特許第6904013号(P6904013)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6904013キャップトレッド用ゴム組成物及びスタッドレスタイヤ
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6904013
(24)【登録日】2021年6月28日
(45)【発行日】2021年7月14日
(54)【発明の名称】キャップトレッド用ゴム組成物及びスタッドレスタイヤ
(51)【国際特許分類】
   C08L 21/00 20060101AFI20210701BHJP
   C08L 45/02 20060101ALI20210701BHJP
   C08K 3/34 20060101ALI20210701BHJP
   C08L 9/00 20060101ALI20210701BHJP
   C08L 9/06 20060101ALI20210701BHJP
   B60C 1/00 20060101ALI20210701BHJP
【FI】
   C08L21/00
   C08L45/02
   C08K3/34
   C08L9/00
   C08L9/06
   B60C1/00 A
【請求項の数】7
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2017-73878(P2017-73878)
(22)【出願日】2017年4月3日
(65)【公開番号】特開2018-177836(P2018-177836A)
(43)【公開日】2018年11月15日
【審査請求日】2020年2月25日
(73)【特許権者】
【識別番号】000183233
【氏名又は名称】住友ゴム工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000914
【氏名又は名称】特許業務法人 安富国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】山内 里美
【審査官】 櫛引 智子
(56)【参考文献】
【文献】 中国特許出願公開第104177667(CN,A)
【文献】 特開2003−096239(JP,A)
【文献】 国際公開第2011/114990(WO,A1)
【文献】 特開2012−031258(JP,A)
【文献】 特開平08−311245(JP,A)
【文献】 特開2000−289406(JP,A)
【文献】 特開2001−072802(JP,A)
【文献】 特開平09−031250(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08L,C08K
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ゴム成分と、粘着付与樹脂及び/又は液状ゴムと、クレイと、オイルと、シリカとを含み、
前記ゴム成分100質量部に対して、粘着付与樹脂及び液状ゴムの合計含有量が2〜25質量部、クレイの含有量が1〜25質量部、オイルの含有量が5〜35質量部であり、シリカの含有量が2〜100質量部であキャップトレッド用ゴム組成物(但し、ヒドロカルビル・オニウム塩、ポリ乳酸系樹脂、ポリプロピレン、又は、卵殻粉を含むゴム組成物を除く)
【請求項2】
ゴム成分と、粘着付与樹脂及び/又は液状ゴムと、クレイと、オイルとを含み、
前記ゴム成分100質量部に対して、粘着付与樹脂及び液状ゴムの合計含有量が2〜25質量部、クレイの含有量が1〜25質量部、オイルの含有量が5〜35質量部であり、
前記粘着付与樹脂がクマロン樹脂及び/又は石油系樹脂、前記液状ゴムが液状ブタジエンゴム及び/又は液状スチレンブタジエンゴムであキャップトレッド用ゴム組成物(但し、ヒドロカルビル・オニウム塩、ポリ乳酸系樹脂、ポリプロピレン、又は、卵殻粉を含むゴム組成物を除く)
【請求項3】
ゴム成分と、粘着付与樹脂及び/又は液状ゴムと、クレイと、オイルとを含み、
前記ゴム成分100質量部に対して、粘着付与樹脂及び液状ゴムの合計含有量が2〜25質量部、クレイの含有量が1〜25質量部、オイルの含有量が5〜35質量部であり、
前記粘着付与樹脂の数平均分子量が200〜1000、前記液状ゴムの数平均分子量が1000〜10000であキャップトレッド用ゴム組成物(但し、ヒドロカルビル・オニウム塩、ポリ乳酸系樹脂、ポリプロピレン、又は、卵殻粉を含むゴム組成物を除く)
【請求項4】
ゴム成分と、粘着付与樹脂及び/又は液状ゴムと、クレイと、オイルとを含み、
前記ゴム成分100質量部に対して、粘着付与樹脂及び液状ゴムの合計含有量が2〜25質量部、クレイの含有量が1〜25質量部、オイルの含有量が5〜35質量部であり、
JIS−A硬度が40〜70であキャップトレッド用ゴム組成物(但し、ヒドロカルビル・オニウム塩、ポリ乳酸系樹脂、ポリプロピレン、又は、卵殻粉を含むゴム組成物を除く)
【請求項5】
ゴム成分と、粘着付与樹脂及び/又は液状ゴムと、クレイと、オイルとを含み、
前記ゴム成分100質量部に対して、前記粘着付与樹脂及び前記液状ゴムの合計含有量が5〜15質量部、クレイの含有量が1〜25質量部、オイルの含有量が5〜35質量部であキャップトレッド用ゴム組成物(但し、ヒドロカルビル・オニウム塩、ポリ乳酸系樹脂、ポリプロピレン、又は、卵殻粉を含むゴム組成物を除く)
【請求項6】
ゴム成分と、粘着付与樹脂及び/又は液状ゴムと、クレイと、オイルとを含み、
前記ゴム成分100質量部に対して、粘着付与樹脂及び液状ゴムの合計含有量が2〜25質量部、前記クレイの含有量が5〜15質量部、オイルの含有量が5〜35質量部であキャップトレッド用ゴム組成物(但し、ヒドロカルビル・オニウム塩、ポリ乳酸系樹脂、ポリプロピレン、又は、卵殻粉を含むゴム組成物を除く)
【請求項7】
ゴム成分と、粘着付与樹脂及び/又は液状ゴムと、クレイと、オイルとを含み、
前記ゴム成分100質量部に対して、粘着付与樹脂及び液状ゴムの合計含有量が2〜25質量部、クレイの含有量が1〜25質量部、オイルの含有量が5〜35質量部であるキャップトレッド用ゴム組成物(但し、ヒドロカルビル・オニウム塩、ポリ乳酸系樹脂、ポリプロピレン、又は、卵殻粉を含むゴム組成物を除く)を用いて作製したキャップトレッドを有するスタッドレスタイヤ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、キャップトレッド用ゴム組成物、及びそれを用いたキャップトレッドを有するスタッドレスタイヤに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、氷雪路面走行にスパイクタイヤ等が使用されているが、粉塵問題などの環境問題が発生するため、スタッドレスタイヤが新たに開発され、氷雪上性能等の付与を目的として、材料面及び設計面での工夫がされている。
【0003】
タイヤの氷雪上性能には、特に地面に直接接触するタイヤのキャップトレッド部の硬度、表面の粗さが関係し、オイル配合量による硬度調整などの技術が知られているが、経時により、オイルがゴム組成物内から揮発し、硬度が増大するため、氷上グリップ性能が徐々に悪化するという問題がある。補強用充填剤の減量により適度な硬度にすることも考えられるが、ゴム自体の補強性が劣る、十分な氷上グリップ性能が得られない、等の問題がある。
【0004】
特許文献1には、クマロン樹脂や液状ブタジエンゴムなどの配合技術が提案され、氷上性能の劣化を抑制したタイヤ用ゴム組成物が開示されている。しかしながら、氷雪上性能、その経時劣化抑制性、ウェットグリップ性能をバランス良く改善することや、同時にコストを低減する点について、改善が求められている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2008−50432号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、上記課題を解決し、氷雪上性能、その経時劣化抑制性、ウェットグリップ性能がバランス良く改善され、コストも低減できるキャップトレッド用ゴム組成物及びスタッドレスタイヤを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
ゴム成分と、粘着付与樹脂及び/又は液状ゴムと、クレイとを含み、前記ゴム成分100質量部に対して、粘着付与樹脂及び液状ゴムの合計含有量が2〜25質量部、クレイの含有量が1〜25質量部であるキャップトレッド用ゴム組成物に関する。
【0008】
前記ゴム成分100質量部に対して、シリカの含有量が2〜100質量部であることが好ましい。
前記粘着付与樹脂がクマロン樹脂及び/又は石油系樹脂、前記液状ゴムが液状ブタジエンゴム及び/又は液状スチレンブタジエンゴムであることが好ましい。
【0009】
前記粘着付与樹脂の数平均分子量が200〜1000、前記液状ゴムの数平均分子量が1000〜10000であることが好ましい。
JIS−A硬度が40〜70であることが好ましい。
【0010】
本発明はまた、前述のゴム組成物を用いて作製したキャップトレッドを有するスタッドレスタイヤに関する。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、ゴム成分と、粘着付与樹脂及び/又は液状ゴムと、クレイとを含み、
ゴム成分100質量部に対して、粘着付与樹脂及び液状ゴムの合計含有量が2〜25質量部、クレイの含有量が1〜25質量部であるキャップトレッド用ゴム組成物であるので、氷雪上性能、その経時劣化抑制性、ウェットグリップ性能をバランス良く改善でき、コストも低減できる。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明のキャップトレッド用ゴム組成物は、ゴム成分と、粘着付与樹脂及び/又は液状ゴムと、クレイとを所定量含む。
【0013】
粘着付与樹脂や液状ゴムによる硬度調節機能、クレイによる表面粗さのコントロール機能のそれぞれの機能の発揮により、優れた氷上性能(新品)が得られる。また、粘着付与樹脂や液状ゴムを使用すると、オイル使用時における揮発による経時的な硬度上昇を抑制できると同時に、長期間経過後においてもクレイによる表面粗さのコントロール機能が充分に発揮される。このため、初期の氷上性能を改善できるとともに、経時的な氷上性能の劣化を抑制できる。また、良好なウェットグリップ性能も得られ、コストも低減できる。従って、本発明では、粘着付与樹脂及び/又は液状ゴムと、クレイとの両成分の併用により、氷雪上性能、氷雪上性能の経時劣化抑制性、ウェットグリップ性能の性能バランスが相乗的に改善され、同時にコストの低減も可能である。
【0014】
ゴム成分としては、特に限定されず、天然ゴム(NR)、イソプレンゴム(IR)、ブタジエンゴム(BR)、スチレンブタジエンゴム(SBR)、ブチルゴム(IIR)、ハロゲン化ブチルゴム(X−IIR)、クロロプレンゴム(CR)、アクリロニトリルブタジエンゴム(NBR)、イソモノオレフィンとパラアルキルスチレンとの共重合体のハロゲン化物などが挙げられる。これらは単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。なかでも、低温時のゴム硬度の上昇を抑制できるという理由から、NR、BRが好ましく、NR及びBRの併用がより好ましい。なお、本発明のゴム成分とは、分子量10万以上のゴム(固形ゴム)をいう。
【0015】
本発明のゴム組成物がBRを含有する場合、ゴム成分100質量%中のBRの含有量は、好ましくは10質量%以上、より好ましくは25質量%以上である。10質量%以上にすることで、良好な氷上性能が得られる傾向がある。該含有量は、好ましくは80質量%以下、より好ましくは55質量%以下である。80質量%を以下にすることで、良好な加工性が得られる傾向がある。
【0016】
本発明のゴム組成物がNRを含有する場合、ゴム成分100質量%中のNRの含有量は、好ましくは20質量%以上、より好ましくは45質量%以上である。20質量%以上にすることで、良好な加工性が得られる傾向がある。該含有量は、好ましくは90質量%以下、より好ましくは75質量%以下である。90質量%以下にすることで、良好な低温特性が得られる傾向がある。
【0017】
本発明では、粘着付与樹脂及び/又は液状ゴムを配合することで、初期氷上性能を高めると同時に、経時的なゴム硬度の上昇も抑制できる。
【0018】
粘着付与樹脂としては、例えば、クマロン樹脂、石油系樹脂(脂肪族系石油樹脂、芳香族系石油樹脂、脂環族系石油樹脂など)、フェノール系樹脂、テルペン系樹脂、ロジン誘導体などが挙げられる。これらの粘着付与樹脂は単独で用いても、2種以上を組み合わせて用いてもよい。なかでも、経時的なゴム硬度を抑制できる点から、クマロン樹脂、石油系樹脂(特に芳香族系石油樹脂)が好ましい。
【0019】
具体的には、クマロン樹脂としては、クマロン樹脂(神戸油化学工業(株)製のクマロン樹脂、新日鐵化学(株)製のエスクロンなど)などが、石油系樹脂としては、新日本石油化学(株)製のネオポリマーなどが好適に用いられる。
【0020】
粘着付与樹脂の数平均分子量(Mn)は200以上が好ましく、300以上がより好ましい。粘着付与樹脂のMnが200以上にすることで、良好な硬度上昇抑制効果が得られる傾向がある。また、粘着付与樹脂のMnは1000以下が好ましく、900以下がより好ましい。粘着付与樹脂のMnが1000以下にすることで、適切なゴム硬度となり、良好な氷上性能の改善効果が得られる傾向がある。
【0021】
液状ゴムとしては、液状ブタジエンゴム(液状BR)、液状スチレンブタジエンゴム(液状SBR)、液状イソプレンゴム(液状IR)などが挙げられる。これらの液状ゴムは単独で用いても、2種以上を組み合わせて用いてもよい。なかでも、少ない配合量で氷上性能を効率的に改善できるという理由から、液状BR及び液状SBRが好ましい。
【0022】
具体的には、液状BR、液状SBRとしては、サートマー社(Sertomer Company Inc.)製のライコンシリーズなどが好適に用いられる。
【0023】
液状ゴムのMnは1000以上が好ましく、1500以上がより好ましい。液状ゴムのMnが1000以上にすることで、オイルとの置換により、良好な硬度上昇抑制効果が得られる傾向がある。また、液状ゴムのMnは10000以下が好ましく、9000以下がより好ましい。液状ゴムのMnが10000以下にすることで、適切なゴム硬度となり、良好な氷上性能の改善効果が得られる傾向がある。
【0024】
なお、本明細書において、Mnは、ゲルパーミエーションクロマトグラフ(GPC)(東ソー(株)製GPC−8000シリーズ、検出器:示差屈折計)を用い、標準ポリスチレンにより換算して測定できる。
【0025】
粘着付与樹脂及び液状ゴムの合計含有量は、ゴム成分100質量部に対して2質量部以上であり、好ましくは7質量部以上である。2質量部以上にすることで、良好な氷上性能の改善効果が得られる傾向がある。また、該合計含有量は25質量部以下であり、好ましくは15質量部以下である。25質量部以下にすることで、適切なゴム硬度となり、良好な氷上性能の改善効果が得られる傾向がある。
【0026】
本発明のゴム組成物は、クレイ(クレー)を含有する。これにより、良好な表面粗さが得られるため、長期間にわたって氷上性能を改善できる。
【0027】
クレイの平均粒子径は、氷雪上性能を効果的に改善できる点から、好ましくは0.2μm以上、より好ましくは0.5μm以上である。0.2μm以上にすることで、良好な氷雪上性能が得られる傾向がある。また、クレイの平均粒子径は、ゴム強度を確保する点から、好ましくは2.0μm以下、より好ましくは1.5μm以下である。
なお、クレイの平均粒子径は、電子顕微鏡を用いて測定される値である。なお、平均粒子径は長径を意味し、例えば、長角形状なら最長の辺の長さ、円盤状であれば直径となる。
【0028】
クレイとしては、例えば、カオリナイトを主成分とするクレイでハードクレイ(サウスイースタン・クレイ社製のクラウンクレイ、竹原化学(株)製のユニオンクレイRC1、グロマックスLLなど)、600℃で焼成した焼成クレイ(バーゲス社製のアイスキャップKなど)、600℃で焼成後シラン系カップリング剤で処理したシラン改質クレイ(バーゲス社製のバーゲスKEなど)などが挙げられる。
【0029】
クレイの含有量は、ゴム成分100質量部に対して、1質量部以上、好ましくは5質量部以上である。1質量部以上にすることで、良好な氷上性能の向上効果が得られる傾向がある。該含有量は、ゴム成分100質量部に対して、25質量部以下であり、好ましくは15質量部以下である。25質量部以下にすることで、良好なウェットグリップ性能が得られる傾向がある。
【0030】
本発明のゴム組成物は、カーボンブラックを含有することが好ましい。これにより、補強性が付与され、ウェットグリップ性能が改善され、本発明の効果が良好に得られる。
【0031】
カーボンブラックのチッ素吸着比表面積(NSA)は50m/g以上が好ましく、80m/g以上がより好ましい。50m/g以上にすることで、カーボンブラックの分散性が向上する傾向がある。また、カーボンブラックのNSAは180m/g以下が好ましく、130m/g以下がより好ましい。180m/g以下にすることで、良好な加工性等が得られる傾向がある。
なお、カーボンブラックのチッ素吸着比表面積は、JIS K6217のA法によって求められる。
【0032】
カーボンブラックとしては、例えば、旭カーボン(株)、キャボットジャパン(株)、東海カーボン(株)、三菱化学(株)、ライオン(株)、新日化カーボン(株)、コロンビアカーボン社等の製品を使用できる。
【0033】
本発明のゴム組成物がカーボンブラックを含有する場合、カーボンブラックの含有量は、ゴム成分100質量部に対して、好ましくは10質量部以上、より好ましくは20質量部以上である。10質量部以上にすることで、良好な補強性(耐摩耗性)、氷上性能が得られる傾向がある。該含有量は、好ましくは100質量部以下、より好ましくは70質量部以下である。100質量部以下にすることで、良好な氷上性能が得られる傾向がある。
【0034】
本発明のゴム組成物は、シリカを含有することが好ましい。粘着付与樹脂や液状ゴム、クレイとともにシリカを配合することで、氷雪上性能、その経時劣化抑制性、ウェットグリップ性能の性能バランスが改善される。
【0035】
シリカのBET法によるNSAは、40m/g以上が好ましく、100m/g以上がより好ましい。40m/g以上にすることで、シリカの分散性が向上する傾向がある。また、シリカのBETは220m/g以下が好ましく、150m/g以下がより好ましい。220m/g以下にすることで、良好な加工性等が得られる傾向がある。
なお、シリカのBET法によるチッ素吸着比表面積は、ASTM D3037−81に準拠した方法により測定することができる。
【0036】
シリカの含有量は、ゴム成分100質量部に対して、好ましくは2質量部以上、より好ましくは15質量部以上である。2質量部未満であると、補強性が劣る傾向がある。該含有量は、好ましくは100質量部以下、より好ましくは50質量部以下である。100質量部を超えると、加工性、フィラー分散に悪影響を及ぼすおそれがある。
【0037】
シリカとしては、例えば、デグッサ社、ローディア社、東ソー・シリカ社、ソルベイジャパン社、トクヤマ社等の製品を使用できる。
【0038】
また、カーボンブラック及びシリカの合計含有量は、ゴム成分100質量部に対して、好ましくは20質量部以上、より好ましくは35質量部以上である。該合計含有量は、好ましくは100質量部以下、より好ましくは70質量部以下である。クレイと粘着付与樹脂及び/又は液状ゴムとの併用とともに、上記範囲内の量を配合することで優れた氷上性能が得られる。
【0039】
本発明では、シリカとともに、シランカップリング剤を使用することが好ましい。シランカップリング剤としては、例えば、スルフィド系、メルカプト系ビニル系、アミノ系、グリシドキシ系、ニトロ系、クロロ系シランカップリング剤などが挙げられる。なかでも、ビス(3−トリエトキシシリルプロピル)テトラスルフィド、ビス(2−トリエトキシシリルエチル)テトラスルフィド、ビス(3−トリエトキシシリルプロピル)ジスルフィド、ビス(2−トリエトキシシリルエチル)ジスルフィドなどのスルフィド系が好ましい。
【0040】
シランカップリング剤を含有する場合、シランカップリング剤の含有量は、シリカ100質量部に対して2質量部以上が好ましく、4質量部以上がより好ましい。該含有量は、20質量部以下が好ましく、15質量部以下がより好ましい。シランカップリング剤の含有量を上記範囲内にすることにより、良好な補強性、耐摩耗性が得られる。
【0041】
本発明のゴム組成物には、前記成分以外にも、ゴム組成物の製造に一般に使用される配合剤、例えば、炭酸カルシウムなどの補強用充填剤、酸化亜鉛、ステアリン酸、各種老化防止剤、アロマオイルなどのオイル、ワックス、加硫剤、加硫促進剤などを適宜配合することができる。
【0042】
本発明のゴム組成物は、オイルを含有することが好ましい。これにより、良好な氷上性能が得られる。
【0043】
本発明のゴム組成物は、オイルを含むことが好ましい。
オイルとしては、例えば、プロセスオイル、植物油脂、又はその混合物が挙げられる。プロセスオイルとしては、例えば、パラフィン系プロセスオイル、アロマ系プロセスオイル、ナフテン系プロセスオイルなどを用いることができる。植物油脂としては、ひまし油、綿実油、あまに油、なたね油、大豆油、パーム油、やし油、落花生湯、ロジン、パインオイル、パインタール、トール油、コーン油、こめ油、べに花油、ごま油、オリーブ油、ひまわり油、パーム核油、椿油、ホホバ油、マカデミアナッツ油、桐油等が挙げられる。これらは、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。なかでも、本発明の効果がより良好に得られるという理由から、プロセスオイルが好ましい。
【0044】
オイルとしては、例えば、出光興産(株)、三共油化工業(株)、(株)ジャパンエナジー、オリソイ社、H&R社、豊国製油(株)、昭和シェル石油(株)、富士興産(株)等の製品を使用できる。
【0045】
オイルの含有量は、ゴム成分100質量部に対して、5質量部以上が好ましく、10質量部以上がより好ましい。該含有量は、35質量部以下が好ましく、30質量部以下がより好ましい。オイルの含有量を上記範囲内とすることにより、本発明の効果が良好に得られる。
【0046】
本発明のゴム組成物のJIS−A硬度は40〜70であることが好ましい。JIS−A硬度が上記範囲内であると、良好な氷上性能が得られる。
なお、JIS−A硬度は、JIS K6253に準拠した方法により測定できる。
【0047】
本発明のゴム組成物は、一般的な方法で製造される。すなわち、バンバリーミキサーやニーダー、オープンロールなどで前記各成分を混練りし、その後加硫する方法などにより製造できる。
【0048】
本発明のスタッドレスタイヤは、上記ゴム組成物を用いて通常の方法で製造できる。すなわち、上記ゴム組成物を用いてキャップトレッドを作製し、他の部材とともに貼り合わせ、タイヤ成型機上にて加熱加圧することにより製造できる。
【0049】
本発明のスタッドレスタイヤは、乗用車、トラック、バス、モーターサイクルなどに使用でき、なかでも、乗用車に好適に使用できる。
【実施例】
【0050】
実施例に基づいて、本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらのみに限定されるものではない。
【0051】
以下、実施例及び比較例で使用した各種薬品をまとめて説明する。
NR:RSS♯3
BR:宇部興産(株)製のBR150B(シス含量:97質量%)
カーボンブラック:三菱化学(株)製のダイアブラックI(ISAF、N220)(NSA:114m/g)
シリカ:ローディア社製のZeosil 1115MP(NSA:115m/g)
オイル:(株)ジャパンエナジー製のプロセスP−200
粘着付与樹脂(1):神戸油化学工業(株)製のクマロン樹脂125℃(クマロン樹脂、Mn:400)
粘着付与樹脂(2):新日本石油化学(株)製の日石ネオポリマー120(石油系樹脂、Mn:900)
液状ゴム(1):サートマー社製のライコン150(液状BR、Mn:3900)
液状ゴム(2):サートマー社製のライコン181(液状SBR、Mn:3200)
ハードクレイ:サウスイースタン・クレイ社製のクラウンクレイ(平均粒子径:0.6μm)
老化防止剤:住友化学(株)製のアンチゲン6C(N−(1,3−ジメチルブチル)−N’−フェニル−p−フェニレンジアミン)
ワックス:大内新興化学工業(株)製のサンノックS
ステアリン酸:日油(株)製
酸化亜鉛:三井金属鉱業(株)製
硫黄:鶴見化学工業(株)製
加硫促進剤:大内新興化学工業(株)製のノクセラーNS(N−tert−ブチル−2−ベンゾチアゾリルスルフェンアミド)
【0052】
〔実施例及び比較例〕
表1に示す配合処方にしたがい、バンバリーミキサーを用いて、硫黄及び加硫促進剤以外の薬品を135℃の条件下で4分間混練りし、混練り物を得た。次に、得られた混練り物に、硫黄及び加硫促進剤を添加し、オープンロールを用いて、65℃の条件下で2分間混練りし、未加硫ゴム組成物を得た。さらに、得られた未加硫ゴム組成物を170℃の条件下で15分間プレス加硫し、加硫ゴム組成物を得た。
【0053】
また、得られた未加硫ゴム組成物をキャップトレッドの形状に成形し、他のタイヤ部材と貼り合わせ、170℃で15分間加硫することにより、試験用タイヤ(タイヤサイズ:195/65R15)を得た。
【0054】
得られた加硫ゴム組成物、試験用タイヤを用いて、以下の評価を行った。その結果を表1に示す。
【0055】
(硬度)
JIS K6253「加硫ゴム及び熱可塑性ゴムの硬さ試験方法」に準じて、スプリング式タイプAにて硬度(JIS−A)を測定した。硬度の値が大きいほど硬度が高いことを示す。
【0056】
(氷上制動性能)
試験用タイヤ(新品)を試験車(トヨタマークII)に装着させ、氷上において、時速30km/hでロックブレーキを踏み、停止するまでに要した停止距離を測定し、比較例1の氷上制動性能指数を100とし、下記計算式により、各配合の停止距離を指数表示した。
(氷上制動性能指数)=(比較例1の停止距離)/(各配合の停止距離)×100
【0057】
また、試験用タイヤを80℃の条件下で2週間乾熱老化させた。そして、上記同様に試験を行い、乾熱老化後の比較例1の停止距離を100とし、各配合の停止距離を指数表示した。なお、新品時、乾熱老化後ともに、氷上制動性能指数が大きいほど氷上制動性能に優れることを示す。
【0058】
(ウェットグリップ性能)
試験用の車に上記試験用タイヤを装着させ、湿潤アスファルト路面のテストコースにて実車走行を行なった。このとき40km/hで走行させ、ブレーキをかけてから停止するまでの間の最大摩擦係数(μ)を測定し、比較例1のウェットグリップ指数を100とし、下記計算式により、指数表示した。ウェットグリップ指数が大きいほどウェットグリップ性能に優れていることを示す。
(ウェットグリップ指数)=(各配合の最大摩擦係数)/(比較例1の最大摩擦係数)×100
【0059】
【表1】
【0060】
【表2】
【0061】
表1から、粘着付与樹脂や液状ゴムとクレイとを併用した実施例では、新品の氷上性能が改善されるとともに、経時による氷上性能の劣化も抑制され、良好な氷上性能が得られた。また、氷上性能だけでなく、優れたウェットグリップ性能も、コストも低減できた。更に表2から、前記併用により、氷雪上性能、氷雪上性能の経時劣化抑制性、ウェットグリップ性能の性能バランスが相乗的に改善されることも明らかとなった。