(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の一実施の形態に係る電力変換装置について、添付の図面を参照しながら詳細に説明する。なお、以下においては、本発明に係る電力変換装置をSVC(無効電力補償装置)に適用する場合について説明する。しかしながら、本発明に係る電力変換装置の適用対象は、SVCに限定されるものではなく適宜変更が可能である。例えば、SVC以外の電力変換装置や、電圧調整装置、インバータ装置、コンバータ装置をはじめとした半導体を用いた電力変換装置全般に適用することもできる。
【0015】
[第1の実施の形態]
図1は、第1の実施の形態に係る電力変換装置の平面図である。
図1に示すように、電力変換装置10は、直方体状となる筐体11と、筐体11の
図1中上側に取り付けられた冷却体12とを備えている。筐体11と冷却体12との間には、板状をなす熱絶縁隔壁13が介在している。熱絶縁隔壁13は熱伝導率が低い材質とされ、具体的には、ポリエステル系やエポキシ系の樹脂材を母材としたFRPや、アクリル、ポリカーボネート等の樹脂材が例示できる。また、熱絶縁隔壁13は、電気的な絶縁性能をも発揮し得る材質とすることが好ましい。
【0016】
冷却体12の外周側には、取付補強部材15が設けられる。取付補強部材15は、アングル部材によって形成され(
図3参照)、熱絶縁隔壁13にねじ止め等によって固定されるとともに、冷却体12の外縁に沿って配設されている。なお、取付補強部材15は、後述するスペーサ18(
図3参照)によって熱絶縁隔壁13に冷却体12が取り付けられていれば、一部又は全部を省略してもよい。
【0017】
図2は、
図1のA−A線断面図であり、
図3は、
図2のB−B線断面図である。なお、
図2では、取付補強部材15の図示を省略している。
図2及び
図3に示すように、冷却体12は、方形の板状となるベース板12aを備えている。そして、ベース板12aの一方の面(
図3中上面)には複数の放熱フィン12b(
図2では不図示)が
図3の紙面直交方向に延在するように形成されている。冷却体12は、熱伝導率が高い素材によって形成され、具体的には、アルミニウム等の金属が例示できる。
【0018】
ベース板12aの他方の面(
図3中下面)は取付面12cとされ、この取付面12cには、4体の半導体素子17、2体のスペーサ18及び6体の断熱部材19が取り付けられている。
【0019】
半導体素子17は、SVCに用いられて電力変換を行う素子であり、樹脂材によってパッケージされた状態で形成される。半導体素子17は、取付面12cに対向する面が放熱面として金属等によって形成され、電力変換時に発生した熱が主として放熱面から放出される。そして、半導体素子17の放熱面は取付面12cに面接触した状態で取り付けられ、半導体素子17の熱が取付面12cからベース板12a、放熱フィン12bに伝わり、放熱フィン12bが外気に触れて放出される。
【0020】
図2に示すように、半導体素子17は、取付面12cに対し、上下左右に並んで4体取り付けられている。また、スペーサ18は、半導体素子17を取り囲むように取付面12cに設けられている。具体的には、4体の半導体素子17について、左側で上下に並ぶ2体の半導体素子17と、右側で上下に並ぶ2体の半導体素子17とで、それぞれグループに分割して見た場合、スペーサ18は、それぞれのグループの四方を囲うように形成されている。従って、スペーサ18は、
図2にて縦長の枠状をなして2体設けられ、各スペーサ18の内側に2体の半導体素子17が配設される。スペーサ18で囲まれて形成される開口18aの左右幅は、半導体素子17の左右幅と概略同一又は若干大きく形成される。一方、半導体素子17の端子位置が上下両側となり、かかる端子とスペーサ18との絶縁距離を確保するため、開口18aの上下幅は、半導体素子17から離れる大きさに形成される。なお、スペーサ18と半導体素子17との絶縁の制約に応じ、それらの間の上下及び左右方向のスペースを広くしたり狭くした開口18aの形状とすることができる。
【0021】
断熱部材19は、スペーサ18で囲まれた取付面12cのうち、半導体素子17が取り付けられていない空間を埋めるように取り付けられる。具体的には、スペーサ18の開口18aの内側にて、半導体素子17の上下両側に設けられ、
図2にて開口18aの内側で取付面12cが露出しないように設けられる。断熱部材19としては、グラスウール等の綿状の素材や、多数の気泡を含ませた発泡体等熱伝導率が極めて低い材料が例示できる。
【0022】
図3に示すように、スペーサ18は、断面が主として一定のチャンネル状(コの字状)に形成されて長手方向に延出するフレーム部材21によって形成される。具体的には、フレーム部材21は、所定間隔を隔てて配置される一対の平行部21a、21bと、各平行部21a、21bの一端部を連結する連結部21cとを備えている。フレーム部材21は、連結部21c側でスペーサ18の開口18aを形成しており、連結部21cと反対側が開放するように形成される。フレーム部材21は、樹脂材による成形体や、鋼材、板金加工材により構成することが例示できる。
【0023】
フレーム部材21の冷却体12側(
図3中上側)の平行部21aは、冷却体12の取付面12cに接触した状態で、ねじ等の取付部材(不図示)で固定される。フレーム部材21の熱絶縁隔壁13側(
図3中下側)の平行部21bは、熱絶縁隔壁13の
図3中上面に接触した状態で、ねじ等の取付部材(不図示)で固定される。このように固定することで、フレーム部材21を間に挟んで冷却体12及び熱絶縁隔壁13が連結される。言い換えると、フレーム部材21により形成されるスペーサ18を介して冷却体12が熱絶縁隔壁13に取り付けられ、スペーサ18を介して熱絶縁隔壁13が冷却体12に取り付けられる。
【0024】
平行部21aと冷却体12の取付面12cとの間で、スペーサ18の開口18aより外側を囲う位置には、閉ループ状をなすパッキン23が設けられている。また、平行部21bと熱絶縁隔壁13との間で、スペーサ18の開口18aより外側を囲う位置にも、閉ループ状をなすパッキン24が設けられている。これらパッキン23、24を設けることで、スペーサ18と、冷却体12や熱絶縁隔壁13との間において、気密性や液密性が保たれ、開口18aの内側に雨水や埃が侵入することが回避される。なお、気密性や液密性が同様に保たれる限りにおいて、パッキン23、24に替えてシール材等の他の部材を設けてもよい。
【0025】
図3のようにスペーサ18を介して冷却体12を熱絶縁隔壁13に取り付けた状態で、スペーサ18と、冷却体12の取付面12cと、熱絶縁隔壁13とによって囲まれた空間26が形成される。
図3にて、符号26a〜26cで示す空間は、同図の紙面直交方向つまり上下方向に延在している。空間26a〜26cは、上下方向両側が開放しており、筐体11外の外気が流通可能な流路として構成される。なお、
図3の断面図では、空間26b、26cが取付補強部材15によって側方の外気から遮断されるように見えるが、取付補強部材15と冷却体12及び熱絶縁隔壁13との間は気密性が担保されるものでない。従って、空間26b、26cでは、側方からも外気が流れ込むようになり、取付補強部材15に穴を設けて積極的に外気が流れるようにしてもよい。更に、
図3中紙面直交方向(上下方向)両側の取付補強部材15を省略すれば、空間26a〜26cに対して上下方向からより良く外気が流れるようになる。また、スペーサ18の
図2中上下両側に位置するフレーム部材21においても、冷却体12の取付面12cと、熱絶縁隔壁13(
図2では不図示)とによって囲まれた空間が形成され、この空間に筐体11外の外気が流れるようになる。
【0026】
図3に示すように、筐体11は、冷却体12側の周壁11aに開口部11bを形成しており、この開口部11bを閉塞するように熱絶縁隔壁13が設けられる。このように熱絶縁隔壁13が開口部11bを閉塞することで、熱絶縁隔壁13に取り付けられる冷却体12が筐体11の外側に位置するようになる。熱絶縁隔壁13は、周壁11aの外面に面接触して設けられ、それらの間での気密性や液密性を保って筐体11内への雨水や埃の侵入を回避するため不図示のシーリング処理等がなされる。なお、図示省略したが、筐体11の内部にはSVCを構成するための基板や各種回路、部品が収容されている。
【0027】
ここで、半導体素子17の全体は、筐体11の開口部11bより外方(
図3中上方)に配置されている。言い換えると、冷却体12に取り付けられた半導体素子17の
図3中下部領域が、開口部11bに達しないように、スペーサ18及び熱絶縁隔壁13の厚さが設定されている。
【0028】
図4は、
図1のC−C線断面図である。
図4に示すように、熱絶縁隔壁13は、4箇所の開口13aを備えた形状に形成されている。各開口13aは、4体の半導体素子17に対応する領域に形成され、取付面12cに直交する方向すなわち
図4の紙面直交方向から見たときに、各開口13aで半導体素子17の全体が見える位置、大きさ、形状に形成されている。このとき、断熱部材19は、熱絶縁隔壁13によって隠れて見えない若しくは殆ど見えなくなり、熱絶縁隔壁13と冷却体12の取付面12cとで挟まれるようになる。なお、開口13aの形状は、
図4の状態で断熱部材19が見えるように形成してもよく、例えば、
図4中上下に並ぶ開口13aを繋ぐように拡大して形成した形状に変更してもよい。要するに、熱絶縁隔壁13では、少なくとも半導体素子17に対応する領域に開口13aが形成されていればよい。
【0029】
ここで、スペーサ18は、冷却体12の構成部材より熱伝導率が低い材料によって形成されるとよい。一例としては、冷却体12がアルミニウムによって形成される場合、スペーサ18がアルミニウムより熱伝導率が低い樹脂材や、鉄、ステンレスによって形成される。このような熱伝導率の関係とすることで、半導体素子17の発熱で高温となる冷却体12からスペーサ18を伝わって筐体11側に伝播する熱の熱量を低減することができる。
【0030】
以上の構成において、各半導体素子17にて電力変換が行われて半導体素子17自体が発熱すると、その熱が冷却体12のベース板12aから放熱フィン12bを伝わり、放熱フィン12bと外気との熱交換によって、筐体11の外部に熱が放出される。このとき、ベース板12aへの熱の伝播によってベース板12aが高温となるため、ベース板12aからの熱の放射によって筐体11内が温度上昇し、筐体11内の部品等も高温に曝されるおそれがある。
【0031】
この点について、本実施の形態では、冷却体12の取付面12cと筐体11との間に、スペーサ18及び熱絶縁隔壁13を介在させている。これにより、筐体11の内部空間に対し、冷却体12の取付面12cがスペーサ18及び熱絶縁隔壁13の厚み分
図3中上方に離れて配置され、取付面12cと筐体11内の部品を遠ざけることができる。これにより、ベース板12aからの放熱によって、筐体11内の部品における熱的な影響を緩和することができ、かかる部品の性能や耐久性が低下することを回避することができる。
【0032】
また、冷却体12の取付面12cと筐体11の開口部11bとの間には、上述のように断熱部材19及び熱絶縁隔壁13が設けられ、これらの厚さ方向の断熱作用によっても、ベース板12aから筐体11内へ放射する熱を遮ることができる。更に、取付面12cと熱絶縁隔壁13との間の空間26が空気層として断熱作用を発揮するようになり、これによってもベース板12aから筐体11内への放熱を抑えることができる。
【0033】
また、空間26は外気が流通可能な流路として形成されるので、スペーサ18と外気とにおいて熱交換が行われ、スペーサ18の開口18aの内側にて筐体11の内部に通じる空間を冷却することができる。特に、上下方向に延在する通路においては、
図2の点線矢印で示すように、温度上昇によって下方から上方へ外気の流れが促進され、冷却作用をより良好に得ることができる。しかも、半導体素子17をスペーサ18が取り囲んで配置されるので、半導体素子17とスペーサ18が隣接する領域を広くでき、熱源となる半導体素子17から近い位置で冷却作用を得ることができる。
【0034】
また、スペーサ18のフレーム部材21は、断面がチャンネル状となるので、開口18aの内側空間と外側となる空間26とが連結部21cで仕切られ、この仕切られた部分の薄厚化を図ることができる。これにより、取付面12cからフレーム部材21を伝導する熱量を抑制できる上、スペーサ18と外気との熱交換をより効率的に行うことができる。
【0035】
また、
図3において、取付面12cの外縁より内側にスペーサ18が取り付けられるので、取付面12cは外縁とスペーサ18との間の領域にて外気に露出した状態となる。言い換えると、筐体11の外部にて取付面12cが外気と直接熱交換できるようになり、取付面12cの冷却効果を高めることができる。
【0036】
また、SVCとした電力変換装置10は電柱上に設けられる等、設置位置などの関係上メンテナンスが容易でなく、放熱用に製品寿命が短いファンを用いることは望ましくない。しかも、電力変換装置10は屋外に配置され、筐体11の密閉構造が求められるため、上述のように熱的な影響の緩和や、放熱、冷却作用を奏するということは、特に顕著な課題を解決できると言えるものである。
【0037】
[第2の実施の形態]
次に、本発明の第2の実施の形態について説明する。なお、以下の説明において、第1の実施の形態と同一若しくは同等の構成部分については同一符号を用いる場合があり、説明を省略若しくは簡略にする場合がある。
【0038】
図5は、第2の実施の形態に係る電力変換装置の平面図である。第2の実施の形態における電力変換装置10では、第1の実施の形態における電力変換装置10での取付補強部材15、スペーサ18及び断熱部材19(
図3参照)をなくしている。
図5に示すように、第2の実施の形態においては、冷却体12の取付面12cに熱絶縁隔壁13が接触した状態で設けられている。従って、第2の実施の形態では、冷却体12と筐体11との間に熱絶縁隔壁13が介在された状態で、冷却体12の取付面12c側に熱絶縁隔壁13が取り付けられる。また、筐体11の開口部11b(
図7参照)側に熱絶縁隔壁13が取り付けられる。
【0039】
熱絶縁隔壁13は、上述のように、熱伝導率が低い材質とされ、且つ、電気的な絶縁性能を発揮し得る材質とされる。従って、筐体11と冷却体12とは、それらの間に挟まれた熱絶縁隔壁13によって熱的にも電気的にも絶縁される。
【0040】
図6は、筐体を省略した
図5のD−D線断面図である。
図7は、
図6のE−E線断面図である。
図6及び
図7に示すように、第2の実施の形態の熱絶縁隔壁13においても、第1の実施の形態と同様に、4体の半導体素子17に対応する領域に開口13aが形成されている。また、取付面12cと熱絶縁隔壁13との間で、開口13aより外側を囲う位置に閉ループ状をなすパッキン24(
図6では図示省略)が設けられ、冷却体12と熱絶縁隔壁13との間での気密性や液密性が保たれる。なお、気密性や液密性が同様に保たれる限りにおいて、パッキン24に替えて冷却体12と熱絶縁隔壁13との接触部周囲にシール材等の他の部材を設けてもよい。開口13aの形状及び大きさは、加工精度や組付精度等で許容できる範囲にて、筐体11内への放熱抑制の観点から、開口13aと半導体素子17の外縁との間の隙間が小さくなるように設定することが好ましい。
【0041】
熱絶縁隔壁13における冷却体12と反対側に位置する面(
図7中下面)には、断熱カバー40が設けられている。断熱カバー40は、上述した熱絶縁隔壁13や断熱部材19と同様の熱伝導率が低い材料、材質によって構成され、板状、シート状或いは蓋状として形成することができる。断熱カバー40は、本実施の形態では、単一とされて4つ全ての開口13aを覆う大きさ及び形状に設けられている。なお、
図7で図示した状態では、半導体素子17が熱絶縁隔壁13の厚さ内に収まる厚さとしたが、熱絶縁隔壁13の厚さより大きい厚さとなる場合もあり、この場合には、断熱カバー40は半導体素子17を含む部分で
図7中下方に膨出するよう形成すればよい。また、断熱カバー40は、図示省略したが、半導体素子17に接続される配線を通す穴等が形成される。
【0042】
断熱カバー40は、ボルト等からなるねじ部材(着脱部材)40aによって熱絶縁隔壁13に装着されている。ねじ部材40aは、断熱カバー40を貫通して熱絶縁隔壁13にねじ込まれ、また、軸回りの回転操作により熱絶縁隔壁13に着脱自在となる。従って、断熱カバー40は、ねじ部材40aを介して熱絶縁隔壁13に着脱可能に設けられる。
【0043】
冷却体12と熱絶縁隔壁13とは第1ねじ部材(第1固定部材)41によってねじ止め固定され、熱絶縁隔壁13と筐体11とは第2ねじ部材(第2固定部材)42によってねじ止め固定される。各ねじ部材41、42は、ボルトや各種のねじを用いることができる。第1ねじ部材41は、熱絶縁隔壁13を
図7中下方から貫通して冷却体12の取付面12c側にねじ込まれる。第2ねじ部材42は、熱絶縁隔壁13の
図7中上方から熱絶縁隔壁13及び筐体11の開口部11b周りにおける周壁11aを貫通し、周壁11aの内面側のナット(雌ねじ部材)43に螺合している。これにより、第2ねじ部材42とナット43とで周壁11a及び熱絶縁隔壁13を締結して筐体11に熱絶縁隔壁13を固定している。各ねじ部材41、42においては、軸回りの回転操作でねじ込んだ部材に対して着脱自在となり、この着脱によって冷却体12及び熱絶縁隔壁13、熱絶縁隔壁13及び筐体11が相互に着脱自在に取り付けられた状態とされる。
【0044】
第1ねじ部材41は熱絶縁隔壁13の外周に沿う位置にて、第2ねじ部材42は冷却体12における取付面12cの外周に沿う位置にて、所定ピッチで設けられる。第1ねじ部材41と第2ねじ部材42とは、熱絶縁隔壁13の厚さ方向に直交する面方向つまり
図6の紙面と平行な方向にて異なる位置に配設されている。言い換えると、一のねじ部材41、42によって筐体11と冷却体12との両方を接続しないようになっている。
【0045】
以上の構成では、冷却体12の取付面12cにおける半導体素子17が取り付けられていない領域が熱絶縁隔壁13で覆われた状態となっている。これにより、半導体素子17が高温となって冷却体12のベース板12aが発熱しても、熱絶縁隔壁13の断熱作用によってベース板12aから筐体11内への放熱が遮られ、筐体11内の部品に熱的な影響が及ぼされることを抑制することができる。
【0046】
しかも、熱絶縁隔壁13が電気的な絶縁性能を有するので、冷却体12と筐体11とで電位差を生じさせることができ、冷却体12に半導体素子17での回路の電位を持たせることができる。しかも、第1ねじ部材41と第2ねじ部材42とが上述のように異なる位置に設けられるので、冷却体12と筐体11とを架け渡して接続するようにねじ部材等を設けることを回避できる。従って、筐体11に対し冷却体12や熱絶縁隔壁13を取り付ける部材によって、冷却体12と筐体11とが通電しなくなり、熱絶縁隔壁13の絶縁性能と併せて冷却体12と筐体11との絶縁状態を担保することができる。
【0047】
ここで、電力変換装置10に用いられる半導体素子17においては、高電圧が印加される一方、回路として成立すべく電位差を生じさせるため、半導体素子17の内外何れか一方で絶縁を確保する必要がある。かかる絶縁は、電力変換装置10のように極めて高電圧になり、また、半導体素子17が薄厚となると、半導体素子17内の狭い領域で絶縁を確保するには設計や製造上の負担が大きくなる。従って、半導体素子17の外部で絶縁できれば、半導体素子17を回路として成立させつつ設計、製造上の負担を軽減することができる。
【0048】
この点について、本実施の形態では、半導体素子17の外部となる冷却体12と筐体11との間にて上記のように絶縁が担保されるので、半導体素子17内での絶縁を不要にすることができる。従って、半導体素子17を回路として成立させつつ半導体素子17の設計、製造上の負担を軽減することができる。
【0049】
また、断熱カバー40を設けたので、熱絶縁隔壁13の開口13aと半導体素子17との隙間における取付面12cから筐体11内への放熱を抑えることができる。更に、断熱カバー40が熱絶縁隔壁13に着脱自在に設けられるので、筐体11から熱絶縁隔壁13を取り外したり、熱絶縁隔壁13から冷却体12を取り外したりしなくても、半導体素子17にアクセスしてメンテナンス等を行えるようになる。従って、筐体11と熱絶縁隔壁13との間や、熱絶縁隔壁13と冷却体12との間のパッキン24やシール材等の液密及び気密を確保する部材を維持したまま半導体素子17にアクセス可能となる。これにより、半導体素子17にアクセスする度に、パッキン24を交換したりシール材を再形成する作業を省略することができる。
【0050】
なお、本発明は上記実施の形態に限定されず、さまざまに変更して実施可能である。上記実施の形態において、添付図面に図示されている大きさや形状、方向などについては、これに限定されず、本発明の効果を発揮する範囲内で適宜変更が可能である。その他、本発明の目的の範囲を逸脱しない限りにおいて適宜変更して実施可能である。
【0051】
また、本発明の各実施の形態を説明したが、本発明の他の実施の形態として、上記各実施の形態を全体的又は部分的に組み合わせたものでもよい。
【0052】
上記第1の実施の形態におけるスペーサ18の形状は、種々の変更が可能であり、例えば、4体の半導体素子17について、
図2にて上側で左右に並ぶ2体の半導体素子17と、下側で左右に並ぶ2体の半導体素子17とで、それぞれグループに分割して見たときに、スペーサ18が、それぞれのグループの四方を囲うように形成してもよい。更に、スペーサ18の形状は、
図8及び
図9に示す形状に変更することができる。
図8は、第1変形例に係るスペーサを示す
図2と同様の断面図であり、
図9は、第2変形例に係るスペーサを示す
図2と同様の断面図である。
図8の第1変形例では、4体の半導体素子17全てが、1体のスペーサ18の開口18内に収まって囲われている。そして、左右に隣り合う半導体素子17の間のスペースにも断熱部材19が設けられ、開口18a内において取付面12cが露出しないようになっている。この構成では、スペーサ18の設置数や、フレーム部材21の本数を削減する等、構成の簡略化、製作負担の軽減を図ることができる。
【0053】
図9の第2変形例では、4体の半導体素子17の周囲をそれぞれ囲うようにスペーサ18が4体設けられている。本変形例では、方形状の半導体素子17の四辺に隣接してスペーサ18が配置され、断熱部材を省略した構成となっている。この構成では、半導体素子17におけるスペーサ18を通じた放熱にて、スペーサ18による熱交換の効率をより良く高めることができる。
【0054】
また、冷却体12は、上述の構成に限られるものでなく、取付面12cに取り付けられた半導体素子17の熱を放出する限りにおいて変更してもよく、例としては、
図10のように変更することができる。
図10は、第3変形例に係る電力変換装置の平面断面図である。
図10の第3変形例では、冷却体12は複数(本変形例では左右に2体)に分割されている。分割された冷却体12はそれぞれスペーサ18を介して1枚の熱絶縁隔壁13に取り付けられ、一体化された状態となる。また、分割された冷却体12は、それらに跨る連結板30を介して連結した状態としてもよい。なお、第3変形例にて、スペーサ18を省略して各冷却体12と熱絶縁隔壁13とが相互に取り付けた状態としてもよい。
【0055】
また、スペーサ18におけるフレーム部材21の断面形状は、種々の変更が可能であり、例えば、
図11及び
図12に示す形状に変更することができる。
図11は、第4変形例に係るフレーム部材の説明用断面図であり、
図12は、第5変形例に係るフレーム部材の説明用断面図である。
図11の第4変形例において、フレーム部材32は、断面が方形となる筒状に形成され、フレーム部材32自体の強度を高めつつ、内部に空間32aを備えて外気が流通する流路を形成している。
図12の第5変形例において、フレーム部材33は、中実となる四角柱状に形成されている。
【0056】
また、第1の実施の形態の電力変換装置10では、熱絶縁隔壁13を省略し、スペーサ18を筐体11に直接取り付けて筐体11と冷却体12とを一体化した構成としてもよい。
【0057】
また、冷却体12の取付面12cに対する半導体素子17の設置数は、単数としたり3体以上としたりしてもよく、その設置レイアウトについても、スペーサ18で取り囲める限りにおいて種々の形状を採用してもよい。
【0058】
また、第1の実施の形態にて、断熱部材19は、スペーサ18で囲まれた冷却体12の取付面12cのうち、半導体素子17が取り付けられていない空間の全てでなく一部を埋めるように設けてもよい。但し、断熱部材19で埋める空間が広い方が断熱作用がより良く得られる点で有利となる。
【0059】
また、熱絶縁隔壁13の開口13aは、種々の変更が可能であり、例えば、4体の半導体素子17について、
図2及び
図6にて上側で左右に並ぶ2体の半導体素子17と、下側で左右に並ぶ2体の半導体素子17とで、それぞれグループに分割して見たときに、それぞれのグループを囲うように開口13aを形成してもよい。更に、4体の半導体素子17全てが、1つの開口13a内に収まるように形成してもよい。
【0060】
また、第2の実施の形態にて、断熱カバー40は、熱絶縁隔壁13の開口13aの少なくとも一部を覆う限りにおいて、種々の変更が可能である。例えば、1つの開口13aにて断熱カバー40で覆われた領域と覆われていない領域があったりしてもよい。また、開口13aが複数形成される場合、開口13a毎に断熱カバー40を設けてもよく、この場合、一部の開口13aへの断熱カバー40を省略してもよい。
【0061】
また、第2の実施の形態にて、各ねじ部材40〜42は、上記と同様に各構成を着脱自在とする限りにおいて、フックや嵌合構造を備えた構成にする等、種々の構成を採用することができる。
【0062】
また、第1の実施の形態は、スペーサ18を冷却体12及び熱絶縁隔壁13に取り付けるねじ部材と、熱絶縁隔壁13を筐体11に取り付けるねじ部材とは異なる位置に設けられ、また、熱絶縁隔壁13が電気的な絶縁性能を備えている。従って、第1の実施の形態においても、第2の実施の形態と同様にして冷却体12と筐体11との絶縁状態を担保することができる。