特許第6903893号(P6903893)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6903893
(24)【登録日】2021年6月28日
(45)【発行日】2021年7月14日
(54)【発明の名称】構造物形成方法及び構造物形成システム
(51)【国際特許分類】
   B28B 1/30 20060101AFI20210701BHJP
   B05C 5/02 20060101ALI20210701BHJP
   B05C 11/10 20060101ALI20210701BHJP
   B33Y 10/00 20150101ALI20210701BHJP
   B33Y 30/00 20150101ALI20210701BHJP
【FI】
   B28B1/30
   B05C5/02
   B05C11/10
   B33Y10/00
   B33Y30/00
【請求項の数】7
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2016-214863(P2016-214863)
(22)【出願日】2016年11月2日
(65)【公開番号】特開2018-69661(P2018-69661A)
(43)【公開日】2018年5月10日
【審査請求日】2019年10月3日
(73)【特許権者】
【識別番号】000000549
【氏名又は名称】株式会社大林組
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 博宣
(72)【発明者】
【氏名】平田 隆祥
(72)【発明者】
【氏名】金子 智弥
(72)【発明者】
【氏名】山下 彩
(72)【発明者】
【氏名】坂上 肇
【審査官】 田中 永一
(56)【参考文献】
【文献】 特表2006−515908(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2007/0138678(US,A1)
【文献】 特開2015−186851(JP,A)
【文献】 特開平10−060818(JP,A)
【文献】 米国特許第05529471(US,A)
【文献】 特開2005−138360(JP,A)
【文献】 実開平06−011867(JP,U)
【文献】 特開2017−185645(JP,A)
【文献】 特表2019−537521(JP,A)
【文献】 特開昭62−236706(JP,A)
【文献】 特開平10−235623(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B28B 1/30
B05C 5/02
B05C 11/10
B33Y 10/00
B33Y 30/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
移動可能なノズルから吐出されるモルタルを、複数階層で積層させて構造物を形成する構造物形成方法であって、
前記複数階層の高さを有し、前記モルタルに接触させて前記構造物の側面形状を形成する平坦な当接面を有した側面部材を、前記構造物の側面に対応する位置に予め立設させた後、
前記ノズルから前記モルタルを吐出させながら、前記吐出されたモルタルを前記当接面に接触させて水平方向に前記ノズルを階層毎に移動させて、前記複数階層を形成することを特徴とする構造物形成方法。
【請求項2】
前記側面部材は、前記構造物の外周位置であって、前記ノズルの移動経路から、前記ノズルから吐出された前記モルタルが前記側面部材の当接面に当接し、下層のモルタル層の端面の隙間を埋めることができる所定間隔だけ離した位置で、移動経路に沿って予め立設させることを特徴とする請求項1に記載の構造物形成方法。
【請求項3】
前記ノズルの中心軸とは異なる中心軸を有した吐出口を有する誘導部材を、前記ノズルの先端に取り付け、前記誘導部材の前記吐出口から前記モルタルを吐出させることを特徴とする請求項1又は2に記載の構造物形成方法。
【請求項4】
モルタルを吐出するノズルを移動させる移動手段を備え、
前記吐出させたモルタルを、複数階層で積層させて構造物を形成する構造物形成システムであって、
前記複数階層の高さを有し、前記モルタルに接触させて前記構造物の側面形状を形成する平坦な当接面を有し、前記モルタルの吐出前に予め立設される側面部材と、
前記ノズルから前記モルタルを吐出させながら、前記吐出されたモルタルを前記当接面に接触させて水平方向に前記ノズルを階層毎に移動させて、前記複数階層を形成する制御部とを更に備えたことを特徴とする構造物形成システム。
【請求項5】
前記側面部材は、前記構造物の外周位置で移動経路に沿って予め立設され、
前記制御部は、前記吐出されたモルタルを前記当接面に接触させて、前記ノズルから吐出された前記モルタルが前記側面部材の当接面に当接し、下層のモルタル層の端面の隙間を埋めることができる所定間隔だけ離した位置で、水平方向に前記ノズルを移動させることを特徴とする請求項4に記載の構造物形成システム。
【請求項6】
前記側面部材は、板形状を有しており、
前記当接面は、前記積層されるモルタルが層間の端部の隙間を埋めて側面が平滑となる位置に設置されていることを特徴とする請求項4又は5に記載の構造物形成システム。
【請求項7】
前記ノズルの先端に取り付けられ、前記ノズルの最大径よりも大きい径を有する吐出口を有する拡幅部材を備えていることを特徴とする請求項4〜6の何れか1項に記載の構造物形成システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、モルタル等を積層して形成される構造物の構造物形成方法及び構造物形成システムに関する。
【背景技術】
【0002】
立体の構造物を形成する場合、3次元(3D)プリンタを利用することがある。この3Dプリンタは、ノズルから材料を吐出させながらノズルを移動させて層を形成し、形成した層を徐々に積み重ねることにより立体形状を形成する。更に、各層の形状を変更することにより、複雑な立体形状を形成することもできる。
【0003】
このような3Dプリンタによるコンクリート構造物の設計も検討されている(例えば、非特許文献1参照。)。この非特許文献1においては、連続してモルタルを吐出するノズルを、任意の方向に動かして層を形成し、この層を積み重ねて、構造物を形成する。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0004】
【非特許文献1】日経アーキテクチュア、「イエイリ建設IT戦略 住宅を丸ごと3Dプリンターで!米大学が工法を開発中」、[online]、[平成28年9月28日検索]、インターネット<http://kenplatz.nikkeibp.co.jp/article/it/column/20140120/648249/>
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、図5に示すように、3Dプリンタによって形成したコンクリート構造物の側面形状には課題がある。ノズル70から吐出したモルタルの層C0を積み重ねて構造物を形成する場合、構造物の側面には、筋状の凹凸が形成されていた。このため、側面を平滑に仕上げる場合には、後からコテを用いた作業が必要であった。
【0006】
本発明は、上記課題に鑑みてなされ、その目的は、3次元プリンタを用いて、所望の形状の側面を有する構造物を効率的に形成するための構造物形成システム及び構造物形成方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
・上記課題を解決する構造物形成方法は、移動可能なノズルから吐出されるモルタルを積層させて構造物を形成する構造物形成方法であって、前記モルタルに接触させる当接面を有した側面部材を、前記構造物の側面に対応する位置に立設させた後、前記ノズルから前記モルタルを吐出させながら、前記吐出されたモルタルを前記当接面に接触させて水平方向に前記ノズルを移動させる。これにより、積層されるモルタルの側面を、側面部材によって形成するので、所望の形状の側面を有する構造物を効率的に形成することができる。
【0008】
・上記構造物形成方法において、前記ノズルの中心軸とは異なる中心軸を有した吐出口を有する誘導部材を、前記ノズルの先端に取り付け、前記誘導部材の前記吐出口から前記モルタルを吐出させることが好ましい。これにより、吐出位置を任意の位置に変更することができる。例えば、積層するモルタルの幅(ノズルの移動方向と直交する水平方向の大きさ)が狭い構造物であっても形成することができる。
【0009】
・上記課題を解決する構造物形成システムは、モルタルを吐出するノズルを移動させる移動手段を備え、前記吐出させたモルタルを積層させて構造物を形成する構造物形成システムであって、前記モルタルに接触させる当接面を有した側面部材と、前記ノズルから前記モルタルを吐出させながら、前記吐出されたモルタルを前記当接面に接触させて水平方向に前記ノズルを移動させる制御部とを更に備える。これにより、積層されるモルタルの側面を、側面部材によって形成するので、所望の形状の側面を有する構造物を効率的に形成することができる。
【0010】
・上記構造物形成システムにおいて、前記側面部材は、板形状を有しており、前記当接面は、前記積層されるモルタルが層間の端部の隙間を埋めて側面が平滑となる位置に設置されていることが好ましい。これにより、側面部材を適切な位置に配置して、モルタルの側面を平滑にすることができる。
【0011】
・上記構造物形成システムにおいて、前記ノズルの先端に取り付けられ、前記ノズルの最大径よりも大きい径を有する吐出口を有する拡幅部材を備えていることが好ましい。これにより、ノズルの移動方向と直交する水平方向の大きさ(モルタルの幅)を大きく形成したい場合において、所望の形状の側面を有する構造物を効率的に形成することができる。
【0012】
・上記構造物形成システムにおいて、前記移動手段によって、前記側面部材を前記ノズルとともに移動させ、前記当接面は、前記ノズルから吐出された最上層の側面と、この最上層の直下の層の側面とに少なくとも接触することが好ましい。これにより、モルタルを吐出する前に側面部材を配置しなくても、所望の形状の側面を有する構造物を効率的に形成することができる。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、3次元プリンタを用いて、所望の形状の側面を有する構造物を形成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】第1実施形態における構造物形成システムの説明図であって、(a)は全体の概念図、(b)は要部の拡大正面図、(c)は形成された構造物の一部を示す。
図2】第2実施形態における構造物形成システムの説明図であって、(a)は全体図、(b)は要部の拡大正面図を示す。
図3】第3実施形態における構造物形成システムの説明図であって、(a)は全体図、(b)は要部の拡大正面図を示す。
図4】変更例における構造物形成システムの要部の説明図であって、(a)はノズルに側面部材を取り付けた場合、(b)は側面部材の幅を変更可能に取り付けた場合、(c)は2つの側面部材を揺動可能に取り付けた場合を示す。
図5】従来技術における構造物形成システムのノズル要部の斜視図。
【発明を実施するための形態】
【0015】
<第1の実施形態>
以下、図1を用いて、構造物形成システム及び構造物形成方法を具体化した第1の実施形態を説明する。本実施形態では、モルタルを吐出するノズルを移動させて形成した層を積み重ねることにより構造物を形成する。
【0016】
図1(a)及び図1(b)は、構造物形成システムの概念図及び要部の拡大正面図である。図1(c)は、構造物形成システム10によって形成された構造物の側面の一部を示している。
【0017】
図1(a)に示すように、本実施形態の構造物形成システム10は、ノズル20、ロボットアーム25、側面部材30及び制御装置50を備えている。
ノズル20は、その下端部が縮径しており、構造物を形成するモルタルを吐出するため、下端部の先端は開口しており、吐出口を形成している。
【0018】
ノズル20の吐出口と反対側の端部には、ホース15の端部が接続されている。モルタルは、このホース15に接続されている圧送ポンプ(図示せず)から、ホース15を介してノズル20に供給され、ノズル20の吐出口から下方に吐出される。
【0019】
ノズル20には、取付部21を介して、移動手段としてのロボットアーム25が取り付けられている。ノズル20は、このロボットアーム25の動きに従って水平方向や上下方向に移動する。ロボットアーム25は、制御装置50の制御部51からの指示によって移動が制御される。制御部51は、移動時においてもノズル20からのモルタルの吐出方向が常に鉛直方向になるように、ロボットアーム25を制御する。
【0020】
制御装置50は、制御部51、図示しない入力部及び出力部を備えている。入力部は、キーボードやポインティングデバイス等を備え、形成する構造物に関する情報を制御部51に供給する。出力部は、ディスプレイ等を備え、入力された情報や形成する構造物の経路等を表示する。
【0021】
制御部51は、制御手段(CPU、RAM、ROM等)を備え、構造物形成処理を行なう。そのため、記憶部に格納された構造物形成プログラムを実行することにより、制御部51は、積層管理部511、移動制御部512及び吐出量制御部513として機能する。
【0022】
積層管理部511は、構造物を形成するために、積層させるモルタルの経路を管理する処理を実行する。
移動制御部512は、経路に応じてノズル20を移動させるロボットアーム25の動きを制御する処理を実行する。
吐出量制御部513は、ノズル20から吐出するモルタルを圧送するポンプを制御する処理を実行する。
【0023】
更に、側面部材30を、形成する構造物の外周位置に立設する。この側面部材30は、積層するモルタルの側面形状を形成する部材である。側面部材30は、垂直方向に延在した薄板で構成されており、ノズル20側の当接面30sは平坦になっている。また、この側面部材30は、自立して設置させている。本実施形態では、図1(a)に示すように、2つの側面部材30の端部を連結させてL字にして自立させている。
【0024】
図1(b)に示すように、この側面部材30を、ノズル20の移動経路から所定間隔だけ離した位置で、移動経路に沿って配置する。更に、所定間隔としては、ノズル20から吐出されたモルタルが、側面部材30の当接面30sに接触し、下層のモルタル層の端面の隙間を埋めることができる距離を用いる。例えば、側面部材30を用いずにモルタルを積層させた場合に、モルタルがほぼ平面状に広がる位置の端部に配置する。
【0025】
そして、制御部51の移動制御部512は、ロボットアーム25の移動を制御する。具体的には、移動制御部512は、立設された側面部材30に沿った経路で、側面部材30の当接面30sに対して、ノズル20が所定間隔を保った状態で移動させる。この場合、制御部51の吐出量制御部513は、ノズル20の移動速度に応じた吐出量で、ノズル20にモルタルを供給する。
【0026】
そして、ノズル20からモルタルを吐出させながら、移動経路に沿ってロボットアーム25を移動させて、モルタル層L1を生成する。そして、1つのモルタル層L1の生成が終了した場合、そのモルタル層L1に積み重ねるように、ノズル20からモルタルを吐出させながら、移動経路に沿ってロボットアーム25を移動させて新たなモルタル層L1を生成する。このことを繰り返して、構造物を形成する。そして、構造物ができた後、側面部材30を取り除くと、図1(c)に示すように、構造物の外側面が平坦になっている。
【0027】
本実施形態によれば、以下のような効果を得ることができる。
(1)本実施形態では、制御部51は、側面部材30の当接面30sに対して、ノズル20が所定間隔を保った状態で移動させる。所定間隔としては、ノズル20から吐出されたモルタルが、側面部材30の当接面30sに接触し、下層のモルタル層の端面の隙間を埋めることができる距離を用いる。これにより、ノズル20から吐出されたモルタルは側面部材30の当接面30sに接触して、構造物の外側面が平坦化される。
【0028】
(2)本実施形態では、制御部51は、ノズル20を移動させるロボットアーム25を、移動時にノズル20の吐出口が形成されている下面が傾斜しない姿勢を維持するように制御される。これにより、モルタルの吐出方向を考慮して側面部材30を立設することができる。
【0029】
(3)本実施形態では、複数の側面部材30を、連結させることにより自立して配置している。これにより、コーナーを有する構造物において、側面部材30を簡単に配置することができる。
【0030】
<第2の実施形態>
次に、図2を用いて、第2の実施形態を説明する。第1実施形態では、ノズル20の直下にモルタルを吐出した。本実施形態では、ノズル20の移動方向と直交する水平方向の大きさ(モルタルの幅)が第1実施形態における大きさよりも大きくなるように吐出させる。なお、本実施形態において、上記実施形態と同様な部分は、同一の符号を付し、その詳細な説明は省略する。
【0031】
図2(a)に示すように、本実施形態の構造物形成システム10では、ノズル20の先端に、拡幅部材N1を取り付ける。この拡幅部材N1は、中空の円錐台形状をしている。拡幅部材N1の上面開口部は、ノズル20に嵌合可能な径で構成される。拡幅部材N1の下面開口部(吐出口)の直径D1は、ノズル20の吐出口の径や最大径D0よりも大きくなっている。本実施形態では、この拡幅部材N1からモルタルを吐出してモルタル層L2を形成する。このため、上記第1実施形態のノズル20の幅(ノズル20の移動方向と直交する水平方向の大きさ)よりも大きい幅でモルタルを吐出する。
【0032】
図2(b)に示すように、本実施形態においても、上記実施形態と同様に、側面部材30を、ノズル20の移動経路から所定間隔だけ離した位置で、移動経路に沿って配置する。
【0033】
本実施形態によれば、上記(1)〜(3)に記載の効果と同様な効果に加えて、以下のような効果を得ることができる。
(4)本実施形態では、モルタルを吐出するノズル20の先端に、着脱可能に拡幅部材N1を取り付ける。この拡幅部材N1の吐出口の直径D1は、ノズル20の最大径D0よりも大きい。これにより、モルタル幅が広く、平坦な側面を有する構造物を形成することができる。
【0034】
<第3の実施形態>
次に、図3を用いて、第3の実施形態を説明する。本実施形態においては、モルタル幅が第1実施形態におけるモルタル幅よりも狭くなるように吐出させる。なお、本実施形態において、上記実施形態と同様な部分は、同一の符号を付し、その詳細な説明は省略する。
【0035】
図3(a)に示すように、本実施形態の構造物形成システム10では、ノズル20の先端に、誘導部材N2が取り付けられている。
図3(b)に示すように、誘導部材N2は、下面開口部(吐出口)の中心軸Cn1が、ノズル20の中心軸Cn0よりも側面部材30側となるように屈曲している。誘導部材N2の上面開口部は、ノズル20に嵌合可能になっている。本実施形態では、この誘導部材N2からモルタルを吐出するので、上記第1実施形態のノズル20よりも狭い幅でモルタルを吐出してモルタル層L3を形成する。
【0036】
図3(b)に示すように、本実施形態においても、上記実施形態と同様に、側面部材30を、ノズル20の移動経路から所定間隔だけ離した位置を保ちながら、移動経路に沿って配置する。
【0037】
本実施形態によれば、上記(1)〜(3)に記載の効果と同様な効果に加えて、以下のような効果を得ることができる。
(5)本実施形態では、モルタルを吐出するノズル20の先端に、誘導部材N2を着脱可能に取り付ける。この誘導部材N2は、下面開口部(吐出口)の中心軸Cn1が、ノズル20の中心軸Cn0よりも外側となるように屈曲している。これにより、ノズル20から吐出されるモルタルを所望の位置に誘導することができる。例えば、モルタル幅が狭く、平坦な側面を有する構造物を形成することができる。
【0038】
また、上記各実施形態は、以下のように変更してもよい。
・上記各実施形態においては、ノズル20の移動経路から所定間隔だけ離した位置に、側面部材30を立設した。側面部材30は、移動経路から所定間隔だけ離した位置にあればよく、立設する場合に限定されない。例えば、ノズル20とともに移動させる構成としてもよい。
【0039】
具体的には、図4(a)に示すように、ノズル20の側部に側面部材40を取り付ける。この側面部材40は、鉛直方向に、ノズル20から吐出したモルタルが形成する上層L4の直下層L5まで延在する長さを有する。更に、この側面部材40は、そのノズル20側の当接面40sが、上記実施形態と同様に、ノズル20に対して所定間隔だけ離した位置に取り付ける。この所定間隔は、ノズル20から吐出されたモルタルが接触し、上層L4と直下層L5との端面の隙間を埋めることができる距離を用いる。これにより、側面部材40の位置を、ノズル20に対して決定するので、自由にノズルの経路を定めることができる。例えば、構造物の形成を開始した途中で側面部材40の位置を変更することもできる。
【0040】
更に、この場合、側面部材40を上下方向に昇降させる昇降装置をノズル20に取り付けてもよい。この場合、当接面の大きさや形状に応じて、側面部材40を上下させることができる。例えば、ノズル20が積層するモルタル同士を連結する部分等、側面を形成しない位置に至った場合には、側面部材40を上昇させることにより、側面部材40が、構造物の形成に邪魔にならない構成にすることができる。
なお、ノズル20とともに移動する側面部材40を、ノズル20に直接取り付ける代わりに、拡幅部材N1や誘導部材N2に取り付けてもよい。
【0041】
また、図4(b)に示すように、ノズル20の両側に側面部材45,46を取り付けてもよい。この場合、側面部材45,46の間隔を調整できるようにしてもよい。制御部51は、モルタルの吐出量を変更してモルタルの幅を変更する。この場合、モルタルの端部から所定間隔だけ離した位置に、側面部材45,46を配置することができる。
【0042】
更に、側面部材45,46の間隔を自由に変更可能としてもよい。例えば、側面部材45,46を、自由に摺動可能とし、吐出されたモルタルの圧力により側面部材45,46が押し広げられるようにして、側面部材45,46の間隔が変更されるような構成にしてもよい。この場合、モルタルの端部において、押圧力が低下するので、端部の広がりを抑制して平坦化できる。
【0043】
また、図4(c)に示すように、側面部材47,48を、上端部の取付位置を中心にして揺動可能に取り付けてもよい。これにより、高さに応じてモルタルの吐出位置をノズル側に移動させて、傾斜した外側面を有する構造物において、側面部材47,48が外側面に当接するので、傾斜した外形側面を平坦にすることもできる。
【0044】
・上記各実施形態においては、側面部材30を立設したが、側面部材30を、ノズル20の移動とは別に可動させてもよい。例えば、側面部材30を、モルタルの硬化状態や積層状態に応じて上昇させてもよい。
【0045】
具体的には、構造物の半分程度の高さの側面部材30を用いる。この側面部材30を、高さ方向に延在するガイドレールに、上下方向に可能に取り付ける。最初、側面部材30を設置面に立設して、側面部材30の上端近傍までモルタルを積層した場合には、側面部材30を、ガイドレールに沿って、形成する構造物の中央高さ程度まで上昇させて固定し、モルタルを積層する。そして、中央高さ程度に固定した側面部材30の上端近傍までモルタルを積層した場合には、再び、側面部材30を上昇させて、側面部材の上面が構造物の高さ以上となる位置で固定し、モルタルを積層する。これにより、高い構造物を形成する場合において、構造物の全体高さよりも背の低い側面部材を用いることができる。
【0046】
・上記各実施形態においては、平坦な薄板で構成される側面部材30を用いた。側面部材30のノズル20側の当接面30sは、平坦に限られず、例えば、構造体の所望の側面の形状に応じた形状が形成されていてもよい。これにより、平坦以外であっても、効率よく所望の側面の形状を形成することができる。
【0047】
また、側面部材30は、水平方向に直線状に延びる薄板形状に限られず、水平方向に屈曲した当接面を有する形状であってもよい。この場合、側面部材30の当接面の形状にノズル20が完全に沿うように移動しなくても、モルタルが当接面に接触することにより、当接面に沿った形状の側面を有する構造物を形成することができる。
【符号の説明】
【0048】
L1,L2,L3…モルタル層、L4…上層、L5…直下層、N1…拡幅部材、N2…誘導部材、Cn0,Cn1…中心軸、10…構造物形成システム、20…ノズル、21…取付部、25…ロボットアーム、30,40,45,46,47,48…側面部材、30s,40s…当接面、50…制御装置、51…制御部、511…積層管理部、512…移動制御部、513…吐出量制御部。
図1
図2
図3
図4
図5