(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
トナー粒子と、体積平均一次粒径が80nm以上200nm以下のシリカ粒子を前記トナー粒子に対して0.5質量%以上3.0質量%以下と、負帯電性の潤滑剤粒子Nを前記トナー粒子に対して0.005質量%以上0.5質量%以下と、正帯電性の潤滑剤粒子Pを前記トナー粒子に対して0.001質量%以上0.5質量%以下と、を含有し、
水系分散液中の超音波処理後における、前記シリカ粒子の遊離率s質量%、前記潤滑剤粒子Nの遊離率n質量%、及び前記潤滑剤粒子Pの遊離率p質量%が、式1〜式3を満たし、
前記潤滑剤粒子Pは、脂肪酸金属塩であり、
前記潤滑剤粒子Nは、ポリテトラフルオロエチレンである静電荷像現像用トナー。
式1 5≦s≦50
式2 0.10≦p/s≦0.95
式3 0.10≦n/s≦0.95
前記シリカ粒子の遊離率s質量%、前記潤滑剤粒子Nの遊離率n質量%、及び前記潤滑剤粒子Pの遊離率p質量%が、下記式2−1〜式3−1を満たす請求項1に記載の静電荷像現像用トナー。
式2−1 0.10≦p/s≦0.75
式3−1 0.10≦n/s≦0.75
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、本発明について、一例である実施形態を示し詳細に説明する。
【0025】
<静電荷像現像用トナー>
本実施形態に係る静電荷像現像用トナー(単に「トナー」とも称す)は、トナー粒子と、体積平均一次粒径が80nm以上200nm以下のシリカ粒子を前記トナー粒子に対して0.5質量%以上3.0質量%以下と、負帯電性の潤滑剤粒子Nを前記トナー粒子に対して0.005質量%以上0.5質量%以下と、正帯電性の潤滑剤粒子Pを前記トナー粒子に対して0.001質量%以上0.5質量%以下と、を含有する。
そして、水系分散液中の超音波処理後における、前記シリカ粒子の遊離率s質量%、前記潤滑剤粒子Nの遊離率n質量%、及び前記潤滑剤粒子Pの遊離率p質量%が、式1〜式3の関係を満たす。
式1 5≦s≦50
式2 0.10≦p/s≦0.95
式3 0.10≦n/s≦0.95
【0026】
ここで、「粒子の遊離率」は、温度を40℃に設定したトナーの水系分散液を40℃に維持した状態で、出力20W、周波数20kHzの超音波振動を1分間与えたときにおける、トナーに含有される粒子の全体量に対する、トナー粒子から遊離している粒子の割合(質量%)を意味する。
【0027】
粒子の遊離率の測定方法は、以下の通りである。
まず、200mlのガラス瓶に、イオン交換水100ml及び10質量%トリトンX100水溶液(Acros Organics製)5.5mlを添加し、その混合液にトナーを5g添加して、30回攪拌し、1時間以上静置する。
その後、上記混合液を20回攪拌後、超音波ホモジナイザー(SONICS&MATERIALS有限会社製、製品名homogenizer、形式VCX750、CV33)を用いて、出力30%にダイヤルを設定し、以下の条件で超音波エネルギーを1分間付与する。
・振動時間:60秒連続
・振幅:20W(30%)に設定
・振動開始温度:40±1.5℃
・超音波振動子と容器底面との距離:10mm
【0028】
次に、超音波エネルギーを付与した混合液をろ紙〔商品名:定性ろ紙(No.2、110mm)、アドバンテック東洋株式会社製〕を用いて吸引ろ過し、再度イオン交換水で2回洗浄し、遊離した粒子をろ過して除去後、トナーを乾燥させる。
上記の処理により粒子除去後のトナーに残留する粒子量(以下、分散後粒子量と称する)と、上記の粒子を除去する処理を行っていないトナーの粒子量と(以下、分散前粒子量と称する)、を蛍光X線法で定量し、分散前粒子量及び分散後粒子量の値を下記式に代入する。
下記式により算出された値を粒子の遊離率とする。
・式:粒子の遊離率(質量%)=〔(分散前粒子量−分散後粒子量)/分散前粒子量〕×100
【0029】
本実施形態に係るトナーは、上記構成により、高温高湿(例えば、温度29℃、湿度80%RH)の環境下で連続して同一の画像を形成した後に前記同一の画像とは異なるハーフトーン画像を形成したときに、前記同一の画像における画像部と非画像部との境界において生じる画像欠陥の発生を抑制する。その理由は、次の通り推測される。
【0030】
従来から、電子写真方式の画像形成において、像保持体表面の転写残トナーを除去する目的で、クリーニングブレードによるクリーニング手段が用いられている。また、このクリーニングブレードとの接触による像保持体の摩耗を抑制する観点で、トナー中に潤滑剤粒子を添加することが行われている。また、像保持体の表面には放電生成物等の付着物が付着することがあり、これらの付着物を掻き取る機能を付与する観点で、トナー中に研磨剤粒子を添加することも行われている。
【0031】
潤滑剤粒子としては、正(プラス)帯電性の粒子と負(マイナス)帯電性の粒子とが挙げられる。
例えば、トナー粒子が負(マイナス)帯電性である場合に、潤滑剤粒子として脂肪酸金属塩等の正(プラス)帯電性の粒子を用いたとき、この潤滑剤粒子の像保持体表面への供給は非画像部への供給の方がより多くなる。また、潤滑剤粒子として負帯電性の粒子を用いたときであれば、潤滑剤粒子は画像部への供給の方がより多くなる。そして、潤滑剤粒子が多く供給された領域では、他の領域に比べて、潤滑剤粒子が像保持体表面において膜状に引き伸ばされた潤滑剤膜が厚く形成されやすくなる。
【0032】
上記潤滑剤膜は、研磨剤粒子によって掻き取られる。研磨剤粒子としては、体積平均一次粒径が80nm以上200nm以下のシリカ粒子(以下「特定シリカ粒子」ともいう)が挙げられる。特定シリカ粒子は、従来用いられていた大径かつ異形状の研磨剤に比べて、像保持体表面の摩耗量を低減しやすいため用いられる。また、特定シリカ粒子は、トナー粒子から適度に遊離し、像保持体表面に適度に供給されることにより、放電生成物等の付着物の除去を担うほか、潤滑剤粒子が像保持体表面において膜状に引き伸ばされた潤滑剤膜に対しても掻き取りの機能を発揮する。そして、特定シリカ粒子は、適度な研磨力により、像保持体自体の摩耗を抑制しつつ潤滑剤膜の掻き取り機能を発揮する。ただし、シリカ粒子は一般的に負帯電性であるため、トナー粒子が負(マイナス)帯電性である場合、画像部への供給の方がより多くなり、つまり画像部において潤滑剤膜の掻き取り機能がより発揮される。
【0033】
このように、潤滑剤粒子及び研磨剤粒子の帯電性に起因して、潤滑剤粒子及び研磨剤粒子の供給量が、画像部と非画像部とで異なる。そのため、連続して同一の画像(a)を出力した場合、前記画像(a)の非画像部と画像部との間で潤滑剤膜の形成及び掻き取りの進行度合いに差が生じ、画像部と非画像部との境界に段差が発生しやすくなる。そして、前記段差が発生した後に前記画像(a)とは異なるハーフトーン画像(b)を出力すると、前記段差の影響による画像欠陥(例えば、白抜け、色筋等)が発生することがある。
【0034】
特に、高温高湿(例えば、温度29℃、湿度80%RH)の環境下においては、連続して同一の画像(a)を出力した場合における画像部と非画像部との境界における段差に起因する画像欠陥の発生を抑制することが難しい。
例えば、研磨剤粒子として特定シリカ粒子を用い、潤滑剤粒子として正帯電性の粒子と負帯電性の粒子とを併用した上で、各粒子の添加量を調整することで、画像部と非画像部との境界に発生する段差を抑制することが考えられる。しかし、高温高湿の環境下で連続して画像を出力していくと、前記段差が抑制されるように各粒子の添加量を調整しても、潤滑剤膜の形成及び掻き取りの進行度合いの均衡が崩れ、段差に起因する画像欠陥が発生することがある。
【0035】
上記高温高湿の環境下における画像欠陥の発生の一因として、環境温度が高くなった場合におけるトナー粒子に対する付着力の上がり方が、特定シリカ粒子と潤滑剤粒子とで異なることが考えられる。具体的には、環境温度が高くなると、トナー粒子に対する潤滑剤粒子の付着力に比べて、トナー粒子に対する特定シリカ粒子の付着力が相対的に上がる。つまり、潤滑剤粒子に比べて特定シリカ粒子の方が、特にトナー粒子から遊離しにくくなり、像保持体とクリーニングブレードとの接触部に到達する特定シリカ粒子の量が相対的に少なくなる。
そして、上記接触部に到達する特定シリカ粒子の量が少ないことにより、潤滑剤膜の掻き取り機能(研磨力)が低下する。それに加え、上記接触部において特定シリカ粒子がクリーニングブレードからの圧力により凝集した凝集体が形成されにくくなり、特定シリカ粒子による潤滑剤粒子のせき止め効果も低下し、潤滑剤膜の形成が促進される。このようにして、特定シリカ粒子の研磨力及びせき止め効果が下がることで、潤滑剤膜の形成及び掻き取りの進行度合いの均衡が崩れ、画像部と非画像部との境界に段差が生じやすくなると考えられる。
【0036】
そこで、本実施形態では、特定シリカ粒子、負帯電性の潤滑剤粒子N、及び正帯電性の潤滑剤粒子Pを用い、各粒子の添加量を前記範囲とした上で、水系分散液中の超音波処理後における特定シリカ粒子の遊離率s質量%、潤滑剤粒子Nの遊離率n質量%、及び潤滑剤粒子Pの遊離率p質量%が、式1〜式3を満たすようにする。つまり、潤滑剤粒子Nの遊離率n質量%及び潤滑剤粒子Pの遊離率p質量%を相対的に低く、特定シリカ粒子の遊離率s質量%を相対的に高くすることで、特定シリカ粒子の添加量自体は増やさずに像保持体に供給される特定シリカ粒子の量を多くする。それにより、特定シリカ粒子の添加量が多すぎることによる流動性悪化や帯電特性への影響を避けつつ、トナー粒子から遊離した特定シリカ粒子による研磨力が確保される。そのため、高温高湿の環境下においても、画像部と非画像部との境界に生じた段差に起因する画像欠陥が抑制されると推測される。ただし、潤滑剤粒子Nの遊離率n質量%、及び潤滑剤粒子Pの遊離率p質量%が、相対的に特定シリカ粒子に対して低すぎると潤滑機能が発現しなくなってしまう。
【0037】
以下、本実施形態に係るトナーの詳細について説明する。
【0038】
本実施形態に係るトナーは、トナー粒子と、必要に応じて、外添剤と、を含んで構成される。
【0039】
(トナー粒子)
トナー粒子は、例えば、結着樹脂と、必要に応じて、着色剤と、離型剤と、その他添加剤と、を含んで構成される。
【0040】
−結着樹脂−
結着樹脂としては、例えば、スチレン類(例えばスチレン、パラクロロスチレン、α−メチルスチレン等)、(メタ)アクリル酸エステル類(例えばアクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸n−プロピル、アクリル酸n−ブチル、アクリル酸ラウリル、アクリル酸2−エチルヘキシル、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸n−プロピル、メタクリル酸ラウリル、メタクリル酸2−エチルヘキシル等)、エチレン性不飽和ニトリル類(例えばアクリロニトリル、メタクリロニトリル等)、ビニルエーテル類(例えばビニルメチルエーテル、ビニルイソブチルエーテル等)、ビニルケトン類(ビニルメチルケトン、ビニルエチルケトン、ビニルイソプロペニルケトン等)、オレフィン類(例えばエチレン、プロピレン、ブタジエン等)等の単量体の単独重合体、又はこれら単量体を2種以上組み合せた共重合体からなるビニル系樹脂が挙げられる。
結着樹脂としては、例えば、エポキシ樹脂、ポリエステル樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリアミド樹脂、セルロース樹脂、ポリエーテル樹脂、変性ロジン等の非ビニル系樹脂、これらと前記ビニル系樹脂との混合物、又は、これらの共存下でビニル系単量体を重合して得られるグラフト重合体等も挙げられる。
これらの結着樹脂は、1種類単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0041】
結着樹脂としては、ポリエステル樹脂が好適である。
ポリエステル樹脂としては、例えば、公知のポリエステル樹脂が挙げられる。
【0042】
ポリエステル樹脂としては、例えば、多価カルボン酸と多価アルコールとの縮重合体が挙げられる。なお、ポリエステル樹脂としては、市販品を使用してもよいし、合成したものを使用してもよい。
【0043】
多価カルボン酸としては、例えば、脂肪族ジカルボン酸(例えばシュウ酸、マロン酸、マレイン酸、フマル酸、シトラコン酸、イタコン酸、グルタコン酸、コハク酸、アルケニルコハク酸、アジピン酸、セバシン酸等)、脂環式ジカルボン酸(例えばシクロヘキサンジカルボン酸等)、芳香族ジカルボン酸(例えばテレフタル酸、イソフタル酸、フタル酸、ナフタレンジカルボン酸等)、これらの無水物、又はこれらの低級(例えば炭素数1以上5以下)アルキルエステルが挙げられる。これらの中でも、多価カルボン酸としては、例えば、芳香族ジカルボン酸が好ましい。
多価カルボン酸は、ジカルボン酸と共に、架橋構造又は分岐構造をとる3価以上のカルボン酸を併用してもよい。3価以上のカルボン酸としては、例えば、トリメリット酸、ピロメリット酸、これらの無水物、又はこれらの低級(例えば炭素数1以上5以下)アルキルエステル等が挙げられる。
多価カルボン酸は、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0044】
多価アルコールとしては、例えば、脂肪族ジオール(例えばエチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、プロピレングリコール、ブタンジオール、ヘキサンジオール、ネオペンチルグリコール等)、脂環式ジオール(例えばシクロヘキサンジオール、シクロヘキサンジメタノール、水添ビスフェノールA等)、芳香族ジオール(例えばビスフェノールAのエチレンオキサイド付加物、ビスフェノールAのプロピレンオキサイド付加物等)が挙げられる。これらの中でも、多価アルコールとしては、例えば、芳香族ジオール、脂環式ジオールが好ましく、より好ましくは芳香族ジオールである。
多価アルコールとしては、ジオールと共に、架橋構造又は分岐構造をとる3価以上の多価アルコールを併用してもよい。3価以上の多価アルコールとしては、例えば、グリセリン、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトールが挙げられる。
多価アルコールは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0045】
ポリエステル樹脂のガラス転移温度(Tg)は、50℃以上80℃以下が好ましく、50℃以上65℃以下がより好ましい。
なお、ガラス転移温度は、示差走査熱量測定(DSC)により得られたDSC曲線より求め、より具体的にはJIS K 7121−1987「プラスチックの転移温度測定方法」のガラス転移温度の求め方に記載の「補外ガラス転移開始温度」により求められる。
【0046】
ポリエステル樹脂の重量平均分子量(Mw)は、5000以上1000000以下が好ましく、7000以上500000以下がより好ましい。
ポリエステル樹脂の数平均分子量(Mn)は、2000以上100000以下が好ましい。
ポリエステル樹脂の分子量分布Mw/Mnは、1.5以上100以下が好ましく、2以上60以下がより好ましい。
なお、重量平均分子量及び数平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィ(GPC)により測定する。GPCによる分子量測定は、測定装置として東ソー製GPC・HLC−8120GPCを用い、東ソー製カラム・TSKgel SuperHM−M(15cm)を使用し、THF溶媒で行う。重量平均分子量及び数平均分子量は、この測定結果から単分散ポリスチレン標準試料により作成した分子量校正曲線を使用して算出する。
【0047】
ポリエステル樹脂は、周知の製造方法により得られる。具体的には、例えば、重合温度を180℃以上230℃以下とし、必要に応じて反応系内を減圧にし、縮合の際に発生する水やアルコールを除去しながら反応させる方法により得られる。
なお、原料の単量体が、反応温度下で溶解又は相溶しない場合は、高沸点の溶剤を溶解補助剤として加え溶解させてもよい。この場合、重縮合反応は溶解補助剤を留去しながら行う。相溶性の悪い単量体が存在する場合は、あらかじめ相溶性の悪い単量体とその単量体と重縮合予定の酸又はアルコールとを縮合させておいてから主成分と共に重縮合させるとよい。
【0048】
結着樹脂の含有量としては、例えば,トナー粒子全体に対して、40質量%以上95質量%以下が好ましく、50質量%以上90質量%以下がより好ましく、60質量%以上85質量%以下がさらに好ましい。
【0049】
−着色剤−
着色剤としては、例えば、カーボンブラック、クロムイエロー、ハンザイエロー、ベンジジンイエロー、スレンイエロー、キノリンイエロー、ピグメントイエロー、パーマネントオレンジGTR、ピラゾロンオレンジ、バルカンオレンジ、ウオッチヤングレッド、パーマネントレッド、ブリリアントカーミン3B、ブリリアントカーミン6B、デュポンオイルレッド、ピラゾロンレッド、リソールレッド、ローダミンBレーキ、レーキレッドC、ピグメントレッド、ローズベンガル、アニリンブルー、ウルトラマリンブルー、カルコオイルブルー、メチレンブルークロライド、フタロシアニンブルー、ピグメントブルー、フタロシアニングリーン、マラカイトグリーンオキサレートなどの種々の顔料、又は、アクリジン系、キサンテン系、アゾ系、ベンゾキノン系、アジン系、アントラキノン系、チオインジコ系、ジオキサジン系、チアジン系、アゾメチン系、インジコ系、フタロシアニン系、アニリンブラック系、ポリメチン系、トリフェニルメタン系、ジフェニルメタン系、チアゾール系などの各種染料等が挙げられる。
着色剤は、1種類単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0050】
着色剤は、必要に応じて表面処理された着色剤を用いてもよく、分散剤と併用してもよい。また、着色剤は、複数種を併用してもよい。
【0051】
着色剤の含有量としては、例えば、トナー粒子全体に対して、1質量%以上30質量%以下が好ましく、3質量%以上15質量%以下がより好ましい。
【0052】
−離型剤−
離型剤としては、例えば、炭化水素系ワックス;カルナバワックス、ライスワックス、キャンデリラワックス等の天然ワックス;モンタンワックス等の合成又は鉱物・石油系ワックス;脂肪酸エステル、モンタン酸エステル等のエステル系ワックス;などが挙げられる。離型剤は、これに限定されるものではない。
【0053】
離型剤の融解温度は、50℃以上110℃以下が好ましく、60℃以上100℃以下がより好ましい。
なお、融解温度は、示差走査熱量測定(DSC)により得られたDSC曲線から、JIS K 7121−1987「プラスチックの転移温度測定方法」の融解温度の求め方に記載の「融解ピーク温度」により求める。
【0054】
離型剤の含有量としては、例えば、トナー粒子全体に対して、1質量%以上20質量%以下が好ましく、5質量%以上15質量%以下がより好ましい。
【0055】
−その他の添加剤−
その他の添加剤としては、例えば、磁性体、帯電制御剤、無機粉体等の周知の添加剤が挙げられる。これらの添加剤は、内添剤としてトナー粒子に含まれる。
【0056】
−トナー粒子の特性等−
トナー粒子は、単層構造のトナー粒子であってもよいし、芯部(コア粒子)と芯部を被覆する被覆層(シェル層)とで構成された所謂コア・シェル構造のトナー粒子であってもよい。
ここで、コア・シェル構造のトナー粒子は、例えば、結着樹脂と必要に応じて着色剤及び離型剤等のその他添加剤とを含んで構成された芯部と、結着樹脂を含んで構成された被覆層と、で構成されていることがよい。
【0057】
トナー粒子の体積平均粒径(D50v)としては、2μm以上10μm以下が好ましく、4μm以上8μm以下がより好ましい。
【0058】
なお、トナー粒子の各種平均粒径、及び各種粒度分布指標は、コールターマルチサイザーII(ベックマン・コールター社製)を用い、電解液はISOTON−II(ベックマン・コールター社製)を使用して測定される。
測定に際しては、分散剤として、界面活性剤(アルキルベンゼンスルホン酸ナトリウムが好ましい)の5%水溶液2ml中に測定試料を0.5mg以上50mg以下加える。これを電解液100ml以上150ml以下中に添加する。
試料を懸濁した電解液は超音波分散器で1分間分散処理を行い、コールターマルチサイザーIIにより、アパーチャー径として100μmのアパーチャーを用いて2μm以上60μm以下の範囲の粒径の粒子の粒度分布を測定する。なお、サンプリングする粒子数は50000個である。
測定される粒度分布を基にして分割された粒度範囲(チャンネル)に対して体積、数をそれぞれ小径側から累積分布を描いて、累積16%となる粒径を体積粒径D16v、数粒径D16p、累積50%となる粒径を体積平均粒径D50v、累積数平均粒径D50p、累積84%となる粒径を体積粒径D84v、数粒径D84pと定義する。
これらを用いて、体積粒度分布指標(GSDv)は(D84v/D16v)
1/2、数粒度分布指標(GSDp)は(D84p/D16p)
1/2として算出される。
【0059】
トナー粒子の平均円形度としては、0.94以上1.00以下が好ましく、0.95以上0.98以下がより好ましい。
【0060】
トナー粒子の平均円形度は、(円相当周囲長)/(周囲長)[(粒子像と同じ投影面積をもつ円の周囲長)/(粒子投影像の周囲長)]により求められる。具体的には、次の方法で測定される値である。
まず、測定対象となるトナー粒子を吸引採取し、扁平な流れを形成させ、瞬時にストロボ発光させることにより静止画像として粒子像を取り込み、その粒子像を画像解析するフロー式粒子像解析装置(シスメックス社製のFPIA−3000)によって求める。そして、平均円形度を求める際のサンプリング数は3500個とする。
なお、トナーが外添剤を有する場合、界面活性剤を含む水中に、測定対象となるトナー(現像剤)を分散させた後、超音波処理をおこなって外添剤を除去したトナー粒子を得る。
【0061】
(外添剤)
−特定シリカ粒子−
特定シリカ粒子としては、シリカ、すなわちSiO
2を主成分とする粒子であればよく、結晶性でも非晶性でもよい。また、特定シリカ粒子としては、水ガラス、アルコキシシラン等のケイ素化合物を原料に製造された粒子であってもよいし、石英を粉砕して得られる粒子であってもよい
具体的には、特定シリカ粒子としては、例えば、ゾルゲルシリカ粒子、水性コロイダルシリカ粒子、アルコール性シリカ粒子、気相法により得られるフュームドシリカ粒子、溶融シリカ粒子が挙げられる。その中でも、特定シリカ粒子としては、下記特性を満たす観点から、ゾルゲルシリカ粒子が好ましい。
【0062】
また、特定シリカ粒子は、単分散且つ球状であることが好ましい。単分散球状シリカ粒子は、トナー粒子表面に均一に近い状態で分散し、安定したスペーサー効果を得られる。
ここで、単分散の定義としては、凝集体を含め平均粒径に対する標準偏差で議論され、標準偏差として体積平均粒径D50×0.22以下であることが好ましい。また、球状の定義としては、後述する平均円形度で議論される。
【0063】
・体積平均一次粒径
特定シリカ粒子の体積平均一次粒径は、80nm以上200nm以下である。より好ましくは100nm以上150nm以下であり、さらに好ましくは110nm以上130nm以下である。
特定シリカ粒子の体積平均一次粒径が上記範囲であることにより、上記範囲よりも小さい場合に比べ、シリカ粒子のトナー粒子からの遊離が適度に制御されて、像保持体表面へのシリカ粒子の要求量も適度な範囲に調整される。その結果、潤滑剤膜の掻き取り能力が得られ、像保持体表面において画像部に形成される潤滑剤膜と非画像部に形成される潤滑剤膜との膜厚の差が抑制される。
また、特定シリカ粒子の体積平均一次粒径が上記範囲であることにより、上記範囲よりも大きい場合に比べ、シリカ粒子のトナー粒子からの遊離が多くなり過ぎず、その結果シリカ粒子による潤滑剤膜の掻き取りの能力が適度に制御されて、画像部と非画像部との境界で生じる画像欠陥が抑制される。
【0064】
シリカ粒子の平均粒径は、次の方法により測定される。
シリカ粒子の一次粒子を、走査型電子顕微鏡SEM(Scanning Electron Microscope)装置((株)日立製作所製:S−4100)により観察して画像を撮影し、この画像を画像解析装置(LUZEXIII、(株)ニレコ製)に取り込み、一次粒子の画像解析によって粒子ごとの面積を測定し、この面積値から円相当径を算出する。この円相当径の算出を、シリカ粒子100個について実施する。そして、得られた円相当径の体積基準の累積頻度における50%径(D50)をシリカ粒子の平均一次粒径(平均円相当径D50)とする。なお、電子顕微鏡は1視野中にシリカ粒子が10個以上50個以下程度写るように倍率が調整され、複数視野の観察を合わせて一次粒子の円相当径が求められる。
【0065】
・平均円形度
特定シリカ粒子の平均円形度は、0.75以上1.0以下が好ましく、0.9以上1.0以下がより好ましく、0.92以上0.98以下がさらに好ましい。
特定シリカ粒子の平均円形度を0.75以上にすることで、より球状に近いシリカ粒子となり、潤滑剤膜の掻き取りの能力が強過ぎず適度な範囲に制御される。その結果、連続して同一の画像(a)を形成した後に該画像(a)とは異なるハーフトーン画像(b)を出力した場合であっても、前記画像(a)の画像部と非画像部との境界部分における画像欠陥が抑制される。また、潤滑剤汚染が抑制され、像保持体表面への放電生成物等の付着物の付着が抑制されて、該付着物に起因する画像欠陥の発生も抑制される。
【0066】
ここで、シリカ粒子の平均円形度は、次の方法により測定される。
まず、シリカ粒子の円形度は、シリカ粒子の一次粒子を、SEM装置により観察し、得られた一次粒子の平面画像解析から、下記式により算出される「100/SF2」として得られる。
・式:円形度(100/SF2)=4π×(A/I
2)
〔式中、Iは画像上における一次粒子の周囲長を、Aは一次粒子の投影面積を表す。〕
そして、シリカ粒子の平均円形度は、上記平面画像解析によって得られた一次粒子100個の円形度の累積頻度における50%円形度として得られる。
【0067】
・表面処理
特定シリカ粒子の表面は、疎水化処理が施されていることがよい。疎水化処理は、例えば疎水化処理剤に無機粒子を浸漬する等して行う。疎水化処理剤は特に制限されないが、例えば、シラン系カップリング剤、シリコーンオイル、チタネート系カップリング剤、アルミニウム系カップリング剤等が挙げられる。これらは1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
疎水化処理剤の量としては、通常、例えば、シリカ粒子100質量部に対して、1質量部以上10質量部以下である。
【0068】
−潤滑剤粒子−
本実施形態に係るトナーでは、負帯電性の潤滑剤粒子Nと正帯電性の潤滑剤粒子Pとが併用される。ここで、「負帯電性」及び「正帯電性」とは、現像装置内でトナーが帯電された際に、負(−)に帯電するか正(+)に帯電するかを意味する。
【0069】
正帯電性の潤滑剤粒子Pとしては、例えば、脂肪酸金属塩粒子等が挙げられる。脂肪酸金属塩粒子は、脂肪酸と金属とからなる塩の粒子である。
脂肪酸は、飽和脂肪酸または不飽和脂肪酸の何れでもよい。脂肪酸の炭素数は、10以上25以下(好ましくは、12以上22以下)の脂肪酸が挙げられる。なお、脂肪酸の炭素数は、カルボキシ基の炭素を含む。
脂肪酸としては、例えば、ベヘン酸、ステアリン酸、パルミチン酸、ミリスチン酸、ラウリン酸等の飽和脂肪酸;オレイン酸、リノール酸、リシノール酸等の不飽和脂肪酸;が挙げられる。これらの脂肪酸の中でも、ステアリン酸、ラウリン酸が好ましく、ステアリン酸がより好ましい。
金属としては、2価の金属がよい。金属としては、例えば、マグネシウム、カルシウム、アルミニウム、バリウム、亜鉛が挙げられる。これらの中でも、金属は、亜鉛が好ましい。
【0070】
脂肪酸金属塩粒子としては、例えば、ステアリン酸アルミニウム、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸カリウム、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸バリウム、ステアリン酸リチウム、ステアリン酸亜鉛、ステアリン酸銅、ステアリン酸鉛、ステアリン酸ニッケル、ステアリン酸ストロンチウム、ステアリン酸コバルト、ステアリン酸ナトリウム等のステアリン酸の金属塩;パルミチン酸亜鉛、パルミチン酸コバルト、パルミチン酸銅、パルミチン酸マグネシウム、パルミチン酸アルミニウム、パルミチン酸カルシウム等のパルミチン酸の金属塩;ラウリン酸亜鉛、ラウリン酸マンガン、ラウリン酸カルシウム、ラウリン酸鉄、ラウリン酸マグネシウム、ラウリン酸アルミニウム等のラウリン酸の金属塩;オレイン酸亜鉛、オレイン酸マンガン、オレイン酸鉄、オレイン酸アルミニウム、オレイン酸銅、オレイン酸マグネシウム、オレイン酸カルシウム等のオレイン酸の金属塩;リノール酸亜鉛、リノール酸コバルト、リノール酸カルシウム等のリノール酸の金属塩;リシノール酸亜鉛、リシノール酸アルミニウム等のリシノール酸の金属塩;などの各粒子が挙げられる。
脂肪酸金属塩粒子の中でも、ステアリン酸の金属塩、又はラウリン酸の金属塩の各粒子が好ましく、ステアリン酸亜鉛、又はラウリン酸亜鉛の各粒子がより好ましく、ステアリン酸亜鉛粒子がさらに好ましい。
【0071】
負帯電性の潤滑剤粒子Nとしては、例えば、フッ素樹脂粒子、シリコン樹脂、無機粒子、又はワックス樹脂粒子等が挙げられる。
フッ素樹脂粒子としては、例えば、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE、「4フッ化エチレン樹脂」)、パーフルオロアルコキシフッ素樹脂、ポリクロロトリフルオロエチレン、ポリフッ化ビニリデン、ポリジクロロジフルオロエチレン、テトラフルオロエチレン−パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体、テトラフルオロエチレン−ヘキサフルオロプロピレン共重合体、テトラフルオロエチレン−エチレン共重合体、テトラフルオロエチレン−ヘキサフルオロプロピレン−パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体、テトラフルオロエチレン−パーフルオロアルコキシエチレン共重合体等の粒子が挙げられる。
これらの中でも、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)が好ましい。
【0072】
・粒径
潤滑剤粒子Pの平均粒径は、0.1μm以上50μm以下が好ましく、1μm以上20μm以下がより好ましく、1μm以上10μm以下がさらに好ましい。
潤滑剤粒子Nの平均粒径は、100nm以上1000nm以下が好ましく、100nm以上400nm以下がより好ましく、200nm以上400nm以下がさらに好ましい。
【0073】
ここで、潤滑剤粒子P及び潤滑剤粒子Nの平均粒径は、次の方法により測定される。
潤滑剤粒子P及び潤滑剤粒子Nの一次粒子を、それぞれ走査型電子顕微鏡SEM(Scanning Electron Microscope)装置((株)日立製作所製:S−4100)により観察して画像を撮影し、この画像を画像解析装置(LUZEXIII、(株)ニレコ製)に取り込み、一次粒子の画像解析によって粒子ごとの面積を測定し、この面積値から円相当径を算出する。この円相当径の算出を、100個について実施する。そして、得られた円相当径の体積基準の累積頻度における50%径(D50)を潤滑剤粒子P及び潤滑剤粒子Nの平均一次粒径(平均円相当径D50)とする。なお、電子顕微鏡は1視野中に潤滑剤粒子P及び潤滑剤粒子Nが10個以上50個以下程度写るように倍率が調整され、複数視野の観察を合わせて一次粒子の円相当径が求められる。
【0074】
−トナー粒子に対する各粒子の含有量−
特定シリカ粒子の、トナー粒子に対する含有量(以下「特定シリカ含有量」ともいう)は、0.5質量%以上3.0質量%以下であり、1.0質量%以上2.5質量%以下が好ましく、1.5質量%以上2.0質量%以下がより好ましい。
特定シリカ粒子の含有量を0.5質量%以上にすると、クリーニング部の先端へのシリカ粒子の供給量が確保され易くなる。シリカ粒子の含有量を3.0質量%以下にすると、トナー粒子からの過度なシリカ粒子の遊離を抑え、像保持体表面での潤滑剤膜の掻き取られ過ぎることが抑制される。
【0075】
潤滑剤粒子Pの、トナー粒子に対する含有量(以下「潤滑剤粒子P含有量」ともいう)は、0.001質量%以上0.5質量%以下であり、0.005質量%以上0.05質量%以下が好ましく、0.01質量%以上0.03質量%以下がより好ましい。
潤滑剤粒子Pの含有量を前記の下限値以上とすることで、負帯電性のトナー粒子を用いた場合に、非画像部への潤滑剤粒子Pの供給量が確保され易くなる。潤滑剤粒子Pの含有量を前記の上限値以下とすることで、非画像部への潤滑剤粒子Pの供給量が過度となり過ぎず、画像部と非画像部との潤滑剤膜の膜厚差が抑制され、また一部のみの厚さが厚くなること(潤滑剤汚染)も抑制される。
【0076】
潤滑剤粒子Nの、トナー粒子に対する含有量(以下「潤滑剤粒子N含有量」ともいう)は、0.005質量%以上0.5質量%以下であり、0.05質量%以上0.5質量%以下であることが好ましく、0.10質量%以上0.40質量%以下がより好ましく、0.15質量%以上0.30質量%以下が更に好ましい。
潤滑剤粒子Nの含有量を前記の下限値以上とすることで、負帯電性のトナー粒子を用いた場合に、画像部への潤滑剤粒子Nの供給量が確保され易くなる。潤滑剤粒子Nの含有量を前記の上限値以下とすることで、画像部への潤滑剤粒子Nの供給量が過度となり過ぎず、画像部と非画像部との潤滑剤膜の膜厚差が抑制され、また一部のみの厚さが厚くなること(潤滑剤汚染)も抑制される。
【0077】
トナー中における特定シリカ含有量、潤滑剤粒子P含有量、及び潤滑剤粒子N含有量の測定は、それぞれ以下の方法で行われる。
特定シリカ含有量は蛍光X線測定により定量化される。また、平均粒径が80nm以上200nm以下の範囲以外のシリカ粒子が含まれる場合には、SEM−EDX(エネルギー分散型X線分光法)でシリカ粒子を特定し、特定したシリカ粒子を画像処理により粒度分布を求め、前記の粒度分布から求めた80nm以上200nm以下の割合と、蛍光X線測定により定量化した全シリカ粒子の含有量から、シリカ粒子の粒径差による蛍光X線量の補正を行うことで、求められる。
潤滑剤粒子P含有量は、例えば、脂肪酸金属塩の場合、金属塩を蛍光X線測定により定量化する。ステアリン酸亜鉛の場合は、Znを測定することになる。
潤滑剤粒子Nの含有量は、例えば、フッ素樹脂粒子の場合、Fを蛍光X線測定により定量化する。
【0078】
特定シリカ含有量、潤滑剤粒子N含有量、及び潤滑剤粒子P含有量は下記式4及び式5の関係を満たすことが好ましい。
式4 0.002≦潤滑剤粒子P含有量/特定シリカ含有量≦0.2
式5 0.02 ≦潤滑剤粒子N含有量/特定シリカ含有量≦0.5
式4及び式5を共に満たすことにより、連続して同一の画像(a)を出力した場合であっても、前記画像(a)の画像部と非画像部との境界における像保持体膜厚の段差が低減され、その結果連続して前記画像(a)を形成した後にハーフトーン画像(b)を出力した場合であっても、前記画像(a)の画像部と非画像部との境界部分における画像欠陥が抑制される。
【0079】
特定シリカ含有量、潤滑剤粒子N含有量、及び潤滑剤粒子P含有量の関係は、下記式4−1及び式5−1の関係を満たすことがより好ましく、下記式4−2及び式5−2の関係を満たすことがさらに好ましい。
式4−1 0.005≦潤滑剤粒子P含有量/特定シリカ含有量≦0.050
式5−1 0.02 ≦潤滑剤粒子N含有量/特定シリカ含有量≦0.40
【0080】
式4−2 0.005≦潤滑剤粒子P含有量/特定シリカ含有量≦0.020
式5−2 0.05 ≦潤滑剤粒子N含有量/特定シリカ含有量≦0.30
【0081】
−水系分散液中の超音波処理後における各粒子の遊離率−
水系分散液中の超音波処理後における特定シリカ粒子の遊離率s質量%は、5質量%以上50質量%以下であり、10質量%以上30質量%以下であることが好ましく、15質量%以上25質量%以下であることがより好ましい。
シリカ粒子の遊離率が上記範囲であることで、シリカ粒子による潤滑剤膜の掻き取りが適度に制御され、画像部と非画像部とでの像保持体の膜厚差の発生が抑制され、また放電生成物等の付着物の付着が抑制され易くなる。
【0082】
水系分散液中の超音波処理後における潤滑剤粒子Pの遊離率p質量%は、0.5質量%以上47.5質量%以下であることが好ましく、0.5質量%以上37.5質量%以下であることがより好ましく、1.0質量%以上25質量%以下であることがさらに好ましい。
潤滑剤粒子Pの遊離率が上記範囲であることで、潤滑剤粒子Pによる像保持体表面での潤滑剤膜の形成が適度に制御され、画像部と非画像部とでの像保持体の膜厚差の発生が抑制され、また放電生成物等の付着物の付着が抑制され易くなる。
【0083】
水系分散液中の超音波処理後における潤滑剤粒子Nの遊離率n質量%は、0.5質量%以上47.5%以下であることが好ましく、0.5%以上37.5%以下であることがより好ましく、1.0%以上25%以下であることがさらに好ましい。
潤滑剤粒子Nの遊離率が上記範囲であることで、潤滑剤粒子Nによる像保持体表面での潤滑剤膜の形成が適度に制御され、画像部と非画像部とでの像保持体の膜厚差の発生が抑制され、また放電生成物等の付着物の付着が抑制され易くなる。
【0084】
前記の通り、特定シリカ粒子の遊離率s質量%、潤滑剤粒子Nの遊離率n質量%、及び潤滑剤粒子Pの遊離率p質量%の関係は、式1〜式3を満たし、さらに式2−1及び式3−1を満たすことが好ましく、式2−2及び式3−2を満たすことがより好ましい。
【0085】
式1 5≦s≦50
式2 0.10≦p/s≦0.95
式3 0.10≦n/s≦0.95
【0086】
式2−1 0.10≦p/s≦0.75
式3−1 0.10≦n/s≦0.75
【0087】
式2−2 0.20≦p/s≦0.50
式3−2 0.20≦n/s≦0.50
【0088】
なお、各粒子のトナー粒子からの遊離率は、例えばトナー粒子の材質や粒径、各粒子の材質や粒径、トナー粒子表面に各粒子を外添する際の外添条件等を調整することで制御される。特に、トナー粒子中に各粒子(特定シリカ粒子、潤滑剤粒子N、及び潤滑剤粒子P)を添加して攪拌する際の攪拌速度と攪拌時間の調整、及び攪拌時の混合品の温度の制御によって、シリカ粒子、潤滑剤粒子N、及び潤滑剤粒子Pの遊離率を、それぞれ上記の範囲に制御し得る。また、目的とする外添剤の遊離量だけを変えたいときは、多段混合や、予め外添剤を単独で解砕してから、他の外添剤と一緒のトナー粒子に外添させる方法などがある。
例えば、前記のように、潤滑剤粒子Nの遊離率n質量%及び潤滑剤粒子Pの遊離率p質量%を相対的に低く、特定シリカ粒子の遊離率s質量%を相対的に高くする方法としては、例えば、二段階で混合する二段混合が挙げられる。具体的には、例えば、トナー粒子と潤滑剤粒子Nと潤滑剤粒子Pとを混合して高い攪拌速度で長時間の攪拌を行った後に、特定シリカ粒子を添加して低い攪拌速度で短時間の攪拌を行う。なお、潤滑剤粒子P、潤滑剤粒子N、及び特定シリカ粒子を順にトナー粒子に添加する三段混合を行ってもよい。
【0089】
−トナー中での各粒子の帯電列−
本実施形態では、トナー中に含まれるトナー粒子、特定シリカ粒子、潤滑剤粒子P、及び潤滑剤粒子Nの帯電列(正負の帯電の関係及び帯電の大きさの関係)が、トナー粒子を基準に以下の関係を満たすことが好ましい。
(プラス帯電)「潤滑剤粒子P」>「トナー粒子」
>「特定シリカ粒子及び潤滑剤粒子N」(マイナス帯電)
【0090】
本実施形態において、トナー粒子、特定シリカ粒子、潤滑剤粒子P、及び潤滑剤粒子Nの帯電列の測定は、日本画像学会技術委員会頒布の標準キャリア4種を用いて、日本画像学会標準トナー帯電量測定法(ブローオフ測定法)に準拠した方法により行なわれる。具体的には、以下の通りである。
正帯電性用キャリアとしてフッ素原子含有樹脂を複合させて樹脂を被覆したP−01,P−02の2種類のキャリアを設定し、負帯電性用キャリアとしてアクリル系樹脂を被覆したN−01,N−02の2種類のキャリアを設定する。各キャリア10gと、各粒子(つまりトナー粒子、特定シリカ粒子、潤滑剤粒子P及び潤滑剤粒子Nのうちの1種の粒子)0.5gと、を混合して帯電量を測定し、ゼロポイント・チャージ法を用いて、X=0の時のY軸上の値を帯電列(標準帯電能)と規定する。
【0091】
−その他の外添剤−
その他の外添剤としては、体積平均一次粒径80nm以上200nm以下のシリカ粒子及び潤滑剤粒子以外の他の無機粒子が挙げられる。
他の無機粒子として、SiO
2(ただし、体積平均一次粒径が80nm未満又は200nmを超える)、TiO
2、CuO、SnO
2、Fe
2O
3、BaO、CaO、K
2O、Na
2O、CaO・SiO
2、K
2O・(TiO
2)n、Al
2O
3・2SiO
2、MgCO
3、BaSO
4、MgSO
4等が挙げられる。
【0092】
他の無機粒子の表面は、疎水化処理が施されていることがよい。疎水化処理は、例えば疎水化処理剤に無機粒子を浸漬する等して行う。疎水化処理剤は特に制限されないが、例えば、シラン系カップリング剤、シリコーンオイル、チタネート系カップリング剤、アルミニウム系カップリング剤等が挙げられる。これらは1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
疎水化処理剤の量としては、通常、例えば、他の無機粒子100質量部に対して、1質量部以上10質量部以下である。
【0093】
その他の外添剤の外添量(含有量)としては、例えば、トナー粒子に対して、0.5質量%以上5.0質量%以下が好ましく、2.0質量%以上3.0質量%以下がより好ましい。
【0094】
(トナーの製造方法)
次に、本実施形態に係るトナーの製造方法について説明する。
本実施形態に係るトナーは、トナー粒子を製造後、トナー粒子に対して、外添剤を外添することで得られる。
【0095】
トナー粒子は、乾式製法(例えば、混練粉砕法等)、湿式製法(例えば凝集合一法、懸濁重合法、溶解懸濁法等)のいずれにより製造してもよい。トナー粒子の製法は、これらの製法に特に制限はなく、周知の製法が採用される。
これらの中でも、凝集合一法により、トナー粒子を得ることがよい。
【0096】
具体的には、例えば、トナー粒子を凝集合一法により製造する場合、
結着樹脂となる樹脂粒子が分散された樹脂粒子分散液を準備する工程(樹脂粒子分散液準備工程)と、樹脂粒子分散液中で(必要に応じて他の粒子分散液を混合した後の分散液中で)、樹脂粒子(必要に応じて他の粒子)を凝集させ、凝集粒子を形成する工程(凝集粒子形成工程)と、凝集粒子が分散された凝集粒子分散液に対して加熱し、凝集粒子を融合・合一して、トナー粒子を形成する工程(融合・合一工程)と、を経て、トナー粒子を製造する。
【0097】
以下、各工程の詳細について説明する。
なお、以下の説明では、着色剤、及び離型剤を含むトナー粒子を得る方法について説明するが、着色剤、離型剤は、必要に応じて用いられるものである。無論、着色剤、離型剤以外のその他添加剤を用いてもよい。
【0098】
−樹脂粒子分散液準備工程−
まず、結着樹脂となる樹脂粒子が分散された樹脂粒子分散液と共に、例えば、着色剤粒子が分散された着色剤粒子分散液、離型剤粒子が分散された離型剤粒子分散液を準備する。
【0099】
ここで、樹脂粒子分散液は、例えば、樹脂粒子を界面活性剤により分散媒中に分散させることにより調製する。
【0100】
樹脂粒子分散液に用いる分散媒としては、例えば水系媒体が挙げられる。
水系媒体としては、例えば、蒸留水、イオン交換水等の水、アルコール類等が挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0101】
界面活性剤としては、例えば、硫酸エステル塩系、スルホン酸塩系、リン酸エステル系、せっけん系等のアニオン界面活性剤;アミン塩型、4級アンモニウム塩型等のカチオン界面活性剤;ポリエチレングリコール系、アルキルフェノールエチレンオキサイド付加物系、多価アルコール系等の非イオン系界面活性剤等が挙げられる。これらの中でも特に、アニオン界面活性剤、カチオン界面活性剤が挙げられる。非イオン系界面活性剤は、アニオン界面活性剤又はカチオン界面活性剤と併用してもよい。
界面活性剤は、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0102】
樹脂粒子分散液において、樹脂粒子を分散媒に分散する方法としては、例えば回転せん断型ホモジナイザーや、メディアを有するボールミル、サンドミル、ダイノミル等の一般的な分散方法が挙げられる。また、樹脂粒子の種類によっては、例えば転相乳化法を用いて樹脂粒子分散液中に樹脂粒子を分散させてもよい。
なお、転相乳化法とは、分散すべき樹脂を、その樹脂が可溶な疎水性有機溶剤中に溶解せしめ、有機連続相(O相)に塩基を加えて、中和したのち、水媒体(W相)を投入することによって、W/OからO/Wへの、樹脂の変換(いわゆる転相)が行われて不連続相化し、樹脂を、水媒体中に粒子状に分散する方法である。
【0103】
樹脂粒子分散液中に分散する樹脂粒子の体積平均粒径としては、例えば0.01μm以上1μm以下が好ましく、0.08μm以上0.8μm以下がより好ましく、0.1μm以上0.6μm以下がさらに好ましい。
なお、樹脂粒子の体積平均粒径は、レーザー回折式粒度分布測定装置(例えば、堀場製作所製、LA−700)の測定によって得られた粒度分布を用い、分割された粒度範囲(チャンネル)に対し、体積について小粒径側から累積分布を引き、全粒子に対して累積50%となる粒径を体積平均粒径D50vとして測定される。なお、他の分散液中の粒子の体積平均粒径も同様に測定される。
【0104】
樹脂粒子分散液に含まれる樹脂粒子の含有量としては、例えば、5質量%以上50質量%以下が好ましく、10質量%以上40質量%以下がより好ましい。
【0105】
なお、樹脂粒子分散液と同様にして、例えば、着色剤粒子分散液、離型剤粒子分散液も調製される。つまり、樹脂粒子分散液における粒子の体積平均粒径、分散媒、分散方法、及び粒子の含有量に関しては、着色剤粒子分散液中に分散する着色剤粒子、及び離型剤粒子分散液中に分散する離型剤粒子についても同様である。
【0106】
−凝集粒子形成工程−
次に、樹脂粒子分散液と共に、着色剤粒子分散液と、離型剤粒子分散液と、を混合する。
そして、混合分散液中で、樹脂粒子と着色剤粒子と離型剤粒子とをヘテロ凝集させ目的とするトナー粒子の径に近い径を持つ、樹脂粒子と着色剤粒子と離型剤粒子とを含む凝集粒子を形成する。
【0107】
具体的には、例えば、混合分散液に凝集剤を添加すると共に、混合分散液のpHを酸性(例えばpHが2以上5以下)に調整し、必要に応じて分散安定剤を添加した後、樹脂粒子のガラス転移温度(具体的には、例えば、樹脂粒子のガラス転移温度−30℃以上ガラス転移温度−10℃以下)の温度に加熱し、混合分散液に分散された粒子を凝集させて、凝集粒子を形成する。
凝集粒子形成工程においては、例えば、混合分散液を回転せん断型ホモジナイザーで攪拌下、室温(例えば25℃)で上記凝集剤を添加し、混合分散液のpHを酸性(例えばpHが2以上5以下)に調整し、必要に応じて分散安定剤を添加した後に、上記加熱を行ってもよい。
【0108】
凝集剤としては、例えば、混合分散液に添加される分散剤として用いる界面活性剤と逆極性の界面活性剤、無機金属塩、2価以上の金属錯体が挙げられる。特に、凝集剤として金属錯体を用いた場合には、界面活性剤の使用量が低減され、帯電特性が向上する。
凝集剤の金属イオンと錯体もしくは類似の結合を形成する添加剤を必要に応じて用いてもよい。この添加剤としては、キレート剤が好適に用いられる。
【0109】
無機金属塩としては、例えば、塩化カルシウム、硝酸カルシウム、塩化バリウム、塩化マグネシウム、塩化亜鉛、塩化アルミニウム、硫酸アルミニウム等の金属塩、及び、ポリ塩化アルミニウム、ポリ水酸化アルミニウム、多硫化カルシウム等の無機金属塩重合体等が挙げられる。
キレート剤としては、水溶性のキレート剤を用いてもよい。キレート剤としては、例えば、酒石酸、クエン酸、グルコン酸等のオキシカルボン酸、イミノジ酸(IDA)、ニトリロトリ酢酸(NTA)、エチレンジアミンテトラ酢酸(EDTA)等が挙げられる。
キレート剤の添加量としては、例えば、樹脂粒子100質量部に対して0.01質量部以上5.0質量部以下が好ましく、0.1質量部以上3.0質量部未満がより好ましい。
【0110】
−融合・合一工程−
次に、凝集粒子が分散された凝集粒子分散液に対して、例えば、樹脂粒子のガラス転移温度以上(例えば樹脂粒子のガラス転移温度より10から30℃高い温度以上)に加熱して、凝集粒子を融合・合一し、トナー粒子を形成する。
【0111】
以上の工程を経て、トナー粒子が得られる。
なお、凝集粒子が分散された凝集粒子分散液を得た後、当該凝集粒子分散液と、樹脂粒子が分散された樹脂粒子分散液と、をさらに混合し、凝集粒子の表面にさらに樹脂粒子を付着するように凝集して、第2凝集粒子を形成する工程と、第2凝集粒子が分散された第2凝集粒子分散液に対して加熱をし、第2凝集粒子を融合・合一して、コア/シェル構造のトナー粒子を形成する工程と、を経て、トナー粒子を製造してもよい。
【0112】
ここで、融合・合一工程終了後は、溶液中に形成されたトナー粒子を、公知の洗浄工程、固液分離工程、乾燥工程を経て乾燥した状態のトナー粒子を得る。
洗浄工程は、帯電性の点から充分にイオン交換水による置換洗浄を施すことがよい。また、固液分離工程は、特に制限はないが、生産性の点から吸引濾過、加圧濾過等を施すことがよい。また、乾燥工程も特に方法に制限はないが、生産性の点から凍結乾燥、気流乾燥、流動乾燥、振動型流動乾燥等を施すことがよい。
【0113】
そして、本実施形態に係るトナーは、例えば、得られた乾燥状態のトナー粒子に、外添剤を添加し、混合することにより製造される。混合は、例えばVブレンダー、ヘンシェルミキサー、レーディゲミキサー等によって行うことがよい。更に、必要に応じて、振動篩分機、風力篩分機等を使ってトナーの粗大粒子を取り除いてもよい。
【0114】
<静電荷像現像剤>
本実施形態に係る静電荷像現像剤は、本実施形態に係るトナーを少なくとも含むものである。
本実施形態に係る静電荷像現像剤は、本実施形態に係るトナーのみを含む一成分現像剤であってもよいし、当該トナーとキャリアと混合した二成分現像剤であってもよい。
【0115】
キャリアとしては、特に制限はなく、公知のキャリアが挙げられる。キャリアとしては、例えば、磁性粉からなる芯材の表面に被覆樹脂を被覆した被覆キャリア;マトリックス樹脂中に磁性粉が分散・配合された磁性粉分散型キャリア;多孔質の磁性粉に樹脂を含浸させた樹脂含浸型キャリア;等が挙げられる。
なお、磁性粉分散型キャリア及び樹脂含浸型キャリアは、当該キャリアの構成粒子を芯材とし、これに被覆樹脂により被覆したキャリアであってもよい。
【0116】
磁性粉としては、例えば、鉄、ニッケル、コバルト等の磁性金属、フェライト、マグネタイト等の磁性酸化物等が挙げられる。
【0117】
被覆樹脂、及びマトリックス樹脂としては、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、ポリビニルアセテート、ポリビニルアルコール、ポリビニルブチラール、ポリ塩化ビニル、ポリビニルエーテル、ポリビニルケトン、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体、スチレン−アクリル酸エステル共重合体、オルガノシロキサン結合を含んで構成されるストレートシリコーン樹脂又はその変性品、フッ素樹脂、ポリエステル、ポリカーボネート、フェノール樹脂、エポキシ樹脂等が挙げられる。
なお、被覆樹脂、及びマトリックス樹脂には、導電性粒子等、その他添加剤を含ませてもよい。
導電性粒子としては、金、銀、銅等の金属、カーボンブラック、酸化チタン、酸化亜鉛、酸化スズ、硫酸バリウム、ホウ酸アルミニウム、チタン酸カリウム等の粒子が挙げられる。
【0118】
ここで、芯材の表面に被覆樹脂を被覆するには、被覆樹脂、及び必要に応じて各種添加剤を適当な溶媒に溶解した被覆層形成用溶液により被覆する方法等が挙げられる。溶媒としては、特に限定されるものではなく、使用する被覆樹脂、塗布適性等を勘案して選択すればよい。
具体的な樹脂被覆方法としては、芯材を被覆層形成用溶液中に浸漬する浸漬法、被覆層形成用溶液を芯材表面に噴霧するスプレー法、芯材を流動エアーにより浮遊させた状態で被覆層形成用溶液を噴霧する流動床法、ニーダーコーター中でキャリアの芯材と被覆層形成用溶液とを混合し、溶剤を除去するニーダーコーター法等が挙げられる。
【0119】
二成分現像剤における、トナーとキャリアとの混合比(質量比)は、トナー:キャリア=1:100乃至30:100が好ましく、3:100乃至20:100がより好ましい。
【0120】
<画像形成装置/画像形成方法>
本実施形態に係る画像形成装置/画像形成方法について説明する。
本実施形態に係る画像形成装置は、像保持体と、像保持体の表面を帯電する帯電手段と、帯電した像保持体の表面に静電荷像を形成する静電荷像形成手段と、静電荷像現像剤を収容し、静電荷像現像剤により、像保持体の表面に形成された静電荷像をトナー画像として現像する現像手段と、像保持体の表面に形成されたトナー画像を記録媒体の表面に転写する転写手段と、像保持体の表面をクリーニングするクリーニングブレードを有するクリーニング手段と、記録媒体の表面に転写されたトナー画像を定着する定着手段と、を備える。そして、静電荷像現像剤として、本実施形態に係る静電荷像現像剤が適用される。
【0121】
本実施形態に係る画像形成装置では、像保持体の表面を帯電する帯電工程と、帯電した像保持体の表面に静電荷像を形成する静電荷像形成工程と、本実施形態に係る静電荷像現像剤により、像保持体の表面に形成された静電荷像をトナー画像として現像する現像工程と、像保持体の表面に形成されたトナー画像を記録媒体の表面に転写する転写工程と、像保持体の表面をクリーニングブレードによりクリーニングするクリーニング工程と、記録媒体の表面に転写されたトナー画像を定着する定着工程と、を有する画像形成方法(本実施形態に係る画像形成方法)が実施される。
【0122】
本実施形態に係る画像形成装置は、像保持体の表面に形成されたトナー画像を直接記録媒体に転写する直接転写方式の装置;像保持体の表面に形成されたトナー画像を中間転写体の表面に一次転写し、中間転写体の表面に転写されたトナー画像を記録媒体の表面に二次転写する中間転写方式の装置;トナー画像の転写後、帯電前に像保持体の表面に除電光を照射して除電する除電手段を備える装置等の周知の画像形成装置が適用される。
中間転写方式の装置の場合、転写手段は、例えば、表面にトナー画像が転写される中間転写体と、像保持体の表面に形成されたトナー画像を中間転写体の表面に一次転写する一次転写手段と、中間転写体の表面に転写されたトナー画像を記録媒体の表面に二次転写する二次転写手段と、を有する構成が適用される。
【0123】
なお、本実施形態に係る画像形成装置において、例えば、現像手段を含む部分が、画像形成装置に対して脱着されるカートリッジ構造(プロセスカートリッジ)であってもよい。プロセスカートリッジとしては、例えば、本実施形態に係る静電荷像現像剤を収容した現像手段を備えるプロセスカートリッジが好適に用いられる。
【0124】
以下、本実施形態に係る画像形成装置の一例を示すが、これに限定されるわけではない。なお、図に示す主要部を説明し、その他はその説明を省略する。
【0125】
図1は、本実施形態に係る画像形成装置を示す概略構成図である。
図1に示す画像形成装置は、色分解された画像データに基づくイエロー(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)、ブラック(K)の各色の画像を出力する電子写真方式の第1乃至第4の画像形成ユニット10Y、10M、10C、10K(画像形成手段)を備えている。これらの画像形成ユニット(以下、単に「ユニット」と称する場合がある)10Y、10M、10C、10Kは、水平方向に互いに予め定められた距離離間して並設されている。なお、これらユニット10Y、10M、10C、10Kは、画像形成装置に対して脱着するプロセスカートリッジであってもよい。
【0126】
各ユニット10Y、10M、10C、10Kの図面における上方には、各ユニットを通して中間転写体としての中間転写ベルト20が延設されている。中間転写ベルト20は、図における左から右方向に互いに離間して配置された駆動ロール22及び中間転写ベルト20内面に接する支持ロール24に巻きつけて設けられ、第1のユニット10Yから第4のユニット10Kに向う方向に走行されるようになっている。なお、支持ロール24は、図示しないバネ等により駆動ロール22から離れる方向に力が加えられており、両者に巻きつけられた中間転写ベルト20に張力が与えられている。また、中間転写ベルト20の像保持体側面には、駆動ロール22と対向して中間転写体クリーニング装置30が備えられている。
また、各ユニット10Y、10M、10C、10Kの現像装置(現像手段)4Y、4M、4C、4Kのそれぞれには、トナーカートリッジ8Y、8M、8C、8Kに収められたイエロー、マゼンタ、シアン、ブラックの4色のトナーを含むトナーの供給がなされる。
【0127】
第1乃至第4のユニット10Y、10M、10C、10Kは、同等の構成を有しているため、ここでは中間転写ベルト走行方向の上流側に配設されたイエロー画像を形成する第1のユニット10Yについて代表して説明する。なお、第1のユニット10Yと同等の部分に、イエロー(Y)の代わりに、マゼンタ(M)、シアン(C)、ブラック(K)を付した参照符号を付すことにより、第2乃至第4のユニット10M、10C、10Kの説明を省略する。
【0128】
第1のユニット10Yは、像保持体として作用する感光体1Yを有している。感光体1Yの周囲には、感光体1Yの表面を予め定められた電位に帯電させる帯電ロール(帯電手段の一例)2Y、帯電された表面を色分解された画像信号に基づくレーザ光線3Yによって露光して静電荷像を形成する露光装置(静電荷像形成手段の一例)3、静電荷像に帯電したトナーを供給して静電荷像を現像する現像装置(現像手段の一例)4Y、現像したトナー画像を中間転写ベルト20上に転写する一次転写ロール5Y(一次転写手段の一例)、及び一次転写後に感光体1Yの表面に残存するトナーを除去するクリーニングブレード6Y−1を有する感光体クリーニング装置(クリーニング手段の一例)6Yが順に配置されている。
なお、一次転写ロール5Yは、中間転写ベルト20の内側に配置され、感光体1Yに対向した位置に設けられている。更に、各一次転写ロール5Y、5M、5C、5Kには、一次転写バイアスを印加するバイアス電源(図示せず)がそれぞれ接続されている。各バイアス電源は、図示しない制御部による制御によって、各一次転写ロールに印加する転写バイアスを可変する。
【0129】
以下、第1ユニット10Yにおいてイエロー画像を形成する動作について説明する。
まず、動作に先立って、帯電ロール2Yによって感光体1Yの表面が−600V乃至−800Vの電位に帯電される。
感光体1Yは、導電性(例えば20℃における体積抵抗率:1×10
−6Ωcm以下)の基体上に感光層を積層して形成されている。この感光層は、通常は高抵抗(一般の樹脂の抵抗)であるが、レーザ光線3Yが照射されると、レーザ光線が照射された部分の比抵抗が変化する性質を持っている。そこで、帯電した感光体1Yの表面に、図示しない制御部から送られてくるイエロー用の画像データに従って、露光装置3を介してレーザ光線3Yを出力する。レーザ光線3Yは、感光体1Yの表面の感光層に照射され、それにより、イエロー画像パターンの静電荷像が感光体1Yの表面に形成される。
【0130】
静電荷像とは、帯電によって感光体1Yの表面に形成される像であり、レーザ光線3Yによって、感光層の被照射部分の比抵抗が低下し、感光体1Yの表面の帯電した電荷が流れ、一方、レーザ光線3Yが照射されなかった部分の電荷が残留することによって形成される、いわゆるネガ潜像である。
感光体1Y上に形成された静電荷像は、感光体1Yの走行に従って予め定められた現像位置まで回転される。そして、この現像位置で、感光体1Y上の静電荷像が、現像装置4Yによってトナー画像として可視像(現像像)化される。
【0131】
現像装置4Y内には、例えば、少なくともイエロートナーとキャリアとを含む静電荷像現像剤が収容されている。イエロートナーは、現像装置4Yの内部で攪拌されることで摩擦帯電し、感光体1Y上に帯電した帯電荷と同極性(負極性)の電荷を有して現像剤ロール(現像剤保持体の一例)上に保持されている。そして感光体1Yの表面が現像装置4Yを通過していくことにより、感光体1Y表面上の除電された潜像部にイエロートナーが静電的に付着し、潜像がイエロートナーによって現像される。イエローのトナー画像が形成された感光体1Yは、引続き予め定められた速度で走行され、感光体1Y上に現像されたトナー画像が予め定められた一次転写位置へ搬送される。
【0132】
感光体1Y上のイエロートナー画像が一次転写へ搬送されると、一次転写ロール5Yに一次転写バイアスが印加され、感光体1Yから一次転写ロール5Yに向う静電気力がトナー画像に作用され、感光体1Y上のトナー画像が中間転写ベルト20上に転写される。このとき印加される転写バイアスは、トナーの極性(−)と逆極性の(+)極性であり、例えば第1ユニット10Yでは制御部に(図示せず)よって+10μAに制御されている。
一方、感光体1Y上に残留したトナーは感光体クリーニング装置6Yで除去されて回収される。
【0133】
また、第2のユニット10M以降の一次転写ロール5M、5C、5Kに印加される一次転写バイアスも、第1のユニットに準じて制御されている。
こうして、第1のユニット10Yにてイエロートナー画像の転写された中間転写ベルト20は、第2乃至第4のユニット10M、10C、10Kを通して順次搬送され、各色のトナー画像が重ねられて多重転写される。
【0134】
第1乃至第4のユニットを通して4色のトナー画像が多重転写された中間転写ベルト20は、中間転写ベルト20と中間転写ベルト内面に接する支持ロール24と中間転写ベルト20の像保持面側に配置された二次転写ロール(二次転写手段の一例)26とから構成された二次転写部へと至る。一方、記録紙(記録媒体の一例)Pが供給機構を介して二次転写ロール26と中間転写ベルト20とが接触した隙間に予め定められたタイミングで給紙され、二次転写バイアスが支持ロール24に印加される。このとき印加される転写バイアスは、トナーの極性(−)と同極性の(−)極性であり、中間転写ベルト20から記録紙Pに向う静電気力がトナー画像に作用され、中間転写ベルト20上のトナー画像が記録紙P上に転写される。なお、この際の二次転写バイアスは二次転写部の抵抗を検出する抵抗検出手段(図示せず)により検出された抵抗に応じて決定されるものであり、電圧制御されている。
【0135】
この後、記録紙Pは定着装置(定着手段の一例)28における一対の定着ロールの圧接部(ニップ部)へと送り込まれトナー画像が記録紙P上へ定着され、定着画像が形成される。
【0136】
トナー画像を転写する記録紙Pとしては、例えば、電子写真方式の複写機、プリンター等に使用される普通紙が挙げられる。記録媒体は記録紙P以外にも、OHPシート等も挙げられる。
定着後における画像表面の平滑性をさらに向上させるには、記録紙Pの表面も平滑が好ましく、例えば、普通紙の表面を樹脂等でコーティングしたコート紙、印刷用のアート紙等が好適に使用される。
【0137】
カラー画像の定着が完了した記録紙Pは、排出部へ向けて搬出され、一連のカラー画像形成動作が終了される。
【0138】
<プロセスカートリッジ/トナーカートリッジ>
本実施形態に係るプロセスカートリッジについて説明する。
本実施形態に係るプロセスカートリッジは、本実施形態に係る静電荷像現像剤を収容し、静電荷像現像剤により、像保持体の表面に形成された静電荷像をトナー画像として現像する現像手段を備え、画像形成装置に着脱されるプロセスカートリッジである。
【0139】
なお、本実施形態に係るプロセスカートリッジは、上記構成に限られず、現像装置と、その他、必要に応じて、例えば、像保持体、帯電手段、静電荷像形成手段、及び転写手段等のその他手段から選択される少なくとも一つと、を備える構成であってもよい。
【0140】
以下、本実施形態に係るプロセスカートリッジの一例を示すが、これに限定されるわけではない。なお、図に示す主要部を説明し、その他はその説明を省略する。
【0141】
図2は、本実施形態に係るプロセスカートリッジを示す概略構成図である。
図2に示すプロセスカートリッジ200は、例えば、取り付けレール116及び露光のための開口部118が備えられた筐体117により、感光体107(像保持体の一例)と、感光体107の周囲に備えられた帯電ロール108(帯電手段の一例)、現像装置111(現像手段の一例)、及びクリーニングブレード113−1を有する感光体クリーニング装置113(クリーニング手段の一例)を一体的に組み合わせて保持して構成し、カートリッジ化されている。
なお、
図2中、109は露光装置(静電荷像形成手段の一例)、112は転写装置(転写手段の一例)、115は定着装置(定着手段の一例)、300は記録紙(記録媒体の一例)を示している。
【0142】
次に、本実施形態に係るトナーカートリッジについて説明する。
本実施形態に係るトナーカートリッジは、本実施形態に係るトナーを収容し、画像形成装置に着脱されるトナーカートリッジである。トナーカートリッジは、画像形成装置内に設けられた現像手段に供給するための補給用のトナーを収容するものである。
【0143】
なお、
図1に示す画像形成装置は、トナーカートリッジ8Y、8M、8C、8Kの着脱される構成を有する画像形成装置であり、現像装置4Y、4M、4C、4Kは、各々の現像装置(色)に対応したトナーカートリッジと、図示しないトナー供給管で接続されている。また、トナーカートリッジ内に収容されているトナーが少なくなった場合には、このトナーカートリッジが交換される。
【実施例】
【0144】
以下、実施例及び比較例を挙げ、本実施形態をより具体的に詳細に説明するが、本実施形態はこれらの実施例に何ら限定されるものではない。また、「部」及び「%」は特に断りがない限り質量基準である。
【0145】
[トナー粒子の作製]
(トナー粒子(1))
−ポリエステル樹脂分散液の調製−
・エチレングリコール〔和光純薬工業(株)製〕 37部
・ネオペンチルグリコール〔和光純薬工業(株)製〕 65部
・1,9 ノナンジオール〔和光純薬工業(株)製〕 32部
・テレフタル酸〔和光純薬工業(株)製〕 96部
上記モノマーをフラスコに仕込み、1時間をかけて温度200℃まで上げ、反応系内が攪拌されていることを確認したのち、ジブチル錫オキサイドを1.2部投入した。更に、生成する水を留去しながら同温度から6時間をかけて240℃まで温度を上げ、240℃で更に4時間脱水縮合反応を継続し、酸価が9.4mgKOH/g、重量平均分子量13,000、ガラス転移温度62℃であるポリエステル樹脂Aを得た。
【0146】
次いで、ポリエステル樹脂Aを溶融状態のまま、キャビトロンCD1010((株)ユーロテック製)に毎分100部の速度で移送した。別途準備した水性媒体タンクに試薬アンモニア水をイオン交換水で希釈した0.37%濃度の希アンモニア水を入れ、熱交換器で120℃に加熱しながら毎分0.1リットルの速度で上記ポリエステル樹脂溶融体と同時に上記キャビトロンに移送した。回転子の回転速度が60Hz、圧力が5kg/cm
2の条件でキャビトロンを運転し、
体積平均粒径160nm、固形分30%、ガラス転移温度62℃、重量平均分子量Mwが13,000の樹脂粒子が分散された非晶性ポリエステル樹脂分散液を得た。
【0147】
−着色剤粒子分散液の調製−
・シアン顔料〔PigmentBlue15:3、大日精化工業(株)製〕 10部
・アニオン性界面活性剤〔ネオゲンSC、第一工業製薬(株)製〕 2部
・イオン交換水 80部
上記の成分を混合し、高圧衝撃式分散機アルティマイザー〔HJP30006、(株)スギノマシン製〕により1時間分散し、体積平均粒径180nm、固形分20%の着色剤粒子分散液を得た。
【0148】
−離型剤粒子分散液の調製−
・パラフィンワックス〔HNP 9、日本精鑞社製〕 50部
・アニオン性界面活性剤〔ネオゲンSC、第一工業製薬製〕 2部
・イオン交換水 200部
上記成分を120℃に加熱して、IKA社製、ウルトラタラックスT50で十分に混合・分散した後、圧力吐出型ホモジナイザーで分散処理し、体積平均粒径が200nm、固形分20%の離型剤粒子分散液を得た。
【0149】
−トナー粒子(1)の作製−
・ポリエステル樹脂粒子分散液 200部
・着色剤粒子水分散液 25部
・離型剤粒子分散液 30部
・ポリ塩化アルミニウム 0.4部
・イオン交換水 100部
上記の成分をステンレス製フラスコに投入し、IKA社製のウルトラタラックスを用い十分に混合、分散した後、加熱用オイルバスでフラスコを攪拌しながら45℃まで加熱した。45℃で15分保持した後、ここに上記と同じポリエステル樹脂分散液を緩やかに70部追加した。
【0150】
その後、濃度0.5mol/Lの水酸化ナトリウム水溶液を用いて系内のpHを8.0 に調整した後、ステンレス製フラスコを密閉し、攪拌軸のシールを磁力シールして攪拌を継続しながら90℃まで加熱して3時間保持した。反応終了後、降温速度を2℃/分で冷却し、濾過、イオン交換水で十分に洗浄した後、ヌッチェ式吸引濾過により固液分離を行った。これをさらに30℃のイオン交換水3Lを用いて再分散し、15分間300rpmで攪拌・洗浄した。この洗浄操作をさらに6回繰り返し、濾液のpHが7.54、電気伝導度6.5μS/cmとなったところで、ヌッチェ式吸引濾過によりNo.5A ろ紙を用いて固液分離を行った。次いで真空乾燥を12時間継続してトナー粒子(1)を得た。
トナー粒子(1)の体積平均粒径(D50v)は、5.8μmであり、SF1は130であった。
【0151】
[外添剤の作製]
(シリカ粒子の作製)
−シリカ粒子(S1)の作製−
撹拌機、滴下ノズル、温度計を具備した1.5Lのガラス製反応容器にメタノール320部、10%アンモニア水72部を添加して混合し、アルカリ触媒溶液を得た。
このアルカリ触媒溶液を30℃に調整した後、撹拌しながら、テトラメトキシシラン(TMOS)185部と8.0%アンモニア水50部とを同時に滴下を行い、親水性のシリカ粒子分散液(固形分濃度12.0%)を得た。ここで、滴下時間は30分とした。
その後、得られたシリカ粒子分散液をロータリーフィルターR−ファイン(寿工業社製)で固形分濃度40%まで濃縮した。この濃縮したものをシリカ粒子分散液(S1)とした。
シリカ粒子分散液(S1)250部に、疎水化処理剤としてトリメチルシランを、シリカ粒子の固形分に対して20質量%となる量添加し、150℃で2時間反応させ、冷却した後、噴霧乾燥(スプレードライ)により乾燥し、シリカ粒子の表面が疎水化処理された疎水性のシリカ粒子(S1)を得た。
【0152】
−シリカ粒子(S2〜S7)の作製−
メタノール仕込み量、10%アンモニア水量、テトラメトキシシラン(TMOS)量、8%アンモニア水量と滴下時間を調整した以外は、シリカ粒子S1の作製方法と同様の条件で、シリカ粒子(S2〜S7)を作製した。
シリカ粒子(S1〜S7)の作製条件と、得られたシリカ粒子の平均粒径、平均円形度を下記表1に示す。
【0153】
【表1】
【0154】
(潤滑剤粒子N及び潤滑剤粒子P)
潤滑剤粒子Nとして、PTFE粒子(商品名「ルブロンL2(ダイキン工業(株)製)、平均粒径=300nm)を準備した。
潤滑剤粒子Pとして、脂肪酸金属塩粒子(ステアリン酸亜鉛粒子、商品名「SZ−2000(堺化学社製)、平均粒径=3μm)を準備した。
【0155】
(シリカ粒子、PTFE粒子、脂肪酸金属塩粒子の帯電列)
前述の、日本画像学会技術委員会頒布の標準キャリア4種を用いた、日本画像学会標準トナー帯電量測定法(ブローオフ測定法)に準拠した方法により測定した。つまり、キャリア10gに、シリカ粒子、PTFE粒子、又は脂肪酸金属塩粒子を0.5g入れてそれぞれ測定した。
トナー粒子に対して、シリカ粒子は−100から−150(μC/g)、PTFE粒子は−50(μC/g)、脂肪酸金属塩粒子は+80(μC/g)であった。
【0156】
<実施例1>
[トナーの作製]
トナー粒子(1)100部に、潤滑剤粒子P(脂肪酸金属塩粒子)0.02部及び潤滑剤粒子N(PTFE粒子)0.2部を添加し、ヘンシェルミキサーにて撹拌周速30m/secで10分間混合し、混合物を得た。その後、得られた混合物に、さらにシリカ粒子(S1)2.0部を添加し、ヘンシェルミキサーにて撹拌周速30m/secで15分間混合し、トナーを得た。
【0157】
[現像剤の作製]
得られたトナーとキャリアとを、トナー:キャリア=5:95(質量比)の割合でVブレンダーに入れ、20分間撹拌し、現像剤を得た。
【0158】
なお、キャリアは次のように作製されたものを用いた。
・フェライト粒子(体積平均粒子径:50μm) 100部
・トルエン 14部
・スチレン−メチルメタクリレート共重合体 2部
(成分比:90/10、Mw=80000)
・カーボンブラック(R330:キャボット社製) 0.2部
まず、フェライト粒子を除く上記成分を10分間スターラーで撹拌させて、分散した被覆液を調製し、次に、この被覆液とフェライト粒子とを真空脱気型ニーダーに入れて、60℃において30分撹拌した後、さらに加温しながら減圧して脱気し、乾燥させることによりキャリアを得た。
【0159】
<実施例2>
トナーの作製において、潤滑剤粒子P及び潤滑剤粒子Nを添加した後におけるヘンシェルミキサーの攪拌速度及び攪拌時間をそれぞれ30m/sec及び10分間とし、シリカ粒子を添加した後におけるヘンシェルミキサーの攪拌速度及び攪拌時間をそれぞれ30m/sec及び15分間とした以外は、実施例1と同様にしてトナー及び現像剤を得た。
【0160】
<実施例3>
トナーの作製において、潤滑剤粒子P及び潤滑剤粒子Nを添加した後におけるヘンシェルミキサーの攪拌速度及び攪拌時間をそれぞれ30m/sec及び5分間とし、シリカ粒子を添加した後におけるヘンシェルミキサーの攪拌速度及び攪拌時間をそれぞれ30m/sec及び20分間とした以外は、実施例1と同様にしてトナー及び現像剤を得た。
【0161】
<実施例4>
下記表2に示されるシリカ粒子(S2)に変更したこと以外は、実施例1と同様にしてトナー及び現像剤を得た。
【0162】
<実施例5>
下記表2に示されるシリカ粒子(S3)に変更したこと以外は、実施例1と同様にしてトナー及び現像剤を得た。
【0163】
<実施例6>
下記表2に示されるシリカ粒子(S4)に変更したこと以外は、実施例1と同様にしてトナー及び現像剤を得た。
【0164】
<実施例7>
実施例1の潤滑剤粒子Pを、ラウリン酸亜鉛粒子(C
24H
46O
4Zn、和光純薬工業(株)製)に変更したこと以外は、実施例1と同様にしてトナー及び現像剤を得た。
【0165】
<実施例8>
実施例1の潤滑剤粒子Nを、弗化カルシウム粒子(CaF
2)(ステラケミファ(株)製))に変更したこと以外は、実施例1と同様にしてトナー及び現像剤を得た。
【0166】
<実施例9>
実施例1において、潤滑剤粒子Pの添加量を0.005部(トナー粒子に対し0.005質量%)に変更したこと以外は、実施例1と同様にしてトナー及び現像剤を得た。
【0167】
<実施例10>
実施例1において、潤滑剤粒子Pの添加量を0.4部(トナー粒子に対し0.4質量%)に変更したこと以外は、実施例1と同様にしてトナー及び現像剤を得た。
【0168】
<実施例11>
実施例1において、潤滑剤粒子Nの添加量を0.05部(トナー粒子に対し0.05質量%)に変更したこと以外は、実施例1と同様にしてトナー及び現像剤を得た。
【0169】
<実施例12>
実施例1において、潤滑剤粒子Nの添加量を0.5部(トナー粒子に対し0.5質量%)に変更したこと以外は、実施例1と同様にしてトナー及び現像剤を得た。
【0170】
<実施例13>
実施例1において、シリカ粒子の含有量を0.5部(トナー粒子に対し0.5質量%)に、潤滑剤粒子Pの含有量を0.001部(トナー粒子に対し0.001質量%)に、潤滑剤粒子Nの含有量を0.01部(トナー粒子に対し0.01質量%)に変更したこと以外は、実施例1と同様にしてトナー及び現像剤を得た。
【0171】
<実施例14>
実施例1において、シリカ粒子の含有量を0.5部(トナー粒子に対し0.5質量%)に、潤滑剤粒子Pの含有量を0.1部(トナー粒子に対し0.1質量%)に、潤滑剤粒子Nの含有量を0.25部(トナー粒子に対し0.25質量%)に変更したこと以外は、実施例1と同様にしてトナー及び現像剤を得た。
【0172】
<実施例15>
実施例1において、シリカ粒子の含有量を3.0部(トナー粒子に対し3.0質量%)に、潤滑剤粒子Pの含有量を0.006部(トナー粒子に対し0.006質量%)に、潤滑剤粒子Nの含有量を0.06部(トナー粒子に対し0.06質量%)に変更したこと以外は、実施例1と同様にしてトナー及び現像剤を得た。
【0173】
<実施例16>
実施例1において、シリカ粒子の含有量を3.0部(トナー粒子に対し3.0質量%)に、潤滑剤粒子Pの含有量を0.5部(トナー粒子に対し0.5質量%)に、潤滑剤粒子Nの含有量を0.5部(トナー粒子に対し0.5質量%)に変更したこと以外は、実施例1と同様にしてトナー及び現像剤を得た。
【0174】
<比較例1>
トナーの作製において、トナー粒子(1)100部に、シリカ粒子(S1)2.0部、潤滑剤粒子P(脂肪酸金属塩粒子)0.02部、及び潤滑剤粒子N(PTFE粒子)0.2部を添加し、ヘンシェルミキサーにて撹拌周速30m/secで15分間混合し、トナーを得た以外は、実施例1と同様にしてトナー及び現像剤を得た。
【0175】
<比較例2>
トナーの作製において、トナー粒子(1)100部に、シリカ粒子(S1)2.0部、潤滑剤粒子P(脂肪酸金属塩粒子)0.02部、及び潤滑剤粒子N(PTFE粒子)0.2部を添加し、ヘンシェルミキサーにて撹拌周速30m/secで30 分間混合し、トナーを得た以外は、実施例1と同様にしてトナー及び現像剤を得た。
【0176】
<比較例3>
下記表3に示されるシリカ粒子(S5)に変更したこと以外は、実施例1と同様にしてトナー及び現像剤を得た。
【0177】
<比較例4>
下記表3に示される平均粒径を有するシリカ粒子(S6)に変更したこと以外は、実施例1と同様にしてトナー及び現像剤を得た。
【0178】
<比較例5>
下記表3に示される平均粒径を有するシリカ粒子(S7)に変更したこと以外は、実施例1と同様にしてトナー及び現像剤を得た。
【0179】
<比較例6>
実施例1において、潤滑剤粒子Pの含有量を0.0005部(トナー粒子に対し0.0005質量%)に変更したこと以外は、実施例1と同様にしてトナー及び現像剤を得た。
【0180】
<比較例7>
実施例1において、潤滑剤粒子Pの含有量を0.6部(トナー粒子に対し0.6質量%)に変更したこと以外は、実施例1と同様にしてトナー及び現像剤を得た。
【0181】
<比較例8>
実施例1において、潤滑剤粒子Nの含有量を0.002部(トナー粒子に対し0.002質量%)に変更したこと以外は、実施例1と同様にしてトナー及び現像剤を得た。
【0182】
<比較例9>
実施例1において、潤滑剤粒子Nの含有量を0.6部(トナー粒子に対し0.6質量%)に変更したこと以外は、実施例1と同様にしてトナー及び現像剤を得た。
【0183】
<比較例10>
比較例9において、シリカ粒子の含有量を0.3部(トナー粒子に対し0.3質量%)に変更したこと以外は、比較例9と同様にしてトナー及び現像剤を得た。
【0184】
<比較例11>
比較例9において、シリカ粒子の含有量を4.0部(トナー粒子に対し4.0質量%)に変更したこと以外は、比較例9と同様にしてトナー及び現像剤を得た。
【0185】
【表2】
【0186】
【表3】
【0187】
上記表2において、「※1」は潤滑剤粒子Pとして「ラウリン酸亜鉛粒子(C
24H
46O
4Zn、和光純薬工業(株)製)」を用いたことを表す。
また、「※2」は潤滑剤粒子Nとして「弗化カルシウム(CaF
2、ステラケミファ(株)製)」を用いたことを表す。
【0188】
<評価>
各例の現像剤を画像形成装置「ApeosPortIV C5575(富士ゼロックス社製)改造機」の現像装置に収容した。この画像形成装置を用いて、高温高湿(温度29℃、湿度80%RH)の環境下において、画像密度1%の画像(a)をA4紙に連続20000枚出力した後、画像密度40%のハーフトーン画像(b)をA4紙に1枚出力した。その後、以下の評価を実施した。評価結果を表4に示す。
【0189】
(感光体表面におけるフィルミングの評価)
連続して形成した画像(a)における画像部及び非画像部について、感光体表面に形成された潤滑剤又はトナーのフィルミングを目視観察による官能評価にて判断した。判断基準は以下の通りである。
なお、G2までを許容範囲とした。
−評価基準−
G1:フィルミング全くなし。
G2:薄っすらとフィルミングが観察される程度で、画質に影響の出ないレベル。
G3:フィルミングのレベルが、G2とG4の中間で、画質に影響が現れ始める。
G4:表面に明らかにフィルミングがあり、色筋、白筋として画質に現れる。
【0190】
(画像欠陥:画像(a)における画像部と非画像部との境界において生じる画像欠陥の評価)
最後に出力したハーフトーン画像(b)を目視にて観察し、画像(a)における画像部と非画像部との境界において生じる画像欠陥(筋状の画像欠陥)の発生状況を評価した。
なお、G2までを許容範囲とした。
−評価基準−
G1:画像部と非画像部との境界において生じる筋状の画像欠陥は観察されず、画質に問題なし。
G2:画像部と非画像部との境界において生じる筋状の画像欠陥が薄っすらと観察されるが、画質には問題なし。
G3:画像部と非画像部との境界において生じる筋状の画像欠陥が観察され、実使用上での懸念あり。
G4:画像部と非画像部との境界において生じる筋状の画像欠陥がはっきりと観察され、画質に問題あり。
【0191】
(画像欠陥:クリーニング不良による欠陥の評価)
クリーニングブレードからのすり抜けによる色筋などの画像欠陥の発生状況を評価した。
なお、G2までを許容範囲とした。
−評価基準−
G1:画質に問題なし。
G2:画像上に薄っすらと色筋が観察されるが、画質には問題なし。
G3:画像上に色筋や像流れがわずかに観察されるが、許容の範囲である。
G4:画像上に色筋や像流れがはっきりと観察され、明らかに画質に問題がある。
【0192】
【表4】
【0193】
上記結果から、本実施例は、比較例に比べ、高温高湿環境下において連続して同一の画像を形成した後に前記同一の画像とは異なるハーフトーン画像を形成したときに、前記同一の画像における画像部と非画像部との境界において生じる画像欠陥の発生が抑制されていることがわかる。
また、上記結果から、本実施例は、比較例に比べ、前記同一の画像における画像部と非画像部との境界において生じる画像欠陥の発生の抑制と、クリーニング不良による画像欠陥の抑制と、が両立されていることがわかる。