特許第6904041号(P6904041)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6904041
(24)【登録日】2021年6月28日
(45)【発行日】2021年7月14日
(54)【発明の名称】樹脂成形品及びドアモジュール
(51)【国際特許分類】
   B29C 45/37 20060101AFI20210701BHJP
   B29C 45/00 20060101ALI20210701BHJP
   B29C 44/00 20060101ALI20210701BHJP
   B60J 5/04 20060101ALI20210701BHJP
【FI】
   B29C45/37
   B29C45/00
   B29C44/00 D
   B60J5/04 R
【請求項の数】4
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2017-86194(P2017-86194)
(22)【出願日】2017年4月25日
(65)【公開番号】特開2018-183911(P2018-183911A)
(43)【公開日】2018年11月22日
【審査請求日】2020年3月10日
(73)【特許権者】
【識別番号】000000011
【氏名又は名称】株式会社アイシン
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 博宣
(72)【発明者】
【氏名】片山 英史
(72)【発明者】
【氏名】松下 和弘
【審査官】 ▲高▼村 憲司
(56)【参考文献】
【文献】 特開2007−223282(JP,A)
【文献】 特開2006−181851(JP,A)
【文献】 特開平08−019425(JP,A)
【文献】 特開2011−005744(JP,A)
【文献】 特開2007−160586(JP,A)
【文献】 特開2007−001017(JP,A)
【文献】 特開2007−168729(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29C 45/00 − 45/84
B29C 33/00 − 33/76
B29C 44/00
B60J 5/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
本体部と、前記本体部と一体に設けられ、駆動部品を取付可能な取付部と、を有するパネル状の樹脂成形品であって、
前記樹脂成形品は、多数の空隙を有する発泡部と、多数の空隙を有していないソリッド部とから形成され、
前記取付部と、前記本体部における前記取付部の周囲の所定領域とは、前記ソリッド部から形成され、
前記本体部において前記所定領域と隣り合う部分は、前記発泡部から形成され、
前記ソリッド部において前記発泡部との境界部分は、前記発泡部の厚さと等しい厚肉部で形成され、
前記ソリッド部において前記厚肉部よりも前記発泡部から離れた部分は、前記発泡部の厚さよりも薄い薄肉部を有し、
前記薄肉部は、前記ソリッド部の厚さ方向における一方側の面から見て、前記所定領域において前記取付部の周囲に沿って間隔を空けて複数形成されているとともに、前記ソリッド部の厚さ方向における他方側の面から見て、前記所定領域において前記取付部の周囲に沿って間隔を空けて複数形成されており、
前記ソリッド部の前記他方側に形成された前記薄肉部と、前記ソリッド部の前記一方側に形成された前記薄肉部とは、前記取付部の周囲に沿って交互に形成されている
樹脂成形品。
【請求項2】
前記薄肉部は、前記ソリッド部の厚さ方向における一方側の面から他方側の面に向けて凹む凹部により形成され、
前記凹部は、前記一方側の面から前記他方側の面に向かうにつれて傾斜する傾斜面を有する
請求項1に記載の樹脂成形品。
【請求項3】
前記薄肉部は、前記ソリッド部の前記一方側の面と前記傾斜面とを繋ぐ曲面を有する
請求項2に記載の樹脂成形品。
【請求項4】
請求項1〜のいずれか一項に記載の樹脂成形品と、
前記樹脂成形品に取り付けられた前記駆動部品と、
を備える、ドアモジュール。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、樹脂成形品及びドアモジュールに関する。
【背景技術】
【0002】
射出成形型の樹脂材料を充填したキャビティの一部の容積を増大させることにより形成された多数の空隙を有する発泡部と、容積を増大させないキャビティから形成されたソリッド部とを備えた樹脂成形品が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第4790328号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
図14は、キャビティの一部の容積を増大させる射出成形型の一例を示している。射出成形型100は、固定型となる第1金型110、第1金型110に対向配置された可動型となる第2金型120、及び第1金型110に隣接するとともに第1金型110に対向配置された可動型となる押さえブロック130を有する。射出成形型100では、第2金型120及び押さえブロック130が第1金型110に対して下方に移動することにより第1金型110と第2金型120との間のキャビティが増大する。その結果、第1金型110と第2金型120との間のキャビティに対応する部分に樹脂成形品200の発泡部210が形成される。これにより、ソリッド部220と発泡部210との境界部分230において樹脂成形品200の厚さが急激に変化する階段状の段差が形成される。このため、ソリッド部220及び発泡部210の少なくとも一方に力が加えられたとき、境界部分230に応力が集中してしまう。
【0005】
この問題を解決するため、図15に示すように、発泡部210の厚さTR1と、ソリッド部220の厚さTR2とを等しくして段差をなくすように樹脂成形品200を形成することが考えられる。しかし、ソリッド部220の厚さTR2が厚くなった分、ソリッド部220の冷却時間が長くなり、冷却時間の間に発泡剤が反応し続け、発泡部210における空隙の体積が増加してしまう場合がある。その結果、樹脂成形品200の許容応力が低下するおそれがある。
【0006】
本発明の目的は、ソリッド部と発泡部との境界部分に応力集中が生じること、及び許容応力の低下の両方を抑制できる樹脂成形品及びドアモジュールを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決する樹脂成形品は、本体部と、前記本体部と一体に設けられ、駆動部品を取付可能な取付部と、を有するパネル状の樹脂成形品であって、前記樹脂成形品は、多数の空隙を有する発泡部と、多数の空隙を有していないソリッド部とから形成され、前記取付部と、前記本体部における前記取付部の周囲の所定領域とは、前記ソリッド部から形成され、前記本体部において前記所定領域と隣り合う部分は、前記発泡部から形成され、前記ソリッド部において前記発泡部との境界部分は、前記発泡部の厚さと等しい厚肉部で形成され、前記ソリッド部において前記厚肉部よりも前記発泡部から離れた部分は、前記発泡部の厚さよりも薄い薄肉部を有し、前記薄肉部は、前記ソリッド部の厚さ方向における一方側の面から見て、前記所定領域において前記取付部の周囲に沿って間隔を空けて複数形成されているとともに、前記ソリッド部の厚さ方向における他方側の面から見て、前記所定領域において前記取付部の周囲に沿って間隔を空けて複数形成されており、前記ソリッド部の前記他方側に形成された前記薄肉部と、前記ソリッド部の前記一方側に形成された前記薄肉部とは、前記取付部の周囲に沿って交互に形成されている
【0008】
この構成によれば、ソリッド部における発泡部との境界部分に発泡部の厚さと等しい厚肉部が形成されるため、樹脂成形品の厚さが急激に変化する階段状の段差が境界部分に形成されることが抑制される。このため、樹脂成形品に力が加えられたときに境界部分に応力集中が生じることを抑制できる。加えて、ソリッド部が薄肉部を有するため、ソリッド部の体積が減少し、ソリッド部の冷却時間が短縮される。したがって、冷却時間の間に発泡剤の反応が進み、発泡部における空隙の体積が増加することが抑制されるため、樹脂成形品の許容応力の低下を抑制できる。
【0009】
この構成によれば、例えば本体部における所定領域の全体が薄肉部で形成された場合と比較して、所定領域の強度の低下を抑制できる。
この構成によれば、ソリッド部の厚さ方向の断面視において、所定領域が略矩形状に形成される。このため、例えば所定領域の全体が薄肉部で形成された場合と比較して、所定領域の剛性を高めることができる。
上記樹脂成形品において、前記薄肉部は、前記ソリッド部の厚さ方向における一方側の面から他方側の面に向けて凹む凹部により形成され、前記凹部は、前記一方側の面から前記他方側の面に向かうにつれて傾斜する傾斜面を有することが好ましい。
【0010】
この構成によれば、薄肉部の傾斜面によってソリッド部における薄肉部と薄肉部以外の部分との間での急激な厚さの変化を抑制できる。したがって、薄肉部と薄肉部以外の部分との間での応力集中を抑制できる。
【0011】
上記樹脂成形品において、前記薄肉部は、前記ソリッド部の前記一方側の面と前記傾斜面とを繋ぐ曲面を有することが好ましい。
この構成によれば、曲面によってソリッド部における薄肉部と薄肉部以外の部分との間での急激な厚さの変化を一層抑制できる。したがって、薄肉部と薄肉部以外の部分との間での応力集中を一層抑制できる。
【0015】
上記課題を解決するドアモジュールは、上記樹脂成形品と、前記樹脂成形品に取り付けられた前記駆動部品と、を備える。
【0016】
この構成によれば、上記樹脂成形品が得られる効果と同様に、ソリッド部と発泡部との境界部分に応力集中が生じること、及び許容応力の低下の両方を抑制できる。
【発明の効果】
【0017】
上記樹脂成形品及びドアモジュールによれば、ソリッド部と発泡部との境界部分に応力集中が生じること、及び許容応力の低下の両方を抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】実施形態のドアモジュールを搭載したスライドドアの模式図。
図2】ドアモジュールの斜視図。
図3】(a)樹脂成形品の正面図、(b)樹脂成形品の背面図。
図4図3(a)の樹脂成形品の第1取付部及びその周辺を拡大した拡大図。
図5図3(b)の樹脂成形品の第1取付部及びその周辺を拡大した拡大図。
図6図4の6−6線で切った断面図。
図7図4の7−7線で切った断面図。
図8図4の8−8線で切った断面図。
図9】樹脂成形品を成形する成形型の模式断面図。
図10】樹脂成形品を成形する成形型の模式断面図。
図11】変形例の樹脂成形品の第1取付部及びその周辺を拡大した正面図。
図12図11の樹脂成形品における12−12線で切った断面図。
図13】別の変形例の樹脂成形品における薄肉部が形成されたソリッド部と発泡部との境界部分及びその周辺を拡大した断面図。
図14】従来の成形型により成形された樹脂成形品における発泡部とソリッド部との境界部分及びその周辺を拡大した断面図。
図15】別の従来の樹脂成形品における発泡部とソリッド部との境界部分及びその周辺を拡大した断面図。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、樹脂成形品及びドアモジュールを備える車両ドアを具体化した一実施形態を図面に従って説明する。
図1に示すように、車両ドア1は、車両本体7に設けられたアッパーガイドレール7a、ロアガイドレール7b、及びセンターガイドレール7cを介して車両本体7に摺動可能に取り付けられている。車両ドア1は、車両前後方向に移動することにより車両のボディ側に設けられた開口部(図示略)を開閉するスライドドアとして構成されている。より詳細には、車両ドア1は、車両前方側(同図中、左側)に移動することにより、ボディの開口部を閉塞する閉状態となり、車両後方側(同図中、右側)に移動することにより、その開口部を介して乗員が乗降可能な開状態になる。
【0020】
車両ドア1は、アウターパネル2と、アウターパネル2の内側(車内側)に取り付けられるインナーパネル3と、インナーパネル3において車内側から取り付けられるドアモジュール10と、アウターパネル2及びインナーパネル3の間に設けられた窓ガラス4とを備える。インナーパネル3の内側(車内側)には、内装パネルが取り付けられる。また車両ドア1には、車両ドア1を全閉位置で拘束するための全閉ロック(リアロック)5と、車両ドア1を全開位置で拘束するための全開ロック6とが設けられている。
【0021】
図2に示すように、ドアモジュール10は、パネル状の樹脂成形品20と、車両ドア1(図1参照)を移動させるドア移動装置40と、窓ガラス4(図1参照)を昇降させる窓ガラス昇降装置50と、全閉ロック5及び全開ロック6(ともに図1参照)を操作するドア開閉装置60とを備える。ドア移動装置40、窓ガラス昇降装置50、及びドア開閉装置60は、樹脂成形品20に取り付けられている。
【0022】
ドア移動装置40は、車両ドア1を牽引するケーブル41,42と、ケーブル41,42を巻いたり繰り出したりする駆動ユニット43とを備えた既知の構造を有する。駆動ユニット43の一例は、ケーブル41,42を巻くドラム44と、ケーブル41,42の一方をドラム44に案内するガイドプーリ45と、ドラム44を回転させるドア移動用モータ46とを備える既知の構造を有する。
【0023】
窓ガラス昇降装置50は、窓ガラス4を牽引するケーブル51,52と、ケーブル51,52を巻くドラム53と、ドラム53と協働してケーブル51,52を張るプーリ54と、ドラム53を回転させる窓ガラス昇降用モータ55と、窓ガラス4の下端に取り付けられるキャリア56とを備える既知の構造を有する。
【0024】
ドア開閉装置60は、インナーハンドル61と、各種の操作に基づいて全閉ロック5及び全開ロック6を動作させるリモートコントロール装置62と、車両ドア1の全閉状態のロック及びロック解除を切り替える電動ロック装置63とを備える。リモートコントロール装置62は、複数のレバーにより構成されている。複数のレバーのうちの第1レバーは動力伝達ケーブル64を介して全閉ロック5に接続され、第2レバーは動力伝達ケーブル64を介して全開ロック6に接続されている。各種の操作は、例えばインナーハンドル61の操作及びアウターハンドル(図示略)の操作を含む。電動ロック装置63は、電動ロック装置63を操作するスイッチ(図示略)からのロック操作に基づいて駆動する。
【0025】
図3に示すように、樹脂成形品20は、本体部21と、駆動部品の一例であるドア移動装置40を取付可能な第1取付部22と、窓ガラス昇降装置50を取付可能な第2取付部23と、ドア開閉装置60を取付可能な第3取付部24とを有する。樹脂成形品20の材料は、例えば発泡剤が添加されたポリプロピレン(PP)が用いられる。樹脂成形品20は、例えばコアバック射出発泡成形により形成される。各取付部22〜24は、本体部21と一体に設けられている。樹脂成形品20は、ボルト(図示略)によってインナーパネル3(図1参照)に取り付けられるための複数の取付孔25を有する。
【0026】
第1取付部22は、樹脂成形品20の車両後方側且つ下方側に設けられている。第1取付部22は、ドア移動装置40の駆動ユニット43を収容する収容部22Aを有する。収容部22Aは、本体部21から樹脂成形品20の外側(車外側)に向けて凹んでいる。収容部22Aは、駆動ユニット43を取り付けるための複数の取付孔22Bと、ケーブル41,42を挿入する挿入孔22Cとを有する。図3では、収容部22Aは、3つの取付孔22B及び1つの挿入孔22Cを有する。図2に示すように、ボルトBが取付孔22B(図3参照)にねじ込まれることにより、駆動ユニット43が収容部22Aに取り付けられる。挿入孔22Cは、収容部22Aにおける上方側且つ車両後方側の部分に形成されている。図4に示すように、3つの取付孔22Bのうちの第1取付孔22Xは第1取付部22の後方に設けられ、第2取付孔22Yは第1取付部22の上方側に設けられ、第3取付孔22Zは第1取付部22と第2取付部23との間に設けられている。第1取付孔22X及び第2取付孔22Yの周囲には、取付孔22Bを取り囲む第1リブ27Aと、第1リブ27Aから放射状に延びる複数の第2リブ27Bとが設けられている。第3取付孔22Zの周囲には、第1リブ27Aが設けられている。
【0027】
図5に示すように、複数の取付孔25のうちの第1取付部22の上方側の取付孔25Xには、取付孔25Xの周囲のうちの車両前方側、上方側、及び車両後方側を取り囲む第1リブ28Aと、第1リブ28Aから取付孔25Xに向けて放射状に延びる複数の第2リブ28Bとが設けられている。
【0028】
図4及び図5に示すように、第2取付部23は、第1取付部22に隣り合い、且つ第1取付部22よりも車両前方側に設けられている。第2取付部23は、ドラム53(図2参照)を収容する収容部23Aと、窓ガラス昇降用モータ55(図2参照)を取り付けるための複数の取付孔23Bとを有する。複数の取付孔23Bは、収容部23Aの周囲に位置している。図5では、第2取付部23は、3つの取付孔23Bを有する。
【0029】
図5に示すように、樹脂成形品20において第1取付部22及び第2取付部23の間には、リブ26が樹脂成形品20と一体に形成されている。リブ26は、第1取付部22と第2取付部23との間の部分に沿って延び、且つ第2取付部23の下方部分23Xまで延びている。下方部分23Xのリブ26は、第2取付部23から下方に向けて延びる複数のリブ26Aを有する。
【0030】
図3に示すように、第3取付部24は、樹脂成形品20の車両前方側且つ上方側の部分に設けられている。第3取付部24は、インナーハンドル61を取り付けるための取付孔24Aと、リモートコントロール装置62を取り付けるための複数の取付孔24Bと、電動ロック装置63を取り付けるための取付孔24Cとを有する。
【0031】
図4に示すように、樹脂成形品20は、多数の空隙を有する発泡部30と、多数の空隙を有していないソリッド部31とから形成されている。本体部21における所定領域R(図中の網掛けを付した領域)と、第1取付部22及び第2取付部23とは、ソリッド部31から形成されている。本体部21における所定領域Rと隣り合う部分は、発泡部30から形成されている。本実施形態では、本体部21において第1取付部22、第2取付部23、及び第1取付部22の周囲の所定領域R以外の部分は、発泡部30から形成されている。図4から分かるとおり、所定領域Rは、第2取付部23の下方部分23Xを含む。本実施形態の所定領域Rは、本体部21において、ドア移動装置40から第1取付部22に力が加えられたときに第1取付部22の周囲において力が加わる領域であり、発泡部30よりもソリッド部31で形成されることが好ましい領域である。第1取付部22の周囲において第2取付部23と隣り合う部分は、ソリッド部31となるため、所定領域Rから除外されている。
【0032】
図4に示すように、複数の薄肉部32は、ソリッド部31の厚さ方向における一方側の面31X(外面)から見て、所定領域Rにおいて第1取付部22の周囲に沿って間隔を空けて形成されている。図5に示すように、複数の薄肉部32は、ソリッド部31の厚さ方向における他方側の面31Y(内面)から見て、所定領域Rにおいて第1取付部22の周囲に沿って間隔を空けて形成されている。より詳細には、収容部23Aの上方側の部分、収容部23Aの下方領域における下方側の部分、車両前方側の部分、及び車両後方側の部分には、ソリッド部31の一方側の薄肉部32及びソリッド部31の他方側の薄肉部32の両方が形成されている。第1取付孔22X及び第2取付孔22Yの周囲のうちの隣り合う第2リブ27Bの間に薄肉部32が形成されている。取付孔25Xと第1取付部22との間の所定領域Rには、取付孔25Xから下方に延びる薄肉部32が形成されている。
【0033】
図5に示すように、収容部23Aの挿入孔22Cが形成される部分の車両後方側の部分には、ソリッド部31の他方側の薄肉部32のみが形成されている。挿入孔22Cが形成される部分の車両後方側の部分の薄肉部32は、車両後方側に向けて延びている。一方、樹脂成形品20において、第1取付部22と第2取付部23との間の部分には、薄肉部32が形成されていない。
【0034】
第2取付部23の下方部分23Xには、ソリッド部31の一方側の薄肉部32及びソリッド部31の他方側の薄肉部32の両方が形成されている。複数の薄肉部32は、第2取付部23から下方側に向けて延びている。複数の薄肉部32の長手方向の長さは、車両前方側に向かうにつれて長くなる。図5に示す複数の薄肉部32は、リブ26Aの間に形成され、図4に示す複数の薄肉部32のうちの一部は、リブ26Aと同じ位置に形成されている。
【0035】
図6に示すように、所定領域Rの外縁は、発泡部30とソリッド部31との境界部分33を形成している。薄肉部32は、ソリッド部31の一方側の面31X(外面)から他方側(内側)に向けて凹む凹部により形成されている。図7に示すように、薄肉部32は、ソリッド部31の他方側の面31Y(内面)から一方側(外側)に向けて凹む凹部により形成されている。図8に示すように、ソリッド部31の一方側に形成された薄肉部32と、ソリッド部31の他方側に形成された薄肉部32とは、第1取付部22の周囲に沿って交互に形成されている。
【0036】
図6及び図7に示すように、ソリッド部31において境界部分33は、厚肉部34で形成されている。本実施形態では、厚肉部34は、ソリッド部31において境界部分33を含む所定領域Rの発泡部30側の部分を形成している。薄肉部32は、ソリッド部31において境界部分33(厚肉部34)よりも発泡部30から離れた部分に形成されている。薄肉部32の厚さT1は、発泡部30の厚さT2及び厚肉部34の厚さT3よりも薄い。厚肉部34の厚さT3は、発泡部30の厚さT2と等しい。厚肉部34の厚さT3が発泡部30の厚さT2と等しいとは、厚肉部34の厚さT3が発泡部30における境界部分33の厚さT2と等しいことを示す。ここで、「等しい」とは、製造誤差等による厚さT3と厚さT2との差異を含む。
【0037】
図6に示すように、薄肉部32は、傾斜面32A、底面32B、曲面32C,32Dを有する。傾斜面32Aは、ソリッド部31の厚さ方向の一方側の面31Xから他方側の面31Yに向かうにつれて傾斜している。底面32Bは、薄肉部32の底部を構成している。図6に示す底面32Bは、一方側の面31Xと平行する平面を含む。曲面32Cは傾斜面32Aの一端とソリッド部31の一方側の面31Xとを繋ぎ、曲面32Dは傾斜面32Aの他端と底面32Bとを繋いでいる。図7に示す薄肉部32の形状は、図6に示す薄肉部32の形状と異なる。図7に示す薄肉部32は、傾斜面32A、底面32B、曲面32Cを有する。図7に示す薄肉部32の底面32Bは、ソリッド部31の一方側に向けて凹む凹形状を有する。図7の薄肉部32の曲面32Cは、傾斜面32Aの一端とソリッド部31の他方側の面31Yとを繋いでいる。
【0038】
次に、樹脂成形品20の製造方法について説明する。
図9に示すように、コアバック射出発泡成形を行うための成形型70を用意する。成形型70は、固定型としての第1金型71と、第1金型71に対向配置された可動型としての第2金型72と、第1金型71と隣接するとともに第2金型72に対向配置された可動型としての押さえブロック73とを備える。第1金型71は、第1取付部22、第2取付部23、及び所定領域R(図4及び図5参照)以外の部分に対応する箇所を形成するための型である。押さえブロック73は、第1取付部22、第2取付部23、及び所定領域Rに対応する箇所を形成するための型である。第1金型71と押さえブロック73との合わせ面(接触面)は、所定領域Rの外縁、即ち発泡部30とソリッド部31との境界部分33に対応する。押さえブロック73には、薄肉部32を形成するための凸部73Aが設けられている。第2金型72は、樹脂成形品20の全体を形成するための型である。第2金型72において所定領域Rに対応する箇所には、薄肉部32を形成するための凸部(図示略)が設けられている。
【0039】
図9に示すように、成形型70を型閉じした状態でキャビティ74内に射出機(図示略)から例えば発泡材が添加されたポリプロピレン(PP)が充填される。ポリプロピレンは、成形型70により圧縮された状態になるようにキャビティ74内に充填される。その後、キャビティ74内でポリプロピレンが固化する過程で、図10に示すように、第1金型71と第2金型72との間のキャビティ容積が増大する方向に第2金型72が下方に移動する。つまり、第2金型72が第1金型71から下方に向けて僅かに離れて、押さえブロック73を除く部分に対応するキャビティ容積、即ち第1取付部22、第2取付部23、及び所定領域R(図4及び図5参照)以外の部分に対応するキャビティ容積が増大する。ポリプロピレンは、第1取付部22、第2取付部23、及び所定領域R以外の部分に対応するキャビティ容積の増大により圧縮から解放されて弾性的に復元し膨張する。これにより、多数の空隙を有する発泡部30が形成される。
【0040】
一方、押さえブロック73は、第2金型72の下方への移動にともない第2金型72と同様に下方に移動するため、ソリッド部31に対応するキャビティ容積が増大しない。このため、ポリプロピレンは、弾性復元が抑制されることにより膨張しないため、多数の空隙を有していないソリッド部31が形成される。また、押さえブロック73の凸部73A及び第2金型72の凸部(図示略)により、所定領域Rにおける複数の薄肉部32が樹脂成形品20の成形と同時に形成される。
【0041】
以上記述したように、本実施形態によれば、以下のような効果を得ることができる。
(1)樹脂成形品20は、ソリッド部31における境界部分33の厚肉部34の厚さT3が発泡部30の厚さT2と等しい。これにより、樹脂成形品20の厚さが急激に変化する階段状の段差が境界部分33に形成されることが抑制される。このため、樹脂成形品20に力が加えられたときに境界部分33に応力集中が生じることを抑制できる。加えて、ソリッド部31が薄肉部32を有するため、ソリッド部31の体積が減少し、樹脂成形品20の成形時におけるソリッド部31の冷却時間が短縮される。したがって、冷却時間の間に発泡剤の反応が進み、発泡部30の多数の空隙が過度に大きくなることが抑制されるため、樹脂成形品20の許容応力の低下を抑制できる。
【0042】
(2)窓ガラス4よりも重い車両ドア1を移動させるドア移動装置40のドア移動用モータ46の出力は、窓ガラス昇降装置50の窓ガラス昇降用モータ55の出力よりも高い。このため、ドア移動用モータ46の駆動にともない駆動ユニット43を介して第1取付部22に伝達される力は、窓ガラス昇降用モータ55の駆動にともない第2取付部23に伝達される力よりも大きい。さらに、例えば車両ドア1の挟み込みを検知したときのドア移動用モータ46の急速な停止にともない車両ドア1の移動が停止する。このとき、ドア移動用モータ46には過負荷が加えられる。この過負荷は、駆動ユニット43を介して第1取付部22に伝達される。このような実情において、本実施形態では、薄肉部32が第1取付部22の周囲の所定領域Rに形成される。これにより、第1取付部22に力が加えられたとしても所定領域Rの境界部分33には応力集中が生じることを抑制できる。
【0043】
(3)薄肉部32は、傾斜面32Aを有するため、厚肉部34から薄肉部32に亘るソリッド部31の厚さの急激な変化、薄肉部32からソリッド部31における薄肉部32よりも第1取付部22側の部分に亘るソリッド部31の厚さの急激な変化を抑制できる。したがって、薄肉部32と薄肉部32以外の部分との間の応力集中を抑制できる。
【0044】
(4)薄肉部32は、ソリッド部31の一方側の面31X(他方側の面31Y)と傾斜面32Aとを繋ぐ曲面32Cを有するため、厚肉部34から薄肉部32に亘るソリッド部31の厚さの急激な変化、薄肉部32からソリッド部31における薄肉部32よりも第1取付部22側の部分に亘るソリッド部31の厚さの急激な変化を一層抑制できる。したがって、薄肉部32と薄肉部32以外の部分との間の応力集中を一層抑制できる。
【0045】
(5)薄肉部32は、所定領域Rにおいて間隔を空けて複数形成されている。このため、所定領域Rの全体が薄肉部で形成された場合と比較して、所定領域Rの強度の低下を抑制できる。
【0046】
(6)ソリッド部31の一方側の薄肉部32とソリッド部31の他方側の薄肉部32とが所定領域Rの長手方向に沿って交互に形成される。即ち、ソリッド部31の厚さ方向の断面視において、所定領域Rが略矩形状に形成される。このため、所定領域Rの全体が薄肉部で形成された場合と比較して、所定領域Rの剛性が高められる。
【0047】
(7)樹脂成形品20にドア移動装置40及び窓ガラス昇降装置50が取り付けられている。したがって、ドア移動装置40及び窓ガラス昇降装置50が個別の樹脂成形品に取り付けられる構成と比較して、車両ドア1の生産効率が向上する。加えて、ドア開閉装置60が樹脂成形品20に取り付けられている。これにより、車両ドア1の生産効率がさらに向上する。
【0048】
上記実施形態に関する説明は、本発明に従う樹脂成形品及びドアモジュールが取り得る形態の例示であり、その形態を制限することを意図していない。本発明に従う樹脂成形品及びドアモジュールは、上記実施形態以外に例えば以下に示される変形例、及び相互に矛盾しない少なくとも2つの変形例が組み合せられた形態を取り得る。
【0049】
・上記実施形態において、薄肉部32は、ソリッド部31の一方側のみ、又はソリッド部31の他方側のみに形成されてもよい。ソリッド部31の一方側の薄肉部32のピッチ、又はソリッド部31の他方側の薄肉部32のピッチは任意に変更可能である。一例では、ソリッド部31の一方側の薄肉部32のピッチ、又はソリッド部31の他方側の薄肉部32のピッチを上記実施形態の2倍に設定してもよい。
【0050】
・上記実施形態において、ソリッド部31の一方側の薄肉部32と、ソリッド部31の他方側の薄肉部32とは、交互に形成されなくてもよい。例えば、ソリッド部31の一方側の複数の薄肉部32が形成され、その複数の薄肉部32の隣にソリッド部31の他方側の複数の薄肉部32が形成されてもよい。
【0051】
・上記実施形態において、薄肉部32の構造は任意に変更可能である。一例では、複数の薄肉部32が第1取付部22の周囲に沿って形成される構造に代えて、図11及び図12に示すように、第1取付部22の周囲に沿って延びる長帯状の薄肉部32であってもよい。なお、図11に示される長帯状の薄肉部32以外の所定領域Rの薄肉部32についても同様に長帯状の薄肉部32に変更可能である。
【0052】
・上記実施形態において、薄肉部32の凹部の形状は任意に変更可能である。一例では、図13に示すように、薄肉部32は、境界部分33からソリッド部31の他方側に傾斜する傾斜面32Eを有する。発泡部30の一方側の面30Xと傾斜面32Eとの成す傾斜角度は、上記実施形態のソリッド部31の一方側の面31Xと傾斜面32Aとの成す傾斜角度よりも小さい。この構成によっても、上記実施形態の(1)の効果と同様の効果が得られる。なお、この場合、ソリッド部31における境界部分33が厚肉部34となる。
【0053】
・上記実施形態において、樹脂成形品20における第2取付部23の位置は任意に変更可能である。一例では、第2取付部23は、第1取付部22の上方に隣り合うように形成される。この場合、窓ガラス昇降装置50がドア移動装置40の上方に隣り合うように配置される。
【0054】
・上記実施形態において、本体部21における第2取付部23の周囲の所定領域及び第3取付部24の周囲の所定領域の少なくとも一方が上記実施形態の所定領域Rのようなソリッド部31で形成された領域であってもよい。第2取付部23の周囲の所定領域は、本体部21において、窓ガラス昇降装置50から第2取付部23に力が加えられたときに第2取付部23の周囲において力が加わる領域である。第3取付部24の周囲の所定領域は、本体部21においてドア開閉装置60(インナーハンドル61)から第3取付部24に力が加えられたときに第3取付部24の周囲において力が加わる領域である。
【0055】
・上記実施形態において、本体部21における第2取付部23の周囲の所定領域及び第3取付部24の周囲の所定領域の少なくとも一方に複数の薄肉部32が形成されてもよい。即ち、樹脂成形品20における第1取付部22の周囲の所定領域R、第2取付部23の周囲の所定領域、及び第3取付部24の周囲の所定領域の少なくとも一方に複数の薄肉部32が形成されてもよい。要するに、薄肉部32は、樹脂成形品20において駆動部品からの力が加えられる取付部の周囲の所定領域に形成されていればよい。
【0056】
・上記実施形態において、ソリッド部31において厚さT1で形成される薄肉部32の範囲は任意に変更可能である。第1例では、所定領域Rにおける厚肉部34以外の部分を薄肉部32の厚さT1で形成される。この場合、所定領域Rにおける厚肉部34以外の部分が薄肉部に相当する。第2例では、ソリッド部31における第1取付部22と、所定領域Rにおける厚肉部34以外の部分とを薄肉部32の厚さT1で形成してもよい。この場合、第1取付部22と、所定領域Rにおける厚肉部34以外の部分とが薄肉部に相当する。要するに、ソリッド部31において境界部分33よりも発泡部30から離れた部分の少なくとも一部が薄肉部を有するように形成されていればよい。
【0057】
・上記実施形態において、樹脂成形品20には、ドア移動装置40、窓ガラス昇降装置50、及びドア開閉装置60とは別の装置が取り付けられてもよい。例えば、樹脂成形品20には、ドア移動用モータ46、窓ガラス昇降用モータ55、及び電動ロック装置63の少なくとも1つに電力を供給する給電装置、及び音響用のスピーカユニットの少なくとも一方が取り付けられてもよい。
【符号の説明】
【0058】
1…車両ドア、10…ドアモジュール、20…樹脂成形品、21…本体部、22…第1取付部(取付部)、23…第2取付部(取付部)、30…発泡部、31…ソリッド部、31X…一方側の面、31Y…他方側の面、32…薄肉部、32A…傾斜面、32C…曲面、32E…傾斜面、33…境界部分、34…厚肉部、40…ドア移動装置(駆動部品)、R…所定領域、T1…薄肉部の厚さ、T2…発泡部の厚さ、T3…厚肉部の厚さ。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
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図15