特許第6904174号(P6904174)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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  • 特許6904174-車両用温度管理装置 図000002
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6904174
(24)【登録日】2021年6月28日
(45)【発行日】2021年7月14日
(54)【発明の名称】車両用温度管理装置
(51)【国際特許分類】
   B60L 9/18 20060101AFI20210701BHJP
   B60L 3/00 20190101ALI20210701BHJP
   B60L 58/24 20190101ALI20210701BHJP
   B60K 11/02 20060101ALI20210701BHJP
   H01M 10/6556 20140101ALI20210701BHJP
   H01M 10/6571 20140101ALI20210701BHJP
   H01M 10/613 20140101ALI20210701BHJP
   H01M 10/615 20140101ALI20210701BHJP
   H01M 10/625 20140101ALI20210701BHJP
   H01M 10/6568 20140101ALI20210701BHJP
   H01M 10/6551 20140101ALI20210701BHJP
【FI】
   B60L9/18 J
   B60L3/00 S
   B60L58/24
   B60K11/02
   H01M10/6556
   H01M10/6571
   H01M10/613
   H01M10/615
   H01M10/625
   H01M10/6568
   H01M10/6551
【請求項の数】4
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2017-166806(P2017-166806)
(22)【出願日】2017年8月31日
(65)【公開番号】特開2019-47588(P2019-47588A)
(43)【公開日】2019年3月22日
【審査請求日】2020年2月18日
(73)【特許権者】
【識別番号】598051819
【氏名又は名称】ダイムラー・アクチェンゲゼルシャフト
【氏名又は名称原語表記】Daimler AG
(74)【代理人】
【識別番号】100111143
【弁理士】
【氏名又は名称】安達 枝里
(72)【発明者】
【氏名】アマラシンフ スーウイン インヅユーラ
【審査官】 大内 俊彦
(56)【参考文献】
【文献】 実公昭60−40822(JP,Y2)
【文献】 特開2009−289563(JP,A)
【文献】 特開2014−218211(JP,A)
【文献】 特開2010−107156(JP,A)
【文献】 特開2005−263200(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60L 1/00− 3/12,7/00−13/00
B60L 15/00−58/40
B60K 11/02
H01M 10/52−10/667
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両に搭載された温度調整対象機器と熱交換する冷媒が循環する冷媒循環回路と、
前記冷媒循環回路において、前記冷媒を冷却するチラーを含むチラー熱交換流路と、
前記冷媒循環回路において、前記チラー熱交換流路と並列に設けられ、外気と前記冷媒とを熱交換させることで前記冷媒の熱を前記外気に放出するラジエータを含むラジエータ熱交換流路と、
前記冷媒循環回路における前記冷媒の流路として、前記チラー熱交換流路と、前記ラジエータ熱交換流路と、のうち少なくとも1つを選択する流路選択部と、
前記流路選択部を制御する切替制御部と、
前記チラーの作動を制御する作動制御部と、を含み、
前記冷媒循環回路が温度調整対象機器の熱を放出させる場合、前記切替制御部は、前記冷媒の流路として前記ラジエータ熱交換流路と前記チラー熱交換流路を選択するように前記流路選択部を制御し、かつ、前記作動制御部は、前記チラーを作動させないことを特徴とする、車両用温度管理装置。
【請求項2】
車両に搭載された温度調整対象機器と熱交換する冷媒が循環する冷媒循環回路と、
前記冷媒循環回路において、前記冷媒を冷却するチラーを含むチラー熱交換流路と、
前記冷媒循環回路において、前記チラー熱交換流路と並列に設けられ、前記冷媒を加熱するヒータを含むヒータ熱交換流路と、
前記冷媒循環回路における前記冷媒の流路として、前記チラー熱交換流路と、前記ヒータ熱交換流路と、のうち少なくとも1つを選択する流路選択部と、
前記流路選択部を制御する切替制御部と、
前記チラーの作動を制御する作動制御部と、を含み、
前記冷媒循環回路が温度調整対象機器を加熱する場合、前記切替制御部は、前記冷媒の流路として前記ヒータ熱交換流路と前記チラー熱交換流路を選択するように前記流路選択部を制御し、かつ、前記作動制御部は、前記チラーを作動させないことを特徴とする、車両用温度管理装置。
【請求項3】
車両に搭載された温度調整対象機器と熱交換する冷媒が循環する冷媒循環回路と、
前記冷媒循環回路において、前記冷媒を冷却するチラーを含むチラー熱交換流路と、
前記冷媒循環回路において、前記チラー熱交換流路と並列に設けられ、外気と前記冷媒とを熱交換させることで前記冷媒の熱を前記外気に放出するラジエータを含むラジエータ熱交換流路と、
前記冷媒循環回路において、前記チラー熱交換流路、及び前記ラジエータ熱交換流路と並列に設けられ、前記冷媒を加熱するヒータを含むヒータ熱交換流路と、
前記冷媒循環回路における前記冷媒の流路として、前記チラー熱交換流路と、前記ラジエータ熱交換流路と、前記ヒータ熱交換流路とのうちの少なくとも1つを選択する流路選択部と、
前記流路選択部を制御する切替制御部と、
前記チラーの作動を制御する作動制御部と、を含み、
前記切替制御部は、前記冷媒の流路として前記ラジエータ熱交換流路、又は前記ヒータ熱交換流路を選択する場合、さらに前記チラー熱交換流路を選択するように前記流路選択部を制御し、かつ、前記作動制御部は、前記チラーを作動させない、車両用温度管理装置。
【請求項4】
前記温度調整対象機器は、前記車両の駆動用バッテリである、請求項1〜3のいずれか1項に記載される車両用温度管理装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両に搭載される機器の温度管理を行う車両用温度管理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、下記特許文献1に示すように、車両に搭載される複数の対象機器に冷媒(冷却水)を流し、当該冷媒を、ヒータ、チラー、又はラジエータと熱交換させることによって、上記対象機器の温度管理を行う車両用温度管理装置が知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2014−043181号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
例えば、上記冷媒循環回路において、ヒータと、チラーと、ラジエータと、対象機器とを並列に配置することにより、当該対象機器の温度管理を行うことが考えられる。しかしながら、このような冷媒循環回路では、ヒータやラジエータにおいて比較的大きな圧力損失を生じる。冷媒循環回路における冷媒の流量を維持するためには、送出する冷媒の圧力を上昇させる必要があるため、冷媒を循環させるためのポンプが大型化する。これにより、ポンプを駆動させるための電力消費が増大する虞がある。
【0005】
本発明はこのような課題に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、冷媒を循環させるためのポンプの大型化やポンプ駆動に伴う電力消費量を抑制することができる車両用温度管理装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、以下の適用例として実現することができる。本適用例に係る車両用温度管理装置は、車両に搭載された温度調整対象機器と熱交換する冷媒が循環する冷媒循環回路と、前記冷媒循環回路において、前記冷媒を冷却するチラーを含むチラー熱交換流路と、前記冷媒循環回路において、前記チラー熱交換流路と並列に設けられ、外気と前記冷媒とを熱交換させることで前記冷媒の熱を前記外気に放出するラジエータを含むラジエータ熱交換流路と、前記冷媒循環回路における前記冷媒の流路として、前記チラー熱交換流路と、前記ラジエータ熱交換流路と、のうち少なくとも1つを選択する流路選択部と、前記流路選択部を制御する切替制御部と、前記チラーの作動を制御する作動制御部と、を含み、前記冷媒循環回路が温度調整対象機器の熱を放出させる場合、前記切替制御部は、前記冷媒の流路として前記ラジエータ熱交換流路と前記チラー熱交換流路を選択するように前記流路選択部を制御し、かつ、前記作動制御部は、前記チラーを作動させない。
また、本適用例に係る車両用温度管理装置において、車両に搭載された温度調整対象機器と熱交換する冷媒が循環する冷媒循環回路と、前記冷媒循環回路において、前記冷媒を冷却するチラーを含むチラー熱交換流路と、前記冷媒循環回路において、前記チラー熱交換流路と並列に設けられ、前記冷媒を加熱するヒータを含むヒータ熱交換流路と、前記冷媒循環回路における前記冷媒の流路として、前記チラー熱交換流路と、前記ヒータ熱交換流路と、のうち少なくとも1つを選択する流路選択部と、前記流路選択部を制御する切替制御部と、前記チラーの作動を制御する作動制御部と、を含み、前記冷媒循環回路が温度調整対象機器を加熱する場合、前記切替制御部は、前記冷媒の流路として前記ヒータ熱交換流路と前記チラー熱交換流路を選択するように前記流路選択部を制御し、かつ、前記作動制御部は、前記チラーを作動させないことを特徴としてもよい。
また、本適用例に係る車両用温度管理装置において、車両に搭載された温度調整対象機器と熱交換する冷媒が循環する冷媒循環回路と、前記冷媒循環回路において、前記冷媒を冷却するチラーを含むチラー熱交換流路と、前記冷媒循環回路において、前記チラー熱交換流路と並列に設けられ、外気と前記冷媒とを熱交換させることで前記冷媒の熱を前記外気に放出するラジエータを含むラジエータ熱交換流路と、前記冷媒循環回路において、前記チラー熱交換流路、及び前記ラジエータ熱交換流路と並列に設けられ、前記冷媒を加熱するヒータを含むヒータ熱交換流路と、前記冷媒循環回路における前記冷媒の流路として、前記チラー熱交換流路と、前記ラジエータ熱交換流路と、前記ヒータ熱交換流路とのうちの少なくとも1つを選択する流路選択部と、前記流路選択部を制御する切替制御部と、前記チラーの作動を制御する作動制御部と、を含み、前記切替制御部は、前記冷媒の流路として前記ラジエータ熱交換流路、又は前記ヒータ熱交換流路を選択する場合、さらに前記チラー熱交換流路を選択するように前記流路選択部を制御し、かつ、前記作動制御部は、前記チラーを作動させなくてもよい。
また、本適用例に係る車両用温度管理装置において、前記温度調整対象機器は、前記車両の駆動用バッテリであってもよい。
【0007】
本適用例に係る車両用温度管理装置において、流路選択部は、上記対象機器を加熱する場合、冷媒の流路としてヒータ熱交換流路と、チラー熱交換流路とを選択する。作動制御部は、チラーを作動させない。冷媒をヒータ熱交換流路、及びチラー熱交換流路へ流すことにより、チラー熱交換流路をバイパス回路として利用することができることから、冷媒をヒータ熱交換流路にのみ流す場合と比較して、冷媒の圧力損失を抑制できる。このため、冷媒循環回路における冷媒の圧力を維持することができる。また、チラーを作動させないため、冷媒に影響を与えることがない。
【0008】
次に、流路選択部は、上記対象機器の熱を放出する場合、冷媒の流路としてラジエータ熱交換流路と、チラー熱交換流路とを選択する。作動制御部は、チラーを作動させない。冷媒をラジエータ熱交換流路、及びチラー熱交換流路へ流すことにより、冷媒をラジエータ熱交換流路にのみ流す場合と比較して、冷媒の圧力損失を抑制できる。このため、冷媒循環回路における冷媒の圧力を維持することができる。また、チラーを作動させないため、冷媒に影響を与えることがない。
【0009】
したがって、本適用例に係る車両用温度管理装置は、冷媒を循環させるためのポンプの大型化やポンプ駆動に伴う電力消費量を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本発明の一実施形態に係る車両用温度管理装置を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の一実施形態に係る車両用温度管理装置について、図面を参照して説明する。なお、本実施形態は以下に説明する内容に限定されるものではなく、その要旨を変更しない範囲において任意に変更して実施することが可能である。また、実施形態の説明に用いる図面は、いずれも構成部材を模式的に示すものであって、理解を深めるべく部分的な強調、拡大、縮小、または省略などを行っており、構成部材の縮尺や形状等を正確に表すものとはなっていない場合がある。
【0012】
図1は、本発明の一実施形態に係る車両用温度管理装置1を示すブロック図である。図1に示す車両用温度管理装置1は、電気自動車等の車両に搭載される温度調整対象機器の温度を管理するための装置である。車両用温度管理装置1は、冷媒循環回路3に沿って冷媒を循環させることで、上記対象機器の温度を調整する。例えば、車両用温度管理装置1は、車両に搭載され、モータに電力を供給するバッテリ100を加熱、保温、又は冷却する。また、車両用温度管理装置1は、バッテリ100の他に、一方のバッテリから他方のバッテリに電力を転送するために使用されるDC−DCコンバータ200と、バッテリ100の充電に使用される車載充電器(オンボードチャージャー)300とを加熱、保温、又は冷却する。車両用温度管理装置1は、冷媒循環回路3と、切替制御部5と、作動制御部7とを含む。
【0013】
冷媒循環回路3は、バッテリ100、DC−DCコンバータ200、及び車載充電器300と熱交換を行う冷媒を循環させるための冷媒流路である。本実施形態における冷媒循環回路3は、ポンプ31と、バッテリ熱交換流路32と、バルブ33と、バルブ間流路34と、バルブ35と、ヒータ熱交換流路36と、ラジエータ熱交換流路38と、チラー熱交換流路40とを含む。
【0014】
ポンプ31は、流路内に充填された冷媒を矢印方向へ循環させる装置である。本実施形態におけるポンプ31では、図示しない制御装置により、冷媒の吐出量(送出量)が制御される。
【0015】
バッテリ熱交換流路32は、ポンプ31とバルブ33とを接続し、ポンプ31から送出された冷媒をバルブ33へ流すための冷媒流路である。バッテリ熱交換流路32は、バッテリ100、DC−DCコンバータ200、及び車載充電器300の近傍を通過するように配置される。バッテリ熱交換流路32は、スチールパイプ等の金属により構成される。例えば、バッテリ熱交換流路32は、バッテリ100に含まれる複数のバッテリセル101〜106ごとに分岐され、複数のバッテリセル101〜106各々の近傍を通過するように配置される。
【0016】
ポンプ31から送出された冷媒は、バッテリ熱交換流路32に沿って複数のバッテリセル101〜106各々の近傍を通過する。複数のバッテリセル101〜106各々の近傍を通過する冷媒は、複数のバッテリセル101〜106各々と熱交換する。複数のバッテリセル101〜106各々と熱交換した冷媒は、一つの流路に集約される。さらに、一つの流路に集約された冷媒は、DC−DCコンバータ200、及び車載充電器300を含む流路と、熱交換する構成を有しないバイパス流路とに分岐される。DC−DCコンバータ200、及び車載充電器300を含む流路に分岐された冷媒は、DC−DCコンバータ200、及び車載充電器300と熱交換し、バルブ33へ流れる。バイパス流路に分岐された冷媒は、そのままバルブ33へ流れる。
【0017】
バルブ(流路選択部)33は、バッテリ熱交換流路32に接続される第1ポート331と、バルブ間流路34に接続される第2ポート332と、チラー熱交換流路40に接続される第3ポート333とからなる三方向電磁弁である。バルブ33は、鉄等の金属やゴム等の樹脂により構成される。本実施形態におけるバルブ33は、後述する切替制御部5により、各ポートの開閉を実行する。
【0018】
バルブ間流路34は、バルブ33とバルブ35とを接続し、上記バルブ33の第2ポート332から吐出された冷媒をバルブ35へ流すための冷媒流路である。バルブ間流路34は、スチールパイプ等の金属により構成される。
【0019】
バルブ(流路選択部)35は、バルブ間流路34に接続される第1ポート351と、ヒータ熱交換流路36に接続される第2ポート352と、ラジエータ熱交換流路38に接続される第3ポート353とからなる三方向電磁弁である。バルブ35は、鉄等の金属やゴム等の樹脂により構成される。本実施形態におけるバルブ35は、後述する切替制御部5により、各ポートの開閉を実行する。
【0020】
ヒータ熱交換流路36は、バルブ35の第2ポート352とポンプ31とを接続し、上記バルブ35の第2ポート352から吐出された冷媒をポンプ31へ流すための冷媒流路である。ヒータ熱交換流路36は、スチールパイプ等の金属により構成される。例えば、ヒータ熱交換流路36には、冷媒を加熱するヒータ37が設けられている。ヒータ37の内部を通過する冷媒は、ヒータ37により加熱される。なお、ヒータ37は、図示しない制御装置により、作動を制御される。ヒータ37により加熱された冷媒は、ポンプ31へ流れ、再び冷媒循環回路3を循環する。なお、ヒータ熱交換流路36は、ラジエータ熱交換流路38、及びチラー熱交換流路40と、ポンプ31手前の一部区間を共有している。
【0021】
ラジエータ熱交換流路38は、バルブ35の第3ポート353とポンプ31とを接続し、上記バルブ35の第3ポート353から吐出された冷媒をポンプ31へ流すための冷媒流路である。ラジエータ熱交換流路38は、スチールパイプ等の金属により構成される。例えば、ラジエータ熱交換流路38には、冷媒の熱を放出するラジエータ39が設けられている。ラジエータ39の内部を通過する冷媒は、ラジエータ39により外気と熱交換し、熱が外気に放出される。ラジエータ39により熱が放出された冷媒は、ポンプ31へ流れ、再び冷媒循環回路3を循環する。
【0022】
チラー熱交換流路40は、バルブ33の第3ポート333とポンプ31とを接続し、上記バルブ33の第3ポート333から吐出された冷媒をポンプ31へ流すための冷媒流路である。チラー熱交換流路40は、スチールパイプ等の金属により構成される。例えば、チラー熱交換流路40には、冷媒を冷却するチラー41が設けられている。チラー41は、図示しないコンデンサにより液化凝縮された作動流体と冷媒循環回路3を循環する冷媒とを熱交換させるための装置である。チラー41の内部を通過する冷媒は、チラー41により冷却される。具体的には、チラー41において作動流体が気化して冷媒の熱を奪うことにより、冷媒が冷却される。チラー41により冷却された冷媒は、ポンプ31へ流れ、再び冷媒循環回路3を循環する。
【0023】
切替制御部5は、ハードウェア資源として、CPU(Central Processing Unit)、及びMPU(Micro Processing Unit)等の所定のプロセッサを含む。例えば、切替制御部5は、冷媒の流路として、ヒータ熱交換流路36と、ラジエータ熱交換流路38と、チラー熱交換流路40とのうちの少なくとも一つを選択する。例えば、切替制御部5は、冷媒の流路を選択するため、バルブ33、及びバルブ35の開閉制御を実行する。本実施形態に係る車両用温度管理装置1は、冷媒の流路として、ヒータ熱交換流路36と、ラジエータ熱交換流路38と、チラー熱交換流路40とのうちの少なくとも一つを選択することで、対象機器を所望の温度にする。作動制御部7は、ハードウェア資源として、CPU及びMPU等の所定のプロセッサを含む。例えば、作動制御部7は、チラー熱交換流路40に設けられるチラー41の作動を制御する。
【0024】
ここで、切替制御部5における流路の切替制御と、作動制御部7におけるチラー41の作動制御とについて詳しく説明する。
【0025】
まず、本実施形態における切替制御部5は、上記対象機器を加熱する場合、冷媒の流路としてヒータ熱交換流路36と、チラー熱交換流路40とを選択する。具体的には、切替制御部5は、バルブ33の第1ポート331と、第2ポート332と、第3ポート333とを開放する。また、切替制御部5は、バルブ35の第1ポート351と、第2ポート352とを開放し、第3ポート353を閉鎖する。作動制御部7は、チラー41を作動させない。これにより、冷媒をヒータ熱交換流路36へ流し、ヒータ37により冷媒を加熱する。また、冷媒をチラー熱交換流路40へ流す。さらに、加熱した冷媒がポンプ31、及びバッテリ熱交換流路32を介して、複数のバッテリセル101〜106各々の近傍を通過する。これにより、複数のバッテリセル101〜106を加熱することができる。
【0026】
ここで、チラー熱交換流路40へ流した冷媒の圧力は、ヒータ熱交換流路36へ流した冷媒の圧力より高い。これは、ヒータ37において比較的大きな圧力損失が生じるためである。言い換えれば、冷媒をヒータ熱交換流路36、及びチラー熱交換流路40へ流すことにより、冷媒をヒータ熱交換流路36にのみ流す場合と比較して、冷媒の圧力損失を抑制することができる。このため、冷媒循環回路における冷媒の圧力を維持することができる。すなわち、本実施形態に係る車両用温度管理装置1は、冷媒を循環させるためのポンプ31の大型化やポンプ駆動に伴う電力消費量を抑制することができる。また、チラー41を作動させないため、冷媒に影響を与えることがない。
【0027】
次に、本実施形態における切替制御部5は、上記対象機器の熱を放出する場合、冷媒の流路としてラジエータ熱交換流路38と、チラー熱交換流路40とを選択する。具体的には、切替制御部5は、バルブ33の第1ポート331と、第3ポート333と、第2ポート332とを開放する。また、切替制御部5は、バルブ35の第1ポート351と、第3ポート353とを開放し、第2ポート352を閉鎖する。作動制御部7は、チラー41を作動させない。これにより、冷媒をラジエータ熱交換流路38へ流し、ラジエータ39により冷媒の熱を放出する。また、冷媒をチラー熱交換流路40へ流す。さらに、熱が放出された冷媒がポンプ31、及びバッテリ熱交換流路32を介して、複数のバッテリセル101〜106各々の近傍を通過する。これにより、複数のバッテリセル101〜106の熱を放出することができる。
【0028】
ここで、チラー熱交換流路40へ流した冷媒の圧力は、ラジエータ熱交換流路38へ流した冷媒の圧力より高い。これは、ラジエータ39において比較的大きな圧力損失が生じるためである。言い換えれば、冷媒をラジエータ熱交換流路38、及びチラー熱交換流路40へ流すことにより、冷媒をラジエータ熱交換流路38にのみ流す場合と比較して、冷媒の圧力損失を抑制することができる。このため、冷媒循環回路における冷媒の圧力を維持することができる。すなわち、本実施形態に係る車両用温度管理装置1は、冷媒を循環させるためのポンプ31の大型化やポンプ駆動に伴う電力消費量を抑制することができる。また、チラー41を作動させないため、冷媒に影響を与えることがない。
【0029】
次に、本実施形態における切替制御部5は、上記対象機器を冷却する場合、冷媒の流路としてチラー熱交換流路40を選択する。具体的には、切替制御部5は、バルブ33の第1ポート331と、第3ポート333とを開放し、第2ポート332とを閉鎖する。作動制御部7は、チラー41を作動させる。これにより、冷媒をチラー熱交換流路40へ流し、チラー41により冷媒を冷却する。さらに、冷却された冷媒がポンプ31、及びバッテリ熱交換流路32を介して、複数のバッテリセル101〜106各々の近傍を通過する。これにより、複数のバッテリセル101〜106を冷却することができる。
【0030】
(総括)
上記説明の通り、本実施形態に係る車両用温度管理装置1は、車両に搭載された温度調整対象機器と熱交換する冷媒が循環する冷媒循環回路3と、冷媒循環回路3において、冷媒を冷却するチラー41を含むチラー熱交換流路40と、冷媒循環回路3において、チラー熱交換流路40と並列に設けられ、外気と冷媒とを熱交換させることで冷媒の熱を外気に放出するラジエータ39を含むラジエータ熱交換流路38と、冷媒循環回路3において、チラー熱交換流路40、及びラジエータ熱交換流路38と並列に設けられ、冷媒を加熱するヒータ37を含むヒータ熱交換流路36と、冷媒循環回路3における冷媒の流路として、チラー熱交換流路40と、ラジエータ熱交換流路38と、ヒータ熱交換流路36とのうちの少なくとも1つを選択するバルブ33、及びバルブ35と、チラー熱交換流路40と、ラジエータ熱交換流路38と、ヒータ熱交換流路36とのうちの少なくとも1つを選択するようにバルブ33、及びバルブ35を制御する切替制御部5と、チラーの作動を制御する作動制御部7と、を含む。
【0031】
上記構成によれば、本実施形態に係る車両用温度管理装置1において、切替制御部5は、上記対象機器を加熱する場合、冷媒の流路としてヒータ熱交換流路36と、チラー熱交換流路40とを選択する。作動制御部7は、チラー41を作動させない。これにより、冷媒をヒータ熱交換流路36へ流し、ヒータ37により冷媒を加熱する。また、冷媒をチラー熱交換流路40へ流す。さらに、加熱した冷媒がポンプ31、及びバッテリ熱交換流路32を介して、複数のバッテリセル101〜106各々の近傍を通過する。これにより、複数のバッテリセル101〜106を加熱することができる。また、冷媒をヒータ熱交換流路36、及びチラー熱交換流路40へ流すことにより、チラー熱交換流路40をバイパス流路として利用することができることから、冷媒をヒータ熱交換流路36にのみ流す場合と比較して、冷媒の圧力損失を抑制することができる。このため、冷媒循環回路における冷媒の圧力を維持することができる。また、チラー41を作動させないため、冷媒に影響を与えることがない。
【0032】
次に、本実施形態における切替制御部5は、上記対象機器の熱を放出する場合、冷媒の流路としてラジエータ熱交換流路38と、チラー熱交換流路40とを選択する。作動制御部7は、チラー41を作動させない。これにより、冷媒をラジエータ熱交換流路38へ流し、ラジエータ39により冷媒の熱を放出する。また、冷媒をチラー熱交換流路40へ流す。さらに、熱が放出された冷媒がポンプ31、及びバッテリ熱交換流路32を介して、複数のバッテリセル101〜106各々の近傍を通過する。これにより、複数のバッテリセル101〜106の熱を放出することができる。また、冷媒をラジエータ熱交換流路38、及びチラー熱交換流路40へ流すことにより、チラー熱交換流路40をバイパス流路として利用することができることから、冷媒をラジエータ熱交換流路38にのみ流す場合と比較して、冷媒の圧力損失を抑制することができる。このため、冷媒循環回路における冷媒の圧力を維持することができる。また、チラー41を作動させないため、冷媒に影響を与えることがない。
【0033】
かくして、本実施形態に係る車両用温度管理装置1は、冷媒を循環させるためのポンプ31の大型化やポンプ駆動に伴う電力消費量を抑制することができる。
【0034】
また、本実施形態に係る車両用温度管理装置1は、同一の流量を維持するために、より低い回転数で動作することができるので、ポンプ31によるエネルギー消費を低減することができる。結果として、本実施形態に係る車両用温度管理装置1は、エネルギー効率と走行距離の向上をもたらす。
【0035】
また、冷媒の圧力損失を抑制するために、ヒータ37、ラジエータ39、及びチラー41をバイパスする専用のバイパス流路を設けることが考えられる。しかしながら、専用のバイパスラインを設ける場合、専用のバイパスラインを設けるためのスペース、及び追加コストが必要になる。一方、本実施形態に係る車両用温度管理装置1は、チラー熱交換流路40をバイパス流路として利用するため、バルブ等の部品や複雑な回路構成を増やすことなく、冷媒の圧力損失を抑制することができる。
【0036】
なお、上記実施形態に係る車両用温度管理装置1において、バッテリ100は、複数のバッテリセル101〜106を含んでいる。しかしながら、本実施形態に係る車両用温度管理装置1は、これに限定されない。例えば、本実施形態に係る車両用温度管理装置1は、単体で車両に実装可能な大容量を有するバッテリモジュールに対して、車両用温度管理装置1を適用してもよい。
【0037】
また、上記説明において用いた「所定のプロセッサ」という文言は、例えば、専用又は汎用のプロセッサ、を意味する。また、本実施形態の各構成要素(各処理部)は、単一のプロセッサに限らず、複数のプロセッサによって実現するようにしてもよい。さらに、複数の構成要素(複数の処理部)を、単一のプロセッサによって実現するようにしてもよい。
【符号の説明】
【0038】
1 車両用温度管理装置
3 冷媒循環回路
5 切替制御部
7 作動制御部
31 ポンプ
32 バッテリ熱交換流路
33 バルブ
34 バルブ間流路
35 バルブ
36 ヒータ熱交換流路
37 ヒータ
38 ラジエータ熱交換流路
39 ラジエータ
40 チラー熱交換流路
41 チラー
100 バッテリ
101〜106 バッテリセル
200 DC−DCコンバータ
300 車載充電器(オンボードチャージャー)
図1