接して静的平衡状態で直立するように、容器の三次元モデルMを仮想支持面または基準平面Pr上に配置することを含む。この技術は、容器を構成している素材の密度を考慮している。
【0060】
別の有利な変形実施形態によれば、本方法は、重力をシミュレートしたときに、所定の密度の液体で充填液位平面まで仮想的に充填した容器の三次元デジタルモデルMが該三次元デジタルモデルMの底部の3点で仮想支持面または基準平面Prに接して静的平衡状態で直立するように、容器の三次元デジタルモデルMを仮想支持面または基準平面Pr上に配置することを含む。このシミュレーションの方法によれば、充填液位平面を定める支持面上に立っている液体が充填された容器の実際の状態に可能な限り近づくことができる。
【0061】
充填液位平面Pnを容器の三次元デジタルモデルMの上端から距離Hnに配置するとき、容器の三次元デジタルモデルMの上端は、三次元デジタルモデルにおける仮想支持面または基準平面Prから最も遠い点として決定されるか、または、三次元デジタルモデルの口天面の平面Pbが該モデルの対称軸と交わる点として決定される。後者の場合、該対称軸は、仮想支持面または基準平面Prに実質的に直交し、口天面の平面Pbは、口天面の3点を通る平面、または口天面の平均平面、または口天面に静的平衡状態で配置された平面として定められる。当然ながら、本発明の方法は、対称軸を有しない容器にも適用できる。
【0062】
上記説明から、容器の縁一杯の容量を測定する場合、本方法は、三次元デジタルモデルの上端からゼロ距離Hnに充填液位平面Pnを配置することを含むことがわかる。
【0063】
本方法の一変形例では、容器の縁一杯の容量を測定する場合、本方法は、充填液位平面Pnが口天面の平面Pbに一致すると想定することを含む。
【0064】
同様に、容器の公称の容量Cnを測定する場合、本方法は、三次元デジタルモデルの上端から所定の距離Hnに充填液位平面Pnを配置することを含む。
【0065】
図4Aに示される第2の変形実施形態では、本発明の方法は、容器のデジタルモデルの容積を求めるために、空の容器のX線画像から容器のデジタルモデルMを構築することを目的とする。
【0066】
容器のデジタルモデルの容積を決定するために、本方法は、容器の複数のX線画像を用いて、所定の厚さの複数の切片Tiの完全集合を決定することを含み、各切片の各点が測定用の密度を持つと想定する。本方法は、その後、切片のそれぞれにおける容器の内面Sfを、密度が空気の密度(ほぼゼロ)に等しい領域の境界として決定することを含む。本方法は、切片Tiのそれぞれについて内容積Viを求めることを含み、該内容積Viは、切片の厚さに容器の閉じた周面の面積を乗じた積に相当する。最後に、本方法は、1組の互いに結合した複数の切片を考慮し、容器の容積を求めるために、これら互いに結合した複数の切片の体積を合計することを含む。
【0067】
実施形態の有利な特徴によれば、本方法は、容器のX線画像の取得を、容器がその底部で機械的な支持面Pp上に立っている状態で、かつ、X線画像の逐次的な取得と取得の間に容器を機械的な支持面に直交する回転軸の周りに回転運動させながら、行うことを含む。本方法は、互いに結合した複数の切片であって、機械的な支持面Ppに平行な共有面によってそれぞれが定められる互いに結合した複数の切片を決定することを含む。機械的な支持面と充填液位平面との間にある切片の全ての体積を合計することによって容器の容積を求める。
【0068】
有利には、本方法は、機械的な支持面と充填液位平面との間にある完全な切片の全ての合計を求め、充填液位平面Pnの位置にある端部切片と機械的な支持面Ppの位置にある端部切片の内容積を該合計に加算することによって、内容積を求めることを含む。
【0069】
そこで、充填液位平面Pnが切片の平面に一致しない場合、容器の内容積に上端の切片の内容積Visが加算される。上端の切片は、該切片と該切片に隣接する完全な切片との間の共有面と充填液位平面Pnとの間に位置する切片である。
【0070】
同じく、
図4Bおよび
図4Cに示されるように、機械的な支持面Ppが切片の平面内にない場合、容器の容積に下端の切片の内容積Vifが加算される。下端の切片は、該切片と該切片に隣接する完全な切片との間の共有面Ptと機械的な支持面Ppとの間に位置する切片である。このような場合、下端の切片の内容積Vifは、容器の底部の内面Sfによって定められる。
【0071】
図4Dは、ボトルの底部がパントされている(pique)場合、すなわち、ボトルの底部がその中央でいわゆる「パント」(piqure)によって大きく曲がっている場合を示している。この場合、パントの位置にある切片の内容積Viがパントを考慮に入れて求められるため、ボトルの底部の内面Sfによって該切片の内容積Viが定められると考えられる。
【0072】
本方法によって得られた充填容積の測定値は、既知の粘度の充填液体が有し得るメニスカスの形状に対応する容積を加算または減算することによって修正することもできる。このために、容器の内面の形状を考慮に入れてもよい。
【0073】
本発明の方法には、同一のX線コンピュータトモグラフィー装置10によって行われる他の寸法の測定と組み合わせられるという利点がある。本方法は、任意の形状の容器の容量を測定することが可能であり、ガラスの色に影響されにくい。
【0074】
本方法は、ガラス製造においてボトルの作製を検査するために使用されることに留意されたい。そのため、容器を充填することに実際的な利点はない。むしろ、空の容器を測定することで、ガラスによる減衰の空気による減衰(実質的にゼロ)との差が大きいためにX線画像には最終的にガラスによる減衰のみが記録され、それにより容器の内面をより正確に決定できる。
【0075】
そこで、容器のデジタルモデルの容量以外の少なくとも1つの寸法特徴を求めるために、空の容器のデジタルモデルをX線画像から構築する。本方法は、容器のデジタルモデルの寸法特徴として、容器の壁部の厚さ、容器の胴部の外径、容器の首部の内径、容器の胴部または容器の首部の垂直性、および/または容器の口天面の平坦性を決定することを含む。これにより、本発明の方法によれば、容器の容量を得るとともに、容器のその他の寸法特徴を得ることができる。
【0076】
本発明は、上述し図示した例に限定されず、その範囲を逸脱しない限り様々な変更を施し得る。