【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明の基礎となる目的は、請求項1の特徴を有する作動流体容器によって達成される。作動流体容器の有利な実施形態が、従属請求項に記載される。
【0014】
特に、本発明の基礎となる目的は、作動流体を収容するための自動車用の作動流体容器であって、作動流体容器が、大気に少なくとも間接的に流体接続される補償容器を有し、補償容器は、補償容器上側シェルの外面が作動流体容器上側シェルの内面と対向して配置されるように作動流体容器内に配置され、大気に対して作動流体容器中が正圧の場合に補償容器容積が減少し、大気に対して作動流体容器中が負圧の場合に補償容器容積が増加する作動流体容器によって達成される。本発明による作動流体容器は、作動流体容器上側シェルと対向する補償容器上側シェルが、少なくとも部分的に、作動流体容器上側シェルと相補的な形状を有することを特徴とする。
【0015】
本発明による作動流体容器は、利用可能な作動流体容器内部が改善した有用性を有するという利点を有する。というのは、作動流体容器上側シェルに対する補償容器上側シェルの少なくとも部分的に相補的な設計に起因して、補償容器が、作動流体容器に対して近くにあるためである。加えて、本発明による作動流体容器は、たとえば、弁、ライン、ニップルなどといった、作動流体容器中に配置される内蔵部品が、補償容器の膨張期間および圧縮期間に、補償容器によってより小さい力を受けるかまたは全く力を受けないという利点を有する。これは、補償容器が膨張状態であるか圧縮状態であるかに関わらず、補償容器上側シェルが本質的にその形状を維持するためである。
【0016】
補償容器は、作動流体容器の作動流体容器内部に配置される。結果として、作動流体を、作動流体容器内部へと充填可能である。
【0017】
大気に対する補償容器の流体接続は、好ましくは、通気ラインによって達成される。
【0018】
補償容器の材料は、可撓性のある設計を有する。この特徴によって、弾性のある設計を有する、特許文献1で知られている容積変更要素と、本発明による作動流体容器の補償容器と、がやはり区別される。
【0019】
大気に対して作動流体容器の中が正圧の場合に補償容器容積が減少し、大気に対して作動流体容器の中が負圧の場合に補償容器容積が増加するため、補償容器は、可変の補償容器容積を有する。
【0020】
補償容器上側シェルとは、作動流体容器の設置位置において補償容器の上壁を形成する補償容器の壁エリアである。同じことが、作動流体容器上側シェルについても当てはまる。
【0021】
作動流体容器上側シェルと対向する補償容器上側シェルが作動流体容器上側シェルと相補的な形状を有する特徴は、補償容器上側シェルが、作動流体容器上側シェルのトポロジーのネガに相当するトポロジーを有するように表すこともできる。作動流体容器上側シェルのトポロジーとは、互いに対する、作動流体容器上側シェルの内面の空間的な関係を意味すると理解される。補償容器上側シェルのトポロジーとは、互いに対する、補償容器上側シェルの外面の空間的な関係を意味すると理解される。
【0022】
加えて、作動流体容器上側シェルと対向する補償容器上側シェルが作動流体容器上側シェルと相補的な形状を有する特徴は、補償容器上側シェルが少なくとも部分的に作動流体容器上側シェルの内面の輪郭と係合するように表すことができる。
【0023】
補償容器上側シェルの形状、したがって補償容器上側シェルの外面のトポロジーは、大気と、作動流体容器中の内圧と、の圧力差とは、本質的に無関係である。
【0024】
補償容器上側シェルの外面の形状は、好ましくは、作動流体容器上側シェルの中/上に配置される、たとえば、弁および/またはラインなどといった内蔵部品にも適合される。
【0025】
補償容器上側シェルおよび/または補償容器下側シェルの形状は、作動流体容器上側シェルおよび/または作動流体容器下側シェル上に搭載される内蔵部品が、たとえば、補償容器上側シェルおよび/または補償容器下側シェルから凹所に隠されるように適合させることができる。
【0026】
補償容器上側シェルは、補償容器の上壁と呼ぶこともできる。
【0027】
補償容器は、好ましくは、単数または複数のフィルム素材を熱形成することによって形成することができる。このタイプの製造で、補償容器上側シェルを、作動流体容器上側シェルの形状に正確に適合させることができる。
【0028】
補償容器、特に補償容器上側シェルは、好ましくは、射出成形プロセスによっても製造される。このタイプの製造で、補償容器上側シェルを、作動流体容器上側シェルの形状に正確に適合させることができる。
【0029】
3次元構造を形成するため複数のフィルム素材を連結することによって、補償容器を製造することも可能である。
【0030】
さらに、2つの平坦なフィルム素材を局所的な接続点に連結することによって補償容器を製造することも可能である。本プロセスでは、2つのフィルムは、周囲連結用継ぎ目内の選択したエリアにおける媒体漏れ防止のため、周囲連結用継ぎ目の隣で連結され、そのため、補償容器が膨張した状態で、テンションロッドアンカーが形成され、テンションロッドアンカーを周囲連結用継ぎ目と組み合わせて、補償容器の、特に膨張した状態で画定される輪郭がもたらされる。
【0031】
作動流体容器は、好ましくは、補償容器の圧縮状態において、補償容器上側シェルが、少なくとも部分的に、作動流体容器上側シェルと相補的な形状を有するように設計される。
【0032】
圧縮状態では、作動流体容器内の圧力は、作動流体容器の周りの大気圧より大きい。圧縮状態では、補償容器は、最大補償容器容積と比較して小さい補償容器容積を有する。補償容器の圧縮状態で、補償容器容積がその最小の設計値を有することも可能である。
【0033】
さらに、作動流体容器は、好ましくは、補償容器の膨張状態において、補償容器上側シェルが、少なくとも部分的に、作動流体容器上側シェルと相補的な形状を有するように設計される。
【0034】
そのような設計を有する作動流体容器は、補償容器が可能な最大の膨張をしたにもかかわらず、特に、作動流体容器上側シェルの中/上に配置される内蔵部品または取付け部品に、補償容器によって力がかからないかまたは力が減るという利点を有する。こうして、作動流体容器は、長期の安定性を延ばしている。加えて、補償容器の損傷が回避される。
【0035】
膨張状態では、作動流体容器内の圧力は、作動流体容器の周りの大気圧より低い。補償容器は、好ましくは、充填レベルに依存して、膨張状態でその最大の設計容量を有する。
【0036】
作動流体容器は、好ましくは、補償容器上側シェルおよび補償容器下側シェルが異なる剛性を有するように設計される。
【0037】
そのような設計を有する作動流体容器は、作動流体容器内部における圧力変化の期間に、規定された膨張および収縮運動を補償容器が受けるという利点を有する。これは、より低い剛性を有する補償容器のシェルだけが、圧力変化の期間に、膨張または収縮運動を受けることになるためである。結果として、補償容器上側シェルの形状、または好ましくは、補償容器下側シェルの形状のいずれかが、作動流体容器内の圧力変化の期間に変わる。
【0038】
加えて、作動流体容器は、好ましくは、補償容器上側シェルおよび補償容器下側シェルが異なる曲げ強さを有するように設計される。
【0039】
さらに、作動流体容器は、好ましくは、補償容器上側シェルが補償容器下側シェルより高い剛性を有するように設計される。
【0040】
そのような設計を有する作動流体容器は、作動流体容器内で圧力変動する場合、もっぱらまたは主に、補償容器下側シェルが、膨張および収縮運動を受けるという利点を有する。これは、作動流体容器上側シェルの中/上に配置される内蔵部品および取付け部品の、さらにより良好な保護を実現する。加えて、そのような設計を有する作動流体容器では、特に有効な形で、その作動流体容器内部を使用することができる。というのは、作動流体容器上側シェルに対して、補償容器上側シェルが適合するかまたはほとんど嵌合することに起因して、作動流体容器の対応する空間が常に利用されるためである。
【0041】
あるいは、作動流体容器は、補償容器上側シェルが補償容器下側シェルよりも低い剛性を有するように設計することができる。
【0042】
作動流体容器は、好ましくは、補償容器上側シェル(21)の厚さが補償容器下側シェル(25)の厚さより厚いように設計される。
【0043】
そのような設計を有する作動流体容器は、任意の内蔵部品または取付け部品への機械的応力が減ると、補償容器が、炭化水素などといった気体の作動流体容器の成分について、透過性が減るという利点を有する。補償容器上側シェルが補償容器下側シェルよりも厚いため、補償容器上側シェルは、気体の作動流体成分について、より低い透過性を有することができる。補償容器下側シェルは、こうしてより薄い設計を有することができ、気体の作動流体成分について、より大きい透過性を有することができる。
【0044】
あるいは、作動流体容器は、補償容器上側シェルの厚さが補償容器下側シェルの厚さ以下であるように設計することができる。
【0045】
作動流体容器は、好ましくは、補償容器上側シェルの剛性を増すため、補償容器上側シェルが補強構造を有するように設計される。
【0046】
補強構造は、好ましくは、補償容器上側シェルの外面上および/または内面上に形成される、補強リブの形でまたは補強グリッドの形で実装される。補強構造の設計に関して制限はない。
【0047】
作動流体容器は、好ましくは、補償容器が作動流体容器内部に着脱可能に固定されるように設計される。
【0048】
そのような設計を有する作動流体容器は、補償容器が損傷した場合に、新しい補償容器と容易に交換可能であるという利点を有する。補償容器の着脱可能な固定は、好ましくは、面ファスナーによって行われる。
【0049】
作動流体容器は、好ましくは、補償容器が、好ましくはスポット溶接部を介して所定の点で、かつ/または、好ましくは部分的なエリアの溶接部を介して部分的なエリアにわたって、作動流体容器上側シェルに連結されるように設計される。
【0050】
作動流体容器内での補償容器の位置は、作動流体容器に対する補償容器の適切な接続部によって規定され、そのため、補償容器の膨張および/または収縮動作期間の、内蔵部品とのいかなる衝突も、なお一層効果的な方法で回避することができる。
【0051】
点接続部および/または部分的なエリアの接続部は、接続部によって、補償容器の膨張および/または収縮動作を妨害しないという利点も有する。
【0052】
補償容器上側シェルは、スポット溶接部または部分的なエリアの溶接部によって、好ましくは、作動流体容器上側シェルまたは作動流体容器の側壁に連結される。
【0053】
作動流体容器は、好ましくは、補償容器上側シェルおよび/または補償容器下側シェルが、作動流体の気体成分に対して不透過性であるバリア層を有するように設計される。
【0054】
バリア層は、好ましくは、EVOH層として設計される。さらに、バリア層は、好ましくは、ポリアミド層として設計される。ポリアミドは、線状ポリアミドおよび/または環状ポリアミドを含むことができる。バリア層を設けることによって、さらに少ない気体成分が周りに放出され、そのため、補償容器容積と大気との間に配置され、好ましくは活性炭フィルタまたはいわゆるハニカムフィルタとして設計される吸着フィルタは、サイズを小さくすることができる。
【0055】
加えて、作動流体容器は、好ましくは、補償容器上側シェルおよび/または補償容器下側シェルが多層構造を有するように設計される。
【0056】
補償容器上側シェルの多層構造に起因して、気体の作動流体成分についての良好なバリア特性と、特に補償容器下側シェルの良好な変形性と、などといった、典型的には両立しない特性を互いに組み合わせることができる。したがって、そのような設計を有する作動流体容器は、良好な容積利用および低い放出レベルを有する。
【0057】
さらに、作動流体容器は、好ましくは、補償容器上側シェルおよび/または補償容器下側シェルが、2つの接着促進剤層の間に挟まれるバリア層を有し、バリア層の外側がそれぞれポリエチレン層に一体に連結されるように設計される。
【0058】
作動流体容器は、好ましくは、補償容器上側シェルが補償容器下側シェルに周囲の溶接部によって連結されるように設計される。
【0059】
そのような補償容器の製造は、特に簡単である。加えて、特に、補償容器上側シェルの形状は、作動流体容器上側シェルの形状に、より一層効果的な方法で適合することができる。
【0060】
さらに、作動流体容器は、好ましくは、作動流体容器内部に配置される防沫壁を有し、補償容器が作動流体容器内部に配置されて防沫壁に当接するように設計される。
【0061】
補償容器の位置決めは、作動流体容器の適切な設計でさらに一層改善される。加えて、自動車の運転動作期間に、作動流体の運動によって引き起こされて補償容器に及ぼされる力は、改善した方法で吸収することができ、そのため、そのような設計を有する作動流体容器は、長期の安定性を改善する。
【0062】
作動流体容器は、好ましくは、作動流体容器の上面図において、補償容器の断面積が、作動流体容器の断面積の30%よりも大きい断面積に相当するように設計される。
【0063】
作動流体容器の、すなわち、作動流体容器上側シェルの上面図において、補償容器の断面積は、より好ましくは、作動流体容器の断面積の40%よりも大きい断面積に相当する。作動流体容器の上面図において、補償容器の断面積は、より好ましくは、作動流体容器の断面積の50%よりも大きい断面積に相当する。作動流体容器の上面図において、補償容器の断面積は、より好ましくは、作動流体容器の断面積の60%よりも大きい断面積に相当する。作動流体容器の上面図において、補償容器の断面積は、より好ましくは、作動流体容器の断面積の70%よりも大きい断面積に相当する。作動流体容器の上面図において、補償容器の断面積は、より好ましくは、作動流体容器の断面積の80%よりも大きい断面積に相当する。作動流体容器の上面図において、補償容器の断面積は、より好ましくは、作動流体容器の断面積に相当する。
【0064】
補償容器の断面積がより大きくなるほど、所望の圧力補償特性を確保するために、補償容器下側シェルの上昇がより小さくなる必要がある。
【0065】
加えて、作動流体容器は、好ましくは、補償容器下側シェルが少なくとも部分的に補償容器上側シェルと相補な形状を有するように設計される。
【0066】
そのような設計を有する補償容器により、利用可能な作動流体容器内部は、利用において、さらに一層改善される。
【0067】
別の有利な実施形態によれば、作動流体容器は、補償容器下側シェルが、少なくとも部分的に作動流体容器下側シェルと相補的な形状を有するように設計される。
【0068】
そのような設計を有する作動流体容器により、補償容器が膨張する場合に、作動流体容器上側シェルの中に配置されていないさらなる内蔵部品さえ、補償容器に起因した、力の作用または過剰に大きい力の作用から保護される。
【0069】
本発明のさらなる利点、詳細、および特徴は、以下で説明される例示的な実施形態からもたらされる。