【実施例】
【0019】
以下図示の実施形態を参照して本発明をより詳細に説明する。
図1に示す中空ブロックの例1は本発明による継手装置に用いるもので、ブロック本体10は正六面体(立方体)より成り、その内部に中空部11を有している。例1のブロック本体10は六面全部に中空部11とブロック本体10の外部を通じる円形の開口部12を有するブロックである。ブロック本体10は正六面体であり、中空部は円筒形状のXYZ方向交差形状として形成されている。開口部は符号12で示すが、特にその位置を示す場合、正面はf、右側面はr、左側面はl、背面はb、上面はt、下面はsを補助符号として区別することがある。
【0020】
中空ブロックをXYZ方向へ連結するために、ブロック本体10の角部に設ける継手手段として、XYZ方向の何れかの方向へ隣接のブロック本体同士を連結する際に、ブロック本体に加えられる外力を軸力として受け支える支圧プレートPが用いられる(
図3)。支圧プレートPは一定の厚みを有し、かつ、変形を無視し得る、硬質プラスチック、鉄合金その他の金属を用いたシート状の剛体部材から成り、おおむね中空ブロック柱部の最少断面積部分を通る軸線上に配置される。
【0021】
支圧プレートPが一定の厚みを有することは、ブロック本体同士の直接接触によって、外力が梁部分(中空ブロックの柱部)に入力されることを避けるために必要とされる条件である。このような支圧プレートPは、例えば接着剤又は両面テープ類を用いてブロック本体10に貼り付けられ、固定される。
【0022】
例1として示した中空ブロックは、XZ二方向へ隣接する中空ブロックに通じるボルト孔13X、13Zを有する継手部材I15を正面と背面の四隅の角部に有している(
図1B参照)。この継手部材I15は直交するXZ二方向へ曲げられた継手片14X、14Zと、上記継手片14X、14Zの面と同方向に伸びる延長片16X、16Zを有している(
図3A)。
【0023】
上記継手片14X、14Zは中空ブロック柱部の最少断面積部分17とほぼ重なる大きさの片状部分であり(
図1B、
図3A参照)、かつ、ボルト孔13X、13Zの中心は上記最少断面積部分17の中心軸線とほぼ一致する。最少断面積部分17は継手部材I15の稜線の中間点にある。なお、継手部材I15は防錆処理された鉄合金等の金属部材によって形成されており、継手片14X、14Zと棒状の延長片16X、16Zとは溶接されて一体に形成されている。
【0024】
ブロック本体10は、XZ二方向に通じて隣接の中空ブロック同士を引き寄せ、連結するボルト挿入口18X、18Zを継手手段として有するとともに、上記ボルト挿入口18X、18Zにおけるボルト操作のために中空ブロックに設けた操作口19を中空ブロックの角部、つまり正面と背面の四隅に有している(
図1、
図2)。これらにより、中空ブロックをXZ方向に連結する構成が整う。
【0025】
さらに、本装置は中空ブロックをX方向又はY方向へ連結する継手手段を備えている。継手手段として、中空ブロックは中空ブロックを一方向連結するボルト28を通す一方向ボルト孔21X、21Yが、ブロック本体10の角部と最少断面積部分17との間にて互いに抵触しない間隔を開けて設けられている(
図3B、
図4B参照)。上記ボルト孔21X、21Yはボルトの締結力によってブロック本体に応力を生じさせない角部近傍の位置にある。なお、ボルトについては同じ符号28を用いているが、目的や用途に応じて任意の種類のものを使用し得ることは当然である。
【0026】
上記継手手段は、XYの一方向に隣接する中空ブロックに通じるチューブ22Xを有する継手部材II23Xと、XYの他の一方向に隣接する中空ブロックに通じるチューブ22Yを有する継手部材II23Yを有して構成されている。また、連結には、チューブ22X、22Yの反対側に位置し、ボルト孔24X、24Yに挿入されるボルト28の締結力を受ける、支圧プレートP’が組み合わされる(
図4参照)。
【0027】
上記継手部材IIは、ボルト孔21X、21Yの内方端部に位置するチューブ22X、22Yと、ボルト孔軸と円形開口部12の円弧状の面12aとが形成する交差角度にて上記チューブ22X、22Yと一体的に設けられ、上記円弧状の面12aと面接触するプレート25X、25Yとから構成されている。軸線との交差角度については、ボルト孔21X、21Yの内方端部における接線で円弧状の面12a(の傾斜)を代表させることができる(
図5)。上記プレート25X、25Yは円形開口部と面接触するので外力の伝達が好適に行なわれ、単品の金具として形成することができるので、製造、保管、使用上非常に有効である。また、その形態については施工部位の形状や構造に応じて、長方形のほか円形、楕円形その他の形態を選択することができる。
【0028】
上記支圧プレートP’は、角部に設けられる支圧プレートPと同様に一定の厚みを有しており、変形を無視し得る、硬質プラスチック、鉄合金その他の金属を用いたシート状の剛体部材から成る。ボルト孔21X、21Yはボルトの締結力によってブロック本体に応力を生じさせない角部近傍の位置にあるので、より内側の部分にてボルト、ナットによる締結力が加えられても、その締結力は角部の支圧プレートPに軸力として伝達される。このようにして、本発明では、外力は軸荷重として受け支えられる。
【0029】
なお、継手部材II23X、23Yは、どちらもチューブ22X、22Yにブロック本体10に開けられた開口部12の曲面に配置されるので、ボルト、ナットによる締結操作は容易である。上記により、本発明による中空ブロックの継手装置に必要な中空ブロックをXY方向に連結する構成が整う。加えて、中空ブロックには隣接する中空ブロック同士の位置関係を規定するために、中空ブロックの外面に形成されたダボ穴26と、上記ダボ穴26に嵌合するダボ27とから成る位置決め手段も必要に応じて設けられる。
【0030】
本発明による継手装置に用いる中空ブロックは、中空部とブロック本体の外部を通じる円形の開口部を六面全部又は一部に有していれば良い。従って、例1のブロック本体10の六面の一部は開口部がなくても良く、閉塞した壁面を有する中空ブロックを構成することができるので、以下にその例を示す。
図5、
図6は背面を閉塞した例2の中空ブロックであって、ブロック本体20は正六面体より成り、その内部に中空部11を有している点、例1のものと変わりはない。
【0031】
従って、例2以下の場合、例1と共通の構成については符号を援用し、詳細な説明は繰り返さない(例2は一面閉塞のブロック本体20の例であり、閉塞箇所は図示の場合に止まらない。)。説明の便宜上開口部12に補助符号を付したが、例2の場合背面の開口部を示す12bは閉じて存在しない。例2の中空ブロックは背面が閉塞された壁29になるため(
図6B参照)、背面が外面になるように中空ブロックを配置すると、外部に対して閉じた構造体を構築することができる。
【0032】
例2の中空ブロックの正面と断面を示した、
図6によってより良く理解されるように、ブロック本体20は一面だけが閉塞されているので、貯水池その他の液体貯溜槽などの壁面部分の構築に好適である。例えば、
図11は角を除く外周が例2の中空ブロックの背面の壁29で囲まれており、貯溜槽を構築する場合に重要な役割を果たす。
【0033】
次に、
図7、
図8により背面と左側面を閉塞した例3の中空ブロックを示す。例3の中空ブロックは、上記二面が閉塞されたブロック本体30であるので、上記貯溜槽のような構築物の角を占めるブロックなどとして利用できる。一面閉塞のブロック本体20、二面閉塞のブロック本体30では、継手手段の一部を省略することができる。何れも閉塞された壁であって、ボルト、ナットによる緊締力によって撓むべき梁に該当する部分がないからである。
【0034】
図8に示されているように、例3の中空ブロックではブロック本体30向かって正面の右側と背面右側及び左側などに操作口19が設けてある(なお、例3は二面閉塞ブロック本体の例であるので、閉塞箇所は上記に限られない。)。例3についても例1と共通の構成については符号を援用し、詳細な説明は繰り返さないが、二面閉塞以外の構成は例1及び例2のものと共通である。
【0035】
よって、例3のブロック本体30は正面と右側面及び上下の四面にて中空部と外部とが通じており、背面と左側面に閉塞された壁29、31が形成される(
図8B参照)。以上説明した閉塞面を有する例2及び例3のブロック本体20、30は、水平面(XY平面)における構造体の周囲を囲む壁として使用することを主要な目的としているが、しかし、これらに限らず上面、下面或いはその他の面の開口部12についても、壁を設けることが可能である。
【0036】
以上のように構成された中空ブロックの継手装置は、中空ブロック同士を前後、左右又は上下に配置するとともに、配置された状態において、隣接している中空ブロック同士を引き寄せ連結することができる。すなわち、
図3Aに示したように、右下に位置するブロック本体10の継手部材I15に対して、左下に位置するブロック本体10の操作口19からボルト28を差し込み、ナット32を用いて締結し、引き寄せて連結する。その際、右下ブロック本体10と左下ブロック本体10とは、左下ブロック本体10の支圧プレートPにて外力の伝達が行なわれる。
【0037】
同様に上下2個の中空ブロックの連結においては、
図3Aにおいて、左下に位置するブロック本体10の支圧プレートPの部分において、左下に位置するブロック本体10の操作口19からボルト28を差し込み、ナット32を用いて締結がなされる。このようにして、XZ方向に配置された左右、上下の三個の中空ブロックを連結することができる(
図3B参照)。
【0038】
また、横に隣接する中空ブロックを連結するには、例えば右側に位置するブロック本体10のチューブ22Yから左側のブロック本体10のボルト孔21Yに向けて、ボルト28を差し込み、ナット32を用いて締結することができる。前後に隣接する中空ブロックについても同様に、前側に位置するブロック本体10のボルト挿入口21Xから後側のブロック本体10の挿入口21Xに向けて、ボルト28を差し込み、ナット32を用いて締結し、引き寄せて連結する。この場合、ボルト28とナット32はそれぞれ開口部12において取り扱われる。
【0039】
さらに、
図9によりXYZ方向における組立図を示す。この例では一面閉塞のブロック20と二面閉塞のブロック30を併用しており、例えば後述する貯溜槽などの角部に適用される。図中の符号35は止水手段35を示しており、この実施形態の場合水膨張性ゴムを使用している。
【0040】
図10は前記の貯溜槽であり、本発明による中空ブロックの継手装置を用いて構築される構造体の例一である。例一の構造体は予め施工された基礎33の上に、平面形状が田の字型になるように施工されており、外部の四隅に例3のブロック本体30が上下二段に配置され、それらの間には構造体の周壁となる例2のブロック本体20が同様に上下二段に配置されている。また、田の字の十字に相当する部分には例1のブロック本体10が配置されている。
【0041】
図10のような貯溜槽では、ブロック本体20とブロック本体30によって槽の全周が囲まれ、その層構造は内側の十字型構造によって強化されている。また、貯溜量はブロック本体10、20、30が高い空隙率を有するので、従来の実績によればほぼ80%と、ポカラ単体とほとんど変わらない空隙率を維持できることになる。しかも、大きな接ぎ手ブロックが不必要であるから荷重も大幅に軽減される。このような貯溜槽は、地下にも地上にも設置することができる。なお、中空ブロック同士及び中空ブロックと現場打ちの基礎コンクリートと中空ブロックとの間における上記の止水手段35が必要になるが、その場合には水膨張性ゴムなどが間に充填される。
【0042】
図11は本発明による中空ブロックの継手装置を用いて構築される、構造体の例二であり、自立式擁壁を示している。例二の構造体は予め施工され階段状の基礎34を有し、その階段の上に、例1のブロック本体10を積み重ね、下から2段目を除く正面壁は例2のブロック本体20で構築している。この構造のため、下から2段目の開口部12が通水可能な構造に保たれている。このように構成される構造体では、現場打ちのコンクリートによって構築される、基礎や境界の壁面などとの組み合わせによって全体が形をなすことになる。
【0043】
本発明の継手装置の場合、ブロック本体10同士の全ての連結においてブロック本体に加えられる外力を支圧プレートによって軸力として受け支えることができ、締結部分にて支圧プレートに加えられる外力は圧縮のみである。この継手装置ではブロック本体同士をボルトで引き寄せ、連結して構造体を形成するが、外力が面荷重から軸荷重に変換され、軸力として伝達されるため、理論的に座屈が発生せず、剛体構造が可能になる