(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下に本発明を、必要に応じて、添付の図面を参照して例示の実施例により説明する。本明細書の全体にわたり、単数形の表現は、特に言及しない限り、その複数形の概念をも含むことが理解されるべきである。また、本明細書において使用される用語は、特に言及しない限り、当該分野で通常用いられる意味で用いられることが理解されるべきである。したがって、他に定義されない限り、本明細書中で使用される全ての専門用語および科学技術用語は、本発明の属する分野の当業者によって一般的に理解されるのと同じ意味を有する。矛盾する場合、本明細書(定義を含めて)が優先する。
【0012】
[定義]
本明細書において、洗濯機における「悪臭」とは、洗濯機内部または洗濯機を用いて洗濯した洗濯物からの悪臭原因物質の揮発をいう。公知の悪臭原因物質が多数存在し、ある物質が悪臭原因物質であるか否かはヒトパネルによる官能試験によって当業者は容易に決定することができる。悪臭の発生は、ヒトパネルによって判定することができ、または公知の化学的検出手段(例えば、GC−MSや臭いセンサー)による悪臭原因物質の検出によっても判定することができる。「悪臭の低減」は、1つ以上の悪臭原因物質の揮発の減少を指す。
【0013】
本明細書において、「微生物」とは、その個体の構造単位を肉眼で認識できない大きさの生物をいう。集合的には肉眼で観察することができるコロニー・プラークを作るものであっても、その個体が顕微鏡的大きさであるものは、微生物に含める。また、ウイルスは微生物に含まれる。微生物としては、細菌、古細菌、真菌、藻類、単細胞動物、ウイルス、粘菌等が挙げられる。細菌は、バクテリアとも称される。
【0014】
本明細書において、洗濯槽への微生物の「生着」とは、洗濯槽に存在しなかった微生物を外部から導入した後に、その微生物の少なくとも一部が生存し、洗濯槽において増殖可能な状態になることをいう。
【0015】
本明細書において、微生物の「固形形態」とは、微生物自体が粉末状の状態であるか、固体の媒体に保持されている状態をいう。固体の媒体による保持は、固体の表面に微生物が付着している状態でもよく、カプセル等の固体の内部に微生物が封入されている状態でもよい。
【0016】
本明細書において、微生物が「粉末」の状態であるとは、微生物自体が粉末状の状態であることと、微生物を保持した固体の媒体が粉末状であることとの双方を包含する。
【0017】
本明細書において、「洗濯機」とは、洗濯槽を備え、洗濯槽において布製品を洗濯する任意の機械をいう。
【0018】
本明細書において、「洗剤」とは、洗濯のための界面活性剤を含む任意の組成物をいう。
【0019】
本明細書において、「攪拌工程」とは、洗濯機において、洗濯槽またはパルセータを回転させて水を攪拌することをいう。
【0020】
本明細書において、「曝気環境」とは、洗濯槽またはパルセータの回転によって、水中に存在する微生物が酸素に晒される程度に空気と攪拌されている水中の環境をいう。
【0021】
本明細書において、「好気性」生物とは、酸素に基づく代謝機構を備えた任意の生物をいう。好気性生物は、基質(例えば、糖または脂質)を酸素によって酸化することによってエネルギーを生み出すことができる。
【0022】
本明細書において、「通性好気性」生物とは、基本的に酸化的な代謝系によってエネルギーを産生するが、酸素が利用できない環境においては、乳酸発酵によりエネルギーを得るように切り替わる任意の生物をいう。したがって、通性好気性生物は、酸素の存在する好気環境において活性であるが、酸素の存在しない嫌気環境においても生育することが可能である。酸素が利用できない環境においても生育することができ、好気的な環境下においても乳酸発酵によりエネルギーを得ることができるため、「通性嫌気性生物」とも称される。
【0023】
本明細書において、「偏性好気性」生物とは、酸素に基づく代謝によるエネルギーの産生に依存している任意の生物をいい、偏性好気性生物の生存のためには酸素が必須である。偏性好気性細菌の例は、Nocardia(ノカルディア属、グラム陽性菌)、Pseudomonas aeruginosa(緑膿菌、グラム陰性菌)、Mycobacterium tuberculosis(結核菌、抗酸菌)、Bacillus subtilis(枯草菌、グラム陽性菌)などが挙げられる。偏性好気性生物は、酸素の存在しない嫌気的な環境下においては生育することができない。
【0024】
本明細書において、「嫌気性」生物とは、増殖に酸素を必要としない任意の生物をいう。「偏性嫌気性」生物は、嫌気性微生物の中でも酸化ストレスへの耐性がなく、大気レベルの濃度の酸素に暴露することで死滅する生物を指す。
【0025】
本明細書において、「グラム陽性菌」とは、グラム染色により紺青色あるいは紫色に染色される細菌をいう。グラム陽性菌に属する細菌の属としてBacillus、Listeria、Staphylococcus、Streptococcus、Enterococcus、Clostridiumなどの属が挙げられる。グラム陽性菌は、厚いペプチドグリカン層を有し、外膜を持たないことを特徴とする。
【0026】
本明細書において、「グラム陰性菌」とは、グラム染色により赤色あるいは桃色を呈する細菌をいう。グラム陰性菌は細胞膜と外膜の2つの脂質膜に包まれているが、グラム陽性菌と比べてペプチドグリカン層は薄い。
【0027】
[微生物]
本発明は、洗濯機による洗濯における悪臭の発生を低減するために、洗濯槽に微生物を生着させることを特徴とする。
【0028】
本発明の微生物は、洗濯槽に生着し、洗濯における悪臭の発生を低減することができる任意の生物であり得る。代表的には、本発明の微生物は、バイオレメディエーションによる水質の浄化に有用な微生物または微生物群であり得る。
【0029】
一般に、微生物の集団においては、異なる種の微生物が拮抗して存在し、その集団におけるある種の細菌の数を増加させることが、別の種の細菌の減少をもたらし得る。このような微生物集団、例えば細菌叢の動態は、ヒトの腸内などにおいて、良い影響を与える微生物(いわゆる善玉菌)を増加させることによって悪玉菌を減少させるプロバイオティクスに利用されている。理論に拘束されることを意図しないが、本発明は、製品として微生物を洗濯槽に生着させることにより、これが増殖して、その結果、例えばマイコバクテリウムのような悪臭の原因物質を産生する細菌の数が減少するという現象に基づいている。したがって、悪臭の原因物質を産生する微生物を減少させるためには、増殖速度が速い細菌を洗濯槽に投入することが効果的であり得る。
【0030】
1つの実施形態において、本発明の微生物は、攪拌工程における攪拌による曝気環境下で活性化される好気性生物であり得る。攪拌工程において活性化された微生物は、洗濯槽に存在し得る有機物、硫黄化合物、アンモニア等を酸化によって分解し得る。好ましい実施形態において、本発明の微生物は、静水中でも生存が可能な通性好気性生物であり得る。
【0031】
好気性生物は、曝気環境下で活発に代謝し、増殖することによって、洗濯における攪拌工程の間に洗濯機に生着することができる。それによって、悪臭の原因となる微生物の繁殖を抑制することが可能であり得る。
【0032】
好ましい実施形態において、本発明の微生物は、洗剤によって死滅しない。洗剤は、一般的には、直鎖アルキルベンゼンスルホン酸ナトリウム、ポリオキシエチレンアルキルエーテルなどの界面活性剤を含む。界面活性剤に対する感受性は、微生物の種類によって異なる。そのような差が生じるメカニズムについては完全には理解されていないが、一般に、大腸菌等のグラム陰性菌は、グラム陽性菌に比べて抗菌性界面活性剤に耐性であるとされている。この理由として、理論に拘束されるものではないが、グラム陽性菌は細胞外膜がないために界面活性剤によって溶菌されやすいが、グラム陰性菌は細胞外膜が厚いため、界面活性剤によってその構造が破壊されないということが考えられる。したがって、1つの実施形態において、本発明の微生物はグラム陰性細菌を含む。
【0033】
本発明の微生物は、好ましくは、悪臭の原因物質(アンモニア、硫黄化合物、有機物)を分解することができる。悪臭の原因物質の例としては、アンモニア、メチルメルカプタン(メタンチオール)、硫化水素、グアヤコール、酪酸エチル、シス−4−ヘプテナール、4−メチルオクタン酸、p-アニスアルデヒド及びイソ吉草酸等が挙げられる。
【0034】
例えば、ある実施形態では、本発明の微生物は、硫化水素(H
2S)を酸化することによって、硫黄(S)と水(H
2O)に分解することができる。別の実施形態では、微生物は、メチルメルカプタン(CH
3SH)を酸化して、硫黄と二酸化炭素と水に分解することができる。
【0035】
例えば、水質の改善に用いられる濾過細菌は、水中のアンモニア(NH
3)を酸化して、亜硝酸(NO
2)または硝酸(NO
3)にすることによって、水質を維持する。このような働きを持つ微生物は、硝化菌と称され、Nitrobacter属の細菌を含む硝酸菌、および亜硝酸菌が含まれる。このような硝化菌も、本発明の方法において用いることができる。1つの実施形態において、本発明の微生物はNitrobacter属細菌を含む。別の実施形態において、本発明の微生物はSperoterius nautau菌を含む。
【0036】
本発明の洗濯とは異なる技術分野においては、水質の改善のための細菌を含む製品が市販されており、スーパーバイオα(商標)(サンカイ化成株式会社、日本、東京)、BZT(登録商標)アクアカルチャーR(株式会社エムアイオージャパン、日本、兵庫)、ST固形バイオ(有限会社バイオフューチャー、日本、東京)等の水質改善用の製品を本発明において使用することができる。
【0037】
さらに、本発明の洗濯槽内に生着することができる微生物は、洗濯後に洗濯機の内部が乾燥した状態になったとしても生存に支障がないものが望ましい。細菌の乾燥への耐性のメカニズムは様々なものが存在するが、例えば、増殖速度を抑制して、芽胞を形成することによって乾燥を含む環境の変化に適応することができる。芽胞を形成する細菌(有芽胞菌または芽胞形成菌)としては、アンフィバチルス属、クロストリジウム属、スポロサルシナ属、バチルス属が挙げられるが、これらに限定されない。芽胞形成菌は、乾燥・栄養不足等の悪い環境に置かれると、菌細胞内部に芽胞を形成する。そして、芽胞が再びその細菌の増殖に適した環境に置かれると、芽胞は、発芽と称される変化を経て通常の増殖・代謝能を有する菌体を生じる。
【0038】
また、芽胞は生じないが、休眠状態になって生存する菌も存在する。そのような状態は、VNC状態(viable but non−culturable「生きているが培養できない」)等と称されるが、詳細なメカニズムについては明らかになっていない。例えば、水処理用の濾過細菌(硝化菌)に関して、いくつかの市販の濾過細菌キットでは休眠状態で保存しているものが存在する。例えば、バクトZ(日本動物薬品株式会社)、硝化菌ろ過材(Zicra corporation)等がある。芽胞形成細菌および休眠状態になり得る細菌は、乾燥状態で保存することができ、さらに、洗濯後の洗濯槽内部において乾燥条件下でも生存することができるため、本発明の微生物として望ましい。
【0039】
1つの実施形態では、微生物は、固形形態で存在することができる。微生物は、セラミック等の粒子の表面に付着した状態で保存され得る。あるいは、微生物は、マイクロカプセル等に封入された状態で保存され得る。
【0040】
[洗濯機]
本発明の方法は、任意の洗濯機を対象とすることができる。洗濯機の例としては、三菱電機 MAW N8TP−W(洗濯・脱水容量:8kg)や、Panasonic NA−FA90H2(洗濯・脱水容量:9kg)などが挙げられる。
【0041】
洗濯機は、一般的に洗濯槽を含む。洗濯機は、洗濯槽において、洗濯の対象とする洗濯物を保持し、水と接触させることにより洗濯物の汚れを除去する。
【0042】
洗濯機は、その作動方式からパルセータ式とドラム式に分けることができるが、本発明の微生物は、パルセータ式とドラム式とに拘わらず、任意の洗濯機において使用され得る。
【0043】
パルセータ式の洗濯機は、洗濯槽の底部にパルセータと呼ばれる羽根を有し、パルセータを高速回転させて水流を生じさせる。それによって、もみ洗いの原理によって洗濯物の汚れを除去する。
【0044】
ドラム型の洗濯機は、洗濯物を入れた洗濯槽自体が回転し、攪拌工程を行う。洗濯槽の回転軸は、水平ないしは傾斜したものとなっており、洗濯槽の回転に従って中に入っている洗濯物が持ち上がっては落下するという動きを繰り返す。これにより、たたき洗いの原理によって洗濯物の汚れを除去する。洗濯機は、内部に洗濯物を入れていなくても攪拌工程を行うことができる。例えば、槽洗浄として、洗濯物を入れずに攪拌工程を行う場合がある。
【0045】
一般的に、洗濯機の容量は、JIS規格に従って、洗濯できる洗濯物の乾燥重量で表現される。一般的な洗濯機の洗濯・脱水容量は、3〜12kgである。本発明の方法では、任意の洗濯・脱水容量の洗濯機を対象とすることができる。
【0046】
洗濯機を用いる際に注入される水の量は、洗濯物の量に応じて変化し得る。一般的な洗濯機が使用する水の量は、10〜100Lの範囲である。一般的に、パルセータ式と比較して、同程度の量の洗濯物を洗濯するのに、ドラム式はより少ない水の量で行い得る。
【0047】
洗濯機は、必要に応じて、乾燥機能を有する。乾燥機能を使用する場合、本発明の微生物は乾燥および温度変化に耐性であるものを用いることが望ましい。
【0048】
[攪拌工程]
洗濯は、典型的には、洗濯槽における水を物理的に攪拌する「攪拌」工程を含む。本発明において、微生物の洗濯槽への生着はこの攪拌工程によって達成され得る。一般的に、洗濯、洗濯槽において水および洗剤とともに衣類を攪拌することを含むが、本発明の微生物の生着のための攪拌工程は、微生物を曝気環境に晒すことが主な目的であるため、必ずしも洗剤および衣類を攪拌する必要はない。
【0049】
洗濯においては、この攪拌工程により、洗濯槽内部に配した布製品から汚れを分離して水に溶解または懸濁させる。ドラム式の洗濯機では、ドラムを回転させることによって攪拌工程が行われ、パルセータ式の洗濯機では、パルセータを回転させて水流を生じさせることによって攪拌工程が行われる。攪拌工程においては、洗濯槽内の水は激しく攪拌されており、「曝気環境」になっている。攪拌工程は一般的に、3〜20分間であり、洗濯物の種類・汚れの程度などに応じてこの範囲の任意の時間にわたって行い得る。
【0050】
さらに、洗剤を用いている場合、洗濯には、洗濯槽に水を導入して洗濯物から洗剤を除去するすすぎ工程が含まれる。すすぎ工程においても、洗濯物に付着した洗剤成分を水に溶解させるために攪拌が行われ、「曝気環境」が生じる。
【0051】
さらに、洗濯には、必要に応じて、洗濯槽を回転させた遠心力によって洗濯物の水分を物理的に除去する脱水の工程が含まれ得る。また、温風等によって水分を蒸発させる乾燥工程も必要に応じて行われ得る。
【0052】
上記のとおり、本発明は、攪拌工程において生じる曝気環境を微生物に提供することを1つの特徴とする。通常、静止した水の中には空気が入らないため、嫌気的な環境となっている。しかしながら、空気と接触している状態の水を攪拌することによって、水の中に酸素を溶け込ませることができる。水が攪拌され、空気を含んでいる状態を、本明細書中では「曝気環境」と称する。例えば、洗濯機を作動させ、洗い・すすぎの工程を行っている際の洗濯機内の水は激しく攪拌されており、「曝気環境」になっている。偏性嫌気性の生物は、そのような環境下において生存することが困難である。
【0053】
洗濯物として、衣類をはじめとして、一般的に洗濯の対象とされるものが制限なく含まれる。衣類としては、ズボン、上着、シャツ、下着のような身に着ける衣服が挙げられる。それ以外にも、洗濯の対象としては、タオル、布巾等の拭き取りのための布製品、布団、シーツ、枕カバー等の寝具、ラグ、カーペットのような敷物なども挙げることができる。タオル等の乾燥しにくく、悪臭が発生しやすい洗濯物に対して、本発明によって有効に悪臭を抑制し得る。
【0054】
洗剤は、洗濯のための界面活性剤を含む任意の組成物をいう。洗剤は、界面活性剤以外に、ハイドロトロープ、ビルダー(アルカリ剤)、pH調節及び金属キレート化のためのカーボネート、溶媒、充填剤、染料、香料及び蛍光増白剤等を含み得る。界面活性剤は、非イオン性、半極性、アニオン性(陰イオン性)、カチオン性(陽イオン性)、および/または両性イオン性であり得る。
【0055】
アニオン性界面活性剤としては、線状アルキルベンゼンスルホネート、α−オレフィンスルホネート、アルキルスルフェート(脂肪アルコールスルフェート)、アルコールエトキシスルフェート、二次アルカンスルホネート、α−スルホ脂肪酸メチルエステル、アルキル−又はアルケニル琥珀酸または石鹸(長鎖脂肪酸のナトリウム塩)等が挙げられるが、これらに限定されない。
【0056】
水溶性アニオン性界面活性剤の例として、ドデシル硫酸ナトリウム(ラウリル硫酸ナトリウム)、ラクレス硫酸ナトリウム(ラウリルエーテル硫酸ナトリウム)、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム、ジナトリウムオクチルスルホスクシネート、ナトリウムブチルナフタレンスルホネート、エトキシル化ナトリウムラウリルスルホスクシネート、ステアリン酸(ナトリウム及びナトリウムラウロイルサルコシド、又はそれらの複数の混合物が挙げられるが、これらに限定されない。
【0057】
非イオン性界面活性剤としては、例えばアルコールエトキシレート、ノニルフェノールエトキシレート、アルキルポリグリコシド、アルキルジメチルアミンオキシド、エトキシル化脂肪酸モノエタノールアミド、脂肪酸モノエタノールアミド、ポリヒドロキシアルキル脂肪酸アミド、またはグルコサミンのN−アシルN−アルキル誘導体が挙げられるが、これらに限定されない。
【0058】
1つの実施形態において、攪拌工程によって微生物が洗濯槽に生着したら、微生物を含む製品を洗濯槽から取り除いてもよい。1つの実施形態では、微生物の生着は、プラークの形成によって判別される。別の実施形態では、微生物の生着は、カビ臭の低減によって示される。本発明の方法では、洗濯の都度微生物を添加するのではなく、微生物を含む製品を洗濯槽に供して攪拌工程を経ることによって洗濯槽に微生物を生着させて洗濯槽自体を改質し、悪臭の発生を持続的に低減または防止可能である点に留意されたい。
【0059】
本発明の方法は、洗濯槽に微生物を含む製品を配することと、洗濯槽に水を注入することとを含み得る。これにより、製品に含まれる微生物が注入された水によって洗濯槽内に放出され、洗濯槽内へと生着する。注入される水の量は、例えば、洗濯においては洗濯物の量に応じて適宜選択することができ、10〜70Lの範囲であり得る。洗濯物を伴わずに本発明の方法を行う場合は、水の量は適宜決定することができ、30〜60L程度であれば、洗濯槽全体に水と共に微生物を送達することができるため、好ましい。
【0060】
攪拌工程において、パルセータ式の洗濯機の場合は、パルセータを回転させ、ドラム式の洗濯機の場合は、洗濯槽自体を回転させる。微生物を含む製品を洗濯槽に配して、攪拌工程は、洗濯物および洗剤を入れずに行ってもよい。攪拌工程によって、微生物に曝気環境が提供されると、微生物が活性化されて洗濯機への生着が促進される。攪拌工程は、洗濯物とともに行ってもよく、提供される曝気環境によって微生物が悪臭原因物質を酸化分解し、洗濯物の悪臭を低減させることができる。
【0061】
さらなる実施形態では、固形形態の微生物を含む製品を洗濯槽に配し得る。例えば、固体粒子に付着させた微生物(微生物粒子)を含む製品を洗濯槽に配し得る。製品は、必要に応じて微生物を囲む包装物をさらに含み、適切に微生物を洗濯槽内部に放出する。本発明の製品は、攪拌工程の間に、または攪拌工程の終了時に水と一緒に流出することなく、複数回の攪拌工程に供されることができる。これは、液体状態の製品のように洗濯を行う度に投入されるものとは明確に異なり、複数回の投入の手間およびコストを削減することができる。1つの実施形態では、微生物を含む製品は、洗濯槽外に流れ出て排出されない形状の包装物をさらに含む。
【0062】
微生物を含む製品を入れたまま行う攪拌工程の延べ回数は、例えば、2〜15回程度であり得る。本発明の製品を用いれば、この程度の回数で十分に微生物を生着させることができる。1つの実施形態では、3〜10回の攪拌工程により、微生物を洗濯槽に生着させることができる。別の実施形態では、5〜8回の攪拌工程により、微生物を洗濯槽に生着させることができる。
【0063】
微生物を含む製品を洗濯槽に配して、攪拌工程を行う回数は、例えば、1日あたり1回〜5回、1回〜4回、1回〜3回、2〜3回、1回〜2回、または1回であり得る。この程度の回数で微生物を活性化させれば、洗濯機に十分に微生物を生着させることができる。攪拌工程を行う一般的な回数や、手間、電力および水の消費を考慮すれば、とりわけ、1日あたり1〜3回が望ましい。
【0064】
1つの実施形態では、攪拌工程は、例えば、2〜5日間にわたって行うことができる。本発明の製品を用いれば、この程度の期間で十分に微生物を生着させることができる。微生物を含む製品を洗濯槽に配した状態での攪拌工程は、3日間程度にわたって行うと、微生物の生着効率を最大化することができるため、望ましい。
【0065】
本発明の微生物は、洗濯槽内にプラークを形成して生着し得る。微生物が生着したのちに、製品を除去したとしても、生着した微生物によって長期間にわたって洗濯の際の悪臭の発生が低減される。例えば、本発明の方法は、1週間以上、2週間以上、3週間以上、1か月以上、2か月以上、3か月以上、4か月以上、5か月以上または6か月以上にわたって洗濯の際の悪臭の発生を低減または防止し得る。
【0066】
1つの実施形態では、未使用の洗濯機の使用開始時から洗濯槽に微生物の入った包装物を入れて使うことができる。それにより、洗濯槽内における悪臭の発生を予防することができる。理論に拘泥するものではないが、洗濯槽内に他の種よりも先に生着した微生物は、拡散し集落性を保つようによるため、ある程度の生育力が強い微生物(カビ等)が生じた場合であっても、後発の微生物に対して優位性を持つことができる。
【0067】
[製品]
本発明は、洗濯機における悪臭の発生を低減する方法において使用するための、微生物を含む製品も供する。
【0068】
好ましくは、本発明の製品は、微生物を、洗濯の際に水と共に洗濯機の外部に流出しないような形態で含み得る。微生物は、製品から適切な速度および/または割合で洗濯槽内部に放出され得る。
【0069】
本発明の製品は、微生物を囲む包装物を含み得る。包装物は、洗濯の際に洗濯槽から流出しない形状およびサイズである。包装物は、水の通過を可能とする貫通孔を有し、そしてその貫通孔を通じて微生物が水中に放出される。貫通孔のサイズは、微生物が適切な速度および/または割合で洗濯槽内部に放出されるように調節することができる。
【0070】
1つの実施形態において、包装物は、繊維を編む、織る、縫う、絡み合わせる、網状等に加工した布地であり得る。繊維の材料としては限定されるものではないが、天然繊維、例えば、植物繊維(木綿、麻、リンネル等)、動物繊維(羊毛、絹等)、鉱物繊維(石綿等);合成繊維(テトロン、ナイロン、ポリエステル、アクリル等);再生繊維(レーヨン、キュプラ、アセテート等)等が挙げられる。素材は、このような材料を用いたフィルムであって、貫通孔を有するものでもよい。好ましい実施形態では、伸びが少ない素材(例えば、テトロン)を使用すると、貫通孔の大きさが安定し、微生物の放出をより持続的にすることができる。
【0071】
例えば、本発明の製品は、微生物を、10g〜500g含み得る。本発明の製品は、一般的な容量の洗濯機に十分に微生物を生着させることができる量で、微生物を含み得る。1つの実施形態では、20g〜100gの範囲(例えば、30g、80gなど)であり得る。
【0072】
包装物の大きさは、製品に含まれる微生物の量に応じて適宜決定することができる。1辺の長さが5cm〜20cm程度のものであり得る。一実施形態では、扱いやすいサイズとしては、7〜12cm四方(例えば、縦10cm×横10cm)である。
【0073】
微生物は、固形形態で製品中に含まれ得る。例えば、微生物は、固体粒子に付着した状態で、またはマイクロカプセルに封入された状態で製品中に含まれ得る。好ましくは、微生物は粉末状で製品中に含まれ得る。さらに本発明の製品は、そのような微生物を、例えば、布地でできた袋等の包装物に格納して含むことができる。包装物は、微生物を含む粉末が1回の攪拌工程で全て流れ出てしまうことがないように構成されるが、微生物の部分的な放出を可能にするように、水と菌は通過できるような素材を用いて構成され得る。固形形態ではない状態、例えば、液体を媒体とした状態で微生物を含む場合は、微生物を製品中に留めることができず、一度の洗浄工程で全ての微生物が流出してしまう場合があり、望ましくない場合がある。
【0074】
固形形態の微生物の平均粒径は、10μm〜10mmであり得る。この程度の微細な粒子を用いることで、体積あたりの表面積を増加させ、より多くの水と接触することができる。しかしながら、固形形態の微生物は過度に微細であると、包装物によって保持することが困難であり得る。好ましい実施形態では、固形形態の微生物は、100μm〜1mmの平均粒径を有する。1つの実施形態では、固形形態の微生物は、100μm〜300μmの平均粒径を有する。
【0075】
本明細書において、粒径は、ふるい分け法によって求めることができる。1つの実施形態では、ある粒子がふるい分けられる場合のふるいの目開き(mmまたはμm)の大きさをその粒径とする。平均粒径として、粒径の個数基準での算術平均を採用することができる。
【0076】
包装物の貫通孔の大きさは、一部の場合には、目開き(オープニング)(mmまたはμm)の他に、目開き率(開口率)(%)、メッシュ等で表される。メッシュは、縦横1インチ(25.4mm)の間に入る目の数である。例えば、50メッシュでは、1インチの間に50の開口部が存在する。これらのサイズの表現は、繊維の径を考慮して相互に換算することができる。
【0077】
包装物の貫通孔のサイズは、用いる固形形態の微生物の平均粒径に合わせて、適切な速度および/または割合で微生物が放出されるように、当業者に適切に選択され得る。包装物の貫通孔が固形形態の微生物に対して大きすぎると、一回の攪拌工程で全ての微生物が流出し、微生物の生着に至らない場合があり得る。逆に、包装物の貫通孔が小さすぎると、微生物の洗濯槽内への放出量が少なくなり、微生物を生着させるまでに時間がかかってしまう場合があり得る。
【0078】
例えば、包装物の貫通孔は、攪拌工程を1回経た場合に、製品に含まれる微生物が1%〜30%放出されるようなサイズであり得る。とりわけ、攪拌工程を1回経た場合5%〜20%放出されるようなサイズであれば、2〜5日にわたって洗い工程を行うことにより、製品中に含まれる微生物を少しずつ放出し、生着させることができるため、好ましい。
【0079】
1つの実施形態では、固形形態の微生物は、水に触れた場合にゲル状になる。そのような固形形態の微生物は、包装物から一度に大量に流出せず、持続的に放出されるため、好ましい。
【0080】
好ましい実施形態において、本発明の微生物を含む製品は、洗濯槽内のくず取り網カゴの中に配置され得る。
【0081】
[好ましい実施形態]
好ましい実施形態において、本発明の微生物は、攪拌工程の曝気環境において活性化され、洗剤等によって死滅せず、悪臭の原因物質(例えば、アンモニア、硫黄化合物、または有機物)を分解し、そして/または洗濯後の洗濯機内の乾燥した状態においても生存するものであり得る。このような特性を有する微生物を用いることによって、効果的に洗濯槽内部に微生物を生着させ、持続的に悪臭の発生を低減させることができる。
【0082】
このような微生物を、固体粒子に付着させて含む製品、好ましくは、粉末状で含む製品が用いられる。そのような製品は、布地によって、微生物の粉末を格納し、1回の攪拌工程で全てが流出しないようにすることが好ましい。
【実施例】
【0083】
実施例1
本実施例においては、微生物を含む製品により、持続的に洗濯における悪臭の発生が抑制されたことを実証する。
【0084】
固形形態の微生物30cc(平均粒径約300μm)を含む製品を、テトロンでできた包装物に入れ、洗濯機に投入した。テトロンの生地は、2枚程を、四方をミシンで縫い袋状にして、さらに四隅を3回ほど折り返し、四隅を2回縫って用いた。袋の大きさは、縦10cm×横10cm程であった。本実施例では、パルセータ型洗濯機(Panasonic NA−FA90H2)を用いた。この洗濯機の洗濯・脱水容量は、9kgであった。
【0085】
そして、製品を投入した洗濯機に、衣類および洗剤を入れて作動させ、洗濯を行った。洗剤としては、アタック抗菌EX(花王株式会社)を使用した。なお、他の市販されている洗剤や他の種々の抗菌洗剤を用いた場合においても、同様の結果が確認されている。
【0086】
微生物を含む製品は、1回の洗濯を経たのちも洗濯前の80%程度の固形形態の微生物を内部に保持していた。製品を洗濯機の中に入れた状態で維持し、製品を入れたままでの洗濯を1日に2〜3回ずつ行った。4回目の洗濯を行った時点(2日目)で、微生物は最初の約40%残存していた。3日目に、洗濯槽において微生物を含む製品から特有のスイカのような臭い(悪臭とは異なる)が確認された。7回程度洗濯を行った段階で、製品中には、約10〜20%程度の固形形態の微生物が残存していた。この段階で、洗濯後の衣類におけるカビ臭(ツンとする臭い)はほぼ発生しなくなった。微生物の入った包装物は、完全に微生物が無くなるまで洗濯槽に入れたままにした。
【0087】
その後、その洗濯機を使用して洗濯を行った場合も、カビ臭は発生しないままであった。カビ臭は、3か月程度にわたって安定して低減された。4か月〜5か月後になると、試験前よりは低い水準ではあるものの、少しずつカビ臭が発生し始めた。
【0088】
本実施例では、微生物を含む製品として、スーパーバイオα(商標)(サンカイ化成株式会社)を用いた。スーパーバイオαは、520種類の好気性の微生物の群を、50〜80メッシュの無機質パーライトに付着した固形形態で含む、水処理のために市販されている製品である。主たる菌として、Nitrobacter(ニトロバクター)の一種であるSperoterius nautau(スペロテリウス ナウタウ)菌を含む。この菌は、硝酸還元菌(硝化菌)である。スーパーバイオαに含まれる菌は、有機物を酸化分解し、水、炭酸ガスと無機質に変化させる。活性化のためには、酸素が大きく必要になるため、D・O数値(溶存酸素量)は6〜7mg/l程度の環境にすることが推奨されている。2〜3mg/l程度のD・O値があれば、生存について支障はない。pHの許容範囲は、pH5〜9であり、最適範囲はpH6〜8である。水温は15℃〜30℃が活動に適しており、5℃で活動が鈍り、0℃以下で冬眠状態となる。
【0089】
ニトロバクター属の細菌は、グラム陰性の非芽胞形成通性好気性桿菌である。化学合成独立栄養生物(無機化合物(硫化水素、アンモニア、2価鉄イオンなど)を酸化してエネルギーを得る細菌(化学合成細菌))であるが、酢酸やピルビン酸といった有機物を酸化的に分解して資化することも可能である。また、スーパーバイオαに含まれる微生物は、硫化水素(H
2S)やメチルメルカプタン(CH
3SH)のような硫黄化合物を、酸化して硫黄、水、炭酸ガスといった物質に分解することができる。
【0090】
何ら理論に拘泥するものではないが、本実施例で用いた固形形態の微生物は好気性微生物であるため、洗濯槽の撹拌工程により、DO値(溶存酸素量)が充分に確保されたこと、包装物に入れて水の入った洗濯槽内で撹拌されることによって、微生物の入った小さな無機質パーライト同士の間の隙間に水が流れて、不活性化していた微生物が放出され、酸素と水により活性化されたこと、および、洗濯物の汚れ等の有機物を栄養源にすることによって、洗濯槽内に首尾よく生着したことによって、上記の効果を奏したと考えられる。上記のような製品を攪拌に晒されるように配置することは、水の注ぎ口等の撹拌性の弱い場所に包装物を定置する場合と比較して、微生物の放出量が多くなり、コストメリット(微生物の量が少なくて良い)に繋がるものと考えられる。
【0091】
一般的な家庭用のサイズの洗濯機では、スーパーバイオαを30cc包装物に詰めて洗濯することで、約7回の洗濯回数と3日間の日数で洗濯槽内に明確に生着を認めることができる。このことは、本発明者によって繰り返し確認されている。
【0092】
実施例2
綿生地の四方をミシンで縫うことにより、包装物を作製し、固形形態の微生物としてスーパーバイオαを用いた。本比較例では、パルセータ型洗濯機(Panasonic NA−FA90H2)を用いた。固形形態の微生物を含む製品を攪拌工程に供したところ、1回目の攪拌工程の後に微生物の減少がはっきり確認されたが、70%程度の微生物が残存していた。その後、2日目(攪拌工程4回目)には残存量は10%を下回るわずかな状態になった。カビ臭は、減少していることを感知することができる程度に減少していた。
【0093】
実施例3
本実施例においては、固形形態の微生物として、BZT(登録商標)アクアカルチャーR(株式会社エムアイオージャパン、日本、兵庫)を用いて、持続的な洗濯における悪臭の低減について試験した。固形形態の微生物は、βグルカンマイクロカプセル内に保持されていた。本実施例では、パルセータ型洗濯機(三菱電機 MAW N8TP−W)を用いた。この洗濯機の洗濯・脱水容量は、8kgであった。
【0094】
本実施例でも、固形形態の微生物を含む製品を、包装物に入れ、洗濯機に投入した。そして、製品を投入した洗濯機に、衣類および洗剤を入れて作動させ、洗濯を行った。包装物として、テトロン生地を用い、実施例1と同様に縫合した。製品を洗濯機の中に入れた状態で維持し、製品を入れたままでの洗濯を行ったところ、水質改善用微生物が1回の洗濯で無くなってしまった。攪拌工程前の微生物を含む製品からは特有の牛乳のような臭い(悪臭とは異なる)が確認されたが、攪拌工程を経たのちにはそのような臭いはなくなった。洗濯後の衣類におけるカビ臭を低減することができたものの、水質改善用微生物が洗濯槽に残らなかったため、効果が一時的であったようである。
【0095】
アクアカルチャーRは、ゴルフ場、ショッピングセンター、ホテルなどの装飾池及び水槽の水質改善に用いるために市販されている、βグルカンマイクロカプセル中に封入された微生物を含む粉末状の製品である。アクアカルチャーRには、マイクロカプセル化されたバチルス属を含む好気性及び嫌気性両方の条件下で活性化する従属栄養性菌群と酵素及び栄養源が含有される。微生物のマイクロカプセルは水に溶けると保護膜が溶け、第一世代の微生物が急速に活性化する。BZT(登録商標)アクアカルチャーRの微生物は有機物質を分解し、水質を改善することで藻の発生を防ぐことに利用され得る。過剰なリンは藻の成長を招くが、BZT(登録商標)アクアカルチャーRの微生物はその細胞でリンを使うため、藻がリンを栄養分として利用できなくすることができる。リンは微生物のDNAとRNAの製造において重要な構成要素である。
【0096】
また、BZT(登録商標)アクアカルチャーRの微生物は、水中の窒素化合物(例えば、アンモニア)を処理することができる。アクアカルチャーRによって窒素化合物が分解されるメカニズムとしては、(1)窒素の酸化サイクルを促進し、生体に有毒なアンモニアや亜硝酸を窒素ガスへ変換する、(2)リン、アンモニア、炭素を栄養源として微生物の体内に吸収する、(3)亜硝酸及び硝酸塩を栄養源として直接利用する、というものが挙げられる。炭素は微生物の細胞膜を通して吸収され、そこで、酸素と結合して酸化され、CO
2として放出される。このようにして有機懸濁物を分解することで水の透明度をあげ、水底に蓄積する廃棄物を減少させることが可能となり得る。
【0097】
BZT(登録商標)アクアカルチャーRは、装飾池及び水槽において発生する水の臭いの除去にも用いられる。水において生じる悪臭の多くは、硫化水素(腐った卵の臭い)と硫黄及びアンモニアに起因する。BZT(登録商標)アクアカルチャーRの微生物は、水中で硫化水素を作り出す微生物に打ち勝ち、硫化水素に起因する匂いを除去し得る。アンモニアは悪臭の主な要因となるが、BZT(登録商標)アクアカルチャーRが窒素循環を速めることで、アンモニアが亜硝酸塩に変化する割合を増加させる。
【0098】
BZT(登録商標)アクアカルチャーRの微生物の活性は、水中での適切な溶存酸素量に依存する。BZT(登録商標)アクアカルチャーRの微生物による上記のような様々な物質の分解速度は、エアレーションをかけた場合に約5〜6倍速くなる。また水の汚れが多い場合、微生物が汚れを分解する過程において、溶存酸素を消費し一時的に酸欠状態になる可能性があるため、そのような場合にはエアレーションを使用することが推奨されている。
【0099】
実施例4
本実施例では、固形形態の微生物として、ST固形バイオ(有限会社バイオフューチャー)を使用した。ST固形バイオ1個(80g、直径6.5cm、厚さ1.9cmの円盤状)をテトロンでできた包装物に入れ、洗濯機に投入した。テトロンの生地は、2枚程を、四方をミシンで縫い袋状にして、さらに四隅を3回ほど折り返し、四隅を2回縫って用いた。袋の大きさは、縦10cm×横10cm程であった。なお、水溶性の青色が溶け出し、衣類に付着する可能性があったため、穴があいたプラスチック容器に入れて使用した。本実施例では、パルセータ型洗濯機(Panasonic NA−FA90H2)を用いた。この洗濯機の洗濯・脱水容量は、9kgであった。
【0100】
そして、製品を投入した洗濯機に、衣類および洗剤を入れて作動させ、洗濯を行った。洗剤としては、アタック抗菌EX(花王株式会社)を使用した。なお、他の市販されている洗剤や他の種々の抗菌洗剤を用いた場合においても、同様の結果が確認されている。
【0101】
ST固形バイオを大きな塊の形で含む製品を洗濯槽内に投入し、微生物が放出される表面積を増やすため、手で布袋の上から押しつぶし細かくした。細かくした後の製品は、水に漬からない乾燥状態では、約100μm程度の平均粒径であった。
【0102】
1回目(1日目)では、衣類を洗濯した結果、かなり臭いがとれていることを感じることができた。
【0103】
2回目(2日目)では、衣類の肌触りがサラッとするようになり、油性は感じられなかった。タオルの臭いや汗油等はさらに取れていることが感じられた。臭いの減少が急激に行われた事を感じとることができ、匂いの中に爽やかさも感じられ、洗濯槽内に微生物が生着したと考えられた。
【0104】
3回目(3日目)、タオルには、汗油等の残臭がほぼしなかった。完全に分解され取れているようであった。他の洗濯物についても同様であった。
【0105】
4回目(4日目午前)、タオルには、汗油等の残臭はしなかった。
【0106】
5回目(4日目午後)タオルには、汗油等の残臭はしなかった。また、カビ等の臭いは継続して洗濯槽内と衣類にはなかった。
【0107】
ST固形バイオは、排水槽・浄化槽メンテナンス用として、数種類の微生物を相乗的に配合し固形化した製品である。成分としては、有機物分解有用菌と固形化剤とを含む。浄化槽や底汚泥の分解のために、グリーストラップ等に入れると徐々に溶け、微生物を放出し活性化して、栄養源である有機物質を元から分解することができる。COD、BOD、浮遊物質(SS)の低減に有用である。特に、汚泥の減少と水の透明度の改善にその効果を発揮する。安全性については、ATCC(American Type Culture Collection)で第1種に属する菌株を使用している。
【0108】
ST固形バイオは、有機物を水と二酸化炭素に分解することができ、腐敗臭を元から分解することができる。さらに、全て生分解性であって、非アルカリ性かつ非酸性であるため、環境負荷が低い。適正pHは5〜9であり、適正温度は5〜45℃である。分解の対象としては、タンパク質、糖/デンプン、セルロース、脂質、グリース、洗剤がある。
【0109】
洗剤はアタックNeo(花王株式会社)を使用したが、洗濯槽および衣類の強い臭いはこの洗剤のみでは十分に取ることは出来なかった。しかし、今回新たなST固形バイオを使用することで、首尾よく臭いが取れていくのを認識することができ、本発明の効果が実証された。本実施例で用いたST固形バイオは、包装物から一度に大量に流出するおそれがなく、安定して効果を発揮させることが可能であった。特に、ST固形バイオは、細かく砕いた後の状態で水に漬かった場合にゲル状となり、粒子が包装物から一度に大量に流出しなかった。
【0110】
比較例1
綿生地を袋状にミシンで縫い、開口部をひもで縛ることにより、包装物を作製し、固形形態の微生物としてスーパーバイオαを用いた。本比較例では、パルセータ型洗濯機(Panasonic NA−FA90H2)を用いた。固形形態の微生物を含む製品を攪拌工程に供したところ、洗濯後直ぐに製品中の微生物はなくなった。カビ臭の低減は、確認できなかった。包装物が、洗濯機の回転に耐えられなかったことが原因であると考えられる。
【0111】
比較例2
本比較例では、固形形態の微生物として、ST固形バイオ(有限会社バイオフューチャー)を使用した。ST固形バイオ1個(80g、直径6.5cm、厚さ1.9cmの円盤状)をそのままの形状で、テトロンでできた包装物に入れたこと以外は、実施例1と同様の条件で洗濯を行った。
【0112】
1回目(1日目午前)、タオルを数枚入れて洗濯を行った。初めのタオルの臭いと比較したが、洗濯後でも臭いは取れていなかった。
【0113】
2回目(1日目午後)、家族4人分の衣類を洗濯したが、タオル等の臭いは、依然としてあまり取れていないようであった。
【0114】
3回目(2日目午前)、衣類を洗濯したが、あまり効果は現れていなかった。
【0115】
上記のような大きな塊状の形で固形形態の微生物を使用すると、包装物からの微生物の放出量が少なくなり、洗濯槽内への微生物の生着が進行しにくくなることが考えられる。