(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6904097
(24)【登録日】2021年6月28日
(45)【発行日】2021年7月14日
(54)【発明の名称】苗移植機
(51)【国際特許分類】
A01C 11/02 20060101AFI20210701BHJP
【FI】
A01C11/02 303C
【請求項の数】6
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2017-123742(P2017-123742)
(22)【出願日】2017年6月23日
(65)【公開番号】特開2019-4776(P2019-4776A)
(43)【公開日】2019年1月17日
【審査請求日】2020年2月25日
(73)【特許権者】
【識別番号】000000125
【氏名又は名称】井関農機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100078031
【弁理士】
【氏名又は名称】大石 皓一
(74)【代理人】
【識別番号】100200942
【弁理士】
【氏名又は名称】岸本 高史
(72)【発明者】
【氏名】大久保 嘉彦
(72)【発明者】
【氏名】山根 暢宏
(72)【発明者】
【氏名】田▲崎▼ 昭雄
(72)【発明者】
【氏名】村並 昌実
(72)【発明者】
【氏名】東 幸太
【審査官】
大谷 純
(56)【参考文献】
【文献】
特開平04−325012(JP,A)
【文献】
米国特許第06325156(US,B1)
【文献】
特開平11−178413(JP,A)
【文献】
特開2010−075141(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A01C 11/00−14/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
苗株を所定位置に配給搬送する苗搬送装置(2)と、搬送された苗株を畝に植え付ける苗植付装置(3)と、植え付けられた苗株の根本の畝面を均す鎮圧装置(4)とを所定高さに備えた苗移植機において、
前記鎮圧装置(4)は、植付け位置の左右に配置した鎮圧部材(11,11)と、これら左右の鎮圧部材(11,11)をそれぞれ支持する左右の支持アーム(12,12)と、これら左右の支持アーム(12,12)を左右に連結する連結プレート(13)と、この連結プレート(13)を下方付勢可能に連結する鎮圧ロッド(14)とによって構成し、
前記連結プレート(13)は、前記左右の支持アーム(12,12)から等距離位置に軸支部(13a)を備え、この軸支部(13a)により左右回動可能に前記鎮圧ロッド(14)を介して機体に支持し、かつ、高さが異なる複数位置に前記軸支部(13a)を設けたことを特徴とする苗移植機。
【請求項2】
苗株を所定位置に配給搬送する苗搬送装置(2)と、搬送された苗株を畝に植え付ける苗植付装置(3)と、植え付けられた苗株の根本の畝面を均す鎮圧装置(4)とを所定高さに備えた苗移植機において、
前記鎮圧装置(4)は、植付け位置の左右に配置した鎮圧部材(11,11)と、これら左右の鎮圧部材(11,11)をそれぞれ支持する左右の支持アーム(12,12)と、これら左右の支持アーム(12,12)を左右に連結する連結プレート(13)と、この連結プレート(13)を下方付勢可能に連結する鎮圧ロッド(14)とによって構成し、
前記連結プレート(13)は、前記左右の支持アーム(12,12)から等距離位置に軸支部(13a)を備え、この軸支部(13a)により左右回動可能に前記鎮圧ロッド(14)を介して機体に支持し、かつ、前記軸支部(13a)の保持高さ位置をスライド調節可能な長穴(13b)を備えることを特徴とする苗移植機。
【請求項3】
機体に上下回動可能に連結した回動アーム(21)と、
この回動アーム(21)によって畝面に接地牽引可能に連結した回転部材であるローラ(22)とによって畝面高さを検出する畝面センサ(S1)を構成し、
この畝面センサ(S1)によって検出した畝面高さに合わせて車高を調節制御するとともに、
前記回動アーム(21)は、ローラ支持長が異なる複数位置にローラ軸支部(22a)を備えることを特徴とする請求項1または請求項2のいずれかに記載の苗移植機。
【請求項4】
前記ローラ(22)に接して細い棒状部材によるスクレーパ(24)を設けて付着した土を掻き落とし、
このスクレーパ(24)は、前記ローラ(22)の幅方向に傾斜して土を掻き寄せる斜行部(24a)を備えることを特徴とする請求項3に記載の苗移植機。
【請求項5】
機体に上下回動可能に連結した回動アーム(25)と、
この回動アーム(25)によって畝面に接地牽引可能に連結した回転部材であるクローラベルト機構(26)とによって畝面高さを検出する畝面センサ(S2)を構成し、
この畝面センサ(S2)によって検出した畝面高さに合わせて車高を調節制御することを特徴とする請求項1または請求項2のいずれかに記載の苗移植機。
【請求項6】
前記回転部材(22,26)に回転検知部材(27)を設けて畝面上の移動距離を算出可能に構成し、前記苗植付装置(3)を制御装置(C)により所定の設定株間で作動制御するとともに、前記苗植付装置(3)の作動間隔について、前記回転検知部材(27)による移動距離と設定株間とを比較し、差があれば前記苗植付装置(3)の作動タイミングを変更制御することを特徴とする請求項3または請求項5に記載の苗移植機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、植付部が苗株を植付けつつ畝面を鎮圧走行する苗移植機に関するものである。
【背景技術】
【0002】
先行特許文献1に示す苗移植機は、搬送装置が苗株を順次搬送し、植付クラッチが所定間隔ごとに入切を繰り返すことで苗植付装置が進退動作し、ポット苗から苗を取出した後に土中に貫入して植え付けする。
【0003】
このとき、苗の植付位置の周囲に持ち上げられた土を押し均す左右の鎮圧輪を備える。
この左右の鎮圧輪は、左右連結して一つの鎮圧ロッドで左右均等に付勢することで、土を適度に押し均すと共に、畝面の凹凸に合わせて上下動し、負荷による破損を防止する構造である。
【0004】
また、畝面の凹凸に追従接地する板状の畝面センサを苗植付装置の前方で上下回動可能に支持してセンサ幅範囲の畝面平均の機体高さを検知し、苗の植付深さを一定に保つように、左右の走行輪支持高さを変更制御する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許第5939211号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、畝の左右の高さが異なると、片側の鎮圧輪が畝面から離れてしまい、苗の他側方の土が押し均されず、苗の倒れ、地温の低下によって生育遅れ等の問題が生じる。
【0007】
また、畝面センサが一定幅の板状であることにより、機体の前進により畝面の土を前方に運んでしまい、負荷により畝面センサが変形し、正確に畝の凹凸を検知できなくなり、苗植付深さが不適切となる問題と合わせ、畝の表面を荒らしてしまい、植付不良を招くという問題があった。
【0008】
本発明の目的は、苗株を植付ける畝面に左右落差があっても、苗株の左右両側に同等の鎮圧力で畝面を押し均すことができる苗移植機を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
請求項
1に係る発明は、
苗株を所定位置に配給搬送する苗搬送装置(2)と、搬送された苗株を畝に植え付ける苗植付装置(3)と、植え付けられた苗株の根本の畝面を均す鎮圧装置(4)とを所定高さに備えた苗移植機において、
鎮圧装置(4)は、植付け位置の左右に配置した鎮圧部材(11,11)と、これら左右の鎮圧部材(11,11)をそれぞれ支持する左右の支持アーム(12,12)と、これら左右の支持アーム(12,12)を左右に連結する連結プレート(13)と、この連結プレート(13)を下方付勢可能に連結する鎮圧ロッド(14)とによって構成し、
連結プレート(13)は、前記左右の支持アーム(12,12)から等距離位置に軸支部(13a)を備え、この軸支部(13a)により左右回動可能に鎮圧ロッド(14)を介して機体に支持し、かつ、高さが異なる複数位置に軸支部(13a)を設けたことを特徴とする。
【0011】
請求項
2に係る発明は、
苗株を所定位置に配給搬送する苗搬送装置(2)と、搬送された苗株を畝に植え付ける苗植付装置(3)と、植え付けられた苗株の根本の畝面を均す鎮圧装置(4)とを所定高さに備えた苗移植機において、鎮圧装置(4)は、植付け位置の左右に配置した鎮圧部材(11,11)と、これら左右の鎮圧部材(11,11)をそれぞれ支持する左右の支持アーム(12,12)と、これら左右の支持アーム(12,12)を左右に連結する連結プレート(13)と、この連結プレート(13)を下方付勢可能に連結する鎮圧ロッド(14)とによって構成し、連結プレート(13)は、前記左右の支持アーム(12,12)から等距離位置に軸支部(13a)を備え、この軸支部(13a)により左右回動可能に鎮圧ロッド(14)を介して機体に支持し、かつ、軸支部13aの保持高さ位置をスライド調節可能な長穴13bを備えることを特徴とする。
【0012】
請求項
3に係る発明は、請求項1
または請求項2に係る発明において、機体に上下回動可能に連結した回動アーム21と、この回動アーム21によって畝面に接地牽引可能に連結した回転部材であるローラ22とによって畝面高さを検出する畝面センサS1を構成し、この畝面センサS1によって検出した畝面高さに合わせて車高を調節制御するとともに、回動アーム21は、ローラ支持長が異なる複数位置にローラ軸支部22aを備えることを特徴とする。
【0013】
請求項
4に係る発明は、請求項
3に係る発明において、ローラ22に接して細い棒状部材によるスクレーパ24を設けて付着した土を掻き落とし、このスクレーパ24は、ローラ22の幅方向に傾斜して土を掻き寄せる斜行部24aを備えることを特徴とする。
【0014】
請求項
5に係る発明は、請求項1
または請求項2に係る発明において、機体に上下回動可能に連結した回動アーム25と、この回動アーム25によって畝面に接地牽引可能に連結した回転部材であるクローラベルト機構26とによって畝面高さを検出する畝面センサS2を構成し、この畝面センサS2によって検出した畝面高さに合わせて車高を調節制御することを特徴とする。
【0015】
請求項
6に係る発明は、請求項
3または
請求項5に係る発明において、回転部材22,26に回転検知部材27を設けて畝面上の移動距離を算出可能に構成し、苗植付装置3を制御装置Cにより所定の設定株間で作動制御するとともに、苗植付装置3の作動間隔について、回転検知部材27による移動距離と設定株間とを比較し、差があれば苗植付装置3の作動タイミングを変更制御することを特徴とする。
【発明の効果】
【0016】
請求項1に係る発明は、左右の鎮圧部材11,11は、左右の支持アーム12,12を介して連結プレート13によって左右に支持され、また、連結プレート13は、左右の支持アーム12,12から等距離位置の軸支部13aに左右回動可能に連結する鎮圧ロッド14を介して機体に支持されることから、左右の鎮圧部材11,11の鎮圧反力が釣り合って連結プレート13が安定した場合に限って鎮圧ロッド14の付勢力が作用し、したがって、畝面の左右落差等によっても、連結プレート13の左右回動により左右の鎮圧部材11,11がバランスして同等の鎮圧力で畝面を鎮圧することができるので、鎮圧不良による苗の倒れや、地温の下がり等による生育不良を防止することができる。
【0017】
加えて、鎮圧ロッド14を連結する軸支部13aの高さ位置により、上側ほど連結プレート13の左右回動幅が大きくなることから、選択により、畝面の左右落差の程度に合わせた鎮圧が可能となる。
【0018】
請求項
2に係る発明は
、連結プレート13は、鎮圧ロッド14の連結高さ位置が上側ほど左右回動幅が大きくなることから、長穴13bの範囲内の高さ位置調節により、畝面の左右落差の程度に合わせて確実な鎮圧が可能となる。
【0019】
請求項
3に係る発明は、請求項1
または請求項2に係る発明の効果に加え、畝面センサS1は、機体に連結した回動アーム21が、回転部材であるローラ22を畝面上で転動追従可能に牽引し、このローラ22は、畝面上の抵抗によって、土押しすることなく畝面に追従して回転することから、土押し負荷による畝面センサS1の破損の防止とともに、マルチフィルムを含む畝面の保全が可能となり、従って、正確な畝面高さに基づく車高調節制御によって所定の深さで苗株の植え付けが可能となり、また、回動アーム21にローラ支持長が異なる複数のローラ軸支部22aを設けることにより、畝面の状況に合わせた畝面センサS1の検出感度の切換えが可能となるので、安定した車高調節制御が可能となる。
【0020】
請求項
4に係る発明は、請求項
3に係る発明の効果に加え、細い棒状部材によるスクレーパ24をローラ22に接して設けたことにより、スクレーパ24とローラ22の間に土が詰まりにくくなるので、土押しの原因となる土詰まりによるローラ22の停止が防止される。
また、土の付着によるローラ22の半径長の変化による畝面高さの誤検知を防止できるので、車高制御精度が確保されて苗の植付深さが安定する。
また、スクレーパ24の斜行部24aによって掻き落とす土を側方に掻き寄せることができるので、苗の植付位置付近に余分な土が集まることが防止され、植付深さが安定する。
【0021】
請求項
5に係る発明は、請求項1
または請求項2に係る発明の効果に加え、回動アーム25に連結した回転部材であるクローラベルト機構26は、ベルト下面全体を接地してスリップなしに畝面に追従転動することから、土押しのない正確な畝面高さ検出に基づく高精度の車高制御が可能となるので、苗株の生育条件である植え付け深さ精度を確保することができる。
【0022】
請求項
6に係る発明は、請求項
3または
請求項5に係る発明の効果に加え、制御装置Cの作動制御による苗植付装置3の作動間隔について、畝面センサS1,S2の回転検知部材27によって算出される機体の移動距離に基づいて、作動タイミングが調節されることから、株間距離を高精度で確保でき、その結果、圃場の風通しがよくなり、病害虫が発生しにくい環境が確保され、また、作物の栽培途中の作業肥料の追加、防除作業、間引き、摘果等の作業時や収穫時に人や作業機が移動する空間が確保されて作業能率の向上を図ることができる。
【発明を実施するための形態】
【0024】
上記技術思想に基づいて具体的に構成された実施の形態について以下に図面を参照しつつ説明する。なお、説明においては、苗移植機の前進方向Fを基準に、前後、左右と云う。
【0025】
本発明の鎮圧輪を備える苗移植機1は、その側面図と平面図を
図1、
図2に示すように、後輪2,2によって車高調節可能な機体に、苗植付機3と鎮圧機構4とを備え、畝面センサSによって畝面高さに合わせて苗植付機3の植え付け深さを確保するとともに、鎮圧機構4により植え付け位置の両側を鎮圧しつつ走行する。図例では、2条植え構成として機体フレームBの両側に各状の苗植付機3と鎮圧機構4を横並びに備える。
【0026】
苗植付機3は、開閉可能なくちばし状の苗植付け体3aを昇降動作可能に備え、苗搬送装置5によって配給搬送された苗を受けて畝面の所定深さ位置に植付け動作し、鎮圧機構4は、植付け苗の左右両側位置の畝面を押圧する左右の鎮圧部材である鎮圧輪11,11を苗植付機3の後方に配置して構成する。
【0027】
各鎮圧機構4は、詳細には、その背面図を
図3に示すように、機体フレームBに鎮圧ロッド14を支持してばね14aで下方付勢可能に構成し、この鎮圧ロッド14の下端に略逆三角形の連結プレート13を左右回動可能に軸支し、この軸支部13aの左右等距離位置に左右の支持アーム12,12を介してそれぞれ鎮圧輪11,11を転動可能に軸支し、鎮圧ロッド14の付勢力を連結プレート13により左右の鎮圧輪11,11にバランスして配分可能に構成する。
【0028】
このように構成した鎮圧機構4は、
図4の鎮圧作用図に示すように、畝面Uに左右落差があっても、連結プレート13が軸支部13aを中心に左右に回動することによって左右の鎮圧輪11,11に付勢力がバランスして配分されることから、単一の鎮圧ロッド14によって左右均等の鎮圧が可能となるので、片側鎮圧による苗の倒れや、地温の下がり等による生育不良を防止することができる。
【0029】
また、連結プレート13は、上下方向に備えた複数の連結孔13b…によって鎮圧ロッド14の軸支部13aの連結高さを切換えることにより、上側の連結孔では左右に大きく回動し、下側では回動幅が小さくなるので、左右の鎮圧輪11,11のバランス感度を変更することができる。
【0030】
(無段階調節)
次に、連結プレート13の別の構成例について説明すると、
図5、
図6に拡大背面図と要部拡大側面図を示すように、鎮圧ロッド14の軸支部13aを長穴13cに沿って上下方向にスライドして高さ調節可能に構成する。
【0031】
詳細には、
図7の要部分解側面図に示すように、連結プレート13の中央位置に上下に延びる調節用長穴13cと、この長穴13cの範囲の任意位置に鎮圧ロッド14の軸支部13aをボルト等によって固定可能に構成することにより、連結プレート13の左右回動を確保しつつ、鎮圧ロッド14の連結位置を調節用長孔13cの範囲で任意に調節することが可能となり、その結果、左右の鎮圧輪11,11のバランス感度を細かく変更することができる。
【0032】
(転動式畝面センサ)
次に、転動式畝面センサS1について説明する。
転動式畝面センサS1は、その斜視図を
図8に示すように、上下回動可能に機体底部に連結した回動アーム21と、この回動アーム21によって畝面上を接地牽引可能に連結した回転部材であるローラ22とによって畝面高さを検出可能に構成する。
【0033】
このように構成した転動式畝面センサS1は、回転部材であるローラ22が畝面上で回動アーム21によって転動追従可能に牽引され、また、畝面上の抵抗によってローラ22が回転し、畝面上を土押しすることなく追従転動するので、土押し負荷による畝面センサS1の破損を防止するとともに、マルチフィルムを含む畝面の保全が可能となり、従って、畝面高さの高精度検出に基づく車高調節制御によって苗株の植え付け深さと畝面鎮圧を確保することができる。
【0034】
また、畝面センサS1は、複数のローラ軸支部22a…を回動アーム21に設けてローラ支持長を切換え可能に構成し、ローラ軸支部22aの選択によるローラ支持長の変更により、畝面センサS1の検出感度の切換えが可能となるので、畝面Uの状況に合わせて安定した車高調節制御が可能となり、さらに、ローラ表面をローレット加工によって食いつきを良くすることでスベリ防止が可能となる。
【0035】
(スクレーパ)
畝面センサS1のローラ22は、表面に接して針金等の細い棒状部材によるスクレーパ24を設けることにより、スクレーパ24上の土の堆積を抑えつつ、ローラ22の付着土の掻取りが可能となるので、正確な畝面高さの検出により車高制御精度が確保されて苗の植付深さが安定するとともに、スクレーパ部の土詰まりが抑えられてローラ回転停止による土押しを防止することができる。
【0036】
また、スクレーパ付きの畝面センサの背面図を
図9に示すように、スクレーパ24に斜行部24aを設けてローラ22の幅方向に土を掻き寄せることにより、苗の植付位置を避けて土を落とすことができるので、苗の植付深さの安定化が可能となり、さらに、スクレーパ全体をV字形に構成することにより、掻取った土を畝面センサS1の両外側位置に寄せることができる。
【0037】
(ベルト式畝面センサ)
次に、ベルト式畝面センサS2について説明する。
ベルト式畝面センサS2は、その側面図を
図10に示すように、機体底部に上下回動可能に連結した回動アーム25と、この回動アーム25によって畝面に接地牽引可能に連結した転動部材であるベルト機構26とによって畝面高さを検出可能に構成する。
【0038】
回動アーム25は、ベルト機構支持部の横断面図を
図11に示すように、ベルト機構26の横断フレーム26aの中央に天秤構成に連結することにより、畝高さ設定を変えても、ベルト26bの下面接地が可能となる。
【0039】
ベルト機構26は、クローラベルト26cをベルトフレームに緩く巻回支持することで回転抵抗が抑えられるとともに、ベルト面が滑ることなく畝面に喰いついて接地追従することから、土押しを招くことなく正確な畝面高さ検出が可能となり、高精度の車高制御によって苗株の生育条件である植え付け深さ精度を確保することができる。
【0040】
また、クローラベルト26cのスプロケットに回転検知部材26dを設けて畝面上の移動距離を算出可能に構成し、別途定めた設定株間で苗植付装置3を作動制御するとともに、その間の移動距離と比較し、差があれば苗植付装置3の作動タイミングを変更する。
【0041】
制御装置Cによる上記植付け制御により、苗植付装置3は、畝面センサS2の回転部の回転検知部材26dによって算出される機体の移動距離に基づく作動タイミングの調整によって株間距離を高精度で確保でき、その結果、圃場の風通しがよくなり、病害虫が発生しにくい環境が確保され、また、作物の栽培途中の作業(肥料の追加、防除作業、間引き、摘果等の作業)時や収穫時に人や作業機が移動する空間の確保が可能となるので、作業能率を向上することができる。
【0042】
(潅水ポンプ)
次に、潅水ポンプ31について説明すると、その縦断面図を
図12に示すように、鋼製のシリンダ32とピストン33とによって構成された潅水ポンプ31について、亜鉛材によるドレンボルト34を設けてシリンダ32の水抜き部を構成することにより、亜鉛材の犠牲陽極効果によって鋼製部材の錆を抑えることがきるとともに、ドレンボルト34は消耗品として交換することにより、メンテナンスが可能となる。
【0043】
また、シリンダ32に密接してその外周を覆うように亜鉛製パイプ35を外嵌する。この亜鉛製パイプ35は、スリワリによって拡径可能に構成することでシリンダ32の外周に密接することができ、さらに上記ドレンボルト34と導通接続することにより、シリンダ32全体を幅広く防錆することができる。
なお、上記亜鉛材は、鉄よりイオン化傾向が強いアルミ等の金属によって代用することができる。
【0044】
(作業者搭乗部)
次に、苗移植機の作業者搭乗部について説明する。
苗移植機の後輪周りの要部平面図と要部側面図を
図13、
図14に示すように、後輪伝動ケース6の回動によって支持高さ調節可能な平行リンク構成のクローラフレーム41a、41b、41cにクローラ42を巻回して機体後部を支持し、接地後部のクローラ軸43から後方に連結する作業台44に支持輪44aと収納スプリング44bを設けて折畳み可能に構成する。
【0045】
上記構成により、後輪伝動ケース6を回動して車高調節することによっても平行リンク構成のクローラ42のテンションが一定なので、安定走行を確保することができ、また、作業台44は、作業者が後方展開操作によって乗降が簡便なステップとして作業者が立ち姿勢で乗車することができる。
【0046】
このとき、クローラ42の接地部に作業者の荷重が加わって牽引力が増加することにより、走破性が向上し、また、降車によって作業台44を収納位置に折りたむことにより、支障なく機体旋回が可能となる。
【0047】
(技術的ポイント)
上記構成の苗移植機について、その技術的ポイントをまとめると、以下のとおりである。
【0048】
第一に、鎮圧装置4は、植付け位置の左右に配置した鎮圧部材11,11と、これら左右の鎮圧部材11,11をそれぞれ支持する左右の支持アーム12,12と、これら左右の支持アーム12,12を左右に連結する連結プレート13と、この連結プレート13を下方付勢可能に連結する鎮圧ロッド14とによって構成し、連結プレート13は、左右の支持アーム12,12から等距離位置に軸支部13aを備え、この軸支部13aにより左右回動可能に鎮圧ロッド14を介して機体に支持することにより、左右の鎮圧部材11,11は、左右の支持アーム12,12を介して連結プレート13によって左右に支持され、また、連結プレート13は、左右の支持アーム12,12から等距離位置の軸支部13aに左右回動可能に連結する鎮圧ロッド14を介して機体に支持されることから、左右の鎮圧部材11,11の鎮圧反力が釣り合って連結プレート13が安定した場合に限って鎮圧ロッド14の付勢力が作用し、したがって、畝面の左右落差等によっても、連結プレート13の左右回動により左右の鎮圧部材11,11がバランスして同等の鎮圧力で畝面を鎮圧することができるので、鎮圧不良による苗の倒れや、地温の下がり等による生育不良を防止することができる。
【0049】
第二に、連結プレート13は、高さが異なる複数位置に軸支部13aを設けて鎮圧ロッド14を連結することにより、選択した軸支部13aの高さ位置により、上側ほど連結プレート13の左右回動幅が大きくなることから、選択により、畝面の左右落差の程度に合わせた鎮圧が可能となる。
【0050】
第三に、連結プレート13は、軸支部13aの保持高さ位置をスライド調節可能な長穴13bを備えることにより、鎮圧ロッド14の連結高さ位置が上側ほど左右回動幅が大きくなり、長穴13bの範囲内の高さ位置調節により、畝面の左右落差の程度に合わせて確実な鎮圧が可能となる。
【0051】
第四に、機体に上下回動可能に連結した回動アーム21と、この回動アーム21によって畝面に接地牽引可能に連結した回転部材であるローラ22とによって畝面高さを検出する畝面センサS1を構成し、この畝面センサS1によって検出した畝面高さに合わせて車高を調節制御し、かつ、回動アーム21は、ローラ支持長が異なる複数位置にローラ軸支部22aを備えることにより、機体に連結した回動アーム21が、回転部材であるローラ22を畝面上で転動追従可能に牽引し、このローラ22は、畝面上の抵抗によって、土押しすることなく畝面に追従して回転するので、土押し負荷による畝面センサS1の破損の防止とともに、マルチフィルムを含む畝面の保全が可能となり、従って、正確な畝面高さに基づく車高調節制御によって所定の深さで苗株の植え付けが可能となり、また、回動アーム21にローラ支持長が異なる複数のローラ軸支部22aを設けることにより、畝面の状況に合わせた畝面センサS1の検出感度の切換えが可能となるので、安定した車高調節制御が可能となる。
【0052】
第五に、ローラ22に接して細い棒状部材によるスクレーパ24を設けて土を掻き落とし、このスクレーパ24は、ローラ22の幅方向に傾斜して土を掻き寄せる斜行部24aを備えることにより、細い棒状部材によるスクレーパ24とローラ22の間に土が詰まりにくくなるので、土押しの原因となる土詰まりによるローラ22の停止が防止され、また、土の付着によるローラ22の半径長の変化による畝面高さの誤検知を防止できるので、車高制御精度が確保されて苗の植付深さが安定する。
また、スクレーパ24の斜行部24aにより、掻き落とす土を側方に掻き寄せることができるので、苗の植付位置付近に余分な土が集まることが防止され、植付深さが安定する。
【0053】
第六に、機体に上下回動可能に連結した回動アーム25と、この回動アーム25によって畝面に接地牽引可能に連結した回転部材であるクローラベルト機構26とによって畝面高さを検出する畝面センサS2を構成し、この畝面センサS2によって検出した畝面高さに合わせて車高を調節制御することにより、回動アーム25に連結した回転部材であるクローラベルト機構26は、ベルト下面全体を接地してスリップなしに畝面に追従転動することから、土押しのない正確な畝面高さ検出に基づく高精度の車高制御が可能となるので、苗株の生育条件である植え付け深さ精度を確保することができる。
【0054】
第七に、回転部材22,26に回転検知部材27を設けて畝面上の移動距離を算出可能に構成し、苗植付装置3を制御装置Cにより所定の設定株間で作動制御するとともに、苗植付装置3の作動間隔について、回転検知部材27による移動距離と設定株間とを比較し、差があれば苗植付装置3の作動タイミングを変更制御することにより、制御装置Cの作動制御による苗植付装置3の作動間隔について、畝面センサS1,S2の回転検知部材27によって算出される機体の移動距離に基づいて、作動タイミングが調節されることから、株間距離を高精度で確保でき、その結果、圃場の風通しがよくなり、病害虫が発生しにくい環境が確保され、また、作物の栽培途中の作業(肥料の追加、防除作業、間引き、摘果等の作業)時や収穫時に人や作業機が移動する空間が確保されて作業能率の向上を図ることができる。
【符号の説明】
【0055】
1 苗移植機
2 苗搬送装置
3 苗植付装置
4 鎮圧装置
11 鎮圧部材
12 支持アーム
13 連結プレート
13a 軸支部
13b 長穴
14 鎮圧ロッド
21 回動アーム
22 ローラ(回転部材)
22a ローラ軸支部
24 スクレーパ
24a 斜行部
25 回動アーム
26 クローラベルト機構(回転部材)
27 回転検知部材
C 制御装置
S1 ローラ式畝面センサ
S2 ベルト式畝面センサ