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特許6903821並列コンバータシステムの制御システムおよび制御方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6903821
(24)【登録日】2021年6月25日
(45)【発行日】2021年7月14日
(54)【発明の名称】並列コンバータシステムの制御システムおよび制御方法
(51)【国際特許分類】
   H02M 7/12 20060101AFI20210701BHJP
   H02J 3/38 20060101ALI20210701BHJP
【FI】
   H02M7/12 W
   H02J3/38
【請求項の数】10
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2020-513649(P2020-513649)
(86)(22)【出願日】2018年5月22日
(65)【公表番号】特表2020-532944(P2020-532944A)
(43)【公表日】2020年11月12日
(86)【国際出願番号】CN2018087796
(87)【国際公開番号】WO2019047559
(87)【国際公開日】20190314
【審査請求日】2020年3月5日
(31)【優先権主張番号】201710788447.3
(32)【優先日】2017年9月5日
(33)【優先権主張国】CN
(73)【特許権者】
【識別番号】515063024
【氏名又は名称】南京南瑞▲継▼保▲電気▼有限公司
【氏名又は名称原語表記】NR ELECTRIC CO., LTD
(73)【特許権者】
【識別番号】515063046
【氏名又は名称】南京南瑞▲継▼保工程技▲術▼有限公司
【氏名又は名称原語表記】NR ENGINEERING CO., LTD.
(74)【代理人】
【識別番号】100121728
【弁理士】
【氏名又は名称】井関 勝守
(74)【代理人】
【識別番号】100165803
【弁理士】
【氏名又は名称】金子 修平
(74)【代理人】
【識別番号】100170900
【弁理士】
【氏名又は名称】大西 渉
(72)【発明者】
【氏名】汪 楠楠
(72)【発明者】
【氏名】盧 宇
(72)【発明者】
【氏名】董 云龍
(72)【発明者】
【氏名】田 杰
(72)【発明者】
【氏名】姜 崇学
(72)【発明者】
【氏名】王 佳成
(72)【発明者】
【氏名】李 鋼
(72)【発明者】
【氏名】丁 久東
(72)【発明者】
【氏名】李 海英
【審査官】 麻生 哲朗
(56)【参考文献】
【文献】 特開2001−025171(JP,A)
【文献】 特開2002−272124(JP,A)
【文献】 特開昭61−224831(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02M 7/12
H02J 3/38
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
並列コンバータシステムの制御方法であって、前記並列コンバータシステムは少なくとも2つの並列電圧源コンバータを含み、前記電圧源コンバータが同じまたは接続された交流母線に並列接続され、前記並列コンバータシステムは、アイランド制御モードで動作するコンバータを少なくとも1つ含み、前記制御方法は、
周波数参照値Frefに基づいてシステム電圧位相参照値θrefを計算するステップ1と、
交流母線上の母線電圧を収集するステップ2と、
収集された母線電圧を処理して、母線電圧有効値参照値とシステム電圧位相参照値θrefによって定められる、有効電流参照値Idrefと無効電流参照値Iqrefを得るステップ3と

有効電流参照値Idref、無効電流参照値Iqrefおよびシステム電圧位相参照値θrefをコンバータ制御信号として各アイランド制御モードのコンバータに出力するステップ4と、
いずれかのアイランド制御モードのコンバータに対して、受信された制御信号に基づいて、このコンバータの有効電流が有効電流参照値Idrefに従い、かつ無効電流が無効電流参照値Iqrefに従うように制御するステップ5と、を含み、
前記アイランド制御モードのコンバータが交流母線電圧の振幅と周波数を制御することを制御目標とする並列コンバータシステムの制御方法。
【請求項2】
前記周波数参照値Frefはシステムの定格周波数Fnであり、またはFref=Fn+Kf(Pref-P)であり、前記Kfは比例係数であり、値の範囲は-100から100までであり、Prefは並列コンバータの総有効電力参照値であり、Pは実際の並列コンバータの総有効電力である、
請求項1に記載の並列コンバータシステムの制御方法。
【請求項3】
ステップ4の前記コンバータ制御信号がi番目のアイランド制御モードのコンバータに出力される前に、有効電流参照値Idrefに有効割当係数Kdiを乗じ、i番目のアイランド制御モードのコンバータの有効電流参照値Idrefiが得られ、無効電流参照値Iqrefに無効割当係数Kqiを乗じ、i番目のアイランド制御モードのコンバータの無効電流参照値Iqrefiが得られ、0≦Kdi≦1、0≦Kqi≦1、iの値の範囲は1からアイランド制御モードのコンバータの数までであり、各コンバータの有効割当係数Kdまたは無効割当係数Kqは同じでもよいし、異なってもよいこと
を特徴とする請求項1に記載の並列コンバータシステムの制御方法。
【請求項4】
ステップ5の前記いずれかのアイランド制御モードのコンバータは電流ベクトル制御を採用する、請求項1に記載の並列コンバータシステムの制御方法。
【請求項5】
前記各コンバータのいずれか一つのコンバータは、コンバータの有効電力を制限する必要がある場合、有効電流参照値の大きさを有効電流制限値Idlim以下に制限し、前記各コンバータのいずれか一つのコンバータは、コンバータの無効電力を制限する必要がある場合、無効電流参照値の大きさを無効電流制限値Iqlim以下に制限し、
前記有効電流制限値Idlimは、下記2つの方式の1つによって生成され、
i)前記有効電流制限値Idlimは予め設定された値であり、値の範囲は0からコンバータの最大有効電流までであり、
ii)前記有効電流制限値Idlimはこのコンバータ有効電力制限値と実際の有効との偏差がPIコントローラによって変調された値であり、
前記無効電流制限値Iqlimは、下記2つの方式の1つによって生成され、
i)前記無効電流制限値Iqlimは予め設定された値であり、値の範囲は0からコンバータの最大無効電流までであり、
ii)前記無効電流制限値Iqlimは、このコンバータ無効電力制限値と実際の無効との偏差がPIコントローラによって変調された値であることを特徴とする請求項1に記載の並列コンバータシステムの制御方法。
【請求項6】
並列コンバータシステムは少なくとも2つの並列電圧源コンバータを含み、これらのコンバータが同じまたは接続された交流母線に並列接続され、前記制御システムは、共通の交流電圧コントローラと各コンバータ独自の電流コントローラとを含み、前記交流電圧コントローラは、
周波数参照値Frefに基づいて、システム電圧の位相参照値θrefを計算する参照位相生成手段と、
交流母線上の母線電圧を収集する交流電圧サンプリング手段と、
収集された母線電圧を処理して、有効電流参照値Idrefと無効電流参照値Iqrefを得、前記有効電流参照値Idrefと無効電流参照値Iqrefが母線電圧の有効値参照値とシステム電圧の位相参照値θrefによって一意に決定される、電流参照値計算手段と、を含み、
前記交流電圧コントローラは有効電流参照値Idref、無効電流参照値Iqref、およびシステム電圧位相参照値θrefをコンバータ制御信号として、通信により各アイランド制御モードのコンバータの電流コントローラに送信することにより、各コンバータが出力する有効電流が有効電流参照値Idrefに従い、かつ無効電流が無効電流参照値Iqrefに従うように制御し、
前記交流電圧コントローラの配置は、下記2つの方式の1つを採用し、
i)前記交流電圧コントローラとコンバータの電流コントローラは、同じ制御装置に配置されていること、
ii)前記交流電圧コントローラとコンバータの電流コントローラは、異なる制御装置に配置されていること、
複数の制御装置に交流電圧コントローラが配置されている場合、同じタイミングで、全てのコンバータの電流コントローラは、設定された優先度に応じて、その中の1つの交流電圧コントローラが出力したコンバータ制御信号のみを採用する、並列コンバータシステムの制御システム。
【請求項7】
前記交流電圧コントローラは、比例積分コントローラ、スライディングモードコントローラ、デッドビートコントローラ、或いは非線形コントローラの1つを採用し、前記電流コントローラは、比例積分コントローラ、スライディングモードコントローラ、デッドビートコントローラ、或いは非線形コントローラを採用する、請求項6に記載の並列コンバータシステムの制御システム。
【請求項8】
交流電圧コントローラは、i番目のアイランド制御モードのコンバータに対して、有効電流参照値Idrefに有効割当係数Kdiを乗じ、i番目のアイランド制御モードのコンバータの有効電流参照値Idrefiが得られ、無効電流参照値Iqrefに無効割当係数Kqiを乗じ、i番目のアイランド制御モードのコンバータの無効電流参照値Iqrefiが得られ、0≦Kdi≦1、0≦Kqi≦1、iの値の範囲は1からアイランド制御モードのコンバータの数までであり、各コンバータの有効割当係数Kdまたは無効割当係数Kqは同じでもよいし、異なってもよい、電力割当手段をさらに含む、請求項6に記載の並列コンバータシステムの制御システム。
【請求項9】
前記コンバータの電流コントローラは、有効電流参照値の大きさを有効電流制限値Idlim以下に制限し、無効電流参照値の大きさを無効電流制限値Iqlim以下に制限する電力制限手段を含み、
前記有効電流制限値Idlimは、下記2つの方式の1つによって生成され、
i)前記有効電流制限値Idlimは予め設定された値であり、値の範囲は0からコンバータの最大有効電流までであり、
ii)前記有効電流制限値Idlimは、このコンバータの有効電力制限値と実際の有効との偏差がPIコントローラによって変調された値であり、
前記無効電流制限値Iqlimは、下記2つの方式の1つによって生成され、
i)前記無効電流制限値Iqlimは予め設定された値であり、値の範囲は0からコンバータの最大無効電流までであり、
ii)前記無効電流制限値Iqlimは、このコンバータの無効電力の制限値と実際の無効との偏差がPIコントローラによって変調された値であることを特徴とする請求項6に記載の並列コンバータシステムの制御システム。
【請求項10】
交流電圧コントローラと電流コントローラが同じ制御装置にある時は、バックプレートバスを介して参照信号を伝送し、異なる装置にある時は、IEC60044−8プロトコル、イーサネット(登録商標)プロトコル、またはTDMプロトコルという標準プロトコルを介して通信する、請求項6に記載の並列コンバータシステムの制御システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は電力システムのフレキシブル直流送電技術分野に関し、特に並列コンバータシステムの制御システムおよび制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
フレキシブル直流送電技術は広い範囲で新エネルギーのグリッドをより効果的に実現し、新エネルギーの効率的な集約、柔軟な伝達及び分散消費を保証することができる。高電圧と大容量のフレキシブル直流システムによって、新エネルギーを集める時、信頼性を高めるために、普通は複数のコンバータが並列接続され、1つのコンバータが故障した後、他のコンバータから一部の電力が転送され、電力の損失を減らすことができる。よく使われるのはバイポーラトポロジであって、電圧源コンバータが同じまたは接続された交流母線に並列接続されたものである。
【0003】
フレキシブル直流グリッドが新エネルギー離島システムに接続される時、コンバータは安定的な交流電圧を離島ネットワークに供給すべき、この時のフレキシブル直流システムの総電力は新エネルギー離島システムによって定められる。複数のコンバータが新エネルギーを含む離島システムに並列接続される場合には、離島ネットワークに安定的な交流電圧を供給することを考慮するのみならず、例えば、正常時に複数のコンバータが如何に均衡した電力を伝送するか、或いは如何に設定された割合で電力を伝送するか、およびコンバータの過負荷時に如何にコンバータの最大電力を制限するか、など、複数のコンバータ間の協調制御を考慮する必要もある。
【0004】
複数のコンバータが並列接続され、大容量の新エネルギーを離島接続方式で送り出すことを実現するためには、複数のコンバータが並列接続される離島制御方法およびシステムを採用して、複数のコンバータに対する協調制御を実現する必要がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の目的は、共通の交流電圧制御コントローラを採用して、複数のコンバータの電流制御の参照信号を生成し、離島グリッドの交流電圧制御および複数のコンバータ間の電力割当および電力制限を実現する、並列コンバータシステムの離島制御方法とシステムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、本発明が採用する技術ソリューションは下記の通りである。
【0007】
並列コンバータシステムの制御方法であって、前記並列コンバータシステムは少なくとも2つの並列電圧源コンバータを含み、これらのコンバータが同じまたは接続された交流母線に並列接続され、前記並列コンバータシステムは、離島制御モードで動作するコンバータを少なくとも1つ含み、前記システム方法は、
周波数参照値Frefに基づいてシステム電圧位相参照値θrefを計算するステップ1と、
交流母線上の母線電圧を収集するステップ2と、
収集された母線電圧を処理して、母線電圧有効値参照値とシステム電圧位相参照値θrefによって一意に決定される、有効電流参照値Idrefと無効電流参照値Iqrefを得るステップ3と、
有効電流参照値Idref、無効電流参照値Iqrefおよびシステム電圧位相参照値θrefをコンバータ制御信号として各離島制御モードのコンバータに出力するステップ4と、
いずれかの離島制御モードのコンバータに対して、受信された制御信号に基づいて、このコンバータの有効電流が有効電流参照値Idrefに従い、かつ無効電流が無効電流参照値Iqrefに従うように制御するステップ5を含み、
前記離島制御モードのコンバータの制御目標は、交流母線電圧の振幅と周波数を制御することとする。
【0008】
上記並列コンバータシステムの制御方法であって、前記周波数参照値Frefはシステムの定格周波数Fnであり、またはFref=Fn+Kf(Pref-P)であり、前記Kfは比例係数であり、値の範囲は-100から100までであり、Prefは並列コンバータの総有効電力参照値であり、Pは実際の並列コンバータの総有効電力である。
【0009】
上記並列コンバータシステムの制御方法であって、ステップ4の前記コンバータ制御信号がi番目の離島制御モードのコンバータに出力される前に、有効電流参照値Idrefに有効割当係数Kdiを乗じ、i番目の離島制御モードのコンバータの有効電流参照値Idrefiが得られ、無効電流参照値Iqrefに無効割当係数Kqiを乗じ、i番目の離島制御モードのコンバータの無効電流参照値Iqrefiが得られ、0≦Kdi≦1、0≦Kqi≦1、iの値の範囲は1から離島制御モードのコンバータの数までであり、各コンバータの有効割当係数Kd、または無効割当係数Kqは同じでもよいし、異なってもよい。
【0010】
上記並列コンバータシステムの制御方法であって、ステップ5の前記いずれかの離島制御モードのコンバータは電流ベクトル制御を採用する。
【0011】
上記並列コンバータシステムの制御方法であって、前記各コンバータのいずれかのコンバータは、コンバータの有効電力を制限する必要がある場合、有効電流参照値の大きさを有効電流制限値Idlim以下に制限し、前記各コンバータのいずれかのコンバータは、コンバータの無効電力を制限する必要がある場合、無効電流参照値の大きさを無効電流制限値Iqlim以下に制限し、
前記有効電流制限値Idlimは、下記2つの方式の1つによって生成され、
i)前記有効電流制限値Idlimは予め設定された値であり、値の範囲は0からコンバータの最大有効電流までであり、
ii)前記有効電流制限値Idlimは、このコンバータの有効電力制限値と実際の有効との偏差がPIコントローラによって変調された値であり、
前記無効電流制限値Iqlimは、下記2つの方式の1つによって生成され、
i)前記無効電流制限値Iqlimは予め設定された値であり、値の範囲は0からコンバータの最大無効電流までであり、
ii)前記無効電流制限値Iqlimは、このコンバータの無効電力制限値と実際の無効との偏差がPIコントローラによって変調された値である。
【0012】
並列コンバータシステムの制御システムであって、前記並列コンバータシステムは少なくとも2つの並列電圧源コンバータを含み、これらのコンバータが同じまたは接続された交流母線に並列接続され、前記制御システムは、共通の交流電圧コントローラと各コンバータ独自の電流コントローラとを含み、前記交流電圧コントローラは、
周波数参照値Frefに基づいて、システム電圧位相参照値θrefを計算する参照位相生成手段と、
交流母線上の母線電圧を収集する交流電圧のサンプリング手段と、
収集された母線電圧を処理して、有効電流参照値Idrefと無効電流参照値Iqrefを得、有効電流参照値Idrefと無効電流参照値Iqrefが母線電圧有効値参照値とシステム電圧位相参照値θrefによって一意に決定される、電流参照値計算手段と、を含み、
前記交流電圧コントローラは有効電流参照値Idref、無効電流参照値Iqrefおよびシステム電圧位相参照値θrefをコンバータ制御信号として、通信により各離島制御モードのコンバータの電流コントローラに送信することにより、各コンバータが出力した有効電流が有効電流参照値Idrefに従い、かつ無効電流が無効電流参照値Iqrefに従うように制御し、
前記交流電圧コントローラの配置は、下記2つの方式の1つを採用し、
i)前記交流電圧コントローラとコンバータの電流コントローラは、同じ制御装置に配置されていること、
ii)前記交流電圧コントローラとコンバータの電流コントローラは、異なる制御装置に配置されていること、
複数の制御装置に交流電圧コントローラが配置されている場合、同じタイミングで、全てのコンバータの電流コントローラは、設定された優先度に応じて、その中の1つの交流電圧コントローラが出力したコンバータ制御信号のみを採用する。
【0013】
上記並列コンバータシステムの制御システムであって、前記交流電圧コントローラは、比例積分コントローラ、スライディングモードコントローラ、デッドビートコントローラおよび非線形コントローラの1つを採用し、前記電流コントローラは、比例積分コントローラ、スライディングモードコントローラ、デッドビートコントローラおよび非線形コントローラの1つを採用する。
【0014】
上記並列コンバータシステムの制御システムであって、交流電圧コントローラはさらに電力割当手段を含み、i番目の離島制御モードのコンバータに対して、有効電流参照値Idrefに有効割当係数Kdiを乗じ、i番目の離島制御モードのコンバータの有効電流参照値Idrefiが得られ、無効電流参照値Iqrefに無効割当係数Kqiを乗じ、i番目の離島制御モードのコンバータの無効電流参照値Iqrefiが得られ、0≦Kdi≦1、0≦Kqi≦1、iの値の範囲は1から離島制御モードのコンバータの数までであり、各コンバータの有効割当係数Kdまたは無効割当係数Kqは同じでもよいし、異なってもよい。
【0015】
上記並列コンバータシステムの制御システムであって、前記コンバータの電流コントローラはさらに電力制限手段を含み、有効電流参照値の大きさを有効電流制限値Idlim以下に制限し、無効電流参照値の大きさを無効電流制限値Iqlim以下に制限する。
前記有効電流制限値Idlimは、次の2つの方式の1つによって生成され、
i)前記有効電流制限値Idlimは予め設定された値であり、値の範囲は0からコンバータの最大有効電流までであり、
ii)前記有効電流制限値Idlimは、このコンバータ有効電力制限値と実際の有効との偏差がPIコントローラによって変調された値であり、
前記無効電流制限値Iqlimは、次の2つの方式の1つによって生成され、
i)前記無効電流制限値Iqlimは予め設定された値であり、値の範囲は0からコンバータの最大無効電流までであり、
ii)前記無効電流制限値Iqlimは、このコンバータの無効電力制限値と実際の無効との偏差がPIコントローラによって変調された値である。
【0016】
上記並列コンバータシステムの制御システムであって、交流電圧コントローラと電流コントローラが同じ制御装置にある場合は、バックプレートバスを介して参照信号を伝送し、異なる装置にある場合は、IEC60044−8プロトコル、イーサネット(登録商標)プロトコル、またはTDMプロトコルという標準プロトコルの一つを介して通信する。
【発明の効果】
【0017】
上記ソリューションを採用すると、本発明の有益な効果は下記の通りである。
【0018】
(1)本発明に係る並列コンバータシステムの制御方法およびシステムは、上位交流電圧制御コントローラと複数の下位コンバータの電流コントローラとを組み合わせて、機能的にデカップリングし、オブジェクト向けの設計要件を満たし、信頼性が高い。
【0019】
(2)本発明に係る並列コンバータシステムの制御方法およびシステムは、システム電圧位相が共通の上位交流電圧制御コントローラによって生成され、複数のコンバータの同期を効果的に保証することができる。
【0020】
(3)本発明に係る並列コンバータシステムの制御方法およびシステムは、並列コンバータ間の電力割当能力を備えており、必要に応じて、複数の並列コンバータの電力バランス制御またはアンバランス制御を実現することができる。
【0021】
(4)本発明に係る並列コンバータシステムの制御方法およびシステムは、電力制限機能を備えており、下す指令がコンバータ電力の限界を超えるような状況の発生を避ける。
【0022】
(5)本発明に係る並列コンバータシステムの制御方法およびシステムは、電力制限機能が電流指令を制限する方后で実現され、交流が障害を起こす時には電流指令が制限された後、コンバータが定電流制御に移行し、交流システムのフォールトライドスルーを実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
図1図1は、4つのコンバータを含む並列コンバータシステムの概略図である。
図2図2は、並列コンバータシステムの制御方法のフローチャートである。
図3図3は、並列コンバータシステムの制御システムの構成図である。
図4図4は、両コンバータを含む並列コンバータシステムの制御機能ブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、図面及び具体的な実施形態を参照しながら、本発明を詳しく説明する。
【0025】
図1は4つのコンバータを含む並列コンバータシステムの概略図であり、この並列コンバータシステムはコンバータC1、コンバータC2、コンバータC3、およびコンバータC4の4つの並列コンバータを含み、コンバータC1は、コンバータ用変圧器T1と入線スイッチQ1を介して交流母線B1に接続され、コンバータC2は、コンバータ用変圧器T2と入線スイッチQ2を介して交流母線B1に接続され、コンバータC3は、コンバータ用変圧器T3と入線スイッチQ3を介して交流母線B2に接続され、コンバータC4は、コンバータ用変圧器T4と入線スイッチQ4を介して交流母線B2に接続され、交流母線B1と交流母線B2は母線スイッチQMを介して接続され、交流母線B1と交流母線B2はいずれも新エネルギー発電システムを含む離島交流システムと接続される。
【0026】
図2は並列コンバータシステムの制御方法のフローチャートであり、離島交流システムの交流電圧の振幅と周波数を安定的に維持するために、並列コンバータが共通に接続する交流母線は下記の制御ステップを採用する。
【0027】
ステップ101では、周波数の参照値Frefに基づいてシステム電圧位相の参照値θrefを計算し、好ましい実現方法はθref(t)=θref(t−Δt)+2πFrefΔtであり、θref(t)は現在時刻のシステム電圧位相の参照値であり、θref(t−Δt)は間隔制御Δt周期の前のシステム電圧位相の参照値であり、初期の時はθref(t−Δt)を0に設定してもよく、Frefの値を取る方法が二つあり、それぞれ、
i)例えば50HZのような、システムの定格周波数Fnであり、
ii)Fref=Fn+Kf(Pref-P)であり、Kfは比例係数であり、実際のシステムに応じて適切な比例係数を選び、値の範囲は-100から100であり、Prefは並列コンバータの総有効電力の参照値であり、Pは実際の並列コンバータの総有効電力である。
【0028】
ステップ102では、交流母線上の母線電圧を収集し、好ましい実現方法は、交流母線上の三相母線電圧を収集し、システム電圧位相の参照値θrefをpark変換によって、母線電圧d軸成分Usdと母線電圧q軸成分Usqを得る。
【0029】
ステップ103では、収集された母線電圧を処理して、有効電流参照値Idrefと無効電流参照値Iqrefを得、好ましい実現方法は、母線電圧d軸成分Usdと母線電圧有効値参照値との偏差がPIコントローラによって有効電流参照値Idrefを生成し、母線電圧q軸成分Usqと0との偏差がPIコントローラによって無効電流参照値Iqrefを生成するため、有効電流参照値Idrefと無効電流参照値Iqrefは実際に母線電圧有効値参照値とd軸およびq軸角度を決定するシステム電圧位相参照値θrefによって一意に決定される。
【0030】
ステップ104では、有効電流参照値Idref、無効電流参照値Iqrefおよびシステム電圧位相参照値θrefをコンバータ制御信号として各離島制御モードのコンバータに出力する。複数のコンバータの電力を割り当てるために電力割当機能を備える必要がある場合、出力電力を低減する必要のあるコンバータには、1より小さい電力割当係数を乗じることができ、例えば、i番目の離島制御モードのコンバータに対して、有効がほかのコンバータの0.5であり、無効がほかのコンバータの0.6であると期待される場合、i番目の離島制御モードのコンバータに送信される有効電流参照値Idrefに有効割当係数Kdi=0.5を乗じて、i番目の離島制御モードのコンバータの有効電流参照値Idrefiが得られ、無効電流参照値Iqrefに無効割当係数Kqi=0.6を乗じて、i番目の離島制御モードのコンバータの無効電流参照値Iqrefiが得られ、ほかのコンバータの有効と無効割当係数はいずれも1である。特に、すべての離島制御モードのコンバータの有効と無効割当係数はいずれも1である場合、各コンバータの電力はバランスをとって動作する。
【0031】
ステップ105では、いずれかの離島制御モードのコンバータに対して、受信された制御信号に基づいて、このコンバータの有効電流が有効電流参照値Idrefに従い、かつ無効電流が無効電流参照値Iqrefに従うように制御する。いずれかの離島制御モードのコンバータは、コンバータの有効電力を制限する必要がある場合、有効電流参照値の大きさを有効電流制限値Idlim以下に制限し、即ち、[-Idlim, Idlim]の範囲内にあり、いずれかの離島制御モードのコンバータは、コンバータの無効電力を制限する必要がある場合、有効電流参照値の大きさを無効電流制限値Iqlim以下に制限し、即ち、[-Iqlim, Iqlim]の範囲内にあり、前記有効電流制限値Idlimは、下記2つの方式の1つによって生成され、
i)前記有効電流制限値Idlimは予め設定された値、例えば、コンバータの最大有効電流であり、
ii)前記有効電流制限値Idlimは、このコンバータ有効電力制限値、例えば、最大過負荷有効電力と実際の有効との偏差がPIコントローラによって変調された値であり、
前記無効電流制限値Iqlimは、次の2つの方式の1つによって生成され、
i)前記無効電流制限値Iqlimは予め設定された値、例えば、コンバータの最大無効電流であり、
ii)前記無効電流制限値Iqlimは、このコンバータ無効電力制限値、例えば、電力区間限定の最大無効電力と実際の無効との偏差がPIコントローラによって変調された値である。
【0032】
離島制御モードを採用していなくても、離島制御モードを採用するコンバータと同一の母線に並列されるコンバータに対して、有効類制御は有効電力制御または直流電圧制御を採用することができ、無効類制御は無効電力制御を採用することができる。
【0033】
図3は並列コンバータシステムの制御システム構成図である。共通の交流電圧コントローラと電流コントローラ1から電流コントローラNからなり、Nは並列コンバータシステムにおける離島制御モードのコンバータの数であり、電流コントローラiはi番目の離島制御モードのコンバータのコントローラであり、iの値は1からNとなり、各電流コントローラは互いに独立している。交流電圧コントローラといずれかの電流コントローラが異なる制御装置に配置され、標準プロトコルを用いた通信により、有効電流参照値Idref、無効電流参照値Iqrefおよびシステム電圧位相参照値θrefを含む、i番目のコンバータの制御信号を対応するコンバータの電流コントローラiに送る。交流電圧コントローラは、電流コントローラと同一の制御装置に配置してもよいし、複数の制御装置に複数の交流電圧コントローラを配置してもよいが、同じタイミングで、すべてのコンバータの電流コントローラは、設定された優先度に応じて1つの交流電圧コントローラが出力したコンバータ制御信号のみを採用することを保証するために、切替ロジックを設定すべきである。
【0034】
図4は両コンバータを含む並列コンバータシステムの制御機能のブロック図であり、交流電圧コントローラは、参照位相生成手段と、交流電圧のサンプリング手段と、電流参照値計算手段と、電力割当手段とを含む。参照位相生成手段は周波数参照値Frefに基づいてシステム電圧位相参照値θrefを計算し、交流電圧のサンプリング手段は交流母線上の三相母線電圧を収集し、システム電圧位相参照値θrefがpark変換された後、母線電圧d軸成分Usdと母線電圧q軸成分Usqを得、電流参照値計算手段は母線電圧d軸成分Usdと母線電圧有効値参照値との偏差がPIコントローラによって有効電流参照値Idrefを生成し、母線電圧q軸成分Usqと0との偏差がPIコントローラによって無効電流参照値Iqrefを生成し、電流参照値計算手段はまたスライディングモードコントローラ、デッドビートコントローラ、或いは非線形コントローラを採用してもよく、電力割当手段では、1番目の離島制御モードのコンバータに対して、有効電流参照値Idrefに有効割当係数Kd1を乗じ、1番目の離島制御モードのコンバータの有効電流参照値Idref1が得られ、無効電流参照値Iqrefに無効割当係数Kq1を乗じ、1番目の離島制御モードのコンバータの無効電流参照値Iqref1が得られ、2番目の離島制御モードのコンバータに対して、有効電流参照値Idrefに有効割当係数Kd2を乗じ、2番目の離島制御モードのコンバータの有効電流参照値Idref2が得られ、無効電流参照値Iqrefに無効割当係数Kq2を乗じ、2番目の離島制御モードのコンバータの無効電流参照値Iqref2が得られ、0≦Kd1≦1、0≦Kq1≦1、0≦Kd2≦1、0≦Kq2≦1、両コンバータが対称的に動作する時、Kd1 =Kq1 =Kd2 =Kq2 =1となり、この時、電力割当手段は未配置に相当する。両コンバータに対して対応する電流コントローラを配置し、それぞれ電流コントローラ1と電流コントローラ2とし、両電流コントローラにはいずれも電力制限手段が配置され、i番目のコンバータ(i=1または2)に対して、最大過負荷有効電力Plimiと実際の有効Psiとの偏差はPIコントローラの変調によって有効電流制限値Idlimiを生成し、最大無効電力Qlimiと実際の有効Qsiとの偏差はPIコントローラの変調によって有効電流制限値Iqlimiを生成し、有効電流参照値Idrefiが[-Idlimi, Idlimi]の範囲を超えたときに境界値と限定され、有効電流参照値Iqrefiが[-Iqlimi, Iqlimi]の範囲を超えたときに境界値と限定される。コンバータの内側ループ電流制御はベクトル制御を採用し、i番目のコンバータは電力制限手段から出力される有効と無効の電流指令、及びシステム電圧位相参照値θrefに基づいて制御する。
【0035】
以上の実施形態は、本発明の技術思想を説明するためだけに、本発明の保護範囲を限定することはできず、本発明によって提示された技術思想に基づき、発明に基づくいかなる変更も、本発明の保護範囲内に含まれる。
図1
図2
図3
図4