(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、以上のような実情に鑑み案出されたもので、乾燥路面での操縦安定性能を維持しつつ雪路性能を向上し得るタイヤを提供することを主たる目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、トレッド部に、クラウン主溝を介して第1クラウン陸部と第2クラウン陸部とが隣接して配置され、前記第1クラウン陸部には、前記第1クラウン陸部の全幅を横切る第1クラウン横溝が設けられ、前記第2クラウン陸部には、前記クラウン主溝から延びて前記第2クラウン陸部の内部で終端する第2クラウンラグ溝が設けられ、前記第1クラウン横溝の前記クラウン主溝での開口部は、タイヤ周方向において、前記第2クラウンラグ溝の前記クラウン主溝での開口部と少なくとも一部で重なるように配置されており、前記第1クラウン横溝の長手方向と前記第2クラウンラグ溝の長手方向とのなす交差角度αが120〜150度であるタイヤである。
【0007】
本発明に係るタイヤは、前記第1クラウン横溝が、前記第2クラウンラグ溝と逆向きに傾斜しているのが望ましい。
【0008】
本発明に係るタイヤは、前記第1クラウン陸部には、第1クラウンサイプが設けられ、前記第1クラウンサイプの長手方向のタイヤ周方向に対する角度γは、前記第1クラウン横溝の前記長手方向のタイヤ周方向に対する角度βよりも小さいのが望ましい。
【0009】
本発明に係るタイヤは、
前記角度βと前記角度γとの角度差(β−γ)が、10度以下であるのが望ましい。
【0010】
本発明に係るタイヤは、前記第1クラウン横溝が、前記クラウン主溝側に配された内側部と、そのタイヤ軸方向外側に配された外側部とを有し、前記外側部の溝深さが前記内側部の溝深さよりも小さいのが望ましい。
【0011】
本発明に係るタイヤは、前記クラウン主溝の両側に、ジグザグ状に延びるミドル主溝が設けられているのが望ましい。
【0012】
本発明に係るタイヤは、前記ミドル主溝が、タイヤ軸方向外側に凸となる外側コーナ部を有し、前記第1クラウン横溝の前記ミドル主溝での開口部は、タイヤ周方向において、前記外側コーナ部で重なるのが望ましい。
【0013】
本発明に係るタイヤは、前記ミドル主溝の振幅中心線とタイヤ赤道と間のタイヤ軸方向距離が、トレッド幅の15%〜25%であるのが望ましい。
【0014】
本発明に係るタイヤは、前記ミドル主溝のタイヤ軸方向の溝幅が、トレッド幅の5%〜7%であるのが望ましい。
【0015】
本発明に係るタイヤは、前記ミドル主溝のタイヤ軸方向の溝幅が、前記クラウン主溝のタイヤ軸方向の溝幅の120%〜140%であるのが望ましい。
【0016】
本発明に係るタイヤは、前記クラウン主溝が、直線状に延びているのが望ましい。
【発明の効果】
【0017】
本発明のタイヤは、トレッド部に、クラウン主溝を介して第1クラウン陸部と第2クラウン陸部とが隣接して配置されている。前記第1クラウン陸部には、前記第1クラウン陸部の全幅を横切る第1クラウン横溝が設けられている。このような第1クラウン横溝は、長い雪柱をせん断して大きな雪柱せん断力を発揮し、雪路性能を向上する。前記第2クラウン陸部には、前記クラウン主溝から延びて前記第2クラウン陸部の内部で終端する第2クラウンラグ溝が設けられている。このような第2クラウンラグ溝は、クラウン陸部の剛性低下を抑制するので、乾燥路面での操縦安定性能を維持することができる。
【0018】
前記第1クラウン横溝の前記クラウン主溝での開口部は、タイヤ周方向において、前記各第2クラウンラグ溝の前記クラウン主溝での開口部と少なくとも一部で重なるように配置されている。これにより、クラウン主溝を介して第1クラウン陸部及び第2クラウン陸部に跨る実質的に連続する長い雪柱が形成され、より大きな雪柱せん断力が得られる。この際、前記第1クラウン横溝の長手方向と前記第2クラウンラグ溝の長手方向とのなす交差角度αが120〜150度であるため、大きなせん断力を発揮しながら、旋回時の排雪性が向上する。
【0019】
従って、本発明のタイヤは、乾燥路面での操縦安定性能を維持しつつ雪路性能を向上することができる。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明の実施の一形態が図面に基づき説明される。
図1は、本発明の一実施形態を示すタイヤ1のトレッド部2の展開図である。本実施形態では、好ましい態様として、乗用車用の空気入りタイヤが示される。但し、本発明は、例えば、重荷重用等、他のカテゴリーのタイヤ1にも適用しうるのは、言うまでもない。
【0022】
図1に示されるように、本実施形態のトレッド部2には、1本のクラウン主溝3と1対のミドル主溝4とが設けられている。クラウン主溝3は、最もタイヤ赤道C側に配され、タイヤ周方向に連続してのびている。クラウン主溝3は、本実施形態では、タイヤ赤道C上に配されている。ミドル主溝4は、クラウン主溝3とトレッド端Teとの間に配され、タイヤ周方向に連続してのびている。
【0023】
前記「トレッド端」Teは、正規リムにリム組みしかつ正規内圧が充填された無負荷である正規状態のタイヤ1に、正規荷重を負荷してキャンバー角0度で平面に接地させた正規荷重負荷状態での最もタイヤ軸方向外側の接地位置として定められる。正規状態において、トレッド端Te、Te間のタイヤ軸方向の距離がトレッド幅TWとして定められる。特に断りがない場合、タイヤ1の各部の寸法等は、正規状態で測定された値である。
【0024】
「正規リム」とは、タイヤが基づいている規格を含む規格体系において、当該規格がタイヤ毎に定めるリムであり、例えばJATMAであれば "標準リム" 、TRAであれば "Design Rim" 、ETRTOであれば "Measuring Rim" である。
【0025】
「正規内圧」とは、タイヤが基づいている規格を含む規格体系において、各規格がタイヤ毎に定めている空気圧であり、JATMAであれば "最高空気圧" 、TRAであれば表 "TIRE LOAD LIMITS AT VARIOUS COLD INFLATION PRESSURES" に記載の最大値、ETRTOであれば "INFLATION PRESSURE" である。
【0026】
「正規荷重」とは、タイヤが基づいている規格を含む規格体系において、各規格がタイヤ毎に定めている荷重であり、JATMAであれば "最大負荷能力" 、TRAであれば表 "TIRE LOAD LIMITS AT VARIOUS COLD INFLATION PRESSURES" に記載の最大値、ETRTOであれば "LOAD CAPACITY" である。
【0027】
クラウン主溝3は、本実施形態では、タイヤ周方向に直線状にのびている。このようなクラウン主溝3は、この両側の陸部の剛性の低下を抑制するので、耐偏摩耗性能や乾燥路面での操縦安定性能を高く維持する。クラウン主溝3は、このような態様に限定されるものではなく、例えば、ジグザグ状や波状にのびる態様でも良い。
【0028】
クラウン主溝3の溝幅W1は、例えば、トレッド幅TWの1.5%〜6.5%が望ましい。クラウン主溝3の溝深さD1(
図3に示す)は、例えば、6〜12mmが望ましい。
【0029】
ミドル主溝4は、本実施形態では、タイヤ周方向にジグザグ状にのびている。このようなミドル主溝4は、タイヤ軸方向成分を有するので、雪柱せん断力を発揮し、雪路性能を向上する。ミドル主溝4は、このような態様に限定されるものではなく、例えば、直線状や波状にのびる態様でも構わない。
【0030】
ミドル主溝4は、本実施形態では、タイヤ軸方向外側に凸となる外側コーナ部4aと、タイヤ軸方向内側に凸となる内側コーナ部4bとを有している。外側コーナ部4aは、本明細書では、ミドル主溝4の溝中心線4cが、ミドル主溝4の振幅中心線4kよりもタイヤ軸方向外側に位置する溝部をいう。また、内側コーナ部4bは、本明細書では、ミドル主溝4の溝中心線4cが、ミドル主溝4の振幅中心線4kよりもタイヤ軸方向内側に位置する溝部をいう。溝中心線4cは、ミドル主溝4のタイヤ軸方向の中間位置を継いだ線分である。振幅中心線4kは、溝中心線4cのタイヤ軸方向両端の中間位置でタイヤ周方向にのびる線分である。本実施形態のミドル主溝4は、外側コーナ部4aと内側コーナ部4bとがタイヤ周方向に交互に設けられている。
【0031】
図1に示されるように、ミドル主溝4の振幅中心線4kとタイヤ赤道Cとの間のタイヤ軸方向の距離Laは、トレッド幅TWの15%〜25%であるのが望ましい。これにより、クラウン陸部5とショルダー陸部6とのタイヤ軸方向の剛性がバランス良く確保され、雪路での旋回性や乾燥路面での操縦安定性能、耐偏摩耗性能が向上する。
【0032】
ミドル主溝4のタイヤ軸方向の溝幅W2は、クラウン主溝3のタイヤ軸方向の溝幅W1よりも大きいのが望ましい。これにより、大きな接地圧の作用するタイヤ赤道C近傍の剛性が高く維持されるとともに、ミドル主溝4による雪柱せん断力が高く確保される。ミドル主溝4の溝幅W2がクラウン主溝3の溝幅W1よりも過度に大きい場合、クラウン陸部5又はショルダー陸部6の剛性が小さくなるおそれがある。このような観点より、ミドル主溝4のタイヤ軸方向の溝幅W2は、クラウン主溝3の前記溝幅W1の120%〜140%であるのが望ましい。上述の作用を効果的に発揮させるため、ミドル主溝4のタイヤ軸方向の溝幅W2は、トレッド幅TWの5%〜7%であるのが望ましい。
【0033】
ミドル主溝4の溝深さD2(
図3に示す)は、特に限定されるものではないが、例えば、6〜12mmが望ましい。
【0034】
トレッド部2には、本実施形態では、クラウン陸部5、及び、ショルダー陸部6が設けられている。クラウン陸部5は、クラウン主溝3とミドル主溝4とで区分されている。クラウン陸部5は、本実施形態では、クラウン主溝3を介して隣接する第1クラウン陸部5A(図では左側)と第2クラウン陸部5B(図では右側)とで形成されている。ショルダー陸部6は、ミドル主溝4とトレッド端Teとの間で区分されている。ショルダー陸部6は、本実施形態では、第1クラウン陸部5Aと隣接する第1ショルダー陸部6Aと、第2クラウン陸部5Bと隣接する第2ショルダー陸部6Bとで形成されている。
【0035】
本実施形態のタイヤ1は、例えば、予め定められた回転方向Rを有している。回転方向Rは、例えばサイドウォール部(図示省略)に、文字等で表示されている。
【0036】
図2は、
図1のクラウン陸部5の拡大図である。
図2に示されるように、第1クラウン陸部5Aには、第1クラウン陸部5Aの全幅を横切る第1クラウン横溝7が設けられている。このような第1クラウン横溝7は、長い雪柱をせん断して大きな雪柱せん断力を発揮し、雪路性能を向上する。第1クラウン横溝7は、本実施形態では、タイヤ周方向に隔設されている。
【0037】
第2クラウン陸部5Bには、クラウン主溝3から延びて第2クラウン陸部5Bの内部で終端する第2クラウンラグ溝8が設けられる。第2クラウンラグ溝8は、第2クラウン陸部5Bの剛性低下を抑制するので、乾燥路面での操縦安定性能を維持することができる。
第2クラウンラグ溝8は、本実施形態では、タイヤ周方向に隔設されている。
【0038】
第1クラウン横溝7のクラウン主溝3での開口部7aは、タイヤ周方向において、第2クラウンラグ溝8のクラウン主溝3での開口部8aと少なくとも一部で重なるように配置されている。これにより、クラウン主溝3を介して第1クラウン陸部5A及び第2クラウン陸部5Bに跨る実質的に連続する長い雪柱が形成され、より大きな雪柱せん断力が得られる。前記「一部で重なる」とは、本明細書では、第1クラウン横溝7又は第2クラウンラグ溝8のいずれか一方の溝の溝中心線を滑らかに延長させた延長線が、他方の溝の開口部に連通する態様をいう。本実施形態では、第1クラウン横溝7の溝中心線7cの延長線7kが第2クラウンラグ溝8の開口部8aに連通している。また、第2クラウンラグ溝8の溝中心線8cの延長線8kが第1クラウン横溝7の開口部7aには連通していない。
【0039】
第1クラウン横溝7の長手方向と第2クラウンラグ溝8の長手方向とのなす交差角度αは、120〜150度に設定される。交差角度αが120度未満の場合、第1クラウン横溝7とクラウン主溝3との間の鋭角側の第1クラウン陸部5Aの剛性、又は、第2クラウンラグ溝8とクラウン主溝3との間の鋭角側の第2クラウン陸部5Bの剛性が低下する。これにより、乾燥路面での操縦安定性能が悪化する。交差角度αが150度を超える場合、旋回時の排雪性が悪化する。このような観点より、前記交差角度αは、125度以上が望ましく、また、145度以下が望ましい。前記交差角度αは、本明細書では、各溝の溝中心線で定義される。
【0040】
第1クラウン横溝7は、本実施形態では、タイヤ赤道C側からトレッド端Te側に向かって回転方向Rと逆方向にのびている。これにより、直進走行時の接地圧と、旋回走行時の横力とによって、第1クラウン横溝7内の雪がミドル主溝4側にスムーズに排出される。
【0041】
第2クラウンラグ溝8は、第1クラウン横溝7とタイヤ軸方向に対して逆向きに傾斜し、タイヤ赤道C側からトレッド端Te側に向かって回転方向Rと逆方向にのびている。これにより、本実施形態では、第1クラウン横溝7と
第2クラウンラグ溝8とでV字状の溝が形成され、第1クラウン横溝7及び第2クラウンラグ溝8に生じる互いに逆向きの横方向の力が相殺されるので、雪路性能、とりわけ、雪路での直進安定性が向上する。
【0042】
図3は、
図1のA−A線断面図である。
図3に示されるように、第1クラウン横溝7は、本実施形態では、クラウン主溝3側に配された内側部7Aと、そのタイヤ軸方向外側に配された外側部7Bとを有している。内側部7Aは、本実施形態では、クラウン主溝3に連通している。外側部7Bは、本実施形態では、ミドル主溝4に連通している。
【0043】
本実施形態では、外側部7Bの溝深さd2が、内側部7Aの溝深さd1よりも小さく形成されている。このような第1クラウン横溝7は、大きな接地圧の作用するタイヤ赤道C側において、大きな雪柱を形成するので、雪路性能が向上する。また、旋回時、大きな横力が作用する第1クラウン陸部5Aのタイヤ軸方向外側の剛性低下が抑制されるので、乾燥路面での操縦安定性能が高く維持される。
【0044】
乾燥路面での操縦安定性能を維持しつつ、雪路性能を向上させるため、例えば、外側部7Bの溝深さd2は、内側部7Aの溝深さd1の65%〜85%であるのが望ましい。また、内側部7Aの溝深さd1は、クラウン主溝3の溝深さD1の40%〜65%であるのが望ましい。
【0045】
図2に示されるように、上述の作用を効果的に発揮させるため、外側部7Bのタイヤ軸方向の長さL2は、内側部7Aのタイヤ軸方向の長さL1の85%〜105%であるのが望ましい。本明細書では、横溝のタイヤ軸方向の長さは、溝中心線の長さで特定される。
【0046】
第1クラウン横溝7のミドル主溝4での開口部7bは、本実施形態では、タイヤ周方向において、外側コーナ部4aで重なっている。これにより、第1クラウン横溝7の雪柱が大きく形成されるので、より大きな雪柱せん断力を得ることができる。前記「外側コーナ部で重なる」とは、本明細書では、第1クラウン横溝7の開口部7bが、タイヤ周方向において、内側コーナ部4bにはみ出さない態様をいう。本実施形態の開口部7bは、ミドル主溝4のタイヤ軸方向内側の溝縁4eが最もタイヤ軸方向外側に凸となる凸部4tに設けられている。
【0047】
第1クラウン横溝7は、本実施形態では、直線状に形成されている。このような第1クラウン横溝7は、クラウン陸部5の剛性低下を抑制して、乾燥路面での操縦安定性能や耐偏摩耗性能を高く維持する。
【0048】
第1クラウン横溝7の溝幅W3は、特に限定されるものではないが、乾燥路面での操縦安定性能を維持しつつ雪路性能を高める観点より、例えば、クラウン主溝3の溝幅W1の50%〜70%が望ましい。
【0049】
第2クラウンラグ溝8は、本実施形態では、タイヤ軸方向外側に向かって溝幅W4が漸減している。このような第2クラウンラグ溝8は、その溝内の雪をクラウン主溝3にスムーズに排出させるので、雪路性能を向上する。
【0050】
第2クラウンラグ溝8の溝幅W4(長手方向の平均)は、例えば、クラウン主溝3の溝幅W1の25%〜45%が望ましい。また、第2クラウンラグ溝8のタイヤ軸方向の長さL3は、クラウン陸部5のタイヤ軸方向の最大幅Waの15%〜35%であるのが望ましい。
【0051】
図4は、
図1のクラウン陸部5の拡大図である。
図4に示されるように、第1クラウン陸部5Aには、第1クラウンサイプ15が設けられている。本実施形態では、第1クラウンサイプ15は、複数本設けられている。本明細書では、サイプは、幅が2mm未満の切れ込みとして定義される。他方、溝は、幅が2mm以上の溝状体として定義される。第1クラウンサイプ15は、第1クラウン陸部5Aの剛性を緩和して、第1クラウン横溝7や第2クラウンラグ溝8の変形を促進する。このため、各溝7、8は、その溝内で雪を大きく掴むことができるため、雪路性能が向上する。
【0052】
第1クラウンサイプ15は、タイヤ軸方向にジグザグ状にのびている。このような第1クラウンサイプ15は、旋回時の横力が作用した場合でも、そのエッジが噛みあうので第1クラウン陸部5Aの見かけ上のタイヤ軸方向剛性が高く維持されるので、旋回性の低下が抑制される。
【0053】
第1クラウンサイプ15は、タイヤ周方向に隣り合う第1クラウン横溝7、7間に複数設けられている。これにより、上述の作用が効果的に発揮される。
【0054】
第1クラウンサイプ15は、本実施形態では、第1クラウン横溝7とタイヤ周方向に対して同じ向きに傾斜している。これにより、第1クラウン横溝7の変形効果が大きくなり、さらに、大きな雪柱せん断力が発揮される。
【0055】
第1クラウンサイプ15の長手方向のタイヤ周方向に対する角度γは、第1クラウン横溝7の長手方向のタイヤ周方向に対する角度βよりも小さいのが望ましい。第1クラウンサイプ15の角度γが第1クラウン横溝7の角度βよりも大きい場合、第1クラウン横溝7の旋回時の排雪性能が低下するおそれがある。また、第1クラウンサイプ15のタイヤ周方向のエッジが小さくなり、例えば、雪が圧縮された圧雪路面での旋回性が低下するおそれがある。第1クラウンサイプ15の角度γが第1クラウン横溝7の角度βよりも過度に小さい場合、第1クラウンサイプ15と第1クラウン横溝7との間のタイヤ周方向の剛性段差が、タイヤ軸方向に沿って大きくなり、耐偏摩耗性能が悪化するおそれがある。本明細書では、ジグザグにのびるサイプの角度は、ジグザグの振幅中心線nの角度で定義される。
【0056】
上述の作用をより効果的に発揮させるため、前記角度差(β−γ)は、10度以下であるのが望ましい。また、第1クラウンサイプ15の前記角度γは、例えば、55〜75度が望ましい。
【0057】
第1クラウンサイプ15は、第1サイプ15Aと第2サイプ15Bと第3サイプ15Cとを含んでいる。第1サイプ15Aは、第1クラウン陸部5Aの全幅を横切るフルオープンタイプのサイプである。第2サイプ15Bは、クラウン主溝3からタイヤ軸方向外側に向かってのび、第1クラウン陸部5Aの内部で終端するセミオープンタイプのサイプである。第3サイプ15Cは、ミドル主溝4からタイヤ赤道C側に向かってのび第1クラウン陸部5A内で終端するセミオープンタイプのサイプである。このような第1サイプ15A乃至第3サイプ15Cは、例えば、第1クラウン陸部5Aのパターン剛性の低下を抑制しうるので、乾燥路面での操縦安定性能を高く維持する。
【0058】
第1サイプ15A乃至第3サイプ15Cは、本実施形態では、トレッド部2の平面視、それぞれタイヤ軸方向に対して一方側に傾斜(図では
右下がり)している。これにより、第1クラウン陸部5Aのタイヤ周方向の剛性段差が小さく維持され、高い耐偏摩耗性能が発揮される。また、このような作用を効果的に発揮させるため、タイヤ周方向に隣接する第1クラウンサイプ15のタイヤ周方向のピッチP1は、等ピッチであるのが望ましい。第1サイプ15A乃至第3サイプ15Cは、本実施形態では、互いに平行に傾斜している。
【0059】
本実施形態では、第1クラウン陸部5Aには、さらに、第1クラウンラグ溝9が設けられる。また、第2クラウン陸部5Bには、さらに、第2クラウン横溝10と第2クラウンサイプ16とが設けられる。トレッド部2は、本実施形態では、タイヤ赤道Cの両側で、任意のタイヤ周方向距離を位置ずれさせた場合、タイヤ赤道C上で左右線対称に形成されている。このように、本実施形態の第1クラウンラグ溝9は、第2クラウンラグ溝8と同形状に形成されている。本実施形態の第2クラウン横溝10は、第1クラウン横溝7と同形状に形成されている。左右いずれかの旋回において、その横力を利用して、第1クラウン横溝7又は第2クラウン横溝10内の雪がミドル主溝4にスムーズに排出されるので、旋回時の排雪性が向上する。本実施形態の第2クラウンサイプ16は、第1クラウンサイプ15と同形状に形成されている。本明細書では、第1クラウンラグ溝9、第2クラウン横溝10、及び、第2クラウンサイプ16の詳細な説明が省略される。
【0060】
図5は、
図1の左側のショルダー陸部6の平面図である。
図5に示されるように、ショルダー陸部6には、それぞれ、複数本の外側ショルダーラグ溝30と内側ショルダーラグ溝31と縦細溝32と横細溝33とが設けられている。
【0061】
外側ショルダーラグ溝30は、本実施形態では、トレッド端Teからタイヤ軸方向内側に向かってのび、ショルダー陸部6の内部で終端する内端30iを有している。外側ショルダーラグ溝30は、例えば、タイヤ周方向の溝幅が等しくのびている。外側ショルダーラグ溝30は、本実施形態では、タイヤ軸方向に沿ってのびる軸方向部分30aと、軸方向部分30aに連通して軸方向部分30aよりもタイヤ軸方向に対して大きな角度で傾斜する傾斜部分30bとを含んでいる。
【0062】
内側ショルダーラグ溝31は、ミドル主溝4からタイヤ軸方向外側に向かってのび、ショルダー陸部6の内部で終端する外端31eを有している。内側ショルダーラグ溝31は、直線状にのび、タイヤ軸方向に対して傾斜している。
【0063】
縦細溝32は、例えば、タイヤ周方向に沿ってのびている。本実施形態の縦細溝32は、外側ショルダーラグ溝30の内端30iと、内側ショルダーラグ溝31の外端31eとを継いで、タイヤ周方向に隔設されている。
【0064】
本実施形態の横細溝33は、タイヤ周方向に隣り合う外側ショルダーラグ溝30、30間に複数本配されている。横細溝33は、本実施形態では、トレッド端Teからタイヤ軸方向内側に向かってタイヤ軸方向に沿ってのび、縦細溝32に連通することなく終端している。
【0065】
ショルダー陸部6は、さらに、外側ショルダーサイプ35と内側ショルダーサイプ36とが設けられる。外側ショルダーサイプ35は、縦細溝32と横細溝33とを連通している。内側ショルダーサイプ36は、ミドル主溝4と縦細溝32とを連通している。
【0066】
本実施形態の外側ショルダーサイプ35は、傾斜部分30bとタイヤ軸方向に対して同じ向きにのびている。外側ショルダーサイプ35は、本実施形態では、傾斜部分30bと平行にのびている。
【0067】
内側ショルダーサイプ36は、本実施形態では、内側ショルダーラグ溝31と平行にのびている。
【0068】
以上、本発明の実施形態について、詳述したが、本発明は例示の実施形態に限定されるものではなく、種々の態様に変形して実施し得るのは言うまでもない。
【実施例】
【0069】
図1の基本パターンを有するサイズ205/65R16のタイヤが、表1の仕様に基づき試作され、各試供タイヤの雪路性能、乾燥路面での操縦安定性能及び耐偏摩耗性能がテストされた。各試供タイヤの主な共通仕様やテスト方法は、以下の通りである。
各主溝の深さ:10mm
トレッド幅TW:176mm
第2クラウンラグ溝のタイヤ周方向に対する角度:65(度)
【0070】
<雪路性能・乾燥路面での操縦安定性能>
各試供タイヤが、下記の条件で、排気量2000ccの四輪駆動車の全輪に装着された。そして、テストドライバーが、雪路面及び乾燥アスファルト路面のテストコースを走行させ、このときのトラクション、走行安定性、及び、旋回性に関する走行特性が、テストドライバーの官能により評価された。結果は、実施例1を100とする評点で表示されている。数値が大きいほど良好である。
リム:6.5J
内圧:390kPa(前輪)、350kPa(後輪)
【0071】
<耐偏摩耗性能>
試供タイヤが、乾燥アスファルト路面のテストコースを10、000km走行させられ、その後、クラウン横溝と接するクラウン陸部において、ヒール&トウ摩耗による摩耗量の差が測定された。結果は、測定値の逆数を用い、実施例1の値を100とする指数で表示されている。数値が大きいほど良好である。
テストの結果などが表1に示される。
【0072】
【表1】
【0073】
テストの結果、実施例のタイヤは、比較例のタイヤに比べて、乾燥路面での操縦安定性能が維持されつつ雪路性能が向上していることが確認できた。また、耐偏摩耗性能も高く維持されている。