特許第6904206号(P6904206)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6904206
(24)【登録日】2021年6月28日
(45)【発行日】2021年7月14日
(54)【発明の名称】レーザ溶接装置
(51)【国際特許分類】
   H01M 50/536 20210101AFI20210701BHJP
   H01M 50/528 20210101ALI20210701BHJP
   B23K 26/21 20140101ALI20210701BHJP
   B23K 26/142 20140101ALI20210701BHJP
   H01G 13/00 20130101ALI20210701BHJP
【FI】
   H01M50/536
   H01M50/528
   B23K26/21 N
   B23K26/142
   H01G13/00 381
【請求項の数】2
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2017-190087(P2017-190087)
(22)【出願日】2017年9月29日
(65)【公開番号】特開2019-67569(P2019-67569A)
(43)【公開日】2019年4月25日
【審査請求日】2020年6月18日
(73)【特許権者】
【識別番号】000003218
【氏名又は名称】株式会社豊田自動織機
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 博宣
(72)【発明者】
【氏名】松浦 康寿
【審査官】 原 和秀
(56)【参考文献】
【文献】 特開2016−030280(JP,A)
【文献】 特開2016−018756(JP,A)
【文献】 特開2012−204304(JP,A)
【文献】 特開平09−141482(JP,A)
【文献】 特開2012−179615(JP,A)
【文献】 特開2001−353589(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 50/536
B23K 26/142
B23K 26/21
H01G 13/00
H01M 50/528
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
金属箔の少なくとも片面に活物質層を有するとともに、前記活物質層が存在せず、前記金属箔が露出する未塗工部を有する正極及び負極の電極が絶縁された状態で積層された構造を有し、かつ前記未塗工部が同じ極性同士で積層された未塗工部群を一つの端面に備える電極組立体と、前記未塗工部群と接合された導電部材と、を備える蓄電装置において、前記導電部材と前記未塗工部群とをレーザ溶接して溶接部を形成するためのレーザ溶接装置であって、
前記溶接部は、前記未塗工部群の積層方向一端の未塗工部より外側に前記導電部材を配置した状態で前記未塗工部群の積層方向他端の未塗工部より外側からレーザ光を照射して形成され、
前記未塗工部群の積層方向他端の未塗工部より外側に配置され、内部にエア及び前記レーザ光を通過させる中空箱状のスパッタカバーを備え、該スパッタカバーは、内部に前記活物質層と前記未塗工部との境界側から前記未塗工部の先端側に延びる前記エアの流路を有し、前記積層方向他端の未塗工部を覆う底板に該底板を貫通する前記レーザ光の出射孔を有するとともに、前記底板に対向する天板に該天板を貫通する前記レーザ光の入射孔を有し、前記スパッタカバーには、前記入射孔、前記流路、及び前記出射孔の順に前記レーザ光が通過し、
前記スパッタカバーの前記流路の一端に連通するエア供給機構を備え、該エア供給機構は、前記活物質層と前記未塗工部との境界よりも前記未塗工部の先端寄りで、かつ前記電極組立体の前記端面と前記スパッタカバーの間に配設され、
前記スパッタカバーの前記流路の他端に連通する吸気機構を備えることを特徴とするレーザ溶接装置。
【請求項2】
前記スパッタカバーの前記出射孔を区画する壁面のうち、前記流路の一端に最も近い前記壁面における前記流路に面する端縁は、前記流路の一端に連通した前記エア供給機構の開口における底側の端縁よりも高い位置にある請求項1に記載のレーザ溶接装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、導電部材と未塗工部群とをレーザ溶接するためのレーザ溶接装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、EV(Electric Vehicle)やPHV(Plug in Hybrid Vehicle)などの車両には、電動機などへの供給電力を蓄える蓄電装置としてリチウムイオン二次電池などが搭載されている。二次電池は、シート状の正極及び負極の電極が絶縁された状態で積層された電極組立体と、該電極組立体を収容するケースとを備える。ケースは、電極組立体を収容したケース本体と、ケース本体の開口部を収容した蓋とを有する。正極及び負極の電極は、金属箔と、金属箔の両面又は片面に存在する活物質層と、活物質層が存在せず、金属箔が露出する未塗工部とを有する。未塗工部は、例えば、金属箔の一辺の一部から突出したタブである。
【0003】
電極組立体は、各極性のタブが積層された未塗工部群としてのタブ群を備える。二次電池からの電力の取り出しは、導電部材を介してタブ群に接続された電極端子を通して行われる。タブ群と導電部材とはレーザ溶接によって形成された溶接部によって電気的に接続されている。
【0004】
ところで、タブ群と導電部材とをレーザ溶接する際、溶融したタブ又は導電部材からスパッタ(金属の塵)が発生し、溶接部の周囲にある電極組立体や導電部材、蓋に付着することがある。スパッタが溶接部の周囲に付着したままの状態で二次電池が製造されると、スパッタは二次電池内の異物となる。異物は、例えば、二次電池の内部短絡の原因となり得るため、スパッタの飛散を抑制し、スパッタを溶接部の周囲に付着させないことが望まれている。
【0005】
スパッタの飛散を抑制するレーザ溶接装置としては例えば、特許文献1に開示の溶接装置が挙げられる。特許文献1の溶接装置は、溶接対象部(タブ群)が収容される溶接室と、溶接室の内部で溶接対象部を溶接する溶接処理部と、溶接室の内部から吸気する吸気部と、を備える。そして、電極板に溶接を施すとき、溶接室の内部で溶接対象部の溶接が行われ、吸気部が溶接室の内部から吸気する。このため、電極板を溶接するときの固体粒子(スパッタ)を回収することができ、固体粒子の飛散が抑制される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2012−204304号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで、特許文献1に開示の溶接装置においては、溶接処理部をレーザ溶接法で溶接を行う構成とすると、レーザ照射装置は溶接室の外部に配置され、レーザ照射装置から照射されたレーザ光が溶接室内に導入されるとともに、溶接室の内部で溶接対象部の溶接が行われることが考えられる。しかし、溶接室には、レーザ光を溶接室内に導入するための孔が形成されることとなり、孔を原因として吸気部による吸気力が低下してしまう。吸気力が低下すると、発生した固体粒子を溶接室の内部から回収できなくなってスパッタが溶接部の周囲に付着してしまう。
【0008】
本発明の目的は、溶接部周囲にスパッタが付着することを抑制できるレーザ溶接装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記問題点を解決するためのレーザ溶接装置は、金属箔の少なくとも片面に活物質層を有するとともに、前記活物質層が存在せず、前記金属箔が露出する未塗工部を有する正極及び負極の電極が絶縁された状態で積層された構造を有し、かつ前記未塗工部が同じ極性同士で積層された未塗工部群を一つの端面に備える電極組立体と、前記未塗工部群と接合された導電部材と、を備える蓄電装置において、前記導電部材と前記未塗工部群とをレーザ溶接して溶接部を形成するためのレーザ溶接装置であって、前記溶接部は、前記未塗工部群の積層方向一端の未塗工部より外側に前記導電部材を配置した状態で前記未塗工部群の積層方向他端の未塗工部より外側からレーザ光を照射して形成され、前記未塗工部群の積層方向他端の未塗工部より外側に配置され、内部にエア及び前記レーザ光を通過させる中空箱状のスパッタカバーを備え、該スパッタカバーは、内部に前記活物質層と前記未塗工部との境界側から前記未塗工部の先端側に延びる前記エアの流路を有し、前記積層方向他端の未塗工部を覆う底板に該底板を貫通する前記レーザ光の出射孔を有するとともに、前記底板に対向する天板に該天板を貫通する前記レーザ光の入射孔を有し、前記スパッタカバーには、前記入射孔、前記流路、及び前記出射孔の順に前記レーザ光が通過し、前記スパッタカバーの前記流路の一端に連通するエア供給機構を備え、該エア供給機構は、前記活物質層と前記未塗工部との境界よりも前記未塗工部の先端寄りで、かつ前記電極組立体の前記端面と前記スパッタカバーの間に配設され、前記スパッタカバーの前記流路の他端に連通する吸気機構を備えることを要旨とする。
【0010】
これによれば、レーザ溶接装置のエア供給機構を駆動させ、エアをスパッタカバーの流路に供給するとともに、吸気機構によってエアを吸引すると、スパッタカバーの流路には、エアの流れが形成される。この状態でレーザ光がスパッタカバーの入射孔、流路及び出射孔を通過して、未塗工部群に照射され、レーザ溶接が行われる。
【0011】
積層方向他端の未塗工部において、レーザ溶接される箇所の周囲は、スパッタカバーの底板によって外側から覆われているため、未塗工部におけるレーザ溶接される箇所の周囲にスパッタが付着することが抑制される。また、発生直後のスパッタは、レーザ溶接される箇所を囲む出射孔内に入り込むため、そのほとんどは出射孔を区画する壁面に付着する。また、一部のスパッタが出射孔の壁面に付着せず、流路に侵入しても、流路に強制的に供給されたエアによって、レーザ溶接される箇所から遠ざけられ、さらには、吸気機構に吸引される。よって、レーザ溶接される箇所の周囲にスパッタが付着することを抑制でき、溶接部の周囲にスパッタが付着することを抑制できる。
【0012】
また、レーザ溶接装置について、前記スパッタカバーの前記出射孔を区画する壁面のうち、前記流路の一端に最も近い前記壁面における前記流路に面する端縁は、前記流路の一端に連通した前記エア供給機構の開口における底側の端縁よりも高い位置にあるのが好ましい。
【0013】
これによれば、レーザ光の出射孔の壁面を高くすることで、エア供給機構に向かうスパッタを壁面に付着させやすくし、エア供給機構にスパッタが入り込むことを抑制しやすい。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、溶接部周囲にスパッタが付着することを抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】実施形態の二次電池を示す分解斜視図。
図2】実施形態の二次電池を示す部分側断面図。
図3】(a)はタブ群を延ばした状態での溶接部を示す断面図、(b)はタブ群を延ばした状態での溶接部を示す平面図。
図4】レーザ溶接装置の一部を示す分解斜視図。
図5】レーザ溶接装置を示す側断面図。
図6】レーザ溶接装置を示す平面図。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、レーザ溶接装置を具体化した一実施形態を図1図6にしたがって説明する。
図1又は図2に示すように、蓄電装置としての二次電池10は、ケース11を備える。二次電池10は、ケース11に収容された電極組立体12及び電解液(図示せず)を備える。ケース11は、直方体状のケース本体13と、ケース本体13の開口部13aを閉塞する矩形平板状の蓋14とを有する。ケース11を構成するケース本体13と蓋14は、何れも金属製(例えば、ステンレスやアルミニウム)である。また、本実施形態の二次電池10は、その外観が角型をなす角型電池である。また、本実施形態の二次電池10は、リチウムイオン電池である。
【0017】
二次電池10は、電極組立体12から電気を取り出すための一対の電極端子15を備える。一対の電極端子15のうち、一方の電極端子15は正極の電極端子であり、他方の電極端子15は負極の電極端子である。各電極端子15は、蓋14の孔14aを貫通してケース11外に突出する。各電極端子15には、蓋14と絶縁するためのリング状の絶縁リング16がそれぞれ取り付けられている。各電極端子15は、ケース11内に矩形板状の導電部材17を有する。各電極端子15は、導電部材17と電気的に接続されている。
【0018】
図2に示すように、電極組立体12は、複数枚のシート状の正極の電極としての正極電極21と、複数枚のシート状の負極の電極としての負極電極22とを備える。電極組立体12は、正極電極21と負極電極22との間にセパレータ23を介在させて絶縁させた状態で交互に積層した層状構造を備える。
【0019】
正極電極21及び負極電極22は、矩形シート状の金属箔24を備える。正極電極21の金属箔24は、例えばアルミニウム箔であり、負極電極22の金属箔24は、例えば銅箔である。正極電極21及び負極電極22は、金属箔24の両面に存在する活物質層25を備える。活物質層25は、極性に応じた活物質、導電材、及びバインダを含む。正極電極21及び負極電極22は、一対の長辺に沿う縁部のうち一方の縁部の一部から突出した矩形状のタブ26を備える。本実施形態では、タブ26の長手方向は、縁部からのタブ26の突出方向と一致する。タブ26は、活物質層25が存在せず、金属箔24が露出する未塗工部である。
【0020】
電極組立体12は、各正極電極21のタブ26が正極電極21、負極電極22、及びセパレータ23が積層される方向の一端に集箔されて積層された未塗工部群としてのタブ群18を備える。同様に、電極組立体12は、各負極電極22のタブ26が正極電極21、負極電極22、及びセパレータ23が積層される方向の一端に集箔されて積層された未塗工部群としてのタブ群18を備える。タブ26が積層される方向を積層方向とする。各タブ群18は、電極組立体12において蓋14と対向している端面12aに存在する。図1及び図2に示すように、電極組立体12は、タブ26の突出方向におけるタブ群18の基端部及び先端部が折り曲げられた状態でケース11に収容される。導電部材17は、タブ群18の積層方向の一端面と蓋14の内面との間に位置する。なお、図3以降では、説明の便宜上、タブ群18を折り曲げずに延ばした状態で図示している。
【0021】
図3(a)又は図3(b)に示すように、二次電池10は、溶接部31を備える。溶接部31は、積層方向全てのタブ26をレーザ溶接して形成されている。なお、タブ群18の積層方向を上下方向とし、タブ群18の積層方向一端を下端とするとともに、積層方向他端を上端とすると、タブ群18を積層方向他端側(上側)から見たとき、溶接部31は直線的に延びる帯状である。
【0022】
次に、溶接部31を形成するためのレーザ溶接装置30を説明する。
図4又は図5に示すように、レーザ溶接装置30は、タブ群18の積層方向他端のタブ26より外側に配置されるスパッタカバー40と、スパッタカバー40の一端に連通するエア供給機構50と、スパッタカバー40の他端に連通する吸気機構70と、を有する。
【0023】
スパッタカバー40は、セラミックスや、熱伝導率の低い金属製である。スパッタカバー40は、中空箱状である。スパッタカバー40は、矩形板状の底板41を備える。また、スパッタカバー40は、底板41の一対の側縁である長側縁から立設された長側壁42と、底板41の一方の短側縁から立設された第1短側壁43と、底板41の他方の短側縁から立設された第2短側壁44と、を有する。さらに、スパッタカバー40は、底板41と対向し、一対の長側壁42、第1短側壁43及び第2短側壁44に支持された天板45を備える。
【0024】
スパッタカバー40は、底板41に、該底板41を貫通するレーザ光の出射孔41aを備えるとともに、天板45に、該天板45を貫通するレーザ光の入射孔45aを備える。出射孔41a及び入射孔45aは、それぞれ平面視長孔状である。出射孔41aは、第1〜第3壁面H1〜H3によって区画されている。第1短側壁43に最も近く、かつ第1短側壁43に平行な壁面を第1壁面H1とし、第1壁面H1に対向する壁面を第2壁面H2とする。第1壁面H1と第2壁面H2の一端同士又は他端同士を繋ぐ円弧状の壁面を第3壁面H3とする。第1〜第3壁面H1〜H3の端縁のうち、底板41の外面(下面)に位置する一端縁(下端縁)は、底板41の外面にて高さが揃っている。一方、第1壁面H1の端縁のうち、一端縁の対辺となり、かつスパッタカバー40内の流路46に面する他端縁Ha(上端縁)は、第2壁面H2の一端縁の対辺となり、かつ流路46に面する他端縁より高い位置にある。
【0025】
スパッタカバー40は、底板41の長手方向に延びる流路46を備え、流路46は、底板41の長手方向に沿ってスパッタカバー40を貫通する。スパッタカバー40において、流路46が貫通する方向を軸方向とする。スパッタカバー40は、第1短側壁43を厚み方向に貫通した第1開口43aを有するとともに、第2短側壁44を厚み方向に貫通した第2開口44aを有する。よって、スパッタカバー40は軸方向の一端に第1開口43aを有し、軸方向の他端に第2開口44aを有する。流路46は、第1開口43a及び第2開口44aに連通しており、第1開口43aからスパッタカバー40内部の流路46にエアが流入し、流路46を流れたエアは、第2開口44aからスパッタカバー40の外へ流出する。よって、流路46は、スパッタカバー40の内部にエアを通過させる。
【0026】
第1開口43aの端縁のうち、底板41側の一端縁43c(下端縁)は、第2開口44aの端縁のうちの底板41側の一端縁(下端縁)より低い位置にある。また、第1開口43aの端縁のうち、一端縁43cの対辺となる他端縁(上端縁)は、第2開口44aの端縁のうちの一端縁の対辺となる他端縁(上端縁)より低い位置にある。よって、第1開口43aは、第2開口44aに対し、ずれた位置にあり、具体的には、第1開口43aは、第2開口44aよりも低い位置にある。
【0027】
また、底板41は、第1開口43aから第1壁面H1に向かって厚みが厚くなっており、その厚みが厚くなる部位の表面(上面)に第1傾斜面41bを備える。第1傾斜面41bは、エア供給機構50側である第1開口43aから、吸気機構70側である第2開口44aに向けて上り傾斜し、出射孔41aの第1壁面H1に至るまで上り傾斜している。また、底板41は、出射孔41aから第2開口44aに向かって厚みが厚くなっており、その厚みが厚くなる部位の表面(上面)に第2傾斜面41cを備える。第2傾斜面41cは、出射孔41aから第2開口44aに向かって上り傾斜している。したがって、第1開口43aと第2開口44aを繋ぐ流路46は、第1開口43aから第2開口44aに向かって上り傾斜した部分を有する。
【0028】
上記構成のスパッタカバー40は、タブ群18の積層方向他端にあるタブ26上に、溶接治具47を介して載置される。溶接治具47は、セラミックスや、熱伝導率の低い金属製である。溶接治具47は、筒状であり、タブ26上の溶接部31を取り囲む位置に載置される。溶接治具47の軸方向両端面は平坦面状である。溶接治具47は、軸方向に貫通する貫通孔47aを有する。貫通孔47aは軸方向に見て長孔状であり、スパッタカバー40の出射孔41a及び入射孔45aと同じ形状である。
【0029】
そして、スパッタカバー40は、溶接治具47の端面に底板41が載せられる。スパッタカバー40が溶接治具47に載せられた状態では、溶接治具47の貫通孔47aと、底板41の出射孔41aとが連通する。よって、スパッタカバー40の入射孔45aに入射したレーザ光Rは、流路46を軸方向に交差する状態に通過して、出射孔41aに入射し、さらに、出射孔41aに入射したレーザ光は、溶接治具47を貫通してタブ群18に照射される。レーザ光は、入射孔45a、出射孔41a、貫通孔47aを順に通過するように走査される。
【0030】
エア供給機構50は、スパッタカバー40の軸方向一端に接続されるエア供給配管51を備える。エア供給配管51は、溶接治具47に載置されたスパッタカバー40の第1短側壁43と、電極組立体12の端面12aとの間に配設される。エア供給配管51は、上下方向に延びる供給流路53を内部に備える。エア供給配管51は、軸方向の一端に供給流路53に連通する第1配管口51aを有し、軸方向の他端に供給流路53に連通する第2配管口51bを有する。エア供給配管51の第1配管口51aは、スパッタカバー40の第1開口43aに連通する。スパッタカバー40の第1開口43aと第1配管口51aの開口縁は一致した状態にある。よって、第1傾斜面41bは、第1配管口51aの一端縁51c(下端縁)に繋がっている。
【0031】
そして、第1配管口51aの端縁のうち、エア供給配管51の底側の一端縁51c及び第1開口43aの一端縁43cは、出射孔41aを区画する第1壁面H1の他端縁Haとずれた位置(低い位置)にある。言い換えると、第1壁面H1の他端縁Haは、第1配管口51aの底側の端縁である一端縁51cより高い位置にある。
【0032】
また、エア供給配管51の底壁52は、第1配管口51aに向けて上り傾斜している。エア供給配管51の底側には、底壁52の傾斜によって凹む凹部52aが形成されている。
【0033】
エア供給機構50は、エア供給配管51の第2配管口51bに接続されたエア供給装置60を備える。エア供給装置60は、エア供給配管51の供給流路53を介してスパッタカバー40の流路46にエアを供給する。
【0034】
図5又は図6に示すように、吸気機構70は、スパッタカバー40の軸方向の他端に接続されたダクト71を備える。ダクト71は、スパッタカバー40に接続される枠状の接続部72を軸方向一端に備える。接続部72によってダクト71がスパッタカバー40に接続されることで、ダクト71内とスパッタカバー40の第2開口44aが連通する。ダクト71の軸方向は、活物質層25からのタブ26の突出方向と同じであり、ダクト71は、タブ26の短手方向の外側には配設されていない。
【0035】
吸気機構70は、ダクト71の軸方向他端に接続された吸引ポンプ73を備える。そして、吸引ポンプ73による吸引により、流路46を流れて第2開口44aから流出したエアがダクト71に吸引される。
【0036】
レーザ溶接装置30において、スパッタカバー40と、エア供給機構50と、吸気機構70は一体に組付けられている。そして、スパッタカバー40に対し、エア供給機構50のエア供給配管51は着脱可能であり、吸気機構70のダクト71も着脱可能である。
【0037】
次に、レーザ溶接装置30を用いた溶接部31の形成方法について説明する。
溶接部31の形成方法は、集箔工程、加圧工程、及び溶接工程を備える。
集箔工程は、電極組立体12が備える複数枚のタブ26を集箔してタブ群18を形成する工程である。集箔工程では、まず、図示しない作業台に載置された導電部材17上に、電極組立体12の全てのタブ26を配置する。すなわち、積層方向一端のタブ26より外側(下側)に導電部材17を配置する。
【0038】
次に、図4又は図5に示すように、集箔装置62によって、タブ26を挟んだ導電部材17の反対側(積層方向他端側)から全てのタブ26を押圧して集箔し、タブ群18を形成する。なお、集箔装置62は、全てのタブ26を押圧する板状の押圧部材63を備えるとともに、押圧部材63に連結された流体圧シリンダ64を備える。流体圧シリンダ64はエアシリンダである。流体圧シリンダ64は、シリンダチューブ64aと、シリンダチューブ64aの下端に対し出没するシリンダロッド64bを備える。シリンダチューブ64a内には、ピストン64cが移動可能に収容され、シリンダロッド64bの一端はピストン64cに連結されている。シリンダチューブ64aからのシリンダロッド64bの突出端となる他端には、押圧部材63の上面が連結されている。そして、流体圧シリンダ64により、タブ群18に載せた押圧部材63をタブ群18に向けて押圧することでタブ群18を積層方向に加圧し、集箔できる。
【0039】
加圧工程は、集箔工程によって形成されたタブ群18の上に載置した溶接治具47によってタブ群18を積層方向に加圧し、積層方向に隣り合うタブ26同士を密着させる工程である。また、加圧工程では、溶接治具47は、レーザ溶接される箇所を取り囲む状態でタブ群18の上に載置される。
【0040】
溶接工程は、レーザ溶接装置30を用いて溶接部31を形成する工程である。
まず、溶接治具47上にスパッタカバー40を載置し、積層方向他端のタブ26より外側にスパッタカバー40を配置する。すると、スパッタカバー40の流路46は、正極電極21及び負極電極22の活物質層25と、タブ26との境界からタブ26の先端側に延びる状態となる。
【0041】
次に、スパッタカバー40の外側にレーザ溶接装置30を配置する。このとき、スパッタカバー40と集箔装置62の押圧部材63との間に隙間ができないようにする。また、溶接治具47の貫通孔47aと、スパッタカバー40の出射孔41aとを一致させる。
【0042】
また、レーザ溶接装置30において、スパッタカバー40の第1短側壁43と、電極組立体12の端面12aとの間にエア供給配管51が配設され、エア供給配管51の第1配管口51aと、スパッタカバー40の第1開口43aとが連通している。エア供給機構50のエア供給配管51は、正極電極21及び負極電極22の活物質層25と、タブ26との境界よりもタブ26の先端寄りに配設される。本実施形態では、エア供給配管51は、電極組立体12の端面12aよりもタブ26の先端寄りに配設される。また、スパッタカバー40の第2短側壁44側にはダクト71が配設され、接続部72を介して、ダクト71内とスパッタカバー40の第2開口44aとが連通している。
【0043】
そして、エア供給装置60を駆動させ、エア供給配管51を介してスパッタカバー40の流路46にエアを供給するとともに、吸引ポンプ73を駆動させて吸引力を発生させる。すると、スパッタカバー40内には、第1開口43aから第2開口44aに向かうエアの流れが形成される。エアは、底板41の第1傾斜面41bによって第2開口44aに向かって上昇し、さらに、第2傾斜面41cによって第2開口44aに向かって上昇しながら流れる。
【0044】
流路46にエアが流れる状態で、レーザ照射装置48からレーザ光Rを照射させ、スパッタカバー40の入射孔45aにレーザ光Rを入射する。レーザ光Rは、流路46を通過して、出射孔41aに入射し、溶接治具47の貫通孔47aを通過する。そして、レーザ光Rは、出射孔41aから出射されてタブ群18における積層方向他端のタブ26に照射される。その後、レーザ照射装置48によってレーザ光Rを走査させ、レーザ溶接を行い、溶接部31を形成する。
【0045】
上記実施形態によれば、以下のような作用効果を得ることができる。
(1)レーザ溶接装置30のスパッタカバー40により、レーザ溶接される箇所の周囲を外側から覆うことができる。このため、レーザ溶接時にスパッタが発生しても、溶接箇所周囲にスパッタが付着しない。また、発生直後に、ほとんどのスパッタは出射孔41aに入り込み、第1〜第3壁面H1〜H3に付着するため、スパッタの飛散自体が抑制される。万一、一部のスパッタが第1〜第3壁面H1〜H3に付着しなくても、スパッタカバー40内の流路46に強制的に供給されたエアによって、レーザ溶接される箇所から遠ざけられ、さらには、ダクト71に吸引される。よって、レーザ溶接される箇所の周囲にスパッタが付着することを抑制でき、溶接部31の周囲にスパッタが付着することを抑制できる。
【0046】
(2)エア供給配管51は、スパッタカバー40よりも電極組立体12寄りに配設されている。このため、エア供給配管51からスパッタカバー40にエアを供給することで、電極組立体12から離れる方向へエアを流すことができる。よって、供給されたエアにより、電極組立体12、ひいては溶接部31から離れる方向へスパッタを流すことができる。したがって、スパッタが、溶接部31周辺だけでなく、電極組立体12に付着することを抑制できる。
【0047】
(3)発生したスパッタのほとんどがスパッタカバー40に付着する。そして、付着したスパッタの量が規定値を超えた場合や、スパッタカバー40の使用期間が一定期間を越えた場合には、レーザ溶接装置30のうちのスパッタカバー40だけを交換又は清掃すればよく、レーザ溶接装置30全体を取り換える場合とくらべると、レーザ溶接装置30のメンテナンスが容易となる。
【0048】
(4)スパッタカバーの出射孔41aを区画する第1〜第3壁面H1〜H3のうち、第1開口43aに最も近い第1壁面H1の他端縁Haを、エア供給配管51の第1配管口51aの一端縁51cよりも高い位置にした。このため、例えば、第1壁面H1の他端縁Haが、第1配管口51aの一端縁51cと同じ高さにある場合と比べると、第1壁面H1の面積を広くして第1壁面H1にスパッタが付着しやすくなる。その結果、エア供給配管51にスパッタが入り難くなり、エア供給配管51がスパッタで詰まることを抑制できる。
【0049】
(5)レーザ溶接装置30は、スパッタカバー40に接続された吸気機構70を備える。このため、スパッタカバー40から流出したスパッタを吸気機構70に流し、回収することができる。よって、スパッタカバー40から流出したスパッタが、タブ26の表面のうちレーザ溶接する箇所から離れた部分や、蓋14に付着することを抑制できる。
【0050】
(6)流路46は、エアの流入側であるエア供給機構50(第1開口43a)側から流出側である吸気機構70(第2開口44a)側に向かって上り傾斜している。このため、エアに流されるスパッタをタブ群18から遠ざけることができる。
【0051】
(7)スパッタカバー40の流路46は、活物質層25とタブ26の境界側からタブ26の先端側に延びる。このため、流路46内でエアによって流されるスパッタを、他方のタブ群18に向けて流すことはなく、他方のタブ群18にスパッタが付着することを抑制できる。
【0052】
(8)エア供給機構50のエア供給配管51において、その底壁52を第1配管口51aに向けて上り傾斜させ、凹部52aを形成した。このため、万一、スパッタが第1配管口51aからエア供給配管51の供給流路53に入り込んでも、凹部52aに落下させて回収できる。
【0053】
(9)底板41は第1傾斜面41b及び第2傾斜面41cを有するように厚みが徐々に厚くなっており、底板41が一定の厚みの場合と比べると、レーザ溶接される箇所を流路46から遠ざけることができる。その結果として、レーザ溶接される箇所にエアが当たることを抑制できる。よって、レーザ溶接時の熱が放熱されることを抑制でき、レーザ溶接の効率が低下することを抑制できる。
【0054】
(10)レーザ光Rは、スパッタカバー40の入射孔45a、流路46、及び出射孔41aの順に通過する。出射孔41aと入射孔45aとの間には、エアの流れる流路46が介在するため、スパッタが出射孔41aから飛び出ても、流路46を流れるエアによって流され、スパッタが入射孔45aに入り込むことを抑制できる。その結果、レーザ溶接装置30にスパッタが付着することを抑制できる。
【0055】
なお、上記実施形態は以下のように変更してもよい。
○ スパッタカバー40の底板41は、上り傾斜した形状ではなく水平方向に平坦に延びる形状であってもよい。そして、出射孔41aを区画する第1壁面H1の他端縁Ha(上端縁)が、エア供給配管51の第1配管口51aの一端縁51c(下端縁)と同じ高さにあってもよい。
【0056】
○ 溶接工程において、溶接治具47を使用せず、スパッタカバー40をタブ群18に直接載せてもよい。又は、スパッタカバー40の底板41に溶接治具47を一体化してもよい。
【0057】
○ エア供給配管51の底壁52の内面は、水平方向に延びる平坦面状であり、凹部52aは無くてもよい。
○ 正極電極21及び負極電極22において、タブ26の根本付近に活物質層25が存在する場合、エア供給機構50のエア供給配管51及びスパッタカバー40の流路46は、タブ26における金属箔24の部分と活物質層25との境界よりもタブ26の先端寄りに配設される。
【0058】
○ 吸気機構70において、ダクト71の接続部72は、スパッタカバー40を囲む形状でなくてもよく、第2開口44aに直接接続されていてもよい。
○ スパッタカバー40の流路46は、スパッタカバー40内で屈曲していてもよい。例えば、流路46の一端を第1開口43aとし、他端を、一対の長側壁42のうちのいずれか一方に形成した開口とし、その長側壁42の開口に吸気機構70を接続する。この場合、吸気機構70は、タブ26の短手方向の両端縁のうち、他方のタブ群18よりも遠い短縁側に配置するのが好ましい。
【0059】
○ レーザ溶接装置30において、スパッタカバー40とエア供給機構50と吸気機構70を一体形成して、スパッタカバー40をエア供給配管51及びダクト71に対し着脱不能としてもよい。
【0060】
○ 電極組立体12は、巻回型の電極組立体でもよい。図示しないが、巻回型の電極組立体は、長尺帯状の正極電極と長尺帯状の負極電極とが絶縁された状態で巻回された層状構造を有する。正極電極及び負極電極はそれぞれ、一対の長辺に沿う縁部のうち一方の縁部に活物質層が存在せず、金属箔が露出した帯状の未塗工部を備える。電極組立体は、帯状の未塗工部が同じ極性同士で積層された未塗工部群を備える。正極の未塗工部群は、巻回軸線の一端に存在し、負極の未塗工部群は、巻回軸線の他端に存在する。
【0061】
○ 正極電極21及び負極電極22において、活物質層25は金属箔24の片面に存在してもよい。
○ 正極電極21及び負極電極22の未塗工部は、タブ26に限定されない。例えば、正極電極21及び負極電極22の一対の長辺に沿う縁部のうちの一方の縁部から金属箔24を露出させるとともに、その露出した金属箔の一部からタブ26を突出させる。そして、縁部に沿う金属箔とタブ26を未塗工部としてもよい。また、正極電極21及び負極電極22の一対の長辺に沿う縁部のうちの一方の縁部から金属箔24を露出させ、その露出した部分のみを未塗工部としてもよい。
【0062】
○ タブ群18に保護板を載置してレーザ溶接を行ってもよい。
○ 溶接部31の長手は、タブ26の長手方向に延びていてもよい。
○ 溶接部31の長手方向の長さは、適宜変更してよい。
【0063】
○ 溶接部31の形状は適宜変更してよい。
○ 蓄電装置は、例えばキャパシタなど、二次電池以外の蓄電装置にも適用可能である。
【0064】
○ 二次電池10は、リチウムイオン二次電池以外の他の二次電池であってもよい。要は、正極用の活物質と負極用の活物質との間をイオンが移動するとともに電荷の教授を行うものであればよい。
【0065】
次に、上記実施形態及び別例から把握できる技術的思想について以下に追記する。
(1)前記流路は、前記エア供給機構側から前記吸気機構側に向かって上り傾斜しているレーザ溶接装置。
【0066】
(2)前記流路は、前記エア供給機構側から前記吸気機構側に向かって、前記活物質層からの前記未塗工部の突出方向に延びるレーザ溶接装置。
(3)エア供給機構は、エア供給配管と、該エア供給配管に接続されたエア供給装置を備え、前記エア供給配管は上下方向に延びる供給流路を内部に備えるとともに、底壁を前記スパッタカバーに向けて上り傾斜させて形成されているレーザ溶接装置。
【符号の説明】
【0067】
H1〜H3…第1〜第3壁面、Ha…他端縁、R…レーザ光、10…蓄電装置としての二次電池、12…電極組立体、12a…端面、17…導電部材、18…未塗工部群としてのタブ群、21…正極の電極としての正極電極、22…負極の電極としての負極電極、24…金属箔、25…活物質層、26…未塗工部としてのタブ、30…レーザ溶接装置、31…溶接部、40…スパッタカバー、41…底板、41a…出射孔、43c…一端縁、45…天板、45a…入射孔、46…流路、50…エア供給機構、51c…一端縁、70…吸気機構。
図1
図2
図3
図4
図5
図6