(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
各基本スペクトル密度は、高速フーリエ変換(FFT)によって決定され、前記スペクトル密度は、前記基本スペクトル密度の平均に等しい、請求項8に記載のライダーシステム。
前記処理ユニット(UT)は、1勾配毎に1個のチャネルでn個のチャネルを含み、各チャネルは、他のチャネルと並列に動作し、かつ関連する周波数を決定するように構成される、請求項7〜9のいずれか一項に記載のライダーシステム。
コンピュータプログラム製品であって、コンピュータプログラムは、請求項1〜6のいずれか一項に記載の処理方法のステップが実行されることを可能にするコード命令を含む、コンピュータプログラム製品。
【背景技術】
【0002】
コヒーレントライダーの原理は、当技術分野で公知であり、
図1に示される。コヒーレントライダーは、コヒーレント源L、典型的にはコヒーレント光波を(赤外、可視または近紫外領域で)発光するレーザーと、ある体積の空間が照射されることを可能にする発光装置DEと、目標Tによって後方散乱された光波の一部を集める受光装置DRとを含む。後方散乱波のドップラー周波数偏移ν
Dopは、目標Tの視線速度vに依存する。
【0003】
受光時、受光された周波数fsの後方散乱光波Sと、局部発振波OLと称される放出波の一部とが混合される。これらの2個の波間の干渉が光検知器Dによって検知され、検知器から出力された電気信号出力は、受信強度および局部発振器出力に比例する項に加えて、ビート信号Sbと称される発振項を有する。処理ユニットUTは、この信号をデジタル化し、信号から目標Tの速度vに関する情報を抽出する。
【0004】
好適には、処理ユニットは、周波数偏移がない状態で、ゼロ周波数を中心とする狭帯域におけるビート信号Sbを電子的にフィルタリングする(下記を参照されたい)。
【0005】
コヒーレントライダーについて、発光および受光装置は、好適には同一の光学機器(モノスタティックライダー)を用いる。この特徴により、入射および後方散乱波の伝搬路が同一となり、良好な機械的安定性を得ることおよび長距離にわたって乱気流の影響を低減することが可能になる。
【0006】
ライダーの速度測定/距離測定の解決策の1つは、周波数変調を実施できるシステムを構築することである。この技術は、レーダーで一般的に用いられ、ファイバーを主体とするレーザー源でなされてきた発展に鑑みて現在特に関心が持たれている。周波数変調により、時間/周波数解析を通じて目標との距離dおよびその速度vを決定することができる。この種のライダーは、レーザー風速測定機能が実行されることも可能にする。
【0007】
周波数変調ライダー20の光学アーキテクチャの一例を
図2に示す。コヒーレント源の周波数が変調されることで、局部発振の周波数は、処理ユニットUTと同期化されたWFCモジュールによって制御される、波形と称される所定の機能を用いて変調される。
【0008】
放出された光信号は、増幅器EDFAによって増幅され、発光および受光は、同一の光学機器Oを使用し、かつ循環器Cを用いて分離される。光信号の周波数は、任意選択的に、例えば好適には増幅器EDFAの前に配置されるが、局部発振器の経路に配置され得る音響光学変調器を用いて偏移され得る。この場合、処理ユニット内の電子フィルタリングが偏移周波数について実行される。遅延線LRにより、局部発振器および発光信号の光路を等化して、増幅器EDFAの後ろに配置された光学機器の不具合(循環器Cの漏話、発光/受光光学機器Oの反射防止コーティングの不具合等)をRF領域でフィルタリングすることができる。
【0009】
コヒーレント周波数変調されたライダーの一例は、文献“Lidar systems for precision navigation and safe landing on planetary bodies”Farzin Amzajerdian et al,Proc.SPIE 8192,International Symposium on Photoelectronic Detection and Imaging 2011:Laser Sensing and Imaging;およびBiological and Medical Applications of Photonics Sensing and Imaging,819202(August 19,2011)に記述されている。
図3は、このライダーの動作原理を示す。
【0010】
以下の記述において、発光周波数および局部発振器の周波数が音響光学変調器を用いて偏移されない場合を記述する。局部発振器の周波数f
OLは、周期T
FOで周期的に2個の周波数勾配α
0およびα
1を用いて線形に変調される。この光周波数f
OLは、一定の光周波数f0(ここではレーザーの初期周波数)と、高周波数領域における時間依存変調周波数f
mod(t)との和として記述され得、周波数は、レーザー源を変調することによって生成される:f
OL(t)=f0+f
mod(t)。
【0011】
図3は、周波数f
OL(t)およびf
s(t)の時間経過に伴う変化を、より明確に光周波数f0が減算された状態で示す。
図3aに示すように、周波数fs(t)の後方散乱信号は、測定ゾーン(目標T)への伝搬に起因して、従って目標との距離dに関して時間τだけ時間的に偏移され、局部発振器周波数f
OL(t)に関するドップラー効果に起因して周波数が値ν
Dopだけ偏移する。
【0012】
検知されたビート信号Sbは、周波数成分fs−f
OLを有する。
図3bは、fs−f
OLの時間経過に伴う変化を示す。この周波数差が特性周波数ν
α0およびν
α1において2個の連続する平坦部を時間の関数として含むことが分かり得、特性周波数は、式:
【数1】
および
【数2】
によって目標との距離Dおよび視線速度vに直接関係する。
【0013】
例えば、ビート信号Sbのフーリエ変換を実行することにより、これらの2個の特性周波数ν
α0およびν
α1を測定することによってdおよびvを決定することができる。
【0014】
しかし、目標の距離に起因して、タイムオブフライトが、周波数勾配の個数(本例では2)によって正規化された波形T
FOの持続時間より長くなれば、フーリエ変換による直接的解析は、不満足な結果を与える。具体的には、局部発振器と後方散乱信号との混合は、平坦部の消失および常に可変な瞬時周波数につながるため、フーリエ変換による解析後にピークが現れない。
【0015】
2個の周波数勾配α
0=2MHz/μsおよびα
1=−2MHz/μsを用いる局部発振器変調および速度30m/sで移動している目標について、この効果の一例を
図4に示す。
【0016】
図4aは、1800mの距離dについて、
図4bは、14000mの距離dについて、
図4cは、20000mの距離dについて、f
OLおよびSbの周波数成分fs−f
OLに関するfsの時間変化を示す。
【0017】
この場合、ライダーの範囲は、従って、レーザーの出力に依存せずに信号の処理によって制限される。波形の変調周期T
FOを延長することは、理論的には可能であるが、特定のレーザーの変調範囲が制限されるため、この延長によって長距離で高分解能を同時に実現することはできない。具体的には、レーザーの変調帯域幅が限られていることを前提として、同一の変調帯域幅をカバーするために、周波数勾配を減少させながら周期T
FOを延ばすことが可能である。この場合、より長い距離で周波数平坦部が存在するが、一定でありかつ変調周波数T
FOよりも短いフーリエ変換持続期間T
FFTについて、T
FFT中にカバーされる変調帯域幅が小さくなり、従って、この帯域幅と比例する縦分解能が劣化するであろう。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0019】
本発明の目的の1つは、特性周波数平坦部を有する信号を再度取得することを可能にすることにより、この制約を克服することを可能にするビート信号処理方法を提供することによって上述の短所を解消することである。
【課題を解決するための手段】
【0020】
本発明の1つの主題は、周波数において周期的に変調されるコヒーレント源を含むコヒーレントライダーによって生成された信号を処理する方法であって、
− ビート信号は、局部発振器周波数を有する、局部発振器と称される光信号と、ライダーによって照射された目標によって後方散乱された光信号との間の干渉から光検知器によって生成され、前記ビート信号は、デジタル化され、
− 局部発振器周波数は、平均値と、その源を変調することによって生成される変調周波数との和からなり、変調周波数は、変調周期で周期的であり、各周期は、それぞれn個の周波数勾配を有するn個の線形部分を含み、nは、2以上であり、
方法は、
− 変調信号を取得するために、変調周波数でビート信号を複素変調するステップと、
− n個の復調信号を取得するために、変調周波数の各周波数勾配に等しい単一の勾配をそれぞれ有するn個の復調周波数で変調信号を複素復調するステップと、
− n個の復調信号のn個のスペクトル密度を決定するステップと、
− n個のスペクトル密度の最大値にそれぞれ対応するn個の特性周波数を決定するステップと、
− 前記n個の特性周波数から目標の速度に関する情報および目標の距離に関する情報を決定するステップと
を含む、方法である。
【0021】
一実施形態によれば、各スペクトル密度を決定するステップは、
− 変調周期よりも短いかまたはそれと等しい複数の時間区間について複数の基本スペクトル密度を決定するサブステップと、
− 複数の基本スペクトル密度の和から前記スペクトル密度を決定するサブステップと
を含む。
【0022】
好適には、各基本スペクトル密度は、高速フーリエ変換、すなわちFFTによって決定され、スペクトル密度は、基本スペクトル密度の平均に等しい。
【0023】
有利には、各復調周波数は、変調周期で周期的である。
【0024】
有利には、周波数勾配は、0〜n−1で変化する添え字iを付与され、添え字iの勾配を有する各復調周波数は、変調周波数に対して、i、nおよび変調周期に依存する偏移時間だけ時間的に偏移される。
【0025】
一変型形態によれば、波形は、4個の勾配α0、α1、α2、α3を含み、
α1=−α0およびα3=−α2
である。
【0026】
本発明は、
− 周波数において周期的に変調されるコヒーレント源と、
− コヒーレント源によって生成された光信号を放出する装置およびライダーによって照射される目標によって後方散乱された信号を受信する装置と、
− 局部発振器周波数を有する、局部発振器と称される光信号と、後方散乱光信号との間の干渉からビート信号を生成するように構成された光検知器であって、局部発振器周波数は、平均値と、その源を変調することによって生成される変調周波数との和からなり、変調周波数は、変調周期で周期的であり、各周期は、それぞれn個の周波数勾配を有するn個の線形部分を含み、nは、2以上である、光検知器と、
− 処理ユニットであって、
*ビート信号をデジタル化すること、
*変調信号を取得するために、変調周波数でビート信号を複素変調すること、
*n個の復調信号を取得するために、変調周波数の各周波数勾配に等しい単一の勾配をそれぞれ有するn個の復調周波数で変調信号を複素復調すること、
*n個の復調信号のn個のスペクトル密度を決定すること、
*n個のスペクトル密度の最大値にそれぞれ対応するn個の特性周波数を決定すること、
*前記n個の特性周波数から目標の速度に関する情報および目標の距離に関する情報を決定すること
を行うように構成された処理ユニットと
を含むコヒーレントライダーシステムにも関する。
【0027】
好適には、処理ユニットは、各スペクトル密度について、変調周期よりも短いかまたはそれと等しい複数の時間区間について複数の基本スペクトル密度を決定するように更に構成され、前記スペクトル密度は、複数の基本スペクトル密度の和から決定される。
【0028】
有利には、各基本スペクトル密度は、高速フーリエ変換によって決定され、スペクトル密度は、基本スペクトル密度の平均に等しい。
【0029】
有利には、処理ユニットは、1勾配毎に1個のチャネルでn個のチャネルを含み、各チャネルは、他のチャネルと並列に動作し、かつ関連する周波数を決定するように構成される。
【0030】
本発明の他の特徴、目的および利点は、非限定的な例として与えられる添付の図面を参照しながら以下の詳細な記述を読むことで明らかになるであろう。
【発明を実施するための形態】
【0032】
本発明によるコヒーレントライダーによって生成された信号を処理する方法50を
図5に示す。コヒーレントライダーは、RF信号によって周期的に変調されるコヒーレント源Lを含む。RF変調は、レーザーの注入電流を介してまたは外部要素を介して直接実現することができる。RFが意味するのは、1Hz〜10GHz、好適には0.1kHz〜10MHzに含まれる周波数を有する波である。
【0033】
ビート信号Sbは、局部発振器周波数f
OL(t)を有する、局部発振器OLと称される光信号と、ライダーによって照射された目標Tによって後方散乱された光信号fs(t)との間の干渉から光検知器Dによって生成される。ビート信号は、処理のためデジタル化される。
【0034】
局部発振器周波数f
OL(t)は、平均値f0と、その源を変調することによって生成される変調周波数f
mod(t)との和からなる。
F
OL(t)=f0+f
mod(t)
【0035】
偏移する音響変調器を一切用いない場合、周波数f0は、源Lの初期光周波数に等しい。信号OLの周波数が音響光学変調器によって偏移される場合、周波数f0は、偏移されたその源の光周波数に等しい。
【0036】
変調周波数f
mod(t)は、変調周期T
FOで周期的であり、その源の周期的RF変調から発せられるが、レーザーが非線形に挙動するため、その源の周期的RF変調に等しくない。典型的に、周期T
FOは、1ns〜1秒、好適には100ns〜10msに含まれる。
【0037】
本発明による方法が正常に機能するには、変調周波数f
mod(t)は、各周期がn個の線形部分、すなわち頂点で接合するn個の周波数勾配αi(ここで、iは、0〜n−1で変化する添え字である)を含む必要がある。勾配の個数nは、2以上である。
【0038】
有利には、nは、偶数であり、なぜなら、以下に具体的に述べるように勾配αiの符号が入れ替えられ得、信号処理が簡素化され得るためである。
【0039】
実際には、現在のレーザーにアクセス可能な変調周波数帯域幅を前提として、これらの頂点で鋭角を得ることは困難であり、一連の4個の勾配α0、α1、α2およびα3からなる周波数f
mod(t)について
図6に示すように、これらの頂点は、概ね丸みを帯びている。周期T
FOにわたるf
modの変調信号の形状は、波形と称される。
【0040】
好適には、添え字i+1の勾配α
i+1は、添え字iの勾配α
iと逆符号を有する。これにより、各勾配について周期T
FOの同じ割合(従って、各周波数勾配について同じオーダーの線強度の大きさ)を維持しながら、カバーされる周波数帯を狭めることができる。
【0041】
好適には、奇数添え字の勾配は、偶数の添え字の勾配の逆向きに等しい。2個の勾配を有する信号f
modの場合、α1=−α0である。4個の勾配を有する信号f
modの場合、α1=−α0およびα3=−α2である。
【0042】
後者の場合、周波数の不連続性を生じることなく、波形を4個の等しい部分に分割することができる(類似強度の4ラインが生じる)。好適には、勾配αiは、0.1MHz/μs〜数百MHz/μsに含まれる。
【0043】
図6に示すような一連の予め設定された線形勾配によって変調された局部発振器光周波数を得ることは容易でないことに留意されたい。これを行うには、例えば、特許出願仏国特許出願公開第1500603号明細書に記述されているように、その源のRF変調信号を予め補正する必要がある。本発明の適用に際して、f
modの波形が適当な精度で既知であると仮定する。
【0044】
本発明による方法50のステップを記述する前に、使用される用語が定義される。
【0045】
初期信号にある周波数を追加することを含む動作を変調と称し、初期信号からある周波数を減算することを含む動作を復調と称する。従って、+fでの変調は、−fでの復調と均等であり、逆も同様である。
【0046】
時間領域において、変調または復調は、初期時間信号S0(t)に、実変調/復調(余弦)の場合には実数および複素変調/復調の場合には複素数である数を乗算することである。
【0047】
例えば、周波数fを用いて複素変調を行うことは、S0(t)にexp(2jπft)を乗算することと均等である。同様に、周波数fを用いて複素復調を行うことは、S0(t)にexp(−2jπft)を乗算することと均等である。
【0048】
周波数f(t)が時間の関数であるとき、変調の場合、
【数3】
を乗算し、復調の場合、
【数4】
を乗算することが推奨される。本発明による方法50は、コヒーレントライダーによって生成された信号に特定のデジタル処理を行って、ライダーによって照射された目標の速度および距離に関する情報を判定するステップを含む。より具体的には、本方法は、ライダービート信号Sbの処理に適用可能である。本方法の最初のステップを、2個の勾配α0およびα1を有する信号f
modの場合について
図7に示す。
【0049】
本発明による方法50は、変調信号S
modを取得するために、変調周波数f
modでビート信号Sbを複素変調する第1のステップ501を含む。
【0050】
図7aは、局部発振器周波数f
OL(t)および信号周波数fs(t)の変化を、より明確に平均光周波数f0が減算された状態で時間の関数として示す。
【0051】
図7bは、ライダービート信号Sbの2個の周波数成分fs−f
OLおよびf
OL−fsを示す。具体的には、ライダービート信号Sbは、実数であるため、正の周波数成分および負の周波数成分を有する。
【0052】
図7cは、取得された変調信号S
modの周波数の変化を時間の関数として示す。実ライダービート信号Sbは、波形に関連付けられた周波数、すなわちf
OL−f0を用いてデジタル的に複素変調され、ここで、f0は、レーザー源Lの平均周波数である。次いで、変調信号S
modについて瞬間周波数が再構築され、この瞬間周波数は、
fs−f
OL+(f
OL−f0)=fs−f0
f
OL−fs+(f
OL−f0)=2f
OL−f0−fs
に対応する。
【0053】
次に、ステップ502は、n個の復調信号S
demod(i)を取得するために、変調周波数f
modの1個の周波数勾配αiに等しい単一の勾配をそれぞれ有するn個の復調周波数f
demod(i)で変調信号S
modを複素復調することを含む。従って、n個の複素復調は、1個の勾配αiのn個のデジタル信号f
demod(i)を用いて行われる。
【0054】
波形の周期性を考慮に入れるために、定期的にゼロに戻すことが推奨される。復調周波数f
demod(i)は、好適には、T
FOの倍数で周期的であり、好適にはT
FOに等しい周期を有する。この等価性により、解析された様々な波形周期の周波数平坦部(従って、スペクトル解析後のライン)を一致させることが可能になる。各周波数勾配αiについて、関連するラインは、同一の周波数ν
α1に現れ、従って、目標信号に関連するエネルギーは、時間周波数解析後に同一ラインに集中する。
【0055】
図7dおよび7eは、それぞれ(勾配α0に対する)復調周波数f
mod(0)および(勾配α1に対する)f
mod(1)の変化を時間の関数として示す。各種の周波数をリセットするために、(勾配αiに対応する)添え字iの復調周波数は、i、nおよび変調周期T
FOに依存する偏移時間tdiだけ偏移される。好適には、偏移時間は、
tdi=i/n*T
FO
に等しい。
【0056】
従って、2個の勾配について、f
mod(0)は、偏移されず、f
mod(1)は、T
FO/2だけ偏移される(
図7eを参照されたい)。
【0057】
図7fおよび7gは、それぞれ復調信号S
demod(0)およびS
demod(1)の変化を時間の関数として示す。
【0058】
各復調は、全ての距離ボックス内における注目する信号の検索に対応する。従って、特性周波数ν
αiの平坦部は、添え字iの復調信号に見られる。2個の勾配の場合、S
demod(0)によってν
a0を決定することができるのに対し、S
demod(1)によってν
α1を決定することができる。周波数ν
αiは、fs(t)−f0が、復調周波数f
mod(i)と、周波数f
OL−f0によるビート信号の変調を用いて再構築された周波数fs(t)−f0との間に周波数勾配αiを有する時点で測定されたオフセットに対応する。各周波数ν
αiは、fs(t)−f0が、復調周波数f
mod(i)と、周波数f
OL−f0によるビート信号の変調を用いて再構築される周波数fs(t)−f0との間に周波数勾配αiを有する時点で測定されたオフセットに対応する。
【0059】
図7fにおいて、最も広い平坦部は、+ν
α0に対応するのに対し、より狭い平坦部は、−ν
α0に対応する。具体的には、復調関数は、注目する周波数、ここでは+ν
α0(目標の正視線速度)に合わせられる。
図7gと同様に、最も広い平坦部は、+ν
α0に対応するのに対し、より狭い平坦部は、−ν
α1に対応する。
【0060】
これらの特性周波数を測定するために、本発明による方法50は、n個の復調信号S
demod(i)のn個のスペクトル密度SP(i)を決定するステップ503を含む。これは、特性周波数ν
αiをピークの形状で出現させるために、時間/周波数解析、すなわち信号S
demod(i)(t)の周波数変換を行う問題である。有利には、解析距離範囲および解析周波数勾配に依存する時間的ウィンドウイングを含めることができる。
【0061】
図8は、信号S
demod(0)およびS
demod(1)から決定されたスペクトルのスペクトル密度SP(0)(
図8a)およびSP(1)(
図8b)を示す。求める特性周波数ν
αiは、最大スペクトル密度を有する。より弱いピークは、対向する周波数に見られる。ゼロ周波数での負のピークは、低周波数での信号のフィルタリングに起因する。
【0062】
次に、本発明による方法は、n個のスペクトル密度SP(i)の最大値にそれぞれ対応するn個の特性周波数ν
αiを決定するステップ504を含む。具体的には、信号S
demod/i(t)で最も広い平坦部を有する周波数は、求める特性周波数に対応し、最大スペクトル密度を有する周波数である。
【0063】
それほど長くない(従って、スペクトル解析後に弱いラインが生じる)持続期間の第2の平坦部も存在するが、対応する周波数のスペクトル密度は、特性周波数のそれよりも低い。この信号は、ビート信号の他の成分に対する上述の変調および復調、すなわち実検知によって生成された成分(目標信号が正の周波数に対応する場合には負の周波数成分または逆に目標信号が負の周波数に対応する場合には正の周波数成分)から生じる。
【0064】
最後に、方法50は、前記n個の特性周波数ν
αiから、式:
【数5】
を用いて目標Tの速度vに関する情報および距離Dに関する情報を決定するステップ505を含む。
【0065】
2個の周波数勾配について、
【数6】
であり、かつ
【数7】
である。
【0066】
上式は、レーザーの周波数が音響光学変調器によって偏移されない場合に有効であることに留意されたい。これが該当する場合、f
MAOは、周波数偏移であり、特性周波数は、式:
【数8】
によって計算される。
【0067】
特性周波数の値からdおよびvを決定するステップ505が相応に適合されることを前提として、本発明は、当然のことながら、上述のような偏移と整合する。
【0068】
図7は、距離12kmにおいて速度40m/sで移動している目標に対応し、信号f
modの波形は、平均レーザー周波数1.55μm、すなわち193.41THzについて2個の勾配α0=0.2MHz/μsおよびα1=−0.2MHz/μsを含む。周期T
FOは、532μsに等しい。
【0069】
検知された特性周波数は、ν
α0=35.6MHzおよびν
α1=67.6MHzである。S
mod(0)の場合、−35.6MHzでより弱いピークが残り、S
mod(1)の場合、最も狭い平坦部に対応する−67.6MHzで残る。
【0070】
図9は、目標が距離18kmに位置すること以外には
図7と均等である。
【0071】
図9aは、局部発振器周波数f
OL(t)および信号周波数fs(t)の変化を時間の関数として示す。
【0072】
図9bは、ライダービート信号Sbの2個の周波数成分fs−f
OLおよびf
OL−fsを示す。
【0073】
図9cは、取得された変調信号S
modの周波数の変化を時間の関数として示す。
【0074】
図9dおよび9eは、それぞれ(勾配α0に対する)復調周波数f
mod(0)および(勾配α1に対する)f
mod(1)の変化を時間の関数として示す。
【0075】
図9fおよび9gは、それぞれ復調信号S
demod(0)およびS
demod(1)の変化を時間の関数として示す。
【0076】
平坦部は、より長い距離でも再び現れることが分かり得る。検知された特性周波数は、ν
α0=27.6MHzおよびν
α1=75.6MHzである。−27.6MHzおよび−75.6MHzで残っているピークは、ほとんどない。
【0077】
従って、提案する方法は、レーザーの出力が十分なままであることを前提として、全ての距離ボックスを試験する(計算コストが高い解決策)ことを回避し、簡単な変調/復調動作を介して目標との距離を決定できるようにする。後方散乱信号から生じるピークが再び現れるため、信号の処理に制約されず、レーザーの出力のみに制約される方法が得られる。
【0078】
計算は、時間経過に伴い、デジタル化されたビート信号Sb(t)に基づいて実行される。
【0079】
数学的に、周波数
f
mod(t)=f
OL(t)−f0
によって変調するステップ501は、信号Sb(t)に、
【数9】
に等しい同じくデジタル化された複素数C(t)を乗算することに相当する。
【0080】
すなわち、
S
mod(t)=C*Sb(t)
であり、
f0:変調されないレーザーの周波数
f
OL:局部発振器の周波数
である。
【0081】
次に、復調ステップ502において、各復調は、信号S
mod(t)に、
【数10】
で定義される複素数Ci(t)を乗算することに相当し、ここで、iは、勾配αiの添え字であり、iは、0〜n−1で変化し、T
FOは、波形
【数11】
の周期であり、floorは、切り捨て関数(例えば、floor(2.6)=2およびfloor(−3.2)=−4)である。
【0082】
すなわち、最終的に、
【数12】
となる。
【0083】
部分αiuは、線形部分、すなわち部分(n/2).gi(u)に対応する。T
FO/2は、ゼロへの定期的帰還および時間偏移を表し、部分floor(i+1/2)*T
FO/2は、目標の速度および距離がゼロである状況をゼロ周波数に偏移できるようにする周波数の偏移に対応する。後者の周波数偏移は、関数g
i(u)に関連する時間偏移によって生じる寄生効果を補償する。
【0084】
波形の頂点が丸まっている場合、S
mod(t)の定義に際してこの丸い形状を考慮しているため、依然として上式が有効であることに留意されたい。
【0085】
スペクトル密度SP(i)を取得するステップ503は、典型的に、時間信号S
demod/i(t)のフーリエ変換の絶対値の2乗を求めて、周波数変換によって実行される。
【数13】
【0086】
好適には、各スペクトル密度を決定するステップ503は、
− 変調周期T
FOよりも短いかまたはそれと等しい複数の時間区間δtについて複数の基本スペクトル密度を決定するサブステップと、
− 複数の基本スペクトル密度の和から添え字iの各スペクトル密度SP(i)を決定するサブステップと
を含む。
【0087】
好適には、各基本スペクトル密度は、高速フーリエ変換(FFT)によって決定される。
【0088】
具体的には、処理を簡素化するために、波形の周期中に実行されるフーリエ変換(の強度を)直接合算することができる。従って、その後、平均化された基本スペクトル密度の非コヒーレント累積が実行される。
【0089】
この動作により、高速計算を実行することができ、各基本スペクトル密度が短時間δtで計算される。
【0090】
例えば、サンプリング周波数が125MHzであり、および周期T
FOが500μsである場合、30μsのδt(4000点に対応する)で複数のFFT計算を実行する方が、T
FOの全持続時間にわたって計算を行う(点が多過ぎる)よりもはるかに効果的である。
【0091】
また、周期T
FOにわたって特定の個数のFFTの平均を求めることで、信号が蓄積される時点を慎重に選択することにより、情報の損失なしにSPi(ν)の信号対ノイズ比を向上させることができる。具体的には、ノイズは、一般に光子ノイズによって制限される。信号およびノイズは、χ
2分布を有し、従って、信号対ノイズ比は、1/sqrt(N)のように減少し、ここで、Nは、平均化されたスペクトル密度の個数である。
図8aおよび8bは、数百FFT(N=864)にわたって実行されたスペクトル密度SP(0)およびSP(1)の平均に対応する。
【0092】
平坦部間の瞬間周波数として記述される信号は、周波数平坦部に集中する信号の強度に比例する強度を有するが、明らかにより多い個数のスペクトルチャネルにわたって分布している。時間/周波数解析後、この信号は、従って、解析帯域内で減衰し、その結果、
− 短距離では、更なるノイズが生じて信号対ノイズ比(SNR)が低下する。しかし、短い距離ではSNRが高いため、この減少は重要でない。一実施形態によれば、この減少を避けることが望ましい場合、最大SNRを保証するために周波数平坦部に至る時間範囲を探すステップが追加される。
− 長距離(より低いSNRの場合)では、新たなノイズは、検知ノイズ(特に局部発振器の光子ノイズ)より小さいままであるが、信号が存在する瞬間のみについて蓄積時間を短縮することにより、検知ノイズを減少させることができる。
【0093】
更に、周期T
FOにわたって特定の個数のFFTの平均を求めることにより、フーリエ変換の持続時間を目標のコヒーレンス時間(特にこの目標の動きに依存する)に設定することができ、これも信号対ノイズ比を最適化する。
【0094】
計算されたスペクトル密度は、好適には、正規化された数値を常に取得するために基本スペクトル密度の平均に等しい。
【0095】
実用的な観点から、変調/復調計算、FFT計算および絶対値の2乗の計算は、ビート信号がリアルタイムにデジタル化されるにつれて実行される。次に、特定の蓄積時間の終了時点で、スペクトル密度SP(i)は、累算された基本スペクトル密度の平均を求めることによって取得される(以下の
図14を参照されたい)。
【0096】
本発明は、2以上の任意の値のnに対して適用できる。
図7は、n=2の場合に適用した本方法を示す。重なりに関連する曖昧さを排除するために、4個の周波数勾配α0、α1、α2、α3を有する波形を好適に用いる。具体的には、4個の特性周波数の決定から、2個の未知数vおよびdを含む4個の方程式系が得られる。これにより、冗長性を得ることが可能となり、従って方程式の1個をスペクトル重なりに関連する曖昧さを排除するために用い、別の1個を信頼性パラメータとして用いることができる。この信頼性パラメータは、例えば、周波数ν
αiと、距離および視線速度との間の逆変換の残余であり得る。この逆変換は、最小2乗法、任意選択的に反復再重み付け最小2乗(IRLS)法によって得られる。
【0097】
図7の2個の勾配を有する波形の場合と全く同様に、
図10aは、周波数f
OL(t)およびf
s(t)の時間経過に伴う変化を、より明確に平均光周波数f0が減算された状態で示す。
図10bは、fs−f
OLの時間経過に伴う変化を4個の勾配の場合について示す。
図10bに見られるように、周波数の時間経過に伴う変化は、4個の特性周波数に対応する4個の平坦部を含む。
【0098】
図7の2個の勾配を有する波形の場合と全く同様に、
図11bは、ライダービート信号Sbの2個の周波数成分fs−f
OLおよびf
OL−fsを示し、
図11cは、4個の勾配を含む波形について取得された変調信号S
modの周波数の変化を時間の関数として示す。
図12a、12b、12cおよび12dは、それぞれ(勾配α0に対する)復調周波数f
mod(0)および(勾配α1に対する)f
mod(1)、(勾配α2に対する)f
mod(2)および(勾配α3に対する)f
mod(3)の変化を時間の関数として示し、
図12e、12f、12gおよび12hは、それぞれ復調信号S
demod(0)、S
demod(1)、S
demod(2)およびS
demod(3)の変化を時間の関数として示す。
【0099】
4個の勾配について、f
mod(0)は、偏移されず(
図12aを参照されたい)、f
mod(1)は、T
FO/4だけ偏移され(
図12bを参照されたい)、f
mod(2)は、T
FO/2だけ偏移され(
図12cを参照されたい)、f
mod(3)は、3/4.T
FOだけ偏移される(
図12dを参照されたい)。
【0100】
図10および11は、12kmに位置して40m/sで移動している目標の場合に対応し、周波数fmodは、以下の勾配値(光周波数f0=1.55μmのレーザー)を有する。
α0=0.2MHz/μs
α1=−0.2MHz/μs
α2=0.3MHz/μs
α3=−0.3MHz/μs
【0101】
周波数領域における変換により、特性周波数(最長平坦部)が検知される:35.6MHz(α
0)、67.6MHz(α
1)、27.6MHz(α
2)および75.6MHz(α
3)。
【0102】
逆向き周波数により弱いピークも存在する。
【0103】
本発明は、コヒーレントライダーシステム(
図13に示される)であって、
− 周波数において周期的に変調されるコヒーレント源Lと、
− コヒーレント源によって生成された光信号を放出する装置DEおよびライダーによって照射された目標Tによって後方散乱された信号を受信する装置DRと、
− 局部発振器周波数f
OL(t)を有する、局部発振器と称される光信号と、後方散乱光信号との間の干渉からビート信号Sbを生成するように構成された光検知器Dであって、局部発振器周波数f
OL(t)は、平均値f0と、その源を変調することによって生成される変調周波数f
mod(t)との和からなり、変調周波数は、変調周期T
FOで周期的であり、各周期は、それぞれn個の周波数勾配αiを有するn個の線形部分を含み、nは、2以上であり、iは、0〜n−1で変化する、光検知器Dと、
− 処理ユニットUTであって、
*ビート信号をデジタル化すること、
*変調信号S
modを取得するために、変調周波数f
modでビート信号Sbを複素変調すること、
*n個の復調信号S
demod(i)を取得するために、変調周波数の各周波数勾配αiに等しい単一の勾配をそれぞれ有するn個の復調周波数f
demod(i)で変調信号S
modを複素復調すること、
*n個の復調信号のn個のスペクトル密度SP(i)を決定すること、
*n個のスペクトル密度SP(i)の最大値にそれぞれ対応するn個の特性周波数ν
αiを決定すること、
*前記n個の特性周波数ν
αiから目標Tの速度vに関する情報および目標Tの距離dに関する情報を決定すること
を行うように構成された処理ユニットUTと
を含むコヒーレントライダーシステムにも関する。
【0104】
有利には、処理ユニットUTは、各スペクトル密度について、変調周期T
FOよりも短いかまたはそれと等しい複数の時間区間について複数の基本スペクトル密度を決定するように更に構成され、スペクトル密度SP(i)は、複数の基本スペクトル密度の和から決定される。好適には、各基本スペクトル密度は、高速フーリエ変換(FFT)によって決定される。好適には、スペクトル密度は、基本スペクトル密度の平均に等しい。
【0105】
好適には、処理ユニットUTは、1勾配毎に1個のチャネルでn個のチャネルを含み、各チャネルは、他のチャネルと並列に動作し、かつ関連する周波数を決定するように構成される。具体的には、変調および復調は、同時に実行することができ、従って(単一の複素乗算からなる)低い計算コストで済む。
【0106】
処理ユニットUTにおける並列4チャネル(4勾配)アーキテクチャの一実装例を
図14に示す。
【0107】
ビート信号Sbは、アナログ/デジタルコンバータADC(例えば、14ビット、125MHzコンバータ)を用いてデジタル化され、次いで任意選択的に周波数フィルタFによってフィルタリングされる。デジタル化およびフィルタリングされた信号は、次いで、4個のチャネル間で分散される。各チャネルは、他のチャネルと並列に動作して、同一の処理チェーンを実行する。復調周波数f
demod(i)(およびその時間偏移)の値のみがチェーン毎に異なる。
【0108】
モジュール2により、変調および復調関数Cおよびf
mod(i)の振幅および位相を画定することができる。次いで、これらの関数の積がモジュール3で評価される。
【0109】
モジュール4により、デジタル化されたビート信号Sbと、モジュール3で計算された関数との複素乗算(変調関数Cおよび復調関数f
mod(i)の積)を実行することができる。
【0110】
モジュール5は、複素高速フーリエ変換(FFT)を実行する。モジュール6は、フーリエ変換の2乗ノルムを計算する。
【0111】
モジュール7は、モジュール12によって得られた特徴(持続期間、反復速度等)によって設定された時間にわたってスペクトル出力密度を合算する。この結果は、TCPサーバ9を介してより低速で実行され得る信号処理の第2の部分に転送されて利用される前にバッファ8に転送される。この第2の部分(
図14のモジュール11)により、これらの特性周波数の全てを考慮しながら、ピークの検知および周波数の評価を実行してvおよびdを計算することができる。このステップは、例えば、最小2乗法または反復再重み付け最小2乗(IRLS)法を用いて実行することができ、このような技術は、文献で公知である。
【0112】
本発明は、本発明による処理方法のステップが実行されることを可能にするコード命令を含むコンピュータプログラム製品にも関する。
【0113】
本発明によるシステムの各種の変型実施形態において、計算モジュールは、各種のアーキテクチャで構成され得、特に、本方法の各ステップは、別々のモジュールに実装され得、または対照的に全てのステップが単一の計算モジュール内に集約され得る。
【0114】
本発明によるシステムが含む各々の計算モジュールは、ソフトウェアおよび/またはハードウェア形式で作成され得る。各モジュールは、特にプロセッサおよびメモリを含み得る。プロセッサは、汎用プロセッサ、専用プロセッサ、特定用途向け集積回路(ASIC)またはフィールドプログラム可能ゲートアレイ(FPGA)であり得る。