特許第6903793号(P6903793)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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  • 特許6903793-皮膜形成組成物 図000005
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6903793
(24)【登録日】2021年6月25日
(45)【発行日】2021年7月14日
(54)【発明の名称】皮膜形成組成物
(51)【国際特許分類】
   A61K 8/81 20060101AFI20210701BHJP
   A61K 8/37 20060101ALI20210701BHJP
   A61K 8/33 20060101ALI20210701BHJP
   A61K 8/31 20060101ALI20210701BHJP
   A61K 8/34 20060101ALI20210701BHJP
   A61Q 1/00 20060101ALI20210701BHJP
   A61Q 19/00 20060101ALI20210701BHJP
   A61K 8/85 20060101ALI20210701BHJP
【FI】
   A61K8/81
   A61K8/37
   A61K8/33
   A61K8/31
   A61K8/34
   A61Q1/00
   A61Q19/00
   A61K8/85
【請求項の数】10
【全頁数】17
(21)【出願番号】特願2020-94840(P2020-94840)
(22)【出願日】2020年5月29日
(65)【公開番号】特開2020-196711(P2020-196711A)
(43)【公開日】2020年12月10日
【審査請求日】2020年11月10日
(31)【優先権主張番号】特願2019-103335(P2019-103335)
(32)【優先日】2019年5月31日
(33)【優先権主張国】JP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000000918
【氏名又は名称】花王株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000084
【氏名又は名称】特許業務法人アルガ特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】石田 華緒梨
(72)【発明者】
【氏名】廣野 信悟
(72)【発明者】
【氏名】藤本 達也
(72)【発明者】
【氏名】小林 英男
【審査官】 星 浩臣
(56)【参考文献】
【文献】 特開2007−051106(JP,A)
【文献】 特開2015−209393(JP,A)
【文献】 国際公開第2014/088072(WO,A1)
【文献】 特開2001−064153(JP,A)
【文献】 特開2013−006810(JP,A)
【文献】 特開2018−108991(JP,A)
【文献】 特開2017−109946(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 8/00−8/99
A61Q 1/00−90/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
次の成分(a)及び(b);
(a)エステル油、エーテル油、炭化水素油及び高級アルコールから選ばれる1種又は2種以上の油剤、及び
(b)平均繊維径0.1μm以上7μm以下、かつ平均繊維長20μm以上300μm以下である繊維 皮膜形成組成物全体に対して0.5質量%以上10質量%以下
を含有し、(平均繊維径)2/繊維含有量(μm2/質量%)が0.005以上7以下であって、成分(b)と成分(a)の質量比(b/a)が0.005以上5以下であり、分散媒である成分(a)に成分(b)が分散している皮膚用皮膜形成組成物。
【請求項2】
成分(b)の繊維の平均繊維径が0.2μm以上7μm以下である請求項1記載の皮膜形成組成物。
【請求項3】
成分(b)の平均繊維長が25μm以上250μm以下である請求項1又は2記載の皮膜形成組成物。
【請求項4】
成分(a)が、エステル油、エーテル油及び20℃で液状の炭化水素油から選ばれる1種又は2種以上を含む油剤である請求項1〜3のいずれか1項記載の皮膜形成組成物。
【請求項5】
成分(b)のアスペクト比(平均繊維長/平均繊維径)が10以上200以下である請求項1〜4のいずれか1項記載の皮膜形成組成物。
【請求項6】
成分(b)の含有量が皮膜形成組成物全体に対して0.5質量%以上8質量%以下である請求項1〜5のいずれか1項記載の皮膜形成組成物。
【請求項7】
成分(b)の繊維全体における繊維長40μm以上の繊維の本数割合が、15%以上100%以下である請求項1〜6のいずれか1項記載の皮膜形成組成物。
【請求項8】
請求項1〜7のいずれか1項記載の皮膜形成組成物を皮膚に適用する工程を含む、皮膚表面上における皮膜の製造方法。
【請求項9】
請求項1〜7のいずれか1項記載の皮膜形成組成物を含む皮膜。
【請求項10】
皮膚表面上に繊維がネットワークを形成した皮膜を形成するための、請求項1〜7のいずれか1項記載の皮膜形成組成物の使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、皮膚表面上に微細な繊維を含有する皮膜を形成することができる皮膜形成組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
化粧品中に繊維を含有させる技術はよく知られており、マスカラ等では広く用いられている。また、皮膚等のケラチン物質をメイクアップする目的で、生理学的に許容可能な媒体中に繊維と、カルボキシラート基及びポリジメチルシロキサン基を含むコポリマーとを含有する組成物(特許文献1)が報告されている。さらに、刺激性成分を含む化粧品の刺激性を低減するために、化粧品に繊維を配合する技術も報告されている。さらに、化粧持ちを改善するために、長さ0.1〜5mmの短繊維を配合した皮膚化粧料(特許文献3)も報告されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2002−193746号公報
【特許文献2】特開2002−293718号公報
【特許文献3】特開平7−196440号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1及び2で使用されている繊維径は、0.9dtex(=10.7μm)と太く、繊維の含有量も少ないため、繊維によるネットワークが形成されず、化粧皮膜の耐久性に問題があった。また、特許文献3の皮膚化粧料も、繊維の含有量が少ないため、繊維によるネットワークが形成されず、得られた化粧皮膜の耐久性に問題があった。
従って、本発明の課題は、皮膜の耐久性に優れた皮膜形成組成物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、次の成分(a)及び(b);
(a)エステル油、エーテル油、炭化水素油及び高級アルコールから選ばれる1種又は2種以上の油剤、及び
(b)平均繊維径0.1μm以上7μm以下の繊維 皮膜形成組成物全体に対して0.5質量%以上10質量%以下
を含有する皮膜形成組成物に関する。
本発明は、好ましくは、(平均繊維径)2/繊維含有量(μm2/質量%)が0.005以上7以下である。
本発明は、好ましくは、成分(b)と成分(a)の質量比(b/a)が0.005以上5以下である。
【0006】
また本発明は、前記の皮膜形成組成物を皮膚に適用する工程を含む、皮膚表面上における皮膜の製造方法に関する。
【0007】
本発明の他の特徴は、特許請求の範囲及び以下の説明で明らかになるであろう。
【発明の効果】
【0008】
本発明の皮膜形成組成物を用いれば、耐久性に優れる皮膜を容易に形成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】成分(b)の繊維の形成に用いた静電スプレー装置の構成を示す概略図である。
図2】ネットワーク形成有りのSEM画像の参考例を示す。
図3】ネットワーク形成無しのSEM画像の参考例を示す。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明の皮膜形成組成物は、次の成分(a)及び(b)を含有する。
(a)エステル油、エーテル油、炭化水素油及び高級アルコールから選ばれる1種又は2種以上の油剤、及び
(b)平均繊維径0.1μm以上7μm以下の繊維
【0011】
前記成分(a)は、成分(b)の繊維の本発明組成物中への分散媒として作用するとともに、形成された皮膜中に成分(b)のネットワークを形成させ、形成された皮膜の耐久性、より好ましくは透明性に寄与する。
前記成分(a)は、エステル油、エーテル油、炭化水素油及び高級アルコールから選ばれる1種又は2種以上の油剤であり、これらのうち2種以上を組み合わせて用いることが好ましい。
【0012】
前記エステル油としては、直鎖若しくは分岐鎖の脂肪酸と直鎖若しくは分岐鎖のアルコール若しくは多価アルコールとからなるエステル、又は、トリグリセリン脂肪酸エステル(トリグリセライド)から選ばれる1種又は2種以上を用いることができる。
具体的には、ミリスチン酸イソプロピル、オクタン酸セチル、ミリスチン酸オクチルドデシル、パルミチン酸イソプロピル、ステアリン酸ブチル、ラウリン酸ヘキシル、ミリスチン酸ミリスチル、オレイン酸デシル、ジメチルオクタン酸ヘキシルデシル、乳酸セチル、乳酸ミリスチル、酢酸ラノリン、ステアリン酸イソセチル、イソステアリン酸イソセチル、12−ヒドロキシステアリル酸コレステリル、ジ2−エチルヘキサン酸エチレングリコール、ジペンタエリスリトール脂肪酸エステル、モノイソステアリン酸n−アルキルグリコール、ジカプリン酸ネオペンチルグリコール、リンゴ酸ジイソステアリル、ジ2−ヘプチルウンデカン酸グリセリン、トリ2−エチルヘキサン酸トリメチロールプロパン、トリイソステアリン酸トリメチロールプロパン、テトラ2−エチルヘキサン酸ペンタエリスリット、トリ2−エチルヘキサン酸グリセリル、トリイソステアリン酸トリメチロールプロパン、セチル2−エチルヘキサノエート、2−エチルヘキシルパルミテート、ナフタレンジカルボン酸ジエチルヘキシル、安息香酸(炭素数12〜15)アルキル、セテアリルイソノナノエート、トリ(カプリル酸・カプリン酸)グリセリン、(ジカプリル酸/カプリン酸)ブチレングリコール、トリラウリン酸グリセリル、トリミリスチン酸グリセリル、トリパルミチン酸グリセリル、トリイソステアリン酸グリセリル、トリ2−ヘプチルウンデカン酸グリセリル、トリベヘン酸グリセリル、トリヤシ油脂肪酸グリセリル、ヒマシ油脂肪酸メチルエステル、オレイン酸オレイル、パルミチン酸2−ヘプチルウンデシル、アジピン酸ジイソブチル、N−ラウロイル−L−グルタミン酸−2−オクチルドデシルエステル、アジピン酸ジ2−ヘプチルウンデシル、エチルラウレート、セバシン酸ジ2−エチルヘキシル、ミリスチン酸2−ヘキシルデシル、パルミチン酸2−ヘキシルデシル、アジピン酸2−ヘキシルデシル、セバシン酸ジイソプロピル、コハク酸ジ2−エチルヘキシル、クエン酸トリエチル、パラメトキシケイ皮酸2−エチルヘキシル、ジピバリン酸トリプロピレングリコール等から選ばれる1種又は2種以上を用いることができる。
【0013】
これらの中では、形成された皮膜の耐久性の観点から、ミリスチン酸オクチルドデシル、ミリスチン酸ミリスチル、ステアリン酸イソセチル、イソステアリン酸イソセチル、セテアリルイソノナノエート、アジピン酸ジイソブチル、セバシン酸ジ2−エチルヘキシル、ミリスチン酸イソプロピル、パルミチン酸イソプロピル、リンゴ酸ジイソステアリル、ジカプリン酸ネオペンチルグリコール、安息香酸(炭素数12〜15)アルキル、トリ(カプリル酸・カプリン酸)グリセリンから選ばれる少なくとも1種が好ましく、ミリスチン酸イソプロピル、パルミチン酸イソプロピル、リンゴ酸ジイソステアリル、ジカプリン酸ネオペンチルグリコール、安息香酸(炭素数12〜15)アルキル、トリ(カプリル酸・カプリン酸)グリセリンから選ばれる少なくとも1種がより好ましく、ジカプリン酸ネオペンチルグリコール、安息香酸(炭素数12〜15)アルキル、トリ(カプリル酸・カプリン酸)グリセリン、ミリスチン酸イソプロピルから選ばれる1種又は2種以上を含むことが更に好ましい。
前記エステル油としては、ジカプリン酸ネオペンチルグリコールを用いることがより更に好ましい。
なお、本発明における油剤は、HLB値が10以下のものであり、好ましくは8以下のものである。HLB値は、親水性−親油性のバランス(Hydrophile ipophile Balance)を示す指標であり、本発明においては、小田及び寺村らによる次式により算出した値を用いている。
HLB=(Σ無機性値/Σ有機性値)×10
【0014】
前記エーテル油としては、セチルジメチルブチルエーテル等のアルキル−1,3−ジメチルブチルエーテル、エチレングリコールジオクチルエーテル、グリセロールモノオレイルエーテル、ジカプリリルエーテル等が挙げられ、これらから選ばれる1種または2種以上を用いることができる。
前記エーテル油としては、セチル−1,3−ジメチルブチルエーテルを用いることが更に好ましい。
【0015】
前記炭化水素油としては、流動パラフィン、スクワラン、スクワレン、n−オクタン、n−ヘプタン、シクロヘキサン、軽質イソパラフィン、及び流動イソパラフィン等の20℃で液状の炭化水素油、ワセリン、セレシン、パラフィンワックス、マイクロクリスタリンワックス、オゾケライト、水添ポリイソブテン、ポリエチレンワックス、及びポリオレフィンワックス等の20℃で固体あるいは半固体の炭化水素油が挙げられ、形成された皮膜の耐久性の観点から流動パラフィン、流動イソパラフィン、スクワラン、セレシン、パラフィンワックス、マイクロクリスタリンワックス、ポリエチレンワックス、ポリオレフィンワックス及びワセリンから選ばれる1種又は2種以上が好ましい。
成分(a)の炭化水素油としては、20℃で液状、固体、あるいは半固体のものが好ましく、揮発しにくい油剤が好ましく、言い換えるならば揮発性の油剤でないことが好ましい。揮発しにくい油剤としては、大気圧下、25℃で揮発しにくい性質を有する油剤であり、好ましくは、大気圧における沸点が260℃以上であり、及び/又は25℃における蒸気圧が0.02mmHg以下であることが好ましく、0.01mmHg以下であることがより好ましく、水より蒸気圧が低いことが好ましい。
前記炭化水素油としては、ポリオレフィンワックス、ポリエチレンワックス、パラフィンワックス、セレシン、マイクロクリスタリンワックス、ワセリンを用いることが更に好ましい。
【0016】
高級アルコールとしては、炭素数12〜20の高級アルコールが挙げられ、具体的にはセチルアルコール、ステアリルアルコール、イソステアリルアルコール、オレイルアルコール等が挙げられ、これらから選ばれる1種又は2種以上を用いることができる。
【0017】
また、上記エステル油、炭化水素油を含む動植物油を用いることができる。動植物油としては、例えばオリーブ油、ホホバ油、マカデミアナッツ油、メドフォーム油、ヒマシ油、紅花油、ヒマワリ油、アボカド油、キャノーラ油、キョウニン油、米胚芽油、米糠油などが挙げられる。
前記動植物油としては、オリーブ油を用いることが更に好ましい。
【0018】
本発明組成物中の成分(a)の含有量は、成分(b)の分散性、形成された皮膜の耐久性の観点から、現実的な配合量を考慮すると0.5質量%以上が好ましく、1質量%以上がより好ましく、3質量%以上がさらに好ましい。
また、現実的な配合量を考慮すると99質量%以下が好ましく、95質量%以下がより好ましく、90質量%以下がさらに好ましい。
成分(a)の含有量や骨格構造はNMR(核磁気共鳴装置)、クロマトグラフィー、IR分析等の公知の技術やその組み合わせによって分子構造を特定し同定することができる。また、成分(a)の含有量は、上記の測定手段によって、例えば上記の骨格構造を示す部分の測定値の強度で測定することができる。
【0019】
成分(b)は、平均繊維径0.1μm以上7μm以下の繊維である。当該成分(b)は、形成された皮膜中でネットワークを形成し、皮膜に耐久性を付与する。なお、皮膜中で繊維がネットワークを形成しているか否かは走査型電子顕微鏡(SEM)により確認できる。また、ネットワークとは、皮膜中に分散した繊維同士が互いに交点を持つことによって、繊維の間に間隙を持つようにした状態であり、皮膜形成組成物に含有される成分を該間隙に保持し得る状態である。繊維同士の交点は、例えば一つの繊維が他の2以上の繊維と2以上の交点を有し、互いに関連しあっている状態が好ましい。
【0020】
平均繊維径は、原則として繊維の断面の直径である。ここで繊維の断面が円の場合は直径であるが、断面が楕円の場合は長径である。本発明に用いられる繊維の平均繊維径は、形成された皮膜において肌への繊維の追従性が向上して、耐久性が向上する観点から、0.1μm以上7μm以下である。
耐久性の向上の観点から、好ましくは0.2μm以上であり、より好ましくは0.3μm以上である。
また、耐久性の向上の観点から、好ましくは5μm以下であり、より好ましくは4μm以下であり、さらに好ましくは3μm以下である。
平均繊維径は、SEM観察によって、繊維を2000倍又は5000倍に拡大して観察し、その二次元画像から欠陥(例えば、繊維の塊、繊維の交差部分)を除いた繊維を任意に100本選び出し、繊維の長手方向に直交する線を引き繊維径を直接読み取ることで測定することができる。平均繊維径はこれらの測定値の相加平均を求めて、平均繊維径とする。繊維は皮膜形成組成物中に分散しているので、皮膜形成組成物を基板に薄く塗布してSEM観察によって計測する。
【0021】
繊維の長さは、ネットワークを形成し易い長さで、ネットワークにより、形成された皮膜の耐久性が向上する観点から、平均繊維長として20μm以上300μm以下が好ましい。
平均繊維長は、ネットワーク形成がし易くなる観点からより好ましくは25μm以上であり、さらに好ましくは30μm以上であり、さらに好ましくは40μm以上である。
また、組成物塗布時に繊維同士の絡まりや縒れを抑制する観点から、より好ましくは250μm以下であり、さらに好ましくは200μm以下である。
平均繊維長は、SEM観察によって、繊維の長さに応じて、250倍ないし750倍に拡大して観察し、その二次元画像から欠陥(例えば、繊維の塊、繊維の交差部分)を除いた繊維を任意に100本選び出し、繊維の長手方向に線を引き繊維長を直接読み取ることで測定することができる。平均繊維長はこれらの測定値の相加平均を求めて、平均繊維長とする。
【0022】
繊維のアスペクト比(平均繊維長/平均繊維径)は、均一なネットワークの形成による皮膜の耐久性の観点から、8以上300以下が好ましい。
皮膜の耐久性の観点から、10以上がより好ましく、15以上がさらに好ましく、20以上がさらに好ましい。
また皮膜の耐久性の観点から、250以下がより好ましく、200以下がさらに好ましい。
【0023】
成分(b)の繊維の繊維長のCV値(変動係数:Coefficient of Variation)は、繊維が皮膜中でネットワークを形成する観点から、40%以上100%以下であることが好ましい。
より好ましいCV値はネットワークが形成し易くなる観点から、42%以上がより好ましく、さらに好ましくは45%以上である。
また組成物の保存安定性が高まる観点から、好ましくは95%以下であり、さらに好ましくは90%以下である。
CV値は、前記の繊維長の測定法により得られた測定値から(測定した繊維の長さの標準偏差)/(平均繊維長)×100[%]を算出する。
【0024】
成分(b)の繊維は、皮膜中で強固なネットワークを形成し、得られる皮膜の耐久性を高める観点から、繊維全体における繊維長40μm以上の繊維の本数割合が5%以上100%以下であることが好ましい。
40μm以上の繊維は8%以上100%以下含有するのがより好ましく、さらに耐久性を向上する観点から15%以上100%以下含有するのがさらに好ましい。
この繊維の本数割合は、繊維長さに応じて、SEMの1つの撮像画面に20〜30本の繊維が入るようにSEMの倍率を×200〜×750で調整し、その状態で画内にある全ての繊維を測定することで恣意性を排除し、合計200本以上で測定する。
【0025】
成分(b)の繊維、即ち水不溶性ポリマーの繊維は、繊維形成性ポリマーを種々の公知の紡糸技術によって得られた繊維を短繊維化処理することによって製造することができる。ここで、繊維形成性ポリマーは、通常熱可塑性又は溶剤に可溶性の鎖状高分子である。好ましくは、熱可塑性樹脂であり、重量平均分子量1.0×104g/mol以上2.0×105g/mol以下の熱可塑性樹脂がより好ましい。
繊維形成性ポリマーのうち、水不溶性ポリマーを使用するのが皮膜形成剤中で繊維の形状を維持する点で好ましい。また、紡糸法としては、エレクトロスピニング法(電界紡糸法)が、繊維径の小さい繊維を効率的に得る点で好ましい。
【0026】
水不溶性ポリマーの繊維とは、1気圧、23℃の環境下において、繊維1g秤量したのちに、10gの脱イオン水に浸漬し、24時間経過後、浸漬した繊維の0.5g超が溶解しない性質を有するものをいう。
【0027】
水不溶性ポリマーとしては、例えば皮膜形成後に不溶化処理できる完全鹸化ポリビニルアルコール、架橋剤と併用することで皮膜形成後に架橋処理できる部分鹸化ポリビニルアルコール、ポリ(N−プロパノイルエチレンイミン)グラフト−ジメチルシロキサン/γ−アミノプロピルメチルシロキサン共重合体等のオキサゾリン変性シリコーン、ポリビニルアセタールジエチルアミノアセテート、ツエイン(とうもろこし蛋白質の主要成分)、ポリ乳酸(PLA)、ポリブチレンサクシネート、ポリグリコール酸、ポリカプロラクトン、ポリヒドロキシアルカン酸等の生分解性樹脂、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリブチレンテレフタレート等のポリエステル樹脂、ポリアクリロニトリル樹脂、ポリメタクリル酸樹脂等のアクリル樹脂、ポリスチレン樹脂、ポリビニルブチラール樹脂、ポリビニルアセタール樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリアミド樹脂、ポリイミド樹脂、ポリアミドイミド樹脂、ポリプロピレン樹脂、ポリエチレン樹脂、各種のポリペプチド(コラーゲン、ゼラチン、フィブリン、カゼイン等)などが挙げられる。これらの水不溶性ポリマーは単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
これらの水不溶性ポリマーのうち、皮膜形成後に不溶化処理できる完全鹸化ポリビニルアルコール、架橋剤と併用することで皮膜形成後に架橋処理できる部分鹸化ポリビニルアルコール、ポリメタクリル酸樹脂やその他のアクリル樹脂、ポリビニルブチラール樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリ乳酸、ポリ(N−プロパノイルエチレンイミン)グラフト−ジメチルシロキサン/γ−アミノプロピルメチルシロキサン共重合体等のオキサゾリン変性シリコーン、ポリビニルアセタールジエチルアミノアセテート、ツエインから選ばれる1種又は2種以上を用いることが好ましい。
このうち、ナノファイバーの形成し易さの観点から、ポリビニルブチラール樹脂、アクリル樹脂、ポリプロピレン樹脂、ポリ乳酸等のポリスエステル、及びポリウレタン樹脂から選ばれる1種又は2種以上がより好ましい。
アクリル樹脂としてはオクチルアクリルアミド/アクリル酸ヒドロキシプロピル/メタクリル酸ブチルアミノエチル)コポリマーが好ましい。
また、ポリ乳酸、ポリブチレンサクシネート、ポリグリコール酸、ポリカプロラクトン、ポリヒドロキシアルカン酸のような生分解性樹脂を用いることも環境負荷軽減の点から好ましい。本明細書において「生分解性」とは、JIS K6953−1に準じて測定されたポリエステルの生分解度が30%以上のものである。
【0028】
繊維の短繊維化処理手段としては、切断、剪断、破砕、粉砕、解砕、又は解繊する方法が挙げられ、例えば、機械式渦流粉砕機、ハンマークラッシャー等の衝撃破砕機、ジェットミル等のジェット粉砕機、ボールミル・ロッドミル等の媒体式粉砕機、カッターミル粉砕機、ディスクミル粉砕機等の乾式粉砕、並びに液体媒体を用いたメディア粉砕機、メディアレス粉砕機を用いた湿式粉砕機、並びこれらを組み合わせて使用することができる。より好ましい短繊維化の手段は、ナノファイバーが交絡した繊維集合体、例えば不織布を製造した後、該繊維集合体を適切な大きさに切断した後、機械式渦流粉砕機、カッターミル粉砕機、ディスクミル粉砕、湿式の高速せん断型メディアレス粉砕機、又は湿式の高圧せん断型メディアレス粉砕機を用いる。前記繊維集合体としては、不織布以外に、綿状体などの所定の厚みをもったものも含む。
【0029】
本発明組成物中の成分(b)の含有量は、形成された皮膜の耐久性、繊維ネットワークの形成し易さの観点から、皮膜形成組成物全体に対して0.5質量%以上10質量%以下である。
好ましい含有量は皮膜の耐久性、繊維ネットワークの形成し易さの観点から0.7質量%以上であり、より好ましくは1質量%以上である。
また、安定した組成物の形成性の観点から、9質量%以下が好ましく、8質量%以下がより好ましい。
皮膜形成組成物全体に対する成分(b)の含有量は、まず該組成物中に含まれる繊維のうち、前記の水不溶性ポリマーの定義によって水不溶性ポリマーの繊維と認められたものを得る。次いで、該繊維が不溶な溶剤にて洗浄後、濾過することにより水不溶性ポリマーの繊維だけを得る。溶剤は、成分(b)が含む樹脂がPLAなどのエステル系樹脂である場合はエタノールが、樹脂がアクリル系の場合は水が好ましい。得られた水不溶性ポリマーの繊維を計測して質量を求めることができ、洗浄前組成物、即ち皮膜形成組成物全体の質量との比、すなわち(洗浄後の成分(b)質量)/(洗浄前組成物の質量)×100(%)によって求めることができる。
【0030】
本発明組成物中の成分(b)と成分(a)の質量比(b/a)は、形成された皮膜の耐久性の観点から、0.005以上5以下である。
質量比(b/a)は、組成物のべたつき抑制の観点から、0.02以上が好ましく、0.05以上がより好ましく、0.1以上がさらに好ましい。
質量比(b/a)は、組成物の塗布しやすさの観点から、好ましくは4以下であり、外観を良く見せる観点から、より好ましくは3以下であり、さらに好ましくは2以下である。
【0031】
本発明の組成物においては、形成された皮膜中において繊維がネットワークを形成し、皮膜の耐久性を良好にするため、(平均繊維径)2/繊維含有量(μm2/質量%)が0.005以上7以下の範囲であることが好ましい。繊維含有量とは皮膜形成組成物における繊維の質量%を意味する。
この値は、均一な繊維のネットワークを十分に形成する観点、均一な繊維のネットワークを形成する観点から、好ましくは0.02以上であり、より好ましくは0.03以上であり、さらに好ましくは0.05以上である。
また、現実的な配合量を考慮すると、好ましくは6以下であり、より好ましくは5以下であり、さらに好ましくは4以下である。
この値、即ち(平均繊維径)2/繊維含有量(μm2/質量%)は、組成物に含まれる繊維の累積長さの指標であり、この数値が大きくなるほど累積長さが短くなることを意味する。
【0032】
本発明組成物は、さらに成分(a)以外の油剤、揮発性成分、界面活性剤、20℃で液体のポリオール、防腐剤、種々の粉体、保湿剤、紫外線吸収剤、水溶性ポリマー、アミノ酸、色素等を含有することができる。
【0033】
成分(a)以外の油剤としては、べたつきを防ぎ、さらさらした使用感を出せるため、シリコーン油、フッ素油等が挙げられる。このうち、シリコーン油及びフッ素油から選ばれる1種又は2種以上の油剤を含有することができる。ただし、シリコーン油及びフッ素油の含有量は、成分(a)を含む油剤全体の含有量に対して80質量%以下(0質量%以上80質量%以下)とするのが好ましく、0質量%以上75質量%以下がより好ましい。
【0034】
シリコーン油としては、ジメチルポリシロキサン、ポリエーテル変性シリコーン、アミノ変性シリコーン、カルボキシ変性シリコーン、メチルフェニルポリシロキサン、脂肪酸変性シリコーン、アルコール変性シリコーン、脂肪族アルコール変性シリコーン、エポキシ変性シリコーン、フッ素変性シリコーン、環状シリコーン、アルキル変性シリコーン等が挙げられる。
フッ素油としては、パーフルオロデカリン、パーフルオロアダマンタン、パーフルオロブチルテトラハイドロフラン、パーフルオロオクタン、パーフルオロノナン、パーフルオロペンタン、パーフルオロデカン、パーフルオロドデカン、パーフルオロポリエーテル等が挙げられる。
シリコーン油及びフッ素油の含有量や骨格構造は、前述の成分(a)の場合と同様に確認することができる。
【0035】
揮発性成分としては、水、アルコール、アミド類、ケトン、揮発性シリコーン油等が挙げられるが、水、アルコール、及び揮発性シリコーン油から選ばれる1種以上が好ましい。
【0036】
アルコールとしては例えば一価の鎖式脂肪族アルコール、一価の環式脂肪族アルコール、一価の芳香族アルコールが好適に用いられる。一価の鎖式脂肪族アルコールとしてはC1−C6アルコール、一価の環式アルコールとしてはC4−C6環式アルコール、一価の芳香族アルコールとしてはベンジルアルコール、フェニルエチルアルコール等がそれぞれ挙げられる。それらの具体例としては、エタノール、イソプロピルアルコール、ブチルアルコール、フェニルエチルアルコール、n−プロパノール、n−ペンタノールなどが挙げられる。安全性の観点からエタノールが更に好ましい。これらのアルコールは、これらから選ばれる1種又は2種以上を用いることができる。
揮発性シリコーン油としては、ジメチルポリシロキサン、環状シリコーンが挙げられる。
【0037】
界面活性剤としては、非イオン性界面活性剤、アニオン性界面活性剤、カチオン性界面活性剤等が挙げられ、例えば、ポリオキシエチレン・メチルポリシロキサン共重合体、ポリ(オキシエチレン・オキシプロピレン)メチルポリシロキサン共重合体、架橋型ポリエーテル変性シリコーン、架橋型アルキルポリエーテル変性シリコーン、セチルジメチコンコポリオール、モノステアリン酸プロピレングリコール、モノオレイン酸ソルビタン、ステアリン酸グリセリル、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ソルビタンセスキオレエート、モノオレイン酸ジグリセリル等が挙げられる。これらの界面活性剤は1種又は2種以上を組み合わせて用いても良い。
【0038】
20℃で液体のポリオールとしては、例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,3−プロパンジオール、1,3−ブタンジオール等のアルキレングリコール類;ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール、重量平均分子量が2000g/mol以下のポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール等のポリアルキレングリコール類;グリセリン、ジグリセリン、トリグリセリン等のグリセリン類等が挙げられる。これらのうち、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,3−ブタンジオール、ジプロピレングリコール、重量平均分子量が2000g/mol以下のポリエチレングリコール、グリセリン、ジグリセリンが好ましく、更にプロピレングリコール、1,3−ブタンジオール、グリセリンがより好ましく、プロピレングリコール、1,3−ブタンジオールが一層好ましい。
【0039】
防腐剤としてはフェノキシエタノール、パラオキシ安息香酸メチル、パラアミノ安息香酸エチル、パラオキシ安息香酸イソブチル、パラオキシ安息香酸イソプロピル、パラオキシ安息香酸エチル、パラオキシ安息香酸ブチル、パラオキシ安息香酸プロピル、パラオキシ安息香酸ベンジル、エチルヘキサンジオール等が挙げられる。
【0040】
本発明の組成物は、常法に従い、前記の成分を必要に応じて加熱して混合することにより製造することができる。
【0041】
本発明の組成物は、皮膜形成組成物であり、皮膚その他の基材に塗布することにより、皮膚又は基材表面上に均一な皮膜を形成させることができる。この皮膜中には、繊維がネットワークを形成しており、その結果得られた皮膜は耐久性に優れたものとなる。より好ましくは、得られた皮膜は透明性も優れている。
【0042】
本発明の組成物を皮膚に適用すれば、当該皮膚表面上に耐久性に優れた皮膜を形成させることができる。組成物の皮膚への適用手段としては、手指による塗布、スプレーによる塗布、ローラーやスポンジ等の道具を用いた塗布、スティック状固形化粧料の塗布等が挙げられる。
本発明により、皮膚表面上に形成された皮膜は、耐久性に優れるだけでなく、さらに透明性も良好であることが好ましい。
ここで、皮膜の厚さは、塗布量にもよるが通常の使用の範囲(塗布坪量1mg/cm2以上3mg/cm2以下)において、好ましくは0.3μm以上30μm以下であり、より好ましくは0.5μm以上20μm以下である。厚さは、基板に塗布した後に、基板上の接触式の膜厚計(株式会社ミツトヨ製ライトマチック VL−50A)で測定する。なお、ここで基板はPET製を用いる。
【0043】
上述した実施形態に関し、本発明は更に以下の組成物、製法、皮膜を開示する。
【0044】
<1>次の成分(a)及び(b);
(a)エステル油、エーテル油、炭化水素油及び高級アルコールから選ばれる1種又は2種以上の油剤、及び
(b)平均繊維径0.1μm以上7μm以下の繊維 皮膜形成組成物全体に対して0.5質量%以上10質量%以下
を含有し、(平均繊維径)2/繊維含有量(μm2/質量%)が0.005以上7以下であって、成分(b)と成分(a)の質量比(b/a)が0.005以上5以下である皮膜形成組成物。
【0045】
<2>成分(a)が、エステル油、エーテル油、炭化水素油及び高級アルコールから選ばれる1種又は2種以上の油剤であり、好ましくはエステル油、エーテル油及び炭化水素油から選ばれる1種又は2種以上の油剤である、<1>記載の皮膜形成組成物。
<3>成分(a)の油剤のHLB値が10以下、好ましくは8以下である<1>又は<2>記載の皮膜形成組成物。
<4>前記エーテル油が、アルキル−1,3−ジメチルブチルエーテル、エチレングリコールジオクチルエーテル、グリセロールモノオレイルエーテル及びジカプリリルエーテルから選ばれる1種又は2種以上であり、好ましくはセチル−1,3−ジメチルブチルエーテルを含む<2>又は<3>記載の皮膜形成組成物。
<5>前記炭化水素油が、ポリオレフィンワックス、ポリエチレンワックス、パラフィンワックス、セレシン、マイクロクリスタリンワックス及びワセリンから選ばれる1種又は2種以上を含む<2>又は<3>記載の皮膜形成組成物。
<6>成分(b)の平均繊維径が0.3μm以上4μm以下であり、好ましくは0.3μm以上3μm以下である<1>〜<5>のいずれかに記載の皮膜形成組成物。
<7>成分(b)が水不溶性ポリマーの繊維である<1>〜<6>のいずれかに記載の皮膜形成組成物。
<8>成分(b)が、皮膜形成後に不溶化処理できる完全鹸化ポリビニルアルコール、架橋剤と併用することで皮膜形成後に架橋処理できる部分鹸化ポリビニルアルコール、ポリメタクリル酸樹脂等のアクリル樹脂、ポリビニルブチラール樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリ乳酸、ポリ(N−プロパノイルエチレンイミン)グラフト−ジメチルシロキサン/γ−アミノプロピルメチルシロキサン共重合体等のオキサゾリン変性シリコーン、ポリビニルアセタールジエチルアミノアセテート及びツエインから選ばれる1種又は2種以上のポリマーを有する繊維であり;好ましくはポリビニルブチラール樹脂、アクリル樹脂、ポリプロピレン樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリ乳酸、ポリブチレンサクシネート、ポリグリコール酸、ポリカプロラクトン、及びポリヒドロキシアルカン酸から選ばれる1種又は2種以上のポリマーを有する繊維である<1>〜<7>のいずれかに記載の皮膜形成組成物。
<9>成分(b)が、(オクチルアクリルアミド/アクリル酸ヒドロキシプロピル/メタクリル酸ブチルアミノエチル)コポリマーを有する繊維である<1>〜<8>のいずれかに記載の皮膜形成組成物。
<10>成分(a)の含有量が、皮膜形成組成物全体に対して0.5質量%以上99質量%以下である<1>〜<9>のいずれかに記載の皮膜形成組成物。
<11>成分(a)の含有量が、皮膜形成組成物全体に対して1質量%以上95質量%以下が好ましく、より好ましくは1質量%以上90質量%以下であり、さらに好ましくは3質量%以上90質量%以下である<1>〜<10>のいずれかに記載の皮膜形成組成物。
<12>成分(a)の含有量が、好ましくは皮膜形成組成物全体に対して1質量%以上90質量%以下である<1>〜<11>のいずれかに記載の皮膜形成組成物。
<13>成分(b)の平均繊維長が20μm以上300μm以下であり、好ましくは25μm以上250μm以下であり、より好ましくは30μm以上200μm以下であり、さらに好ましくは40μm以上200μm以下である<1>〜<12>のいずれかに記載の皮膜形成組成物。
<14>成分(b)のアスペクト比(平均繊維長/平均繊維径)が8以上300以下である<1>〜<13>のいずれかに記載の皮膜形成組成物。
<15>成分(b)のアスペクト比(平均繊維長/平均繊維径)が10以上300以下であり、好ましくは15以上250以下であり、より好ましくは20以上250以下であり、さらに好ましくは20以上200以下である<1>〜<14>のいずれかに記載の皮膜形成組成物。
<16>成分(b)の繊維長のCV値が40以上100%以下であり、好ましくは42%以上95%以下であり、より好ましくは45%以上90%以下である<1>〜<15>のいずれかに記載の皮膜形成組成物。
<17>組成物中の(平均繊維径)2/繊維含有量(μm2/質量%)が0.02以上7以下であり、好ましくは0.02以上6以下であり、より好ましくは0.03以上5以下であり、さらに好ましくは0.05以上4以下である<1>〜<16>のいずれかに記載の皮膜形成組成物。
<18>成分(b)の含有量が0.7質量%以上10質量%以下であり、好ましくは0.7質量%以上9質量%以下であり、より好ましくは1質量%以上9質量%以下であり、さらに好ましくは1質量%以上8質量%以下である<1>〜<17>のいずれかに記載の皮膜形成組成物。
<19>成分(b)と成分(a)の質量比(b/a)が0.02以上5以下であり、好ましくは0.02以上4%以下であり、より好ましくは0.05以上4以下であり、さらに好ましくは0.1以上3以下であり、殊更好ましくは0.1以上2以下である<1>〜<18>のいずれかに記載の皮膜形成組成物。
<20>成分(b)の繊維が、繊維全体における繊維長40μm以上の繊維の本数割合が5%以上100%以下であり、好ましくは8%以上100%以下であり、より好ましくは15%以上100%以下である<1>〜<19>のいずれかに記載の皮膜形成組成物。
<21>シリコーン油及びフッ素油から選ばれる油剤を成分(a)の含有量に対して0質量%以上80質量%以下含有する<1>〜<20>のいずれかに記載の皮膜形成組成物。
<22>シリコーン油及びフッ素油から選ばれる油剤を成分(a)の含有量に対して0質量%以上75質量%以下含有する<1>〜<21>のいずれかに記載の皮膜形成組成物。
<23>アルコールを含み、好ましくはエタノールを含む<1>〜<22>のいずれかに記載の皮膜形成組成物。
<24><1>〜<23>のいずれかに記載の皮膜形成組成物を皮膚に適用する工程を含む、皮膚表面上における皮膜の製造方法。
<25>皮膜の厚さが、塗布坪量1mg/cm2以上3mg/cm2以下において、0.3μm以上30μm以下であり、好ましくは0.5μm以上20μm以下である<24>記載の皮膜の製造方法。
<26><1>〜<23>のいずれかに記載の皮膜形成組成物を含む皮膜。
<27>皮膜の厚さが、0.3μm以上30μm以下であり、好ましくは0.5μm以上20μm以下である<26>記載の皮膜。
【実施例】
【0046】
次に実施例を挙げて本発明を更に詳細に説明する。
【0047】
〔成分(b)の製造例〕
短繊維の製造例として実施例1を示す。
(1)表1のアクリル樹脂((オクチルアクリルアミド/アクリル酸ヒドロキシプロピル/メタクリル酸ブチルアミノエチル)コポリマー)をエタノールに溶解して、18質量%の溶液を得た。この溶液を用い、図1に示すエレクトロスピニング法の装置によって、コレクタの表面にナノファイバーシートを形成した。ナノファイバーの製造条件は次のとおりである。
・印加電圧:30kV・キャピラリ−コレクタ間距離:150mm・水溶液吐出量:12mL/hour・環境:25℃、30%RH
(2)得られたナノファイバーシートを適宜切断した後に、攪拌システム(プライミクス株式会社製、ラボリューション(登録商標))にディスパー翼を取り付け、回転数5000rpm、30分間粉砕し、繊維を得た。
実施例2〜10、13〜16は、表1に記載のポリマー濃度、回転数、剪断時間以外は実施例1と同様にして繊維を製造した。
また短繊維の製造例として実施例11を示す。
(1)表2のエステル樹脂(ポリ乳酸)をクロロホルムとジメチルホルムアミド(80:20重量比)に溶解して、20質量%の溶液を得た。これらの溶液を用い、図1に示すエレクトロスピニング法の装置によって、コレクタの表面にナノファイバーシートを形成した。ナノファイバーの製造条件は次のとおりである。
・印加電圧:30kV・キャピラリ−コレクタ間距離:150mm・水溶液吐出量:12mL/hour・環境:25℃、30%RH
(2)得られたナノファイバーシートを、分散装置(太平洋機工株式会社製、マイルダー)を用いて、13500rpmで循環ラインに循環数8回で剪断し、繊維を得た。
実施例12は、表1に記載のポリマー濃度、循環数以外は実施例11と同様にして繊維を製造した。
【0048】
〔組成物の製造例〕
得られた成分(b)を加え、表1及び表2の通り配合し、組成物とした。
得られた繊維の特性を表1及び表2に示す。
【0049】
【表1】
【0050】
【表2】
【0051】
*1:AMPHOMER 28-4910(アクゾノーベル株式会社)
*2:Ingeo6252D(Natureworks)
*3:エステモール N-01(日清オイリオグループ株式会社)
*4:ASE-166K(花王株式会社)
*5:クロピュア OL-LQ-(JP)(クローダジャパン株式会社)
*6:PERFORMALENE 700EP(NEW PHASE TECHNOCOGIES)
*7:PERFORMALENE 655(NEW PHASE TECHNOLOGIES)
*8:HNP-9(日本精蝋株式会社)
*9:SIMULGEL EG(SEPPIC)
*10:レオドール TW-S120V(花王株式会社)
*11:ニッコール HCO-10(日光ケミカルズ株式会社)
*12:ニッコール HCO-20(日光ケミカルズ株式会社)
*13: パールリーム4(日油株式会社)
*14: ニッコール スクワラン(日光ケミカルズ株式会社)
*15: 白ナイバー0.5−6D(株式会社コスメテリアルズ)
実施例8で使用したシリコーン油:ジメチルポリシロキサン(信越化学工業株式会社製KF-96A-10cs1.3%及びKF-96A-50cs5%)
実施例12で使用したシリコーン油:ジメチルポリシロキサン(信越化学工業株式会社製KF-96A-2cs0.7%,KF-96A-6cs0.5%,KF-96A-10cs21%)、ポリエーテル変性シリコーン(ダウ・東レ株式会社製SH3775 M25%,信越化学工業株式会社製KF-60150.6%)及び環状シリコーン(モメンティブ・パフォーマンス・マテリアルズ・ジャパン合同会社製TSF405A0.2%)
【0052】
実施例1〜12
表1〜2の組成物を製造し、当該組成物を人工皮革に均一に塗布して皮膜を形成させた。形成された皮膜の特性を評価した。
(評価方法)
(1)耐久性
人工皮革に組成物を2mg/cm2塗布し、乾燥15分後の塗布膜を指で20〜50gfの荷重で最大20回擦って、繊維の剥がれの有無を評価した。
4:剥がれなし。
3:10回目で剥がれる。
2:5回目で剥がれる。
1:1回目で剥がれる。
【0053】
(2)透明性
20代、30代の男女5名の前腕部に組成物を2mg/cm2塗布し、15分乾燥後の塗布膜を目視で判断、透明性について以下の基準により評価した。塗り広げる際には利き手で組成物を手に取り、もう一方の腕に塗布し、皮膜形成物を腕に塗り広げた。塗布する箇所には5cm×5cmの領域をマーキングし、50mgを手に取り、均一になるよう塗り広げた。塗布する際には腕に傷が無い部位であって、腕毛が少ない部位を選び塗布するようにした。表には5名中で人数の多い評価を記載する。
4:透明であり組成物末塗布部との境界が不明瞭。
3:概ね透明であり、見る角度によっては白く見える。
2:白浮きは軽微だが塗布膜全体が認識可能。
1:全体的に白浮きする。または繊維が目視で確認される。
【0054】
(3)ネットワークの形成
SEMにより、ネットワーク形成の有無を評価した。ネットワーク形成の評価は、繊維が他の繊維と2か所以上の交点を有し、繊維に囲まれた間隙が存在する状態を全体に確認できる場合をネットワークが形成されているとし、表中に「〇」と記載した。
【0055】
結果を表1〜2に示す。また実施例及び比較例でネットワークの形成の有無を判断する基準とした、ネットワーク形成有のSEMの参考画像を図2にネットワーク形成無のSEMの参考画像を図3に記す。
【0056】
実施例13〜16、比較例1、2
表3の組成物を製造し、当該組成物を人工皮革に均一に塗布して皮膜を形成させた。形成された皮膜の特性を評価した。評価方法は上記の記載と同じである。結果を表3に示す。
【0057】
【表3】
【符号の説明】
【0058】
10 静電スプレー装置
11 シリンジ
12 高電圧源
13 導電性コレクタ
11a シリンダ
11b ピストン
11c キャピラリ
図1
図2
図3