特許第6903880号(P6903880)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6903880
(24)【登録日】2021年6月28日
(45)【発行日】2021年7月14日
(54)【発明の名称】空気入りタイヤ
(51)【国際特許分類】
   B60C 11/03 20060101AFI20210701BHJP
   B60C 11/13 20060101ALI20210701BHJP
【FI】
   B60C11/03 100B
   B60C11/13 C
   B60C11/03 C
【請求項の数】8
【全頁数】18
(21)【出願番号】特願2016-161262(P2016-161262)
(22)【出願日】2016年8月19日
(65)【公開番号】特開2018-27762(P2018-27762A)
(43)【公開日】2018年2月22日
【審査請求日】2019年8月7日
(73)【特許権者】
【識別番号】000006714
【氏名又は名称】横浜ゴム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】特許業務法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】温品 良介
【審査官】 市村 脩平
(56)【参考文献】
【文献】 特開2016−132440(JP,A)
【文献】 特開2009−120055(JP,A)
【文献】 特開2008−307918(JP,A)
【文献】 特開平04−271905(JP,A)
【文献】 特開2015−020442(JP,A)
【文献】 特開2013−091479(JP,A)
【文献】 特開2003−211920(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60C1/00−19/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
タイヤ周方向に延びる第1主溝と、
前記第1主溝により区画される第1陸部と、
前記第1主溝を介して前記第1陸部と隣り合う第2陸部と、
前記第1主溝からタイヤ幅方向における前記第2陸部側に延びて前記第1主溝と共に前記第2陸部を区画する第2陸部ラグ溝と、
を備え、
前記第1主溝は、タイヤ周方向に延びつつタイヤ幅方向に振幅するジグザグ状に形成されることにより、前記第1陸部側のエッジ部である第1陸部側エッジ部が、前記第1主溝の溝幅方向における外側に向かう方向に屈曲する屈曲部を有しており、
前記屈曲部は、前記第1陸部側エッジ部における前記第1陸部側に位置する部分と前記第2陸部側に位置する部分とを接続する部分である屈曲部エッジ部と、前記第1陸部側エッジ部における前記第2陸部側に位置する部分との角度である屈曲角θが鋭角に形成され、
前記第1主溝の前記第2陸部側のエッジ部は、前記第1主溝がタイヤ周方向に延びつつタイヤ幅方向に振幅するジグザグ状に形成されることにより、前記第1陸部側に位置する部分と、前記第2陸部側に位置する部分とを有しており、
前記第2陸部ラグ溝は、前記第1主溝への開口部が前記屈曲部に対して対向する位置に前記第1主溝に接続され、且つ、前記第2陸部ラグ溝の溝幅方向両側のエッジのうち、一方の前記エッジは前記第1主溝の前記第2陸部側の前記エッジ部における前記第2陸部側に位置する部分に接続され、他方の前記エッジは前記第1主溝の前記第2陸部側の前記エッジ部における前記第1陸部側に位置する部分に接続されており、
前記第2陸部ラグ溝の前記第1主溝への前記開口部は、前記第1主溝の前記第2陸部側の前記エッジ部における前記第2陸部側に位置する部分と前記第2陸部ラグ溝の一方の前記エッジとの交点と、前記第1主溝の前記第2陸部側の前記エッジ部における前記第1陸部側に位置する部分と前記第2陸部ラグ溝の他方の前記エッジとの交点とを結ぶ領域になっており、
前記第1陸部側エッジ部の前記屈曲部エッジ部は、前記開口部の幅で前記開口部に直交する領域内に少なくとも一部が位置し、
前記第2陸部には、タイヤ周方向に延びると共に一端が前記第2陸部ラグ溝に接続され、他端が前記第2陸部内で終端する周方向細溝が形成されることを特徴とする空気入りタイヤ。
【請求項2】
前記屈曲部の前記屈曲角θは、40°≦θ≦85°の範囲内である請求項1に記載の空気入りタイヤ。
【請求項3】
前記第1主溝の溝深さDsは、タイヤ周方向に延びると共にトレッドウェアインジケータが設けられる摩耗検知主溝の溝深さDgとの関係が0.25Dg≦Ds≦Dgの範囲内である請求項1または2に記載の空気入りタイヤ。
【請求項4】
前記第1主溝は、溝幅Wが3mm≦W≦10mmの範囲内である請求項1〜3のいずれか1項に記載の空気入りタイヤ。
【請求項5】
前記第1主溝には、前記第1主溝からタイヤ幅方向内側に延びる第1陸部ラグ溝が接続されており、
前記第2陸部ラグ溝は複数設けられて前記第1主溝に接続されると共に、複数の前記第2陸部ラグ溝のうちの一部は、前記第1主溝に対する第2陸部ラグ溝の開口部と、前記第1主溝に対する第1陸部ラグ溝の開口部とが、タイヤ幅方向に見た場合に少なくとも一部の範囲で重なっており、
複数の前記第2陸部ラグ溝が前記第1主溝に接続される複数の交点のうち、
前記第1主溝の前記第1陸部側エッジ部側に前記屈曲部が形成される前記交点である3方向交点と、
前記第1主溝の前記第1陸部側エッジ部側に前記第1陸部ラグ溝が接続される前記交点である4方向交点とは、
タイヤ周方向において交互に配置される請求項1〜4のいずれか1項に記載の空気入りタイヤ。
【請求項6】
前記周方向細溝は、タイヤ周方向における長さが前記第2陸部のタイヤ周方向における全長の50%以上90%以下の範囲内である請求項1〜5のいずれか1項に記載の空気入りタイヤ。
【請求項7】
前記周方向細溝は、前記第2陸部内で終端する側の端部よりも前記第2陸部ラグ溝に接続される側の端部の方が溝幅が広くなっている請求項1〜6のいずれか1項に記載の空気入りタイヤ。
【請求項8】
前記第2陸部ラグ溝は、前記周方向細溝が接続される側のエッジが、前記周方向細溝が接続される位置のタイヤ幅方向における両側で前記第2陸部ラグ溝の溝幅方向にずれている請求項のいずれか1項に記載の空気入りタイヤ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、空気入りタイヤに関する。
【背景技術】
【0002】
氷上や雪上での走行性能が求められる、いわゆるスタッドレスタイヤでは、柔軟なゴムを使用して粘着摩擦力を高めると共に、トレッド部に形成する溝を工夫することにより、氷上・雪上性能を高めている。例えば、特許文献1に記載された空気入りタイヤでは、氷路性能、操縦安定性能及び耐摩耗性能をバランス良く向上させるために、一対のセンター主溝によって区画されたセンター陸部におけるタイヤ赤道線上にタイヤ周方向にジグザグ上に延びるセンター細溝を設け、センター主溝からセンター細溝のジグザグの頂点に延びるセンターラグ溝を設けている。
【0003】
また、特許文献2に記載された空気入りタイヤでは、雪上路面でのトラクション性能と操縦安定性とを向上させるために、2本の周方向主溝のタイヤ幅方向外側に形成される端部陸部列にタイヤ幅方向に対して傾斜する主ラグ溝を形成し、主ラグ溝と逆方向に傾斜する第1補助溝を、2本の周方向主溝の間に位置する中央陸部列と端部陸部列とを跨いで設けている。また、特許文献3に記載された空気入りタイヤでは、氷上性能及び雪上性能をバランス良く改善するために、トレッド部に、中心線がずれた状態で集合する3本の小溝を有し、小溝が集合する部位に小溝の中心線により囲まれた三角形部分を形成している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2015−20465号公報
【特許文献2】特許第5770834号公報
【特許文献3】特開2015−229461号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ここで、近年では、スタッドレスタイヤの開発において、雪上性能と、雪上や氷上での操縦安定性の両立がますます重要になっており、特に、操縦安定性については、雪上や氷上での制動性、旋回性などの向上に向けた要求が多くなっている。一般的に操縦安定性の向上には、トレッドパターンにおける溝面積を少なくすることが有効であるが、雪上性能の向上については、溝面積を多くすることが有効である。このため、これらの性能を両立するのは、大変困難なものとなっていた。
【0006】
本発明は、上記に鑑みてなされたものであって、雪上性能と操縦安定性とを両立することのできる空気入りタイヤを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本発明に係る空気入りタイヤは、タイヤ周方向に延びる第1主溝と、前記第1主溝により区画される第1陸部と、前記第1主溝を介して前記第1陸部と隣り合う第2陸部と、前記第1主溝からタイヤ幅方向における前記第2陸部側に延びて前記第1主溝と共に前記第2陸部を区画する第2陸部ラグ溝と、を備え、前記第1主溝は、前記第1陸部側のエッジ部である第1陸部側エッジ部に、前記第1陸部側エッジ部が前記第1主溝の溝幅方向における外側に向かう方向に屈曲すると共に屈曲角θが鋭角に形成される屈曲部を有しており、前記第2陸部ラグ溝は、前記第1主溝への開口部が前記屈曲部に対して対向する位置に前記第1主溝に接続されることを特徴とする。
【0008】
また、上記空気入りタイヤにおいて、前記屈曲部の前記屈曲角θは、40°≦θ≦85°の範囲内であることが好ましい。
【0009】
また、上記空気入りタイヤにおいて、前記第1主溝の溝深さDsは、タイヤ周方向に延びると共にトレッドウェアインジケータが設けられる摩耗検知主溝の溝深さDgとの関係が0.25Dg≦Ds≦Dgの範囲内であることが好ましい。
【0010】
また、上記空気入りタイヤにおいて、前記第1主溝は、溝幅Wが3mm≦W≦10mmの範囲内であることが好ましい。
【0011】
また、上記空気入りタイヤにおいて、前記第1主溝には、前記第1主溝からタイヤ幅方向内側に延びる第1陸部ラグ溝が接続されており、前記第2陸部ラグ溝は複数設けられると共に、複数の前記第2陸部ラグ溝のうちの一部は、前記第1主溝に対する開口部が、前記第1陸部ラグ溝の前記第1主溝に対する開口部に対してタイヤ周方向において少なくとも一部の範囲で重なる位置に接続されており、複数の前記第2陸部ラグ溝が前記第1主溝に接続される複数の交点のうち、前記第1主溝の前記第1陸部側エッジ部側に前記屈曲部が形成される前記交点である3方向交点と、前記第1主溝の前記第1陸部側エッジ部側に前記第1陸部ラグ溝が接続される前記交点である4方向交点とは、タイヤ周方向において交互に配置されることが好ましい。
【0012】
また、上記空気入りタイヤにおいて、前記第2陸部には、タイヤ周方向に延びると共に一端が前記第2陸部ラグ溝に接続され、他端が前記第2陸部内で終端する周方向細溝が形成されることが好ましい。
【0013】
また、上記空気入りタイヤにおいて、前記周方向細溝は、タイヤ周方向における長さが前記第2陸部のタイヤ周方向における全長の50%以上90%以下の範囲内であることが好ましい。
【0014】
また、上記空気入りタイヤにおいて、前記周方向細溝は、前記第2陸部内で終端する側の端部よりも前記第2陸部ラグ溝に接続される側の端部の方が溝幅が広くなっていることが好ましい。
【0015】
また、上記空気入りタイヤにおいて、前記第2陸部ラグ溝は、前記周方向細溝が接続される側のエッジが、前記周方向細溝が接続される位置のタイヤ幅方向における両側で前記第2陸部ラグ溝の溝幅方向にずれていることが好ましい。
【発明の効果】
【0016】
本発明に係る空気入りタイヤは、雪上性能と操縦安定性とを両立することができる、という効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1図1は、実施形態に係る空気入りタイヤのトレッド面を示す平面図である。
図2図2は、図1に示すセンター主溝及びセカンド主溝の断面図である。
図3図3は、図1のA部詳細図である。
図4図4は、図3のB部詳細図である。
図5図5は、図3のC部詳細図である。
図6図6は、図3に示すセカンド陸部の詳細図である。
図7A図7Aは、空気入りタイヤの性能試験の結果を示す図表である。
図7B図7Bは、空気入りタイヤの性能試験の結果を示す図表である。
図7C図7Cは、空気入りタイヤの性能試験の結果を示す図表である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下に、本発明に係る空気入りタイヤの実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。なお、この実施形態によりこの発明が限定されるものではない。また、下記実施形態における構成要素には、当業者が置換可能、且つ、容易に想到できるもの、或いは実質的に同一のものが含まれる。
【0019】
以下の説明において、タイヤ幅方向とは、空気入りタイヤの回転軸と平行な方向をいい、タイヤ幅方向内側とはタイヤ幅方向においてタイヤ赤道線に向かう方向、タイヤ幅方向外側とは、タイヤ幅方向においてタイヤ赤道線に向かう方向の反対方向をいう。また、タイヤ径方向とは、タイヤ回転軸と直交する方向をいい、タイヤ周方向とは、タイヤ回転軸を中心として回転する方向をいう。
【0020】
図1は、実施形態に係る空気入りタイヤのトレッド面を示す平面図である。図1に示す空気入りタイヤ1は、タイヤ径方向の最も外側となる部分にトレッド部2が配設されており、トレッド部2の表面、即ち、当該空気入りタイヤ1を装着する車両(図示省略)の走行時に路面と接触する部分は、トレッド面3として形成されている。トレッド面3には、タイヤ周方向に延びる周方向主溝20と、タイヤ幅方向に延びるラグ溝40とが、それぞれ複数形成されており、この周方向主溝20とラグ溝40とにより、トレッド面3には複数の陸部10が形成されている。
【0021】
詳しくは、周方向主溝20は、4本がタイヤ幅方向に並んで形成されており、タイヤ幅方向におけるタイヤ赤道線CLの両側に位置する2本のセンター主溝21と、2本のセンター主溝21のそれぞれのタイヤ幅方向外側に位置する2本のセカンド主溝22と、が設けられている。また、ラグ溝40は、2本のセンター主溝21同士の間に位置するセンターラグ溝41と、隣り合うセンター主溝21とセカンド主溝22との間に位置するセカンドラグ溝45と、セカンド主溝22のタイヤ幅方向外側に位置するショルダーラグ溝48と、が設けられている。ここでいう周方向主溝20は、溝幅が3.0mm以上10.0mm以下の範囲内になっており、溝深さが8.0mm以上9.5mm以下の範囲内になっている。また、ラグ溝40は、溝幅が1.5mm以上8.0mm以下の範囲内になっており、溝深さが5.0mm以上9.0mm以下の範囲内になっている。
【0022】
図2は、図1に示すセンター主溝及びセカンド主溝の断面図である。複数の周方向主溝20のうち、センター主溝21は、第1の主溝である第1主溝として設けられており、セカンド主溝22は、摩耗末期を示すトレッドウェアインジケータ23が設けられる摩耗検知主溝として設けられている。トレッドウェアインジケータ23は、タイヤ幅方向における長さが短い長さで、セカンド主溝22の溝底から突出して形成されており、セカンド主溝22のタイヤ周上における複数箇所に設けられている。センター主溝21は溝深さDsが、このようにトレッドウェアインジケータ23を有するセカンド主溝22の溝深さDgとの関係が、0.25Dg≦Ds≦Dgの範囲内になっている。なお、この場合におけるセカンド主溝22の溝深さDgは、トレッドウェアインジケータ23を有さない位置での深さになっており、好ましくは、0.50Dg≦Ds≦Dgの範囲内であるのが好ましい。
【0023】
また、センター主溝21は、溝幅Wが3mm≦W≦10mmの範囲内になっている。好ましくは、センター主溝21の溝幅Wは、3.5mm≦W≦7.0mmの範囲内であるのが好ましい。
【0024】
複数のラグ溝40のうち、センターラグ溝41は、センター陸部11を区画する第1陸部ラグ溝として設けられ、2本のセンター主溝21の間でタイヤ幅方向に延びて形成され、両端がセンター主溝21に接続されている。また、セカンドラグ溝45は、隣り合うセンター主溝21とセカンド主溝22との間でタイヤ幅方向に延びて形成され、一端がセンター主溝21に接続され、他端がセカンド主溝22に接続されている。即ち、セカンドラグ溝45は、センター主溝21からタイヤ幅方向におけるセカンド陸部12側に延びてセカンド陸部12を区画する第2陸部ラグ溝として設けられている。また、ショルダーラグ溝48は、セカンド主溝22のタイヤ幅方向外側の位置でタイヤ幅方向に延びて形成され、タイヤ幅方向内側の端部がセカンド主溝22に接続されている。また、これらのラグ溝40は、それぞれタイヤ幅方向に延びつつ、タイヤ周方向に傾斜したり湾曲したりしている。タイヤ幅方向に対するタイヤ周方向への傾斜や湾曲等のラグ溝40の形態は、目的とするトレッドパターンに応じて適宜設定される。
【0025】
陸部10は、周方向主溝20及びラグ溝40により区画され、陸部10としては、2本のセンター主溝21同士の間に位置する第1陸部であるセンター陸部11と、隣り合うセンター主溝21とセカンド主溝22との間に位置する第2陸部であるセカンド陸部12と、セカンド主溝22のタイヤ幅方向外側に位置する第3陸部であるショルダー陸部13と、が設けられている。このうち、センター陸部11は、タイヤ赤道線CL上に位置しており、センター主溝21とセンターラグ溝41とによって区画されている。また、セカンド陸部12は、センター主溝21を介してセンター陸部11と隣り合って形成され、センター主溝21とセカンド主溝22、及びセカンドラグ溝45によって区画されている。また、ショルダー陸部13は、セカンド主溝22を介してセカンド陸部12と隣り合って形成され、セカンド主溝22とショルダーラグ溝48とによって区画されている。このショルダー陸部13には、タイヤ周方向に延びると共に、一端がショルダーラグ溝48に接続されて他端がショルダー陸部13内で終端するショルダー細溝55が形成されている。これらのように、センター陸部11とセカンド陸部12とショルダー陸部13とは、周方向主溝20とラグ溝40とによって区画されることにより、それぞれブロック状に形成されている。
【0026】
また、トレッド面3には、多数のサイプ58が形成されている。サイプ58は、センター陸部11、セカンド陸部12、ショルダー陸部13の各陸部10に形成され、それぞれタイヤ幅方向に延びつつタイヤ周方向に振幅する、ジグザグ状の形状で形成されている。
【0027】
なお、ここでいうサイプ58は、トレッド面3に細溝状に形成されるものであり、空気入りタイヤ1を正規リムにリム組みし、正規内圧の内圧条件で、無負荷時には細溝を構成する壁面同士が接触しないが、平板上で垂直方向に負荷させたときの平板上に形成される接地面の部分に細溝が位置する際、または細溝が形成される陸部の倒れ込み時には、当該細溝を構成する壁面同士、或いは壁面に設けられる部位の少なくとも一部が、陸部の変形によって互いに接触するものをいう。正規リムとは、JATMAで規定する「標準リム」、TRAで規定する「Design Rim」、或いは、ETRTOで規定する「Measuring Rim」である。また、正規内圧とは、JATMAで規定する「最高空気圧」、TRAで規定する「TIRE LOAD LIMITS AT VARIOUS COLD INFLATION PRESSURES」に記載の最大値、或いはETRTOで規定する「INFLATION PRESSURES」である。本実施形態では、サイプ58は、幅が0.6mm以上1.0mm以下の範囲内になっており、深さが6.0mm以上8.0mm以下の範囲内になっている。
【0028】
図3は、図1のA部詳細図である。センター主溝21は、センター陸部11側のエッジ部30であり第1陸部側エッジ部であるセンター側エッジ部31に、センター側エッジ部31が屈曲することにより形成される屈曲部35を有している。詳しくは、センター主溝21は、タイヤ周方向における所定の複数の位置で、センター主溝21の溝幅と同程度のずれ量でタイヤ幅方向における位置がずれて形成されている。つまり、センター主溝21は、タイヤ周方向に延びつつタイヤ幅方向に向かう方向に形成されており、即ち、タイヤ周方向に対して傾斜している。このため、センター主溝21は、タイヤ周方向における所定の複数の位置で、タイヤ幅方向における位置がセンター主溝21の傾斜方向の反対方向にずれることにより、センター主溝21は全体として、タイヤ幅方向における位置が所定の範囲内となって形成されている。換言すると、センター主溝21は、タイヤ周方向に延びつつタイヤ幅方向に振幅するジグザグ状に形成されている。
【0029】
センター主溝21は、このように複数の位置でタイヤ幅方向にずれて形成されているため、センター側エッジ部31と、センター主溝21のセカンド陸部12側のエッジ部30であるセカンド側エッジ部32とは、タイヤ周方向においてセンター主溝21がタイヤ幅方向にずれる位置で、共に同じ方向にタイヤ幅方向にずれている。センター側エッジ部31に形成される屈曲部35は、タイヤ周方向においてセンター側エッジ部31がタイヤ幅方向にずれる位置で、センター側エッジ部31がタイヤ幅方向に屈曲することにより、タイヤ幅方向における位置が異なるセンター側エッジ部31同士を接続している。
【0030】
図4は、図3のB部詳細図である。屈曲部35は、センター側エッジ部31におけるタイヤ幅方向の位置が異なる位置において、センター側エッジ部31がセンター主溝21の溝幅方向における外側に向かう方向に屈曲することにより形成されている。具体的には、センター側エッジ部31は、センター主溝21のタイヤ幅方向における位置がタイヤ周方向における所定の位置でずれることにより、センター側エッジ部31のタイヤ幅方向における位置もずれており、センター主溝21のタイヤ幅方向における位置がずれる位置で、センター側エッジ部31は、センター陸部11側に位置する部分と、セカンド陸部12側に位置する部分とを有している。即ち、センター側エッジ部31は、センター主溝21のタイヤ幅方向における位置がずれる位置で、センター陸部11側に位置する部分である内側センター側エッジ部31bと、セカンド陸部12側に位置する部分である外側センター側エッジ部31aとを有している。外側センター側エッジ部31aと内側センター側エッジ部31bとは、センター側エッジ部31がタイヤ幅方向にずれる位置において、外側センター側エッジ部31aよりも内側センター側エッジ部31bの方がタイヤ幅方向内側に位置している。
【0031】
屈曲部35は、センター側エッジ部31の外側センター側エッジ部31aから、センター主溝21の溝幅方向における外側に向かう方向に屈曲することにより形成されており、センター側エッジ部31における、このセンター主溝21の溝幅方向における外側に向かう部分は、屈曲部エッジ部36になっている。即ち、センター側エッジ部31における外側センター側エッジ部31aと内側センター側エッジ部31bとは、屈曲部エッジ部36によって接続されている。
【0032】
このように形成される屈曲部エッジ部36は、外側センター側エッジ部31aからセンター主溝21の溝幅方向における外側に向かうに従って、つまり、セカンド陸部12側からセンター陸部11側に向かうに従って、タイヤ周方向において外側センター側エッジ部31aが位置する側に、タイヤ幅方向に対してタイヤ周方向に傾斜している。換言すると、屈曲部エッジ部36は、外側センター側エッジ部31aに接続される端部である外側端部37よりも、内側センター側エッジ部31bに接続される端部である内側端部38の方が、タイヤ周方向における位置が、外側センター側エッジ部31aが位置する側に傾斜している。このため、屈曲部エッジ部36は、屈曲角θが鋭角となって、外側センター側エッジ部31aに対して屈曲する形態で形成されている。即ち、屈曲部35は、屈曲するセンター側エッジ部31の屈曲角θが鋭角となって形成されている。屈曲部35の屈曲角θは、40°≦θ≦85°の範囲内になっており、より好ましくは、60°≦θ≦75°の範囲内で形成されるのが好ましい。
【0033】
センター主溝21からタイヤ幅方向外側に延びる複数のセカンドラグ溝45のうちの一部のセカンドラグ溝45は、センター主溝21における屈曲部35の近傍の位置に接続されており、即ち、センター主溝21への開口部46が屈曲部35に対して対向する位置に、センター主溝21に接続されている。センター主溝21における屈曲部35の近傍の位置にセカンドラグ溝45が接続される交点60は、交点60から溝が、センター主溝21の2方向とセカンドラグ溝45の1方向との3方向に延びる、3方向交点61として形成されている。
【0034】
3方向交点61でセンター主溝21に対してセカンドラグ溝45が接続される形態について説明すると、セカンド側エッジ部32は、センター側エッジ部31と同様に、センター主溝21のタイヤ幅方向における位置がタイヤ周方向における所定の位置でずれることにより、セカンド側エッジ部32のタイヤ幅方向における位置もずれている。このため、セカンド側エッジ部32は、センター主溝21のタイヤ幅方向における位置がずれる位置で、センター陸部11側に位置する部分である内側セカンド側エッジ部32bと、セカンド陸部12側に位置する部分である外側セカンド側エッジ部32aとを有している。
【0035】
3方向交点61でセンター主溝21に接続されるセカンドラグ溝45は、センター主溝21のタイヤ幅方向における位置がずれる位置におけるセカンド側エッジ部32に接続されている。このため、セカンドラグ溝45は、セカンドラグ溝45の溝幅方向両側のエッジ47のうち、一方のエッジ47は外側セカンド側エッジ部32aに接続され、他方のエッジ47は内側セカンド側エッジ部32bに接続されている。外側セカンド側エッジ部32aと内側セカンド側エッジ部32bとは、タイヤ幅方向における位置が異なる位置に位置しているため、溝幅方向両側のエッジ47が外側セカンド側エッジ部32aと内側セカンド側エッジ部32bとに分かれてセンター主溝21に接続されるセカンドラグ溝45は、センター主溝21に対する開口部46が、タイヤ幅方向に対して傾斜する向きになっている。これにより、セカンドラグ溝45の、センター主溝21への開口部46は、センター主溝21のセンター側エッジ部31側に形成される屈曲部35の方向を向き、屈曲部35に対して対向する位置に形成される。
【0036】
なお、この場合におけるセカンドラグ溝45の開口部46は、セカンドラグ溝45の一方のエッジ47とセンター主溝21の外側セカンド側エッジ部32aとの交点と、セカンドラグ溝45の他方のエッジ47とセンター主溝21の内側セカンド側エッジ部32bとの交点とを結ぶ領域をいう。また、この場合におけるセカンドラグ溝45の開口部46が屈曲部35に対して対向するとは、開口部46の幅で開口部46に直交する領域内に、屈曲部35が有する屈曲部エッジ部36の少なくとも一部が位置する状態をいう。
【0037】
また、複数のセカンドラグ溝45のうちの他の一部は、センター主溝21からタイヤ幅方向内側に延びるセンターラグ溝41がセンター主溝21に接続されている部分の近傍に接続されている。図5は、図3のC部詳細図である。センターラグ溝41がセンター主溝21に接続されている部分の近傍に接続されるセカンドラグ溝45は、3方向交点61でセンター主溝21に接続されるセカンドラグ溝45と同様に、センター主溝21のセカンド側エッジ部32に接続されている。センター主溝21のセンター側エッジ部31側にセンターラグ溝41が接続され、センター主溝21のセカンド側エッジ部32側にセカンドラグ溝45が接続される交点60は、交点60からの溝が、センター主溝21の2方向と、センターラグ溝41とセカンドラグ溝45とのそれぞれ1方向との、合計4方向に延びる、4方向交点62として形成されている。
【0038】
4方向交点62でセンター主溝21に接続されるセカンドラグ溝45は、センター主溝21に対する開口部46が、センターラグ溝41のセンター主溝21に対する開口部42に対して、タイヤ周方向において少なくとも一部の範囲で重なる位置に接続されている。つまり、センター主溝21に対するセカンドラグ溝45の開口部46と、センター主溝21に対するセンターラグ溝41の開口部42とは、タイヤ幅方向に見た場合に、少なくとも一部の範囲が重なっており、双方の開口部42、46は、少なくとも一部の範囲が互いに対向している。
【0039】
センター主溝21にこのように形成される4方向交点62と3方向交点61とは、センター主溝21上にそれぞれ複数が設けられ、複数の4方向交点62と3方向交点61とは、タイヤ周方向において交互に配置されている。
【0040】
図6は、図3に示すセカンド陸部の詳細図である。センター主溝21とセカンド主溝22との間に形成される複数のセカンドラグ溝45は、タイヤ幅方向に延びつつタイヤ周方向に傾斜しており、傾斜角度は、全てのセカンドラグ溝45で同程度の角度になっている。このため、タイヤ周方向における両側がセカンドラグ溝45によって区画され、タイヤ幅方向における両側がセンター主溝21とセカンド主溝22とによって区画されるセカンド陸部12は、略平行四辺形の形状になっている。
【0041】
このように形成されるセカンド陸部12には、タイヤ周方向に延びると共に一端がセカンドラグ溝45に接続され、他端がセカンド陸部12内で終端する周方向細溝50が形成されている。周方向細溝50は、タイヤ幅方向におけるセカンド陸部12の中央付近に形成されており、タイヤ周方向におけるセカンド陸部12の両側を区画する2本のセカンドラグ溝45のうち、一方のセカンドラグ溝45に接続され、当該セカンドラグ溝45からタイヤ周方向に延びている。また、複数のセカンド陸部12のそれぞれに形成される周方向細溝50は、各セカンド陸部12において、タイヤ周方向において同じ方向側に位置するセカンドラグ溝45に接続され、当該セカンドラグ溝45からセカンド陸部12内に延びている。
【0042】
このようにタイヤ周方向に延びる周方向細溝50は、タイヤ周方向における長さLが、セカンド陸部12のタイヤ周方向における全長LBの50%以上90%以下の範囲内になっている。即ち、周方向細溝50の長さLとセカンド陸部12のタイヤ周方向における全長LBとの関係は、0.5≦(L/LB)≦0.9の範囲内になっている。この場合における周方向細溝50の長さLは、セカンドラグ溝45に接続される側の周方向細溝50の端部52のうち、セカンド陸部12内で終端する側の端部53から、タイヤ周方向において最も離れている部分と、セカンド陸部12内で終端する側の端部53とのタイヤ周方向における距離になっている。また、セカンド陸部12のタイヤ周方向における全長LBは、タイヤ周方向におけるセカンド陸部12の一方の端部と他方の端部とのタイヤ周方向における距離になっている。また、周方向細溝50の長さLは、好ましくはセカンド陸部12の全長LBに対して60%以上80%以下の範囲内であるのが好ましい。
【0043】
また、周方向細溝50は、セカンド陸部12内で終端する側の端部53よりも、セカンドラグ溝45に接続される側の端部52の方が、溝幅が広くなっている。つまり、周方向細溝50は、セカンド陸部12内で終端する側の端部53から、セカンドラグ溝45に接続される側の端部52に向かうに従って、徐々に溝幅が広くなっている、或いは、セカンドラグ溝45に接続される側の端部52から、セカンド陸部12内で終端する側の端部53に向かうに従って、徐々に溝幅が狭くなっている。即ち、周方向細溝50は、先細りの形状で形成されている。
【0044】
また、セカンドラグ溝45は、周方向細溝50が接続される側のエッジ47が、周方向細溝50が接続される位置のタイヤ幅方向における両側で、セカンドラグ溝45の溝幅方向にずれている。具体的には、セカンドラグ溝45における周方向細溝50が接続される側のエッジ47は、周方向細溝50が接続される位置よりタイヤ幅方向においてセンター主溝21側に位置する部分よりも、セカンド主溝22側に位置する部分の方が、セカンドラグ溝45の溝幅が広くなる方向に、センター主溝21側に位置する部分に対してずれて形成されている。このため、セカンドラグ溝45に対する周方向細溝50の開口部51付近では、周方向細溝50の溝壁54は周方向細溝50の長さ方向にずれており、周方向細溝50の開口部51は、周方向細溝50の溝幅方向両側の溝壁54がずれた状態で開口している。
【0045】
セカンドラグ溝45のエッジ47のずれ量は、セカンドラグ溝45における周方向細溝50が接続される位置よりセンター主溝21側に位置する部分の溝幅WL1と、セカンド主溝22側に位置する部分の溝幅WL2との関係が、0.6≦(WL1/WL2)≦0.9の範囲内となるずれ量となるのが好ましい。
【0046】
これらのように構成される空気入りタイヤ1を車両に装着して走行すると、トレッド面3のうち下方に位置するトレッド面3が路面に接触しながら当該空気入りタイヤ1は回転する。空気入りタイヤ1を装着した車両で乾燥した路面を走行する場合には、主にトレッド面3と路面との間の摩擦力により、駆動力や制動力を路面に伝達したり、旋回力を発生させたりすることにより走行する。また、濡れた路面を走行する際には、トレッド面3と路面との間の水が周方向主溝20やラグ溝40等に入り込み、これらの溝でトレッド面3と路面との間の水を排水しながら走行する。これにより、トレッド面3は路面に接地し易くなり、トレッド面3と路面との間の摩擦力により、車両は走行することが可能になる。
【0047】
また、雪上路面を走行する際には、空気入りタイヤ1は路面上の雪をトレッド面3で押し固めると共に、路面上の雪が周方向主溝20やラグ溝40に入り込むことにより、これらの雪も溝内で押し固める状態になる。この状態で、空気入りタイヤ1に駆動力や制動力が作用したり、車両の旋回によってタイヤ幅方向への力が作用したりすることにより、溝内の雪に対して作用するせん断力である、いわゆる雪中せん断力が発生し、雪中せん断力によって空気入りタイヤ1と路面との間で抵抗が発生することにより、駆動力や制動力を雪上路面に伝達することができ、車両は雪上路面での走行が可能になる。
【0048】
また、雪上路面や氷上路面を走行する際には、周方向主溝20やラグ溝40、サイプ58のエッジ効果も用いて走行する。つまり、雪上路面や氷上路面を走行する際には、周方向主溝20のエッジ部30や、サイプ58のエッジが雪面や氷面に引っ掛かることによる抵抗も用いて走行する。また、氷上路面を走行する際には、氷上路面の表面の水をサイプ58で吸水し、氷上路面とトレッド面3との間の水膜を除去することにより、氷上路面とトレッド面3は接触し易くなる。これにより、トレッド面3は、摩擦力やエッジ効果によって氷上路面との間の抵抗が大きくなり、空気入りタイヤ1を装着した車両の走行性能を確保することができる。
【0049】
雪上路面の走行時には、雪中せん断力を多く用いて走行するため、雪上性能を向上させるためには、雪中せん断力を向上させるのが有効である。雪中せん断力を向上させるためには、溝内で雪を強く押し固めることができる領域を確保するために、一般的に、4方向交点62のように4方向の溝に対して開口する交点を多く設けることが行われる。しかし、4方向に開口する交点のみでトレッドパターンを設けると、各陸部10の大きさが小さくなり、ブロック剛性が低下するため、雪上や氷上での操縦安定性を確保するのが困難になる。一方、ブロック剛性を確保するために、例えば、周方向主溝20に対してラグ溝40の端部が接続されることにより3方向に開口する交点のみでトレッドパターンを設けると、ブロック剛性を確保することはできるが、交点に入り込む雪の量が少ないため、雪中せん断力を向上させるのが困難になる。
【0050】
雪上で駆動力や制動力を伝達する雪上性能と、雪上や氷上での操縦安定性とでは、このように溝の交点について好ましい形態が相反しているが、本実施形態に係る空気入りタイヤ1では、センター主溝21に屈曲部35を設け、セカンドラグ溝45を、センター主溝21への開口部46が屈曲部35に対して対向する位置にセンター主溝21に接続している。このため、ブロック剛性を低下させることなく、雪中せん断力を向上させることができる。つまり、センター主溝21のタイヤ幅方向における位置をタイヤ周方向における複数の所定の位置でタイヤ幅方向にずらして屈曲部35を形成し、この屈曲部35に対して開口部46が開口するようにセカンドラグ溝45をセンター主溝21に接続することにより、3方向交点61における溝面積を大きくすることができ、3方向交点61に多くの雪が入り込むようにすることができる。これにより、雪中せん断力を高めることができ、雪上性能を向上させることができる。
【0051】
また、雪が入り込むことができる面積を大きくするにあたって、溝自体は増加させず、屈曲部35を形成することによって雪が入り込むことができる面積を大きくしているため、センター主溝21における屈曲部35が形成される側のエッジ部30であるセンター側エッジ部31により区画されるセンター陸部11が小さくなることを抑制することができる。これにより、センター陸部11のブロック剛性が低下することを抑制することができ、雪上や氷上での操縦安定性を向上させることができる。これらの結果、雪上性能と操縦安定性とを両立することができる。
【0052】
また、屈曲部35の屈曲角θは、40°≦θ≦85°の範囲内であるため、センター陸部11における屈曲部35の周辺のブロック剛性を低下させることなく、3方向交点61での雪中せん断力を確保することができる。つまり、屈曲角θが40°未満である場合は、外側センター側エッジ部31aに対する屈曲部エッジ部36の角度が小さ過ぎるため、センター陸部11における屈曲部35の周辺のブロック剛性が低下し易くなる可能性がある。また、屈曲角θが85°より大きい場合は、外側センター側エッジ部31aに対する屈曲部エッジ部36の角度が大き過ぎるため、3方向交点61における溝面積を確保し難くなり、雪中せん断力を確保し難くなる可能性がある。これに対し、屈曲部35の屈曲角θを40°≦θ≦85°の範囲内にした場合は、屈曲部35の周辺のブロック剛性の低下を抑えつつ、3方向交点61での雪中せん断力を確保することができる。この結果、より確実に雪上性能と操縦安定性とを両立することができる。
【0053】
また、センター主溝21の溝深さDsが、トレッドウェアインジケータ23が設けられるセカンド主溝22の溝深さDgに対して0.25Dg≦Ds≦Dgの範囲内の関係であるため、ブロック剛性を低下させることなく雪中せん断力を確保することができる。つまり、センター主溝21の溝深さDsとセカンド主溝22の溝深さDgとの関係がDs<0.25Dgである場合は、3方向交点61を含むセンター主溝21の容積が小さくなり、3方向交点61やセンター主溝21に入り込む雪の量が少なくなるため、雪中せん断力を確保し難くなる可能性がある。また、センター主溝21の溝深さDsとセカンド主溝22の溝深さDgとの関係がDs>Dgである場合は、センター主溝21の溝深さDsが深過ぎるため、センター陸部11やセカンド陸部12のブロック剛性が低下し易くなる可能性がある。これに対し、センター主溝21の溝深さDsをセカンド主溝22の溝深さDgに対して0.25Dg≦Ds≦Dgの範囲内にした場合は、センター陸部11やセカンド陸部12のブロック剛性の低下を抑えつつ、3方向交点61やセンター主溝21での雪中せん断力を確保することができる。この結果、より確実に雪上性能と操縦安定性とを両立することができる。
【0054】
また、センター主溝21の溝幅Wが3mm≦W≦10mmの範囲内であるため、ブロック剛性を低下させることなく雪中せん断力を確保することができる。つまり、センター主溝21の溝幅Wが3mm未満である場合は、溝幅Wが狭過ぎるため、センター主溝21に入り込む雪の量が少なくなり、雪中せん断力を確保し難くなる可能性がある。また、センター主溝21の溝幅Wが10mmを超える場合は、溝幅Wが広過ぎるため、センター陸部11やセカンド陸部12のブロック剛性が低下し易くなる可能性がある。これに対し、センター主溝21の溝幅Wが3mm≦W≦10mmの範囲内である場合は、センター陸部11やセカンド陸部12のブロック剛性の低下を抑えつつ、センター主溝21での雪中せん断力を確保することができる。この結果、より確実に雪上性能と操縦安定性とを両立することができる。
【0055】
また、3方向交点61と4方向交点62とは、タイヤ周方向において交互に配置されるため、4方向交点62によって雪中せん断力を向上させることができ、ブロック剛性と雪中せん断力のバランスが取れたトレッドパターンを構成することができる。この結果、より確実に雪上性能と操縦安定性とを両立することができる。
【0056】
また、セカンド陸部12には周方向細溝50が形成されるため、周方向細溝50によってより確実に雪中せん断力を確保することができる。また、周方向細溝50は、一方の端部53がセカンド陸部12内で終端するため、雪中せん断力を確保しつつ、ブロック剛性が低下することを抑制できる。この結果、より確実に雪上性能と操縦安定性とを両立することができる。
【0057】
また、周方向細溝50は、タイヤ周方向における長さLがセカンド陸部12のタイヤ周方向における全長LBの50%以上90%以下の範囲内であるため、ブロック剛性の低下を抑えつつ雪中せん断力を確保することができる。つまり、周方向細溝50の長さLがセカンド陸部12の全長LBの50%未満である場合は、セカンド陸部12に対する周方向細溝50の長さLが短過ぎるため、周方向細溝50によって雪中せん断力を確保し難くなる可能性がある。また、周方向細溝50の長さLがセカンド陸部12の全長LBの90%を超える場合は、セカンド陸部12に対する周方向細溝50の長さLが長過ぎるため、セカンド陸部12のブロック剛性が低下し易くなる可能性がある。これに対し、周方向細溝50の長さLがセカンド陸部12の全長LBの50%以上90%以下の範囲内である場合は、セカンド陸部12のブロック剛性の低下を抑えつつ、周方向細溝50での雪中せん断力を確保することができる。この結果、より確実に雪上性能と操縦安定性とを両立することができる。
【0058】
また、周方向細溝50は、セカンド陸部12内で終端する側の端部53よりもセカンドラグ溝45に接続される側の端部52の方が溝幅が広くなっているため、セカンド陸部12のブロック剛性の低下を抑えつつ、周方向細溝50におけるセカンド陸部12に接続されている側の部分で、雪中せん断力を確保することができる。この結果、より確実に雪上性能と操縦安定性とを両立することができる。
【0059】
また、セカンドラグ溝45は、周方向細溝50が接続される側のエッジ47が、周方向細溝50が接続される位置のタイヤ幅方向における両側でセカンドラグ溝45の溝幅方向にずれているため、セカンドラグ溝45や周方向細溝50でのエッジ効果を高めることができる。つまり、セカンドラグ溝45のエッジ47がセカンドラグ溝45の溝幅方向にずれることにより、セカンドラグ溝45に周方向細溝50が接続される位置の両側で、タイヤ周方向におけるエッジ47の接地位置が変化するため、タイヤ周方向におけるエッジ効果を高めることができる。また、セカンドラグ溝45のエッジ47がずれることにより、周方向細溝50の両側の溝壁のうち、一方の溝壁をタイヤ幅方向において露出させ易くなるため、周方向細溝50の露出する側の壁面でのエッジ効果を高めることができ、タイヤ幅方向におけるエッジ効果を高めることができる。この結果、より確実に操縦安定性を向上させることができる。
【0060】
なお、上述した実施形態に係る空気入りタイヤ1では、センター主溝21の屈曲部35は、タイヤ幅方向におけるタイヤ赤道線CLの両側に設けられており、即ち、3方向交点61は、タイヤ幅方向におけるタイヤ赤道線CLの両側に設けられているが、3方向交点61は、タイヤ幅方向におけるいずれか一方でもよい。つまり、屈曲部35を有する3方向交点61は、空気入りタイヤ1を車両に装着した場合における、タイヤ赤道線CLの車両装着方向内側のみに設けられていてもよく、タイヤ赤道線CLの車両装着方向外側のみに設けられていてもよい。
【0061】
また、上述した実施形態に係る空気入りタイヤ1では、屈曲部35は、センター主溝21のエッジ部30のうち、タイヤ幅方向内側のエッジ部30であるセンター側エッジ部31に設けられているが、屈曲部35は、タイヤ幅方向外側のエッジ部30に設けられていてもよい。屈曲部35が、センター主溝21のタイヤ幅方向外側のエッジ部30に設けられている場合には、センター陸部11が第2陸部になり、センターラグ溝41が第2陸部ラグ溝になり、センターラグ溝41が、センター主溝21における屈曲部35が設けられる側のエッジ部30の反対側のエッジ部30に接続され、開口部が屈曲部35に対向するように形成されることにより、ブロック剛性の低下を抑えつつ、雪中せん断力を確保することができる。
【0062】
また、上述した実施形態に係る空気入りタイヤ1では、屈曲部35はセンター主溝21に設けられているが、屈曲部35が設けられる第1主溝は、センター主溝21以外であってもよい。屈曲部35が設けられる第1主溝は、タイヤ周方向に延びる周方向主溝であれば、他の周方向主溝との相対的な位置関係は問わない。
【0063】
また、上述した実施形態に係る空気入りタイヤ1では、3方向交点61と4方向交点62とがタイヤ周方向に交互に設けられているが、3方向交点61と4方向交点62とは交互に設けられていなくてもよい。3方向交点61と4方向交点62とは、4方向交点62と4方向交点62との間に3方向交点61が複数設けられていたり、反対に3方向交点61と3方向交点61との間に4方向交点62が複数設けられていたりしてもよい。3方向交点61と4方向交点62とは、空気入りタイヤ1に求められる雪上性能と操縦安定性とに応じて、適宜配設するのが好ましい。
【0064】
また、上述した実施形態に係る空気入りタイヤ1では、周方向細溝50は、セカンドラグ溝45に接続される側の端部が、タイヤ周方向において全て同じ側の端部が接続されているが、セカンドラグ溝45に接続される周方向細溝50の端部は、周方向細溝50ごとに異なっていてもよい。
【0065】
また、セカンドラグ溝45は、周方向細溝50が接続される側のエッジ47が、周方向細溝50が接続される位置よりタイヤ幅方向においてセンター主溝21側に位置する部分よりも、セカンド主溝22側に位置する部分の方が、セカンドラグ溝45の溝幅が広くなる方向にずれて形成されているが、エッジ47のずれ方は、逆になっていてもよい。つまり、セカンドラグ溝45における周方向細溝50が接続される側のエッジ47は、周方向細溝50が接続される位置より、タイヤ幅方向においてセカンド主溝22側に位置する部分よりも、センター主溝21側に位置する部分の方が、セカンドラグ溝45の溝幅が広くなる方向にずれて形成されていてもよい。セカンドラグ溝45は、エッジ47の相対的なずれ方に関わらず、周方向細溝50が接続される部分のタイヤ幅方向における両側の位置で、セカンドラグ溝45の溝幅方向におけるエッジ47同士の位置がずれていればよい。
【0066】
〔実施例〕
図7A図7Cは、空気入りタイヤの性能試験の結果を示す図表である。以下、上記の空気入りタイヤ1について、従来例の空気入りタイヤと、本発明に係る空気入りタイヤ1とについて行なった性能の評価試験について説明する。性能評価試験は、雪上性能を示す雪上制動と、雪上での操縦安定性である雪上操縦安定性と、氷上での操縦安定性である氷上操縦安定性とについての試験を行った。
【0067】
性能評価試験は、JATMAで規定されるタイヤの呼びが195/65R15 91Qサイズの空気入りタイヤ1を15×6.0JサイズのJATMA標準リムのリムホイールにリム組みして、空気圧を210kPaに調整し、試験車両に装着してテスト走行をすることにより行った。各試験項目の評価方法は、雪上制動については、雪上路面のテストコースにおいてテストドライバーによる制動試験を実施し、制動距離の逆数を、後述する従来例を100とする指数で表すことによって評価した。数値が大きいほど制動距離が短く、雪上制動が優れていることを示している。また、雪上操縦安定性については、雪上路面のテストコースを試験車両で走行した際のテストドライバーによる官能評価を実施し、官能評価を、後述する従来例を100とする指数で表すことによって評価した。数値が大きいほど雪上操縦安定性が優れていることを示している。また、氷上操縦安定性については、氷上路面のテストコースを試験車両で走行した際のテストドライバーによる官能評価を実施し、官能評価を、後述する従来例を100とする指数で表すことによって評価した。数値が大きいほど氷上操縦安定性が優れていることを示している。
【0068】
評価試験は、従来の空気入りタイヤ1の一例である従来例の空気入りタイヤと、本発明に係る空気入りタイヤ1である実施例〜13と、参考例1〜8とについて行った。これらの空気入りタイヤ1のうち、従来例の空気入りタイヤは、センター主溝21に屈曲部35が形成されておらず、このため屈曲部35にセカンドラグ溝45が開口していない。
【0069】
これに対し、本発明に係る空気入りタイヤ1の一例である実施例〜13は、全てセンター主溝21に屈曲部35に対してセカンドラグ溝45の開口部46が対向している。また、実施例〜13と、参考例1〜8に係る空気入りタイヤ1は、屈曲部35の屈曲角θや、セカンド主溝22の溝深さDgに対するセンター主溝21の溝深さDs、センター主溝21の溝幅W、3方向交点61と4方向交点62との並び方、セカンド陸部12の周方向細溝50の有無、セカンド陸部12の全長LBに対する周方向細溝50の長さL、周方向細溝50の溝幅の形態、セカンドラグ溝45のエッジ47のずれの有無が、それぞれ異なっている。
【0070】
これらの空気入りタイヤ1を用いて評価試験を行った結果、図7A図7Cに示すように、実施例〜13の空気入りタイヤ1は、従来例に対して、雪上制動と雪上操縦安定性と氷上操縦安定性とを全て向上させることができることが分かった。つまり、実施例〜13に係る空気入りタイヤ1は、雪上性能と操縦安定性とを両立することができる。
【符号の説明】
【0071】
1 空気入りタイヤ
2 トレッド部
3 トレッド面
10 陸部
11 センター陸部(第1陸部)
12 セカンド陸部(第2陸部)
13 ショルダー陸部
20 周方向主溝
21 センター主溝(第1主溝)
22 セカンド主溝(摩耗検知主溝)
23 トレッドウェアインジケータ
30 エッジ部
31 センター側エッジ部(第1陸部側エッジ部)
32 セカンド側エッジ部
35 屈曲部
36 屈曲部エッジ部
40 ラグ溝
41 センターラグ溝(第1陸部ラグ溝)
42、46、51 開口部
45 セカンドラグ溝(第2陸部ラグ溝)
50 周方向細溝
52、53 端部
54 溝壁
60 交点
61 3方向交点
62 4方向交点
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7A
図7B
図7C