(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記セラミックス/アルミニウム接合工程の後に、前記チタン材配設工程及び前記チタン層形成工程を実施することを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか一項に記載の絶縁回路基板の製造方法。
前記チタン層形成工程の後に、前記セラミックス/アルミニウム接合工程を実施することを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか一項に記載の絶縁回路基板の製造方法。
前記チタン層形成工程と、前記セラミックス/アルミニウム接合工程と、を同時に実施することを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか一項に記載の絶縁回路基板の製造方法。
前記チタン材配設工程の前に、前記アルミニウム層又は前記アルミニウム材の表面を洗浄するアルミニウム洗浄工程を備えていることを特徴とする請求項1から請求項6のいずれか一項に記載の絶縁回路基板の製造方法。
前記チタン材配設工程の前に、前記アルミニウム層又は前記アルミニウム材のうち前記チタン層が形成される側の面に、Siを0.03mass%以上1.0mass%以下の範囲内で含有するSi濃化層を形成するSi濃化層形成工程を備えていることを特徴とする請求項1から請求項7のいずれか一項に記載の絶縁回路基板の製造方法。
【背景技術】
【0002】
LED、パワーモジュール等の半導体装置や、熱電変換モジュールにおいては、導電材料からなる回路層の上に半導体素子又は熱電素子が接合された構造とされている。
風力発電、電気自動車、ハイブリッド自動車等を制御するために用いられる大電力制御用のパワー半導体素子においては、発熱量が多いことから、これを搭載する基板としては、例えばAlN(窒化アルミ)、Al
2O
3(アルミナ)などからなるセラミックス基板と、このセラミックス基板の一方の面に導電性の優れた金属板を接合して形成した回路層と、を備えた絶縁回路基板が、従来から広く用いられている。なお、絶縁回路基板としては、セラミックス基板の他方の面に金属層を形成したものも提供されている。
【0003】
例えば、特許文献1に示すパワーモジュールにおいては、セラミックス基板の一方の面及び他方の面にAlからなる回路層及び金属層が形成された絶縁回路基板と、この回路層上にはんだ材を介して接合された半導体素子と、を備えた構造とされている。
そして、絶縁回路基板の他方の面側には、ヒートシンクが接合されており、半導体素子から絶縁回路基板側に伝達された熱を、ヒートシンクを介して外部へ放散する構成とされている。
【0004】
ところで、特許文献1に記載されたパワーモジュールのように、回路層及び金属層をAlで構成した場合には、表面にAlの酸化皮膜が形成されるため、はんだ材によって半導体素子やヒートシンクを直接接合することができない。
そこで、従来、例えば特許文献2に開示されているように、回路層及び金属層の表面に無電解めっき等によってNiめっき膜を形成した上で、半導体素子やヒートシンクをはんだ接合している。
また、特許文献3には、はんだ材の代替として、酸化銀粒子と有機物からなる還元剤とを含む酸化銀ペーストを用いて、回路層と半導体素子、及び、金属層とヒートシンクとを接合する技術が提案されている。
【0005】
しかしながら、特許文献2に記載されたように、回路層表面及び金属層表面にNiめっき膜を形成した絶縁回路基板においては、半導体素子及びヒートシンクを接合するまでの過程においてNiめっき膜の表面が酸化等によって劣化し、はんだ材を介して接合した半導体素子及びヒートシンクとの接合信頼性が低下するおそれがあった。また、Niめっき工程では、不要な領域にNiめっきが形成されて電食等のトラブルが発生しないように、マスキング処理を行うことがある。このように、マスキング処理をした上でめっき処理をする場合、回路層表面及び金属層表面にNiめっき膜を形成する工程に多大な労力が必要となり、パワーモジュールの製造コストが大幅に増加してしまうといった問題があった。
また、特許文献3に記載されたように、酸化銀ペーストを用いて回路層と半導体素子及び金属層とヒートシンクを接合する場合には、Alと酸化銀ペーストの焼成体との接合性が悪いために、予め回路層表面及び金属層表面にAg下地層を形成する必要があった。
【0006】
そこで、特許文献4には、回路層を、アルミニウム層と、銅、ニッケル又は銀からなる金属部材層の積層構造とした絶縁回路基板が提案されている。この絶縁回路基板においては、アルミニウム層と金属部材層とがチタン層を介して接合された構造とされている。
【0007】
また、熱電変換モジュールにおいては、回路層がアルミニウム等で構成されていた場合には、アルミニウムが熱電素子に拡散してしまい、熱電素子の特性が劣化してしまうおそれがあった。このため、アルミニウムが熱電素子に拡散することを防止するために、回路層の表面に、拡散防止層としてチタン層を形成することが考えられる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
ところで、特許文献4に記載された絶縁回路基板や、回路層の表面にチタン層を形成した絶縁回路基板においては、回路層に回路パターンを形成するためにエッチング処理を行うことがある。
ここで、銅やアルミニウムをエッチング処理する際に用いられるエッチング剤としては、例えば塩化第二鉄が用いられる。しかしながら、上述のエッチング剤においてはチタン層をエッチングすることができないため、チタン層を有する回路層をエッチング処理して回路パターンを形成することができないといった問題があった。
【0010】
この発明は、前述した事情に鑑みてなされたものであって、セラミックス基板の一方の面に配設されたアルミニウム層と、このアルミニウム層の前記セラミックス基板とは反対側の面に形成されたチタン層とを有する回路層に対して、回路パターンを精度良く、かつ、効率良く形成することができる絶縁回路基板の製造方
法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
前述の課題を解決するために、本発明の絶縁回路基板の製造方法は、セラミックス基板と、このセラミックス基板の一方の面に配設された回路パターンを有する回路層と、を備えた絶縁回路基板の製造方法であって、前記回路層は、前記セラミックス基板の一方の面に配設されたアルミニウム層と、このアルミニウム層の前記セラミックス基板とは反対側の面に形成されたチタン層と、を有しており、アルミニウム材を前記セラミックス基板に接合してアルミニウム層を形成するセラミックス/アルミニウム接合工程と、前記アルミニウム層又は前記アルミニウム材の表面に、チタン層となるチタン材を、前記回路パターン状に配設するチタン材配設工程と、前記アルミニウム層又は前記アルミニウム材の表面に前記チタン材を積層した状態で熱処理を行い、前記チタン層を形成するチタン層形成工程と、前記チタン層が形成された前記アルミニウム層を前記回路パターン状にエッチングするエッチング処理工程と、を備えていることを特徴としている。
【0012】
この構成の絶縁回路基板の製造方法によれば、チタン材配設工程及びチタン層形成工程と、を備えているので、アルミニウム層の表面にチタン層を回路パターン状に形成することができる。
また、前記チタン層が回路パターン状に形成された前記アルミニウム層に対してエッチング処理を行うエッチング処理工程を備えているので、チタン層がレジスト材として作用し、アルミニウム層を回路パターン状にエッチングすることができる。
このように、チタン層をレジスト材として使用することにより、レジスト材の塗布工程、硬化工程や剥離工程を省略することができ、エッチング処理工程を効率良く行うことができる。
以上により、セラミックス基板の一方の面に配設されたアルミニウム層と、このアルミニウム層の前記セラミックス基板とは反対側の面に形成されたチタン層を有する回路層に対して、回路パターンを精度良く、かつ、効率良く形成することができる。
【0013】
ここで、本発明の絶縁回路基板の製造方法においては、前記回路層は、前記チタン層の前記アルミニウム層とは反対側の面に積層された銅、ニッケルまたは銀からなる金属部材層を有しており、前記エッチング処理工程後に、回路パターン状に形成された前記チタン層の表面に前記金属部材層を形成する金属部材層形成工程を備えていてもよい。
なお、本発明において、金属部材層は、銅又は銅合金、ニッケル又はニッケル合金、もしくは銀又は銀合金で構成されたものとしている。
【0014】
この場合、回路パターン状に形成された前記チタン層の上に前記金属部材層を形成する金属部材層形成工程を有しているので、チタン層の上に、銅、ニッケルまたは銀からなる金属部材層を形成することができる。
以上により、セラミックス基板の一方の面に配設されたアルミニウム層と、このアルミニウム層の前記セラミックス基板とは反対側の面にチタン層を介して積層された銅、ニッケルまたは銀からなる金属部材層を有する回路層に対して、回路パターンを精度良く、かつ、効率良く形成することができる。
【0015】
また、本発明の絶縁回路基板の製造方法においては、前記金属部材層形成工程の前に、前記チタン層の表面を洗浄するチタン層洗浄工程を備えていることが好ましい。
この場合、前記チタン層の表面を洗浄することにより、前記チタン層の上に金属部材層を確実に形成することができる。
【0016】
さらに、本発明の絶縁回路基板の製造方法においては、前記セラミックス/アルミニウム接合工程の後に、前記チタン材配設工程及び前記チタン層形成工程を実施する構成としてもよい。
この場合、セラミックス基板とアルミニウム板とを接合してアルミニウム層を形成した後に、このアルミニウム層の上にチタン層を回路パターン状に形成することができる。
【0017】
また、本発明の絶縁回路基板の製造方法においては、前記チタン層形成工程の後に、前記セラミックス/アルミニウム接合工程を実施する構成としてもよい。
この場合、アルミニウム板の上にチタン層を回路パターン状に形成した上で、アルミニウム板とセラミックス基板とを接合することができる。
【0018】
さらに、本発明の絶縁回路基板の製造方法においては、前記チタン層形成工程と、前記セラミックス/アルミニウム接合工程と、を同時に実施する構成としてもよい。
この場合、前記チタン層形成工程と、前記セラミックス/アルミニウム接合工程と、を同時に実施することで、回路パターンを有する絶縁回路基板を効率良く製造することができる。
【0019】
また、本発明の絶縁回路基板の製造方法においては、前記チタン材配設工程の前に、前記アルミニウム層又は前記アルミニウム材の表面を洗浄するアルミニウム洗浄工程を備えていることが好ましい。
この場合、前記アルミニウム層又は前記アルミニウム材の表面を洗浄することにより、前記アルミニウム層又は前記アルミニウム材とチタン材とを確実に接合してチタン層を形成することができる。
【0020】
また、本発明の絶縁回路基板の製造方法においては、前記チタン材配設工程の前に、前記アルミニウム層又は前記アルミニウム材のうち前記チタン層が形成される側の面に、Siを0.03mass%以上1.0mass%以下の範囲内で含有するSi濃化層を形成するSi濃化層形成工程を備えていることが好ましい。
この場合、前記アルミニウム層又は前記アルミニウム材のうち前記チタン層が形成される側の面に上述のSi濃化層を形成することにより、チタン層とアルミニウム層との界面においてAl
3TiにSiを固溶させることができ、硬いAl
3Tiが必要以上に形成されることを抑制でき、チタン層とアルミニウム層との接合界面における割れの発生を抑制することができる。
【発明の効果】
【0023】
本発明によれば、セラミックス基板の一方の面に配設されたアルミニウム層と、このアルミニウム層の前記セラミックス基板とは反対側の面に形成されたチタン層とを有する回路層に対して、回路パターンを精度良く、かつ、効率良く形成することができる絶縁回路基板の製造方
法を提供することが可能となる。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下に、本発明の実施形態について、添付した図面を参照して説明する。
【0026】
(第一の実施形態)
図1に、本発明の第一の実施形態である絶縁回路基板10を用いたパワーモジュール1を示す。
このパワーモジュール1は、絶縁回路基板10と、この絶縁回路基板10の一方の面(
図1において上面)に第1はんだ層2を介して接合された半導体素子3と、絶縁回路基板10の下側に第2はんだ層42を介して接合されたヒートシンク41と、を備えている。
【0027】
半導体素子3は、Si等の半導体材料で構成されている。絶縁回路基板10と半導体素子3とを接合する第1はんだ層2は、例えばSn−Ag系、Sn−Cu系、Sn−In系、若しくはSn−Ag−Cu系のはんだ材(いわゆる鉛フリーはんだ材)とされている。
【0028】
ヒートシンク41は、絶縁回路基板10側の熱を放散するためのものである。ヒートシンク41は、銅又は銅合金で構成されており、本実施形態では無酸素銅で構成されている。絶縁回路基板10とヒートシンク41とを接合する第2はんだ層42は、例えばSn−Ag系、Sn−Cu系、Sn−In系、若しくはSn−Ag−Cu系のはんだ材(いわゆる鉛フリーはんだ材)とされている。
【0029】
そして、本実施形態に係る絶縁回路基板10は、
図1及び
図2に示すように、セラミックス基板11と、このセラミックス基板11の一方の面(
図1及び
図2において上面)に配設された回路層20と、セラミックス基板11の他方の面(
図1及び
図2において下面)に配設された金属層30と、を備えている。
【0030】
セラミックス基板11は、絶縁性の高いAlN(窒化アルミニウム)、Si
3N
4(窒化ケイ素)、Al
2O
3(アルミナ)等で構成されている。本実施形態では、強度に優れたSi
3N
4(窒化ケイ素)で構成されている。また、セラミックス基板11の厚さは、0.2〜1.5mmの範囲内に設定されており、本実施形態では、0.32mmに設定されている。
【0031】
回路層20は、
図1及び
図2に示すように、セラミックス基板11の一方の面に配設されたアルミニウム層21と、このアルミニウム層21の一方の面にチタン層25を介して積層された銅層22(金属部材層)と、を有している。
ここで、回路層20におけるアルミニウム層21の厚さは、0.1mm以上1.0mm以下の範囲内に設定されており、本実施形態では0.4mmに設定されている。
また、回路層20における銅層22の厚さは、0.1mm以上6.0mm以下の範囲内に設定されており、本実施形態では、1.0mmに設定されている。
そして、この回路層20には、
図2に示すように、回路パターンが形成されている。
【0032】
金属層30は、
図1及び
図2に示すように、セラミックス基板11の他方の面に配設されたアルミニウム層31と、このアルミニウム層31の他方の面にチタン層35を介して積層された銅層32(金属部材層)と、を有している。
ここで、金属層30におけるアルミニウム層31の厚さは、0.1mm以上3.0mm以下の範囲内に設定されており、本実施形態では0.4mmに設定されている。
また、金属層30における銅層32の厚さは、0.1mm以上6.0mm以下の範囲内に設定されており、本実施形態では、1.0mmに設定されている。
【0033】
ここで、アルミニウム層21、31は、
図5に示すように、セラミックス基板11の一方の面及び他方の面に、アルミニウム板51、61が接合されることにより形成されている。
また、アルミニウム層21,31となるアルミニウム板51、61は、純度が99mass%以上のアルミニウム(2Nアルミニウム)で構成されている。なお、Siの含有量は0.03mass%以上1.0mass%以下の範囲内とされている。
【0034】
銅層22、32は、アルミニウム層21、31の一方の面及び他方の面に、チタン層25、35を介して銅又は銅合金からなる銅板(金属部材)が接合されることにより形成されている。本実施形態においては、銅層22、32を構成する銅板(金属部材)は、無酸素銅の圧延板とされている。
【0035】
そして、アルミニウム層21、31とチタン層25、35との接合界面には、
図3に示すように、Al−Ti−Si層26、36が形成されている。
このAl−Ti−Si層26、36は、アルミニウム層21、31のAl原子と、チタン層25、35のTi原子とが相互拡散することによって形成されたAl
3Tiに、アルミニウム層21、31のSiが固溶することにより形成されたものである。
Al−Ti−Si層26、36の厚さは、0.5μm以上10μm以下に設定されており、本実施形態においては3μmとされている。
【0036】
このAl−Ti−Si層26、36は、
図3に示すように、チタン層25、35側に形成された第1Al−Ti−Si層26A、36Aと、アルミニウム層21,31側に形成された第2Al−Ti−Si層26B、36Bと、を備えている。すなわち、アルミニウム層21、31と銅層22、32との接合部には、チタン層25、35と、第1Al−Ti−Si層26A、36Aと、第2Al−Ti−Si層26B、36Bとが形成されているのである。
【0037】
これら、第1Al−Ti−Si層26A、36Aと第2Al−Ti−Si層26B、36Bは、上述のようにAl
3TiにSiが固溶したAl−Ti−Si相からなり、第2Al−Ti−Si層26B、36BのSi濃度が、第1Al−Ti−Si層26A、36AのSi濃度よりも低くなっている。なお、本実施形態において、第1Al−Ti−Si層26A、36A及び第2Al−Ti−Si層26B、36Bに含まれるSiは、後述するようにアルミニウム層21、31に拡散されたSiがAl−Ti−Si層26、36中に拡散し、濃化したものである。
第1Al−Ti−Si層26A、36AのSi濃度は、10at%以上30at%以下とされており、本実施形態では20at%とされている。第2Al−Ti−Si層26B、36BのSi濃度は、1at%以上10at%以下とされており、本実施形態では3at%とされている。
【0038】
次に、本実施形態である絶縁回路基板10の製造方法について、
図4及び
図5を参照して説明する。
【0039】
(チタン材配設工程S01)
図4及び
図5に示すように、アルミニウム板51、61の表面にチタン材55、65を配設する。このとき、回路層20となるアルミニウム板51の表面には、チタン材55を回路パターン状に配設する。ここで、チタン材55を回路パターン状に配設する際には、蒸着やイオンプレーティング等の成膜法を適用してもよい。この場合、メタルマスクを用いてチタン膜を成膜することで、チタン材55を回路パターン状に配設することができる。また、チタン箔を回路パターン状に配設してもよい。
なお、金属層30となるアルミニウム板61の表面にチタン材65を配設する場合には、チタン箔を配設することが好ましい。
ここで、チタン材55、65の厚さは7μm以上20μm以下の範囲内とすることが好ましい。
【0040】
(チタン層形成工程及びセラミックス/アルミニウム接合工程S02)
次いで、
図4及び
図5に示すように、セラミックス基板11の一方の面にアルミニウム板51及びチタン材55を配設し、セラミックス基板11の他方の面にアルミニウム板61とチタン材65を配設する。このとき、アルミニウム板51とセラミックス基板11、アルミニウム板61とセラミックス基板11の間には、Al−Siろう材を介在させる。
そして、積層方向に加圧(荷重3〜20kgf/cm
2)した状態で真空加熱炉内に配置し加熱する。ここで、真空加熱炉内の圧力は10
−6Pa以上10
−3Pa以下の範囲内に、加熱温度は600℃以上640℃以下、保持時間は30分以上180分以下の範囲内に設定されることが好ましい。
【0041】
これにより、アルミニウム板51とセラミックス基板11及びセラミックス基板11とアルミニウム板61を接合する(セラミックス/アルミニウム接合工程)。
そして、アルミニウム板51とチタン材55、アルミニウム板61とチタン材65を接合し、チタン層25、35を形成する(チタン層形成工程)。このとき、アルミニウム板51とチタン材55、アルミニウム板61とチタン材65との接合界面にはAl
3Tiが形成される。なお、アルミニウム板51、61がSiを0.03mass%以上1.0mass%以下の範囲で含有しているので、Al
3TiにSiが固溶し、上述のAl−Ti−Si層26、36が形成される。
なお、回路層20となるアルミニウム板51にはチタン層25が回路パターン状に形成されることになる。
【0042】
(エッチング処理工程S03)
次に、
図4及び
図5に示すように、チタン層25が回路パターン状に形成されたアルミニウム層21に対してエッチング処理を行う。このとき、エッチング剤としては、塩化第二鉄を使用する。例えば、エッチング剤(エッチング液)の塩化第二鉄の濃度は35wt%〜60wt%とし、エッチング温度40℃〜60℃で2分〜20分の条件でエッチングを行うことができる。
ここで、チタン層25は、塩化第二鉄によってほとんどエッチングされないことから、チタン層25がレジスト材として作用することになる。すなわち、チタン層25が形成された部分はエッチングされず、チタン層25が形成されていない部分のみがエッチングされることになる。これにより、アルミニウム層21についても回路パターン状に形成される。
【0043】
(チタン層洗浄工程S04)
次に、
図4に示すように、チタン層25、35のうち銅層22、32が配設される面を洗浄する。ここで、チタン層25、35の洗浄には、アンモニアと過酸化水素の混合液を用いる。例えば、アンモニア10wt%、過酸化水素3wt%、EDTA(エチレンジアミン四酢酸)12wt%の水溶液を用いることができる。洗浄の条件として、温度40℃〜50℃、10分〜30分で行うとよい。
【0044】
(銅層形成工程S05)
次に、チタン層25、35の表面に銅板(金属部材)を接合し、銅層22、32を形成する。このとき、チタン層25、35と銅板(金属部材)を接合する際には、固相拡散接合法を適用してもよいし、ろう材を用いて接合してもよい。
例えば、固相拡散接合を適用する場合、チタン層25、35と銅板(金属部材)を積層し、積層方向に加圧(荷重3〜20kgf/cm
2)した状態で、真空加熱炉内の圧力は10
−6Pa以上10
−3Pa以下の範囲内に、加熱温度は600℃以上650℃以下、より好ましくは620℃以上643℃以下、保持時間は30分以上180分以下、より好ましくは60分以上120分以下の範囲内で接合するとよい。
【0045】
ろう材を用いて接合する場合、Cu−P−Snろう材、Cu−P−Sn−Ni系ろう材、Cu−P−Sn−Fe系ろう材、Cu−P−Sn−Mn系ろう材、Cu−P−Sn−Cr系ろう材などのろう材箔を、チタン層25、35と銅板(金属部材)との間に配置し、積層方向に加圧(荷重3〜20kgf/cm
2)した状態で、真空加熱炉内の圧力は10
−6Pa以上10
−3Pa以下の範囲内に、加熱温度は600℃以上650℃以下、より好ましくは620℃以上643℃以下、保持時間は15分以上120分以下、より好ましくは30分以上90分以下の範囲内で接合するとよい。
このとき、回路層20側においては、回路パターン状に形成されたチタン層25の上に、銅板(金属部材)を配設して接合する。
【0046】
上述の工程により、アルミニウム層21とチタン層25と銅層22とが積層されてなる回路層20に回路パターンを形成し、本実施形態である絶縁回路基板10が製造される。
【0047】
以上のような構成とされた本実施形態に係る絶縁回路基板10の製造方法によれば、アルミニウム板51の表面にチタン層25となるチタン材55を回路パターン状に配設するチタン材配設工程S01を備えているので、その後のチタン層形成工程及びセラミックス/アルミニウム接合工程S02により、アルミニウム層21の表面にチタン層25を回路パターン状に形成することができる。
【0048】
次に、チタン層25が形成されたアルミニウム層21に対してエッチング処理を行うエッチング処理工程S03を備えているので、チタン層25がレジスト材として作用し、アルミニウム層21を回路パターン状にエッチングすることができる。すなわち、チタン層25をレジスト材として使用することにより、レジスト材の塗布工程、硬化工程及び剥離工程を省略することができ、エッチング処理工程S03を効率良く行うことができる。
【0049】
そして、回路パターン状に形成されたチタン層25の上に銅板(金属部材)を接合して銅層22を形成する銅層形成工程S05を有しているので、チタン層25の上に銅層22を回路パターン状に形成することができる。
以上により、アルミニウム層21とチタン層25と銅層22が積層されてなる回路層20に対して、回路パターンを精度良く、かつ、効率良く形成することができる。
【0050】
また、本実施形態においては、チタン層形成工程と、セラミックス/アルミニウム接合工程と、を同時に実施するチタン層形成工程及びセラミックス/アルミニウム接合工程S02を有しているので、回路パターンを有する絶縁回路基板10を効率良く製造することができる。
【0051】
また、本実施形態である絶縁回路基板10の製造方法においては、銅層形成工程S05の前に、チタン層25の表面を洗浄するチタン層洗浄工程S04を備えているので、チタン層25と銅板(金属部材)とを確実に接合でき、銅層22を確実に形成することができる。
【0052】
さらに、本実施形態である絶縁回路基板10の製造方法においては、アルミニウム板51、61がSiを0.03mass%以上1.0mass%以下の範囲内で含有しているので、チタン層25、35とアルミニウム層21、31との接合界面において、Al
3TiにSiが固溶し、上述のAl−Ti−Si層26、36が形成される。このAl−Ti−Si層26、36は、比較的硬さが低いため、ヒートサイクルが負荷された際に、回路層20及び金属層30にクラックが発生することを抑制することができる。
【0053】
さらに、チタン層25、35側に形成された第1Al−Ti−Si層26A,36AのSi濃度が、アルミニウム層21、31側に形成された第2Al−Ti−Si層26B、36BのSi濃度よりも高いので、Si濃度が高い第1Al−Ti−Si層26A,36AによってTi原子がアルミニウム層21、31側に拡散することが抑制され、Al−Ti−Si層26、36の厚さを薄くすることができる。そして、このようにAl−Ti−Si層26、36の厚さを薄くすることで、ヒートサイクルが負荷された際にアルミニウム層21、31と銅層22,32との接合部に割れが発生することを抑制可能となる。
【0054】
また、アルミニウム層21、31側に形成された第2Al−Ti−Si層26B、36Bに含まれるSi濃度が1at%以上10at%以下とされているので、Al原子がチタン層25,35側に過剰に拡散することが抑制され、第2Al−Ti−Si層26B、36Bの厚さを薄くすることができる。
さらには、チタン層25、35側に形成された第1Al−Ti−Si層26A,36Aに含まれるSi濃度が10at%以上30at%以下とされているので、Ti原子がアルミニウム層21、31側に過剰に拡散することが抑制され、第1Al−Ti−Si層26A,36Aの厚さを薄くすることができる。
【0055】
さらに、本実施形態では、回路層20及び金属層30の表面に、比較的変形抵抗の大きい銅層22,32が形成されているので、ヒートサイクルが負荷された際に回路層20及び金属層30の表面の変形が抑制され、半導体素子3と回路層20を接合する第1はんだ層2及びヒートシンク41と金属層30を接合する第2はんだ層42にクラック等が生じることを抑制でき、接合信頼性を向上できる。
また、熱伝導率の良好な銅層22,32が回路層20及び金属層30の表面に形成されているので、半導体素子3からの熱を面方向に拡げて効率的にヒートシンク41側に伝達することができる。
【0056】
(第二の実施形態)
次に、本発明の第二の実施形態について説明する。なお、第一の実施形態と同一の構成のものについては、同一の符号を付して記載し、詳細な説明を省略する。
図6に、本発明の第二の実施形態に係る絶縁回路基板110を備えたパワーモジュール101を示す。
このパワーモジュール101は、絶縁回路基板110と、この絶縁回路基板110の一方の面(
図6において上面)にはんだ層2を介して接合された半導体素子3と、絶縁回路基板110の下側に接合されたヒートシンク141と、を備えている。
【0057】
ヒートシンク141は、絶縁回路基板110側の熱を放散するためのものである。ヒートシンク141は、アルミニウム又はアルミニウム合金で構成されており、本実施形態ではA6063合金で構成されている。絶縁回路基板110とヒートシンク141は、ろう材を用いて接合されている。
【0058】
絶縁回路基板110は、
図6及び
図7に示すように、セラミックス基板11と、このセラミックス基板11の一方の面に配設された回路層120と、セラミックス基板11の他方の面に配設された金属層130と、を備えている。
【0059】
回路層120は、
図6及び
図7に示すように、セラミックス基板11の一方の面に配設されたアルミニウム層121と、このアルミニウム層121の一方の面にチタン層125を介して積層された銅層122(金属部材層)と、を有している。
ここで、回路層120におけるアルミニウム層121の厚さは、0.1mm以上1.0mm以下の範囲内に設定されており、本実施形態では0.6mmに設定されている。
また、回路層120における銅層122の厚さは、0.1mm以上6.0mm以下の範囲内に設定されており、本実施形態では、1.5mmに設定されている。
そして、この回路層120には、
図7に示すように、回路パターンが形成されている。
【0060】
ここで、アルミニウム層121は、
図9に示すように、セラミックス基板11の一方の面にアルミニウム板151が接合されることにより形成されている。
ここで、アルミニウム層121となるアルミニウム板151は、純度が99mass%以上のアルミニウム(2Nアルミニウム)で構成されている。なお、Siの含有量は0.03mass%以上1.0mass%以下の範囲内とされている。
【0061】
銅層122は、
図9に示すように、アルミニウム層121の一方の面に、チタン層125を介して銅又は銅合金からなる銅板(金属部材)が接合されることにより形成されている。本実施形態においては、銅層122を構成する銅板(金属部材)は、無酸素銅の圧延板とされている。
【0062】
そして、アルミニウム層121とチタン層125との接合界面には、第一の実施形態と同様に、Al
3TiにSiが固溶したAl−Ti−Si層が形成されている。このAl−Ti−Si層は、アルミニウム層121のAl原子と、チタン層125のTi原子とが相互拡散することによってAl
3Tiが形成されるとともに、アルミニウム層121のSiが、このAl
3Tiに固溶することで形成されている。
【0063】
金属層130は、
図9に示すように、セラミックス基板11の一方の面にアルミニウム板161が接合されることにより形成されている。本実施形態において、金属層130は、純度99.99mass%以上のアルミニウム(4Nアルミニウム)の圧延板を接合することで形成されている。なお、接合されるアルミニウム板161の厚さは0.1mm以上1.0mm以下の範囲内に設定されており、本実施形態では、0.6mmに設定されている。
【0064】
次に、本実施形態である絶縁回路基板110の製造方法について、
図8、
図9を参照して説明する。
【0065】
(セラミックス/アルミニウム接合工程S101)
まず、
図8及び
図9に示すように、セラミックス基板11の一方の面に、Al−Si系のろう材箔(図示なし)を介してアルミニウム板151を積層する。また、セラミックス基板11の他方の面にろう材箔(図示なし)を介してアルミニウム板161を積層する。
次いで、積層したアルミニウム板151、セラミックス基板11及びアルミニウム板161を、積層方向に加圧(荷重3〜20kgf/cm
2)した状態で真空加熱炉内に配置し加熱する。
これにより、アルミニウム板151とセラミックス基板11及びセラミックス基板11とアルミニウム板161を接合し、アルミニウム層121及び金属層130を形成する。
【0066】
(アルミニウム洗浄工程S102)
次に、
図8に示すように、アルミニウム層121のうちチタン材155が配設される側の面を洗浄する。なお、アルミニウム層121の洗浄は、例えば、硫酸5wt%〜10wt%水溶液又は硝酸5wt%〜10wt%水溶液を用い、温度20℃〜30℃、時間30秒〜60秒で行うことができる。
【0067】
(チタン材配設工程S103)
次に、
図8及び
図9に示すように、アルミニウム層121の表面にチタン材155を回路パターン状に配設する。ここで、チタン材155を回路パターン状に配設する際には、蒸着やイオンプレーティング等の成膜法を適用してもよい。この場合、メタルマスクを用いてチタン膜を成膜することで、チタン材155を回路パターン状に配設することができる。また、チタン箔を回路パターン状に配設してもよい。
ここで、チタン材155の厚さは7μm以上20μm以下の範囲内とすることが好ましい。
【0068】
(チタン層形成工程S104)
次に、
図8及び
図9に示すように、アルミニウム層121の表面にチタン材155を配設した状態で、積層方向に加圧(荷重3〜20kgf/cm
2)した状態で真空加熱炉内に配置し加熱する。ここで、真空加熱炉内の圧力は10
−6Pa以上10
−3Pa以下の範囲内に、加熱温度は600℃以上640℃以下、保持時間は30分以上180分以下の範囲内に設定されることが好ましい。
これにより、アルミニウム層121とチタン材155が接合され、チタン層125が回路パターン状に形成される。このとき、アルミニウム層121とチタン層125との接合界面には上述のAl−Ti−Si層が形成される。
【0069】
(エッチング処理工程S105)
次に、
図8及び
図9に示すように、チタン層125が回路パターン状に形成されたアルミニウム層121に対してエッチング処理を行う。エッチング剤としては、塩化第二鉄を使用する。このとき、チタン層125をレジスト膜として作用させることにより、アルミニウム層121を回路パターン状にエッチングする。
【0070】
(チタン層洗浄工程S106)
次に、
図8に示すように、チタン層125のうち銅層122が配設される面を洗浄する。ここで、チタン層125の洗浄は、第一実施形態と同様に行うことができる。
【0071】
(銅層形成工程S107)
次に、回路パターン状に形成されたチタン層125の表面に銅板(金属部材)を接合し、銅層122を形成する。このとき、チタン層125と銅板(金属部材)を接合する際には、第一実施形態と同様に、固相拡散接合法を適用してもよいし、ろう材を用いて接合してもよい。
【0072】
上述の工程により、アルミニウム層121とチタン層125と銅層122とが積層されてなる回路層120に回路パターンを形成し、本実施形態である絶縁回路基板110が製造される。
【0073】
以上のような構成とされた本実施形態に係る絶縁回路基板110の製造方法によれば、第一の実施形態と同様に、チタン材配設工程S103とチタン層形成工程S104とエッチング処理工程S105と銅層形成工程S107とを備えているので、アルミニウム層121とチタン層125と銅層122が積層されてなる回路層120に対して、回路パターンを精度良く、かつ、効率良く形成することができる。また、エッチング処理工程S105においてチタン層125をレジスト材として使用しているので、レジスト材の塗布工程や剥離工程を省略することができ、エッチング処理工程S105を効率良く行うことができる。
【0074】
(第三の実施形態)
次に、本発明の第三の実施形態について説明する。なお、第一の実施形態及び第二の実施形態と同一の構成のものについては、同一の符号を付して記載し、詳細な説明を省略する。
図10に、本発明の第三の実施形態に係る絶縁回路基板210を備えた熱電変換モジュール201を示す。
【0075】
この熱電変換モジュール201は、熱電素子203と、この熱電素子203の一端側及び他端側にそれぞれ配設された絶縁回路基板210と、を備えている。
熱電素子203は、絶縁回路基板210の回路層220に対して接合層202を介して接合されている。ここで、接合層202は、銀粒子を含有する銀ペーストの焼成体とされている。
【0076】
絶縁回路基板210は、
図10及び
図11に示すように、セラミックス基板11と、このセラミックス基板11の一方の面に配設された回路層220と、を備えている。
【0077】
回路層220は、
図10及び
図11に示すように、セラミックス基板11の一方の面に配設されたアルミニウム層221と、このアルミニウム層221の一方の面に形成されたチタン層225と、を有している。
ここで、回路層220におけるアルミニウム層221の厚さは、0.1mm以上1.0mm以下の範囲内に設定されており、本実施形態では0.6mmに設定されている。
そして、この回路層220には、
図11に示すように、回路パターンが形成されている。
【0078】
ここで、アルミニウム層221は、
図13に示すように、セラミックス基板11の一方の面にアルミニウム板251が接合されることにより形成されている。
アルミニウム層221となるアルミニウム板251は、純度が99.99mass%以上のアルミニウム(4Nアルミニウム)で構成されている。なお、アルミニウム層221のチタン層225側の界面には、Siの含有量が0.03mass%以上1.0mass%以下の範囲内とされたSi濃化層が形成されている。
【0079】
そして、アルミニウム層221とチタン層225との接合界面には、第一の実施形態及び第二の実施形態と同様に、Al
3TiにSiが固溶したAl−Ti−Si層が形成されている。このAl−Ti−Si層は、アルミニウム層221のAl原子と、チタン層225のTi原子とが相互拡散することによってAl
3Tiが形成されるとともに、Si濃化層のSiが、このAl
3Tiに固溶することで形成されている。
【0080】
次に、本実施形態である絶縁回路基板210の製造方法について、
図12、
図13を参照して説明する。
【0081】
(Si濃化層形成工程S201)
まず、純度が99.99mass%以上のアルミニウム(4Nアルミニウム)で構成されたアルミニウム板251の一方の面に、Siを0.03mass%以上1.0mass%以下の範囲内で含有するSi濃化層を形成する。
具体的には、アルミニウム板251の一方の面にSiを含有するSi材252(例えばAl−Siろう材等)を配設して加熱処理することにより、Si材のSiをアルミニウム板251側へと拡散させることで、上述のSi濃化層を形成する。
ここで、Si濃度は、チタン層が形成される表面をEPMAの定量分析で5点測定し、その平均値とした。なお、Si濃度はAlとSiの合計量を100とした時の濃度とした。
【0082】
(チタン材配設工程S202)
次に、
図12及び
図13に示すように、アルミニウム板151の一方の面(Si濃化層が形成された面)にチタン材255を回路パターン状に配設する。ここで、チタン材255を回路パターン状に配設する際には、蒸着やイオンプレーティング等の成膜法を適用してもよい。この場合、メタルマスクを用いてチタン膜を成膜することで、チタン材255を回路パターン状に配設することができる。また、チタン箔を回路パターン状に配設してもよい。
ここで、チタン材255の厚さは7μm以上20μm以下の範囲内とすることが好ましい。
【0083】
(チタン層形成工程S203)
次に、
図12及び
図13に示すように、アルミニウム板251の表面にチタン材255を配設し、積層方向に加圧(荷重3〜20kgf/cm
2)した状態で真空加熱炉内に配置し加熱する。ここで、真空加熱炉内の圧力は10
−6Pa以上10
−3Pa以下の範囲内に、加熱温度は600℃以上640℃以下、保持時間は30分以上180分以下の範囲内に設定されることが好ましい。
これにより、アルミニウム板251とチタン材255が接合され、チタン層225が回路パターン状に形成される。このとき、アルミニウム板251とチタン層225との接合界面には上述のAl−Ti−Si層が形成される。
【0084】
(セラミックス/アルミニウム接合工程S204)
次に、
図12及び
図13に示すように、セラミックス基板11の一方の面に、Al−Si系のろう材箔(図示なし)を介して、チタン層225が形成されたアルミニウム板251を積層する。
次いで、積層したアルミニウム板251、セラミックス基板11を、積層方向に加圧(荷重3〜20kgf/cm
2)した状態で真空加熱炉内に配置し加熱する。
これにより、アルミニウム板251とセラミックス基板11を接合し、アルミニウム層221を形成する。
【0085】
(エッチング処理工程S205)
次に、
図12及び
図13に示すように、チタン層225が回路パターン状に形成されたアルミニウム層221に対してエッチング処理を行う。エッチング剤としては、塩化第二鉄を使用する。このとき、チタン層225をレジスト膜として作用させることにより、アルミニウム層221を回路パターン状にエッチングする。
【0086】
上述の工程により、アルミニウム層221とチタン層225とが積層されてなる回路層220に回路パターンを形成し、本実施形態である絶縁回路基板210が製造される。
【0087】
そして、熱電素子203の一端側及び他端側に、銀ペーストを介して、それぞれ絶縁回路基板210を、回路層220が熱電素子203側を向くように積層し、加熱することにより、熱電素子203の一端側及び他端側にそれぞれ絶縁回路基板210を接合する。これにより、
図10に示す熱電変換モジュール201が製造される。
【0088】
以上のような構成とされた本実施形態に係る絶縁回路基板210の製造方法によれば、チタン材配設工程S202とチタン層形成工程S203とエッチング処理工程S205とを備えているので、アルミニウム層221とチタン層225とが積層されてなる回路層220に対して、回路パターンを精度良く、かつ、効率良く形成することができる。また、エッチング処理工程S205においてチタン層225をレジスト材として使用しているので、レジスト材の塗布工程や剥離工程を省略することができ、エッチング処理工程S205を効率良く行うことができる。
【0089】
また、本実施形態においては、純度99.99mass%以上のアルミニウム(4Nアルミニウム)からなるアルミニウム板251のチタン層225が形成される側の面に、Siを0.03mass%以上1.0mass%以下の範囲内で含有するSi濃化層を形成するSi濃化層形成工程S201を有しているので、回路層220のアルミニウム層221を純度99.99mass%以上のアルミニウム(4Nアルミニウム)で構成しても、アルミニウム層221とチタン層225との間に、第一の実施形態及び第二の実施形態と同様にAl−Ti−Si層を形成させることが可能となる。
【0090】
また、本実施形態に係る絶縁回路基板210及び熱電変換モジュール201によれば、アルミニウム層221のセラミックス基板11とは反対側の面にチタン層225が形成されているので、このチタン層225を拡散防止層として機能させることができる。よって、回路層211に搭載された熱電素子203に、アルミニウム層221のアルミニウムが拡散することを抑制することが可能となる。これにより、熱電素子203の特性の劣化を抑制することができる。
【0091】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明はこれに限定されることはなく、その発明の技術的思想を逸脱しない範囲で適宜変更可能である。
例えば、上記実施の形態では、アルミニウム層と、金属部材層として銅からなる銅層とが接合される場合について説明したが、銅層に代えて、ニッケル又はニッケル合金からなるニッケル層、もしくは銀又は銀合金からなる銀層が接合されても良い。
【0092】
銅層に代えてニッケル層を形成した場合には、はんだ付け性が良好となり、半導体素子やヒートシンクとの接合信頼性を向上できる。さらに、固相拡散接合によってニッケル層を形成する場合には、無電解めっき等でNiめっき膜を形成する際に行われるマスキング処理が不要なので、製造コストを低減できる。この場合、ニッケル層の厚さは1μm以上30μm以下とすることが望ましい。ニッケル層の厚さが1μm未満の場合には半導体素子やヒートシンクとの接合信頼性の向上の効果が無くなるおそれがあり、30μmを超える場合にはニッケル層が熱抵抗体となり効率的に熱を伝達できなくなるおそれがある。また、固相拡散接合によってニッケル層を形成する場合、固相拡散接合は、銅層を形成する場合と同様の条件で形成することができる。
【0093】
銅層に代えて銀層を形成した場合には、例えば酸化銀粒子と有機物からなる還元剤とを含む酸化銀ペーストを用いて半導体素子やヒートシンクを接合する際に、酸化銀が還元された銀と銀層とが同種の金属同士の接合となるため、接合信頼性を向上させることができる。さらには、熱伝導率の良好な銀層が形成されるので、熱を面方向に拡げて効率的に伝達することができる。この場合、銀層の厚さは1μm以上20μm以下とすることが望ましい。銀層の厚さが1μm未満の場合には半導体素子やヒートシンクとの接合信頼性を向上の効果が無くなるおそれがあり、20μmを超える場合には接合信頼性向上の効果が観られなくなり、コストの増加を招く。また、固相拡散接合によって銀層を形成する場合、固相拡散接合は、銅層を形成する場合と同様の条件で形成することができる。
【0094】
また、第一の実施形態及び第二の実施形態では、アルミニウム層となるアルミニウム板として、純度が99mass%以上の2NアルミニウムであってSi含有量が0.03mass%以上1.0mass%以下の範囲内のものを例に挙げて説明したが、これに限定されることはなく、他のアルミニウム材を用いてもよい。
ここで、純度99.99mass%以上の4Nアルミニウム等のようにSiを含有しないアルミニウム材を用いる場合には、第三の実施形態で示したように、事前にアルミニウム材のうちチタン層が形成される表面のSi濃度を0.03mass%〜1.0mass%に調整してもよい。ここで、Si濃度は、チタン層が形成される表面をEPMAの定量分析で5点測定し、その平均値とした。なお、Si濃度はAlとSiの合計量を100とした時の濃度とした。