特許第6903794号(P6903794)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6903794
(24)【登録日】2021年6月25日
(45)【発行日】2021年7月14日
(54)【発明の名称】皮膜形成組成物
(51)【国際特許分類】
   A61K 8/81 20060101AFI20210701BHJP
   A61Q 1/00 20060101ALI20210701BHJP
   A61Q 19/00 20060101ALI20210701BHJP
   A61K 8/85 20060101ALI20210701BHJP
   A61K 8/34 20060101ALI20210701BHJP
   A61K 8/891 20060101ALI20210701BHJP
   A61K 8/31 20060101ALI20210701BHJP
【FI】
   A61K8/81
   A61Q1/00
   A61Q19/00
   A61K8/85
   A61K8/34
   A61K8/891
   A61K8/31
【請求項の数】9
【全頁数】19
(21)【出願番号】特願2020-94841(P2020-94841)
(22)【出願日】2020年5月29日
(65)【公開番号】特開2020-196712(P2020-196712A)
(43)【公開日】2020年12月10日
【審査請求日】2020年11月10日
(31)【優先権主張番号】特願2019-103336(P2019-103336)
(32)【優先日】2019年5月31日
(33)【優先権主張国】JP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000000918
【氏名又は名称】花王株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000084
【氏名又は名称】特許業務法人アルガ特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】石田 華緒梨
(72)【発明者】
【氏名】藤本 達也
(72)【発明者】
【氏名】廣野 信悟
(72)【発明者】
【氏名】小林 英男
【審査官】 星 浩臣
(56)【参考文献】
【文献】 特開2015−059161(JP,A)
【文献】 国際公開第2014/088072(WO,A1)
【文献】 特開2001−064153(JP,A)
【文献】 特開2018−108991(JP,A)
【文献】 特開2007−051106(JP,A)
【文献】 特開2015−209393(JP,A)
【文献】 特開2013−006810(JP,A)
【文献】 特開2017−109946(JP,A)
【文献】 国際公開第2017/135406(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 8/00−8/99
A61Q 1/00−90/00
D01F 1/00−6/96,9/00−9/04
D04H 1/00−18/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
次の成分(a)及び(b);
(a)平均繊維径0.1μm以上7μm以下、アスペクト比(平均繊維長/平均繊維径)8以上300以下の水不溶性ポリマーを含む繊維 皮膜形成組成物全体に対して0.5質量%以上10質量%以下、及び
(b)揮発性成分 皮膜形成組成物全体に対して15質量%以上90質量%以下
を含有し、(平均繊維径)2/繊維含有量(μm2/質量%)が0.005以上7以下であって、成分(a)の繊維長のCV値が40%以上100%以下であり、成分(a)と成分(b)の含有量の合計が97質量%以下である皮膜形成組成物。
【請求項2】
次の成分(a)及び(b);
(a)平均繊維径0.1μm以上7μm以下、アスペクト比(平均繊維長/平均繊維径)8以上300以下の繊維 皮膜形成組成物全体に対して0.5質量%以上10質量%以下、及び
(b)水、エタノール、シリコーン及びイソドデカンから選ばれる1種以上を含む揮発性成分 皮膜形成組成物全体に対して15質量%以上90質量%以下
を含有し、(平均繊維径)2/繊維含有量(μm2/質量%)が0.005以上7以下であって、成分(a)の繊維長のCV値が40%以上100%以下であり、成分(a)と成分(b)の含有量の合計が97質量%以下である皮膜形成組成物。
【請求項3】
成分(a)が水不溶性ポリマーを含む請求項に記載の皮膜形成組成物。
【請求項4】
さらに、(c)不揮発性油剤及び20℃で液体のポリオールから選ばれる1種又は2種以上を含有する請求項1〜3のいずれか1項に記載の皮膜形成組成物。
【請求項5】
20℃における粘度が5mPa・s以上50000mPa・s以下である請求項1〜のいずれか1項に記載の皮膜形成組成物。
【請求項6】
請求項1〜のいずれか1項に記載の皮膜形成組成物を皮膚に適用する工程を含む、皮膚表面上における皮膜の製造方法。
【請求項7】
次の成分(a)及び(b);
(a)平均繊維径0.1μm以上7μm以下、アスペクト比(平均繊維長/平均繊維径)8以上300以下の繊維 皮膜形成組成物全体に対して0.5質量%以上10質量%以下、及び
(b)揮発性成分 皮膜形成組成物全体に対して15質量%以上90質量%以下を含有し、(平均繊維径)2/繊維含有量(μm2/質量%)が0.005以上7以下であって、成分(a)の繊維長のCV値が40%以上100%以下であり、成分(a)と成分(b)の含有量の合計が97質量%以下である皮膜形成組成物を皮膚に適用する工程を含む、皮膚表面上における皮膜の製造方法。
【請求項8】
成分(a)が水不溶性ポリマーを含む請求項に記載の皮膜の製造方法。
【請求項9】
成分(b)が水、エタノール、シリコーン及びイソドデカンから選ばれる1種以上を含む請求項7又は8に記載の皮膜の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、皮膚表面上に微細な繊維を含有する皮膜を形成することができる皮膜形成組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
化粧品中に繊維を含有させる技術はよく知られており、マスカラ等では広く用いられている。また、皮膚等のケラチン物質をメイクアップする目的で、生理学的に許容可能な媒体中に繊維と、カルボキシラート基及びポリジメチルシロキサン基を含むコポリマーとを含有する組成物(特許文献1)が報告されている。さらに、刺激性成分を含む化粧品の刺激性を低減するために、化粧品に繊維を配合する技術も報告されている。さらに、化粧持ちを改善するために、長さ0.1〜5mmの短繊維を配合した皮膚化粧料(特許文献3)も報告されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2002−193746号公報
【特許文献2】特開2002−293718号公報
【特許文献3】特開平7−196440号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1及び2で使用されている繊維径は、0.9dtex(=10.7μm)と太く、繊維の含有量も少ないため、繊維によるネットワークが形成されず、組成物の塗布性、化粧皮膜の均一性に問題があった。また、特許文献3の皮膚化粧料も、繊維の含有量が少ないため、繊維によるネットワークが形成されず、得られる化粧皮膜の均一性に問題があった。
従って、本発明の課題は、微細な繊維を含有し、良好な塗布性を有し、皮膚に適用することにより得られる皮膜の均一性に優れた皮膜形成組成物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、次の成分(a)及び(b);
(a)平均繊維径0.1μm以上7μm以下、アスペクト比(平均繊維長/平均繊維径)8以上300以下の繊維 皮膜形成組成物全体に対して0.5質量%以上10質量%以下、及び
(b)揮発性成分 皮膜形成組成物全体に対して15質量%以上90質量%以下
を含有する皮膜形成組成物に関する。
本発明は、好ましくは、(平均繊維径)/繊維含有量(μm/質量%)が0.005以上7以下である。
本発明は、好ましくは、成分(a)と成分(b)の含有量の合計が97質量%以下である。
【0006】
また本発明は、前記の皮膜形成組成物を皮膚に適用する工程を含む、皮膚表面上における皮膜の製造方法に関する。
【0007】
また本発明は、平均繊維径が0.1μm以上7μm以下の短繊維を含有する薄膜形成用短繊維に関する。
本発明は、好ましくは、平均繊維長が20μm以上300μm以下の短繊維である。
本発明は、好ましくは、繊維長のCV値が40%以上100%以下の短繊維である。
本発明は、好ましくは、繊維全体における繊維長40μm以上の繊維の本数割合が5%以上である短繊維である。
【発明の効果】
【0008】
本発明の皮膜形成組成物を用いれば、密着性及び耐久性に優れる皮膜を容易に形成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】成分(a)の繊維の形成に用いた静電スプレー装置の構成を示す概略図である。
図2】ネットワーク形成有りのSEM画像の参考例を示す。
図3】ネットワーク形成無しのSEM画像の参考例を示す。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明の皮膜形成組成物は、次の成分(a)及び(b)を含有する。
(a)平均繊維径0.1μm以上7μm以下、アスペクト比(平均繊維長/平均繊維径)8以上300以下の繊維、
(b)揮発性成分。
【0011】
成分(a)は、平均繊維径0.1μm以上7μm以下、アスペクト比(平均繊維長/平均繊維径)8以上300以下の繊維である。当該成分(a)は、形成された皮膜中でネットワークを形成し、皮膜に均一性及び密着性を付与する。なお、皮膜中で繊維がネットワークを形成しているか否かは走査型電子顕微鏡(SEM)により確認できる。また、ネットワークとは、皮膜中に分散した繊維同士が互いに交点を持つことによって、間隙を持つようにした状態であり、該間隙に皮膜形成組成物に含有される成分を保持し得る状態である。
【0012】
繊維径は、原則として繊維の断面の直径である。ここで繊維の断面が円の場合は直径であるが、断面が楕円の場合は長径である。本発明に用いられる繊維の平均繊維径は、形成された皮膜の均一性の観点から、0.1μm以上7μm以下である。
現実的な配合量を考慮すると好ましくは0.2μm以上であり、より好ましくは0.3μm以上である。
また繊維の毛管力が高まり密着性が良くなる観点から好ましくは5μm以下であり、より好ましくは4μm以下であり、さらに好ましくは3μm以下である。
繊維径は、SEM観察によって、繊維を2000倍又は5000倍に拡大して観察し、その二次元画像から欠陥(例えば、繊維の塊、繊維の交差部分)を除いた繊維を任意に100本選び出し、繊維の長手方向に直交する線を引き繊維径を直接読み取ることにより測定できる。平均繊維径は、これらの測定値の相加平均を求めて、平均繊維径とする。繊維は皮膜形成組成物中に分散しているので、皮膜形成組成物を基板に薄く塗布してSEM観察によって計測する。
【0013】
繊維の長さは、形成された皮膜の均一性の観点から、平均繊維長として20μm以上300μm以下が好ましい。
ネットワーク形成がし易くなる観点からより好ましくは25μm以上であり、さらに好ましくは30μm以上であり、さらに好ましくは40μm以上である。
また、組成物塗布時に繊維同士の絡まりと縒れを抑制する観点からより好ましくは250μm以下であり、さらに好ましくは200μm以下であり、殊更好ましくは150μm以下である。
繊維長は、SEM観察によって、繊維の長さに応じて、250倍ないし750倍に拡大して観察し、その二次元画像から欠陥(例えば、繊維の塊、繊維の交差部分)を除いた繊維を任意に100本選び出し、繊維の長手方向に線を引き繊維長を直接読み取ることで測定することができる。平均繊維長はこれらの測定値の相加平均を求めて、平均繊維長とする。
【0014】
繊維のアスペクト比(平均繊維長/平均繊維径)は、形成された皮膜の均一性、均一なネットワークを形成による皮膜耐久性の観点から、8以上300以下である。
アスペクト比は、形成された皮膜の均一性、均一なネットワークを形成による皮膜耐久性の観点から、10以上が好ましく、15以上がより好ましく、20以上がさらに好ましく、25以上が殊更好ましく、繊維の絡まりを増やし薄膜の強度を向上する観点から40以上が特に好ましい。
またアスペクト比は、形成された皮膜の均一性、均一なネットワークを形成による皮膜耐久性の観点から、250以下がより好ましく、200以下がさらに好ましい。
本明細書で言うアスペクト比は、繊維一本についての値ではなく、前記繊維径の測定法に従って求めた平均繊維径と前記繊維長の測定法に従って求めた平均繊維長とから算出した値である。
【0015】
成分(a)の繊維の繊維長のCV値(変動係数:Coefficient of Variation)は、形成された被膜の均一性、繊維が皮膜中でネットワークを形成する観点から、40%以上100%以下であるのが好ましい。
ネットワークが形成し易くなる観点から、より好ましいCV値は42%以上であり、さらに好ましくは45%以上である。
また組成物の保存安定性が高まる観点から、より好ましくは95%以下であり、さらに好ましくは90%以下であり、殊更に好ましくは85%以下である。
CV値は(測定した繊維の長さの標準偏差)/(平均繊維長)×100[%]で求まる値である。前記の平均繊維径と平均繊維長の測定時に得られた測定値から算出する。
【0016】
成分(a)の繊維は、皮膜中で強固なネットワークを形成し、得られる皮膜の均一性の観点から、繊維全体における繊維長40μm以上の繊維の本数割合が5%以上であることが好ましい。
繊維長40μm以上の繊維は8%以上含有するのがより好ましく、さらに繊維の絡まりを増やし薄膜の強度を向上する観点から15%以上含有するのがさらに好ましい。
繊維長40μm以上の繊維の上限は500μm以下が好ましい。
またネットワークを形成し易くする観点から、繊維長40μm以上の繊維は100%以下含有するのが好ましい。
【0017】
成分(a)の繊維のうち、平均繊維径が0.1μm以上7μm以下、平均繊維長が20μm以上300μm以下、繊維長のCV値が40%以上100%以下、繊維全体における繊維長40μm以上の繊維の本数割合が5%以上である繊維が、薄膜形成用短繊維としてより好ましい。
当該薄膜形成用短繊維における平均繊維径、平均繊維長、繊維長のCV値、繊維長40μm以上の繊維の本数割合の好ましい範囲は、前記成分(a)の繊維の好ましい範囲と同じである。
【0018】
本発明の短繊維は、繊維形成性ポリマーを種々の公知の紡糸技術によって得られた繊維を短繊維化する工程を含むことによって、製造することができる。ここで、繊維形成性ポリマーは、通常、熱可塑性又は溶剤に可溶性の鎖状高分子である。好ましくは、熱可塑性樹脂であり、重量平均分子量1.0×10g/molから2.0×10g/molの熱可塑性樹脂がより好ましい。繊維形成性ポリマーのうち、水不溶性ポリマーを使用するのが薄膜形成組成物中で繊維の形状を維持する点で好ましい。
また、紡糸法としては、エレクトロスピニング法(電界紡糸法)が、繊維径の小さい繊維を得る点で好ましい。重量平均分子量は、例えばゲル浸透クロマトグラフィーを用いて、生分解性ポリエステルの重量平均分子量を測定する場合、ポリスチレン換算の重量平均分子量として、以下の条件に従って測定することができる。ポリスチレン標準試料としては、重量平均分子量が既知であり且つ重量平均分子量がそれぞれ異なるポリスチレン試料(例えば、東ソー株式会社製の単分散ポリスチレン(型番:F450、F288、F128、F80、F40、F20、F10、F4、F1、A5000、A2500、A1000、A500及びA300)を用いて分子量較正曲線を予め作成し、該較正曲線と測定試料の結果とを比較することによって測定することができる。
【0019】
<ゲル浸透クロマトグラフィー条件>
・測定装置:HLC−8220GPC(東ソー株式会社製)
・カラム:GMHHR−H+GMHHR−H(東ソー株式会社製)
・溶離液:1mmol ファーミンDM20(花王株式会社製)/CHCl3
・溶離液流量:1.0mL/min
・カラム温度:40℃
・検出器:RI
・サンプル濃度:0.1体積%(クロロホルム溶液)
・サンプル注入量:100mL
【0020】
水不溶性ポリマーの繊維とは、1気圧・23℃の環境下において、繊維1g秤量したのちに、10gの脱イオン水に浸漬し、24時間経過後、浸漬したポリマーの0.5g超が溶解しない性質を有するものをいう。
【0021】
水不溶性ポリマーとしては、例えば皮膜形成後に不溶化処理できる完全鹸化ポリビニルアルコール、架橋剤と併用することで皮膜形成後に架橋処理できる部分鹸化ポリビニルアルコール、ポリ(N−プロパノイルエチレンイミン)グラフト−ジメチルシロキサン/γ−アミノプロピルメチルシロキサン共重合体等のオキサゾリン変性シリコーン、ポリビニルアセタールジエチルアミノアセテート、ツエイン(とうもろこし蛋白質の主要成分)、ポリ乳酸(PLA)、ポリブチレンサクシネート、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリブチレンテレフタレート等のポリエステル樹脂、ポリアクリロニトリル樹脂、ポリメタクリル酸樹脂等のアクリル樹脂、ポリスチレン樹脂、ポリビニルブチラール樹脂、ポリビニルアセタール樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリアミド樹脂、ポリイミド樹脂、ポリアミドイミド樹脂、ポリプロピレン樹脂、ポリエチレン樹脂、各種のポリペプチド(コラーゲン、ゼラチン、フィブリン、カゼイン等)などが挙げられる。これらの水不溶性ポリマーは単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
これらの水不溶性ポリマーのうち、皮膜形成後に不溶化処理できる完全鹸化ポリビニルアルコール、架橋剤と併用することで皮膜形成後に架橋処理できる部分鹸化ポリビニルアルコール、ポリメタクリル酸樹脂等のアクリル樹脂、ポリビニルブチラール樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリ乳酸(PLA)、ポリ(N−プロパノイルエチレンイミン)グラフト−ジメチルシロキサン/γ−アミノプロピルメチルシロキサン共重合体等のオキサゾリン変性シリコーン、ポリビニルアセタールジエチルアミノアセテート、ツエインから選ばれる1種又は2種以上を用いることができる。
このうち、ナノファイバーの形成し易さの観点から、ポリビニルブチラール樹脂、アクリル樹脂、ポリプロピレン樹脂、ポリ乳酸等のポリスエステル及びポリウレタン樹脂から選ばれる1種又は2種以上がより好ましい。
アクリル樹脂としてはオクチルアクリルアミド/アクリル酸ヒドロキシプロピル/メタクリル酸ブチルアミノエチル)コポリマーが好ましい。
また、ポリ乳酸、ポリブチレンサクシネート、ポリグリコール酸、ポリカプロラクトン、ポリヒドロキシアルカン酸のような生分解性樹脂を用いることも環境負荷軽減の点から好ましい。本明細書において「生分解性」とは、JIS K6953−1に準じて測定されたポリエステルの生分解度が30%以上のものである。
【0022】
繊維の短繊維化処理手段としては、切断、剪断、破砕、粉砕、解砕、又は解繊する方法が挙げられ、例えば、機械式渦流粉砕機、ハンマークラッシャー等の衝撃破砕機、ジェットミル等のジェット粉砕機、ボールミル・ロッドミル等の媒体式粉砕機、カッターミル粉砕機、ディスクミル粉砕機等の乾式粉砕、並びに液体媒体を用いたメディア粉砕機、メディアレス粉砕機を用いた湿式粉砕機、並びこれらを組み合わせて使用することができる。
より好ましい短繊維化の手段は、ナノファイバーが交絡した繊維集合体、例えば不織布を製造した後、該繊維集合体を適切な大きさに切断した後、機械式渦流粉砕機、カッターミル粉砕機、ディスクミル粉砕、湿式の高速せん断型メディアレス粉砕機、又は湿式の高圧せん断型メディアレス粉砕機を用いる。前記繊維集合体としては、不織布以外に、綿状体などの所定の厚みをもったものも含む。
【0023】
本発明組成物中の成分(a)の含有量は、形成された皮膜の均一性、密着性、繊維ネットワークの形成し易さの点から、0.5質量%以上10質量%以下である。
組成物における現実的な配合量を考慮すると好ましい含有量は0.7質量%以上であり、より好ましくは1質量%以上である。
また組成物における現実的な配合量を考慮すると8質量%以下が好ましく、6質量%以下がより好ましい。
皮膜形成組成物全体に対する成分(a)の含有量は、まず該組成物中に含まれる繊維のうち、前記の水不溶性ポリマーの定義によって水不溶性ポリマーの繊維と認められたものを得る。次いで、該繊維が不溶な溶剤にて洗浄後、濾過することにより水不溶性ポリマーの繊維だけを得る。溶剤は、成分(a)が含む樹脂がポリ乳酸などのエステル系樹脂である場合はエタノールが、樹脂がアクリル系の場合は水が好ましい。水不溶性ポリマーの繊維を計測して質量を求めることができ、繊維の質量%は洗浄前組成物の重量との比、すなわち(洗浄後の成分(a)重量)/(洗浄前組成物の重量)によって求めることができる。
【0024】
成分(b)の揮発性成分は、本発明組成物の塗布性を良好にするとともに、形成される皮膜を均一にし、密着性を向上させる作用を示す。
本発明における揮発性とは、揮発性成分単体のその蒸気圧が20℃において0.01kPa以上106.66kPa以下であるものをいう。
【0025】
(b)揮発性成分としては、水、アルコール、アミド類、ケトン、揮発性シリコーン、揮発性炭化水素等が挙げられ、塗布しやすさ等の観点から、水、アルコール、及び揮発性シリコーン、揮発性炭化水素から選ばれる1種以上が好ましい。
【0026】
アルコールとしては例えば一価の鎖式脂肪族アルコール、一価の環式脂肪族アルコール、一価の芳香族アルコールが好適に用いられる。一価の鎖式脂肪族アルコールとしてはC−Cアルコール、一価の環式アルコールとしてはC−C環式アルコール、一価の芳香族アルコールとしてはベンジルアルコール、フェニルエチルアルコール等がそれぞれ挙げられる。それらの具体例としては、エタノール、イソプロピルアルコール、ブチルアルコール、フェニルエチルアルコール、n−プロパノール、n−ペンタノールなどが挙げられる。これらのアルコールは、これらから選ばれる1種又は2種以上を用いることができる。
揮発性シリコーンとしては、ジメチルポリシロキサン、環状シリコーンが挙げられる。
揮発性炭化水素としてはイソドデカン、水添ポリイソブテン等が挙げられる。
【0027】
(b)揮発性成分の含有量は、組成物の塗布性、皮膜の均一性の観点から、本発明組成物中に15質量%以上90質量%以下である。
皮膜形成組成物を皮膚や基板表面に塗布する際及び塗布後の使用感の観点から、17質量%以上がより好ましく、20質量%以上がさらに好ましく、30質量%以上が殊更好ましい。
また皮膜形成組成物を皮膚や基板表面に塗布した後の繊維ネットワークの形成性の観点、皮膜の耐久性の観点から、87質量%以下が好ましく、85質量%以下がより好ましい。
揮発性成分の含有量は、サンプルを加熱または減圧またはその組み合わせにより、その減少重量を計量することにより測定できる。赤外線水分計を用いて200℃で重量変化しなくなるまで加熱し、その重量減少から測定できる。
【0028】
本発明組成物においては、形成された皮膜中において繊維がネットワークを形成し、皮膜の均一性、密着性を良好にするため、(平均繊維径)/繊維含有量(μm/質量%)が0.005以上7以下の範囲であることが好ましい。繊維含有量とは皮膜形成組成物における繊維の質量%を意味する。
この値は、繊維のネットワークの均一性の観点から、好ましくは0.02以上、より好ましくは0.03以上、さらに好ましくは0.05以上である。
また、皮膜中で十分に繊維のネットワークを形成する観点から、好ましくは6以下、より好ましくは5以下、さらに好ましくは4以下であり、よりさらに好ましくは3以下である。
この値、即ち(平均繊維径)/平均繊維含有量(μm/質量%)は、組成物に含まれる繊維の累積長さの指標であり、この数値が大きくなるほど累積長さが短くなることを意味する。
【0029】
本発明組成物における成分(a)と成分(b)の合計含有量は、組成物の塗布性、形成される皮膜の均一性、密着性の観点から、97質量%以下である。
組成物における現実的な配合量を考慮すると92質量%以下が好ましく、90質量%以下がさらに好ましく、87質量%以下が殊更好ましい。
また組成物における現実的な配合量を考慮すると16質量%以上が好ましく、21質量%以上がより好ましく、31質量%以上がさらに好ましい。
【0030】
本発明組成物中の成分(a)と成分(b)の質量比(a/b)は、組成物の塗布性、形成される皮膜の均一性、密着性の感から、0.005以上が好ましく、0.01以上がより好ましい。
組成物における現実的な配合量を考慮すると0.7以下が好ましく、0.4以下がより好ましく、0.25以下がさらに好ましく、0.2以下が殊更好ましい。
【0031】
本発明の組成物には、前記成分(a)及び(b)以外に、(c)不揮発性油剤、(d)界面活性剤、(e)20℃で液体のポリオール、防腐剤、種々の粉体、前記成分(e)以外の保湿剤、水溶性ポリマー、アミノ酸、色素等を含有することができる。
【0032】
(c)不揮発性油剤としては、エステル油、炭化水素油、高級アルコール、エーテル油、シリコーン油、フッ素油等が挙げられる。
このうちエステル油、炭化水素油、エーテル油及び高級アルコールから選ばれる1種又は2種以上が皮膜に高い耐久性を付与する点でより好ましい。
成分(c)の含有量や骨格構造はNMR(核磁気共鳴装置)、クロマトグラフィー、IR分析等の公知の技術やその組み合わせによって分子構造を特定し同定することができる。また、成分(c)の含有量は、上記の測定によって、例えば上記の骨格構造を示す部分の測定値の強度で測定することができる。
【0033】
前記エステル油としては、直鎖若しくは分岐鎖の脂肪酸と直鎖若しくは分岐鎖のアルコール若しくは多価アルコールとからなるエステル、及び、トリグリセリン脂肪酸エステル(トリグリセライド)から選ばれる1種又は2種以上を用いることができる。
具体的には、ミリスチン酸イソプロピル、オクタン酸セチル、ミリスチン酸オクチルドデシル、パルミチン酸イソプロピル、ステアリン酸ブチル、ラウリン酸ヘキシル、ミリスチン酸ミリスチル、オレイン酸デシル、ジメチルオクタン酸ヘキシルデシル、乳酸セチル、乳酸ミリスチル、酢酸ラノリン、ステアリン酸イソセチル、イソステアリン酸イソセチル、12−ヒドロキシステアリル酸コレステリル、ジ2−エチルヘキサン酸エチレングリコール、ジペンタエリスリトール脂肪酸エステル、モノイソステアリン酸N−アルキルグリコール、ジカプリン酸ネオペンチルグリコール、リンゴ酸ジイソステアリル、ジ2−ヘプチルウンデカン酸グリセリン、トリ2−エチルヘキサン酸トリメチロールプロパン、トリイソステアリン酸トリメチロールプロパン、テトラ2−エチルヘキサン酸ペンタエリスリット、トリ2−エチルヘキサン酸グリセリル、トリイソステアリン酸トリメチロールプロパン、セチル2−エチルヘキサノエート、2−エチルヘキシルパルミテート、ナフタレンジカルボン酸ジエチルヘキシル、安息香酸(炭素数12〜15)アルキル、セテアリルイソノナノエート、トリ(カプリル酸・カプリン酸)グリセリン、(ジカプリル酸/カプリン酸)ブチレングリコール、トリラウリン酸グリセリル、トリミリスチン酸グリセリル、トリパルミチン酸グリセリル、トリイソステアリン酸グリセリル、トリ2−ヘプチルウンデカン酸グリセリル、トリベヘン酸グリセリル、トリヤシ油脂肪酸グリセリル、ヒマシ油脂肪酸メチルエステル、オレイン酸オレイル、パルミチン酸2−ヘプチルウンデシル、アジピン酸ジイソブチル、N−ラウロイル−L−グルタミン酸−2−オクチルドデシルエステル、アジピン酸ジ2−ヘプチルウンデシル、エチルラウレート、セバシン酸ジ2−エチルヘキシル、ミリスチン酸2−ヘキシルデシル、パルミチン酸2−ヘキシルデシル、アジピン酸2−ヘキシルデシル、セバシン酸ジイソプロピル、コハク酸ジ2−エチルヘキシル、クエン酸トリエチル、パラメトキシケイ皮酸2−エチルヘキシル、ジピバリン酸トリプロピレングリコール、ジイソステアリン酸ポリグリセリル、及びベヘン酸グリセリル等から選ばれる1種又は2種以上を用いることができる。
【0034】
これらの中では、形成された皮膜の密着性、耐久性の観点から、ミリスチン酸オクチルドデシル、ミリスチン酸ミリスチル、ステアリン酸イソセチル、イソステアリン酸イソセチル、セテアリルイソノナノエート、アジピン酸ジイソブチル、セバシン酸ジ2−エチルヘキシル、ミリスチン酸イソプロピル、パルミチン酸イソプロピル、リンゴ酸ジイソステアリル、ジカプリン酸ネオペンチルグリコール、安息香酸(炭素数12〜15)アルキル、トリ(カプリル酸・カプリン酸)グリセリンから選ばれる少なくとも1種が好ましく、ミリスチン酸イソプロピル、パルミチン酸イソプロピル、リンゴ酸ジイソステアリル、ジカプリン酸ネオペンチルグリコール、安息香酸(炭素数12〜15)アルキル、トリ(カプリル酸・カプリン酸)グリセリンから選ばれる少なくとも1種がより好ましく、ジカプリン酸ネオペンチルグリコール、安息香酸(炭素数12〜15)アルキル、トリ(カプリル酸・カプリン酸)グリセリン、ミリスチン酸イソプロピル、ジイソステアリン酸ポリグリセリル、及びベヘン酸グリセリルから選ばれる1種又は2種以上を含むことが更に好ましい。
なお、本発明における油剤は、HLB値が10以下のものであり、好ましくは8以下のものである。HLB値は、親水性−親油性のバランス(Hydrophile ipophile Balance)を示す指標であり、本発明においては、小田及び寺村らによる次式により算出した値を用いている。
HLB=(Σ無機性値/Σ有機性値)×10
【0035】
前記炭化水素油としては、流動パラフィン、スクワラン、スクワレン、n−オクタン、n−ヘプタン、シクロヘキサン、軽質イソパラフィン、及び流動イソパラフィン等の20℃で液状の炭化水素油、ワセリン、セレシン、パラフィンワックス、マイクロクリスタリンワックス、オゾケライト、水添ポリイソブテン、ポリエチレンワックス、及びポリオレフィンワックス等の20℃で固体あるいは半固体の炭化水素油が挙げられ、形成された皮膜の耐久性の観点から流動パラフィン、流動イソパラフィン、スクワラン、及びワセリンから選ばれる1種又は2種以上が好ましい。
【0036】
エーテル油としては、セチルジメチルブチルエーテル等のアルキル−1,3−ジメチルブチルエーテル、エチレングリコールジオクチルエーテル、グリセロールモノオレイルエーテル、ジカプリリルエーテル等が挙げられ、これらから選ばれる1種または2種以上を用いることができる。
【0037】
高級アルコールとしては、炭素数12〜20の高級アルコールが挙げられ、具体的にはセチルアルコール、ステアリルアルコール、イソステアリルアルコール、オレイルアルコール等が挙げられ、これらから選ばれる1種又は2種以上を用いることができる。高級アルコールとしてはセチルアルコールが好ましい。
【0038】
また、上記エステル油、炭化水素油を含む動植物油を用いることができる。動植物油としては、例えばオリーブ油、ホホバ油、マカデミアナッツ油、メドフォーム油、ヒマシ油、紅花油、ヒマワリ油、アボカド油、キャノーラ油、キョウニン油、米胚芽油、米糠油などが挙げられる。動植物油としてはオリーブ油が好ましい。
【0039】
シリコーン油としては、ジメチルポリシロキサン、ポリエーテル変性シリコーン、アミノ変性シリコーン、カルボキシ変性シリコーン、メチルフェニルポリシロキサン、脂肪酸変性シリコーン、アルコール変性シリコーン、脂肪族アルコール変性シリコーン、エポキシ変性シリコーン、フッ素変性シリコーン、環状シリコーン、アルキル変性シリコーン等が挙げられる。シリコーン油としては、ジメチルポリシロキサンが好ましい。
フッ素油としては、パーフルオロデカリン、パーフルオロアダマンタン、パーフルオロブチルテトラハイドロフラン、パーフルオロオクタン、パーフルオロノナン、パーフルオロペンタン、パーフルオロデカン、パーフルオロドデカン、パーフルオロポリエーテル等が挙げられる。
【0040】
本発明組成物中の成分(c)の含有量は、成分(a)の分散性、形成された皮膜の密着性、耐久性の観点から、2質量%以上が好ましく、5質量%以上がより好ましく、8質量%以上がさらに好ましい。
また、成分(a)の分散性、形成された皮膜の密着性、耐久性の観点から、80質量%以下が好ましく、75質量%以下がより好ましく、65質量%以下がさらに好ましい。
【0041】
シリコーン油及びフッ素油から選ばれる油剤の含有量は、形成された皮膜の密着性の観点から、成分(c)の含有量に対して80質量%以下(0〜80質量%)とするのが好ましく、75質量%以下(0〜75質量%)がより好ましく、70質量%以下(0〜70質量%)がさらに好ましい。
【0042】
(d)界面活性剤としては、非イオン性界面活性剤、アニオン性界面活性剤、カチオン性界面活性剤等が挙げられ、例えば、ポリオキシエチレン・メチルポリシロキサン共重合体、ポリ(オキシエチレン・オキシプロピレン)メチルポリシロキサン共重合体、架橋型ポリエーテル変性シリコーン、架橋型アルキルポリエーテル変性シリコーン、セチルジメチコンコポリオール、モノステアリン酸プロピレングリコール、モノオレイン酸ソルビタン、ステアリン酸グリセリル、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ソルビタンセスキオレエート、モノオレイン酸ジグリセリル等が挙げられる。これらの界面活性剤は1種又は2種以上を組み合わせて用いても良い。
非イオン性界面活性剤は、HLB値が10より大きなものが好ましく、より好ましくは12以上である。
界面活性剤としては非イオン性界面活性剤、アニオン性界面活性剤が好ましい。
非イオン性界面活性剤としてはモノステアリン酸ポリオキシエチレンソルビタン(20E.O.)及びトリステアリン酸ポリオキシエチレンソルビタン(20E.O.)が好ましい。
アニオン性界面活性剤としてはN−ステアロイル−L−グルタミン酸が好ましい。
【0043】
(e)20℃で液体のポリオールとしては、例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,3−プロパンジオール、1,3−ブタンジオール等のアルキレングリコール類;ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール、重量平均分子量が2000g/mol以下のポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール等のポリアルキレングリコール類;グリセリン、ジグリセリン、トリグリセリン等のグリセリン類等が挙げられる。これらのうち、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,3−ブタンジオール、ジプロピレングリコール、重量平均分子量が2000g/mol以下のポリエチレングリコール、グリセリン、ジグリセリンが好ましく、更にプロピレングリコール、1,3−ブタンジオール、グリセリンがより好ましく、プロピレングリコール、1,3−ブタンジオールが一層好ましい。
【0044】
防腐剤としてはフェノキシエタノール、パラオキシ安息香酸メチル、パラアミノ安息香酸エチル、パラオキシ安息香酸イソブチル、パラオキシ安息香酸イソプロピル、パラオキシ安息香酸エチル、パラオキシ安息香酸ブチル、パラオキシ安息香酸プロピル、パラオキシ安息香酸ベンジル、エチルヘキサンジオール等が挙げられる。
【0045】
本発明の組成物は、常法に従い、前記の成分を必要に応じて加熱して混合することにより製造することができる。
【0046】
本発明の組成物は、20℃における粘度が、塗り広げやすさの観点から、5mPa・s以上が好ましく、より好ましくは10mPa・s以上、更に好ましくは10000mPa・s以上である。
現実的な配合量を考慮すると20℃における粘度が、50000mPa・s以下であることが好ましく、より好ましくは30000mPa・s以下、更に好ましくは20000mPa・s以下である。
本発明の組成物の粘度は、20℃において、B型粘度計(VISCOMETER TV−10、東機産業株式会社)で測定することができ、ローター、回転数は、測定器により定められた基準に従う。
【0047】
本発明の組成物は、皮膜形成組成物であり、皮膚その他の基板に塗布することにより、皮膚又は基板表面上に均一な皮膜を形成させることができる。また、この皮膜は揮発による揮発成分の消失により繊維のネットワークが形成される。その結果、得られた皮膜は均一性、密着性に優れたものとなる。
【0048】
本発明の組成物を皮膚に適用すれば、当該皮膚表面上に均一性に優れた皮膜を形成させることができる。組成物の皮膚への適用手段としては、手指による塗布、スプレーによる塗布、ローラーやスポンジ等の道具を用いた塗布、スティック状固形化粧料の塗布等が挙げられる。手で塗れる範囲としては20℃における粘度は、上述の範囲であることが好ましい。
本発明により、皮膚表面上に形成された皮膜は均一性が良好であり、また密着性及び耐久性に優れ、好ましくは透明性も良好である。
ここで、皮膜の厚さは、塗布量にもよるが通常の使用の範囲(塗布坪量1〜3mg/cm)において、好ましくは0.3μm以上30μm以下であり、より好ましくは0.5μm以上20μm以下である。厚さは、基板に塗布した後に、基板上の接触式の膜厚計(株式会社ミツトヨ製ライトマチック VL−50A)で測定する。なお、ここで基板はPET製を用いる。
【0049】
上述した実施形態に関し、本発明は更に以下の組成物、製造法、繊維を開示する。
【0050】
<1>次の成分(a)及び(b);
(a)平均繊維径0.1μm以上7μm以下、アスペクト比(平均繊維長/平均繊維径)8以上300以下の繊維 皮膜形成組成物全体に対して0.5質量%以上10質量%以下、及び
(b)揮発性成分 皮膜形成組成物全体に対して15質量%以上90質量%以下
を含有し、(平均繊維径)/繊維含有量(μm/質量%)が0.005以上7以下であって、成分(a)と成分(b)の含有量の合計が97質量%以下である皮膜形成組成物。
【0051】
<2>成分(a)が水不溶性ポリマーを含む<1>記載の皮膜形成組成物。
<3>成分(a)が皮膜形成後に不溶化処理できる完全鹸化ポリビニルアルコール、架橋剤と併用することで皮膜形成後に架橋処理できる部分鹸化ポリビニルアルコール、ポリメタクリル酸樹脂等のアクリル樹脂、ポリビニルブチラール樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリ乳酸、ポリ(N−プロパノイルエチレンイミン)グラフト−ジメチルシロキサン/γ−アミノプロピルメチルシロキサン共重合体等のオキサゾリン変性シリコーン、ポリビニルアセタールジエチルアミノアセテート及びツエインから選ばれる1種又は2種以上の繊維であり;好ましくはポリビニルブチラール樹脂、アクリル樹脂、ポリプロピレン樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリ乳酸、ポリブチレンサクシネート、ポリグリコール酸、ポリカプロラクトン、及びポリヒドロキシアルカン酸から選ばれる1種又は2種以上を含む<1>または<2>記載の皮膜形成組成物。
<4>成分(a)がポリ乳酸である<1>〜<3>のいずれかに記載の皮膜形成組成物。
<5>成分(a)の含有量が0.5質量%以上10質量%以下であり、好ましくは0.7質量%以上8質量%以下であり、より好ましくは1質量%以上6質量%以下である<1>〜<4>のいずれかに記載の皮膜形成組成物。
<6>成分(a)の平均繊維径が0.2μm以上5μm以下であり、好ましくは0.3μm以上4μm以下であり、より好ましくは0.3μm以上3μm以下である<1>〜<5>のいずれかに記載の皮膜形成組成物。
<7>成分(a)の平均繊維長が20μm以上300μm以下であり、好ましくは25μm以上250μm以下であり、より好ましくは30μm以上200μm以下であり、さらに好ましくは40μm以上200μm以下である<1>〜<6>のいずれかに記載の皮膜形成組成物。
<8>成分(a)のアスペクト比(平均繊維長/平均繊維径)が8以上300以下であり、好ましくは10以上300以下であり、より好ましくは15以上250以下であり、さらに好ましくは20以上250以下であり、さらに好ましくは20以上200以下である<1>〜<7>のいずれかに記載の皮膜形成組成物。
<9>成分(a)の繊維長のCV値が40%以上100%以下であり、好ましくは42%以上95%以下であり、より好ましくは45%以上90%以下である<1>〜<8>のいずれかに記載の皮膜形成組成物。
<10>組成物中の(平均繊維径)/繊維含有量(μm/質量%)が0.02以上7以下であり、好ましくは0.02以上6以下であり、より好ましくは0.03以上5以下であり、さらに好ましくは0.05以上4以下である<1>〜<9>のいずれかに記載の皮膜形成組成物。
<11>成分(b)が、水、アルコール、アミド類、揮発性シリコーン及び揮発性炭化水素から選ばれる一種以上を含む;好ましくは水、アルコール、揮発性シリコーン及び揮発性炭化水素から選ばれる1種以上を含む<1>〜<10>のいずれかに記載の皮膜形成組成物。
<12>成分(b)が水、エタノール、シリコーン及びイソドデカンから選ばれる1種以上を含む<1>〜<11>のいずれかに記載の皮膜形成組成物。
<13>成分(b)の含有量が、17質量%以上87質量%以下であり、好ましくは17質量%以上85質量%以下であり、より好ましくは20質量%以上85質量%以下であり、さらに好ましくは30質量%以上85質量%以下である<1>〜<12>のいずれかに記載の皮膜形成組成物。
<14>成分(b)の含有量が、17質量%以上85質量%以下であり、成分(a)の含有量が、0.7質量%以上8質量%以下であり、好ましくは1質量%以上6質量%以下である<1>〜<13>のいずれかに記載の皮膜形成組成物。
<15>成分(a)と成分(b)の合計含有量が、好ましくは16質量%以上97質量%以下であり、より好ましくは21質量%以上90質量%以下であり、さらに好ましくは31質量%以上90質量%以下である<1>〜<14>のいずれかに記載の皮膜形成組成物。
<16>成分(a)と成分(b)の合計含有量が、好ましくは21質量%以上90質量%以下である<1>〜<15>のいずれかに記載の皮膜形成組成物。
<17>成分(a)と成分(b)の質量比(a/b)が、0.005以上0.7以下であり、好ましくは0.005以上0.4以下であり、より好ましくは0.001以上0.25以下であり、殊更好ましくは0.001以上0.2以下である<1>〜<16>のいずれかに記載の皮膜形成組成物。
<18>成分(a)と成分(b)の質量比(a/b)が、0.01以上0.25以下である<1>〜<17>のいずれかに記載の皮膜形成組成物。
<19>さらに、(c)不揮発性油剤及び(e)ポリオールから選ばれる1種又は2種以上を含有する<1>〜<18>のいずれかに記載の皮膜形成組成物。
<20>(c)不揮発性油剤が、エステル油、炭化水素油、高級アルコール、エーテル油、シリコーン油及びフッ素油から選ばれる1種又は2種以上の不揮発性油剤を含む<19>に記載の皮膜形成組成物。
<21>(c)不揮発性油剤の含有量が、2質量%以上80質量%以下であり、好ましくは5質量%以上75質量%以下であり、より好ましくは8質量%以上65質量%以下である<19>又は<20>に記載の皮膜形成組成物。
<22>20℃における粘度が5mPa・s以上50000mPa・s以下である<1>〜<21>のいずれかに記載の皮膜形成組成物。
<23>20℃における粘度が10mPa・s以上30000mPa・s以下である<1>〜<22>のいずれかに記載の皮膜形成組成物。
<24><1>〜<23>のいずれかに記載の皮膜形成組成物を皮膚に適用する工程を含む、皮膚表面上における皮膜の製造方法。
【0052】
<25>平均繊維径が0.1μm以上7μm以下、平均繊維長が20μm以上300μm以下、繊維長のCV値が40%以上100%以下、繊維全体における繊維長40μm以上の繊維の本数割合が5%以上100%以下である薄膜形成用短繊維。
<26>繊維全体における繊維長40μm以上の繊維の本数割合が8%以上100%以下であり、好ましくは15%以上100%以下である<25>記載の薄膜形成用短繊維。
<27>繊維が水不溶性ポリマーを含む<25>又は<26>記載の短繊維。
<28>繊維が生分解性を有する繊維である<25>〜<27>のいずれかに記載の短繊維。
<29>繊維が平均分子量1.0×10g/mol以上2.0×10g/mol以下の熱可塑性樹脂を含む<25>〜<28>のいずれかに記載の短繊維。
<30>アスペクト比(平均繊維長/平均繊維径)が8以上300以下である<25>〜<29>のいずれかに記載の短繊維。
<31>アスペクト比(平均繊維長/平均繊維径)が、10以上300以下であり、好ましくは15以上250以下であり、より好ましくは20以上250以下であり、さらに好ましくは25以上200以下である<25>〜<30>のいずれかに記載の短繊維。
<32>平均繊維径が0.2μm以上5μm以下である<25>〜<31>のいずれかに記載の短繊維。
<33>平均繊維径が、0.3μm以上4μm以下であり、好ましくは0.3μm以上3μm以下である<25>〜<32>のいずれかに記載の短繊維。
<34>平均繊維長が25μm以上250μm以下である<25>〜<33>のいずれかに記載の短繊維。
<35>平均繊維長が、30μm以上200μm以下であり、好ましくは40μm以上200μm以下であり、さらに好ましくは40μm以上150μm以下である<25>〜<34>のいずれかに記載の短繊維。
<36>繊維長のCV値が42%以上95%以下である<25>〜<35>のいずれかに記載の短繊維。
<37>繊維長のCV値が、45%以上90%以下であり、さらに好ましくは45%以上85%以下である<25>〜<36>のいずれかに記載の短繊維。
<38>エレクトロスピニング法で製造されたナノファイバーを短繊維化する工程を含む、<25>〜<37>のいずれかに記載の短繊維の製造方法。
<39><25>〜<38>のいずれかに記載の短繊維を含む皮膜。
<40>皮膜の厚さが、0.3以上30μm以下であり、好ましくは0.5μm以上20μm以下である<39>記載の皮膜。
【実施例】
【0053】
次に実施例を挙げて本発明を更に詳細に説明する。
【0054】
〔成分(a)の製造例〕
短繊維の製造例として実施例1を示す。
(1)表1のアクリル樹脂、具体的には(オクチルアクリルアミド/アクリル酸ヒドロキシプロピル/メタクリル酸ブチルアミノエチル)コポリマーをエタノールに溶解して、18質量%の溶液を得た。この溶液を用い、図1に示すエレクトロスピニング法の装置によって、コレクタの表面にナノファイバーシートを形成した。ナノファイバーの製造条件は次のとおりである。
・印加電圧:30kV・キャピラリ−コレクタ間距離:150mm・水溶液吐出量:12mL/hour・環境:25℃、30%RH(2)得られたナノファイバーシートを適宜な大きさに切断した後、攪拌システム(プライミクス株式会社製、ラボリューション(登録商標))にディスパー翼を取り付け、回転数8000rpm、15分間剪断し、繊維を得た。
【0055】
実施例2〜4、7〜11、13は表1にある、ポリマー濃度、回転数、剪断時間以外は実施例1と同様にして繊維を製造した。
また短繊維の製造例として実施例5を示す。
表1のエステル樹脂(PLA)をクロロホルムとジメチルホルムアミド(80:20重量比)に溶解して、20質量%の溶液を得た。これらの溶液を用い、図1に示すエレクトロスピニング法の装置によって、コレクタの表面にナノファイバーシートを形成した。ナノファイバーの製造条件は次のとおりである。
・印加電圧:30kV・キャピラリ−コレクタ間距離:150mm・水溶液吐出量:12mL/hour・環境:25℃、30%RH(2)得られたナノファイバーシートを、分散装置(太平洋機工株式会社製、マイルダー)を用いて、13500rpmで循環ラインに循環数8回で剪断し、繊維を得た。
実施例6、12は表1にある、ポリマー濃度、循環数以外は実施例4と同様にして繊維を製造した。
【0056】
〔組成物の製造例〕
得られた成分(a)を加え、表1の通り配合し、組成物とした。
得られた繊維の特性を表1に示す。
【0057】
【表1】
【0058】
*1:AMPHOMER 28-4910(アクゾノーベル株式会社)
*2:ポリ乳酸Ingeo6252D(Natureworks)
*3:クロピュア OL-LQ(クローダジャパン株式会社)
*4:エステモール N-01(日清オイリオグループ株式会社)
*5:コスモール 42V(日清オイリオグループ株式会社)
*6:サンソフト No.8100-C(太陽化学株式会社)
*7:シリコーン KF-96A-10CS(信越化学工業株式会社)
*8:シリコーン KF-96A-50CS(信越化学工業株式会社)
*9:シリコーン KSG-16(信越化学工業株式会社)
*10:PEG-1540(-G)(日油株式会社)
*11:レオドール TW-S120V(花王株式会社)
*12:レオドール TW-S320V(花王株式会社)
*13:アミソフト HA-P(味の素株式会社)
*14:SIMULGEL EG(SEPPIC社)
*15:PEMULEN TR-1(Lubrizol Advanced Materials)
*16:白ナイバー 0.5-6D(株式会社コスメテリアルズ)
このうち*2は生分解性である。
【0059】
実施例1〜9
表1の皮膜形成組成物を製造し、当該組成物を人工皮革に均一に塗布して皮膜を形成させた。形成された皮膜の特性を評価した。
(評価方法)
(1)密着性
人工皮革に皮膜形成組成物を2mg/cm塗布し、15min乾燥後の転写性を評価した。転写性は、黒紙を押し当てた後の繊維の転写性を以下の判断基準で、目視により評価した。
4:転写なし。
3:転写は少ないが、転写部分を一部(40%未満)確認。
2:40%以上70%未満転写。
1:70%以上転写。
【0060】
(2)均一性
人工皮革に皮膜形成組成物を2mg/cm、指で塗布(10〜20gf)、塗布膜の均一性を目視して、以下の基準で評価した。
4:塗りムラがない。
3:塗りムラが塗布面積全体の30%未満で目視可能。
2:塗りムラが塗布面積全体の30%以上70%未満目視可能。
1:塗りムラが塗布面積全体の70%以上存在する。
【0061】
(3)塗布性
20代、30代の男女10人に、皮膜形成組成物を2mg/cm塗布させ(塗布部位:腕)、その時の塗り広げやすさを評価させ、平均値を算出し、小数点第一位を四捨五入した。塗り広げる際には利き手で皮膜形成組成物を手に取り、もう一方の腕に塗布し、皮膜形成物が透明になる程度に腕に塗り広げた。塗布する箇所には5cm×5cmの領域をマーキングし、50mgを手に取り、均一になるよう塗り広げた。塗布する際には腕に傷が無い部位であって、腕毛が少ない部位を選び塗布するようにした。評価基準は以下のとおりである。
4:非常に塗り広げやすい。
3:塗り広げやすい。
2:塗り広げにくい(縒れやすい)。
1:塗り広げることが困難。
【0062】
(4)ネットワーク形成
SEMにより、ネットワーク形成の有無を評価した。
ネットワーク形成の評価は、繊維が他の繊維と2か所以上の交点を有し、繊維に囲まれた間隙の存在を全体に確認できる場合をネットワークが形成されているとし、表中に「〇」と記載した。
【0063】
結果を表1に示す。また実施例及び比較例でネットワークの形成の有無を判断する基準とした、ネットワーク形成有りのSEMの参考画像を図2に、ネットワーク形成無しのSEMの画像を図3に記す。
【0064】
実施例10〜13、比較例1、2
表2の皮膜形成組成物を製造し、当該組成物を人工皮革に均一に塗布して皮膜を形成させた。形成された皮膜の特性を評価した。評価方法は実施例1〜9と同様である。
【0065】
【表2】
【符号の説明】
【0066】
10 静電スプレー装置
11 シリンジ
12 高電圧源
13 導電性コレクタ
11a シリンダ
11b ピストン
11c キャピラリ
図1
図2
図3