(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6904055
(24)【登録日】2021年6月28日
(45)【発行日】2021年7月14日
(54)【発明の名称】半導体IC内蔵基板及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
H05K 3/46 20060101AFI20210701BHJP
【FI】
H05K3/46 Q
H05K3/46 B
H05K3/46 N
【請求項の数】10
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2017-99420(P2017-99420)
(22)【出願日】2017年5月19日
(65)【公開番号】特開2018-195742(P2018-195742A)
(43)【公開日】2018年12月6日
【審査請求日】2020年1月9日
(73)【特許権者】
【識別番号】000003067
【氏名又は名称】TDK株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100115738
【弁理士】
【氏名又は名称】鷲頭 光宏
(74)【代理人】
【識別番号】100121681
【弁理士】
【氏名又は名称】緒方 和文
(74)【代理人】
【識別番号】100130982
【弁理士】
【氏名又は名称】黒瀬 泰之
(72)【発明者】
【氏名】露谷 和俊
(72)【発明者】
【氏名】勝俣 正史
【審査官】
ゆずりは 広行
(56)【参考文献】
【文献】
特開2011−165741(JP,A)
【文献】
特開2004−179288(JP,A)
【文献】
特開2005−322769(JP,A)
【文献】
国際公開第2010/010910(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H05K 3/46
H01L 23/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の絶縁層と、
前記第1の絶縁層に埋め込まれ、上面が前記第1の絶縁層の上面から露出するとともに前記第1の絶縁層の前記上面と同一平面を構成する第1の配線層と、
裏面に接着されたダイアタッチ材を介して前記第1の配線層の前記上面に配置された半導体ICと、
前記半導体ICを埋め込むよう、前記第1の配線層の前記上面に積層され、前記半導体ICの前記裏面の反対側に位置する上面を覆う第2の絶縁層と、
前記第2の絶縁層の上面に形成された第2の配線層と、
前記第2の絶縁層を貫通して設けられ、前記第1の配線層と前記第2の配線層を接続する第1のスルーホール導体と、
前記第2の絶縁層を貫通して設けられ、前記第2の配線層と前記半導体ICの前記上面に設けられた端子電極を接続する第2のスルーホール導体と、を備え、
前記ダイアタッチ材の裏面は、前記第1の絶縁層の前記上面及び前記第1の配線層の前記上面の両方と接していることを特徴とする半導体IC内蔵基板。
【請求項2】
前記ダイアタッチ材の前記裏面は、前記第1の配線層を構成する複数の信号配線と接していることを特徴とする請求項1に記載の半導体IC内蔵基板。
【請求項3】
前記第1の絶縁層の下面に形成された第3の配線層と、
前記第1の絶縁層を貫通して設けられ、前記第1の配線層と前記第3の配線層を接続する第3のスルーホール導体と、をさらに備えることを特徴とする請求項1又は2に記載の半導体IC内蔵基板。
【請求項4】
前記第2の配線層を埋め込むよう、前記第2の絶縁層の前記上面に積層された第3の絶縁層と、
前記第3の絶縁層の上面に形成された第4の配線層と、
前記第3の絶縁層を貫通して設けられ、前記第2の配線層と前記第4の配線層を接続する第4のスルーホール導体と、をさらに備えることを特徴とする請求項3に記載の半導体IC内蔵基板。
【請求項5】
前記ダイアタッチ材は、前記半導体ICの裏面に接着されたダイアタッチフィルムであることを特徴とする請求項1乃至4のいずれか一項に記載の半導体IC内蔵基板。
【請求項6】
前記ダイアタッチフィルムは、前記半導体ICを構成するシリコンよりも厚いことを特徴とする請求項5に記載の半導体IC内蔵基板。
【請求項7】
基材と導体箔の積層体を用意し、ダイアタッチ材を介して前記導体箔上に半導体ICを搭載する第1の工程と、
前記半導体ICを埋め込むよう、前記導体箔上に第2の絶縁層を形成する第2の工程と、
前記基材を除去する第3の工程と、
前記導体箔をパターニングすることにより、第1の配線層を形成する第4の工程と、
前記第1の配線層を埋め込むよう、前記第2の絶縁層の下面に第1の絶縁層を形成する第5の工程と、を備え、
前記第4の工程においては、前記ダイアタッチ材の裏面の一部が前記第1の配線層で覆われ、且つ、前記ダイアタッチ材の前記裏面の残りの部分が露出するよう、前記導体箔をパターニングし、これにより、前記ダイアタッチ材の前記裏面の前記残りの部分は、前記第1の絶縁層と接することを特徴とする半導体IC内蔵基板の製造方法。
【請求項8】
前記導体箔は、前記基材の表面にこの順に積層された第1及び第2の導体箔からなり、
前記第3の工程においては、前記第1の導体箔と前記第2の導体箔の界面を剥離し、これにより前記第2の導体箔を前記第1の配線層の材料とすることを特徴とする請求項7に記載の半導体IC内蔵基板の製造方法。
【請求項9】
前記第2の導体箔は、前記第1の導体箔よりも厚いことを特徴とする請求項8に記載の半導体IC内蔵基板の製造方法。
【請求項10】
前記第2の工程を行った後、前記第2の絶縁層を貫通し前記導体箔を露出させる第1のスルーホールと、前記第2の絶縁層を貫通し前記半導体ICの端子電極を露出させる第2のスルーホールを形成する工程をさらに備えることを特徴とする請求項7乃至9のいずれか一項に記載の半導体IC内蔵基板の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は半導体IC内蔵基板及びその製造方法に関し、特に、半導体ICの裏面にダイアタッチ材が設けられた半導体IC内蔵基板及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、スマートフォンやタブレット端末などの携帯型電子機器に対しては、小型化及び高機能化の要求が著しく、これを実現すべく半導体ICを多層基板に埋め込んだ半導体IC内蔵基板が用いられることがある。例えば、特許文献1に記載された半導体IC内蔵基板は、多層基板を構成する所定の絶縁層に凹部を形成し、この凹部に半導体ICを埋め込むことによって半導体IC内蔵基板を形成している。
【0003】
しかしながら、特許文献1に記載された半導体IC内蔵基板では、半導体ICの裏面部分に配線を配置することができないため、配線層の利用効率が低いという問題があった。この問題を解決するためには、
図13に示すように、上面に配線層81が形成された絶縁層80にダイアタッチフィルム41を介して半導体IC40を搭載した後、
図14に示すように、半導体IC40を埋め込むよう絶縁層90を形成する方法が考えられる。その後、スルーホールを介して半導体IC40の端子電極42と配線層91を接続するとともに、配線層82,91をパターニングすることによって配線パターンを形成することによって、半導体IC内蔵基板が完成する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2007−165810号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記の方法では、配線層81の近傍において絶縁層80とダイアタッチフィルム41との間にボイドV(空間)が生じてしまい、これによって製品の信頼性が低下するおそれがあった。これは、配線層81によって絶縁層80の表面に段差が生じており、この段差をダイアタッチフィルム41によって完全に埋めることが困難だからである。
【0006】
したがって、本発明の目的は、半導体ICの裏面部分に配線を配置することができるとともに、ダイアタッチ材と絶縁層との間にボイドが生じない半導体IC内蔵基板及びその製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明による半導体IC内蔵基板は、第1の絶縁層と、前記第1の絶縁層に埋め込まれ、上面が前記第1の絶縁層の上面から露出するとともに前記第1の絶縁層の前記上面と同一平面を構成する第1の配線層と、ダイアタッチ材を介して前記第1の配線層の前記上面に配置された半導体ICと、前記半導体ICを埋め込むよう、前記第1の配線層の前記上面に積層された第2の絶縁層とを備え、前記ダイアタッチ材の裏面は、前記第1の絶縁層の前記上面及び前記第1の配線層の前記上面の両方と接していることを特徴とする。
【0008】
本発明によれば、第1の配線層が第1の絶縁層に埋め込まれており、両者の上面が同一平面を構成していることから、ダイアタッチ材と第1の絶縁層との間にボイドが生じない。しかも、半導体ICの裏面部分に位置する第1の配線層を活用することができることから、配線層の利用効率を高めることも可能となる。
【0009】
本発明において、ダイアタッチ材の裏面は、第1の配線層を構成する複数の信号配線と接していても構わない。これによれば、配線層の利用効率がさらに高められる。
【0010】
本発明による半導体IC内蔵基板は、第2の絶縁層の上面に形成された第2の配線層と、第2の絶縁層を貫通して設けられ、第1の配線層と第2の配線層を接続する第1のスルーホール導体と、第2の絶縁層を貫通して設けられ、第2の配線層と半導体ICの端子電極を接続する第2のスルーホール導体とをさらに備えていても構わない。この場合、本発明による半導体IC内蔵基板は、第1の絶縁層の下面に形成された第3の配線層と、第1の絶縁層を貫通して設けられ、第1の配線層と第3の配線層を接続する第3のスルーホール導体とをさらに備えていても構わないし、第2の配線層を埋め込むよう、第2の絶縁層の上面に積層された第3の絶縁層と、第3の絶縁層の上面に形成された第4の配線層と、第3の絶縁層を貫通して設けられ、第2の配線層と第4の配線層を接続する第4のスルーホール導体とをさらに備えていても構わない。これらによれば、より多数の配線層を備えた半導体IC内蔵基板を提供することが可能となる。
【0011】
本発明において、ダイアタッチ材は、半導体ICの裏面に接着されたダイアタッチフィルムであっても構わない。これによれば、半導体ICの厚みが非常に薄い場合であっても、半導体ICのハンドリングが可能となる。この場合、ダイアタッチフィルムは、半導体ICを構成するシリコンよりも厚くても構わない。これによれば、より薄型化された半導体ICを用いることが可能となる。
【0012】
本発明による半導体IC内蔵基板の製造方法は、基材と導体箔の積層体を用意し、ダイアタッチ材を介して前記導体箔上に半導体ICを搭載する第1の工程と、前記半導体ICを埋め込むよう、前記導体箔上に第2の絶縁層を形成する第2の工程と、前記基材を除去する第3の工程と、前記導体箔をパターニングすることにより、第1の配線層を形成する第4の工程と、前記第1の配線層を埋め込むよう、前記第2の絶縁層の下面に第1の絶縁層を形成する第5の工程とを備え、前記第4の工程においては、前記ダイアタッチ材の裏面の一部が前記第1の配線層で覆われ、且つ、前記ダイアタッチ材の前記裏面の残りの部分が露出するよう、前記導体箔をパターニングし、これにより、前記ダイアタッチ材の前記裏面の前記残りの部分は、前記第1の絶縁層と接することを特徴とする。
【0013】
本発明によれば、導体箔上に半導体ICを搭載した後、この導体箔をパターニングすることによって第1の配線層を形成していることから、半導体ICを搭載する際の下地に段差が存在しない。このため、段差に起因するボイドの発生を防止することが可能となる。
【0014】
本発明において、導体箔は、基材の表面にこの順に積層された第1及び第2の導体箔からなり、第3の工程においては、第1の導体箔と第2の導体箔の界面を剥離し、これにより第2の導体箔を第1の配線層の材料としても構わない。これによれば、基材の除去を容易に行うことが可能となる。この場合、第2の導体箔は、第1の導体箔よりも厚くても構わない。このように、最終的に第1の配線層となる第2の導体箔の膜厚が厚い場合であっても、半導体ICの搭載時に段差が存在しないことから、ボイドが発生することがない。
【0015】
本発明による半導体IC内蔵基板の製造方法は、第2の工程を行った後、第2の絶縁層を貫通し導体箔を露出させる第1のスルーホールと、第2の絶縁層を貫通し半導体ICの端子電極を露出させる第2のスルーホールを形成する工程をさらに備えていても構わない。これによれば、多層配線構造を有する半導体IC内蔵基板を作製することが可能となる。
【発明の効果】
【0016】
このように、本発明によれば、半導体ICの裏面部分に配線を配置することができるとともに、ダイアタッチ材と絶縁層との間にボイドが生じない半導体IC内蔵基板及びその製造方法を提供することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】
図1は、本発明の好ましい実施形態による半導体IC内蔵基板10の構造を説明するための断面図である。
【
図2】
図2は、半導体IC内蔵基板10の製造方法を説明するための工程図である。
【
図3】
図3は、半導体IC内蔵基板10の製造方法を説明するための工程図である。
【
図4】
図4は、半導体IC内蔵基板10の製造方法を説明するための工程図である。
【
図5】
図5は、半導体IC内蔵基板10の製造方法を説明するための工程図である。
【
図6】
図6は、半導体IC内蔵基板10の製造方法を説明するための工程図である。
【
図7】
図7は、半導体IC内蔵基板10の製造方法を説明するための工程図である。
【
図8】
図8は、半導体IC内蔵基板10の製造方法を説明するための工程図である。
【
図9】
図9は、半導体IC内蔵基板10の製造方法を説明するための工程図である。
【
図10】
図10は、半導体IC内蔵基板10の製造方法を説明するための工程図である。
【
図11】
図11は、半導体IC内蔵基板10の製造方法を説明するための工程図である。
【
図12】
図12は、半導体IC内蔵基板10の製造方法を説明するための工程図である。
【
図13】
図13は、従来の半導体IC内蔵基板の製造方法を説明するための工程図である。
【
図14】
図14は、従来の半導体IC内蔵基板の製造方法を説明するための工程図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、添付図面を参照しながら、本発明の好ましい実施形態について詳細に説明する。
【0019】
図1は、本発明の好ましい実施形態による半導体IC内蔵基板10の構造を説明するための断面図である。
【0020】
図1に示すように、本実施形態による半導体IC内蔵基板10は、第1〜第3の絶縁層11〜13と、第1〜第4の配線層21〜24と、内部に埋め込まれた半導体IC40とを備えている。第1〜第3の絶縁層11〜13は樹脂などの絶縁材料からなり、少なくとも第2の絶縁層12については、半導体IC40よりも厚く設定される。
【0021】
第1〜第4の配線層21〜24には、いずれも銅(Cu)などの良導体からなる配線パターンが形成されている。このうち、第1の配線層21は第1の絶縁層11と第2の絶縁層12との間に位置し、第2の配線層22は第2の絶縁層12と第3の絶縁層13との間に位置する。また、第3の配線層23は第1の絶縁層11の下面に位置し、第4の配線層24は第3の絶縁層13の上面に位置する。
【0022】
さらに、本実施形態による半導体IC内蔵基板10には、第1〜第3の絶縁層11〜13を貫通して設けられた複数のスルーホール導体31〜34が設けられている。このうち、第1のスルーホール導体31は、第2の絶縁層12を貫通して第1の配線層21と第2の配線層22を接続する。また、第2のスルーホール導体32は、第2の絶縁層12を貫通して第2の配線層22と半導体IC40の端子電極42を接続する。第3のスルーホール導体33は、第1の絶縁層11を貫通して第1の配線層21と第3の配線層23を接続する。第4のスルーホール導体34は、第3の絶縁層13を貫通して第2の配線層22と第4の配線層24を接続する。
【0023】
図1に示すように、本実施形態による半導体IC内蔵基板10においては、第1の配線層21が第1の絶縁層11に埋め込まれており、且つ、第1の配線層21の上面21aと第1の絶縁層11の上面11aが同一平面を構成している。第1の配線層21の上面21aは、第1の絶縁層11の上面11aから露出している。そして、半導体IC40の裏面にはダイアタッチフィルム41が接着されており、半導体IC40は、ダイアタッチフィルム41を介して第1の配線層21の上面21aに配置される。
【0024】
半導体IC40の裏面にダイアタッチフィルム41を接着しているのは、第1の配線層21の上面21aに対する接着力を確保するためだけではなく、半導体IC40のハンドリング性を高めるためでもある。本実施形態において使用される半導体IC40は、裏面研削により薄型化されているが、その厚みを例えば50μm程度まで薄くすると、実装時におけるハンドリングが困難となり、チップの破損が発生してしまう。このような問題を解決すべく、本実施形態においては半導体IC40の裏面にダイアタッチフィルム41を貼り付け、これによって実装時におけるハンドリング性を確保している。特に限定されるものではないが、半導体IC40及びダイアタッチフィルム41の厚さについては、いずれも25μm程度とすることができる。また、半導体IC40の厚みがより薄い場合や、半導体IC40のハンドリング性をより高める必要がある場合には、ダイアタッチフィルム41の厚さを半導体IC40を構成するシリコンよりも厚く設定しても構わない。
【0025】
本実施形態においては、ダイアタッチフィルム41の裏面41aが第1の配線層21の上面21aと接するのみならず、第1の絶縁層11の上面11aとも接している。このように、ダイアタッチフィルム41の裏面41aが第1の配線層21と接しているにもかかわらず、本実施形態においては、第1の絶縁層11の上面11aと第1の配線層21の上面21aが同一平面を構成していることから、
図13及び
図14に示した従来例のように、ダイアタッチフィルム41の裏面41aにボイドなどが生じることがない。
図1に示す例では、ダイアタッチフィルム41と接する2本の信号配線21sが示されているが、実際にはより多数の信号配線や電源配線をダイアタッチフィルム41の裏面41aと接するようレイアウトすることができる。
【0026】
このように、本実施形態による半導体IC内蔵基板10は、第1の絶縁層11の上面11aと第1の配線層21の上面21aが同一平面を構成していることから、ダイアタッチフィルム41を介して該表面に半導体IC40を搭載しても、ボイドなどが生じることがない。このため、基板全体の薄型化を実現しつつ、製品の信頼性を高めることが可能となる。しかも、ダイアタッチフィルム41の裏面41aと接する部分には複数の信号配線をレイアウトすることができることから、第1の配線層21の利用効率を高めることも可能となる。
【0027】
次に、本実施形態による半導体IC内蔵基板10の製造方法について説明する。
【0028】
図2〜
図12は、本実施形態による半導体IC内蔵基板10の製造方法を説明するための工程図である。
【0029】
まず、
図2に示すように、基材51の表面に第1の導体箔52及び第2の導体箔53がこの順に積層されてなる積層体50を用意する。基材51は硬化済みの樹脂などからなり、第1及び第2の導体箔52,53は銅(Cu)などの良導体からなる。第1の導体箔52と第2の導体箔53の間には図示しない剥離層が介在しており、この界面において両者を容易に剥離することができるよう構成されている。これに対し、基材51と第1の導体箔52の界面は、アンカー効果によって比較的強固に密着している。
【0030】
そして、このような構成を有する積層体50の第2の導体箔53上に、ダイアタッチフィルム41を介して半導体IC40をフェイスアップ方式で搭載する。フェイスアップ方式とは、半導体IC40に設けられた端子電極42が上側を向くよう搭載する方式を指す。この時、第2の導体箔53は平坦であることから、ダイアタッチフィルム41と第2の導体箔53との間に隙間などは生じない。尚、事前に半導体IC40の搭載位置を示すアライメントマークを第1及び第2の導体箔52,53に形成しておいても構わない。
【0031】
また、半導体IC40を搭載する前に、第2の導体箔53の表面をエッチング又はブラスト加工することによって、その表面を粗面化しておくことが好ましい。これによれば、アンカー効果によって第2の導体箔53とダイアタッチフィルム41の密着性が高められるとともに、第2の導体箔53と後述する第2の絶縁層12の密着性も高められる。
【0032】
次に、
図3に示すように、半導体IC40を埋め込むよう、積層体50上に第2の絶縁層12を形成する。具体的には、未硬化又は半硬化状態の樹脂フィルムの一方の表面に導体箔が貼り付けられた積層体Aを用意し、未硬化又は半硬化状態の樹脂フィルムが積層体50の第2の導体箔53と接するよう両者を重ね合わせ、熱プレスすることによって未硬化又は半硬化状態の樹脂フィルムを硬化させる。これにより、硬化した樹脂フィルムが第2の絶縁層12となり、その上面に貼り付けられた導体箔が第2の配線層22となる。尚、樹脂フィルムは未硬化又は半硬化状態で真空熱プレスされることから、半導体IC40に起因する凹凸は生じず、また、半導体IC40の周囲にボイドなどは形成されない。
【0033】
次に、
図4に示すように、第2の配線層22の一部を除去することによって、所定の位置に第1及び第2の開口部61,62を形成する。ここで、第2の開口部62は、積層方向から見て半導体IC40の端子電極42と重なる位置に設けられる。第1及び第2の開口部61,62の形成は、フォトリソグラフィー法によってマスクを形成した後、マスクを介して第2の配線層22をエッチングすることによって行うことができる。
【0034】
次に、
図5に示すように、第1及び第2の開口部61,62が形成された第2の配線層22をマスクとして、第2の絶縁層12に第1及び第2のスルーホール71,72を形成する。第1のスルーホール71は、第2の絶縁層12を貫通して積層体50の第2の導体箔53に達しており、その底部において第2の導体箔53が露出している。また、第2のスルーホール72は、第2の絶縁層12を貫通して半導体IC40の端子電極42に達しており、その底部において端子電極42が露出している。第1及び第2のスルーホール71,72の形成は、レーザー加工法やブラスト法などを用いて行うことができる。
【0035】
次に、
図6に示すように、電解メッキなどを施すことによって、第1及び第2のスルーホール71,72の内部に第1及び第2のスルーホール導体31,32を形成する。これにより、第2の配線層22と積層体50の第2の導体箔53は、第1のスルーホール導体31を介して接続され、第2の配線層22と半導体IC40の端子電極42は、第2のスルーホール導体32を介して接続される。
【0036】
次に、
図7に示すように、積層体50の第1の導体箔52と第2の導体箔53の界面を剥離することによって、基材51及び第1の導体箔52を除去する。上述の通り、第1の導体箔52と第2の導体箔53の界面には剥離層が設けられていることから、簡単に剥離することができる。これにより、残存する第2の導体箔53は、第1の配線層21となる。
【0037】
次に、
図8に示すように、第1及び第2の配線層21,22をパターニングすることによって、所定の配線パターンを形成する。ここで、第1の配線層21のパターニングにおいては、ダイアタッチフィルム41の裏面41aの一部が第1の配線層21で覆われ、且つ、ダイアタッチフィルム41の裏面41aの残りの部分が露出するよう、パターニングを行う。
図8に示す例では、第1の配線層21をパターニングすることによって、ダイアタッチフィルム41の裏面41aと接する2本の信号配線21sが形成された様子が示されている。上述の通り、ダイアタッチフィルム41は、平坦な第2の導体箔53の表面と接するよう設けられていることから、両者間に隙間はなく、且つ、信号配線21sの上面21aとダイアタッチフィルム41の裏面41aは同一平面を構成している。また、ダイアタッチフィルム41の裏面41aと第2の絶縁層12の下面12aも同一平面を構成している。
【0038】
次に、
図9に示すように、第1の配線層21を覆う第1の絶縁層11と、第2の配線層22を覆う第3の絶縁層13を形成する。具体的には、未硬化又は半硬化状態の樹脂フィルムの一方の表面に導体箔が貼り付けられた積層体B,Cを用意し、未硬化又は半硬化状態の樹脂フィルムが第2の絶縁層12側を向くよう、2枚の積層体B,Cで第2の絶縁層12を挟み込み、この状態で真空熱プレスすることによって未硬化又は半硬化状態の樹脂フィルムを硬化させる。これにより、硬化した樹脂フィルムが第1及び第3の絶縁層11,13となり、その下面及び上面に貼り付けられた導体箔がそれぞれ第3及び第4の配線層23,24となる。
【0039】
これにより、ダイアタッチフィルム41の裏面41aのうち、第1の配線層21によって覆われることなく露出している部分は、第1の絶縁層11によって覆われることになる。そして、第1の絶縁層11の上面11a、第2の絶縁層12の下面12a、第1の配線層21の上面21a、ダイアタッチフィルム41の裏面41aは、互いに同一平面を構成することになる。尚、樹脂フィルムは未硬化又は半硬化状態で真空熱プレスされることから、第1の配線層21に起因する凹凸は生じず、また、第1の配線層21の周囲にボイドなどは形成されない。同様に、第2の配線層22に起因する凹凸は生じず、また、第2の配線層22の周囲にボイドなども形成されない。
【0040】
また、第1及び第3の絶縁層11,13を形成する前に、第1及び第2の配線層21,22の表面をエッチング又はブラスト加工することによって、その表面を粗面化しておくことが好ましい。これによれば、アンカー効果によって第1の配線層21と第1の絶縁層11の密着性が高められるとともに、第2の配線層22と第3の絶縁層13の密着性が高められる。
【0041】
次に、
図10に示すように、第3の配線層23の一部を除去することによって、所定の位置に第3の開口部63を形成するとともに、第4の配線層24の一部を除去することによって、所定の位置に第4の開口部64を形成する。ここで、第3の開口部63は、積層方向から見て第1の配線層21と重なる位置に設けられ、第4の開口部64は、積層方向から見て第2の配線層22と重なる位置に設けられる。第3及び第4の開口部63,64の形成は、フォトリソグラフィー法によってマスクを形成した後、マスクを介して第3及び第4の配線層23,24をエッチングすることによって行うことができる。
【0042】
次に、
図11に示すように、第3及び第4の開口部63,64が形成された第2の配線層23,24をマスクとして、第1の絶縁層11に第3のスルーホール73を形成し、第3の絶縁層13に第4のスルーホール74を形成する。第3のスルーホール73は、第1の絶縁層11を貫通して第1の配線層21に達しており、その底部において第1の配線層21が露出している。また、第4のスルーホール74は、第3の絶縁層13を貫通して第2の配線層22に達しており、その底部において第2の配線層22が露出している。第3及び第4のスルーホール73,74の形成は、レーザー加工法やブラスト法などを用いて行うことができる。
【0043】
次に、
図12に示すように、電解メッキなどを施すことによって、第3及び第4のスルーホール73,74の内部に第3及び第4のスルーホール導体33,34を形成する。これにより、第1の配線層21と第3の配線層23は、第3のスルーホール導体33を介して接続され、第2の配線層22と第4の配線層24は、第4のスルーホール導体34を介して接続される。
【0044】
そして、第3及び第4の配線層23,24をパターニングすることによって、所定の配線パターンを形成すれば、
図1に示した半導体IC内蔵基板10が完成する。
【0045】
このように、本実施形態による半導体IC内蔵基板10の製造方法は、
図13及び
図14に示す従来の製造方法のように、パターニングされた配線層81の上にダイアタッチフィルム41を介して半導体IC40を搭載するのではなく、平坦な導体箔53上にダイアタッチフィルム41を介して半導体IC40を搭載し、その後、導体箔53をパターニングすることによって第1の配線層21を形成していることから、第1の配線層21の凹凸形状に起因するボイドが形成されることがない。その結果、ボイドに侵入した水分の膨張などによる信頼性の低下を防止することが可能となる。
【0046】
以上、本発明の好ましい実施形態について説明したが、本発明は、上記の実施形態に限定されることなく、本発明の主旨を逸脱しない範囲で種々の変更が可能であり、それらも本発明の範囲内に包含されるものであることはいうまでもない。
【0047】
例えば、上述した実施形態では、4層の配線層を有する半導体IC内蔵基板を例に説明したが、本発明の適用対象がこれに限定されるものではない。
【0048】
また、上述した実施形態では、ダイアタッチフィルム41を介して半導体IC40を搭載する例について説明したが、ダイアタッチフィルム41の代わりにダイアタッチペーストなど別のダイアタッチ材を用いても構わない。しかしながら、半導体ICのハンドリング性を向上させる観点からは、ダイアタッチ材としてダイアタッチフィルムを用いることが特に好ましい。
【0049】
さらに、上述した実施形態では、基材51の表面に第1の導体箔52及び第2の導体箔53が積層された積層体50を用いているが、本発明において使用する積層体の構成がこれに限定されるものではない。例えば、基材と単層の導体箔からなる積層体を用いても構わないし、2枚の導体箔からなる積層体を用いても構わない。また、
図9に示す工程においては、積層体B及びCを用いる代わりに、未硬化又は半硬化の樹脂と銅箔を用い、これらを同時に一括熱プレスしても構わない。
【符号の説明】
【0050】
10 半導体IC内蔵基板
11〜13 絶縁層
11a 第1の絶縁層の上面
12a 第2の絶縁層の下面
21〜24 配線層
21a 第1の配線層の上面
21s 信号配線
31〜34 スルーホール導体
40 半導体IC
41 ダイアタッチフィルム
41a ダイアタッチフィルムの裏面
42 端子電極
50,A〜C 積層体
51 基材
52,53 導体箔
61〜64 開口部
71〜74 スルーホール
80,90 絶縁層
81,82,91 配線層
V ボイド