特許第6903986号(P6903986)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6903986熱膨張性シート及び熱膨張性シートの製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6903986
(24)【登録日】2021年6月28日
(45)【発行日】2021年7月14日
(54)【発明の名称】熱膨張性シート及び熱膨張性シートの製造方法
(51)【国際特許分類】
   B41M 5/36 20060101AFI20210701BHJP
   B41M 5/52 20060101ALI20210701BHJP
   B41M 3/06 20060101ALI20210701BHJP
   B41J 2/01 20060101ALI20210701BHJP
   B32B 27/00 20060101ALI20210701BHJP
   B41M 5/00 20060101ALI20210701BHJP
   B32B 5/18 20060101ALN20210701BHJP
【FI】
   B41M5/36
   B41M5/52 100
   B41M3/06 F
   B41M3/06 C
   B41J2/01 501
   B41J2/01 125
   B32B27/00 C
   B41M5/00 100
   !B32B5/18
【請求項の数】8
【全頁数】18
(21)【出願番号】特願2017-58010(P2017-58010)
(22)【出願日】2017年3月23日
(65)【公開番号】特開2018-158549(P2018-158549A)
(43)【公開日】2018年10月11日
【審査請求日】2020年3月13日
(73)【特許権者】
【識別番号】000001443
【氏名又は名称】カシオ計算機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100095407
【弁理士】
【氏名又は名称】木村 満
(72)【発明者】
【氏名】本柳 吉宗
(72)【発明者】
【氏名】高橋 秀樹
(72)【発明者】
【氏名】堀内 雄史
(72)【発明者】
【氏名】三井 郷史
【審査官】 野田 定文
(56)【参考文献】
【文献】 特開平09−175099(JP,A)
【文献】 特開平10−278199(JP,A)
【文献】 特開平02−179789(JP,A)
【文献】 特開2016−112733(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B41M 5/36 − 5/52
B41M 3/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材の一方の面上に形成されたアンカー層と、
前記アンカー層の上に形成された熱膨張層と、を備え、
前記基材は樹脂からなるフィルムであり、
前記アンカー層は、ポリエステル・アクリル・ウレタン複合樹脂を含む、
ことを特徴とする熱膨張性シート。
【請求項2】
前記基材の一方の面前記アンカー層の前記基材がある側の面とに接着し、前記熱膨張層との接着性が前記アンカー層よりも低い第2の接着層を、さらに備える、
ことを特徴とする請求項1に記載の熱膨張性シート。
【請求項3】
前記基材の前記熱膨張層がある側の最表面に形成され、かつ、前記第2の接着層と同じ材料からなる第1のインク受容層を、さらに備える、
ことを特徴とする請求項2に記載の熱膨張性シート。
【請求項4】
前記基材の他方の面には接着層及び剥離が形成され、
前記剥離の、前記接着層に形成されている面と反対の面には、第2のインク受容層が形成される、
ことを特徴とする請求項2又は3に記載の熱膨張性シート。
【請求項5】
基材の一方の面上にアンカー層を形成する工程と、
前記アンカー層の上に熱膨張層を形成する工程と、を備え、
前記基材は樹脂からなるフィルムであり、
前記アンカー層を形成する工程では、
前記基材の一方の面上に、ポリエステル・アクリル・ウレタン複合樹脂を用いて、アンカー層を形成する、
ことを特徴とする熱膨張性シートの製造方法。
【請求項6】
前記基材の一方の面上には、前記熱膨張層との接着性が前記アンカー層よりも低い第2の接着層が設けられており、
前記第2の接着層上に前記樹脂を塗布することによって、前記アンカー層を形成する、
ことを特徴とする請求項に記載の熱膨張性シートの製造方法。
【請求項7】
前記基材の前記熱膨張層がある側の最表面に、前記第2の接着層と同じ材料からなる第1のインク受容層を形成する工程を、さらに備える、
ことを特徴とする請求項6に記載の熱膨張性シートの製造方法。
【請求項8】
前記基材の他方の面には接着層及び剥離が形成され、
前記剥離の、前記接着層に形成されている面と反対の面には、第2のインク受容層が形成される、
ことを特徴とする請求項6又は7に記載の熱膨張性シートの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、吸収した熱量に応じて発泡して膨張する熱膨張性シート及び熱膨張性シートを製造する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、基材シートの一方の面上に、吸収した熱量に応じて発泡し膨張する熱膨張性材料を含む熱膨張層を形成した熱膨張性シートが知られている。この熱膨張性シート上に光を熱に変換する光熱変換層を形成し、光熱変換層に光を照射することで、熱膨張層を部分的又は全体的に膨張させることができる。また、光熱変換層の形状を変化させることで、熱膨張性シート上に立体的な造形物(立体画像)を形成する方法も知られている(例えば、特許文献1、2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開昭64−28660号公報
【特許文献2】特開2001−150812号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、基材上に直接熱膨張層を形成した熱膨張性シートでは、熱膨張層を発泡させて膨張させる際に、基材から熱膨張層が剥離することがある。また、剥離は、特に基材として樹脂製のシート(フィルム)を使用した場合に多く発生する。
【0005】
従って、熱膨張層を膨張させる際に、熱膨張層が基材から剥離することを抑制することが可能な熱膨張性シート及び熱膨張性シートの製造方法が求められている。
【0006】
本発明は、上記実情に鑑みてなされたものであり、熱膨張層を膨張させた際に、熱膨張層が基材から剥離することを抑制することが可能な熱膨張性シート及び熱膨張性シートの製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するため、本発明に係る熱膨張性シートは、
基材の一方の面上に形成されたアンカー層と、
前記アンカー層の上に形成された熱膨張層と、を備え、
前記基材は樹脂からなるフィルムであり、
前記アンカー層は、ポリエステルアクリルウレタン複合樹脂を含む、
ことを特徴とする。
【0008】
上記目的を達成するため、本発明に係る熱膨張性シートの製造方法は、
基材の一方の面上にアンカー層を形成する工程と、
前記アンカー層の上に熱膨張層を形成する工程と、を備え、
前記基材は樹脂からなるフィルムであり、
前記アンカー層を形成する工程では、
前記基材の一方の面上に、ポリエステル・アクリル・ウレタン複合樹脂を用いて、アンカー層を形成する、
ことを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、熱膨張層を膨張させた際に、熱膨張層が基材から剥離することを抑制することが可能な熱膨張性シート及び熱膨張性シートの製造方法を提供することを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】実施形態1に係る熱膨張性シートの概要を示す断面図である。
図2】実施形態1に係る熱膨張性シートの製造方法の概要を示す断面図である。
図3】実施形態1に係るコロナ処理装置の概要を示す図である。
図4】実施形態1に係る立体画像形成ユニットの概要を示す図である。
図5】実施形態1に係る立体画像形成プロセスを示すフローチャートである。
図6】実施形態1に係る立体画像形成プロセスの概要を示す断面図である。
図7】(a)第1の水準で加熱した場合の光熱変換層の黒濃度と熱膨張層の凸量との関係を示すグラフである。(b)第2の水準で加熱した場合の光熱変換層の黒濃度と熱膨張層の凸量との関係を示すグラフである。
図8】実施形態2に係る熱膨張性シートの概要を示す断面図である。
図9】実施形態2に係る熱膨張性シートの製造方法の概要を示す断面図である。
図10】実施形態3に係る熱膨張性シートの概要を示す断面図である。
図11】実施形態3に係る熱膨張性シートの製造方法の概要を示す断面図である。
図12】変形例に係る熱膨張性シートの概要を示す断面図である。
図13】変形例に係る熱膨張性シートの概要を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の実施の形態に係る熱膨張性シート及び熱膨張性シートの製造方法について、図面を用いて詳細に説明する。
【0012】
(実施形態1)
実施形態1に係る熱膨張性シート10は、図1に示すように、基材11、アンカー層12、熱膨張層13、第1のインク受容層14及び第2のインク受容層15を備える。また、詳細に後述するように、熱膨張性シート10は、図4(a)〜図4(c)に概要を示す立体画像形成システム70で、印刷が施され、凹凸を有する造形物(立体画像)が形成される。
【0013】
基材11は、熱膨張層13等を支持するシート状の部材である。基材11としては、一般的に使用されている樹脂製のシート状の部材(フィルム)を適宜選択して使用することができる。基材11としては、ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィン系樹脂、ポリエステル系樹脂、ナイロン等のポリアミド系樹脂、ポリ塩化ビニル系樹脂、ポリイミド系樹脂、シリコーン系樹脂等からを含むシート状の材料を使用することができる。また、基材11は、熱膨張層13が全体的又は部分的に発泡により膨張した時に、基材11の反対側(図1に示す下側)に隆起せず、また、しわが生じたり、大きく波打ったりしない程度の強度を備える。加えて、熱膨張層を発泡させる際の加熱に耐える程度の耐熱性を有する。更に、基材11は、上記の強度及び耐熱性に加えて、伸縮性を有していてもよい。
【0014】
なお、後述するように本実施形態では、インク受容層とシートとが一体に形成されたシート状の部材を基材11として使用することもできる。具体的に、基材11として、上述した材料から形成されたシート(フィルム)の最上面(最表面)にインク受容層を備えるシート状の部材を用いて、熱膨張性シート10を製造することもできる。このようなシートを基材11として使用する場合、基材11に設けられているインク受容層を第2のインク受容層15として使用する。
【0015】
アンカー層12は、基材11の一方の面(図1に示す上面)上に設けられ、アンカー層12の上には熱膨張層13が設けられる。アンカー層12は、基材11と熱膨張層13との両方に対し、良好な接着性を有する層である。また、アンカー層12は、基材11と熱膨張層13との間の接着力を高める機能を有する。アンカー層12を設けることによって、熱膨張層13を発泡、膨張させる際に、熱膨張層13の下面が基材11から剥離することを防ぐことができる。
【0016】
アンカー層12は、基材11と熱膨張層13とに対して良好な接着性を有する材料を含む層である。具体的に、アンカー層12は、ポリエステル、アクリル、ポリウレタン又はこれらのいずれかの共重合体からなる群から選択される少なくとも1つの樹脂を含む。例えば、アンカー層12に含まれる樹脂は、例えばポリエステル系樹脂のみを含んでもよく、ポリエステル系樹脂とポリウレタン系樹脂とを含んでもよい。また、アンカー層12に含まれる樹脂は変性剤によって変性されていてもよい。特に、本実施形態では、アンカー層12は、ポリエステル・アクリル・ウレタン複合樹脂を含むことが好ましい。なお、これに限られるものではないが、ポリエステル・アクリル・ウレタン複合樹脂を含む水分散液としては、高松油脂(株)社製「WAC−17XC」等が挙げられる。
【0017】
また、本実施形態では、アンカー層12は、上記の材料から形成される場合に限られず、基材11の表面にコロナ処理を施すことによって形成される表面改質層を含む。具体的には、表面改質層は、後述する図3に示すコロナ処理装置60を用いて形成される。この表面改質層は、改質されていない基材11と比較して、熱膨張層13に対する接着性が向上された層である。表面改質層は、熱膨張層13と良好に接着するため、熱膨張層13の膨張時に、熱膨張層13の剥離を抑制することができる。
【0018】
熱膨張層13は、基材11の一方の面(図1では、上面)上に設けられたアンカー層12の上に、アンカー層12に接して形成される。熱膨張層13は、加熱温度、加熱時間に応じた大きさに膨張する層であって、バインダ中に複数の熱膨張性材料(熱膨張性マイクロカプセル、マイクロカプセル)が分散配置されている。また、詳細に後述するように、本実施形態では、基材11の上面(表面)に設けられた第1のインク受容層14上、及び/又は基材11の下面(裏面)に光熱変換層を形成し、光を照射することで、光熱変換層が設けられた領域を発熱させる。熱膨張層13は、表面及び/又は裏面の光熱変換層で生じた熱を吸収して膨張するため、熱膨張性シートの特定の領域のみを選択的に膨張させることができる。
【0019】
バインダとしては、酢酸ビニル系ポリマー、アクリル系ポリマー等の熱可塑性樹脂を用いる。また、熱膨張性マイクロカプセルは、プロパン、ブタン、その他の低沸点気化性物質を、熱可塑性樹脂の殻内に含むものである。殻は、例えば、ポリスチレン、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリ酢酸ビニル、ポリアクリル酸エステル、ポリアクリロニトリル、ポリブタジエン、あるいは、それらの共重合体等の熱可塑性樹脂から形成される。熱膨張性マイクロカプセルの平均粒径は、約5〜50μmである。このマイクロカプセルを熱膨張開始温度以上に加熱すると、樹脂からなる高分子の殻が軟化し、内包されている低沸点気化性物質が気化し、その圧力によってカプセルが膨張する。用いるマイクロカプセルの特性にもよるが、マイクロカプセルは膨張前の粒径の5倍程度に膨張する。なお、マイクロカプセルの粒径には、ばらつきがあり、全てのマイクロカプセルが同じ粒径を有しているわけではない。
【0020】
第1のインク受容層14は、熱膨張層13上に形成される。第1のインク受容層14は、印刷工程で使用されるインク、例えば、インクジェットプリンタのインクを受容し、定着させる層である。インク受容層14は、印刷工程で使用されるインクに応じて、汎用されている材料を使用して形成される。例えば水性インクを利用する場合で、空隙を利用してインクを受容するタイプでは、第1のインク受容層14は、例えば多孔質シリカを用いて形成される。インクを膨潤させて受容するタイプでは、第1のインク受容層14は、例えば、ポリビニルアルコール(PVA)系、ポリエステル系、ポリウレタン系、アクリル系等からなる群から選択される樹脂を用いて形成される。なお、インクジェット方式で紫外線硬化タイプのインクを用いる場合等、印刷方式に応じて、熱膨張層13の上に直接インクを定着させることが可能であれば、第1のインク受容層14は省略することが可能である。また、立体画像の形成方法及び/又は熱膨張性シートの用途などによって、熱膨張性シート10の表面に印刷を施す必要がない場合も、第1のインク受容層14を省略することが可能である。
【0021】
第2のインク受容層15は、基材11の他方の面(図1に示す下面)上に形成される。第2のインク受容層15は、第1のインク受容層14と同様に印刷工程で使用されるインク、例えば、インクジェットプリンタのインクを受容し、定着させる層である。第2のインク受容層15は、第1のインク受容層14と同様の材料を用いて形成される。本実施形態では、基材11として樹脂製のフィルムを用いるため、基材11の裏面(図1に示す下面)上に光熱変換層を構成するインクを定着させるために必要となる層である。なお、第2のインク受容層15は、裏面に光熱変換層を形成しない場合は、省略することも可能である。
【0022】
(熱膨張性シートの製造方法)
次に、熱膨張性シート10の製造方法を図2(a)〜図2(d)を用いて説明する。
まず、基材11として樹脂製のシート状の材料、例えばポリエチレンテレフタレート(PET)からなるフィルムを用意する。基材11は、ロール状であっても、予め裁断されていてもよい。
【0023】
まず、基材11の裏面(図2(a)に示す下面)に第2のインク受容層15を形成するため、第2のインク受容層15を構成する材料、例えば多孔質シリカ、PVA等から選択される材料を溶剤中に分散させ、塗布液を調製する。続いて、この塗布液を、バーコータ、ローラーコータ、スプレーコータ等の方式による公知の塗布装置を用いて、基材11の裏面上に塗布する。続いて、塗膜を乾燥させ、図2(a)に示すように、第2のインク受容層15を形成する。なお、基材11の裏面に予め第2のインク受容層15が形成されたシート、例えば、OHP(Overhead projector)シートのような最表面にインク受容層が形成されたPETフィルムを利用することで、第2のインク受容層15を形成する工程を省くことも可能である。
【0024】
次に、基材11の一方の面上(図2(a)に示す上面)に、アンカー層12を形成するため、ポリエステル、アクリル、ポリウレタン、又はこれらのいずれかの共重合体からなる群から選択される少なくとも1つの樹脂を含む塗布液(例えば、水分散液)を調製する。続いて、バーコータ、ローラーコータ、スプレーコータ等の公知の塗布装置を用いて、塗布液を基材11上に塗布する。続いて塗膜を乾燥させ、図2(b)に示すように、アンカー層12を形成する。
【0025】
アンカー層12を形成する工程は、上記に代えて、図3に模式的に示すコロナ処理装置60を用いてコロナ処理を施してもよい。コロナ処理装置60は、図3に示すように、いわゆるロールtoロール方式の処理装置であり、処理ロール61、電極62及びガイドロール63を備える。処理前の基材11は、ガイドロール63によって処理ロール61へと導かれる。高周波電源装置(図示せず)から高周波の高電圧が処理ロール61と電極62との間に印加されると、図3に破線で示す領域内で処理ロール61と電極62との間にコロナ放電が生ずる。このコロナ放電領域下を基材11が通過することにより、基材11の表面にコロナ処理が施され、基材11上に表面改質層(アンカー層12)が形成される。また、コロナ処理装置60は、ロールtoロール方式に限らず、枚葉式であってもよい。
【0026】
次に、熱可塑性樹脂等からなるバインダと熱膨張性材料(熱膨張性マイクロカプセル)とを混合させ、熱膨張層13を形成するための塗布液を調製する。続いて、バーコータ、ローラーコータ、スプレーコータ等の公知の塗布装置を用いて、塗布液をアンカー層12上に塗布する。続いて、塗膜を乾燥させ、図2(c)に示すように熱膨張層13を形成する。なお、目標とする熱膨張層13の厚みを得るため、塗布液の塗布及び乾燥を複数回行ってもよい。
【0027】
次に、第1のインク受容層14を構成する材料、例えば多孔質シリカ、PVA等から選択される材料を用いて塗布液を調製する。続いて、この塗布液を、バーコータ、ローラーコータ、スプレーコータ等の方式による公知の塗布装置を用いて、熱膨張層13上に塗布する。なお、目標とする第1のインク受容層14の厚みを得るため、塗布液の塗布及び乾燥を複数回行ってもよい。続いて、塗膜を乾燥させ、図2(d)に示すように、第1のインク受容層14を形成する。また、ロール状の基材11を用いた場合は、立体画像形成システム70に適合する大きさに裁断を行う。
【0028】
以上の工程により、熱膨張性シート10が製造される。
なお、第2のインク受容層15を形成する工程は、アンカー層12、熱膨張層13及び第1のインク受容層14を形成した後で行ってもよい。
【0029】
(立体画像形成システム)
次に、本実施形態の熱膨張性シート10に立体画像を形成する立体画像形成システム70について説明する。図4(a)〜図4(c)に示すように、立体画像形成システム70は、制御ユニット71と、印刷ユニット72と、膨張ユニット73と、表示ユニット74と、天板75と、フレーム80と、を備える。図4(a)は、立体画像形成システム70の正面図であり、図4(b)は、天板75を閉じた状態における立体画像形成システム70の平面図であり、図4(c)は、天板75を開いた状態における立体画像形成システム70の平面図である。なお、図4(a)〜図4(c)において、X方向は水平方向と同一であり、Y方向はシートが搬送される搬送方向Dと同一であり、更にZ方向は鉛直方向と同一である。X方向、Y方向及びZ方向は、互いに直交する。
【0030】
制御ユニット71、印刷ユニット72、膨張ユニット73は、それぞれ図4(a)に示すようにフレーム80内に載置される。具体的に、フレーム80は、一対の略矩形状の側面板81と、側面板81の間に設けられた連結ビーム82とを備え、側面板81の上方に天板75が渡されている。また、側面板81の間に渡された連結ビーム82の上に印刷ユニット72及び膨張ユニット73がX方向に並んで設置され、連結ビーム82の下に制御ユニット71が固定されている。表示ユニット74は天板75内に、天板75の上面と高さが一致するように埋設されている。
【0031】
制御ユニット71は、CPU(Central Processing Unit)、ROM(Read Only Memory)及びRAM(Random Access Memory)等を備え、印刷ユニット72、膨張ユニット73及び表示ユニット74を制御する。
【0032】
印刷ユニット72は、インクジェット方式の印刷装置である。図4(c)に示すように、印刷ユニット72は、熱膨張性シート10を搬入するための搬入部72aと、熱膨張性シート10を排出するための排出部72bと、を備える。印刷ユニット72は、搬入部72aから搬入された熱膨張性シート10の表面又は裏面に指示された画像を印刷し、画像が印刷された熱膨張性シート10を排出部72bから排出する。また、印刷ユニット72には、後述するカラーインク層92を形成するためのカラーインク(シアン(C)、マゼンダ(M)、イエロー(Y))、と、表側光熱変換層91と裏側光熱変換層93とを形成するための黒色インク(カーボンブラックを含む)とが備えられている。なお、カラーインク層92において黒又はグレーの色を形成するため、カラーインクとして、カーボンブラックを含まない黒のカラーインクを更に備えてもよい。
【0033】
印刷ユニット72は、熱膨張性シート10の表面に印刷するカラー画像(カラーインク層92)を示すカラー画像データを制御ユニット71から取得し、カラー画像データに基づいて、カラーインク(シアン、マゼンタ、イエロー)を用いてカラー画像(カラーインク層92)を印刷する。カラーインク層92の黒又はグレーの色は、CMYの3色を混色して、もしくは、カーボンブラックを含まない黒のカラーインクを更に使用して形成する。
【0034】
また、印刷ユニット72は、熱膨張性シート10の表面において発泡及び膨張させる部分を示すデータである表面発泡データに基づき、黒色インクを用いて表側光熱変換層91を印刷する。同様に、熱膨張性シート10の裏面において発泡及び膨張させる部分を示すデータである裏面発泡データに基づき、黒色インクを用いて裏側光熱変換層93を印刷する。また、カーボンブラックを含む黒色インクは、光を熱に変換する材料の一例である。黒色インクの濃度がより濃く形成された部分ほど、熱膨張層13の膨張高さは高くなる。このため、黒色インクの濃度は、目標高さに対応するように濃淡が決定される。
【0035】
膨張ユニット73は、熱膨張性シート10に熱を加えて膨張させる膨張装置である。図4(c)に示すように、膨張ユニット73は、熱膨張性シート10を搬入するための搬入部73aと、熱膨張性シート10を排出するための排出部73bと、を備える。膨張ユニット73は、搬入部73aから搬入された熱膨張性シート10に熱を加えて膨張させ、膨張した熱膨張性シート10を排出部73bから排出する。膨張ユニット73は内部に照射部(図示せず)を備える。照射部は、例えば、ハロゲンランプであり、熱膨張性シート10に対して、近赤外領域(波長750〜1400nm)、可視光領域(波長380〜750nm)又は中赤外領域(波長1400〜4000nm)の光を照射する。カーボンブラックを含む黒色インクが印刷された熱膨張性シート10に光を照射すると、黒色インクが印刷された領域では、黒色インクが印刷されていない領域に比べて、より効率良く光が熱に変換される。そのため、熱膨張層13のうち、黒色インクが印刷された領域が主に加熱される。その結果、黒色インクが印刷された領域内の熱膨張性材料が発泡し、熱膨張層13が膨張する。
【0036】
表示ユニット74は、タッチパネル等から構成される。表示ユニット74は、例えば図4(b)に示すように、印刷ユニット72によって熱膨張性シート10に印刷される画像(図4(b)に示す星)を表示する。また、表示ユニット74は、操作ガイド等を表示し、ユーザは、表示ユニット74に触れることで、立体画像形成システム70を操作することが可能である。
【0037】
(立体画像形成処理)
次に、図5に示すフローチャート及び図6(a)〜図6(e)に示す熱膨張性シート10の断面図を参照して、立体画像形成システム70によって熱膨張性シート10に立体画像を形成する処理の流れを説明する。
【0038】
第1に、ユーザは、立体画像が形成される前の熱膨張性シート10を準備し、表示ユニット74を介して、カラー画像データ、表面発泡データ及び裏面発泡データを指定する。そして、熱膨張性シート10を、その表面を上側に向けて印刷ユニット72に挿入する。印刷ユニット72は、挿入された熱膨張性シート10の表面に光熱変換層(表側光熱変換層91)を印刷する(ステップS1)。表側光熱変換層91は、光を熱に変換する材料、具体的にはカーボンブラックを含む黒色インクで形成された層である。印刷ユニット72は、指定された表面発泡データに従って、熱膨張性シート10の表面に、カーボンブラックを含む黒色インクを吐出する。その結果、図6(a)に示すように、第1のインク受容層14上に表側光熱変換層91が形成される。なお、理解を容易とするため、第1のインク受容層14上に表側光熱変換層91が形成されているように図示しているが、より正確には黒色インクは第1のインク受容層14中に受容されているため、第1のインク受容層14中に光熱変換層が形成されている。
【0039】
第2に、ユーザは、光熱変換層91が印刷された熱膨張性シート10を、その表面を上側に向けて膨張ユニット73に挿入する。膨張ユニット73は、挿入された熱膨張性シート10へ表面から光を照射して加熱する(ステップS2)。具体的に説明すると、膨張ユニット73は、照射部によって熱膨張性シート10の表面に光を照射する。熱膨張性シート10の表面に印刷された表側光熱変換層91は、照射された光を吸収することによって発熱する。その結果、図6(b)に示すように、熱膨張性シート10のうちの表側光熱変換層91が印刷された領域が盛り上がって膨張する。また、図6(b)において、右に示す表側光熱変換層91の黒色インクの濃度を、左に示す表側光熱変換層91と比較して濃くすると、図示するように、濃く印刷された領域をより高く膨張させることが可能となる。
【0040】
第3に、ユーザは、表面が加熱されて膨張した熱膨張性シート10を、その表面を上側に向けて印刷ユニット72に挿入する。印刷ユニット72は、挿入された熱膨張性シート10の表面にカラー画像(カラーインク層92)を印刷する(ステップS3)。具体的には、印刷ユニット72は、指定されたカラー画像データに従って、熱膨張性シート10の表面に、シアンC、マゼンタM及びイエローYの各インクを吐出する。その結果、図6(c)に示すように、第1のインク受容層14及び表側光熱変換層91の上にカラーインク層92が形成される。
【0041】
第4に、ユーザは、カラーインク層92が印刷された熱膨張性シート10を、その裏面を上側に向けて膨張ユニット73に挿入する。膨張ユニット73は、挿入された熱膨張性シート10を裏面から加熱し、熱膨張性シート10の表面に形成されたカラーインク層92を乾燥させる(ステップS4)。具体的に説明すると、膨張ユニット73は、照射部によって熱膨張性シート10の裏面に光を照射させ、カラーインク層92を加熱し、カラーインク層92中に含まれる溶媒を揮発させる。
【0042】
第5に、ユーザは、カラーインク層92が印刷された熱膨張性シート10を、その裏面を上側に向けて印刷ユニット72に挿入する。印刷ユニット72は、挿入された熱膨張性シート10の裏面に光熱変換層(裏側光熱変換層93)を印刷する(ステップS5)。裏側光熱変換層93は、熱膨張性シート10の表側に印刷された光熱変換層91と同様に、光を熱に変換する材料、具体的にはカーボンブラックを含む黒色インクで形成された層である。印刷ユニット72は、指定された裏面発泡データに従って、熱膨張性シート10の裏面に、カーボンブラックを含む黒色インクを吐出する。その結果、図6(d)に示すように、基材11の裏面に裏側光熱変換層93が形成される。裏側光熱変換層93についても、右に示す裏側光熱変換層93の黒色インクの濃度を、左に示す裏側光熱変換層93と比較して濃くすると、図示するように濃く印刷された領域をより高く膨張させることが可能となる。
【0043】
第6に、ユーザは、裏側光熱変換層93が印刷された熱膨張性シート10を、その裏面を上側に向けて膨張ユニット73に挿入する。膨張ユニット73は、挿入された熱膨張性シート10へ裏面から光を照射して加熱する(ステップS6)。具体的に説明すると、膨張ユニット73は、照射部(図示せず)によって熱膨張性シート10の裏面に光を照射させる。熱膨張性シート10の裏面に印刷された裏側光熱変換層93は、照射された光を吸収することによって発熱する。その結果、図6(e)に示すように、熱膨張性シート10のうちの裏側光熱変換層93が印刷された領域が盛り上がって膨張する。
【0044】
以上のような手順によって、熱膨張性シート10に立体画像が形成される。
【0045】
なお、光熱変換層は表側のみ又は裏側のみに形成されてもよい。光熱変換層を表側のみに印刷する場合は、上記の処理のうちステップS1〜S4を実施する。一方、光熱変換層を裏側のみに形成する場合は、上記の処理のうち、ステップS3〜S6を実施する。
【0046】
本実施形態の熱膨張性シート10及び熱膨張性シート10の製造方法によれば、基材11と熱膨張層13との間にアンカー層12を設けることによって、基材11として樹脂製のシートを用いた場合であっても、熱膨張層13を膨張させた際に、熱膨張層13が基材11から剥離することを抑制することが可能である。
【0047】
また、熱膨張性シート10の製造方法において、いずれかの面上に予めインク受容層が形成された基材11を用い、更に予め形成されているインク受容層を、第2のインク受容層15として使用することにより、製造工程の簡略化を図ることが可能である。
【0048】
(実施例)
次に、実施例として、本実施形態と同様に基材上にアンカー層を形成し、更にアンカー層上に熱膨張層を形成した熱膨張性シートと、比較例として、アンカー層を設けずに基材上に熱膨張層を形成した熱膨張性シートと、を加熱し、膨張させた例を説明する。実施例、比較例ともに基材としては、100μmの厚みのポリエチレンテレフタレート(PET)を使用した。また、アンカー層として、高松油脂(株)社製「WAC−17XC」を使用し、アンカー層は数μmの厚みに形成した。熱膨張層は実施例、比較例ともに同一条件で形成した。
【0049】
これらの熱膨張性シートの表面上に、異なる黒濃度の光熱変換層を形成した。黒濃度は、光熱変換層を印刷する際のカラーデータ上でのブラック(K)の濃度である。K100は、所謂ベタ黒(K100%)である。K10、K20、K30、K40、K50、K60、K70、K80及びK90は、それぞれカラーデータ上でのブラック(K)の濃度が、10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%及び90%であることを示す。なお、光熱変換層は熱膨張性シートの表側のみに形成し、光熱変換層は全て同一の形状に形成した。
【0050】
また、加熱量(光の照射量)としては、2つの水準を設定した。第1は、加熱量が多く、実施例、比較例の両方で黒濃度が高い領域において剥離が生ずる水準(図7(a))、第2は、実施例、比較例の片方のみで剥離が生ずる水準である(図7(b))。実施例と比較例との熱膨張性シートに対し、この2つの水準で光を照射し、熱膨張層を発泡、膨張させ、熱膨張層の膨張高さ(凸量)を測定した。なお、熱膨張性シート上に設けられた異なる濃度の光熱変換層に対し、同一条件で光を照射しているため、黒濃度が高い光熱変換層ほど、多く発熱することとなる。従って、熱膨張層のうち黒濃度が高い光熱変換層が形成された領域ほど、多く加熱されることとなる。
【0051】
図7(a)に、第1の水準(加熱量大)における、実施例と比較例の熱膨張性シートの凸量(mm)を示す。実施例では、K100において熱膨張層の剥離が生じた。しかし、図7(a)に示されるように、K90まで熱膨張層の剥離は生じず、加熱量に応じた凸量が得られた。これに対し、比較例では、K60までは剥離が生じなかったものの、K70以降で剥離が生じた。
【0052】
次に、図7(b)に、第2の水準(加熱量小)における、実施例と比較例の熱膨張性シートの凸量(mm)を示す。実施例では、図7(a)に示されるように、K100まで熱膨張層の剥離は生じず、加熱量に応じた凸量が得られた。これに対し、比較例では、K60までは剥離が生じなかったものの、K70以降で剥離が生じた。
【0053】
このように、図7(a)及び図7(b)から、実施例では、アンカー層を設けることにより、基材と熱膨張層との接着性が高まり、剥離が抑制できることが明らかとなった。また、実施例、比較例ともに剥離が生ずるまでは、ほぼ同じ曲線を描いて凸量が増加しており、アンカー層が特に熱膨張層の膨張に影響を及ぼさない点も明確であった。
【0054】
(実施形態2)
実施形態2に係る熱膨張性シート20を図8に示す。実施形態2の熱膨張性シート20が実施形態1の熱膨張性シート10と異なるのは、インク受容層をアンカー層22として利用する点にある。実施形態1と同様の構成要素には、同一の番号を付し、詳細な説明は省略する。
【0055】
熱膨張性シート20は、図8に示すように、基材11、アンカー層22、熱膨張層13及び第1のインク受容層14を備える。基材11、熱膨張層13、及び第1のインク受容層14は実施形態1に係る熱膨張性シート10と同様である。
【0056】
また、本実施形態では、第1のインク受容層14のみを備える構成を例に挙げているため、光熱変換層は表側のみに形成される。従って、立体画像形成処理は、図5に示すフローチャートのステップS1〜S4を行う。なお、熱膨張性シート20は、実施形態1と同様に基材11の裏面に第2のインク受容層15を備えてもよい。この場合は、実施形態1と同様の立体画像形成処理(図5に示すフローチャートのステップS1〜S6)が施される。
【0057】
本実施形態のアンカー層22は、第1のインク受容層14として用いられる材料と同様に、インクジェットプリンタのインクを受容し、定着させることが可能な材料から形成される。更にアンカー層22は、熱膨張層13を構成する材料とも良好な接着性を備える。アンカー層22としては、例えば、インクを膨潤させて受容するタイプとして用いられる、ポリビニルアルコール(PVA)系、ポリエステル系、ポリウレタン系、アクリル系等からなる群から選択される1つ又は複数の樹脂を用いることができる。これらの材料は、膨潤してインクを受容することもできるが、熱膨張層13を構成する材料とも良好な接着性を備える。このため、アンカー層22としても機能させることが可能である。なお、アンカー層22としては、上述した材料以外にも、インクを受容するために使用され、熱膨張層13との接着性が良好な材料であれば、任意の材料を使用することができる。
【0058】
(熱膨張性シートの製造方法)
次に、熱膨張性シート20の製造方法を図9(a)〜図9(c)を用いて説明する。
まず、基材11としてシート状の材料、例えばPETからなるフィルムを用意する。基材11は、ロール状であっても、予め裁断されていてもよい。
【0059】
まず、基材11の表面(図9(a)に示す上面)にアンカー層22を構成する材料、例えばPVA、ポリエステル系樹脂、ポリウレタン系樹脂、アクリル系樹脂等から選択される1つ又は複数の材料を用いて、塗布液を調製する。続いて、この塗布液を、バーコータ、ローラーコータ、スプレーコータ等の方式による公知の塗布装置を用いて、基材11上に塗布する。続いて、塗膜を乾燥させ、図9(a)に示すように、アンカー層22を形成する。なお、上述した材料から構成されるインク受容層が予め基材11の表面に形成されたシート(例えば、OHPフィルム)を利用すると、予め形成されたインク受容層をアンカー層22として使用することができる。これにより、アンカー層22を形成する工程を省略することが可能となり、好ましい。
【0060】
次に、実施形態1と同様に、熱可塑性樹脂等からなるバインダと熱膨張性材料(熱膨張性マイクロカプセル)とを用いて、熱膨張層13をアンカー層22の上に形成する。続いて、熱膨張層13上に第1のインク受容層14を形成する。ロール状の基材11を用いた場合は、立体画像形成システム70に適合する大きさに裁断を行う。
【0061】
以上の工程により、熱膨張性シート20が製造される。
なお、上記の工程に加え、実施形態1と同様に基材11の裏面に第2のインク受容層15を形成する工程を更に実施してもよい。
【0062】
本実施形態の熱膨張性シート20及び熱膨張性シート20の製造方法によれば、インク受容層として用いられる層をアンカー層22として機能させることにより、熱膨張層13を膨張させる際に熱膨張層13が基材11から剥離することを抑制することができる。特に、基材11のいずれかの面に予めインク受容層が形成されたシートを使用すると、アンカー層22を形成する工程を省略することができ、製造工程の簡略化を図ることが可能となって好ましい。
【0063】
加えて、例えば実施形態1と実施形態2とでは、層の構成が異なるが、何れかの面の最表面(最上面)にインク受容層が形成された基材を入手し、この基材を元に他の層を形成すれば、異なる実施形態間で部材を共通化させることが可能となる。例えば、一方の面の最表面にインク受容層が備えられた基材を用意する。このインク受容層を実施形態1における第2のインク受容層15として使用し、他方の面にアンカー層12、熱膨張層13等を形成すれば、実施形態1の熱膨張性シート10を製造することができる。一方、予め形成されているインク受容層が熱膨張層との間で良好な接着性を備える場合は、この層をアンカー層22として用い、アンカー層22上に熱膨張層13等を形成すれば、実施形態2に係る熱膨張性シート20を製造することができる。従って、本実施形態の製造方法によれば、層の構成が異なる熱膨張性シートの製造方法において、部材を共通化することができるという効果も得られて好ましい。
【0064】
(実施形態3)
実施形態3に係る熱膨張性シート30を図10に示す。実施形態3に係る熱膨張性シート30が実施形態1の熱膨張性シート10と異なるのは、第3のインク受容層31の上にアンカー層32が形成される点にある。実施形態1と同様の構成要素には、同一の番号を付し、詳細な説明は省略する。
【0065】
熱膨張性シート30は、図10に示すように、基材11、第3のインク受容層31、アンカー層32、熱膨張層13及び第1のインク受容層14を備える。なお、熱膨張性シート20は、実施形態1と同様に基材11の裏面に第2のインク受容層15を備えてもよい。
【0066】
第3のインク受容層31は、第1のインク受容層14を構成する材料と同様に、インクジェットプリンタのインクを受容し、定着させることが可能な材料から形成される。第3のインク受容層31は、実施形態2のアンカー層22と異なり、インクジェットプリンタのインクを受容することができる層ではあるが、熱膨張層13との接着性がアンカー層22と比較して低い層である。例えば、第3のインク受容層31は、空隙を利用するタイプである、多孔質シリカ等からなる。
【0067】
アンカー層32は、実施形態1のアンカー層12と同様の材料から形成され、第3のインク受容層31と、熱膨張層13とに対して良好な接着性を有する層である。アンカー層32を第3のインク受容層31上に設けることによって、第3のインク受容層31と熱膨張層13とは良好に接着され、熱膨張層13を膨張させた際、熱膨張層13が基材11から剥離することを抑制することができる。
【0068】
(熱膨張性シートの製造方法)
次に、熱膨張性シート30の製造方法を図11(a)〜図11(d)を用いて説明する。
まず、基材11として樹脂製のシート、例えばPETからなるフィルムを用意する。基材11は、ロール状であっても、予め裁断されていてもよい。
【0069】
基材11の表面(図11(a)に示す)に第3のインク受容層31を構成する材料、例えば、多孔質シリカ等を用いて、塗布液を調製する。続いて、この塗布液を、バーコータ、ローラーコータ、スプレーコータ等の方式による公知の塗布装置を用いて、基材11上に塗布する。続いて、塗膜を乾燥させ、図11(a)に示すように、第3のインク受容層31を形成する。なお、上述した材料から構成されるインク受容層が予め表面に形成されたシート(例えば、OHPフィルム)を利用すると、基材11上に第3のインク受容層31を形成する工程を省略することができ、好ましい。
【0070】
次に、第3のインク受容層31上に、アンカー層32を形成するため、アンカー層32として用いる材料を含む塗布液を調製する。アンカー層32は、実施形態1に示すアンカー層12として用いられる材料から選択される。続いて、バーコータ、ローラーコータ、スプレーコータ等の公知の塗布装置を用いて、塗布液を基材11上に塗布する。次に、塗膜を乾燥させ、図11(b)に示すように、アンカー層32を形成する。
【0071】
次に、実施形態1と同様に、熱可塑性樹脂等からなるバインダと熱膨張性材料(熱膨張性マイクロカプセル)とを用いて、図11(c)に示すように、熱膨張層13をアンカー層32の上に形成する。続いて、図11(d)に示すように、熱膨張層13上に第1のインク受容層14を形成する。ロール状の基材11を用いた場合は、立体画像形成システム70に適合する大きさに裁断を行う。
【0072】
以上の工程により、熱膨張性シート30が製造される。
なお、上記の工程に加え、基材11の裏面に第2のインク受容層15を形成する工程を更に実施してもよい。
【0073】
本実施形態の熱膨張性シート30及び熱膨張性シート30の製造方法によれば、第3のインク受容層31の上にアンカー層32を設けることにより、第3のインク受容層31と熱膨張層13とが良好に接着し、熱膨張層13を膨張させた際に、熱膨張層13が剥離することを抑制することができる。また、例えば実施形態1で使用する、PET等のプラスチックフィルムを基材11とし、基材11のいずれかの面に予めインク受容層が形成されたシートを入手した上で、このインク受容層を第3のインク受容層31として用い、第3のインク受容層31の上にアンカー層32を形成すれば、製造工程を簡略化することができる。
【0074】
加えて、例えば実施形態1と実施形態3とでは、層の構成が異なるが、何れかの面の上にインク受容層が形成された基材を入手し、この基材を元に他の層を形成すれば、異なる実施形態間で部材を共通化させることが可能となる。例えば、一方の面にインク受容層が備えられた基材を用意する。このインク受容層を実施形態1における第2のインク受容層15として使用し、他方の面にアンカー層、熱膨張層等を形成すれば、実施形態1の熱膨張性シート10を製造することができる。一方、予め設けられているインク受容層を第3のインク受容層31として使用し、この層が熱膨張層との間の接着性が低い場合は、第3のインク受容層31上にアンカー層32を形成し、アンカー層32上に熱膨張層等を設ければ、実施形態3に係る熱膨張性シート30を製造することができる。従って、本実施形態の製造方法によれば、層の構成が異なる熱膨張性シートの製造方法において、部品を共通化することができ、好ましい。
【0075】
本発明は上述した実施形態に限られず、様々な応用が可能である。
上述した各実施形態では、基材11の裏面に第2のインク受容層15を備える構成、もしくは第2のインク受容層15を備えない構成を例に挙げているが、これに限られず、基材11の裏面に、接着層及び剥離紙を備える構成であってもよい。接着層及び剥離紙を備えることにより、立体画像が印刷された熱膨張性シートを、容器等の様々な物に貼り付けることが可能となる。
【0076】
例えば、図12に示す熱膨張性シート40は、実施形態2に示す熱膨張性シート20の裏面に接着層45及び剥離紙46を設けたものである。この場合、図12に示すように、熱膨張性シート40は、基材11、アンカー層22、熱膨張層13、第1のインク受容層14、接着層45、剥離紙46を備える。接着層45は、一般的に使用されている接着剤であり、熱膨張性シート40を貼り付ける対象物に応じて適宜選択される。剥離紙46は、シール等の台紙として一般的に使用されている材料から形成される。また、剥離紙46は紙に限らずフィルムであってもよい。アンカー層22は、実施形態2と同様に、インク受容層としても用いられる材料から形成されており、更に熱膨張層13との接着性が良好な層である。また、剥離紙46上(図12では、剥離紙46の下面)に第2のインク受容層15を設けてもよい。
【0077】
また、熱膨張性シート40を製造する際は、基材11の一方の面にインク受容層(アンカー層22)が設けられており、他方の面に接着層45及び剥離紙46が設けられたシートを入手し、このシートを利用し、熱膨張層13等を形成すると製造工程を簡略化できて好ましい。
【0078】
同様に、図13に示す熱膨張性シート50は、実施形態3に示す熱膨張性シート30の裏面に接着層45及び剥離紙46を設けたものである。この場合、図13に示すように、熱膨張性シート50は、基材11、第3のインク受容層31、アンカー層32、熱膨張層13、第1のインク受容層14、接着層45及び剥離紙46を備える。接着層45は、一般的に使用されている接着剤であり、熱膨張性シート50を貼り付ける対象物に応じて適宜選択される。剥離紙46は、シール等の台紙として一般的に使用されている材料から形成される。第3のインク受容層31は、実施形態3と同様に、インクを受容し定着させる層であるが、熱膨張層13との接着性が低い層である。アンカー層32は実施形態3と同様に熱膨張層13との接着性が良好な層であり、更に熱膨張層13との接着性が良好な層である。また、剥離紙46上(図13では、剥離紙46の下面)に第2のインク受容層15を設けてもよい。
【0079】
また、熱膨張性シート50を製造する際は、基材11の一方の面にインク受容層(第3のインク受容層31)が設けられており、他方の面に接着層45及び剥離紙46が設けられたシートを入手し、このシートを利用し、アンカー層32、熱膨張層13等を形成すると製造工程を簡略化できて好ましい。
【0080】
なお、各実施形態において用いられている図は、いずれも各実施形態を説明するためのものである。従って、熱膨張性シートの各層の厚みが、図に示されているような比率で形成されると限定して解釈されることを意図するものではない。例えば、図1では基材11は熱膨張層13より薄く図示されているが、基材11が熱膨張層13と同じ厚みに形成される構成、又は熱膨張層13より厚く形成される構成を排除するものではない。他の層についても同様である。
【0081】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、本発明は特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。以下に、本願出願の当初の特許請求の範囲に記載された発明を付記する。
【0082】
[付記1]
基材の一方の面上に形成されたアンカー層と、
前記アンカー層の上に形成された熱膨張層と、を備え、
前記基材は樹脂からなるフィルムであり、
前記アンカー層は、ポリエステル、アクリル、ポリウレタン、又はこれらのいずれかの共重合体からなる群から選択される少なくとも1つの樹脂を含む、
ことを特徴とする熱膨張性シート。
[付記2]
前記アンカー層は、ポリエステル・アクリル・ウレタン複合樹脂を含む、
ことを特徴とする付記1に記載の熱膨張性シート。
[付記3]
前記基材の一方の面上には、インク受容層が形成されており、
前記アンカー層は前記インク受容層上に形成される、
ことを特徴とする付記1又は2に記載の熱膨張性シート。
[付記4]
基材の一方の面上にアンカー層を形成する工程と、
前記アンカー層の上に熱膨張層を形成する工程と、を備え、
前記基材は樹脂からなるフィルムであり、
前記アンカー層を形成する工程では、
前記基材の一方の面上に、ポリエステル、アクリル、ポリウレタン、又はこれらのいずれかの共重合体からなる群から選択される少なくとも1つの樹脂を用いて、又は、前記基材の一方の面上にコロナ処理を施すことによってアンカー層を形成する、
ことを特徴とする熱膨張性シートの製造方法。
[付記5]
前記アンカー層を形成する工程で用いられる前記樹脂は、ポリエステル・アクリル・ウレタン複合樹脂である、
ことを特徴とする付記4に記載の熱膨張性シートの製造方法。
[付記6]
前記基材の一方の面上には、インク受容層が設けられており、
前記インク受容層上に前記樹脂を塗布することによって、前記アンカー層を形成する、
ことを特徴とする付記4又は5に記載の熱膨張性シート。
【符号の説明】
【0083】
10、20、30、40、50・・・熱膨張性シート、11・・・基材、12、22、32・・・アンカー層、13・・・熱膨張層、14・・・第1のインク受容層、15・・・第2のインク受容層、31・・・第3のインク受容層、45・・・接着層、46・・・剥離紙、60・・・コロナ処理装置、61・・・処理ロール、62・・・電極、63・・・ガイドローラ、70・・・立体画像形成システム、71・・・制御ユニット、72・・・印刷ユニット、72a・・・搬入部と、72b・・・排出部、73・・・膨張ユニット、73a・・・搬入部と、73b・・・排出部、74・・・表示ユニット、75・・・天板、80・・・フレーム、81・・・側面板、82・・・連結ビーム、91・・・表側光熱変換層、92・・・カラーインク層、93・・・裏側光熱変換層
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13