(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6903940
(24)【登録日】2021年6月28日
(45)【発行日】2021年7月14日
(54)【発明の名称】配線保護部材および配線保護構造
(51)【国際特許分類】
H05K 7/00 20060101AFI20210701BHJP
H02B 1/20 20060101ALN20210701BHJP
H02B 1/40 20060101ALN20210701BHJP
【FI】
H05K7/00 L
!H02B1/20 G
!H02B1/40 Z
【請求項の数】5
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2017-30550(P2017-30550)
(22)【出願日】2017年2月22日
(65)【公開番号】特開2018-137328(P2018-137328A)
(43)【公開日】2018年8月30日
【審査請求日】2019年12月16日
(73)【特許権者】
【識別番号】000231512
【氏名又は名称】日本精機株式会社
(72)【発明者】
【氏名】内藤 修
(72)【発明者】
【氏名】佐々木 隆
【審査官】
原田 貴志
(56)【参考文献】
【文献】
実開昭59−101477(JP,U)
【文献】
実開昭61−168684(JP,U)
【文献】
特開2015−032618(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H05K 7/00
H02B 1/20
H02B 1/40
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ハウジングに設けられた孔を通して、このハウジングの外部へと引き出されている配線
を保護する配線保護部材であって、
板状の弾性部材からなり、左右非対称のスリットを備え、前記孔の両面に、2枚1組かつ上下同一の向きで貼付けられること
を特徴とする配線保護部材。
【請求項2】
前記スリットは、
前記孔に対応する溝または突条部によって囲まれてなること
を特徴とする請求項1に記載の配線保護部材。
【請求項3】
前記スリットは、
前記配線保護部材の短手方向のほぼ中央に配置され、
長手方向に延伸された直線部と、
前記直線部を中心とする複数の斜線部と、
前記直線部の両端から、この両端をそれぞれ中心として長手方向に突出する半円の外周部
付近まで延伸された複数の直線と、
からなること
を特徴とする請求項1または請求項2に記載の配線保護部材。
【請求項4】
前記スリットは、
前記配線保護部材の短手方向のほぼ中央に配置された点から、
この点を中心とする円の外周部付近まで延伸された複数の直線からなること
を特徴とする請求項1または請求項2に記載の配線保護部材。
【請求項5】
ハウジングに設けられた孔を通して、このハウジングの内部から外部に引き出されてい
る配線を保護する板状の弾性部材からなり、左右非対称のスリットを備えた配線保護部材
が、
前記孔の両面に、2枚1組かつ上下同一の向きで貼付けられること
を特徴とする配線保護構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子機器の配線保護部材として好適である。
【背景技術】
【0002】
電子機器の配線保護部材として、例えば、特許文献1に開示されるものがある。
【0003】
特許文献1に示されるような、配線保護部材は、ケーブルブッシュリングを用いることによって、防水が得られ、解体、再組立を容易にするものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2007−18895号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、配線の本数が多く、太さが異なる場合、特許文献1で開示された保護構造では隙間が生じるなど、改善の余地があった。
【0006】
本発明は、上記問題点に鑑みてなされたものであり、配線の本数が多く、太さが異なる場合であっても、隙間が生じにくい配線保護部材を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係る配線保護部材10,110は、
ハウジング2に設けられた孔5,5aを通して、このハウジング2の外部へと引き出されている配線7を保護するものであって、
板状の弾性部材からなり、左右非対称のスリット20,120を備えたこと
を特徴とする
【0008】
スリット20,120は、
孔5,5aに対応する溝11,111または突条部によって囲まれてなること
を特徴とする。
【0009】
スリット20は、
配線保護部材10の短手方向のほぼ中央に配置され、
長手方向に延伸された直線部21と、
直線部21を中心とする複数の斜線部22と、
直線部21の両端12a,13aから、この両端12a,13aをそれぞれ中心として長手方向に突出する半円12,13の外周部付近まで延伸された複数の直線23,24と、
からなること
を特徴とする。
【0010】
スリット120は、
配線保護部材110の短手方向のほぼ中央に配置された点112a,113aから、
この点112a,113aを中心とする円112,113の中心から外周部付近まで延伸された複数の直線121,122からなること
を特徴とする。
【0011】
本発明の配線保護構造は、
ハウジング2に設けられた孔5,5aを通して、このハウジング2の内部から外部に引き出されている配線7を保護する板状の弾性部材からなり、左右非対称のスリット20を備えた配線保護部材10,110を、
孔5,5aの両面に、孔5,5aに対する上下方向と貼り付け面を同一方向として備えること
を特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、配線の本数が多く、太さが異なる場合であっても、隙間が生じにくい配線保護部材を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図2】ハウジングと孔の要部拡大図(第1実施形態)。
【
図3】(a)配線保護部材を表面から見た図、(b)同配線保護部材を裏面から見た図(第1実施形態)。
【
図4】(a)ハウジングの片面に配線保護部材を貼付した状態を示す図、(b)(a)をハウジングの逆側の面からみた図、(c)ハウジングの両面に配線保護部材を貼付した状態を示す図(第1実施形態)。
【
図5】ハウジングと孔の要部拡大図(第2実施形態)。
【
図6】(a)配線保護部材を表面から見た図、(b)同配線保護部材を裏面から見た図(第2実施形態)。
【
図7】(a)ハウジングの片面に配線保護部材を貼付した状態を示す図、(b)(a)をハウジングの逆側の面からみた図、(c)ハウジングの両面に配線保護部材を貼付した状態を示す図(第2実施形態)。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下に、本発明の第1実施形態に係る配線保護部材を添付図面に基づいて説明する。
図のU,D,R,Lはそれぞれ上、下、右、左を示している。また、配線保護部材の短手方向は上下方向、長手方向は左右方向である。
【0015】
本発明による電子機器の配線保護部材は、例えば表面側の軟質ウレタンフォームと裏面側のPET(Polyethylene terephthalate)基材とが積層された弾性を有する薄板状のシート材であり、さらに積層状態で後述するスリットが加工処理される。この配線保護部材は、電子機器のハウジングに設けられた配線引き出し穴に取り付けられる。軟質ウレタンフォームは、モールドなどの方法によって形成されている。この配線保護部材に軟質ウレタンフォームを用いることにより、配線が該配線引き出し穴の縁部に直接触れ難くなるため、配線が傷つきにくい。また、裏面側にPET基材を用いることにより、配線保護部材の伸縮を抑制し、ハウジングへの接着による取り付けが容易となる。なお、本実施形態では、ビルの壁面などに取り付けられる操作パネルユニット1の配線保護部材10について、以下に説明する。
【0016】
操作パネルユニット1は、
図1(a)に示すように、ハウジング2と液晶表示素子3と操作スイッチ4、また
図2に示すように、ハウジング2の底面や側面に長穴形状の配線引き出し穴(孔)5を備え、ビルの壁面Wに取り付けられている。
【0017】
操作パネルユニット1のハウジング2内には、
図1(b)に示すように、回路基板6が配設されている。回路基板6は、例えば操作パネルユニット1の図示しないスイッチ素子や、液晶表示素子3、これらを駆動したり信号を入出力するための図示しない配線や電子部品を実装するもので、ガラスエポキシ樹脂等を基材として銅箔パターンを形成する硬質プリント基板を適用できる。また、この回路基板6には、外部に引き出される電源や信号線などの複数の配線7が設けられている。
【0018】
複数の配線7は、配線引き出し穴5に取り付けられた配線保護部材10を通してハウジング2外部に引き出され、壁面W内に設けられたコンセントの端子や、他の機器に接続されるコネクタなどに取り付けられる。
【0019】
配線保護部材10は、
図3に示すように、裏面(貼付面)側に、配線引き出し穴5と同形状の長穴状の溝11に囲まれた左右非対称のスリット20を備えている。スリット20は、配線保護部材10の短手方向のほぼ中央に配置され、溝11両端の半円12,13の中心12a,13aを結ぶ直線部21と、直線部21と交差する複数の斜線部22と、中心12a,13aから半円12,13の外周部付近まで延伸された複数の直線23,24から形成されている。なお、直線部21の両端は12a,13aである。
【0020】
配線保護部材10は、溝11の外側部分に両面テープ(接着シート)が貼付され、
図4に示すように、配線引き出し穴5と溝11が重なるように、配線引き出し穴5の両面に2枚1組かつ上下同一の向きで張り付けられる。また、配線保護部材10の端部には、左右何れかの短辺に切り欠き部14が形成され、配線保護部材10の左右方向を識別可能にしている。この切り欠き部14は、配線保護部材10のうち何れかの角部を切り欠いて形成することもできる。また、ハウジング2側に、この切り欠き部14に対応する矢印などマークが形成されると、より判別しやすい。
【0021】
板状の弾性部材に左右非対称のスリット20を設けることによって、配線の本数が多く、太さが異なる場合であっても、スリット20によって開口面積を抑えることができる。したがって、配線保護部材10は隙間が生じにくい。
【0022】
また、左右非対称のスリット20を備えた配線保護部材10を配線引き出し穴5の両面に貼付することによって、スリットの位置が異なるため、埃や虫などの異物がハウジング2内部へ侵入することを抑える効果が期待できる。また、両面に配線保護部材10を設けることで、配線引き出し穴5の両面側の縁部と配線7とが接触し難くなる。
【0023】
以下、
図5から
図7を用いて、本発明の第2実施形態を説明する。
【0024】
ハウジング2aには、2つの配線引き出し穴(孔)5a(左:5a1,右:5a2)が設けられている。
配線保護部材110は、
図6に示すように、裏面(貼付面)側に、配線引き出し穴5aと同形状の円形状の溝111(左:112,右:113)に囲まれた左右非対称のスリット120を備えている。スリット120は、配線保護部材110の短手方向の左右に配置され、溝111を構成する左右の円112,113の中心(点)112a,113aによって定まる円(同心円)112,113の外周部付近まで放射状に延伸された同じ長さの複数の直線121,122から形成されている。即ち、配線引き出し穴5aよりも径小な大きさで、1点(中心点)から半径方向に延びる複数の直線形状のスリットが形成される。
【0025】
配線保護部材110は、溝111の外側部分に両面テープが貼付され、
図7に示すように、配線引き出し穴5aと溝111が重なるように、配線引き出し穴5aの両面に2枚1組かつ上下同一の向きで張り付けられる。この際、複数の直線121と複数の直線122とが重ならない位置となる。
【0026】
第2実施形態においても、第1実施形態の場合と同様の効果が期待できる。
【0027】
本発明は、上記実施形態に限定するものではなく、種々の変形が可能である。
【0028】
上述実施形態では、スリット20,120の周囲を溝11,111によって囲う場合を例示したが、配線保護部材10,110貼付時の位置決めが出来ればよく、スリットの周囲を突条部で囲むことで、同様の効果が期待できる。
【0029】
上述実施形態では、スリット形状を明確にするため、点を中心とした半円または円の外周部周辺まで延伸する直線という説明を用いたが、半円や円は必ずしも実在する必要はなく、仮想的な半円や円の外周部周辺まで延伸する直線であっても、同様の効果が期待できる。
【0030】
上述実施形態では配線保護部材を両面テープによって貼付したが、接着剤によって貼付しても差し支えない。
【0031】
上述実施形態では配線保護部材の材質が軟質ウレタンフォームとPET基材からなる場合を例示したが、ハウジングと配線などを緩衝するものであれば良く、例えば材質が合成ゴムによる場合であっても、同様の効果が期待できる。
【0032】
上述実施形態では、操作スイッチを備えた電子機器の操作パネルユニットに用いるものとしたが、これに限定するものではなく、他のユニット、例えばタッチパネルを備えた電子機器の操作パネルユニットに用いても差し支えない。
【0033】
また、添付図面ではスリットが1つまたは2つの場合を例示したが、スリットの数は任意である。
【産業上の利用可能性】
【0034】
本発明は、電子機器の配線保護部材として好適である。
【符号の説明】
【0035】
1 操作パネルユニット
2 ハウジング
2a ハウジング
3 液晶表示素子
4 操作スイッチ
5 配線引き出し穴(孔)
5a 敗戦引き出し穴(孔)
5a1 穴
5a2 穴
6 回路基板
7 配線
10 配線保護部材
11 溝
12 半円
12a 中心
13 半円
13a 中心
14 切り欠き部
20 スリット
21 直線部
22 斜線部
23 直線
24 直線
110 配線保護部材
111 溝
112 円
112a 中心(点)
113 円
113a 中心(点)
114 切り欠き部
120 スリット
121 直線
122 直線
U 上
D 下
R 右
L 左
W 壁面