特許第6903931号(P6903931)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6903931
(24)【登録日】2021年6月28日
(45)【発行日】2021年7月14日
(54)【発明の名称】半導体装置および半導体装置の製造方法
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/336 20060101AFI20210701BHJP
   H01L 29/78 20060101ALI20210701BHJP
   H01L 29/12 20060101ALI20210701BHJP
   H01L 29/861 20060101ALI20210701BHJP
   H01L 29/868 20060101ALI20210701BHJP
   H01L 21/322 20060101ALI20210701BHJP
【FI】
   H01L29/78 658H
   H01L29/78 652T
   H01L29/78 658A
   H01L29/78 653A
   H01L29/78 652C
   H01L29/78 652J
   H01L29/78 658F
   H01L29/78 657D
   H01L29/91 C
   H01L29/91 F
   H01L21/322 L
   H01L21/322 K
【請求項の数】11
【全頁数】16
(21)【出願番号】特願2017-24491(P2017-24491)
(22)【出願日】2017年2月13日
(65)【公開番号】特開2018-133377(P2018-133377A)
(43)【公開日】2018年8月23日
【審査請求日】2020年1月14日
(73)【特許権者】
【識別番号】000005234
【氏名又は名称】富士電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100104190
【弁理士】
【氏名又は名称】酒井 昭徳
(72)【発明者】
【氏名】熊田 恵志郎
(72)【発明者】
【氏名】橋爪 悠一
(72)【発明者】
【氏名】星 保幸
【審査官】 岩本 勉
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2015/129430(WO,A1)
【文献】 国際公開第2016/039071(WO,A1)
【文献】 米国特許出願公開第2016/0336390(US,A1)
【文献】 中国特許出願公開第105900221(CN,A)
【文献】 米国特許出願公開第2017/0025524(US,A1)
【文献】 特開平07−135214(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/336
H01L 21/322
H01L 29/12
H01L 29/78
H01L 29/861
H01L 29/868
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1導電型の半導体基板と、
前記半導体基板のおもて面に設けられた、前記半導体基板より低不純物濃度の第1導電型の第1半導体層と、
前記第1半導体層の、前記半導体基板側に対して反対側の表面層に選択的に設けられた第2導電型の第2半導体層と、
前記第2半導体層の、前記半導体基板側に対して反対側の表面層に選択的に設けられた第1導電型の第1半導体領域と、
前記第2半導体層の、前記半導体基板側に対して反対側の表面層に選択的に設けられた、前記第2半導体層より高不純物濃度の第2導電型の第2半導体領域と、
前記第2半導体層の、前記第1半導体層と前記第1半導体領域とに挟まれた領域の表面上にゲート絶縁膜を介して設けられたゲート電極と、
前記第2半導体領域と前記第1半導体領域の表面に設けられた第1電極と、
前記半導体基板の裏面に設けられた第2電極と、
前記第1半導体層および前記第2半導体層の、前記第2半導体領域と深さ方向に対向する領域を除いた領域に選択的に設けられた、ライフタイムキラーを注入したライフタイムキラー領域と、
を備え
前記ライフタイムキラー領域は、前記ゲート絶縁膜と深さ方向に対向する領域において、前記第1半導体層と前記第2半導体層の底面との界面を含むように設けられることを特徴とする半導体装置。
【請求項2】
第1導電型の半導体基板と、
前記半導体基板のおもて面に設けられた、前記半導体基板より低不純物濃度の第1導電型の第1半導体層と、
前記第1半導体層の、前記半導体基板側に対して反対側の表面層に設けられた第2導電型の第2半導体層と、
前記第2半導体層の、前記半導体基板側に対して反対側の表面層に選択的に設けられた第1導電型の第1半導体領域と、
前記第2半導体層の、前記半導体基板側に対して反対側の表面層に選択的に設けられた、前記第2半導体層より高不純物濃度の第2導電型の第2半導体領域と、
前記第2半導体層を貫通して、前記第1半導体層に達するトレンチ
記トレンチの内部にゲート絶縁膜を介して設けられたゲート電極と、
前記第2半導体領域と前記第1半導体領域の表面に設けられた第1電極と、
前記半導体基板の裏面に設けられた第2電極と、
前記第1半導体層の内部に選択的に設けられた、ライフタイムキラーを注入したライフタイムキラー領域と、
を備え、
前記第1半導体層の内部に、前記トレンチの底面と接し、前記トレンチよりも幅の広い第2導電型の第3半導体領域をさらに有し、
前記ライフタイムキラー領域は、前記第3半導体領域の底面と前記第1半導体層との界面全体を含むように設けられることを特徴とする半導体装置。
【請求項3】
前記ライフタイムキラー領域は、前記第1半導体層または/および前記第2半導体層の前記ゲート絶縁膜と対向する領域に設けられていることを特徴とする請求項1に記載の半導体装置。
【請求項4】
前記ライフタイムキラー領域の底面は、前記第1半導体層と前記第2半導体層との界面より前記半導体基板側にあることを特徴とする請求項1に記載の半導体装置。
【請求項5】
前記ライフタイムキラー領域の底面は、前記半導体基板と接することを特徴とする請求項4に記載の半導体装置。
【請求項6】
前記ライフタイムキラー領域の表面は、前記第1半導体層と前記第2半導体層との界面に接する、もしくはこれより前記ゲート絶縁膜側にあることを特徴とする請求項3に記載の半導体装置。
【請求項7】
前記ライフタイムキラー領域の表面は、前記第1半導体層と前記ゲート絶縁膜との界面にあることを特徴とする請求項6に記載の半導体装置。
【請求項8】
前記ライフタイムキラーは、ヘリウムまたはプロトンであることを特徴とする請求項1〜7のいずれか一つに記載の半導体装置。
【請求項9】
前記第1半導体層の内部に、上面が前記第2半導体層と接する第2導電型の第4半導体領域をさらに有し、
前記ライフタイムキラー領域は、前記第3半導体領域に達することを特徴とする請求項2に記載の半導体装置。
【請求項10】
第1導電型の半導体基板のおもて面に、前記半導体基板より低不純物濃度の第1導電型の第1半導体層を形成する第1工程と、
前記第1半導体層の、前記半導体基板側に対して反対側の表面層に選択的に第2導電型の第2半導体層を形成する第2工程と、
前記第2半導体層の、前記半導体基板側に対して反対側の表面層に選択的に第1導電型の第1半導体領域を形成する第3工程と、
前記第2半導体層の、前記半導体基板側に対して反対側の表面層に選択的に、前記第2半導体層より高不純物濃度の第2導電型の第2半導体領域を形成する第4工程と、
前記第2半導体層の、前記第1半導体層と前記第1半導体領域とに挟まれた領域の表面上にゲート絶縁膜を介してゲート電極を形成する第5工程と、
前記第2半導体領域と前記第1半導体領域の表面に第1電極を形成する第6工程と、
前記第1半導体層および前記第2半導体層の、前記第2半導体領域と深さ方向に対向する領域を除いた領域にライフタイムキラーを選択的に注入して、ライフタイムキラー領域を形成する第7工程と、
を含み、
前記第7工程では、前記ゲート絶縁膜と深さ方向に対向する領域において、前記第1半導体層と前記第2半導体層の底面との界面を含むように前記ライフタイムキラー領域を形成することを特徴とする半導体装置の製造方法。
【請求項11】
第1導電型の半導体基板のおもて面に、前記半導体基板より低不純物濃度の第1導電型の第1半導体層を形成する第1工程と、
前記第1半導体層の、前記半導体基板側に対して反対側の表面層に第2導電型の第2半導体層を形成する第2工程と、
前記第2半導体層の、前記半導体基板側に対して反対側の表面層に選択的に第1導電型の第1半導体領域を形成する第3工程と、
前記第2半導体層の、前記半導体基板側に対して反対側の表面層に選択的に、前記第2半導体層より高不純物濃度の第2導電型の第2半導体領域を形成する第4工程と、
前記第2半導体層を貫通して、前記第1半導体層に達するトレンチを形成し、
前記トレンチの内部にゲート絶縁膜を介してゲート電極を形成する第5工程と、
前記第2半導体領域と前記第1半導体領域の表面に第1電極を形成する第6工程と、
前記第1半導体層の内部に選択的にライフタイムキラーを注入して、ライフタイムキラー領域を形成する第7工程と、
を含み、
前記第1半導体層の内部に、前記トレンチの底面と接し、前記トレンチよりも幅の広い第2導電型の第3半導体領域を形成する工程をさらに有し、
前記第7工程では、前記第3半導体領域の底面と前記第1半導体層との界面全体を含むように前記ライフタイムキラー領域を形成することを特徴とする半導体装置の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、半導体装置および半導体装置の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、高電圧や大電流を制御するパワー半導体装置の構成材料として、シリコン(Si)が用いられている。パワー半導体装置は、バイポーラトランジスタやIGBT(Insulated Gate Bipolar Transistor:絶縁ゲート型バイポーラトランジスタ)、MOSFET(Metal Oxide Semiconductor Field Effect Transistor:絶縁ゲート型電界効果トランジスタ)など複数種類あり、これらは用途に合わせて使い分けられている。
【0003】
例えば、バイポーラトランジスタやIGBTは、MOSFETに比べて電流密度は高く大電流化が可能であるが、高速にスイッチングさせることができない。具体的には、バイポーラトランジスタは数kHz程度のスイッチング周波数での使用が限界であり、IGBTは数十kHz程度のスイッチング周波数での使用が限界である。一方、パワーMOSFETは、バイポーラトランジスタやIGBTに比べて電流密度が低く大電流化が難しいが、数MHz程度までの高速スイッチング動作が可能である。
【0004】
しかしながら、市場では大電流と高速性とを兼ね備えたパワー半導体装置への要求が強く、IGBTやパワーMOSFETはその改良に力が注がれ、現在ではほぼ材料限界に近いところまで開発が進んでいる。パワー半導体装置の観点からシリコンに代わる半導体材料が検討されており、低オン電圧、高速特性、高温特性に優れた次世代のパワー半導体装置を作製(製造)可能な半導体材料として炭化珪素(SiC)が注目を集めている(下記、非特許文献1参照)。
【0005】
その背景には、SiCは化学的に非常に安定な材料であり、バンドギャップが3eVと広く、高温でも半導体として極めて安定的に使用できる。また、最大電界強度もシリコンより1桁以上大きいからである。SiCはシリコンにおける材料限界を超える可能性大であることからパワー半導体用途、特にMOSFETでは今後の伸長が大きく期待される。特にそのオン抵抗が小さいことが期待されているが高耐圧特性を維持したままより一層の低オン抵抗を有する縦型SiC−MOSFETが期待できる。
【0006】
図10は、従来の縦型SiC−MOSFETの構成を示す断面図である。図10に示すように、n+型炭化珪素基板1のおもて面にn型炭化珪素エピタキシャル層2が堆積され、n型炭化珪素エピタキシャル層2の表面にp型ベース層3が選択的に設けられる。また、p型ベース層3の表面にn+型ソース領域4、p+型コンタクト領域5が選択的に設けられる。
【0007】
p型ベース層3およびn+型ソース領域4との表面に、ゲート絶縁膜6を介してゲート電極7が設けられている。また、n型炭化珪素エピタキシャル層2、p+型コンタクト領域5およびn+型ソース領域4の表面に、ソース電極8が設けられている。また、n+型炭化珪素基板1の裏面には、ドレイン電極9が設けられている。
【0008】
図10の構造のMOSFETにおいて、ソース電極8に対しドレイン電極9に正の電圧が印加された状態でゲート電極7にゲートしきい値Vth以下の電圧が印加されている場合には、p型ベース層3とn型炭化珪素エピタキシャル層2の間のPN接合が逆バイアスされた状態であるため電流は流れない。一方、ゲート電極7にゲートしきい値Vth以上の電圧を印加すると、ゲート電極7直下のp型ベース層3の表面にはn型の反転層(チャネル)が形成されることにより電流が流れるため、ゲート電極7に印加する電圧によってMOSFETのスイッチング動作を行うことができる。MOSFETがオフしている際、ソース電極8に高電位を印加することでp型ベース層3とn+型炭化珪素基板1とn型炭化珪素エピタキシャル層2からなる内蔵PN(pin)ダイオードを駆動できる。
【0009】
また、少数キャリアに対する再結合中心となるライフタイムキラーをn型半導体層とp型ベース層の底面との界面全体に導入することにより、内蔵PNダイオードがオフする際に少数キャリアを消滅させ、内蔵PNダイオードの逆回復損失を低減させる技術がある(例えば、下記特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】国際公開2016/039071号公報
【非特許文献】
【0011】
【非特許文献1】ケイ・シェナイ(K.Shenai)、外2名、オプティウム セミコンダクターズ フォー ハイパワー エレクトロニクス(Optimum Semiconductors for High−Power Electronics)、アイ・トリプル・イー トランザクションズ オン エレクトロン デバイシズ(IEEE Transactions on Electron Devices)、1989年9月、第36巻、第9号、p.1811−1823
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
ここで、ソース電極8に高電位を印加して、内蔵PNダイオードを駆動すると、内蔵PNダイオードに電流が流れる(例えば、図10のA)。この際、SiC−MOSFETでは、内蔵PNダイオードの順方向電圧VfがVf>Vthであるため、ゲート電極7の直下を通りp型ベース層3とn型炭化珪素エピタキシャル層2の間のPN接合に電流が流れる場合がある(例えば、図10のB)。この電流により、n+型炭化珪素基板1とn型炭化珪素エピタキシャル層2にキャリアが注入され電流が流れやすくなる。このため、電導度変調の率が高くなり、結晶欠陥が発生しやすくなる。この結晶欠陥により、オン抵抗が増加して、MOSFETのしきい値電圧Vthと内蔵PNダイオードの順方向電圧Vfが変動するという問題がある。
【0013】
この発明は、上述した従来技術による問題点を解消するため、ソース電極に高電位を印加して、内蔵PNダイオードを駆動する場合に結晶欠陥の発生を抑制できる半導体装置および半導体装置の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
上述した課題を解決し、本発明の目的を達成するため、この発明にかかる半導体装置は、次の特徴を有する。第1導電型の半導体基板のおもて面に、前記半導体基板より低不純物濃度の第1導電型の第1半導体層が設けられる。前記第1半導体層の、前記半導体基板側に対して反対側の表面層に選択的に第2導電型の第2半導体層が設けられる。前記第2半導体層の、前記半導体基板側に対して反対側の表面層に選択的に第1導電型の第1半導体領域が設けられる。前記第2半導体層の、前記半導体基板側に対して反対側の表面層に選択的に設けられた、前記第2半導体層より高不純物濃度の第2導電型の第2半導体領域が設けられる。前記第2半導体層の、前記第1半導体層と前記第1半導体領域とに挟まれた領域の表面上にゲート絶縁膜を介してゲート電極が設けられる。前記第2半導体領域と前記第1半導体領域の表面に第1電極が設けられる。前記半導体基板の裏面に第2電極が設けられる。前記第1半導体層および前記第2半導体層の、前記第2半導体領域と深さ方向に対向する領域を除いた領域に選択的に、ライフタイムキラーを注入したライフタイムキラー領域が設けられる。前記ライフタイムキラー領域は、前記ゲート絶縁膜と深さ方向に対向する領域において前記第1半導体層と前記第2半導体層の底面との界面を含むように設けられる。
【0015】
上述した課題を解決し、本発明の目的を達成するため、この発明にかかる半導体装置は、次の特徴を有する。第1導電型の半導体基板のおもて面に、前記半導体基板より低不純物濃度の第1導電型の第1半導体層が設けられる。前記第1半導体層の、前記半導体基板側に対して反対側の表面層に選択的に第2導電型の第2半導体層が設けられる。前記第2半導体層の、前記半導体基板側に対して反対側の表面層に選択的に第1導電型の第1半導体領域が設けられる。前記第2半導体層の、前記半導体基板側に対して反対側の表面層に選択的に設けられた、前記第2半導体層より高不純物濃度の第2導電型の第2半導体領域が設けられる。前記第2半導体層を貫通して、前記第1半導体層に達するトレンチが設けられる。前記トレンチの内部にゲート絶縁膜を介してゲート電極が設けられる。前記第2半導体領域と前記第1半導体領域の表面に第1電極が設けられる。前記半導体基板の裏面に第2電極が設けられる。前記第1半導体層の内部に、ライフタイムキラーを注入したライフタイムキラー領域が設けられる。前記第1半導体層の内部に、前記トレンチの底面と接し、前記トレンチよりも幅の広い第2導電型の第3半導体領域をさらに有しており、前記ライフタイムキラー領域は、前記第3半導体領域の底面と前記第1半導体層との界面全体を含むように設けられる。
【0016】
また、この発明にかかる半導体装置は、上述した発明において、前記ライフタイムキラー領域は、前記第1半導体層または/および前記第2半導体層の前記ゲート絶縁膜と対向する領域に設けられていることを特徴とする。
【0017】
また、この発明にかかる半導体装置は、上述した発明において、前記ライフタイムキラー領域の底面は、前記第1半導体層と前記第2半導体層との界面より前記半導体基板側にあることを特徴とする。
【0018】
また、この発明にかかる半導体装置は、上述した発明において、前記ライフタイムキラー領域の底面は、前記半導体基板と接することを特徴とする。また、前記ライフタイムキラー領域の表面は、前記第1半導体層と前記ゲート絶縁膜との界面に接する、もしくはこれより前記ゲート絶縁膜側にあることを特徴とする。また、前記ライフタイムキラー領域の表面は、前記第1半導体層と前記ゲート絶縁膜との界面にあることを特徴とする。
【0019】
また、この発明にかかる半導体装置は、上述した発明において、前記ライフタイムキラーは、ヘリウムまたはプロトンであることを特徴とする。また、この発明にかかる半導体装置は、上述した発明において、前記第1半導体層の内部に、上面が前記第2半導体層と接する第2導電型の第4半導体領域をさらに有し、前記ライフタイムキラー領域は、前記第3半導体領域に達することを特徴とする。
【0020】
上述した課題を解決し、本発明の目的を達成するため、この発明にかかる半導体装置の製造方法は、次の特徴を有する。まず、第1導電型の半導体基板のおもて面に、前記半導体基板より低不純物濃度の第1導電型の第1半導体層を形成する第1工程を行う。次に、前記第1半導体層の、前記半導体基板側に対して反対側の表面層に選択的に第2導電型の第2半導体層を形成する第2工程を行う。次に、前記第2半導体層の、前記半導体基板側に対して反対側の表面層に選択的に第1導電型の第1半導体領域を形成する第3工程を行う。次に、前記第2半導体層の、前記半導体基板側に対して反対側の表面層に選択的に、前記第2半導体層より高不純物濃度の第2導電型の第2半導体領域を形成する第4工程を行う。次に、前記第2半導体層の、前記第1半導体層と前記第1半導体領域とに挟まれた領域の表面上にゲート絶縁膜を介してゲート電極を形成する第5工程を行う。次に、前記第2半導体領域と前記第1半導体領域の表面に第1電極を形成する第6工程を行う。次に、前記第1半導体層および前記第2半導体層の、前記第2半導体領域と深さ方向に対向する領域を除いた領域に選択的にライフタイムキラーを注入して、ライフタイムキラー領域を形成する第7工程を行う。前記第7工程では、前記ゲート絶縁膜と深さ方向に対向する領域において、前記第1半導体層と前記第2半導体層の底面との界面を含むように前記ライフタイムキラー領域を形成する。
【0021】
上述した課題を解決し、本発明の目的を達成するため、この発明にかかる半導体装置の製造方法は、次の特徴を有する。まず、第1導電型の半導体基板のおもて面に、前記半導体基板より低不純物濃度の第1導電型の第1半導体層を形成する第1工程を行う。次に、前記第1半導体層の、前記半導体基板側に対して反対側の表面層に第2導電型の第2半導体層を形成する第2工程を行う。次に、前記第2半導体層の、前記半導体基板側に対して反対側の表面層に選択的に第1導電型の第1半導体領域を形成する第3工程を行う。次に、前記第2半導体層の、前記半導体基板側に対して反対側の表面層に選択的に、前記第2半導体層より高不純物濃度の第2導電型の第2半導体領域を形成する第4工程を行う。次に、前記第2半導体層を貫通して、前記第1半導体層に達するトレンチを形成し、前記トレンチの内部にゲート絶縁膜を介してゲート電極を形成する第5工程を行う。次に、前記第2半導体領域と前記第1半導体領域の表面に第1電極を形成する第6工程を行う。次に、前記第1半導体層の内部に選択的にライフタイムキラーを注入して、ライフタイムキラー領域を形成する第7工程を行う。前記第1半導体層の内部に、前記トレンチの底面と接し、前記トレンチよりも幅の広い第2導電型の第3半導体領域を形成する工程をさらに有し、前記第7工程では、前記第3半導体領域の底面と前記第1半導体層との界面全体を含むように前記ライフタイムキラー領域を形成する。
【0022】
上述した発明によれば、少数キャリアに対する再結合中心となるライフタイムキラーを注入したライフタイムキラー領域を設けている。これにより、ソース電極に高電位を印加して、内蔵PNダイオードを駆動した場合、ゲート電極の直下を通りp型ベース層(第2導電型の第2半導体層)とn型炭化珪素エピタキシャル層(第1導電型の第1半導体層)の間のPN接合に流れる電流が減少し、n+型炭化珪素基板(第1導電型の半導体基板)とn型炭化珪素エピタキシャル層に結晶欠陥が発生することを抑制することができる。このため、結晶欠陥により半導体装置のオン抵抗が増加することがなく、MOSFETのしきい値電圧Vthと内蔵PNダイオードの順方向電圧Vfの変動を抑えることができ、半導体装置の信頼性を保つことが可能になる。
【発明の効果】
【0023】
本発明にかかる半導体装置および半導体装置の製造方法によれば、ソース電極に高電位を印加して、内蔵PNダイオードを駆動する場合に結晶欠陥の発生を抑制できるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0024】
図1】実施の形態にかかる炭化珪素半導体装置の構造を示す断面図である。
図2】ライフタイムキラー領域の他の構造を示す断面図である(その1)。
図3】ライフタイムキラー領域の他の構造を示す断面図である(その2)。
図4】実施の形態にかかる炭化珪素半導体装置の製造途中の状態を示す断面図である(その1)。
図5】実施の形態にかかる炭化珪素半導体装置の製造途中の状態を示す断面図である(その2)。
図6】実施の形態にかかる炭化珪素半導体装置の製造途中の状態を示す断面図である(その3)。
図7】実施の形態にかかる炭化珪素半導体装置の製造途中の状態を示す断面図である(その4)。
図8】実施の形態にかかる炭化珪素半導体装置の他の構造を示す断面図である(その1)。
図9】実施の形態にかかる炭化珪素半導体装置の他の構造を示す断面図である(その2)。
図10】従来の縦型SiC−MOSFETの構造を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下に添付図面を参照して、この発明にかかる半導体装置および半導体装置の製造方法の好適な実施の形態を詳細に説明する。本明細書および添付図面においては、nまたはpを冠記した層や領域では、それぞれ電子または正孔が多数キャリアであることを意味する。また、nやpに付す+および−は、それぞれそれが付されていない層や領域よりも高不純物濃度および低不純物濃度であることを意味する。+および−を含めたnやpの表記が同じ場合は近い濃度であることを示し濃度が同等とは限らない。なお、以下の実施の形態の説明および添付図面において、同様の構成には同一の符号を付し、重複する説明を省略する。なお、本明細書では、ミラー指数の表記において、“−”はその直後の指数につくバーを意味しており、指数の前に“−”を付けることで負の指数をあらわしている。
【0026】
(実施の形態)
本発明にかかる半導体装置は、シリコンよりバンドギャップが広いワイドバンドギャップ半導体を用いて構成される。実施の形態においては、ワイドバンドギャップ半導体として例えば炭化珪素(SiC)を用いて作製された炭化珪素半導体装置について、縦型プレーナーゲート構造のMOSFETを例に説明する。図1は、実施の形態にかかる炭化珪素半導体装置の構成を示す断面図である。
【0027】
図1に示すように、実施の形態にかかる炭化珪素半導体装置は、n+型炭化珪素基板(第1導電型の半導体基板)1の主面(おもて面)上にn型炭化珪素エピタキシャル層(第1導電型の第1半導体層)2が堆積されている。
【0028】
+型炭化珪素基板1は、例えば窒素(N)がドーピングされた炭化珪素単結晶基板である。n型炭化珪素エピタキシャル層2は、n+型炭化珪素基板1よりも低い不純物濃度で例えば窒素がドーピングされてなる低濃度n型ドリフト層である。以下、n+型炭化珪素基板1単体、またはn+型炭化珪素基板1とn型炭化珪素エピタキシャル層2を併せて炭化珪素半導体基体とする。
【0029】
図1に示すように、実施の形態にかかる炭化珪素半導体装置は、ドレイン領域となるn+型炭化珪素基板1のn型炭化珪素エピタキシャル層2側に対して反対側の表面(炭化珪素半導体基体の裏面)には、ドレイン電極(第2電極)9が設けられている。また、外部装置と接続するためのドレイン電極パッド(不図示)が設けられている。
【0030】
炭化珪素半導体基体のおもて面側には、MOS(金属−酸化膜−半導体からなる絶縁ゲート)構造(素子構造)が形成されている。具体的には、n型炭化珪素エピタキシャル層2のn+型炭化珪素基板1側に対して反対側(炭化珪素半導体基体のおもて面側)の表面層には、p型ベース層(第2導電型の第2半導体層)3が選択的に設けられている。p型ベース層3は、例えばアルミニウム(Al)がドーピングされている。
【0031】
p型ベース層3の表面には、n+型ソース領域(第1導電型の第1半導体領域)4およびp+型コンタクト領域(第2導電型の第2半導体領域)5が設けられている。また、n+型ソース領域4およびp+型コンタクト領域5は互いに接する。n+型ソース領域4は、p+型コンタクト領域5の外周に配置されている。
【0032】
また、p型ベース層3の、n型炭化珪素エピタキシャル層2上の部分には、深さ方向にp型ベース層3を貫通しn型炭化珪素エピタキシャル層2に達するn型のJFET(Junction FET)領域11が設けられている。JFET領域11は、n型炭化珪素エピタキシャル層2とともにドリフト領域を構成する。p型ベース層3の、n+型ソース領域4とJFET領域11とに挟まれた部分の表面には、ゲート絶縁膜6を介してゲート電極7が設けられている。ゲート電極7は、ゲート絶縁膜6を介して、JFET領域11の表面に設けられていてもよい。
【0033】
図1では、1つのMOS構造のみを図示しているが、複数のMOS構造が並列に配置されていてもよい。
【0034】
層間絶縁膜(不図示)は、炭化珪素半導体基体のおもて面側の全面に、ゲート電極7を覆うように設けられている。ソース電極(第1電極)8は、層間絶縁膜に開口されたコンタクトホールを介して、n+型ソース領域4およびp+型コンタクト領域5に接する。ソース電極8は、層間絶縁膜によって、ゲート電極7と電気的に絶縁されている。ソース電極8上には、電極パッド(不図示)が設けられている。
【0035】
ここで、ゲート絶縁膜6と対向する領域の近傍にライフタイムキラー領域10が設けられている。ライフタイムキラー領域10は、JFET領域11側に幅が広がってもよい。JFET領域11側に幅を広げることで、ライフタイムが低減されていない電流パス(例えば、図1のB)の幅を狭くすることができる。またライフタイムキラー領域10は、n+型ソース領域4側に幅が広がってもよい。ただし、内蔵PNダイオードの順方向電圧Vfが増加するため、p+型コンタクト領域5と深さ方向に対向する領域に存在しないことが好ましい。ライフタイムキラー領域10の表面(ゲート側の面)は、n型炭化珪素エピタキシャル層2とp型ベース層3との界面に接する、もしくはこれよりゲート側にある。ただし、チャネルが形成されるゲート絶縁膜6直下にはライフタイムキラー領域10は形成されないことが好ましい。また、ライフタイムキラー領域10は、n型炭化珪素エピタキシャル層2とp型ベース層3との界面を含むように構成することが好ましいが、含んでいなくとも構わない。つまり、ライフタイムキラー領域10は、n型炭化珪素エピタキシャル層2とp型ベース層3との界面よりゲート側のみに設けられていてもよい。また、ライフタイムキラー領域10は、n型炭化珪素エピタキシャル層2の内部に、p型ベース層3と接するように設けられてもよい。さらには、ライフタイムキラー領域10の底面をn+型炭化珪素基板1に接するように構成することも好ましい。
【0036】
ライフタイムキラー領域10は、少数キャリアに対する再結合中心となるライフタイムキラーを注入した領域である。ライフタイムキラーは、例えば、プロトン(H+)やヘリウム(He)によってできる格子欠陥である。また、ライフタイムキラーは、ライフタイムを減少させる元素、例えば金(Au)や白金(Pt)であってもよい。
【0037】
このライフタイムキラー領域10により、少数キャリアが減少するため、ゲート電極7の直下を通りp型ベース層3とn型炭化珪素エピタキシャル層2の間のPN接合に流れる電流(例えば、図1のB)が減少する。
【0038】
また、図2および図3は、ライフタイムキラー領域の他の構造を示す断面図である。図2に示すように、ライフタイムキラー領域10は、ゲート絶縁膜6と対向する領域に設けられてもよい。図2では、図1よりJFET領域11側に幅がさらに広がり、隣り合うライフタイムキラー領域10が接続する。この場合、ライフタイムキラー領域10が広くなるため、p型ベース層3とn型炭化珪素エピタキシャル層2の間のPN接合に流れる電流をさらに減少させることができる。
【0039】
また、図3に示すように、ライフタイムキラー領域10の表面が、炭化珪素半導体基体のおもて面と同じ位置であってもよい。この場合、ライフタイムキラー領域10がさらに広くなるため、p型ベース層3とn型炭化珪素エピタキシャル層2の間のPN接合に流れる電流を図2の場合よりも減少させることができる。また、この場合、MOSFETがオン時に電流が流れる領域もライフタイムキラー領域10に含まれるが、ライフタイムキラーは少数キャリアを減少させるのみであるため、オン時に流れる電流に大きな影響を及ぼすことはない。
【0040】
(実施の形態にかかる炭化珪素半導体装置の製造方法)
次に、実施の形態にかかる炭化珪素半導体装置の製造方法について、例えば1200Vの耐圧クラスのMOSFETを作成する場合を例に説明する。図4〜7は、実施の形態にかかる炭化珪素半導体装置の製造途中の状態を示す断面図である。まず、例えば2×1019/cm3程度の不純物濃度で窒素がドーピングされたn+型炭化珪素基板1を用意する。n+型炭化珪素基板1は、主面が例えば、<11−20>方向に4度程度のオフ角を有する(000−1)面であってもよい。次に、n+型炭化珪素基板1の(000−1)面上に、1.0×1016/cm3の不純物濃度で窒素がドーピングされた厚さ10μm程度のn型炭化珪素エピタキシャル層2を成長させる。ここで、図4に示される構造となる。
【0041】
次に、フォトリソグラフィおよびエッチングによりイオン注入用の酸化膜マスクを形成し、イオン注入によってn型炭化珪素エピタキシャル層2の表面層に、p型ベース層3を選択的に形成する。このイオン注入では、例えば、ドーパントをアルミニウムとし、p+型ベース層3の不純物濃度が2.0×1016/cm3となるようにドーズ量を設定してもよい。ここで、図5に示される構造となる。
【0042】
次に、フォトリソグラフィおよびイオン注入によって、p型ベース層3の表面層に、n+型ソース領域4を選択的に形成する。次に、フォトリソグラフィおよびイオン注入によって、p型ベース層3の表面層に、p+型コンタクト領域5を選択的に形成する。ここで、図6に示される構造となる。
【0043】
p型ベース層3、n+型ソース領域4、p+型コンタクト領域5を活性化させるための熱処理(アニール)を行う。このときの熱処理温度および熱処理時間は、それぞれ1620℃および10分間であってもよい。
【0044】
p型ベース層3、n+型ソース領域4、p+型コンタクト領域5を形成する順序は種々変更可能である。
【0045】
次に、炭化珪素半導体基体のおもて面側を熱酸化し、ゲート絶縁膜6を100nmの厚さで形成する。この熱酸化は、酸素(O2)と水素(H2)の混合雰囲気中において1000℃程度の温度の熱処理によって行ってもよい。これにより、p型ベース層3およびn型炭化珪素エピタキシャル層2の表面に形成された各領域がゲート絶縁膜6で覆われる。
【0046】
次に、ゲート絶縁膜6上に、ゲート電極7として、例えばリン(P)かボロン(B)がドープされた多結晶シリコン層(ポリシリコン(poly−Si)層)を形成する。次に、多結晶シリコン層をパターニングして選択的に除去し、p型ベース層3の、n+型ソース領域4とJFET領域11とに挟まれた部分上に多結晶シリコン層を残す。このとき、JFET領域11上に多結晶シリコン層を残してもよい。
【0047】
次に、ゲート絶縁膜6を覆うように、層間絶縁膜として例えばリンガラス(PSG:Phospho Silicate Glass)を成膜する。層間絶縁膜の厚さは1.0μmであってもよい。次に、層間絶縁膜およびゲート絶縁膜6をパターニングして選択的に除去してコンタクトホールを形成し、n+型ソース領域4およびp+型コンタクト領域5を露出させる。次に、層間絶縁膜を平坦化するための熱処理(リフロー)を行う。
【0048】
次に、層間絶縁膜の表面に、ソース電極8を成膜する。このとき、コンタクトホール内にもソース電極8を埋め込み、n+型ソース領域4およびp+型コンタクト領域5とソース電極8とを接触させる。ソース電極8の層間絶縁膜上の部分の厚さは、例えば5μmであってもよい。ソース電極8は、例えば1%のシリコンを含んだアルミニウム(Al−Si)で形成してもよい。次に、コンタクトホール以外のソース電極8を選択的に除去する。ここで、図7に示される構造となる。
【0049】
次に、n+型炭化珪素基板1の表面(炭化珪素半導体基体の裏面)に、ドレイン電極9として例えばニッケル膜を成膜する。そして、例えば970℃の温度で熱処理し、n+型炭化珪素基板1とドレイン電極9とのオーミック接合を形成する。次に、例えばスパッタ法によって、炭化珪素半導体基体のおもて面の全面にソース電極8および層間絶縁膜を覆うように、電極パッドを堆積する。電極パッドの層間絶縁膜上の部分の厚さは、例えば5μmであってもよい。電極パッドは、例えば、1%の割合でシリコンを含んだアルミニウム(Al−Si)で形成してもよい。次に、電極パッドを選択的に除去する。
【0050】
次に、ドレイン電極9の表面に、ドレイン電極パッドとして例えばチタン(Ti)、ニッケル(Ni)および金(Au)をこの順に成膜する。次に、保護膜を表面に形成してもよい。
【0051】
次に、n型炭化珪素エピタキシャル層2とp型ベース層3との界面で、ゲート絶縁膜6と対向する領域の近傍にライフタイムキラーを注入し、ライフタイムキラー領域10を形成する。例えば、フォトリソグラフィおよびエッチングによりイオン注入用の酸化膜マスクを形成し、炭化珪素半導体基体の裏面側からヘリウム、プロトンをイオン注入することにより、ライフタイムキラー領域10を形成する。このライフタイムキラー領域10の形成は、ドレイン電極9を形成するより前に行うことが好ましい。また、ライフタイムキラーの注入は、炭化珪素半導体基体のおもて面側から形成してもよい、この場合、ゲート電極7を形成するより前に行うことが好ましい。これにより、図1に示すMOSFETが完成する。
【0052】
図8図9は、実施の形態にかかる炭化珪素半導体装置の他の構造を示す断面図である。図8図9は、トレンチ構造を設けた縦型MOSFETである。縦型MOSFETでは、チャネルが基板表面に対して平行に形成されるプレーナー構造よりも基板表面に対して垂直に形成されるトレンチ構造の方が単位面積当たりのセル密度を増やすことができるため、単位面積当たりの電流密度を増やすことができ、コスト面から有利である。
【0053】
図8図9において、炭化珪素半導体基体の第1主面側(p型ベース層3側)には、トレンチ構造が形成されている。具体的には、トレンチ18は、p型ベース層3のn+型炭化珪素基板1側に対して反対側(炭化珪素半導体基体の第1主面側)の表面からp型ベース層3を貫通してn型炭化珪素エピタキシャル層2に達する。トレンチ18の内壁に沿って、トレンチ18の底部および側壁にゲート絶縁膜6が形成されており、トレンチ18内のゲート絶縁膜6の内側にゲート電極7が形成されている。ゲート絶縁膜6によりゲート電極7が、n型炭化珪素エピタキシャル層2およびp型ベース層3と絶縁されている。ゲート電極7の一部は、トレンチ18の上方(ソース電極パッドが設けられている側)からソース電極パッド側に突出していてもよい。
【0054】
n型炭化珪素エピタキシャル層2のn+型炭化珪素基板1側に対して反対側(炭化珪素半導体基体の第1主面側)の表面には、第1p+型ベース領域3aが選択的に設けられている。第1p+型ベース領域3aは、トレンチ18の底部よりもドレイン側に深い位置にまで達している。第1p+型ベース領域3aの下端部(ドレイン側端部)は、トレンチ18の底部よりもドレイン側に位置する。
【0055】
また、n型炭化珪素エピタキシャル層2の内部には、第2p+型領域3bが選択的に設けられている。第2p+型領域3bは、トレンチ18の底に接するように設けられている。第2p+型領域3bは、p型ベース層3とn型炭化珪素エピタキシャル層2との界面よりもドレイン側に深い位置から、n+型炭化珪素基板1とn型炭化珪素エピタキシャル層2との界面に達しない深さで設けられている。
【0056】
また、トレンチ18よりもドレイン側で隣接する第1p+型ベース層3a間をつなぐように、ライフタイムキラー領域10が設けられている。ここで、ライフタイムキラー領域10はp+型コンタクト領域5と深さ方向に対向する領域に存在しないことが好ましいが、平面視においてp+型コンタクト領域5とライフタイムキラー領域10の端部が重なるように配置されていてもよい。また、ライフタイムキラー領域10は、トレンチ18に接触しないことが好ましい。ライフタイムキラー領域10は、n+型ソース領域4側に延在してもよく、n+型ソース領域4と接してもよい。例えば、図9のようにライフタイムキラー領域10を構成してもよい。さらに、n+型炭化珪素基板1側に延在してもよく、n+型炭化珪素基板1と接してもよい。
【0057】
図8図9に示すMOSFETの他の構造は、図1に示すMOSFETの構造と同様であるため、説明を省略する。また、図8図9に示すMOSFETの製造方法は、トレンチ18、ゲート絶縁膜6およびゲート電極7を形成する工程以外は、図1に示すMOSFETの製造方法と同様であるため、詳細な説明を省略する。なお、トレンチ18、ゲート絶縁膜6およびゲート電極7の形成は、例えば、以下のように行う。
【0058】
まず、p型ベース層3の表面(すなわちn+型ソース領域4およびp+型コンタクト領域5の表面)上に、フォトリソグラフィ技術によって所望の開口部を有する図示しないマスクを例えば酸化膜で形成する。そして、この酸化膜をマスクとしてドライエッチング等によってn+型ソース領域4およびp型ベース層3を貫通してn型炭化珪素エピタキシャル層2に達するトレンチ18を形成する。
【0059】
次に、n+型ソース領域4およびp+型コンタクト領域5の表面と、トレンチ18の底部および側壁と、に沿ってゲート絶縁膜6を形成する。このゲート絶縁膜6は、酸素雰囲気中において1000℃程度の温度の熱処理によって熱酸化によって形成してもよい。また、このゲート絶縁膜6は高温酸化(High Temperature Oxide:HTO)等のような化学反応によって堆積する方法で形成してもよい。
【0060】
次に、ゲート絶縁膜6上に、例えばリン原子がドーピングされた多結晶シリコン層を形成する。この多結晶シリコン層はトレンチ18内を埋めるように形成する。この多結晶シリコン層をパターニングして、トレンチ18内部に残すことによって、ゲート電極7が形成される。
【0061】
図8図9に示すMOSFETでも、図1に示すMOSFETと同様に、ライフタイムキラー領域10により、少数キャリアが減少するため、ゲート電極7の近辺を通りp型ベース層3とn型炭化珪素エピタキシャル層2の間のPN接合に流れる電流(例えば、図8図9のC)が減少する。
【0062】
以上、説明したように、実施の形態にかかる半導体装置によれば、少数キャリアに対する再結合中心となるライフタイムキラーを注入したライフタイムキラー領域を設けている。これにより、ソース電極に高電位を印加して、内蔵PNダイオードを駆動した場合、ゲート電極の直下のp型ベース層とn型炭化珪素エピタキシャル層の間のPN接合に流れる電流が減少し、n+型炭化珪素基板とn型炭化珪素エピタキシャル層に結晶欠陥が発生することを抑制することができる。このため、結晶欠陥により半導体装置のオン抵抗が増加することがなく、MOSFETのしきい値電圧Vthと内蔵PNダイオードの順方向電圧Vfの変動を抑えることができ、半導体装置の信頼性を保つことが可能になる。
【0063】
以上において本発明は本発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々変更可能であり、上述した各実施の形態において、例えば各部の寸法や不純物濃度等は要求される仕様等に応じて種々設定される。また、上述した各実施の形態では、MOSFETを例に説明しているが、これに限らず、所定のゲート閾値電圧に基づいてゲート駆動制御されることで電流を導通および遮断する種々な炭化珪素半導体装置にも広く適用可能である。例えば、MOSFETとは異なる導電型の半導体基板を用いることで、IGBTに適用することができる。また、上述した各実施の形態では、ワイドバンドギャップ半導体として炭化珪素を用いた場合を例に説明しているが、炭化珪素以外の例えば窒化ガリウム(GaN)などのワイドバンドギャップ半導体にも適用可能である。また、各実施の形態では第1導電型をn型とし、第2導電型をp型としたが、本発明は第1導電型をp型とし、第2導電型をn型としても同様に成り立つ。
【産業上の利用可能性】
【0064】
以上のように、本発明にかかる半導体装置および半導体装置の製造方法は、電力変換装置や種々の産業用機械などの電源装置などに使用される高耐圧半導体装置に有用である。
【符号の説明】
【0065】
1 n+型炭化珪素基板
2 n型炭化珪素エピタキシャル層
3 p型ベース層
3a 第1p+型ベース層
3b 第2p+型ベース層
4 n+型ソース領域
5 p+型コンタクト領域
6 ゲート絶縁膜
7 ゲート電極
8 ソース電極
9 ドレイン電極
10 ライフタイムキラー領域
11 JFET領域
18 トレンチ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10