(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、好ましい実施形態について説明する。但し、以下の実施形態は単なる例示であり、本発明は以下の実施形態に限定されるものではない。また、各図面において、実質的に同一の機能を有する部材は同一の符号で参照する場合がある。
【0016】
(ガラスロービング)
図1は、本発明の一実施形態に係るガラスロービングを示す模式的斜視図である。
図1に示すように、ガラスロービング10は、ガラスストランド11が巻き取られてなる。より具体的に、ガラスロービング10は、ガラスストランド11が層状になるように重ねて巻き取られた円筒形状の構造を有している。
【0017】
本発明においては、以下に示すイーブンの試験を行ったときに、モノフィラメント11aの垂れ下がり量が、40mm以下である。
【0018】
以下、イーブンの試験方法について、
図2(a)及び(b)を参照して説明する。
【0019】
まず、ガラスロービング10から引き出されたガラスストランド11を所定の長さ(2〜2.2m程度)に切断する。続いて、
図2(a)に示すように、支持部材21a,21bを水平方向xにおいて2m離間するように配置する。この際、ガラスストランド11の両端側は、接着剤などを用いて支持部材21a,21bに固定する。なお、支持部材21a,21bは、水平方向xにおいて、同じ高さ位置で互いに対向するように設けられており、かつガラスストランド11を水平に保持できるように配置されている。
【0020】
次に、
図2(b)に示すように、支持部材21a,21bに固定されたガラスストランド11を解繊することにより、モノフィラメント化する。続いて、モノフィラメント化した状態で、支持部材21a,21bにおいてガラスストランド11が接着剤により固定された位置同士を結んだ直線に対する、モノフィラメント11aの垂れ下がり量が最大値となる位置で垂れ下がり量を測定する。なお、その測定位置は、ほとんどの場合、支持部材21a,21b間の水平方向xにおける略中央部になる。モノフィラメント11aの垂れ下がり量は、この略中央部において、水平方向xに直交する方向yにおける垂れ下がり量である。なお、複数本のモノフィラメント11aが存在しているが、モノフィラメント11aの垂れ下がり量は、複数本のモノフィラメント11aのうち、最も垂れ下がったモノフィラメント11aの垂れ下がり量Lであるものとする。
【0021】
ガラスストランド11の解繊とは、互いに集束剤で結合していたモノフィラメント11aを手作業により一本ずつに分離し、目視でガラスストランド11全体が解れたと認識された状態をいう。モノフィラメント11aの垂れ下がり量の測定において、1回目解繊後の垂れ下がり量と、2回目解繊後の垂れ下がり量とが同じであれば、その値を垂れ下がり量Lとし、異なる場合は、再度解繊を行い、垂れ下がり量が前回測定値と同じ値になるまで繰り返し、最後に測定した値を垂れ下がり量Lとする。
【0022】
このような方法で測定されたガラスストランド11の垂れ下がり量の最大値は、好ましくは20mm以上、より好ましくは35mm以下である。
【0023】
ガラスストランド11の垂れ下がり量の最大値が上述の上限値以下である場合、各モノフィラメント11aの長さの差が小さい。そのため、樹脂と複合化してガラス繊維含有ペレットを製造する際に、ガラスストランド11の断線を少なくすることができる。
【0024】
図1に戻り、ガラスロービング10の内径Dは、140〜250mmの範囲内にあることが好ましい。ガラスロービング10の内径Dは、より好ましくは230mm以下、さらに好ましくは200mm以下である。
【0025】
巻き取られるガラスストランド11を構成するモノフィラメントの長さが揃うことにより、ガラスストランド11の断線が少なくなる。モノフィラメントの長さが揃うためには、ガラスストランド11が、コレットに規則正しく、かつガラスストランド11が、緩みが無くコレットに巻き取られることが必要である。
【0026】
ガラスストランド11を構成するモノフィラメントの本数が多く、かつモノフィラメントの繊維径が小さくなるにつれて、モノフィラメントの長さが不揃いになりやすい。
【0027】
ガラスロービング10の内径Dが上述の下限値以上である場合、ガラスロービング10を製造する際におけるコレットの角速度が小さくてもコレットにガラスストランド11を巻き取ることができる。角速度が小さいと、ガラスストランド11を巻き取る際に、コレット上でガラスストランド11が蛇行しにくくなるため、ガラスストランド11がより一層規則正しく巻き取られる。ガラスストランド11がより一層規則正しく巻き取られることで、樹脂と複合化してガラス繊維含有ペレットを製造する際に、ガラスストランド11の断線をより一層生じ難くできる。加えて、ガラスストランド11が規則正しく巻き取られることで、機械的強度により一層優れたガラス繊維強化複合樹脂材が得られやすくなる。
【0028】
また、ガラスロービング10の内径Dが上述の上限値以下である場合、ガラスロービング10を製造する際に、ガラスストランド11に適度なテンションが加わるため、ガラスストランド11をコレットに巻き取る際に、緩みが生じにくく、ガラスストランド11がより一層規則正しく巻き取られる。ガラスストランド11がより一層規則正しく巻き取られることで、樹脂と複合化してガラス繊維含有ペレットを製造する際に、ガラスストランド11の断線をより一層少なくすることができる。加えて、ガラスストランド11がより一層規則正しく巻き取られることで、機械的強度により一層優れたガラス繊維強化複合樹脂材が得られやすくなる。
【0029】
ガラスロービング10を構成しているガラスストランド11は、1900〜10000本のモノフィラメントと、モノフィラメントの表面を覆っている被膜とを備えることが好ましい。
【0030】
モノフィラメントの本数は、より好ましくは6000本以下、さらに好ましくは4000本以下である。モノフィラメントの本数が、上述の下限値以上である場合、より一層機械的強度に優れたガラス繊維強化複合樹脂材を得ることができる。また、モノフィラメントは、ブッシングの底部に設けられたノズルから引き出されるが、モノフィラメントの本数が増えると、コレットと各ノズルの距離に偏差が生じるため、各々のモノフィラメントの長さに偏差が生じやすい。モノフィラメントの本数が、上述の上限値以下である場合、各モノフィラメントの長さが揃いやすい。そのため、樹脂と複合化してガラス繊維含有ペレットを製造する際に、ガラスストランド11の断線をより一層少なくすることができる。
【0031】
モノフィラメントの具体的組成は、特に限定されないが、例えば、Eガラス、Sガラス、Dガラス、ARガラス等が用いられる。これらの中でも、Eガラスは、安価であり、且つ機械的強度により一層優れたガラス繊維強化複合樹脂材を得ることができるため好ましい。また、Sガラスは、機械的強度にさらに一層優れたガラス繊維強化複合樹脂材を得ることができるため好ましい。
【0032】
ガラスストランド11は、このようなモノフィラメントの表面に集束剤を塗布することにより集束される。従って、ガラスストランド11は、複数本のモノフィラメントの集束体である。なお、集束剤の塗布後、100〜130℃の温度範囲で、1〜24時間程度乾燥させることにより被膜が形成される。
【0033】
被膜の材料は、特に限定されないが、熱可塑性樹脂又は熱硬化性樹脂であることが好ましい。熱可塑性樹脂としては、例えば、ポリプロピレン樹脂、変性ポリプロピレン樹脂、ナイロン樹脂、ポリフェニレンスルフィド樹脂、ポリウレタン樹脂などが挙げられる。変性ポリプロピレン樹脂としては、マレイン酸変性ポリプロピレン樹脂などが挙げられる。熱硬化性樹脂としては、例えば、ポリ酢酸ビニル、ポリエステル、エポキシ樹脂などが挙げられる。なお、樹脂と複合化してガラス繊維強化複合樹脂材を製造する場合、被膜の材料は、複合化する樹脂との親和性を考慮して適宜選択することができる。
【0034】
本発明において、モノフィラメントの繊維径は、6〜24μmの範囲内にあることが好ましい。モノフィラメントの繊維径は、より好ましくは20μm以下、さらに好ましくは17μm以下である。モノフィラメントの繊維径が、上述の下限値以上である場合、樹脂と複合化してガラス繊維含有ペレットを製造する際に、ガラスストランド11の断線をより一層少なくすることができる。モノフィラメントの繊維径が、上述の上限値以下である場合、より一層機械的強度に優れたガラス繊維強化複合樹脂材が得られやすくなる。
【0035】
ガラスストランド11の番手は、特に限定されないが、好ましくは600tex以上、より好ましくは1200tex以上、好ましくは3000tex以下、より好ましくは2400tex以下である。ガラスストランド11の番手が上述の下限値以上である場合、樹脂と複合化してガラス繊維含有ペレットを製造する際に、ガラスストランド11の断線をより一層少なくすることができる。ガラスストランド11の番手が、上述の上限値以下である場合、より一層機械的強度に優れたガラス繊維強化複合樹脂材を得ることができる。
【0036】
以下、ガラスロービング10などの本発明のガラスロービングの製造方法について説明する。
【0037】
(ガラスロービングの製造方法)
本発明のガラスロービングは、例えば、以下の方法により製造することができる。
【0038】
まず、ガラス溶融炉内に投入されたガラス原料を溶融して溶融ガラスとする。この溶融ガラスを均質な状態とした後に、白金製のブッシングから引き出す。その後、引き出された溶融ガラスを冷却して複数本のモノフィラメントを形成する。この際、1900個〜10000個のノズルを有するブッシングを用い、1900〜10000本のモノフィラメントを形成することが好ましい。
【0039】
次に、得られた複数本のモノフィラメントの表面に、集束剤を塗布する。集束剤が均等に塗布された状態で、複数本のモノフィラメントを、集束シューにより引き揃え、集束する。それによって、ガラスストランドを得る。なお、モノフィラメントの繊維径は、6〜24μmの範囲内となるように調整することが好ましい。モノフィラメントの繊維径は、例えば、巻取り速度や溶融ガラスの粘度等を変更することにより調整することができる。
【0040】
次に、得られたガラスストランドを回転するコレットに綾をかけながら巻き取り、巻回体を作製する。続いて、コレットから巻回体を外し、集束剤を乾燥させ、ガラスストランドを構成するモノフィラメントの表面に被膜を形成し、ガラスロービングを得る。なお、得られた数個のガラスロービングから解舒されたガラスストランドを一緒に束ねて巻き取ることによりガラスロービングとしてもよい。また、ガラスストランドを巻き取る際のコレットとしては、直径が140〜250mmのコレットが用いられる。
【0041】
上記のようにして作製されたガラスロービングは、巻回形状に巻き取られ、その形状でストックし、必要に応じて使用することができる。巻回形状に巻き取られたガラスロービングは、防塵や汚れの防止や、繊維表面の保護などの目的のため、有機フィルム材、例えばシュリンク包装やストレッチフィルム等、用途に応じた包装を施して保管することができる。複数段に積層した状態で保管してもよい。
【0042】
モノフィラメントを集束する際の集束剤としては、特に限定されないが、例えば、熱可塑性樹脂又は熱硬化性樹脂を用いることができる。熱可塑性樹脂としては、例えば、ポリプロピレン樹脂、変性ポリプロピレン樹脂、ポリウレタン樹脂、ナイロン樹脂、ポリフェニレンスルフィド樹脂などが挙げられる。変性ポリプロピレン樹脂としては、マレイン酸変性ポリプロピレン樹脂などが挙げられる。熱硬化性樹脂としては、例えば、ポリ酢酸ビニル、ポリエステル、エポキシ樹脂などが挙げられる。
【0043】
集束剤は、上記成分以外に、例えばシランカップリング剤を含んでいてもよい。上記シランカップリング剤としては、具体的には、アミノシラン、エポキシシラン、ビニルシラン、アクリルシラン、クロルシラン、メルカプトシラン、ウレイドシランなどが使用できる。なお、シランカップリング剤を添加することで、ガラスストランド表面の集束剤との反応性を改善でき、ガラス繊維強化複合樹脂材における引張強度等の機械的強度をさらに一層向上させることができる。また、上記集束剤中には、上述のシランカップリング剤以外に、潤滑剤、ノニオン系の界面活性剤、帯電防止剤等の各成分を含むことができ、それぞれの成分の配合比は、必要に応じて決定すればよい。
【0044】
集束剤の塗布量は、ガラスストランドの強熱減量が0.5〜2.0質量%となるように調整することが好ましい。なお、強熱減量は、JIS R3420(2013年)に従い測定できる。
【0045】
本発明においては、ガラスストランドを巻き取る際に、直径が140〜250mmのコレットが用いられる。コレットの直径は、好ましくは230mm以下、より好ましくは200mm以下である。
【0046】
本発明においては、コレットの直径が上記の範囲内にあるので、各モノフィラメントの長さが揃いやすい。そのため、樹脂と複合化してガラス繊維含有ペレットを製造する際に、ガラスストランドの断線をより一層少なくすることができる。また、ブッシングのノズルの個数を多くしても、モノフィラメントの長さが揃いやすくなり、形成されるモノフィラメントの本数を多くすることができる。ノズルを多くするとブッシングの端部と中央部より引き出されたモノフィラメントの長さが、コレット上でのガラスストランドの蛇行や、ガラスストランドの緩みの影響を受けて不揃いになり易いが、コレットの直径を上記の範囲内とすることで、各モノフィラメントの長さを均一にすることができるためである。このように、本発明においては、モノフィラメントの本数を多くすることができるため、樹脂と複合化してより一層機械的強度に優れたガラス繊維強化複合樹脂材を得ることもできる。また、後述するガラス繊維含有ペレット20を生産する際の生産性をより一層高めることができる。この際、ガラスストランドの番手を大きくすることにより、より一層生産性を高めることができる。
【0047】
(ガラス繊維強化複合樹脂材)
本発明のガラス繊維強化複合樹脂材は、本発明のガラスロービングを構成しているガラスストランドと、熱可塑性樹脂又は熱硬化性樹脂とを含む。熱可塑性樹脂としては、例えば、ポリプロピレン樹脂、変性ポリプロピレン樹脂、ナイロン樹脂、ポリフェニレンスルフィド樹脂、ポリウレタン樹脂などが挙げられる。変性ポリプロピレン樹脂としては、マレイン酸変性ポリプロピレン樹脂、などが挙げられる。熱硬化性樹脂としては、例えば、ポリ酢酸ビニル、ポリエステル、エポキシ樹脂、などが挙げられる。
【0048】
ガラス繊維強化複合樹脂材中におけるガラスストランドの含有量は、熱可塑性樹脂又は熱硬化性樹脂100質量部に対し、好ましくは30質量部以上、好ましくは70質量部以下である。ガラスストランドの含有量が上記範囲内にある場合、ガラス繊維強化複合樹脂材の機械的強度をより一層高めることができる。
【0049】
また、ガラスストランドは、本発明のガラスロービングからカットされて用いられることが望ましい。ガラスストランドのカット長としては、特に限定されないが、10mm以上、20mm以下であることが好ましい。ガラスストランドのカット長が上記範囲内にある場合、ガラス繊維強化複合樹脂材の機械的強度をより一層高めることができる。
【0050】
以下、
図3を参照して、本発明に係るガラス繊維強化複合樹脂材の製造方法の一例について説明する。
【0051】
まず、
図3に示すように、ガラスロービング10の内層からガラスストランド11を引き出し、テンションバー12aを3本備えた解繊装置12に搬送する。ガラスストランド11は、解繊装置12により解繊される。ガラスストランド11は、解繊されることによって、内部に樹脂を含浸し易い状態となる。
【0052】
次に、解繊されたガラスストランド11を、含浸装置13に搬送する。なお、含浸装置13においては、予め樹脂Bを投入口13aから投入し加熱することにより加熱溶融体13bを作製しておく。ガラスストランド11は、引き取り機15によって引き取られることにより加熱溶融体13b内に搬送される。それによって、ガラスストランド11に樹脂を含浸させる。
【0053】
樹脂を含浸させたガラスストランド11は、冷却装置14に搬送する。それによって、ガラスストランド11に含浸させた樹脂を固化させる。含浸させた樹脂が固化されたガラスストランド11をペレターザー16に搬送し、複数の切断刃が放射状に配設された切断ロール16aにより、所定の長さにカットする。それによって、ガラス繊維含有ペレット20を得る。
【0054】
得られたガラス繊維含有ペレット20は、射出成形などによりガラス繊維強化複合樹脂材に成形される。この際、ガラス繊維含有ペレット20にさらに樹脂を加えて混錬した後、成形することによりガラス繊維強化複合樹脂材を得てもよい。
【0055】
本発明のガラス繊維強化複合樹脂材は、本発明のガラスロービングを構成しているガラスストランドを含んでいる。そのため、上記の製造工程においてガラス繊維強化複合樹脂材を製造する際に、ガラスストランドの断線が生じ難くできる。このことについては、以下のようにして説明することができる。
【0056】
従来、ガラスロービングから引き出されたガラスストランドを用いて、ガラス繊維強化複合樹脂材を製造する場合、ガラスストランドが加熱溶融体内の出口に設けられたノズルを通過する際に、断線することがあった。これは、ガラスストランドを構成する各モノフィラメントの長さが不揃いであることから、加熱溶融体内のテンションバーでテンションが十分にかからず、ノズル詰まりが生じ、その結果断線が生じるためである。
【0057】
これに対して、本願発明のガラスロービングは、特にイーブンの試験における垂れ下がり量が上記の範囲内にあるため、各モノフィラメントの長さが揃いやすい。そのため、ガラスストランドが加熱溶融体内の出口に設けられたノズルを通過する際に、断線が生じ難い。従って、ガラス繊維含有ペレットの生産性を高めることができ、このことが、ガラス繊維強化複合樹脂材の生産性を高める。
【0058】
以下、本発明について、具体的な実施例に基づいて、さらに詳細に説明する。本発明は、以下の実施例に何ら限定されるものではなく、その要旨を変更しない範囲において適宜変更して実施することが可能である。
【0059】
(実施例1)
まず、集束剤を、集束剤全体に対して、重量平均分子量100000の無水マレイン酸変性ポリプロピレン(以下、変性PP)が2.0質量%、γ−アミノプロピルトリエトキシシラン(以下アミノシラン、信越化学工業株式会社製、商品名「KBE−903」)が0.3質量%、潤滑剤としてのポリエチレンワックスが0.1質量%、潤滑剤としてのテトラエチルペンタアミンとステアリン酸との縮合物(以下TEPA/SA)が0.015質量%となるように、イオン交換水により均質混合して調製した。
【0060】
次に、Eガラスの組成となるように溶融ガラスを、2000個のノズルを有するブッシングから引き出して2000本のモノフィラメントを得た。
【0061】
次に、得られたモノフィラメントの表面にアプリケーターを用いて、予め調製した上記集束剤を強熱減量が0.7質量%となるように調製して塗布し、繊維径が17μmの2000本のモノフィラメントを集束することにより得たガラスストランドを直径が150mmのコレットに巻き取って巻回体を作製した。次いで、作製した巻回体を100℃、20時間の条件で乾燥させてガラスロービングを得た。なお、ガラスストランドの番手は1200texである。
【0062】
次に、
図3に示すように、得られたガラスロービング10の内層からガラスストランド11を引き出し、テンションバー12aを3本備えた解繊装置12に搬送した。それによって、ガラスストランド11を解繊した。
【0063】
次に、解繊されたガラスストランド11を、含浸装置13に搬送した。なお、含浸装置13においては、予めポリプロピレン樹脂材(Exxon Mobile Corporation社製、商品名「EXXELOR PO−1015」)を投入口13aから投入し300℃に加熱することにより加熱溶融体13bを作製した。ガラスストランド11は、引き取り機15によって10m/分の速度で引き取ることにより加熱溶融体13b内に搬送した。それによって、ガラスストランド11にポリプロピレン樹脂材を含浸させた。なお、含浸装置13の出口のノズル径は、2.2mmである。また、含浸装置13内のテンションバーの本数は、3本である。
【0064】
次に、ポリプロピレン樹脂材を含浸させたガラスストランド11を、冷却装置14に搬送した。それによって、ガラスストランド11に含浸させたポリプロピレン樹脂材を水冷により固化させた。含浸させたポリプロピレン樹脂材が固化されたガラスストランド11をペレターザー16に搬送し、複数の切断刃が放射状に配設された切断ロール16aにより、所定の長さ10mmにカットした。それによって、ペレット状のガラス繊維含有ペレットを得た。なお、ガラス繊維含有ペレット中において、ガラスストランドの含有量は50質量%であった。
【0065】
(実施例2)
コレットの直径を200mmに変更したこと以外は、実施例1と同様にして、ガラスロービング及びガラス繊維含有ペレットを得た。
【0066】
(実施例3)
ノズルの個数を4000個とし、モノフィラメントの本数を4000本に変更し、ガラスストランドの番手を2400texに変更したこと以外は、実施例1と同様にして、ガラスロービング及びガラス繊維含有ペレットを得た。
【0067】
(実施例4)
ノズルの個数を4000個とし、モノフィラメントの本数を4000本に変更し、ガラスストランドの番手を2400texに変更したこと以外は、実施例2と同様にして、ガラスロービング及びガラス繊維含有ペレットを得た。
【0068】
(実施例5)
ノズルの個数を6000個とし、モノフィラメントの本数を6000本に変更し、ガラスストランドの番手を2400texに変更したこと以外は、実施例1と同様にして、ガラスロービング及びガラス繊維含有ペレットを得た。
【0069】
(実施例6)
ノズルの個数を6000個とし、モノフィラメントの本数を6000本に変更し、ガラスストランドの番手を2400texに変更したこと以外は、実施例2と同様にして、ガラスロービング及びガラス繊維含有ペレットを得た。
【0070】
(実施例7)
ガラスストランドの番手を1400texとし、モノフィラメントの繊維径を10.5μmに変更したこと以外は、実施例6と同様にして、ガラスロービング及びガラス繊維含有ペレットを得た。
【0071】
(実施例8)
ガラスストランドの番手を600texとし、モノフィラメントの繊維径を7μmに変更したこと以外は、実施例6と同様にして、ガラスロービング及びガラス繊維含有ペレットを得た。
【0072】
(実施例9)
変性PPの代わりに水系高分子であるポリエチレンオキサイドを用いたこと以外は、実施例1と同様にして、ガラスロービング及びガラス繊維含有ペレットを得た。
【0073】
(実施例10)
ガラスストランドの番手を3600texとし、モノフィラメントの繊維径を21μmに変更したこと以外は、実施例3と同様にして、ガラスロービング及びガラス繊維含有ペレットを得た。
【0074】
(比較例1)
コレットの直径を100mmに変更したこと以外は、実施例3と同様にして、ガラスロービング及びガラス繊維含有ペレットを得た。
【0075】
(比較例2)
コレットの直径を300mmに変更したこと以外は、比較例1と同様にして、ガラスロービング及びガラス繊維含有ペレットを得た。
【0076】
(比較例3)
ノズルの個数を6000個とし、モノフィラメントの本数を6000本に変更したこと以外は、比較例1と同様にして、ガラスロービング及びガラス繊維含有ペレットを得た。
【0077】
(比較例4)
ノズルの個数を6000個とし、モノフィラメントの本数を6000本に変更したこと以外は、比較例2と同様にして、ガラスロービング及びガラス繊維含有ペレットを得た。
【0078】
[評価]
実施例1〜10及び比較例1〜4で得られたガラスロービング又はガラス繊維含有ペレットを用いて以下の評価を行なった。
【0079】
[イーブン]
イーブンの試験においては、実施例1〜10及び比較例1〜4で得られたガラスロービングから引き出されたガラスストランドを切断した。続いて、前述した方法により垂れ下がり量を測定した。結果を下記の表1及び表2に示す。
【0080】
[引張強度]
実施例1〜10及び比較例1〜4で得られたペレット状のガラス繊維含有ペレットとポリプロピレン樹脂材(Exxon Mobile Corporation社製、商品名「EXXELOR PO−1015」)とを混錬し、260℃で射出成形することによりガラス繊維強化複合樹脂材を得た。なお、ポリプロピレン樹脂材は、得られたガラス繊維強化複合樹脂材中におけるガラスストランドの含有量は30質量%となるように添加した。ガラス繊維強化複合樹脂材の引張強度は、インストロン社製の引張試験機により測定した。ガラス繊維強化複合樹脂材の引張強度は、ASTM D638に従い、引張試験片を作製し、作製した引張試験片を用いて、ASTM D638に準拠して測定した。結果を下記の表1及び表2に示す。
【0081】
[断線評価]
実施例1〜10及び比較例1〜4で得られたガラスロービングを用いて、断線評価を行なった。断線評価においては、含浸装置13の出口のノズル径を2.2mmから2.0mmに変更し、テンションバーの本数を3本から6本に変更したこと以外は、上述のガラス繊維強化複合樹脂材の製造方法と同様の方法で製造ラインを稼働させた。稼働後、含浸装置13の出口のノズルにおいて断線が生じるまでの時間を測定した。結果を下記の表1及び表2に示す。
【0084】
表1からも明らかな通り、垂れ下がり量が40mm以下であることにより、ガラスストランドの断線が生じるまでの時間が550秒以上となり、ガラス繊維含有ペレットを製造する際にガラスストランドの断線が少なかった。