(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
リチウム遷移金属酸化物粒子のAl濃度は、0.99<(0.35rのAl濃度)/(中心部のAl濃度)<1.01である、請求項1、2のいずれかに記載の非水電解質二次電池用正極活物質。
【発明を実施するための形態】
【0015】
正極活物質としてのNi含有リチウム遷移金属酸化物粒子をAl等によりコーティングすることで結晶の熱的安定性を向上させることが可能であるが、他方で、粒子内部までAlが高い濃度で固溶してしまうと、Ni含有リチウム遷移金属酸化物特有の高容量特性を減殺してしまう。
【0016】
従来においても、表面近傍のみにLiAlO
2由来のAlを固溶させるとの技術思想はあるものの、未だ熱的安定性の要求と高容量の要求を高いレベルで両立させるには至っていない。
【0017】
本発明者等は、Alリッチ層をNi含有リチウム遷移金属酸化物粒子の表面近傍、具体的には数百nmのオーダではなく数十nmのオーダ、具体的には、例えば300nm以下というオーダで形成させる種々の技術を鋭意検討した結果、遷移金属酸化物をLi源とともにAl化合物を加えて一定の温度範囲で焼成することで、Li源とAl化合物とが溶融し、遷移金属酸化物粒子内にLiとAlが十分に拡散させつつもその表層部に極薄のAlリッチ層を形成し得ることを見出した。
【0018】
遷移金属酸化物粒子内部にほぼ一定の濃度でAlを拡散させて固溶させることで結晶構造が安定化する。また、表層部に極薄(例えば300nm以下)のAlリッチ層を形成することでリチウム遷移金属酸化物と電解液との不可逆な反応が抑制され、熱的安定性を向上させ得る。そして、表層に極薄のAlリッチ層を形成することで、充放電に寄与しない領域を表層のごく一部のみに限定し、充放電容量の低下を抑制し得る。
【0019】
以下、本開示の一態様である非水電解質二次電池用正極活物質の構成について詳述する。
【0020】
本開示の一態様である非水電解質二次電池用正極活物質は、Ni含有リチウム遷移金属酸化物を含む。
【0021】
Ni含有リチウム遷移金属酸化物中のNiの割合aは、例えば、電池の高容量化、結晶構造の安定性等の点で、80mol%≦a<100mol%の範囲であることが好ましく、85mol%≦a<100mol%の範囲であることがより好ましい。
【0022】
Ni含有リチウム遷移金属酸化物は、例えば層状構造であり、空間群R−3mに属する層状構造、空間群C2/mに属する層状構造等が挙げられる。これらの中では、高容量化、結晶構造の安定性等の点で、空間群R−3mに属する層状構造であることが好ましい。
【0023】
Ni含有リチウム遷移金属酸化物は、上記所定量のNi、あるいはAlを含むリチウム遷移金属酸化物であれば特に制限されるものではないが、他の金属元素を含んでいても良く、例えば、以下の組成式で表されるNi含有リチウム遷移金属酸化物であることが好ましい。
【0024】
Li
xNi
aCo
bAl
cM
dO
2 (1)
式中、x、a、b、c、及びdはそれぞれ、0.95<x<1.05、0.80≦a<1、0<b<0.15、0≦d<0.15、0.03<cを満たすことが好ましい。また、式中Mは、Ni、Co、Al以外の金属元素であり、例えば、B、Si、Mg、Ge、Sn、Mg、Cr、Mn、Ti、Nb、Mo及びFeから選ばれる1種以上の金属元素等が挙げられる。また、これらの金属元素以外の金属元素でもよい。
【0025】
組成式(1)のxは、Ni、Co、M、及びAlの総量に対するリチウム(Li)の含有量(モル比)を示す。組成式(1)におけるリチウムの含有量xは、例えば、非水電解質二次電池の充放電容量を向上することができる点で、0.95<x<1.05の範囲であることが好ましく、0.98<x≦1の範囲であることがより好ましい。
【0026】
組成式(1)のaは、Ni、Co、M、及びAlの総量に対するニッケル(Ni)の含有量(モル比)を示す。組成式(1)におけるニッケルの含有量aは、例えば、非水電解質二次電池の充放電容量を向上させることができる点で、0.80≦a<1の範囲であることが好ましく、0.85<a<1であることがより好ましい。
【0027】
組成式(1)のbは、Ni、Co、M、及びAlの総量に対するコバルト(Co)の含有量(モル比)を示す。組成式(1)におけるコバルトの含有量bは、例えば、非水電解質二次電池の充放電サイクル特性及び充放電容量を向上させることができる点で、0<b<0.15の範囲であることが好ましく、0.03<b<0.12の範囲であることがより好ましい。
【0028】
組成式(1)のdは、Ni、Co、M、及びAlの総量に対するMの含有量(モル比)を示す。組成式(1)におけるMの含有量dは、例えば、非水電解質二次電池の充放電サイクル特性及び充放電容量を向上させることができる点で、0<d<0.15の範囲であることが好ましく、0.005<d<0.1の範囲であることがより好ましい。
【0029】
組成式(1)のcは、Ni、Co、M、及びAlの総量に対するアルミニウム(Al)の含有量(モル比)を示す。組成式(1)におけるアルミニウムの含有量cは、非水電解質二次電池の充放電サイクル及び熱安定性を改善することができる点で、0.03<cの範囲であることが好ましく、0.045<c≦0.1の範囲であることがより好ましい。なお、Alの含有量が多過ぎると、充放電容量が低下する場合がある。
【0030】
Ni含有リチウム遷移金属酸化物を構成する元素の含有量は、誘導結合プラズマ発光分光分析装置(ICP−AES)や電子線マイクロアナライザー(EPMA)、エネルギ分散型X線分析装置(EDX)等により測定することができる。
【0031】
Ni含有リチウム遷移金属酸化物の含有量は、例えば、非水電解質二次電池の充放電容量を向上させることができる点で、非水電解質二次電池用正極活物質の総質量に対して90質量%以上であることが好ましく、99質量%以上であることが好ましい。
【0032】
また、本実施形態の非水電解質二次電池用正極活物質は、Ni含有リチウム遷移金属酸化物以外に、その他のリチウム遷移金属酸化物を含んでいても良い。その他のリチウム遷移金属酸化物としては、例えば、Ni含有率が0モル%〜80モル%未満のリチウム遷移金属酸化物、当該リチウム遷移金属酸化物にBやSiやその他の金属元素等が含まれたリチウム遷移金属酸化物等が挙げられる。
【0033】
Ni含有リチウム遷移金属酸化物の合成方法としては、遷移金属酸化物とLi源とAl化合物を加えて500℃〜800℃の温度で焼成する。遷移金属酸化物は、例えば(NiCoAlO
2)(NCA)である。Li源は、例えば炭酸リチウムや水酸化リチウムである。Al化合物は、例えばAl(OH)
3である。これらを各組成に応じて調整混合し、酸素雰囲気で500℃〜800℃、例えば700℃程度で焼成する。あるいは、その表面に炭酸リチウムあるいは水酸化リチウムを担持したNCAとAl化合物を混合させ、その後に、500℃〜800℃で熱処理することで、外添したAlをNCA内部にほぼ均一に固溶させるということができる。熱処理の温度及び時間によってAlの固溶の程度をコントロールし得る。本発明者等は、500℃〜800℃の温度範囲で、かつ5〜9時間の時間範囲で加熱することにより、AlをNCA内部に十分に拡散させつつ、表層に極薄のAlリッチ層、具体的にはLiAlO
2とLiNiCoAlO
2との混合体を形成し得ることを確認している。
【0034】
Ni含有リチウム遷移金属酸化物粒子の表層に極薄のAlリッチ層が形成されることは、硬X線光電子分光法(HAXPES)により分析することができる。HAXPESの基本的な原理は、一般的なXPSと同様に試料表面に励起光を照射し、放出される光電子の運動エネルギを測定するものであるが、XPS装置で最も多く使用されている光子エネルギが1486.6eVであるのに対し、硬X線光電子分光法で使用される励起源の光子エネルギは5〜8KeVと大幅に高いという特徴があり、このためHAXPESでは、より深い領域の情報を得ることができる。
【0035】
また、Ni含有リチウム遷移金属酸化物粒子の平均粒子径rは、レーザ回折式粒度分析装置で計測することができる。
【0036】
Alリッチ層は、Ni含有リチウム遷移金属酸化物粒子の表層に極薄で存在することが好ましく、例えば300nm以下であることが好ましく、さらに好ましくは100nm以下である。
【0037】
また、それ以外の粒子内部はAl濃度がほぼ一定で固溶していることが好ましい。具体的には、粒子の中心〜0.35rの範囲までAl濃度がほぼ一定であることが好ましく、より具体的には、0.99<(0.35rのAl濃度)/(中心部のAl濃度)<1.01であることが好ましい。
【0038】
また、粒子の中心〜0.35rの範囲におけるAl濃度は、3モル%以上であることが好ましい。Al濃度が少なすぎると結晶構造の安定化及び熱的安定性を向上させる効果が十分でなく、これより過剰であると充放電容量が低下し得るからである。
【0039】
以下に、Ni含有リチウム遷移金属酸化物を含む非水電解質二次電池用正極活物質を適用した非水電解質二次電池の一例について説明する。
【0040】
非水電解質二次電池は、例えば、正極及び負極がセパレータを介して巻回又は積層されてなる電極体と、非水電解質と、電極体及び非水電解質が収容される外装体と、を備える。非水電解質二次電池の形態としては、特に限定されず、円筒型、角型、コイン型、ボタン型、ラミネート型などが例示できる。
【0041】
[正極]
正極は、例えば金属箔等の正極集電体と、正極集電体上に形成された正極活物質層とで構成される。正極集電体には、アルミニウムなどの正極の電位範囲で安定な金属の箔、当該金属を表層に配置したフィルム等を用いることができる。
【0042】
正極活物質層は、例えば、Ni含有リチウム遷移金属酸化物を含む非水電解質二次電池用正極活物質、導電材及び結着剤を含む。
【0043】
導電材としては、例えば、カーボンブラック、アセチレンブラック、ケッチェンブラック、黒鉛等の炭素材料等が用いられる。導電材の含有率は、例えば、正極活物質層の導電性を向上させる点で、正極活物質層の総質量に対して0.1〜30質量%が好ましく、0.1〜20質量%がより好ましく、0.1〜10質量%が特に好ましい。
【0044】
結着剤としては、例えばポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、ポリフッ化ビニリデン、ポリビニルアセテート、ポリメタクリレート、ポリアクリレート、ポリアクリロニトリル、ポリビニルアルコール等が用いられる。結着剤は、カルボキシメチルセルロース(CMC)、ポリエチレンオキシド(PEO)等の増粘剤と併用されてもよい。結着剤の含有率は、例えば、正極活物質層と正極集電体との接着性を向上させる点で、正極活物質層の総質量に対して0.1〜30質量%が好ましく、0.1〜20質量%がより好ましく、0.1〜10質量%が特に好ましい。
【0045】
[負極]
負極は、例えば金属箔等の負極集電体と、負極集電体の表面に形成された負極活物質層とを備える。負極集電体には、アルミニウムや銅などの負極の電位範囲で安定な金属の箔、当該金属を表層に配置したフィルム等を用いることができる。負極活物質層は、リチウムイオンを吸蔵・放出可能な負極活物質の他に、結着剤を含むことが好適である。また、必要により導電材を含んでいてもよい。
【0046】
負極活物質としては、例えば、天然黒鉛、人造黒鉛、リチウム、珪素、炭素、錫、ゲルマニウム、アルミニウム、鉛、インジウム、ガリウム、リチウム合金、予めリチウムを吸蔵させた炭素、珪素、及びこれらの合金等が挙げられる。結着剤は、正極の場合と同様の物質を用いてもよいが、スチレン−ブタジエン共重合体(SBR)又はこの変性体等を用いることが好ましい。結着剤は、CMC等の増粘剤と併用されてもよい。
【0047】
[非水電解質]
非水電解質は、非水溶媒と、非水溶媒に溶解した電解質塩とを含む。非水電解質は、液体電解質(非水電解液)に限定されず、ゲル状ポリマー等を用いた固体電解質であってもよい。非水溶媒には、例えばエステル類、エーテル類、アセトニトリル等のニトリル類、ジメチルホルムアミド等のアミド類、及びこれらの2種以上の混合溶媒等を用いることができる。
【0048】
エステル類の例としては、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート、ブチレンカーボネート等の環状炭酸エステル、ジメチルカーボネート、メチルエチルカーボネート、ジエチルカーボネート、メチルプロピルカーボネート、エチルプロピルカーボネート、メチルイソプロピルカーボネート等の鎖状炭酸エステル、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸プロピル、プロピオン酸メチル、プロピオン酸エチル、γ−ブチロラクトン等のカルボン酸エステル類などが挙げられる。
【0049】
エーテル類の例としては、1,3−ジオキソラン、4−メチル−1,3−ジオキソラン、テトラヒドロフラン、2−メチルテトラヒドロフラン、プロピレンオキシド、1,2−ブチレンオキシド、1,3−ジオキサン、1,4−ジオキサン、1,3,5−トリオキサン、フラン、2−メチルフラン、1,8−シネオール、クラウンエーテル等の環状エーテル、1,2−ジメトキシエタン、ジエチルエーテル、ジプロピルエーテル、ジイソプロピルエーテル、ジブチルエーテル、ジヘキシルエーテル、エチルビニルエーテル、ブチルビニルエーテル、メチルフェニルエーテル、エチルフェニルエーテル、ブチルフェニルエーテル、ペンチルフェニルエーテル、メトキシトルエン、ベンジルエチルエーテル、ジフェニルエーテル、ジベンジルエーテル、o−ジメトキシベンゼン、1,2−ジエトキシエタン、1,2−ジブトキシエタン、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールジブチルエーテル、1,1−ジメトキシメタン、1,1−ジエトキシエタン、トリエチレングリコールジメチルエーテル、テトラエチレングリコールジメチルエーテル等の鎖状エーテル類などが挙げられる。
【0050】
非水溶媒は、上記各種溶媒の水素をフッ素等のハロゲン原子で置換したハロゲン置換体を含有することが好適である。特に、フッ素化環状炭酸エステル、フッ素化鎖状炭酸エステルが好ましく、両者を混合して用いることがより好ましい。これにより、負極はもとより正極においても良好な保護被膜が形成されてサイクル特性が向上する。フッ素化環状炭酸エステルの好適な例としては、4−フルオロエチレンカーボネート、4,5−ジフルオロエチレンカーボネート、4,4−ジフルオロエチレンカーボネート、4,4,5−トリフルオロエチレンカーボネート、4,4,5,5−テトラフルオロエチレンカーボネート等が挙げられる。フッ素化鎖状炭酸エステルの好適な例としては、2,2,2−トリフルオロ酢酸エチル、3,3,3−トリフルオロプロピオン酸メチル、ペンタフルオロプロピオン酸メチル等が挙げられる。
【0051】
電解質塩は、リチウム塩であることが好ましい。リチウム塩の例としては、LiPF
6、LiBF
4、LiAsF
6、LiClO
4、LiCF
3SO
3、LiN(FSO
2)
2、LiN(C
lF
2l+1SO
2)(C
mF
2m+1SO
2)(l,mは1以上の整数)、LiC(C
pF2
p+1SO
2)(C
qF
2q+1SO
2)(C
rF
2r+1SO
2)(p,q,rは1以上の整数)、Li[B(C
2O
4)
2](ビス(オキサレート)ホウ酸リチウム(LiBOB))、Li[B(C
2O
4)F
2]、Li[P(C
2O
4)F
4]、Li[P(C
2O
4)
2F
2]、LiPO
2F
2等が挙げられる。
【0052】
[セパレータ]
セパレータには、例えば、イオン透過性及び絶縁性を有する多孔性シートが用いられる。多孔性シートの具体例としては、微多孔薄膜、織布、不織布等が挙げられる。セパレータの材質としては、ポリエチレン、ポリプロピレン等のオレフィン系樹脂、セルロースなどが好適である。セパレータは、セルロース繊維層及びオレフィン系樹脂等の熱可塑性樹脂繊維層を有する積層体であってもよい。
【実施例】
【0053】
以下、実施例により本開示をさらに説明するが、本開示は以下の実施例に限定されるものではない。
【0054】
<実施例1>
[正極活物質(Ni含有リチウム遷移金属酸化物)の調製]
一定以上(3〜4モル%)のAlを含むNCA複合酸化物を調製した。次に、当該複合酸化物、LiOH及び1モル%のAl(OH)
3を混合し、酸素雰囲気で715℃、5時間焼成した後、水洗により不純物を除去してNi含有リチウム遷移金属酸化物を得た。ICP発光分光分析装置(Thermo Fisher Scientific社製、商品名「iCAP6300」)を用いて、上記得られたNi含有リチウム遷移金属酸化物の組成を測定した。その結果、前駆体のNi、Co、及びAlの組成比は、モル%比で
Ni:Co:Al=92.5:4.0:3.5
であり、得られた最終の酸化物におけるNi、Co、及びAlの組成比は、
Ni:Co:Al=91.0:4.5:4.5
であった。
【0055】
また、レーザ回折式粒度分析装置で粒子径を計測したところ、平均粒子径r=18μmであった。
【0056】
また、粒子断面をEPMA(波長分散型)で面分析したところ、Alの濃度分布が観測されず、HAXPESの光子エネルギを6KeVとして分析したところ、結合エネルギが1561eVにおいてピークを有することが確認できた。従って、表層に300nm未満のAlリッチ層が形成されていると推察する。
【0057】
さらに、EPMAでNi含有リチウム遷移金属酸化物粒子の中央部、及び平面視した場合の左右の0.35rの位置におけるAl濃度を定性分析したところ、その強度(a.u)は、
左側の0.35rの位置:283.5
中央部の位置:283.5
右側の0.35rの位置:279.5
であることを確認した。これを実施例1の正極活物質とした。
【0058】
[正極の作製]
上記正極活物質を85質量部、導電材としてアセチレンブラックを10質量部、結着剤としてポリフッ化ビニリデンを5質量部の割合で混合した。当該混合物をめのう乳鉢で混練し、正極合材を調製した。次いで、正極合材をペレット状に形成した。これを正極とした。
【0059】
[非水電解質の調製]
エチレンカーボネート(EC)と、メチルエチルカーボネート(MEC)とを、3:7の体積比で混合した。当該混合溶媒に対して、六フッ化リン酸リチウム(LiPF
6)を1.0モル/リットルの濃度となるように溶解させて、非水電解質を調製した。
【0060】
[試験セルの作製]
上記正極と、リチウム金属箔からなる負極とを、セパレータを介して互いに対向するように積層し、電極体を作製した。次いで、電極体及び上記非水電解質をアルミニウム製の外装体に挿入し、試験セルを作製した。
【0061】
<実施例2>
正極活物質の調整において、NCAの組成比をほぼ同一に維持しつつ、Al(OH)3を2モル%に倍増させたこと、及び加熱温度を735℃としたこと以外は、実施例1と同様にしてNi含有リチウム遷移金属酸化物を作製した。
【0062】
前駆体のNi、Co、及びAlの組成比は、モル%比で
Ni:Co:Al=93.5:3.0:3.5
であり、得られた最終の酸化物におけるNi、Co、及びAlの組成比は、
Ni:Co:Al=91.6:2.9:5.5
であった。
【0063】
また、レーザ回折式粒度分析装置で粒子径を計測したところ、平均粒子径r=12μmであった。
【0064】
また、断面をEPMA(波長分散型)で面分析したところ、Alの濃度分布が観測されず、HAXPESの光子エネルギを6KeVとして分析したところ、結合エネルギが1561eVにおいてピークを有することが確認できた。従って、表層に300nm未満のAlリッチ層が形成されていると推察する。
【0065】
さらに、EPMAでNi含有リチウム遷移金属酸化物粒子の中央部、及び平面視した場合の左右の0.35rの位置におけるAl濃度を定性分析したところ、その強度(a.u)は、
左側の0.35rの位置:385.5
中央部の位置:382.5
右側の0.35rの位置:382
であることを確認した。これを実施例2の正極活物質として、実施例1と同様に試験セルを作製した。
【0066】
<実施例3>
正極活物質の調整において、NCAの組成比をほぼ同一に維持しつつ、Al(OH)
3を3モル%にさらに増大させた以外は、実施例2と同様にしてNi含有リチウム遷移金属酸化物を作製した。前駆体のNi、Co、及びAlの組成比は、モル%比で
Ni:Co:Al=93.5:3.0:3.5
であり、得られた最終の酸化物におけるNi、Co、及びAlの組成比は、
Ni:Co:Al=90.6:2.9:6.5
であった。
【0067】
また、レーザ回折式粒度分析装置で粒子径を計測したところ、平均粒子径r=12μmであった。これを実施例3の正極活物質として、実施例1と同様に試験セルを作製した。
【0068】
<比較例1>
正極活物質の調整において、NCAの組成比をほぼ同一に維持しつつ、Al(OH)
3を添加しない以外は、実施例1と同様にしてNi含有リチウム遷移金属酸化物を作製した。
【0069】
前駆体のNi、Co、及びAlの組成比は、モル%比で
Ni:Co:Al=91.0:4.5:4.5
であり、得られた最終の酸化物におけるNi、Co、及びAlの組成比は、
Ni:Co:Al=91.0:4.5:4.5
であった。
【0070】
また、レーザ回折式粒度分析装置で粒子径を計測したところ、平均粒子径r=18μmであった。これを比較例1の正極活物質として、実施例1と同様に試験セルを作製した。
【0071】
図1A〜
図1Cは、実施例1〜2、及び比較例1のHAXPESの光子エネルギ6KeVでの分析結果を示す。
図1Aは比較例1、
図1Bは実施例1、
図1Cは実施例2の分析結果を示す。結合エネルギ1560〜1565eVに着目すると、Al(OH)
3を添加しない比較例1ではピークは生じておらず、実施例1及び実施例2ではピークが生じていた。光子エネルギ6KeVは粒子表面から数十nm程度に対応しており、比較例1ではこの位置にAlリッチ層が存在していないのに対し、実施例1及び実施例2ではAlリッチ層が存在していることが分かる。実施例2の方が実施例1よりピーク値が増大しているのは、Alの添加量が多いためである。
【0072】
図2A〜
図2Cは、実施例1〜2、及び比較例1の粒子断面のEPMAによるAl濃度の定性分析測定結果、及び、Al濃度の測定位置を示す。
図2Aは比較例1、
図2Bは実施例1、
図2Cは実施例2の結果を示す。粒子断面の中の丸印は測定位置を示し、それぞれ左側の0.35rの位置、中央部、右側の0.35rの位置を示す。
【0073】
表1は、比較例1及び実施例1,2の測定結果を示す。
【0074】
【表1】
【0075】
表1において、カッコ内の数値は、中央部の値を基準とした場合の比率=(左側0.35rあるいは右側0.35r)/(中央部)を示す。すなわち、比較例1では、中心部に対する左側の0.35rのAl濃度は0.99であり、右側の0.35rのAl濃度は1.00であることを示す。実施例1では、中心部に対する左側の0.35rのAl濃度は1.00であり、右側の0.35rのAl濃度は0.99である。実施例2では、中心部に対する左側の0.35rのAl濃度は1.01であり、右側の0.35rのAl濃度は1.00であった。
【0076】
[初期充放電試験]
実施例1〜3及び比較例1の試験セルを用いて、25℃の温度条件下で、電圧が4.3Vになるまで電流値11mAで定電流充電を行い、次いで、電流値が2.75mAになるまで4.3Vで定電圧充電を行った。その後、電圧が2.5Vになるまで11mAで定電流放電を行った。この1サイクルの充放電試験により試験セルから得られた充電容量及び放電容量を初回充電容量、初回放電容量(mAh/g)とした。
【0077】
[発熱開始温度の測定]
実施例1〜3及び比較例1の試験セルを初期充放電試験した後、4.3Vまで充電した状態で分解し、正極のみを取り出して乾燥後、消防法試料容器に封入し、Rigaku社製のThermo plus DSC8230装置で25℃〜300℃の範囲でDSC測定を行った。発熱開始温度は、ブランク補正後の発熱量が0.02mW/gになる温度とした。
【0078】
表2に、比較例1及び実施例1〜3の結果を示す。
【0079】
【表2】
【0080】
表2において、添加量はAl(OH)
3の添加量(モル%)を示す。比較例1は添加しないため0モル%であり、実施例1〜3はそれぞれ1モル%、2モル%、3モル%と順次増大している。
【0081】
比較例1では発熱開始温度が146℃であるのに対し、実施例1〜3ではそれぞれ149℃、150℃、154℃と順次高くなっている。他方、容量については、比較例1は222mAh/gであるのに対し、実施例1〜3は223,216,210mAh/gと若干低下しているものの大きな容量低下はない。従って、実施例1〜3では、比較例1と比較して、容量が大きく低下することなく、発熱開始温度が高く、熱的安定性が向上していることが分かる。また、Al(OH)
3の添加量を調整することで、容量低下の抑制と熱的安定性の向上の両立を達成し得ることも分かる。この結果から、Ni含有リチウム遷移金属酸化物の表層に極薄のAlリッチ層を形成するとともに、中心部〜0.35rまでのAlをほぼ一定とすることで、容量を維持しつつも熱的安定性を向上することが可能といえる。