特許第6903841号(P6903841)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6903841筒状体の変形抑制構造及び構造物の構築方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6903841
(24)【登録日】2021年6月28日
(45)【発行日】2021年7月14日
(54)【発明の名称】筒状体の変形抑制構造及び構造物の構築方法
(51)【国際特許分類】
   E02B 3/06 20060101AFI20210701BHJP
   E02D 5/04 20060101ALI20210701BHJP
   E02D 5/16 20060101ALI20210701BHJP
【FI】
   E02B3/06
   E02D5/04
   E02D5/16
【請求項の数】4
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2016-177695(P2016-177695)
(22)【出願日】2016年9月12日
(65)【公開番号】特開2018-44293(P2018-44293A)
(43)【公開日】2018年3月22日
【審査請求日】2019年9月6日
(73)【特許権者】
【識別番号】000166627
【氏名又は名称】五洋建設株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100172096
【弁理士】
【氏名又は名称】石井 理太
(74)【代理人】
【識別番号】100089886
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 雅雄
(72)【発明者】
【氏名】中井 潤一
(72)【発明者】
【氏名】山口 吉宗
(72)【発明者】
【氏名】重野 元伸
【審査官】 柿原 巧弥
(56)【参考文献】
【文献】 特開2016−142109(JP,A)
【文献】 特開2009−167794(JP,A)
【文献】 特開平10−054018(JP,A)
【文献】 特開昭58−086207(JP,A)
【文献】 米国特許第04606674(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E02B 3/06
E02D 5/04
E02D 5/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
両端が開口した筒状体の変形抑制構造において、
前記筒状体の内周面間に張設された複数のワイヤからなる変形抑制網を備え、
前記ワイヤは、それぞれその一端と筒軸中心とを結ぶ直線と一定の角度を成すように張設され、前記変形抑制網の中心部に開口部が形成され、前記ワイヤの端部が前記筒状体の内周面に支持された掛け回し部材を介して下方に引き出され、前記筒状体の底部に配置された定着部に定着されていることを特徴とする筒状体の変形抑制構造。
【請求項2】
前記変形抑制網は、前記複数のワイヤによって多角形状、星形状又は井形状に形成されている請求項1に記載の筒状体の変形抑制構造。
【請求項3】
前記筒状体は、円弧状又は平板状の鋼板材が周方向に接合されてなる鋼板セルである請求項1又は2に記載の筒状体の変形抑制構造。
【請求項4】
上下に開口した筒状体をクレーンで吊り上げ、該筒状体を設置個所まで吊り下ろした後、上端開口より中詰材を投入し、前記筒状体内部を中詰材で充填する構造物の構築方法において、
前記筒状体端部の内周面間にそれぞれその一端と筒軸中心とを結ぶ直線と一定の角度を成すように複数のワイヤを張設し、中心部に開口部を有する変形抑制網を形成し、前記ワイヤの端部を前記筒状体の内周面に支持された掛け回し部材を介して下方に引き出し、前記筒状体の底部に配置された定着部に定着させ、前記各ワイヤの張力により筒状体の端部の変形が抑制された状態で筒状体を前記クレーンで吊り上げ、前記設置個所まで吊り下ろし、
しかる後、前記筒状体の上端開口及び前記変形抑制網の開口部を通して前記筒状体内に中詰材を投入することを特徴とする構造物の構築方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、主に鋼板セル等の筒状体の仮置、移送、据付けの際における変形を抑制するための筒状体の変形抑制構造及び構造物の構築方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、図8図9に示すように、複数の筒状の鋼板セル1を水底2に並べて設置するとともに、隣り合う鋼板セル1同士を鋼板アーク3,3で互いに連結し、それらの内部に土砂等の中詰材4を充填し、護岸や岸壁等の構造物を構築する方法(鋼板セル工法)が知られている。
【0003】
鋼板セル1は、地上の製作ヤードにおいて製作され、複数の圧延鋼板を溶接によって平板状の鋼板材とし、この鋼板材を円弧形状に曲げ加工して複数のセルブロック1a,1a...を形成した後、各セルブロック1a,1a...を周方向に並べて立て込み、各セルブロック1a,1a...の互いに接する側縁部を溶接することにより円筒状に組み立てられるようになっている(例えば、特許文献1を参照)。
【0004】
そして、組み立てられた鋼板セル1は、水際の仮置き場5に一時的に保管され、気象・海象条件が整った際、仮置き場5から起重機船6によって設置位置まで移動させた後、図10に示すように、クレーン7によって水底2まで吊り下ろして設置するようになっている。
【0005】
尚、図中符号8は、クレーン7に吊り持ちさせた吊り治具であって、環状の枠部8aの下部に周方向に間隔を置いて複数のチャック8b,8b...が支持されており、各チャック8b,8b...で鋼板セル1の開口上縁部を掴むことにより、吊り治具8を介して鋼板セル1をクレーン7で吊り持ちさせるようになっている。
【0006】
また、鋼板セル1の設置後は、図11に示すように、鋼板セル1の上端開口よりリクレーマー船9より土砂等の中詰材4を投入し、鋼板セル1内部に充填する。
【0007】
しかしながら、このような鋼板セル1は、鋼板によって構成されているため、仮置きした際やクレーン7による吊り下ろし作業の際に自重や作業中に作用する外力によって撓み、端部開口等が変形するおそれがあった。
【0008】
そこで、従来では、鋼板セル1の形状に合わせて変形抑制治具10を製作しておき、仮置きやクレーン7による吊り下ろし作業等の際には、その変形抑制治具10を鋼板セル1の内側に設置し、鋼板セル1の変形を抑制するようにしていた。
【0009】
この変形抑制治具10は、例えば、図12に示すように、剛性の高い梁状の鋼材10a,10aを十字状に組み上げたものを使用し、各鋼材10a,10aを介して鋼板セル1の内周面が互いに支持されることによって、変形を抑制し筒状体の真円度を保つようになっている(例えば、特許文献2を参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特公平01−25842号公報
【特許文献2】特開平10−54018号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
しかしながら、上述の如き従来の技術では、変形抑制治具を構成する鋼梁材等の剛性によって自重や外力に対抗するものであり、剛性を確保するために鋼梁材の断面を大きくする必要があるため、その分重量が嵩み鋼板セル等の筒状体に対する設置作業が大掛かりになるという問題があった。
【0012】
また、変形抑制治具の重量が嵩むことから、変形抑制治具を設置した状態で鋼板セルの吊り下ろし作業を実施する場合には、使用するクレーンや吊りワイヤの選定に際し、鋼板セルの重量に加え、変形抑制治具の重量を考慮する必要があり、大型の起重機船及び太い吊りワイヤを用いなければならず、その分、費用が嵩むという問題があった。
【0013】
さらに、変形抑制治具の重量が嵩むことから、鋼板セルを設置する地盤や基礎の耐力を計算する上でも変形抑制治具の重量を考慮しなければならなかった。
【0014】
また、従来の技術では、変形抑制治具を工場等の別の箇所で所定の寸法形状どおりに製作する必要があるため、作業効率が悪いという問題があった。
【0015】
また、従来の技術では、変形抑制治具を取り付けた状態で中詰材を投入できないため、鋼板セルの設置後、中詰材投入の前に変形抑制治具を取り外さなければならず、作業効率が悪いという問題があった。
【0016】
そこで、本発明は、このような従来の問題に鑑み、簡便且つ安価に鋼板セル等の筒状体の変形を抑制することができる筒状体の変形抑制構造及び構造物の構築方法の提供を目的としてなされたものである。
【課題を解決するための手段】
【0017】
上述の如き従来の問題を解決するための請求項1に記載の発明の特徴は、両端が開口した筒状体の変形抑制構造において、前記筒状体の内周面間に張設された複数のワイヤからなる変形抑制網を備え、前記ワイヤは、それぞれその一端と筒軸中心とを結ぶ直線と一定の角度を成すように張設され、前記変形抑制網の中心部に開口部が形成され、前記ワイヤの端部が前記筒状体の内周面に支持された掛け回し部材を介して下方に引き出され、前記筒状体の底部に配置された定着部に定着されている筒状体の変形抑制構造にある。
【0018】
請求項2に記載の発明の特徴は、請求項1の構成に加え、前記変形抑制網は、前記複数のワイヤによって多角形状、星形状又は井形状に形成されていることにある。
【0019】
請求項3に記載の発明の特徴は、請求項1又は2の構成に加え、前記筒状体は、円弧状又は平板状の鋼板材が周方向に接合されてなる鋼板セルであることにある。
【0020】
請求項4に記載の発明の特徴は、上下に開口した筒状体をクレーンで吊り上げ、該筒状体を設置個所まで吊り下ろした後、上端開口より中詰材を投入し、前記筒状体内部を中詰材で充填する構造物の構築方法において、前記筒状体端部の内周面間にそれぞれその一端と筒軸中心とを結ぶ直線と一定の角度を成すように複数のワイヤを張設し、中心部に開口部を有する変形抑制網を形成し、前記ワイヤの端部を前記筒状体の内周面に支持された掛け回し部材を介して下方に引き出し、前記筒状体の底部に配置された定着部に定着させ、前記各ワイヤの張力により筒状体の端部の変形が抑制された状態で筒状体を前記クレーンで吊り上げ、前記設置個所まで吊り下ろし、しかる後、前記筒状体の上端開口及び前記変形抑制網の開口部を通して前記筒状体内に中詰材を投入する構造物の構築方法にある。
【発明の効果】
【0021】
本発明に係る筒状体の変形抑制構造は、上述したように、両端が開口した筒状体の変形抑制構造において、前記筒状体の内周面間に張設された複数のワイヤからなる変形抑制網を備え、前記ワイヤは、それぞれその一端と筒軸中心とを結ぶ直線と一定の角度を成すように張設され、前記変形抑制網の中心部に開口部が形成されていることにより、筒状体の仮置きやクレーンによる移送作業に際し、安価且つ簡便に筒状体の変形を抑制することができるとともに、設置後の中詰材の投入作業を容易に行うことができる。
【0022】
また、本発明において、前記変形抑制網は、前記複数のワイヤによって多角形状、星形状又は井形状に形成されていることにより、中央に開口部を形成しつつ、筒状体に対し均等にワイヤの張力を作用させることができ、安定した変形抑制性能を発揮することができる。
【0023】
さらに、本発明において、前記ワイヤは、その端部が前記筒状体の内周面に支持された掛け回し部材を介して下方に引き出され、前記筒状体の底部に配置された定着部に定着されていることにより、高所での作業を回避し、ワイヤ端部の定着作業及び長さ調節を筒状体底部で行うことができる。
【0024】
さらに、本発明において、前記筒状体は、円弧状又は平板状の鋼板材が周方向に接合されてなる鋼板セルであることにより、圧延鋼板からなる鋼板セルの変形を好適に抑制することができる。
【0025】
また、本発明に係る構造物の構築方法は、上述したように、上下に開口した筒状体をクレーンで吊り上げ、該筒状体を設置個所まで吊り下ろした後、上端開口より中詰材を投入し、前記筒状体内部を中詰材で充填する構造物の構築方法において、前記筒状体端部の内周面間にそれぞれその一端と筒軸中心とを結ぶ直線と一定の角度を成すように複数のワイヤを張設し、中心部に開口部を有する変形抑制網を形成し、前記ワイヤの端部を前記筒状体の内周面に支持された掛け回し部材を介して下方に引き出し、前記筒状体の底部に配置された定着部に定着させ、前記各ワイヤの張力により筒状体の端部の変形が抑制された状態で筒状体を前記クレーンで吊り上げ、前記設置個所まで吊り下ろし、しかる後、前記筒状体の上端開口及び前記変形抑制網の開口部を通して前記筒状体内に中詰材を投入することにより、筒状体の変形を抑制しつつ、中詰材の投入を効率的に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
図1】本発明に係る筒状体の変形抑制構造を備えた鋼板セルの態様を示す平面図である。
図2】同上の変形抑制構造を備えた鋼板セルの仮置き状態を示す縦断面図である。
図3】同上のワイヤ取付部分を示す部分拡大断面図である。
図4】同上のワイヤ取付部分の他の実施例を示す部分拡大断面図である。
図5図1中の変形抑制網の他の実施例を示す平面図である。
図6】本発明に係る構造物の構築方法における鋼板セルのクレーン吊り上げ作業の状態を示す縦断面図である。
図7】同上の中詰材投入作業の状態を示す平面図である。
図8】鋼板セル工法を用いた構造物の一例を示す平面図である。
図9】同上の縦断面図である。
図10】同上の鋼板セルの設置作業の状態を示す側面図である。
図11】同上の鋼板セルの中詰材投入作業の状態を示す側面図である。
図12】(a)は従来の筒状体の変形抑制構造の一例を示す平面図、(b)は概略縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
次に、本発明に係る筒状体の変形抑制構造の実施態様を図1図5に示した実施例に基づいて説明する。尚、上述の従来例と同様の構成には同一符号を付して説明し、図中符号1は筒状体である鋼板セルである。
【0028】
図1は、本願発明に係る変形抑制構造を備えた鋼板セル1を示し、図2は鋼板セル1を仮置きした状態の概略を示す断面図である。
【0029】
鋼板セル1は、複数の円弧状に形成されたセルブロック1a,1a...を備え、周方向に並べた各セルブロック1a,1a...の側縁を接合することにより円筒状に形成されている。
【0030】
また、この鋼板セル1の内周面には、周方向に間隔を置いて突設された複数の縦リブ20,20...と、筒軸方向に間隔を置いて突設された複数の補強リブ21とを備えている。
【0031】
そして、組み立てられた鋼板セル1は、図1図2に示すように、その自重及び外力に対する変形抑制構造を備え、筒軸方向の断面形状が保持された状態で水際の仮置き場5に一時的に載置される。尚、図中符号22は、仮置き場5に鋼板セル1を仮置きするための支持台である。
【0032】
この筒状体の変形抑制構造は、鋼板セル1の内周面間に張設された複数のワイヤ23,23...からなる変形抑制網24を備え、各ワイヤ23,23...の張力により鋼板セル1の形状を保持するようになっている。
【0033】
各変形抑制網24は、鋼板セル1の上下端部及びその間の所望の高さ位置に設置され、変形抑制網24が設置された各部の断面形状の歪みを防止することにより鋼板セル1全体の形状を保持している。
【0034】
各ワイヤ23,23...は、それぞれその一端と筒軸中心cとを結ぶ直線cLと一定の角度θを成すように張設され、星形状、多角形状又は井形状を成すとともに、変形抑制網24の中心部に開口部24aが形成されている。
【0035】
各ワイヤ23,23...は、図3に示すように、端部がシャックル等の定着具25を介して縦リブ20,20...に固定されている。
【0036】
また、各ワイヤ23,23...には、その途中にターンバックル等の長さ調節手段26を備え、容易に長さ及びワイヤ23,23...の張力を調節できるようになっている。
【0037】
尚、上端部及び中間部に設置される変形抑制網24を構成するワイヤ23,23...は、図4に示すように、その一端又は両端が鋼板セル1の内周面に支持された掛け回し部材27を介して下方に引き出され、鋼板セル1の底部に配置された定着部28に定着されるようにし、ワイヤ23,23...の定着作業及び長さ調節作業を底部で行えるようにしてもよい。尚、図3に示す実施例と同様の構成には、同一符号を付して説明を省略する。
【0038】
掛け回し部材27は、縦リブ20に固定されたシャックルを利用してもよく、特に図示しないが、鋼板セル1の内周面に固定された滑車を用いてもよい。
【0039】
尚、変形抑制網24は、上述の五芒星形状に限定されず、例えば、図5(a)に示すように、多角形状(実施例は正五角形状)等であってもよく、図5(b)に示すように、六芒星状であってもよく、図5(c)に示すように、井形状であってもよい。
【0040】
次に、上述の如き変形抑制構造を使用した構造物の構築方法について説明する。尚、上述の実施例と同様の構成には同一符号を付して説明を適宜省略する。
【0041】
この鋼板セル1は、地上の製作ヤードにおいて製作され、複数の圧延鋼板を溶接して平板状の鋼板材を形成し、この鋼板材を円弧形状に曲げ加工して複数のセルブロック1a,1a...を形成した後、各セルブロック1a,1a...を周方向に並べて立て込み、各セルブロック1a,1a...の互いに接する側縁部を溶接することにより円筒状に組み立てられる。
【0042】
そして、組み立てられた鋼板セル1は、水際の仮置き場5に支持台22,22...を介して設置され、その場において、形状を検査するとともに、歪み等がある場合には修正する。
【0043】
また、この鋼板セル1には、その上下端部及びその間の所望高さ位置において、鋼板セル1端部の内周面間にそれぞれその一端23aと筒軸中心cとを結ぶ直線cLと一定の角度θを成すように複数のワイヤ23,23...を張設し、中心部に開口部24aを有する変形抑制網24を形成するとともに、各ワイヤ23,23...の張力により鋼板セル1の変形抑制網24設置位置における筒軸方向断面の歪みが抑制された状態とする。
【0044】
その際、各ワイヤ23,23...は、鋼板セル1の歪み修正に合わせて張力を調節することによって、歪み修正作業を円滑に行うことができるとともに高い真円度を確保することができる。
【0045】
そして、この鋼板セル1は、上下端部及びその間の所望高さ位置に変形抑制網24,24...が形成されていることにより、変形抑制網24を構成する各ワイヤ23,23...の張力が内周面の各位置に均等に作用し、その均衡によって鋼板セル1の自重や風等の外力に対抗し、鋼板セル1の端部及び中間位置における断面形状を保持する。
【0046】
次に、気象・海象条件が整った際、鋼板セル1を仮置き場5から起重機船6によって設置位置まで移動させた後、クレーン7によって水底2まで吊り下ろして設置する。
【0047】
具体的には、図6図10に示すように、先ず、鋼板セル1の上端開口縁部上にクレーン7に吊り持ちさせた吊り治具8を移動させ、チャック8b、8b...を上端開口縁部に接続する。
【0048】
この吊り治具8の接続作業においては、鋼板セル1の上端部に変形抑制網24が形成されているので、作業に伴い作用する外力に対し各ワイヤ23,23...の張力によって対抗し、鋼板セル1各部の断面形状を保持できる。
【0049】
また、吊り治具8の接続が完了した後は、剛体構造の吊り治具8によって鋼板セル1の上端開口部が保持されるので、上端開口部の変形抑制性能が増す。
【0050】
次に、起重機船6を設置場所まで移動させた後、図6の場合と同様に、クレーン7で鋼板セル1を吊り上げ、水底2まで吊り下ろす。
【0051】
その際、鋼板セル1に設置された変形抑制網24を構成するワイヤ23,23...は、いずれも軽量であるので、起重機船6及び吊りワイヤ23,23...の選定にその重量を考慮する必要がなく、設置する水底2の地盤耐力に及ぼす影響も少ない。
【0052】
また、クレーン7による吊り上げから設置までの間は、鋼板セル1の上端開口部が吊り治具8によって保持されているとともに、各変形抑制網24を構成する各ワイヤ23,23...の張力によって自重、風や潮流等の外力及び接地時の地盤反力に対し対抗でき、鋼板セル1の筒軸方向断面の形状を保持できる。
【0053】
そして、鋼板セル1が着底した後、吊り治具8を鋼板セル1より取り外し、設置作業を完了する。尚、鋼板セル1の設置後は、吊り治具8が取り外されても、各変形抑制網24を構成する各ワイヤ23,23...の張力によって潮流等の外力及び地盤反力に対抗でき、鋼板セル1の筒軸方向の断面形状が保持されている。
【0054】
次に、図7図11に示すように、鋼板セル1の上端開口からリクレーマー船9によって土砂等の中詰材4を投入し、鋼板セル1内部に充填する。
【0055】
その際、各変形抑制網24には、中央部に開口部24aが形成されているので、中詰材4を中央部より投入する場合であっても変形抑制網24によって中詰材4の投入が妨げられず、また、中詰材4投入作業時においても各変形抑制網24によって鋼板セル1の筒軸方向の断面形状を保持した状態を維持することができる。
【0056】
よって、中詰材4の投入作業の初期段階において、中詰材4を鋼板セル1の中央部に投入することによって、均等に中詰材4を投入でき、且つ、鋼板セル1の底部に対して中詰材4による圧力が作用しても、上端部及び中間部分において各変形抑制網24を構成するワイヤ23,23...の張力が作用し、鋼板セル1の変形を抑制することができる。
【0057】
そして、中詰材4の充填が完了すると、各変形抑制網24は、中詰材4内に埋設され、鋼板セル1と中詰材4との結合を補助するようになっている。
【0058】
尚、上述の実施例では、変形抑制網24を鋼板セル1の上下端部及びその間の所望の高さ位置に設けた例について説明したが、変形抑制網24を設ける位置は上述の実施例に限定されず、例えば、上下端部又は何れか一方の端部のみに設けてもよく、状況に応じて変形が懸念される任意の高さ位置に設けてもよい。
【0059】
尚、上述の実施例では、筒状体として鋼板セル1を例に挙げて説明したが、筒状体は、鋼板セル1に限定されず、例えば、大口径鋼管等の筒状体にも適用することができる。
【符号の説明】
【0060】
1 鋼板セル
1a セルブロック
2 水底
3 鋼板アーク
4 中詰材
5 仮置き場
6 起重機船
7 クレーン
8 吊り治具
9 リクレーマー船
20 縦リブ
21 補強リブ
22 支持台
23 ワイヤ
24 変形抑制網
25 定着具
26 長さ調節手段
27 掛け回し部材
28 定着部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12