(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、添付図面を参照して、実施の形態について詳細に説明する。
図1は、本実施の形態に係る綴じ処理装置300が適用される用紙処理システム1の概略構成を示す図である。
用紙処理システム1は、用紙Pに対して電子写真方式等を用いて画像を形成する画像形成装置2と、画像形成装置2により画像が形成された複数枚の用紙Pに対して綴じ等の後処理を行う後処理装置3とを備えている。
【0009】
(画像形成装置)
画像形成装置2は、所謂タンデム方式で構成され、各色画像データに基づいて画像形成を行う4つの画像形成ユニット100Y,100M,100C,100K(「画像形成ユニット100」とも総称する)を備える。各画像形成ユニット100は、感光体ドラム100aを有する。
また、画像形成装置2は、各画像形成ユニット100に設けられた感光体ドラム100aを露光し、感光体ドラム100aの表面に静電潜像を形成するレーザ露光装置101を備える。
【0010】
また、画像形成装置2は、各画像形成ユニット100にて形成された各色のトナー像が多重転写される中間転写ベルト102と、各画像形成ユニット100にて形成された各色トナー像を中間転写ベルト102に順次転写(一次転写)する一次転写ロール103とを備える。また、画像形成装置2は、中間転写ベルト102上に転写された各色トナー像を用紙Pに一括転写(二次転写)する二次転写ロール104を備える。
【0011】
また、画像形成装置2は、二次転写された各色トナー像を用紙P上に定着させる定着装置105と、画像形成装置2の動作を制御する本体制御部106とを備える。
また、画像形成装置2は、異なるサイズや異なる種類の用紙Pを収容する複数の用紙収容部110a〜110dと、用紙収容部110a〜110dから用紙Pを取り出すピックアップロール111と、取り出した用紙Pを搬送する搬送ロール112と、搬送ロール112と二次転写ロール104との間に配置されたレジストロール113とを備える。
【0012】
上述のように構成された、画像形成装置2においては、中間転写ベルト102上の各色トナー像が二次転写ロール104と中間転写ベルト102とが対向する対向部(二次転写部)に搬送されるタイミングに合わせて、二次転写部に対し、レジストロール113から用紙Pが供給される。
そして、中間転写ベルト102上の各色トナー像が、二次転写ロール104により形成された転写電界の作用によって、用紙P上に一括して静電転写(二次転写)される。
【0013】
その後、各色トナー像が転写された用紙Pは、中間転写ベルト102から剥離されて定着装置105へ搬送される。定着装置105では、熱および圧力による定着処理により、各色トナー像が用紙P上に定着され、用紙P上に画像が形成される。
そして、画像が形成された用紙Pは、搬送ロール114によって画像形成装置2の用紙排出部Tから排出され、画像形成装置2に接続された後処理装置3へ供給される。
【0014】
(後処理装置)
後処理装置3は、画像形成装置2の用紙排出部Tに接続されたトランスポートユニット31と、トランスポートユニット31により搬送されてきた用紙Pに対して予め定められた処理を施すフィニッシャユニット32とを備える。
トランスポートユニット31は、2穴や4穴等の穴あけ(パンチ)を施すパンチ機能部31aと、画像形成装置2にて画像形成された後の用紙Pをフィニッシャユニット32に向けて搬送する複数の搬送ロール31bとを備える。
フィニッシャユニット32は、複数枚の用紙Pから構成される用紙束Bに対する綴じ処理を行う綴じ処理装置300を備える。綴じ処理装置300については後で詳述する。
【0015】
また、後処理装置3は、後処理装置3の各機構部を制御する用紙処理制御部33を備える。用紙処理制御部33は、CPU、ROM、RAM、バックアップRAM等からなる算術論理演算回路を有し、例えば、後述する針綴じ部410,針無し綴じ部550の大きさや位置が後述する態様となるように綴じ処理装置300を制御する。用紙処理制御部33は、不図示の信号ラインで本体制御部106に接続され、相互に制御信号等の送受信を行う。なお、
図1には、用紙処理制御部33がフィニッシャユニット32の筐体内に設けられている例を示しているが、用紙処理制御部33は、画像形成装置2の筐体内に設けてもよい。また、画像形成装置2の本体制御部106が、用紙処理制御部33の制御機能を備えた構成としてもよい。
また、後処理装置3は、後処理装置3による処理が終了した用紙束Bを積載するスタッカー部34を備える。
【0016】
{綴じ処理装置}
図2は、綴じ処理装置300の概略構成を示す図である。
図3は、
図2のIII方向から綴じ処理装置を見た図である。
綴じ処理装置300は、用紙Pを下方から支持すると共に用紙Pを必要枚数だけ集積させて用紙束Bを生成する用紙集積部310と、用紙束Bに対して綴じ処理を行う綴じユニット320と、綴じユニット320を移動可能に支持するレール325及び支持軸326とを備えている。
また、綴じ処理装置300は、
図2における時計回転方向に回転し、用紙集積部310上の用紙束Bをスタッカー部34へ排出する排出部330を備えている。
また、綴じ処理装置300は、用紙Pを、用紙集積部310の端部に設けられた後述する用紙規制部312に向けて移動させるパドル340と、用紙Pの進行方向に沿う端部を揃えるタンパ350とを備える。
【0017】
用紙集積部310は、用紙Pを載せる上面を有して上下方向に対して傾斜して配置された底部311と、底部311における下端面に設けられて用紙Pの下方への移動を規制する用紙規制部312とを備える。
綴じユニット320については後で詳述する。
【0018】
排出部330は、装置筐体に対して回転可能に設けられた固定側排出部材331を備える。また、排出部330は、回転軸332a(
図1参照)を中心にして搖動可能に設けられ、生成された用紙束Bをスタッカー部34へ送る際には、用紙集積部310上の用紙束Bを押し、用紙Pを用紙集積部310に集積させる際には用紙Pの搬送経路から退避する移動側排出部材332を備える。
【0019】
固定側排出部材331は、用紙束Bを押圧する部材である2つの固定側排出ロール331aと、2つの固定側排出ロール331aを支持する固定側ロール支持部材331bとを有している。
移動側排出部材332は、用紙束Bを押圧する部材である2つの移動側排出ロール332aと、2つの移動側排出ロール332aを支持する移動側ロール支持部材332bとを有している。
固定側排出部材331と移動側排出部材332とは、用紙集積部310の底部311を挟んでこの底部311の上側と下側とで対向するように配置されており、対向する固定側排出ロール331aと移動側排出ロール332aとで押圧することで用紙束Bをスタッカー部34へ排出する。固定側排出ロール331aと移動側排出ロール332aとは、同じ部材であり、用紙束Bの幅方向の大きさは同じであることを例示することができる。以下では、対向する固定側排出ロール331aと移動側排出ロール332aとから構成される一対のロールを、「排出ロール333」と称す。
【0020】
移動側排出部材332は、用紙集積部310の底部311であって、用紙Pが積載される上面側に設けられている。さらに、移動側排出部材332は、図示しないモータ等の駆動を受けて固定側排出部材331に対して進退可能に備えられている。つまり、移動側排出部材332と用紙集積部310の底部311に積載されている用紙Pとの距離が変化するように構成されている。一方、固定側排出部材331は、用紙集積部310の底部311における用紙Pが積載される上面の裏面側に配置されており、その位置は固定され、回転運動のみを行うよう備えられている。
【0021】
より具体的には、移動側排出部材332が矢印Q1方向に移動し、移動側排出部材332が用紙集積部310の底部311に接近する(破線で描かれた位置P2)。一方、移動側排出部材332が矢印Q2方向に移動し、移動側排出部材332が用紙集積部310の底部311から離間する(実線で描かれた位置P1)。
そして、移動側排出部材332は、用紙Pに接触した状態で図示しないモータ等の駆動を受けて、T1方向(
図2における反時計回転方向)に回転することで用紙束Bを上昇(第3の進行方向S3方向に移動)させて用紙束Bを排出する。
なお、移動側排出部材332の位置P1、P2は、用紙集積部310に供給される用紙Pの枚数や厚みに応じて変化させることができる。
【0022】
パドル340は、用紙集積部310の上方であって、かつ排出部330に対して用紙束Bの排出方向の上流側に設けられる。また、パドル340は、図示しないモータ等の駆動を受けて用紙集積部310の底部311との距離が変化するように備えられている。具体的には、パドル340は、
図2の矢印U1およびU2の方向に移動可能に備えられており、矢印U1方向に移動することで用紙集積部310の底部311に接近し、矢印U2方向に移動することで用紙集積部310の底部311から離間する。そして、パドル340は、
図2の矢印R方向(
図2における時計回転方向)に回転することで、
図2の第1の進行方向S1方向に沿って搬送された用紙Pを、用紙規制部312に向けて(第2の進行方向S2に)移動させる。
【0023】
タンパ350は、用紙集積部310を挟んで対向する第1タンパ351及び第2タンパ352を有する。具体的には、第1タンパ351及び第2タンパ352は、第2の進行方向S2と交差する方向(
図3における上下方向)で互いに対向するよう配置される。そして、第1タンパ351及び第2タンパ352は、図示しないモータ等の駆動を受けて第1タンパ351及び第2タンパ352の互いの距離が変化するように構成されている。
ここで、このタンパ350は、用紙集積部310の底部311に沿って落下する用紙Pの進行方向に沿う端部を揃えるよう構成される。具体的には、第1タンパ351は、用紙集積部310に接近する位置(実線で描かれた位置)と用紙集積部310から離間する位置(破線で描かれた位置)との間を移動する(矢印C1及びC2)よう配置されている。一方、第2タンパ352は、用紙集積部310に接近する位置(実線で描かれた位置)と用紙集積部310から離間する位置(破線で描かれた位置)との間を移動する(矢印C3及びC4)よう構成されている。
本実施の形態における第1タンパ351及び第2タンパ352のそれぞれの位置は、用紙集積部310に供給される用紙Pの用紙サイズや向きに応じて変化させられる。
【0024】
なお、
図2では、用紙束Bが用紙集積部310から排出部330にてスタッカー部34へ排出される方向をx方向、用紙集積部310の収容面内での用紙束Bの排出方向に直交する方向(用紙束Bの幅方向)をy方向、用紙集積部310の収容面と直交する方向をz方向とする。以下に示す図においても、同様とする。
また、
図3における下側は、用紙処理システム1のユーザ側を示し、
図1および
図2における紙面手前側を示す。
【0025】
〔綴じユニット〕
綴じユニット320は、ステープル針401(
図6参照)を用いて用紙束Bを綴じる針綴じ手段の一例としてのステープラ400と、針を用いることなく用紙束Bを綴じる針無し綴じ手段の一例としての針無し綴じ装置500とを備える。
【0026】
ステープラ400及び針無し綴じ装置500は、連結されており、用紙束Bの排出方向に直交する方向(幅方向(y方向))に連続して設けられている。ステープラ400は、針無し綴じ装置500よりも用紙処理システム1のユーザ側(
図3における下側)に配置されている。ステープラ400をユーザ側(
図3における下側)に配置することにより、ステープル針401の補充等のステープラ400に対する保守作業を容易に行わせることが可能となる。
【0027】
綴じユニット320は、装置筐体に設けられたレール325上に配置されており、図示しないモータにより、用紙束Bの幅方向(y方向)に移動可能に構成されている。綴じユニット320が用紙束Bの幅方向(y方向)に移動可能であることにより、ステープラ400及び針無し綴じ装置500は、用紙束Bの幅方向(y方向)のいずれの位置においても綴じ処理を施すことが可能である。
なお、ステープラ400と針無し綴じ装置500とは、連結されていなくても良い。
【0028】
≪ステープラ≫
ステープラ400は、ステープル針401を用紙Pに押し込むことにより、用紙集積部310に生成された用紙束Bの端部を綴じるよう構成されている。すなわち、図示しないステープラモータが駆動され、ステープラ400が一つのステープル針401を用紙束Bに押し込む。ステープル針401が用紙束Bに押し込まれ、用紙束Bの反対側でステープル針401の端部が折り曲げられることによって、用紙束Bが綴じられる。これにより、ステープル針401にて綴じられた用紙束Bが生成される。
【0029】
≪針無し綴じ装置≫
図4は、針無し綴じ装置500の概略構成を示す図である。
図4(a)が用紙束Bを綴じる前の状態、
図4(b)が用紙束Bを綴じているときの状態を示す図である。
図5は、針無し綴じ装置500の後述する第1圧着部材511及び第2圧着部材521を示す図である。
図5(a)は第1圧着部材511及び第2圧着部材521の斜視図である。
図5(b)は、
図4(a)のVb方向から見た図であり、
図5(c)は、
図4(b)のVc方向から見た図である。
【0030】
針無し綴じ装置500は、
図4における左右方向に延びる一対の駆動部である第1駆動部510及び第2駆動部520と、第1駆動部510と第2駆動部520とを支持する支持軸530とを備えている。また、針無し綴じ装置500は、第1駆動部510と第2駆動部520とを離隔させる押圧力を作用させるバネ部材540と、バネ部材540の押圧力に抗して第1駆動部510を押し下げるカム545とを備える。
【0031】
第1駆動部510は、用紙集積部310側の端部である一方の端部に設けられて、第2駆動部520側に突出した第1圧着部材511を有する。第1駆動部510には、他方の端部に、支持軸530を通す貫通孔(不図示)が形成されている。
第2駆動部520は、用紙集積部310側の端部である一方の端部に設けられて、第1駆動部510側に突出した第2圧着部材521を有する。第2駆動部520には、他方の端部に、支持軸530が嵌め込まれて固定される貫通孔(不図示)と、装置筐体に固定された支持軸326を通す貫通孔522とが形成されている。
【0032】
支持軸530は、円柱状の部材であり、一方の端部が第2駆動部520に固定され、他方の端部が第1駆動部510に形成された貫通孔にすきまばめで嵌め込まれている。そして、支持軸530は、第1駆動部510を上下方向に移動可能に支持する。
バネ部材540は、コイルバネであり、一方の端部が第1駆動部510に支持され、他方の端部が第2駆動部520に支持されている。
カム545は、不図示のモータにより回転駆動力を受けて回転軸546を回転中心として回転する。
【0033】
針無し綴じ装置500では、
図4(b)に示したように、カム545が回転軸546に接続された駆動モータ(不図示)からの駆動力によって予め定められた角度だけ反時計回転方向(
図4(a)参照)に回転することにより、バネ部材540からの押圧力に抗して第1駆動部510を押し下げる。それにより、第1駆動部510の第1圧着部材511と第2駆動部520の第2圧着部材521とが圧着する。
一方、第1駆動部510を押し下げた状態からカム545が時計回転方向(
図4(b)参照)に回転すると、バネ部材540からの押圧力によって、第1駆動部510は、第1圧着部材511と第2圧着部材521とが離れる位置(
図4(a)に示した状態)まで戻る。
【0034】
第1圧着部材511,第2圧着部材521は、
図5(a)に示したように、複数の三角形状の突起(歯)が例えばバーコード状に規則的に配列されて構成され、第1圧着部材511の突起511aと第2圧着部材521の突起521aとが互いに噛み合うように設定されている。すなわち、第1圧着部材511と第2圧着部材521との圧着時には、第1圧着部材511の突起511aが、第2圧着部材521の突起521aと突起521aとの間に位置するようにそれぞれ配列されている(
図5(c)参照)。それにより、用紙Pは第1圧着部材511の突起511aと第2圧着部材521の突起521aとに挟まれて局所的に変形し、変形した部分(圧着綴じ部)での用紙P相互の噛み合い(用紙Pを構成する繊維同士の絡み合い)により用紙束Bが綴じられる。
なお、第1圧着部材511,第2圧着部材521の突起(歯)の形状は、第1圧着部材511及び第2圧着部材521が噛み合うことで用紙Pに局所的な変形を形成できれば如何なる形状であってもよい。
【0035】
(綴じ部の比較)
図6は、針綴じ部410と針無し綴じ部550とを比較する図である。
図6(a)は、針綴じ部410を用紙Pの紙面に直交する方向から見た図である。
図6(b)は、針綴じ部410を用紙束排出方向(x方向)に見た図である。
図6(c)は、針無し綴じ部550を用紙Pの紙面に直交する方向から見た図である。
図6(d)は、針無し綴じ部550を用紙束排出方向(x方向)に見た図である。
図6(e)は、針無し綴じ部550の範囲を示す図である。
【0036】
綴じユニット320は、装置筐体に固定された支持軸326に沿って幅方向(y方向)に移動し、用紙束Bに予め定められた1または複数の綴じ部を形成可能である。ユーザにより、例えばユーザインターフェースを介して針綴じが選択された場合には、用紙処理制御部33は、ステープラ400を用いて針綴じ処理を行う。他方、ユーザにより、例えばユーザインターフェースを介して針無し綴じが選択された場合には、用紙処理制御部33は、針無し綴じ装置500を用いて針無し綴じ処理を行う。以下では、ステープラ400により綴じられた部位を、「針綴じ部410」と称し、針無し綴じ装置500により綴じられた部位を「針無し綴じ部550」と称す。
【0037】
図6(a)に示すように、針無し綴じ部550の長さL550は針綴じ部410の長さL410よりも長い。つまり、ステープラ400のステープル針401の幅方向(y方向)の長さよりも、針無し綴じ装置500の1回の綴じ処理(圧着)で第1駆動部510の第1圧着部材511の突起511aと第2駆動部520の第2圧着部材521の突起521aとに挟まれる箇所の幅方向(y方向)の長さの方が長い。これは、両者の長さが同じであるとした場合には、ステープル針401による綴じ力に比べて用紙P相互の噛み合い(用紙Pを構成する繊維同士の絡み合い)による綴じ力の方が弱く、例えば用紙束Bを構成する一部の用紙Pが捲られた場合に綴じが外れ易い(捲られた用紙Pが用紙束Bから剥がれ易い)ためである。そのため、本実施の形態に係る綴じユニット320においては、針無し綴じ部550の幅方向(y方向)の長さを針綴じ部410の幅方向(y方向)の長さよりも長くすることで綴じを外れ難くしている。
【0038】
なお、針無し綴じ装置500の第1駆動部510の第1圧着部材511と第2駆動部520の第2圧着部材521とを近接した位置で複数回圧着させ、近接した位置に複数の圧着綴じ部を形成することで1つの針無し綴じ部550を形成しても良い。例えば、
図6(e)に示した圧着綴じ部間の距離ΔLが、第1圧着部材511,第2圧着部材521の突起(歯)の頂点間の距離ΔT(
図5(b)参照)未満である場合にはこれら複数の圧着綴じ部は近接した位置に形成されているとして、これら複数の圧着綴じ部が1つの針無し綴じ部550を構成するとしても良い。ゆえに、針無し綴じ部550の幅方向(y方向)の長さを針綴じ部410の長さよりも長くするために、必ずしも、第1圧着部材511,第2圧着部材521の幅方向(y方向)の長さをステープル針401の長さよりも長くしなくても良い。
【0039】
(オフセット動作)
綴じユニット320によって綴じられた用紙束Bをオフセットして排出する動作について説明をする。
本実施の形態に係る後処理装置3においては、複数の綴じられた用紙束Bの一の用紙束B(あるいは一の用紙束群)を他の用紙束B(あるいは他の用紙束群)と見分け易くするためや、スタッカー部34に積載可能な用紙束Bの束数を多くするために、ユーザによりオフセット処理の要求を受け付ける。つまり、用紙処理制御部33は、ユーザインターフェイス(不図示)等を介して綴じ処理及びオフセット処理に関する情報を受け付ける。綴じ処理及びオフセット処理に関する情報を受けた用紙処理制御部33は、ROM等の記憶部(不図示)に格納されたテーブル等を参照することで、綴じ位置やオフセット量等を決定する。本実施の形態に係る綴じ処理装置300においては、用紙束Bの中心位置Bc(
図7参照)から幅方向(y方向)の一方の方向及び他方の方向にオフセット可能である。
【0040】
オフセット処理を行う場合には、用紙処理制御部33は、用紙集積部310に形成された用紙束Bに対して綴じユニット320が綴じ処理を施した後に、排出部330の移動側排出部材332を矢印Q2(
図2参照)方向に移動させる(上昇させる)。その後、用紙処理制御部33は、第1タンパ351及び第2タンパ352を、設定したオフセット量に応じた位置までそれぞれ移動させる。これにより、綴じられた用紙束Bが、用紙束Bの幅方向(y方向)にずれる(用紙束Bがオフセットする)。
そして、用紙処理制御部33は、用紙束Bの位置をずらした(オフセットさせた)後に、移動側排出部材332を矢印Q1方向に移動させ(下降させ)、用紙束Bを排出ロール333にて押圧させる。用紙処理制御部33は、用紙束Bを排出ロール333にて押圧した状態で、排出ロール333を回転させることで、用紙束Bをスタッカー部34に排出させる。
【0041】
ここで、上述したように、綴じユニット320のステープラ400は、ステープル針401を、用紙Pの厚さ方向(z方向)に押し込み、用紙束Bの反対側でステープル針401の端部を折り曲げることで用紙束Bを綴じる。それゆえ、針綴じ部410の針綴じ部高さH410は、ステープル針401の太さや端部の折り曲げ部の形状に起因して、綴じ処理が施されていない用紙束Bの高さよりも高くなる。
針無し綴じ装置500は、用紙束Bに厚さ方向(z方向)の変形を生じさせることにより用紙束Bを綴じる。それゆえ、針無し綴じ部550の針無し綴じ部高さH550は、厚さ方向(z方向)の変形に起因して、綴じ処理が施されていない用紙束Bの高さよりも高くなる。
【0042】
このように、針綴じ部高さH410,針無し綴じ部高さH550は、綴じ処理が施されていない用紙束Bの高さよりも高いため、スタッカー部34に積載された綴じ処理が施された用紙束B全体の高さが、綴じ処理が施されていない用紙束B全体の高さよりも高くなる。その結果、スタッカー部34に積載可能な用紙束Bの束数が少なくなったり、同じ束数を積載しても用紙束B全体の積載安定性が低下したりする。
これら針綴じ部高さH410,針無し綴じ部高さH550に鑑み、本実施の形態に係る綴じ処理装置300においては、綴じユニット320により綴じられた用紙束Bをオフセットしてスタッカー部34へ排出する際には、以下のようにオフセット量を定める。
【0043】
すなわち、ステープラ400により綴じられた第1針綴じ用紙束Bs1(
図7参照)に対して、ステープラ400により綴じられた第2針綴じ用紙束Bs2(
図7参照)をオフセットする際には、第1針綴じ用紙束Bs1の針綴じ部410と、第2針綴じ用紙束Bs2の針綴じ部410とが重ならないようにオフセットする。つまり、第1針綴じ用紙束Bs1と第2針綴じ用紙束Bs2とのオフセット量M410(
図7参照)を、針綴じ部410の長さL410よりも大きくする。これにより、スタッカー部34に積載可能な用紙束Bの束数が多くなる。また、用紙束B全体の積載安定性が向上する。
なお、第1針綴じ用紙束Bs1に対して、第2針綴じ用紙束Bs2を、用紙束Bの中心位置Bcから幅方向(y方向)の一方の方向にオフセットする場合も、他方の方向にオフセットする場合も両者の針綴じ部410が重ならないようにすると良い。
【0044】
一方、針無し綴じ部550の針無し綴じ部高さH550は、針綴じ部410の針綴じ部高さH410よりも低いことから、針無し綴じ装置500により綴じられた用紙束Bをオフセットする際には、以下のようにオフセット量を定める。すなわち、針無し綴じ装置500により綴じられた第1針無し綴じ用紙束Bp1(
図8参照)に対して針無し綴じ装置500により綴じられた第2針無し綴じ用紙束Bp2(
図8参照)をオフセットする際には、第1針無し綴じ用紙束Bp1の針無し綴じ部550と、第2針無し綴じ用紙束Bp2の針無し綴じ部550とが重なるようにオフセットする。つまり、第1針無し綴じ用紙束Bp1と第2針無し綴じ用紙束Bp2とのオフセット量M550(
図8参照)を、針無し綴じ部550の長さL550よりも小さくする。これは、上述したように針無し綴じ部550の幅方向(y方向)の長さを針綴じ部410の幅方向(y方向)の長さよりも長くしても、後述するように針無し綴じ部550を排出ロール333にて押圧されない位置に形成するためである。
綴じ部の位置とオフセット量との関係について以下に詳述する。
【0045】
(綴じ部の位置)
図7は、ステープラ400によって綴じられた用紙束Bを排出する様子を示す図である。
図7(a)は、用紙束Bをオフセットしないで排出する場合、
図7(b)は、用紙束Bを一方の方向にオフセットして排出する場合、
図7(c)は、用紙束Bを他方の方向にオフセットして排出する場合の様子を示す図である。
図8は、針無し綴じ装置500によって綴じられた用紙束Bを排出する様子を示す図である。
図8(a)は、用紙束Bをオフセットしないで排出する場合、
図8(b)は、用紙束Bを一方の方向にオフセットして排出する場合、
図8(c)は、用紙束Bを他方の方向にオフセットして排出する場合の様子を示す図である。
【0046】
図1〜
図3に示したように、綴じユニット320の用紙束排出方向(x方向)下流側には、排出ロール333が配置されている。排出ロール333は、綴じユニット320が用紙束Bを生成し終えると、用紙束Bをスタッカー部34に排出する。そのため、綴じ処理された用紙束Bは、排出ロール333にて押圧されることとなる。排出ロール333(一対の固定側排出ロール331a及び移動側排出ロール332a)は、用紙束Bの幅方向(y方向)に2つ設けられている。
【0047】
針無し綴じ装置500によって綴じられた針無し綴じ部550が、排出ロール333から受ける押圧力によって緩みや剥がれが生じることを抑制するため、本実施の形態に係る綴じユニット320においては、針無し綴じ装置500は、排出ロール333にて押圧されない位置に針無し綴じ部550を形成する。
また、ステープラ400によって綴じられた針綴じ部410を排出ロール333が押圧することによってステープル針401が変形することやステープル針401が排出ロール333を傷めてしまうことを抑制するため、本実施の形態に係る綴じユニット320においては、ステープラ400は、排出ロール333にて押圧されない位置に針綴じ部410を形成する。
例えば、針綴じ部410,針無し綴じ部550を幅方向(y方向)に偶数箇所形成する場合には、オフセットする場合であってもオフセットしない場合であっても、針綴じ部410,針無し綴じ部550を、排出ロール333の外側に形成する。
【0048】
以下に、より具体的に、針綴じ部410の位置と針無し綴じ部550の位置とについて説明する。
ここで、以下の説明において、針綴じ部410における幅方向(y方向)の中心側の端部を「針綴じ部内端410i」と称す。また、針無し綴じ部550における幅方向(y方向)の中心側の端部を「針無し綴じ部内端550i」と称す。また、排出ロール333の中心側の端部を「ロール内端333i」、外側の端部を「ロール外端333o」と称す。
【0049】
針綴じ部410を用紙束Bの幅方向(y方向)に2つ形成する場合には、綴じ部410が形成された用紙束Bをオフセットして排出する場合であってもオフセットしないで排出する場合(
図7(a)参照)であっても、2つの針綴じ部410が、排出ロール333の外側に位置するように形成する。また、用紙束Bの中心位置Bcから幅方向(y方向)の一方の方向にオフセットする場合(
図7(b)参照)も他方の方向にオフセットする場合(
図7(c)参照)も、2つの針綴じ部410が、排出ロール333の外側に位置するように形成する。それゆえ、2つの針綴じ部内端410i間の距離L410iから両方向分のオフセット量M410を減算した値が2つの排出ロール333のロール外端333o間の距離L333oよりも大きくなるように、針綴じ部410の位置及びオフセット量M410を設定する。つまり、距離L410i、オフセット量M410は以下の式(1)を満足する値に設定する。
L410i−2×M410>L333o・・・(1)
なお、上述したように、オフセット量M410は、針綴じ部410の長さL410よりも大きい(M410>L410)。
これにより、針綴じ部410が排出ロール333により押圧されないようにしつつ、複数の用紙束Bの積載高さが抑制される。
なお、2つの針綴じ部410が用紙束Bの中心位置Bcを境にして対称となるようにする。これにより、2つの針綴じ部410にて綴じられた用紙束Bの外観がきれいになる。
【0050】
針無し綴じ部550を用紙束Bの幅方向(y方向)に2つ形成する場合には、針無し綴じ部550が形成された用紙束Bをオフセットして排出する場合であってもオフセットしないで排出する場合(
図8(a)参照)であっても、針無し綴じ部550が、排出ロール333の外側に位置するように形成する。また、用紙束Bの中心位置Bcから幅方向(y方向)の一方の方向にオフセットする場合(
図8(b)参照)も他方の方向にオフセットする場合(
図8(c)参照)も、針無し綴じ部550が、排出ロール333の外側に位置するように形成する。それゆえ、2つの針無し綴じ部内端550i間の距離L550iから両方向分のオフセット量M550を減算した値が2つの排出ロール333のロール外端333o間の距離L333oよりも大きくなるように、針無し綴じ部550の位置及びオフセット量M550を設定する。つまり、距離L550i、オフセット量M550を以下の式(2)を満足する値に設定する。
L550i−2×M550>L333o・・・(2)
【0051】
ここで、上述したように、スタッカー部34における積載性の観点からは、第1針無し綴じ用紙束Bp1の針無し綴じ部550と、用紙束Bの中心位置Bcから幅方向(y方向)の一方の方向にオフセットされた第2針無し綴じ用紙束Bp2の針無し綴じ部550とが重ならないようにオフセットすることが好ましい。また、第1針無し綴じ用紙束Bp1の針無し綴じ部550と、中心位置Bcから幅方向の他方の方向にオフセットされた第3針無し綴じ用紙束Bp3の針無し綴じ部550とが重ならないようにオフセットすることが好ましい。しかしながら、本実施の形態においては、上述したように、針無し綴じ部550の長さL550を針綴じ部410の長さL410よりも長くし、かつ、針無し綴じ部550を排出ロール333にて押圧されない位置に形成すること、及び、針無し綴じ部550の針無し綴じ部高さH550は針綴じ部410の針綴じ部高さH410よりも小さいことに鑑み、オフセット量M550を針無し綴じ部550の長さL550よりも小さくする。言い換えれば、第1針無し綴じ用紙束Bp1の針無し綴じ部550と、第2針無し綴じ用紙束Bp2の針無し綴じ部550とが重なるようにオフセットする。また、第1針無し綴じ用紙束Bp1の針無し綴じ部550と、第3針無し綴じ用紙束Bp3の針無し綴じ部550とが重なるようにオフセットする。これにより、針無し綴じ部550の長さL550を針綴じ部410の長さL410よりも長くし、かつ、針無し綴じ部550を排出ロール333にて押圧されない位置に形成することの自由度を増加させることが可能となる。
【0052】
例えば、オフセット量M550は、オフセット量M410よりも小さいことを例示することができる。つまり、スタッカー部34への積載に際して、針無し綴じ装置500によって綴じられた用紙束Bを移動させる量を、ステープラ400によって綴じられた用紙束Bを移動させる量よりも小さくする。これにより、スタッカー部34への積載に際して、針無し綴じ装置500によって綴じられた用紙束Bをオフセットして排出する速度を、ステープラ400によって綴じられた用紙束Bをオフセットして排出する速度よりも速くすることが可能となるので後処理の迅速化を図ることが可能となる。
【0053】
ただし、一の用紙束(一の用紙束群)を他の用紙束(他の用紙束群)と見分け易くするためにオフセットが要求される場合には、見分けるのを可能にするオフセット量を最小オフセット量Mminとする。つまり、オフセット量M550を、以下の式(3)を満足する値に設定する。
Mmin≦M550<M410・・・(3)
これにより、用紙束Bを構成する一部の用紙Pを用紙束Bから剥がれ難くしても、綴じユニット320にて綴じられた用紙束Bをオフセットして排出する処理の迅速化を図りつつ、用紙束(用紙束群)の見分け易さによる利便性の向上を図ることが可能となる。
【0054】
以上説明したように、綴じ処理装置300は、針綴じ手段の一例としてのステープラ400と、ステープラ400により綴じられた針綴じ部410の長さよりも針無し綴じ部550の長さを長くしてステープル針401を用いることなく用紙束Bを綴じる針無し綴じ手段の一例としての針無し綴じ装置500とを備える。また、綴じ処理装置300は、ステープラ400により綴じられた用紙束B同士(例えば第1針綴じ用紙束Bs1と第2針綴じ用紙束Bs2)のオフセット量M410に比べ針無し綴じ装置500により綴じられた用紙束B同士(例えば第1針無し綴じ用紙束Bp1と第2針無し綴じ用紙束Bp2)のオフセット量M550が小さくなるように綴じられた用紙束Bを排出する排出手段の一例としてのタンパ350及び排出部330を備える。そして、この綴じ処理装置300によれば、オフセットして排出された綴じられた用紙束Bを構成する用紙Pが、用紙束Bから剥がれ難くなる。
【0055】
なお、ユーザによりスタッカー部34に積載可能な用紙束Bの束数を多くすることが要求された場合には、オフセット量M550はゼロに設定しても良い。例えば、スタッカー部34に積載可能な用紙束Bの束数を多くするべく、ユーザによりオフセットが要求された場合には、ステープラ400によって綴じられた用紙束Bはオフセットするが針無し綴じ装置500によって綴じられた用紙束Bはオフセットせずに排出するようにしても良い。これにより、針無し綴じ装置500によって綴じられた用紙束Bをオフセットして排出する場合と比較して、より確度高く用紙束Bを構成する一部の用紙Pを用紙束Bから剥がれ難くすることが可能となる。
【0056】
また、用紙束Bの中心位置Bcから幅方向(y方向)の一方の方向及び他方の方向にそれぞれ2つの針綴じ部410(合計4つの針綴じ部410)を形成する場合には、中心寄りの2つの針綴じ部410を、
図7を用いて説明した針綴じ部410を2つ形成する場合の位置と同じにする。そして、これら中心寄りの2つの針綴じ部410よりも外側に形成する針綴じ部410を、それぞれ中心寄りの2つの針綴じ部410からオフセット量M410よりも離れた位置に形成する。そして、さらに一方の方向及び他方の方向にそれぞれ3つ以上の針綴じ部410(合計6つ以上の針綴じ部410)を形成する場合には、互いにオフセット量M410よりも大きな距離を空けて形成すると良い。これらにより、用紙束Bの中心位置Bcから幅方向(y方向)の一方の方向及び他方の方向に複数の針綴じ部410を形成する場合においても、針綴じ部410が排出ロール333により押圧されないようにしつつ、複数の用紙束Bの積載高さが抑制される。
【0057】
一方、用紙束Bの中心位置Bcから幅方向(y方向)の一方の方向及び他方の方向にそれぞれ複数の針無し綴じ部550(合計4つ以上の針無し綴じ部550)を形成する場合には以下の通りにすると良い。つまり、中心寄りの2つの針無し綴じ部550を、
図8を用いて説明した針無し綴じ部550を2つ形成する場合の位置と同じにし、他の針無し綴じ部550をこの中心寄りの2つの針無し綴じ部550の外側に形成する。ただし、中心寄りの2つの針無し綴じ部550と、これら2つの針無し綴じ部550よりも外側に位置する針無し綴じ部550との間の隙間は、オフセット量M550よりも大きくても小さくても良い。これにより、針無し綴じ部550の長さL550を針綴じ部410の長さL410よりも長くし、かつ、針無し綴じ部550を排出ロール333にて押圧されない位置に形成することの自由度を増加させることが可能となる。