(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明の実施形態に係るロール部材、定着装置、及び画像形成装置の一例を
図1〜
図20に従って説明する。なお、図中に示す矢印Hは各装置の装置上下方向(鉛直方向)を示し、矢印Wは各装置の装置幅方向(水平方向)を示し、矢印Dは各装置の装置奥行方向(水平方向)を示す。
【0013】
(全体構成)
図3に示されるように、本実施形態に係る画像形成装置10には、記録媒体としてのシート部材Pが収容される収容部14と、収容部14に収容されたシート部材Pを搬送する搬送部16とが備えられている。さらに、画像形成装置10には、収容部14から搬送部16によって搬送されるシート部材Pに画像形成を行う画像形成部20と、各部を制御する制御部48とが備えられている。
【0014】
〔収容部〕
収容部14には、画像形成装置10の装置本体10Aから装置奥行方向の手前側に引き出し可能な収容部材26が備えられており、収容部材26にシート部材Pが積載されている。さらに、収容部14には、収容部材26に積載されたシート部材Pを、搬送部16を構成する搬送経路28に送り出す送出ロール30が備えられている。
【0015】
〔搬送部〕
搬送部16には、シート部材Pが搬送される搬送経路28に沿ってシート部材Pを搬送する複数の搬送ロール(符号省略)が備えられている。
【0016】
〔画像形成部〕
画像形成部20には、イエロー(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)、ブラック(K)の4つの画像形成ユニット18Y、18M、18C、18Kが備えられている。なお、以後の説明では、Y、M、C、Kを区別して説明する必要が無い場合は、Y、M、C、Kを省略して記載することがある。
【0017】
各色の画像形成ユニット18は、装置本体10Aに対して夫々着脱可能とされている。そして、各色の画像形成ユニット18には、図中矢印B方向に回転する像保持体36と、像保持体36の表面を帯電する帯電部材38とが備えられている。さらに、画像形成ユニット18には、帯電した像保持体36に露光光を照射する露光装置42と、露光光を照射することで形成された静電潜像を現像してトナー画像として可視化する現像装置40とが備えられている。
【0018】
さらに、画像形成部20には、図中矢印A方向に周回する無端状の転写ベルト22と、各色の画像形成ユニット18によって形成されたトナー画像を転写ベルト22に転写する一次転写ロール44とが備えられている。
【0019】
また、画像形成部20には、転写ベルト22に転写されたトナー画像をシート部材Pに転写する二次転写ロール46と、トナー画像が転写されたシート部材Pを加熱・加圧して、トナー画像をシート部材Pに定着する定着装置50とが備えられている。なお、定着装置50については、詳細を後述する。二次転写ロール46は、転写部材の一例である。
【0020】
(画像形成装置の作用)
画像形成装置10では、次のようにして画像が形成される。
【0021】
先ず、電圧が印加された各色の帯電部材38は、各色の像保持体36の表面を予定の電位で一様にマイナス帯電する。続いて、装置外部から受け取った画像データに基づいて露光装置42は、帯電した各色の像保持体36の表面に露光光を照射して静電潜像を形成する。
【0022】
これにより、データに対応した静電潜像が各色の像保持体36の表面に形成される。さらに、各色の現像装置40は、この静電潜像を現像し、トナー画像として可視化する。また、各色の像保持体36の表面に形成されたトナー画像は、一次転写ロール44によって転写ベルト22に順番に転写される。
【0023】
そこで、収容部材26から送出ロール30によって搬送経路28へ送り出されたシート部材Pは、転写ベルト22と二次転写ロール46とが接触する転写位置Tへ送り出される。転写位置Tでは、シート部材Pが転写ベルト22と二次転写ロール46との間で搬送されることで、転写ベルト22の表面のトナー画像は、シート部材Pの表面に転写される。
【0024】
また、シート部材Pの表面に転写されたトナー画像が、定着装置50によってシート部材Pに定着される。そして、トナー画像が定着されたシート部材Pは、装置本体10Aの外部へ排出される。
【0025】
(要部構成)
次に、定着装置50について説明する。
【0026】
定着装置50は、
図1に示されるように、加熱ロール52と、搬送経路28に対して加熱ロール52の反対側に配置されている押付部材の一例しての押付ロール70とを備えている。
【0027】
〔押付ロール〕
押付ロール70は、装置奥行方向に延びている円柱状の軸部70Aと、軸部70Aが貫通ししている円筒状の弾性部70Bとを備えている。軸部70Aの両端は、図示せぬ支持部材にベアリングを介して取り付けられている。
【0028】
この構成において、押付ロール70は、付勢部材(図示省略)によって加熱ロール52に押し付けられた状態で、回転する加熱ロール52に接触して、加熱ロール52に従動して回転するようになっている。そして、押付ロール70は、加熱ロール52との間で挟み込んで搬送するシート部材Pを、加熱ロール52に押し付けるようになっている。
【0029】
〔加熱ロール〕
加熱ロール52は、軸方向を装置奥行方向とするロール部材54と、ロール部材54を加熱する加熱部材56とを備えている。
【0030】
加熱部材56は、ロール部材54の内部に配置され、ロール部材54を加熱するハロンゲンヒータである。
【0031】
ロール部材54は、装置奥行方向を軸方向とする円筒形状の軸部58と、軸部58の外周面に形成されている断面円状の弾性層60と、弾性層60の外周面を覆っている表面層62と、表面層62を弾性層60に接着させている接着層64とを備えている。
【0032】
本実施形態では、軸部58は、アルミニウム製(JIS H4000 A−5052)の円筒材で、外径25〔mm〕、厚さ2〔mm〕、長さ300〔mm〕である。
【0033】
弾性層60は、ヤング率が4〔Mpa〕以下の材料で形成されている部材である。本実施形態では、弾性層56は、シリコーンゴム(信越化学製、X−34−2086A/B)で形成されており、内径25〔mm〕、厚さ300〔μm〕、長さ260〔mm〕である。
【0034】
表面層62は、フッ素樹脂であるテトラフルオロエチレン−パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体(以下「PFA」)で形成されており、厚さ35〔μm〕である。
【0035】
接着層64は、シリコーンゴム接着剤(信越化学製、X34−2967A/B)で形成されており、本実施形態では、接着層64の中央側の厚さは、50〔μm〕以上とされ、接着層64の端部の厚さは、接着層64の中央側の厚さと比して薄くされている。
【0036】
そして、弾性層60、接着層64、及び表面層62の両端部における装置奥行方向の位置は、同様とされている。
【0037】
なお、接着層64の端部とは、装置奥行方向(軸方向)における接着層64の全長を100〔%〕とした場合に、両端の夫々長さ10〔%〕の部分である。接着層64の中央側とは、接着層64の端部を除いた部分である。
【0038】
そして、本実施形態においては、表面層62の歪は、2〔%〕以下である。この歪の導出方法について、以下に記載する。
【0039】
先ず、弾性層60、接着層64、及び表面層62を、軸方向に等間隔に切断して10個の切断片を得る(
図2(A)参照)。そして、夫々の切断片において、両端面の表面層62の厚さを、光学顕微鏡を用いて測定する。具体的には、ロール部材54の軸を中心として10度間隔で表面層62の厚さを測定する(
図2(B)参照)。つまり、一の切断片の一端面においては、36箇所で、表面層62の厚さを測定する。これを、10個の切断片の両端面に対して全てに対して行う。
【0040】
そして、表面層62の歪は、下記式(1)によって算出される。なお、小数点以下一行については、四捨五入する。
【0041】
表面層の歪〔%〕=(最大厚さ−最小厚さ)/最大厚さ×100・・・(1)
この構成において、加熱ロール52は、図示せぬモータから回転力が伝達されて、
図1に示されるように、図中矢印R1方向に回転するようになっている。そして、加熱ロール52と押付ロール70とを含んで構成されている定着装置50は、加熱ロール52と押付ロール70との間で挟み込んで搬送するシート部材Pに、トナー画像を定着するようになっている。
【0042】
(ロール部材の製造方法)
次に、加熱ロール52を構成するロール部材54の製造方法について説明する。ロール部材54を製造する方法は、軸部58に弾性層60が形成されている部材を準備する準備工程と、接着層を形成するための接着層の形成工程と、表面層を形成するための表面層の形成工程とを含んでいる。
【0043】
〔準備工程〕
先ず、外径25〔mm〕、厚さ2〔mm〕、長さ300〔mm〕の軸部58に、円筒状の弾性層60が形成されている部材を準備する。
【0044】
〔接着層の形成工程〕
接着層の形成工程は、弾性層60に、接着層64を形成する(塗布する)ための工程である。この工程には、所謂フローコート法が用いられる。先ず、フローコート法に用いられる塗布装置100について説明し、次に、接着層の形成工程について説明する。
【0045】
−塗布装置−
フローコート法に用いられる塗布装置100は、
図4、
図7に示されるように、回転部104と、吐出部108と、板状のブレード112と、移動機構116とを備えている。
【0046】
回転部104は、軸部58の軸方向の両端を支持した状態で、軸部58を軸部58の周方向に回転させるようになっている。本実施形態では、回転部104は、軸部58を50〔rpm〕で回転させるようになっている。
【0047】
吐出部108は、移動機構116により軸部58の軸方向に沿って移動しながら、回転部104によって回転する軸部58に形成されている弾性層60の外周面に接着液118を吐出するようになっている。
【0048】
本実施形態では、接着液118として、液状シリコーンゴム塗布液(n‐ヘプタン中にシリコーンゴム接着剤(信越化学製、X34−2967A/B)を50質量%含む液)が用いられる。また、移動機構116によって移動する吐出部108の移動速度は、弾性層60の中央側に液を塗布する場合には、23.4〔mm/s〕され、弾性層60の端部に液を塗布する場合には、23.4〔mm/s〕と比して速くされている。
【0049】
なお、弾性層60の端部とは、装置奥行方向(軸方向)における弾性層60の全長を100〔%〕とした場合に、両端の夫々長さ10〔%〕の部分である。弾性層60の中央側とは、弾性層60の端部を除いた部分である。
【0050】
ブレード112は、移動機構116によって軸部58の軸方向に沿って移動しながら、吐出部108によって弾性層60の外周面に吐出された接着液118を平滑にするようになっている。
−接着層の形成工程−
接着層の形成工程では、塗布装置100の吐出部108が、
図4、
図5、
図6に示されるように、回転部104によって回転する軸部58に形成されている弾性層60の外周面に接着液118を吐出する。吐出部108が移動機構116によって弾性層60の一端から他端まで移動することで、吐出部108は、弾性層60の外周面の全域に接着液118を吐出する。
【0051】
ブレード112は、移動機構116によって軸部58の軸方向に沿って移動しながら、吐出部108によって弾性層60の外周面に吐出された接着液118を平滑にする。これにより、弾性層60の外周面の全域に接着液118が塗布される。
【0052】
そして、弾性層60に接着液118が塗布された後、60〔℃〕の環境下で、20〔分〕間、弾性層60に塗布された接着液118を乾燥させることで、接着液118内の溶剤を除去する。このようにして、弾性層60に、接着層64が形成される。本実施形態では、形成され接着層64の粘度は、25〔℃〕の環境下で、100〔Pa・s〕以下とされている。
【0053】
〔表面層の形成工程〕
表面層の形成工程は、接着層64が外周面に形成された弾性層60に、表面層62を形成するための工程ある。具体的には、表面層62となるチューブ120で弾性層60を覆うことで、弾性層60に、表面層62を形成する。この工程では、所謂減圧拡張法が用いられる。先ず、減圧拡張法に用いられる減圧装置150について説明し、次に、表面層の形成工程について説明する。なお、本実施形態では、チューブ120として、弾性層60の外径と比して2〔%〕小さい内径で、厚みが35〔μm〕のPFAチューブが用いられる。
【0054】
また、以下の説明では、便宜上、軸部58の弾性層60に、接着層64が形成された部材を、「ロール体68」と称することがある。
【0055】
−減圧装置−
減圧装置150は、
図8に示されるように、容器160と、保持機構240と、拡径部材190と、第1吸引機構200と、第2吸引機構210と、第3吸引機構220とを備えている。
【0056】
[容器]
容器160は、
図8に示されるように、装置上下方向に延びる円筒状の本体部162と、底部164と、頂部166とを有している。
【0057】
頂部166は、本体部162の上端に配置され、貫通孔168Aが形成されている天板168と、天板168の上側で天板168と一体的に形成され、貫通孔168Aを介して本体部162の内部とつながっている円筒状の円筒部170とを有している。
【0058】
円筒部170は、
図10に示されるように、内部に空洞部170Aを有しており、円筒部170の内周面170Bには、空洞部170Aとつながっている複数の吸引孔170Cが形成されている。また、円筒部170の内径は、チューブ120の外径と比して大きくされている。
【0059】
底部164は、本体部162の下端に配置され、貫通孔164Aが形成されている。
【0060】
[保持機構]
保持機構240は、
図8、
図10に示されるように、底部164に取り付けられ、本体部162の内部に配置されている。そして、保持機構240は、上下方向に延びる円筒状の基部242と、基部242に対して上下方向に移動する移動部244と、移動部244の上端に取り付けられているエアピッカー等の膨張部246とを有している。
【0061】
基部242は、底部164に形成された貫通孔164Aに取り付けられている。
【0062】
移動部244は、基部242に対して上下方向に移動するようになっており、駆動機構(図示省略)により上下方向へ移動するようになっている。
【0063】
膨張部246は、ゴム等の弾性膜により袋状に形成されており、上方から見て、中央部に円孔246Aを有する環状(ドーナッツ状)とされている。膨張部246の円孔246Aは、
図19に示されるように、移動部244、及び基部242のそれぞれに形成されている通路244A、242Aを通して本体部162の内部とつながっている。
【0064】
また、膨張部246の内部は、移動部244、及び基部242のそれぞれに形成され、通路244A、242Aと仕切られた通路244B、242Bと、つながっている。膨張部246は、空気が注入されて膨張するようになっている。
【0065】
そして、膨張部246の内部に空気が注入されていない状態で、膨張部246の外径は、チューブ120の内径と比して小さくされている(
図10参照)。一方、後述する排出ポンプ222(
図8参照)を稼動させて、通路242B、244Bを通じて、膨張部246の内部に空気が注入されることで、膨張部246は膨張して、チューブ120を保持するようになっている(
図12参照)。
【0066】
[第1吸引機構]
第1吸引機構200は、
図8に示されるように、吸引ポンプ202と、吸引管206とを有している。吸引管206は、一端が吸引ポンプ202に接続され、他端が円筒部170の外周面170Dに接続され、円筒部170の空洞部170Aとつながっている。
【0067】
[第2吸引機構]
第2吸引機構210は、
図8に示されるように、吸引ポンプ212と、レギュレータ214と、吸引管216とを有している。吸引管216は、一端が吸引ポンプ212に接続され、他端が本体部162の外周面162Aに接続され、円筒部170の内部とつながっている。また、レギュレータ214は、吸引管216の中間部に配置されている。
【0068】
[第3吸引機構]
第3吸引機構220は、
図8に示されるように、排出ポンプ222と、吸引管226とを有している。吸引管226は、一端が排出ポンプ222に接続され、他端が容器160の底部164に接続され、基部242の通路242B(
図19参照)とつながっている。
【0069】
[拡径部材]
拡径部材190は、
図8、
図9(A)(B)に示されるように、上下方向に延びるように配置されたロール体68の下端で、軸部58に、ロール体68と同様の軸となるように取り付けられている。そして、拡径部材190は、下端から上端にかけて徐々に大径化されてから徐々に小径化されている。すなわち、拡径部材190は、上下方向の中央部で最大径となり、上下方向の中央部から上方及び下方に向けて縮径されたテーパ形状とされている。
【0070】
そして、拡径部材190の最大径は、円筒部170の内径に比して小さくされ、かつ、ロール体68の外径と比して大きくされている。
【0071】
−表面層の形成工程−
表面層の形成工程は、前述したように、表面層62となるチューブ120で弾性層60を覆うことで、弾性層60に表面層62を形成する工程である。表面層の形成工程は、チューブ120の上端、及び下端を保持する上下端保持工程と、チューブ120を弾性層60に被覆する被覆工程とを備えている。なお、表面層の形成工程を開始する前の状態では、第1吸引機構200、第2吸引機構210、及び第3吸引機構220は、非稼働とされている。
【0072】
[上下端保持工程]
上下端保持工程では、図示せぬセット治具を用いて、
図10に示されるように、チューブ120の上端の外周面を、円筒部170の内周面170Bと対向させ、かつ、チューブ120の下端の内周面を、膨張部246の外周面246Bと対向させる。
【0073】
この状態で、第1吸引機構200(
図8参照)の吸引ポンプ202が稼動する。これにより、吸引孔170Cを通じてチューブ120の上端が吸引されて、
図11に示されるようにチューブ120の上端が、拡径して、円筒部170の内周面170Bに保持される。
【0074】
チューブ120の上端が保持された状態で、第3吸引機構220(
図8参照)の吸引ポンプ232が稼動する。これにより、通路242B、244Bを通じて、膨張部246の内部に空気が注入されて、
図12に示されるように、膨張部246が膨張する。そして、チューブ120の下端が膨張部246に保持される。
【0075】
[被覆工程]
被覆工程では、第2吸引機構210(
図8参照)の吸引ポンプ212が稼動し、容器160の内部の空気の吸引が開始される。
【0076】
この状態で、
図13に示されるように、拡径部材190が下端に取り付けられたロール体68が、図示せぬ挿入機構によって、チューブ120の上端に挿入されることで、チューブ120の上部開口が封止される。これにより、容器160の内外の圧力差によって、拡径部材190が、ロール体68と共に下降し、
図14に示されるように、チューブ120の上端から下端へ向けて挿入される。
【0077】
下降する拡径部材190は、
図15に示されるように、膨張部246に当たって停止する。また、チューブ120において拡径部材190が通過した部位が、弾性域で拡径される。そして、拡径された部位は、チューブ120の内外の圧力差によって、拡径状態が維持される。
【0078】
さらに、拡径部材190が膨張部246に当たって停止した状態で、吸引ポンプ212(
図8参照)の稼動が停止され、容器160の内部を大気開放する。これにより、チューブ120の内外の圧力差が解消されて、チューブ120の上端よりも下側の部分が、弾性復元して縮径する。さらに、吸引ポンプ202(
図8参照)の稼動が停止される。これにより、チューブ120の上端が縮径する。このように、チューブ120が縮径することで、
図16に示されるように、ロール体68がチューブ120よって覆われる(被覆される)。
【0079】
さらに、移動部244を、駆動機構(図示省略)により下方へ移動させる。これにより、チューブ120に、軸方向の張力(本実施形態では、15〔N〕の張力)が付与される。すなわち、チューブ120に、軸方向の張力が付与された状態で、ロール体68がチューブ120よって覆われる(被覆される)。
【0080】
そして、排出ポンプ222(
図8参照)の稼動が停止される。これにより、膨張部246が収縮して、
図17に示されるように、チューブ120の下端の保持が解消される。
【0081】
次に、
図18に示されるように、ロール体68が容器160の内部から取り出され、チューブ120の下端が切断されると共に、拡径部材190がロール体68から取り外される。これにより、ロール部材54が製造される。
【0082】
〔評価〕
次に、本実施形態の実施例に係る定着装置50と、比較例に係る定着装置とに対して行った評価について、
図20に示す表を用いて説明する。
【0083】
〔評価仕様〕
実施例1:弾性層60に接着層64を形成させる際の接着層64の粘度を50〔Pa・s〕とし、接着層64の中央側の膜厚を50〔μm〕とし、接着層64の端部の膜厚を20〔μm〕とすることで、表面層62の歪を0〔%〕とした。
【0084】
実施例2:弾性層60に接着層64を形成させる際の接着層64の粘度を80〔Pa・s〕とし、接着層64の中央側の膜厚を50〔μm〕とし、接着層64の端部の膜厚を20〔μm〕とすることで、表面層の歪を0〔%〕とした。
【0085】
実施例3:弾性層60に接着層64を形成させる際の接着層64の粘度を100〔Pa・s〕とし、接着層64の中央側の膜厚を50〔μm〕とし、接着層64の端部の膜厚を30〔μm〕とすることで、表面層62の歪を0〔%〕とした。
【0086】
実施例4:弾性層60に接着層64を形成させる際の接着層64の粘度を100〔Pa・s〕とし、接着層64の中央側の膜厚を50〔μm〕とし、接着層64の端部の膜厚を10〔μm〕とすることで、表面層62の歪を0〔%〕とした。
【0087】
実施例5:弾性層60に接着層64を形成させる際の接着層64の粘度を100〔Pa・s〕とし、接着層64の中央側の膜厚を50〔μm〕とし、接着層64の端部の膜厚を20〔μm〕とすることで、表面層62の歪を2〔%〕とした。
【0088】
以上より、実施例についは、表面層62の歪は、2〔%〕以下とされている。
【0089】
比較例1:弾性部に接着層を形成させる際の接着層の粘度を140〔Pa・s〕とし、接着層の中央側の膜厚を50〔μm〕とし、接着層の端部の膜厚を20〔μm〕とすることで、表面層の歪を3〔%〕とした。
【0090】
比較例2:弾性部に接着層を形成させる際の接着層の粘度を210〔Pa・s〕とし、接着層の中央側の膜厚を50〔μm〕とし、接着層の端部の膜厚を20〔μm〕とすることで、表面層の歪を4〔%〕とした。
【0091】
比較例3:弾性部に接着層を形成させる際の接着層の粘度を100〔Pa・s〕とし、接着層の中央側の膜厚を30〔μm〕とし、接着層の端部の膜厚を40〔μm〕とすることで、表面層の歪を4〔%〕とした。
【0092】
比較例4:弾性部に接着層を形成させる際の接着層の粘度を100〔Pa・s〕とし、接着層の中央側の膜厚を30〔μm〕とし、接着層の端部の膜厚を10〔μm〕とすることで、表面層の歪を4〔%〕とした。
【0093】
各仕様においては、接着層の形成工程における接着層の乾燥条件(温度、時間)を変更することで、接着層の粘度を変えた。また、各仕様においては、塗布装置100(
図4参照)における吐出部108の移動速度を変更することで、接着層の中央側の膜厚、及び接着層の端部の膜厚を変えた。
【0094】
なお、前述した事項以外については、各仕様間で同様である。
【0095】
〔評価項目・評価方法・評価基準〕
1.シワ評価
ロール部材の表面層におけるシワの有無を目視にて評価した。シワが無いものを「A」とし、シワが有るものを「B」とした。なお、目標品質は、「A」である。
【0096】
2.凹み評価
ロール部材の表面層における凹みの有無を目視にて評価した。凹みが無いものを「A」とし、凹みが有るものを「B」とした。なお、目標品質は、「A」である。
【0097】
3.画像ムラ評価
夫々の仕様を富士ゼロックス製Docuprint CP400に取り付け、A4サイズの100枚の紙に、黒ベタ画像を形成した後、出力された画像の画像ムラを目視にて評価した。
【0098】
画像ムラ未発生のレベルを「G0」とし、かすかに画像ムラが発生しているレベルを「G1」とし、明確に画像ムラが発生しているレベルを「G2」とし、顕著に画像ムラが発生しているレベルを「G3」とした。なお、目標品質は、「G0」である。
【0099】
〔評価結果〕
図20の表に示されるように、実施例1〜5については、全ての項目で、目標品質を満足している。これに対して、比較例1〜4については、凹み評価、及び画像ムラ評価で目標品質を満足することができなかった。
【0100】
〔考察〕
チューブ120をロール体68に被覆する場合に、軸方向に延されたチューブ120が元に戻ろうとする。このとき、チューブ120と、弾性層60との間で生じる摩擦力が小さい方が、チューブ120が元に戻り易く、表面層62に歪が生じている場合には、表面層62における歪の発生が抑制される。
【0101】
具体的には、弾性層60に外周面に形成されている接着層64の粘度が小さい方が、摩擦力が小さくなるため、チューブ120が元に戻りやすい。つまり、接着層64の粘度が小さい方が、粘度が大きい場合と比して、表面層62における歪の発生が抑制される。
【0102】
また、接着層64の厚さが厚い方が、チューブ120が弾性層60に対して移動し易くなるため、チューブ120が元に戻りやすい。つまり、接着層64の厚さが厚い方が、薄い場合と比して、表面層62における歪の発生が抑制される。
【0103】
実施例1〜5と、比較例1、2とを比較すると、実施例1〜5の接着層64の粘度が、比較例1、2の接着層の粘度と比して、小さい。また、実施例1〜5と、比較例3、4とを比較すると、実施例1〜5の接着層64の中央側の厚さが、比較例3、4の接着層の中央側の厚さと比して、厚い。
【0104】
このため、各実施例は、各比較例と比して、表面層62における歪の発生が抑制されている、表面層62におけるシワ、凹みの発生が抑制されると考えられる。
【0105】
また、実施例1〜5については、表面層62におけるシワ、凹みの発生が抑制されることで、トナー画像の定着ムラの発生が抑制され、さらに、トナー画像の定着ムラの発生が抑制されることで、出力画像に画像ムラが発生するのが抑制されていると考えられる。
【0106】
なお、実施例1〜5については、接着層64の端部の膜厚が、接着層64の中央側の膜厚と比して、薄くなっている。これは、チューブ120の両端が、弾性層60に対して滑りすぎて、チューブ120の中央側(表面層62の中央側)にシワが発生するのを抑制するためである。
【0107】
(まとめ)
以上説明したように、ロール部材54の表面層62の歪を2〔%〕以下とすることで、表面層62の歪が3〔%〕以上の場合と比して、表面層62におけるシワ、凹みの発生が抑制される。
【0108】
また、定着装置50においては、ロール部材54の表面層62におけるシワ、凹みの発生が抑制されることで、表面層の歪が3〔%〕以上の場合と比して、トナー画像の定着ムラの発生が抑制される。
【0109】
また、画像形成装置10においては、トナー画像の定着ムラの発生が抑制されることで、表面層62の歪が3〔%〕以上の場合と比して、出力画像に画像ムラが発生するのが抑制される。
【0110】
なお、本発明を特定の実施形態について詳細に説明したが、本発明は係る実施形態に限定されるものではなく、本発明の範囲内にて他の種々の実施形態をとることが可能であることは当業者にとって明らかである。例えば、上記実施形態では、ロール部材54を定着装置50に用いたが、ロール部材54を搬送ロール等に用いてもよい。