特許第6904020号(P6904020)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6904020
(24)【登録日】2021年6月28日
(45)【発行日】2021年7月14日
(54)【発明の名称】通信制御装置及び通信制御プログラム
(51)【国際特許分類】
   H04L 12/66 20060101AFI20210701BHJP
   H04L 12/70 20130101ALI20210701BHJP
   H04M 3/00 20060101ALI20210701BHJP
【FI】
   H04L12/66 D
   H04L12/70 A
   H04M3/00 B
【請求項の数】3
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2017-76492(P2017-76492)
(22)【出願日】2017年4月7日
(65)【公開番号】特開2018-182441(P2018-182441A)
(43)【公開日】2018年11月15日
【審査請求日】2020年2月14日
(73)【特許権者】
【識別番号】000000295
【氏名又は名称】沖電気工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100180275
【弁理士】
【氏名又は名称】吉田 倫太郎
(74)【代理人】
【識別番号】100161861
【弁理士】
【氏名又は名称】若林 裕介
(72)【発明者】
【氏名】小澤 美津晴
(72)【発明者】
【氏名】坂根 正造
【審査官】 大石 博見
(56)【参考文献】
【文献】 特開2008−172552(JP,A)
【文献】 特開2007−336247(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2008/0123535(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04L 12/66
H04L 12/70
H04M 3/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1のプロセッサ及び第2のプロセッサを備え、電話端末を収容し、IP網に接続される通信制御装置において、
呼制御サーバを介して対向する通信制御装置との呼制御処理を行う呼制御手段と、
呼制御処理時に、前記対向する通信制御装置からIPv6のアドレス解決応答を受信すると、前記アドレス解決応答の送信元IPアドレスがグローバルアドレスかリンクローカルアドレスかを識別するアドレス識別手段と、
前記送信元IPアドレスがリンクローカルアドレスの場合には、少なくとも、前記アドレス解決応答のペイロードに含まれる前記対向する通信制御装置のグローバルアドレスと、MACアドレスとを含むアドレス解決情報をRTP制御手段に通知するアドレス解決情報通知手段と、
通知された前記アドレス解決情報を保持し、収容する電話端末から音声信号を受信した場合には、前記アドレス解決情報に基づいて、RTPパケットを生成するRTP制御手段とを有し、
前記呼制御手段、前記アドレス識別手段、及び前記アドレス解決情報通知手段は、前記第1のプロセッサにより実行されて機能するものであり、
前記RTP制御手段は、前記第2のプロセッサにより実行されて機能するものである
ことを特徴とする通信制御装置。
【請求項2】
前記RTP制御手段は、予め前記呼制御サーバから取得した前記対向する通信制御装置のIPアドレスをキーとして、前記RTP制御手段に保持される前記アドレス解決情報を検索し、該当する前記アドレス解決情報が発見された場合には、RTPパケットを生成することを特徴とする請求項1に記載の通信制御装置。
【請求項3】
第1のプロセッサ及び第2のプロセッサを備え、電話端末を収容し、IP網に接続される通信制御装置に搭載されるコンピュータを、
呼制御サーバを介して対向する通信制御装置との呼制御処理を行う呼制御手段と、
呼制御処理時に、前記対向する通信制御装置からIPv6のアドレス解決応答を受信すると、前記アドレス解決応答の送信元IPアドレスがグローバルアドレスかリンクローカルアドレスかを識別するアドレス識別手段と、
前記送信元IPアドレスがリンクローカルアドレスの場合には、少なくとも、前記アドレス解決応答のペイロードに含まれる前記対向する通信制御装置のグローバルアドレスと、MACアドレスとを含むアドレス解決情報をRTP制御手段に通知するアドレス解決情報通知手段と、
通知された前記アドレス解決情報を保持し、収容する電話端末から音声信号を受信した場合には、前記アドレス解決情報に基づいて、RTPパケットを生成するRTP制御手段として機能させ
前記呼制御手段、前記アドレス識別手段、及び前記アドレス解決情報通知手段は、前記第1のプロセッサにより実行されて機能するものであり、
前記RTP制御手段は、前記第2のプロセッサにより実行されて機能するものである
ことを特徴とする通信制御プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、通信制御装置及び通信制御プログラムに関し、例えば、電話機を収容するVoIPゲートウェイ装置に適用し得るものである。
【背景技術】
【0002】
例えば、従来のVoIPゲートウェイ装置(VoIP−GW)は、収容している電話機から発信先の電話番号を取得すると、SIP(Session Initiation Protocol)等の呼制御プロトコルに従って、発信要求メッセージを作成し、IP網上の呼制御サーバ(例えば、SIPサーバ等)に発信要求メッセージを含むパケットを送信する(特許文献1参照)。そして、VoIPゲートウェイ装置と呼制御サーバとの間で呼制御処理が行なわれ、発信元電話端末と発信先電話端末との間の呼を確立する。
【0003】
図4は、従来のVoIP−GWが設けたれた通信システムの一例を示す図である。図4において、通信システム1は、SIPサーバ20、エッジルータ(ER)30(30−1〜30−3)、VoIP−GW40(40−1〜40−4)、電話機50(50−1〜50−8)、及びIP網Nを有する。IP網Nは、IPパケットの転送が行われる広域ネットワーク(インターネット)である。SIPサーバ20は、SIPプロトコルにより呼の制御を行うサーバである。ER30は、IP網Nの末端で外部の回線やネットワークとの接続を行うエッジルータであり、デフォルトゲートウェイでもある。VoIPゲートウェイ装置40は、IP網Nを介してSIPサーバ20と接続しており、加入者電話回線を介して複数の電話機50を収容している。電話機50は、VoIP−GW40に収容される電話機である。拠点A、Bは、同一のER30(ER30−1、ER30−3)に接続するVoIP−GW40(VoIP−GW40−1及び2、VoIP−GW40−3及び4)とそれに収容される電話機50の集合のことである。各拠点におけるIP網での番地を示すIPアドレスのネットワーク部は、各拠点で同一のものとなる。以下、同一拠点(拠点A)内の異なるVoIP−GW40−1、40−2間での通話までの流れを簡単に説明する。
【0004】
VoIP−GW40−1は、例えば、電話機50−1より発呼及びダイヤル信号を受信すると、SIPサーバ20に発信要求に該当するINVITEを送信する。なお、INVITEには、相手の電話番号とVoIP−GW40−1で音声通話(RTP通信)に使用するIPアドレスが含まれている。VoIP−GW40−1よりINVITEを受信したSIPサーバ20は、相手の電話番号を収容するVoIP−GW40−2を特定し、VoIP−GW40−2に着信信号に該当するINVITEを送信する。
【0005】
SIPサーバ20よりINVITEの信号を受信したVoIP−GW40−2は、INVITE信号内の着信端末の電話番号から、該当する電話機(例えば、電話機50−3)に対し、呼出信号を送信する。また、INVITE信号内のVoIP−GW40−1が音声通話に使用するIPアドレスを内部メモリに保持しておく。電話機50−3が応答すると、電話機50−3からVoIP−GW40−2に応答信号が送信される。電話機50−3から呼出信号に対する応答信号を受信すると、VoIP−GW40−2は、SIPサーバ20に応答に該当する200 OKを送信する。
【0006】
同時に、VoIP−GW40−2は、内部メモリに保持していたVoIP−GW40−1が音声通話に使用するIPアドレスのネットワーク部が自装置のIPアドレスのネットワーク部と一致するので、アドレス解決要求のための信号をブロードキャスト(又はマルチキャスト)で送信する。ここで、アドレス解決要求のための信号は、IPv4では、ARP Req(Address Resolution Protocol Request)、IPv6では、NS(Neighbor Solicitation)である。
【0007】
アドレス解決要求のための信号を受信したVoIP−GW40−1は、要求されているアドレスが自装置のものであると認識するので、自装置のMACアドレスを含むアドレス解決応答信号を要求元のVoIP−GW40−2に送信する。ここで、アドレス解決応答のための信号は、IPv4では、ARP Resp(Address Resolution Protocol Responce)、IPv6では、NA(Neighbor Advertisement)である。
【0008】
一方、VoIP−GW40−2から、応答信号を受信したSIPサーバ20は、200 OKをVoIP−GW40−1に送信する。SIPサーバ20より200 OKを受信したVoIP−GW40−1は、電話機50−1に応答信号を送信する。なお、VoIP−GW40-1は、先に述べたVoIP−GW40−2のアドレス解決要求と同様の処理を行う。
【0009】
上記のようにして、VoIP−GW40−1とVoIP−GW40−2間の通信に必要なアドレス解決がなされたので、電話機50−1から送信された音声信号は、VoIP−GW40−1にて、RTPパケットに変換されて、VoIP−GW40−2に送信できる。
【0010】
ところで、近年、1台のVoIP−GWが収容する電話機の数も増加し、それに伴い多量の演算処理を行う必要が生じた等の理由により、VoIP−GWは、複数のプロセッサを有する構成を採用する。例えば、VoIP−GWは、SIPの処理を含む制御系の処理を行うプロセッサと、RTPパケットの処理を含む音声処理を行うプロセッサとの2個のプロセッサ(メモリも2個)を有する構成を採用する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】特開2008−028600号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
ここで、VoIP−GW40−2(VoIP−GW40−1)が、上述の制御系の処理を行うプロセッサと、音声処理を行うプロセッサとにより構成され、IPv6アドレスにより音声通信を行う場合には、RTPの処理において、エラーが生じるという問題が存在する。
【0013】
即ち、VoIP−GW40−2のRTPの処理を行うプロセッサ(メモリ)では、SIPサーバ20より通知された相手先のIPアドレス(先述の例では、VoIP−GW40−1のグローバルアドレス)を、制御系の処理を行うプロセッサから事前に取得して内部で記憶している。また、VoIP−GW40−2は、相手先のMACアドレスを、NSをマルチキャストして、VoIP−GW40−1からNAを受信して取得(NAの送信元アドレスとMACアドレスを関連付けてRTPの処理を行うプロセッサ(メモリ)で記憶)している。
【0014】
しかしながら、NAの送信元アドレス(NAのヘッダの送信元アドレス)は、VoIP−GW40−1のリンクローカルアドレスである。そのため、RTPの処理を行うCPUでは、事前に取得したグローバルアドレスをキーとして、NAを受信して取得したRTP通信に必要な情報を探索するために、リンクローカルアドレスに関連付けられて記憶されたMACアドレスを取得することが出来ない(IPアドレスが不一致となる)。従って、上記のRTPのエラーが生じることになる。
【0015】
そのため、装置が複数のプロセッサにより構成され、通信プロトコルとしてIPv6を用いたとしても、RTPの処理を正常に行うことができる通信制御装置が望まれている。
【課題を解決するための手段】
【0016】
第1の本発明は、第1のプロセッサ及び第2のプロセッサを備え、電話端末を収容し、IP網に接続される通信制御装置において、(1)呼制御サーバを介して対向する通信制御装置との呼制御処理を行う呼制御手段と、(2)呼制御処理時に、前記対向する通信制御装置からIPv6のアドレス解決応答を受信すると、前記アドレス解決応答の送信元IPアドレスがグローバルアドレスかリンクローカルアドレスかを識別するアドレス識別手段と、(3)前記送信元IPアドレスがリンクローカルアドレスの場合には、少なくとも、前記アドレス解決応答のペイロードに含まれる前記対向する通信制御装置のグローバルアドレスと、MACアドレスとを含むアドレス解決情報をRTP制御手段に通知するアドレス解決情報通知手段と、(4)通知された前記アドレス解決情報を保持し、収容する電話端末から音声信号を受信した場合には、前記アドレス解決情報に基づいて、RTPパケットを生成するRTP制御手段とを有し、(5)前記呼制御手段、前記アドレス識別手段、及び前記アドレス解決情報通知手段は、前記第1のプロセッサにより実行されて機能するものであり、前記RTP制御手段は、前記第2のプロセッサにより実行されて機能するものであることを特徴とする。
【0017】
第2の本発明の通信制御プログラムは、第1のプロセッサ及び第2のプロセッサを備え、電話端末を収容し、IP網に接続される通信制御装置に搭載されるコンピュータを、(1)呼制御サーバを介して対向する通信制御装置との呼制御処理を行う呼制御手段と、(2)呼制御処理時に、前記対向する通信制御装置からIPv6のアドレス解決応答を受信すると、前記アドレス解決応答の送信元IPアドレスがグローバルアドレスかリンクローカルアドレスかを識別するアドレス識別手段と、(3)前記送信元IPアドレスがリンクローカルアドレスの場合には、少なくとも、前記アドレス解決応答のペイロードに含まれる前記対向する通信制御装置のグローバルアドレスと、MACアドレスとを含むアドレス解決情報をRTP制御手段に通知するアドレス解決情報通知手段と、(4)通知された前記アドレス解決情報を保持し、収容する電話端末から音声信号を受信した場合には、前記アドレス解決情報に基づいて、RTPパケットを生成するRTP制御手段として機能させ、(5)前記呼制御手段、前記アドレス識別手段、及び前記アドレス解決情報通知手段は、前記第1のプロセッサにより実行されて機能するものであり、前記RTP制御手段は、前記第2のプロセッサにより実行されて機能するものであることを特徴とする。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、装置が複数のプロセッサにより構成され、通信プロトコルとしてIPv6を用いたとしても、RTPの処理を正常に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】実施形態に係るVoIP−GWの構成を示すブロック図である。
図2】実施形態に係るNA(NAパケット)の概要を示す図である。
図3】実施形態に係る通信システムの処理を示すシーケンス図である。
図4】従来のVoIP−GWが設けたれた通信システムの一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
(A)主たる実施形態
以下では、本発明の通信制御装置の実施形態を、図面を参照しながら詳細に説明する。
【0021】
(A−1)実施形態の構成
この実施形態の通信システム1は、先述の図4で示した構成と基本的には同様である。ただし、図4で示した従来のVoIP−GW40(40−1〜40−4)の代わりに、図1で示すVoIP−GW4(4−1〜4−4)が適用される点が異なる。以下では、VoIP−GW4の詳細について説明する。
【0022】
図1は、実施形態に係るVoIP−GWの構成を示すブロック図である。この実施形態のVoIP−GWは、その各部をハードウェアによって構成しても良く、また、一部の構成についてはソフトウェア的に構成しても良い。
【0023】
図1において、VoIP−GW4は、制御プロセッサ41、呼制御手段としての呼制御部42、プロトコル制御部43、音声信号及び通信制御プロセッサ44、音声信号制御部45、RTP制御手段としてのRTP制御部46、通信制御部47、内部バス48(48−1、48−2)、電話機回線T、及びVoIP回線Iを有する。なお、図1で示すVoIP−GW4の構成では、本実施形態の特徴部分と直接関係の無い部分を省略している。
【0024】
制御プロセッサ41は、後述する呼制御部42及びプロトコル制御部43を実行するプロセッサである。
【0025】
呼制御部42は、制御プロセッサ41上で動作し、VoIPの呼を制御するものである。
【0026】
プロトコル制御部43は、制御プロセッサ41上で動作し、IPプロトコルなどのプロトコルを制御するものである。
【0027】
音声信号及び通信制御プロセッサ44は、後述する音声信号制御部45、RTP制御部46、及び通信制御部47を実行するプロセッサである。
【0028】
音声信号制御部45は、音声信号及び通信制御プロセッサ44上で動作し、電話機回線Tから送信された音声信号(アナログ信号)をデジタル信号に変換(又はデジタル信号を音声信号に変換)するものである。
【0029】
RTP制御部46は、音声信号及び通信制御プロセッサ44上で動作し、RTPパケットの作成、送信、及び受信等の制御を行うものである。RTP制御部46は、RTP通信に必要な情報を格納するメモリM1〜M3を有する。
【0030】
通信制御部47は、音声信号及び通信制御プロセッサ44上で動作し、VoIP回線Iを介して送受信されるイーサネット(登録商標)フレームの通信制御を行うものである。
【0031】
内部バス48(48−1、48−2)は、制御プロセッサ41と、音声信号及び通信制御プロセッサ44との間で情報が送受信されるバスである。
【0032】
電話機回線Tは、VoIP−GW4と電話機50との間で音声信号が送受信される回線である。
【0033】
VoIP回線Iは、VoIP通信を行うためのイーサネット回線である。
【0034】
次に、本実施形態の特徴部分(アドレス解決動作の仕組み)について説明を行う。
【0035】
同一拠点内で音声通信を行う場合には、VoIP−GW40は、SIPサーバ20を介したシグナリング処理と並行して、アドレス解決処理(相手先(VoIP−GW40)のMACアドレスの取得)を行う。アドレス解決処理は、簡単に言えば、相手先(VoIP−GW40)のMACアドレスを取得する処理である。
【0036】
VoIP−GW4(呼制御部42)は、先述のARP Req/NSを用いて、同一拠点内に存在する相手先のMACアドレスの取得を要求する。なお、相手先のIPアドレス(SIPサーバ20から取得したIPアドレス)は、ARP Req/NSを送信する前、予めRTP制御部46のメモリM1に保持して置く。また、送信したARP Req/NSに対する相手先からの返信(ARP Resp/NA)の情報(送信元IPアドレスと取得要求したMACアドレス)は、メモリM2にそのままの形で保持される。
【0037】
一方、呼制御部42は、IPv6の場合には受信したパケットの解析を行う。すなわち、呼制御部42は、IPv6の場合(つまり、NAを受信した場合)には、NAのヘッダ部を参照し、送信元アドレスがグローバルアドレスかリンクローカルアドレスかの解析を行う。図2は、実施形態に係るNA(NAパケット)の概要を示す図である。図2おいて、NAパケット100は、大別すると、ヘッダ部Hとペイロード部Pとにより構成される。また、ヘッダ部Hには、送信元のIPアドレスと、宛先のIPアドレスが格納される。ペイロード部Pには、NSにより取得要求されたIPアドレスと、取得要求されたIPアドレスに対応するMACアドレスが格納される。例えば、アドレス識別手段としての呼制御部42は、ヘッダ部Hの送信元のIPアドレスにリンクローカルアドレスを示す情報が含まれている場合には、送信元IPアドレスをリンクローカルアドレスと判定(リンクローカルアドレスに該当しない場合には、グローバルアドレスと判定)する。そして、アドレス解決情報通知手段としての呼制御部42は、送信元IPアドレスがリンクローカルアドレスの場合には、RTP送信に必要な情報として、ヘッダ部Hの送信元のIPアドレス(リンクローカルアドレス)の代わりにペイロード部Pの取得要求IPアドレス(グローバルアドレス)と、ヘッダ部HのMACアドレスをRTP制御部46に通知する。RTP制御部46は、通知された情報をメモリM3に保持する。
【0038】
そして、RTP通信を行う段階では、RTP制御部46は、メモリM1に保持された相手先のIPアドレス(グローバルアドレス)をキーとして、メモリM2及びM3を検索し、ヒットしたIPアドレスに対応するMACアドレスを用いて、RTP通信を行う。これ以上のアドレス解決動作の詳しい処理については動作の項で改めて説明する。
【0039】
(A−2)実施形態の動作
次に、以上のような構成を有する実施形態の通信システム1(VoIP−GW4)の動作を説明する。まず、図3を用いて、同一拠点内の異なるVoIP−GW4(4−1、4−2)間での通話までのシーケンスを説明する。
【0040】
図3は、実施形態に係る通信システムの処理を示すシーケンス図である。
【0041】
電話機50−1より発呼すると、発呼及びダイヤル信号が電話機50−1からVoIP−GW4−1に送信される(S101)。
【0042】
VoIP−GW4−1は、発呼及びダイヤル信号を受信すると、SIPサーバ20に発信要求に該当するINVITE(発信)を送信する(S102)。なお、この信号の中には、相手の電話番号(電話機50−3の電話番号)とVoIP−GW4−1で音声通話に使用するIPアドレスが含まれている。
【0043】
VoIP−GW4−1より、INVITE(発信)を受信したSIPサーバ20は、相手の電話番号を収容するVoIP−GW4−2を特定し、VoIP−GW4−2に着信信号に該当するINVITE(着信)を送信する(S103)。なお、この信号の中には、着信端末の電話番号とVoIP−GW4−1が音声通話に使用するIPアドレスが含まれている。
【0044】
SIPサーバ20よりINVITE(着信)を受信したVoIP−GW4−2は、INVITE(着信)内の着信端末の電話番号から、着信する電話機50−3を特定し、該電話端末に対し、呼出信号を送信する(S104)。また、VoIP−GW4−2は、INVITE(着信)内のVoIP−GW4−1が音声通話に使用するIPアドレスを内部メモリに保持しておく。
【0045】
電話機50−3が応答すると、電話機50−3は、VoIP−GW4−2に応答信号を送信する(S105)。
【0046】
電話機50−3より、応答信号を受信したVoIP−GW4−2は、SIPサーバ20に応答に該当する200 OK(応答)を送信する(S106)。なお、この信号の中には、VoIP−GW4−2が音声通話に使用するIPアドレスが含まれている。
【0047】
また、先述のステップS106の処理と同時に、VoIP−GW4−2は、内部メモリに保持していたVoIP−GW4−1が音声通話に使用するIPアドレスのネットワーク部が自装置のIPアドレスのネットワーク部と一致するので、アドレス解決要求のための信号をブロードキャスト(又はマルチキャスト)で送信する(S107)。ここで、アドレス解決要求のための信号は、IPv4では、ARP Req、IPv6では、NSである。
【0048】
アドレス解決要求のための信号を受信したVoIP−GW4−1は、要求されているアドレスが自装置のものであると認識するので、自装置のイーサネット(MAC)アドレスを含むアドレス解決応答信号を要求元のVoIP−GW4−2に送信する(S108)。ここで、アドレス解決応答のための信号は、IPv4では、ARP Resp、IPv6では、NAである。
【0049】
VoIP−GW4−2より200 OK(応答)を受信したSIPサーバ20は、VoIP−GW4−1に応答に該当する200 OK(応答)を送信する(S109)。なお、この信号の中には、VoIP−GW4−2が音声通話に使用するIPアドレスが含まれている。
【0050】
SIPサーバ20より200 OK(応答)を受信したVoIP−GW4−1は、電話機50−1に応答信号を送信する(S110)。
【0051】
また、先述のステップS110の処理と同時に、VoIP−GW4−1は、200 OK(応答)内にあるVoIP−GW4−2が音声通話に使用するIPアドレスのネットワーク部が自装置のIPアドレスのネットワーク部と一致した場合、先述のステップS107の処理と同様に、アドレス解決要求のための信号をブロードキャスト(又はマルチキャスト)で送信する(S111)。
【0052】
アドレス解決要求のための信号を受信したVoIP−GW4−2は、要求されているアドレスが自装置のものであると認識するので、先述のステップS108の処理と同様に自装置のMACアドレスを含むアドレス解決応答信号を要求元のVoIP−GW4−1に送信する(S112)。
【0053】
上記処理により、VoIP−GW4−1とVoIP−GW4−2間の通信に必要なアドレス解決がなされたので、電話機50−1から送信された音声信号は、VoIP−GW4−1にて、RTPパケットに変換されて、VoIP−GW4−2に送信される(S113、S114)。
【0054】
RTPパケットを受信したVoIP−GW4−2は、RTPパケットを音声信号に変換して、電話機50−3に送信する(S115)。
【0055】
一方、電話機50−3から送信された音声信号は、VoIP−GW4−2にて、RTPパケットに変換されて、VoIP−GW4−1に送信される(S116、S117)。
【0056】
RTPパケットを受信したVoIP−GW4−1は、RTPパケットを音声信号に変換して、電話機50−1に送信する(S118)。
【0057】
次に、VoIP−GWのアドレス解決の処理について説明を行う。
【0058】
まず、着信側のVoIP−GW4−2が電話機50−3より応答信号を受信したタイミング(先述のステップS107)、又は発信側のVoIP−GW4−1がSIPサーバ20より200 OK(応答)を受信したタイミング(先述のステップS111)で、VoIP−GW4のアドレス解決の処理が開始される。
【0059】
VoIP−GW4−2(又はVoIP−GW4−1)の制御プロセッサ41の呼制御部42は、内部バス48−2及び音声信号及び通信制御プロセッサ44の通信制御部47を介してVoIP回線Iに対しアドレス解決の要求(ARP req/NS)を送信するとともに、内部バス48−1を介し、音声信号及び通信制御プロセッサ44のRTP制御部46にRTP送信に必要な情報を通知する。通知するRTP送信に必要な情報は、送信相手のIPアドレスである(送信先のMACアドレスは含まれていない)。
【0060】
呼制御部42よりRTP送信に必要な情報を受信したRTP制御部46は、メモリM1に該情報(送信相手のIPアドレス)を保持する。
【0061】
一方、対向装置(VoIP−GW4−2又は4−1)よりアドレス解決の応答(ARP Resp/NA)を受信した通信制御部47は、内部バス48−2及びプロトコル制御部43を介して、呼制御部42に対向装置よりアドレス解決の応答(ARP Resp/NA)を送信するとともに、アドレス解決の応答(ARP Resp/NA)から、送信元装置のIPアドレスとMACアドレスを抽出し、プロセッサ内通信機能を用いて、RTP制御部46に、アドレス解決情報(MACアドレスを含む情報)を送信する。
【0062】
通信制御部47よりアドレス解決の応答(ARP Resp/NA)を受信した呼制御部42は、IPv6の場合には、アドレス解決の応答パケットのヘッダ部から送信元IPアドレスがグローバルアドレスかリンクローカルアドレスかの識別を行う。呼制御部42は、リンクローカルアドレスの場合には、送信元IPアドレスをRTP送信に必要な情報の送信相手のIPアドレス(グローバルアドレス)に変更したアドレス解決情報を、内部バス48−1を介し、RTP制御部46に送信する。ここで、アドレス解決情報に含まれるMACアドレスは、アドレス解決の応答(ARP Resp/NA)から抽出したものである。
【0063】
呼制御部42よりアドレス解決情報(グローバルアドレスに変更済みの情報と、MACアドレス)を受信したRTP制御部46は、該情報をメモリM3に保持する。
【0064】
また、通信制御部47よりアドレス解決情報(変更しないそのままの情報)を受信したRTP制御部46は、該情報をメモリM2に保持する。
【0065】
次に、電話機回線Tより音声信号を受信した音声信号制御部45は、該信号をG.711μ_lawなどのデジタル信号に変換し、プロセッサ内通信機能を用いて、RTP制御部46に送信する。
【0066】
音声信号制御部45よりデジタル信号を受信したRTP制御部46は、メモリM1に保持する送信相手のIPアドレスをキーとして、メモリM2又はメモリM3に保持される送信元装置のIPアドレスを検索する。
【0067】
RTP制御部46は、送信元装置のIPアドレスを発見した場合には、RTPパケットを作成するとともに、通信制御部47を介し、メモリM2又はメモリM3に保持しているMACアドレスに対し、RTPパケットの送信を行う。一方、RTP制御部46は、送信元装置のIPアドレスを発見できなかった場合には、受信したデジタル信号を廃棄する。
【0068】
(A−3)実施形態の効果
この実施形態によれば、VoIP−GW4の制御プロセッサ41内の呼制御部42が実行する、相手装置からアドレス解決の応答(ARP Resp/NA)を受信したときの処理において、IPv6の場合には、送信元IPアドレスがグローバルアドレスかリンクローカルアドレスかの識別を行い、リンクローカルアドレスの場合には、送信元IPアドレスをRTP送信に必要な情報の送信相手のIPアドレス(グローバルアドレス)に変更したアドレス解決情報を、RTP制御部46に送信する処理(メモリM3に記憶する処理)を追加した。これにより、VoIP−GW4は、NA信号の送信元アドレスがリンクローカルアドレスの場合でも、電話機50から送信された音声信号を、RTPパケットに変換し、相手先のVoIP−GW4に送信することができる。つまり、RTP制御部46は、メモリM3に保持されたグローバルアドレスに紐づいたMACアドレスを取得できるので、RTPの送信エラーが発生しないことになる。
【符号の説明】
【0069】
1…通信システム、4(4−1〜4−4)…VoIP−GW、20…SIPサーバ、30…ER、40(40−1〜40−4)…従来のVoIP−GW、41…制御プロセッサ、42…呼制御部、43…プロトコル制御部、44…音声信号及び通信制御プロセッサ、45…音声信号制御部、46…RTP制御部、47…通信制御部、48(48−1、48−2)…内部バス、50(50−1〜50−8)…電話機、100…NAパケット、A…拠点、H…ヘッダ部、I…VoIP回線、M(M1〜M3)…メモリ、N…IP網、P…ペイロード部、T…電話機回線。
図1
図2
図3
図4