(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0018】
本発明の接着剤組成物は、ポリイソシアネート成分(A)とポリオール成分(B)と25℃で液状の1価アルコールとのエステル(C)とを含有する。
本発明における接着剤組成物に含まれるポリイソシアネート成分(A)について説明する。
以下、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネートを4,4’−MDI、
2,4’−ジフェニルメタンジイソシアネートを2,4’−MDI、
トリレンジイソシアネートをTDI、キシリレンジイソシアネートをXDI、
ヘキサメチレンジイソシアネートをHDI、イソホロンジイソシアネートをIPDI
と略すこともある。
【0019】
前記ポリイソシアネート成分(A)は、イソシアネート基を有するウレタンプレポリマー(a)と4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネートとを含む。
さらに、前記ポリイソシアネート成分(A)は、2官能のイソシアネートモノマーの三量体、2官能のイソシアネートモノマーに水が付加したビュレット体、および2官能のイソシアネートモノマーに2官能以上の多価アルコールが付加したアダクト体からなる群より選ばれる少なくとも1種の2官能のイソシアネートモノマーの変性体をさらに含み、
前記ポリイソシアネート成分(A)は、2,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、トリレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、およびキシレンジイソシアネートからなる群より選ばれる少なくとも1種のイソシアネート成分を含み得る。
前記ウレタンプレポリマー(a)は、イソシアネート成分とポリオールとをイソシアネート基過剰の条件下に反応させて、得ることができるものであり、
4,4’−MDIを必須とするイソシアネート成分と、ポリエーテルポリオールを必須とするポリオールとの反応生成物である。前記イソシアネート成分としては、4,4’−MDI以外に、2,4’−MDI、TDI等も使用し得る。
【0020】
即ち、本発明に用いられるポリイソシアネート成分(A)としては、(A1)〜(A3)等が挙げられる。
(A1) 4,4’−MDIとポリエーテルポリオールを必須とするポリオールとの反応生成物であるウレタンプレポリマー(a)と、
4,4’−MDIと、
2官能のイソシアネートモノマーの変性体と、 の混合物。
(A2) 4,4’−MDIとポリエーテルポリオールを必須とするポリオールとの反応生成物であるウレタンプレポリマー(a)と、
4,4’−MDIと、
2官能のイソシアネートモノマーの変性体と
4,4’−MDI以外の2官能のイソシアネートモノマーと、 の混合物。
(A3) 4,4’−MDIを必須とするイソシアネート成分とポリエーテルポリオールを必須とするポリオールとの反応生成物であるウレタンプレポリマー(a)と、
4,4’−MDIと、
4,4’−MDI以外の2官能のイソシアネートモノマーと、
2官能のイソシアネートモノマーの変性体と、 の混合物。
【0021】
ウレタンプレポリマー(a)を形成するためのポリオールについて説明する。
ポリオールは、ポリエーテルポリオールを必須成分として含有し、その他にポリエステルポリオールを含有することができる。ポリエーテルポリオールは、一般にポリエステルポリオールに比して溶融状態での粘度が低いので、無溶剤型接着剤組成物の構成成分であるポリイソシアネート成分(A)中のウレタンプレポリマーを形成する際のポリオールとしては、ポリエーテルポリオールを必須とすることが重要である。さらにポリエステルポリオールを併用することにより、後述するポリオール成分(B)との相溶性を高めると共に、接着剤層の凝集力を高めることができる。
ポリエステルポリオールを併用する場合には、ポリオール100質量%中、接着剤組成物の粘度の点から50質量%以下であることが好ましい。
【0022】
ポリエーテルポリオールとしては、例えば、エチレンオキシド、プロピレンオキシド、ブチレンオキシド、テトラヒドロフラン等のオキシラン化合物を、例えば、水、エチレングリコール、プロピレングリコール、トリメチロールプロパン、グリセリン等の低分子量ポリオールを開始剤として重合して得られるポリエーテルポリオール等が挙げられる。
【0023】
ポリエーテルポリオールとしては、2官能の他、3官能以上のものを用いることができる。また、官能基数の異なるものを複数組み合わせて用いることもできる。
ポリエーテルポリオールとしては、数平均分子量が100以上、5000以下のものが好ましい。また、異なる分子量のものを複数組み合わせて用いることもできる。
【0024】
ポリエステルポリオールとしては、多価カルボン酸成分とグリコール成分とを反応させて得られるポリエステルポリオール等が挙げられる。
多価カルボン酸成分としては、例えば、テレフタル酸、イソフタル酸、アジピン酸、アゼライン酸、セバチン酸等の多価カルボン酸若しくはそれらのジアルキルエステル又はそれらの混合物が挙げられる。グリコール成分としては、例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール、ジエチレングリコール、ブチレングリコール、ネオペンチルグリコール、1,6−ヘキサンジオール、3−メチル−1,5−ペンタンジオール、3,3’−ジメチロールヘプタン、ポリオキシエチレングリコール、ポリオキシプロピレングリコール、ポリテトラメチレンエーテルグリコール等のグリコール類若しくはそれらの混合物とが挙げられる。
【0025】
低分子ジオールとしては、例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール、ジエチレングリコール、ブチレングリコール、ネオペンチルグリコール、1,6−ヘキサンジオール、3−メチル−1,5−ペンタンジオール、3,3’−ジメチロールヘプタン、2−メチル−1,3−プロパンジオール、等の低分子ジオール類又はそれらの混合物が挙げられる。
【0026】
本発明における前記ポリイソシアネート成分(A)は、前述の通り、イソシアネート基を有するウレタンプレポリマー(a)と4,4’−MDIとを含む。イソシアネートモノマーは、ウレタンプレポリマー(a)を得る際、残った未反応のイソシアネートモノマーでもよいし、ウレタンプレポリマー(a)を得た後、加えられるものであってもよい。
ポリイソシアネート成分(A)は、数平均分子量が200〜1000であることが好ましく、より好ましくは数平均分子量が500以上900以下である。ポリイソシアネート成分(A)は、ウレタンプレポリマー(a)を含むものでありながらも、4,4’−MDI等を含むことによって、上記のような分子量を呈することが好ましい。
【0027】
本発明における前記ポリイソシアネート成分(A)は、前述の通り、2官能のイソシアネートモノマーの変性体を含む。
本発明に用いられる2官能のイソシアネートモノマーの変性体は、2官能のイソシアネートモノマーの三量体、2官能のイソシアネートモノマーに水が付加したビュレット体、および2官能のイソシアネートモノマーに2官能以上の多価アルコールが付加したアダクト体からなる群より選ばれる。
2官能のイソシアネートモノマーとしては、例えば、
トリメチレンジイソシアネート、テトラメチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、1,2−プロピレンジイソシアネート、1,2−ブチレンジイソシアネート、2,3−ブチレンジイソシアネート、1,3−ブチレンジイソシアネート、2,4,4−又は2,2,4−トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、2,6−ジイソシアネートメチルカプロエート等の脂肪族ジイソシアネート、
1,4−シクロヘキサンジイソシアネート、1,3−シクロヘキサンジイソシアネート、3−イソシアネートメチル−3,5,5−トリメチルシクロヘキシルイソシアネート、4,4′−メチレンビス(シクロヘキシルイソシアネート)、メチル2,4−シクロヘキサンジイソシアネート、メチル2,6−シクロヘキサンジイソシアネート、1,4−ビス(イソシアネートメチル)シクロヘキサン、1,3−ビス(イソシアネートメチル)シクロヘキサン等の脂環式ジイソシアネート、
m−フェニレンジイソシアネート、p−フェニレンジイソシアネート、4,4’−ジフェニルジイソシアネート、1,5−ナフタレンジイソシアネート、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート、2,4−又は2,6−トリレンジイソシアネート若しくはその混合物、4,4’−トルイジンジイソシアネート、ジアニシジンジイソシアネート、4,4’−ジフェニルエーテルジイソシアネート等の芳香族ジイソシアネート、
1,3−又は1,4−キシリレンジイソシアネート若しくはその混合物、ω,ω’−ジイソシアネート−1,4−ジエチルベンゼン、1,3−又は1,4−ビス(1−イソシアネート−1−メチルエチル)ベンゼン若しくはその混合物等の芳香脂肪族ジイソシアネート、
トリフェニルメタン−4,4’,4’’’−トリイソシアネート、1,3,5−トリイソシアネートベンゼン、2,4,6−トリイソシアネートトルエン等の有機トリイソシアネート、4,4’−ジフェニルジメチルメタン−2,2’−5,5’−テトライソシアネート等の有機テトライソシアネート等のポリイソシアネート単量体等が挙げられる。
【0028】
’
アダクト体を形成するための2官能以上の多価アルコールとしては、例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール、トリメチレングリコール、1,2−ブタンジオール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、2,3−ブタンジオール、1,2−ペンタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,2−ヘキサンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,2−ヘプタンジオール、1,5−ヘプタンジオール、1,7−ヘプタンジオール、グリセリン、トリメチロールプロパン、トリメチロールエタン、1,2,6−ヘキサントリオール、1,2,4−ブタントリオール、キシリトール、ソルビトール、ペンタエスリトール等が挙げられる。
【0029】
また、本発明に用いられるポリイソシアネート成分(A)は、イソシアネート基を10質量%以上〜21質量%未満、含有することが好ましい。
ポリイソシアネート成分(A)のイソシアネート基含有率が上記範囲内にあることで、ガスバリア性の高いフィルム基材を用いる場合に、より外観の良好な積層体を形成することができる。イソシアネート基の含有率(質量%)は、後述するように塩酸による滴定で求める。
【0030】
また、ポリイソシアネート成分(A)に含まれる、4,4’−MDI、2,4’−MDI、TDI、XDI、IPDIのそれぞれの割合は、4,4’−MDI、2,4’−MDI、TDI、XDI、IPDIの合計100モル%中、
4,4’−MDIが25モル%以上、100モル%以下であることが好ましい。
4,4’−MDIの組成比が上記範囲にあることによって、エージング温度を31℃以上に管理せずとも、積層体におけるインキ部の塗工外観が良化し、且つ良好な接着性能を発現できる。2,4’−MDI、TDI、XDI、IPDIのみを用いると短時間エージングでは十分な接着性能を発揮できない。
【0031】
次に、本発明における接着剤組成物に含まれるポリオール成分(B)について説明する。
ポリオール成分(B)は、100質量%中、数平均分子量200以上、3000以下のポリエーテルポリウレタンポリオールを70〜100質量%含む。ポリエーテルポリウレタンポリオールは、ポリエーテルポリオールと4,4’−MDI、2,4’−MDI、TDI等のイソシアネート成分とをポリオール過剰の条件で反応させた反応生成物である。
ポリエーテルポリウレタンポリオールを必須として用いることで、インキ部の塗工外観が良化し、且つ良好な接着性能を発現できる。ポリエーテルポリウレタンポリオールを上記範囲内で含むポリオール成分(B)の利用により、ガスバリア性の高いフィルム基材を用い、高速で塗工・貼りあわせる場合に、良好な外観の積層体を得ることができ、且つ良好な接着性能を発現できる。
【0032】
ポリエーテルポリウレタンポリオールの必須原料であるポリエーテルポリオールについて説明する。ポリエーテルポリオールとしてはポリエーテルジオール、ポリエーテルトリオールが挙げられる。
ポリエーテルジオールとしては、例えば、エチレンオキシド、プロピレンオキシド、ブチレンオキシド、テトラヒドロフラン等のオキシラン化合物を、例えば、水、エチレングリコール、プロピレングリコール、等の2官能低分量ポリオールを開始剤として重合して得られるポリエーテルジオールが挙げられる。
ポリエーテルトリオールとしては、例えば、エチレンオキシド、プロピレンオキシド、ブチレンオキシド、テトラヒドロフラン等のオキシラン化合物を、例えば、トリメチロールプロパン、グリセリン等の低分量トリオールを開始剤として重合して得られるポリエーテルトリオールが挙げられる。
【0033】
ポリオール成分(B)は、本発明の目的を損なわない範囲で、ポリエーテルポリウレタンポリオールの他に、ポリエステルポリオール等、その他のポリオール成分を含むことができる。
ポリエステルポリオールとしては、例えば、テレフタル酸、イソフタル酸、アジピン酸、アゼライン酸、セバチン酸等の多価カルボン酸若しくはそれらのジアルキルエステル又はそれらの混合物と、例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール、ジエチレングリコール、ブチレングリコール、ネオペンチルグリコール、1,6−ヘキサンジオール、3−メチル−1,5−ペンタンジオール、3,3’−ジメチロールヘプタン、ポリオキシエチレングリコール、ポリオキシプロピレングリコール、ポリテトラメチレンエーテルグリコール等のグリコール類若しくはそれらの混合物とを反応させて得られるポリエステルポリオール或いはポリカプロラクトン、ポリバレロラクトン、ポリ(β−メチル−γ−バレロラクトン)等のラクトン類を開環重合して得られるポリエステルポリオール等が挙げられる。
また、ヒマシ油等の植物油並びに植物油由来のポリエステル化合物を使用することもできる、
【0034】
植物油として代表的ものは、アサ実油、アマニ油、エノ油、オイチシカ油、オリーブ油、カカオ油、カポック油、カヤ油、カラシ油、キョウニン油、キリ油、ククイ油、クルミ油、ケシ油、ゴマ油、サフラワー油、ダイコン種油、大豆油、大風子油、ツバキ油、トウモロコシ油、ナタネ油、ニガー油、ヌカ油、パーム油、ヒマシ油、ヒマワリ油、ブドウ種子油、ヘントウ油、松種子油、綿実油、ヤシ油、落花生油、脱水ヒマシ油などが挙げられる。
【0035】
ポリエーテルポリウレタンポリオールやポリエステルジオール等のポリオール成分(B)中の水酸基の一部に無水トリメリット酸などの酸無水物をさらに反応させたものを用いることもできる。
酸無水物を付加したポリオール成分(B)を用いることにより、密着し難いシート状基材に適用する場合に、密着性を向上できる。付加させる無水トリメリット酸等の使用量は、ポリオール成分(B)100質量%中、0.1〜5質量%が好ましい。
【0036】
また、ポリオール成分(B)は、数平均分子量50以上、500未満のジオールをさらに含むこともできる。
例えば、ポリエステルジオール、ポリエーテルジオール、ポリエーテルエステルジオール、ポリエステルアミドジオール、アクリルジオール、ポリカーボネートジオールやエチレングリコール、プロピレングリコール、ジエチレングリコール、ブチレングリコール、ネオペンチルグリコール、1,6−ヘキサンジオール、3−メチル−1,5−ペンタンジオール、3,3’−ジメチロールヘプタン、2−メチル−1,3−プロパンジオール、等の低分子ジオール類又はそれらの混合物が挙げられる。これらのなかでも、反応性の観点から、低分子ジオール類が好ましい。
【0037】
ポリエーテルエステルポリオールとしては、例えば、テレフタル酸、イソフタル酸、アジピン酸、アゼライン酸、セバチン酸等の二塩基酸若しくはそれらのジアルキルエステル又はそれらの混合物と、上記ポリエーテルジオールを反応させて得られるポリエーテルエステルジオールが挙げられる。
【0038】
ポリエステルアミドジオールとしては、上記エステル化反応に際し、例えば、エチレンジアミン、プロピレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン等のアミノ基を有する脂肪族ジアミンを原料としてあわせて使用することによって得られる。
【0039】
アクリルジオールの例としては、1分子中に1個以上の水酸基を含むアクリル酸ヒドロキシエチル、アクリル酸ヒドロキシプロプル、アクリルヒドロキシブチル等、或いはこれらの対応するメタクリル酸誘導体等と、例えばアクリル酸、メタクリル酸又はそのエステルとを共重合することによって得られる。
【0040】
ポリカーボネートジオールとしては、例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、3−メチル−1,5−ペンタンジオール、1,9−ノナンジオール、1,8−ノナンジオール、ネオペンチルグリコール、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール、1,4−シクロヘキサンジオール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、の中から選ばれた1種又は2種以上のグリコールをジメチルカーボネート、ジフェニルカーボネート、エチレンカーボネート、ホスゲン等との反応によって得られたものが挙げられる。
【0041】
また、低分子のトリオールとしては、ヒマシ油やトリメチロールプロパン、グリセリン等の低分子トリオール類又はそれらの混合物が挙げられる。これらのなかでも、反応性の観点から、低分子トリオール類やポリエーテルトリオールが好ましい。
【0042】
本発明における接着剤組成物は、前記ポリオール成分(B)中の水酸基モル数を100モルとした場合、ポリイソシアネート成分(A)中のイソシアネート基のモル数が120モル以上、400モル以下であることが好ましい。
ポリオール成分(B)中の水酸基モル数を100モルとした場合、ポリイソシアネート成分(A)中のイソシアネート基のモル数が上記範囲内にあることで、高湿度下でエージングしても、良好な接着力を発現できる。
【0043】
本発明における接着剤組成物は、ポリイソシアネート成分(A)とポリオール成分(B)との合計100質量%中に含まれる、4,4’−MDI、2,4’−MDI、HDI、TDI、IPDI、XDIの合計量は10〜34質量%であり、12〜30質量%であることが好ましい。
ポリイソシアネート成分(A)とポリオール成分(B)との合計100質量%中に含まれる、4,4’−MDI、2,4’−MDI、HDI、TDI、IPDI、XDIの合計量が上記範囲内にあることで、ガスバリア性の高いフィルム基材を用いる場合に、より良好な外観の積層体を得ることができる。
【0044】
本発明における接着剤組成物は、平均粒子径が1×10
−4mm以上、4×10
−4mm以下の粒子をさらに含有することができる。上記範囲内の平均粒子径を有する粒子を含有することでガスバリア性の高いフィルム基材を用い、高速で塗工・貼りあわせる場合に、より外観の積層体を得ることができる。粒子が小さすぎると添加しても流動特性があまり変化しないので、外観もあまり変わらない。
ここで、平均粒子径とは平均体積径であり、レーザー光散乱法により求めた値である。
【0045】
かかる粒子としては、無機化合物または有機化合物のいずれも用いることができ、単独で用いても二種以上を併用しても良い。
【0046】
無機化合物の粒子としては、例えば、酸化アルミニウム、ケイ酸アルミニウム、水酸化アルミニウム、アルミナホワイト、硫酸カリウム、酸化亜鉛、炭酸亜鉛、メタケイ酸アルミン酸マグネシウム、ケイ酸マグネシウム、酸化マグネシウム、炭酸マグネシウム、水酸化マグネシウム、チタン酸バリウム、硫酸バリウム、炭酸バリウム、炭酸カルシウム、水酸化カルシウム、酸化カルシウム、ケイ酸カルシウム、亜硫酸カルシウム、硫酸カルシウム、酸化チタン、シリカ、ゼオライト、活性炭、カオリン、タルク、ロウ石クレー、けい石、マイカ、グラファイト、セリサイト、モンモリロナイト、セリサイト、セピオライト、ベントナイト、パーライト、ゼオライト、ワラストナイト、蛍石、ドロマイトなどの粉体が挙げられる。これらのなかでもシリカやタルクが賞用される。
【0047】
有機化合物の粒子としては、例えば、ベンゾグアナミン樹脂、シリコン系樹脂、スチレン樹脂、架橋ポリスチレン、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、フッ素樹脂、ポリエチレン樹脂、ポリエステル樹脂、ポリイミド樹脂、ポリアミド樹脂、ポリアセタール樹脂、ポリウレタン樹脂、酢酸ビニル共重合系樹脂、ポリフェニレンオキサイド樹脂、ナイロン6、ナイロン12、セルロース、アクリル樹脂、メタクリル樹脂などの粉体が挙げられる。これらのなかでもベンゾグアナミン樹脂が賞用される。
【0048】
粒子の含有量は、ポリイソシアネート成分(A)とポリオール成分(B)との合計100質量部に対して、平均粒子径が1×10
−4mm以上〜4×10
−4mm以下の粒子(C)を0.01〜10質量部含むことが好ましい。上記範囲にあることによって、外観と接着強度とをバランス良く向上できる。
【0049】
粒子は、ポリイソシアネート成分(A)、ポリオール成分(B)と同時に混合することもできるし、いずれか一方の成分に混合しておき、他方を混合することもできる。粒子は、ポリオール成分(B)成分に予め混合しておくことが好ましい。
【0050】
本発明における接着剤組成物は、溶剤を含有しないことが好ましく、各成分の配合は、流動性が確保できる範囲でできるだけ低温で行うことが好ましく、具体的には25℃以上、80℃以下で配合することが好ましい。前記ポリイソシアネート成分(A)、ポリオール成分(B)を混合した直後の60℃での粘度は、好ましくは50mPa・s以上、5000mPa・s以下、さらに好ましくは50mPa・s以上、3000mPa・s以下である。
なお、本発明において、混合した直後とは、均一混合後1分以内であることを意味し、溶融粘度はB型粘度計により求めた値を示す。60℃における溶融粘度が5,000mPa・s超では、塗工が困難になり良好な作業性を確保することが難しく、塗工温度が60℃以下になると良好な塗装外観が得られない可能性がある。
一方、60℃における溶融粘度が50mPa・s未満では、初期凝集力が弱いために十分な接着性能が得られなかったり、基材に接着剤組成物を塗工する際に塗膜の厚みが均一にならず外観不良を生じたり、反りが発生する傾向にある。
【0051】
本発明における接着剤組成物は、更に、酸化防止剤、紫外線吸収剤、加水分解防止剤、防黴剤、増粘剤、可塑剤、消泡剤、顔料、充填剤等の添加剤を必要に応じて使用することができる。
また、接着性能を更に高めるために、シランカップリング剤、リン酸、リン酸誘導体、酸無水物、粘着性樹脂等の接着助剤を使用することができる。また、硬化反応を調節するため公知の触媒、添加剤等を使用することができる。
【0052】
シランカップリング剤としては、ビニル基、エポキシ基、アミノ基、イミノ基、メルカプト基等の官能基と、メトキシ基、エトキシ基等の官能基を有するものを使用することができる。
例えば、ビニルトリクロルシラン等のクロロシラン、N−(ジメトキシメチルシリルプロピル)エチレンジアミン、N−(トリエトキシシリルプロピル)エチレンジアミン等のアミノシラン、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン等のエポキシシラン、ビニルトリエトキシシラン等のビニルシラン等が挙げられる。
シランカップリング剤の添加量は全接着剤組成物に対して0.1〜5質量%が好ましい。
【0053】
本発明に用いられるリンの酸素酸又はその誘導体の内、リンの酸素酸としては、遊離の酸素酸を少なくとも1個以上有しているものであればいずれでもよく、例えば、次亜リン酸、亜リン酸、オルトリン酸、次リン酸等のリン酸類、メタリン酸、ピロリン酸、トリポリリン酸、ポリリン酸、ウルトラリン酸等の縮合リン酸類が挙げられる。又、リンの酸素酸の誘導体としては、上記のリンの酸素酸を遊離の酸素酸を少なくとも1個以上残した状態でアルコール類と部分的にエステル化されたもの等が挙げられる。これらのアルコールとしては、メタノール、エタノール、エチレングリコール、グリセリン等の脂肪族アルコール、フェノール、キシレノール、ハイドロキノン、カテコール、フロログリシノール等の芳香族アルコール等が挙げられる。リンの酸素酸又はその誘導体は、1種又は2種以上を用いてもよい。リンの酸素酸又はその誘導体の添加量は、全組成物に対して0.01〜10質量%、好ましくは0.05〜5質量%、更に好ましくは0.1〜1質量%である。
【0054】
本発明における接着剤組成物に含まれる1価アルコールとカルボン酸とのエステルであって、25℃で液状のエステル(C)について説明する。
1価アルコールとしては、炭素数が1〜20のものが好ましく、3〜10のものがより好ましい。
例えば、プロピルアルコール、イソプロプルアルコール、ブチルアルコール、イソブチルアルコール、ペンチルアルコール、イソペンチルアルコール、ヘキシルアルコール、イソヘキシルアルコール、ヘプチルアルコール、イソヘプチルアルコール、オクチルアルコール、イソオクチルアルコール、ノニルアルコール、イソノニルアルコール、デシルアルコール、イソデシルアルコール、
ウンデシルアルコール、イソウンデシルアルコール、ドデシルアルコール、イソドデシルアルコール、トリデシルアルコール、イソトリデシルアルコール、テトラデシルアルコール、イソテトラデシルアルコール、ペンタデシルアルコール、イソペンタデシルアルコール、ヘキサデシルアルコール、イソヘキサデシルアルコール、ヘプタデシルアルコール、イソヘプタデシルアルコール、オクタデシルアルコール、イソオクタデシルアルコール、ノナデシルアルコール、イソノナデシルアルコール、イコシルアルコール、イソイコシルアルコール等が挙げられる。
【0055】
カルボン酸としては、例えば、プロピオン酸、酪酸、吉草酸、カプロン酸、エナント酸、カプリル酸、ペラルゴン酸、カプリン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、マルガリン酸、ステアリン酸、安息香酸等のモノカルボン酸や、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、フタル酸等のジカルボン酸等が挙げられる。カルボン酸としては、前記ジカルボン酸等の使用が好ましい。
【0056】
本発明において25℃で液状とは、エステル(C)を25℃に保持した状態で、B型粘度計を用いて粘度を測定した時、粘度が10,000mPa・s以下であるものをいう。
【0057】
25℃で液状のエステル(C)の含有量は、ポリイソシアネート成分(A)とポリオール成分(B)との合計100質量部に対して0.1〜20質量部であり、好ましくは0.5〜10質量部である。また、液状エステル(C)は、単独もしくは2種以上を併用してもよい。
エステル(C)を0.1〜20質量部含むことによって、接着剤層を平滑化することができ、且つ、インキ層への密着性が確保できるため、接着剤組成物を高速で塗工しても、40℃以下の低温且つ短時間のエージングで、印刷部の良好な外観の積層体を得ることができる。
【0058】
本発明の積層体について説明する。本発明の積層体は、前述の通り、透明基材1とインキ層と接着剤層と基材2とをこの順で有する。
【0059】
透明基材1としては、ポリエチレン、ポリプロピレンなどのポリオレフィン、ポリエチレンテレフタレート(以下、PETともいう)、ポリカーボネート、ポリ乳酸などのポリエステル、ポリスチレン、AS樹脂、ABS樹脂などのポリスチレン系樹脂、ナイロン、ポリアミド、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、セロハン、紙、アルミなど、もしくはこれらの複合材料からなるフィルム状もしくはシート状のものがあり、上記の印刷方式を用いて塗布し、オーブンによる乾燥によって乾燥あるいは硬化させて定着することで、印刷物を得ることができる。基材は、金属酸化物などを表面に蒸着コート処理および/またはポリビニルアルコールなどコート処理が施されていても良く、さらにコロナ処理などの表面処理が施されていても良い。
【0060】
インキ層は特に限定されないが、グラビア印刷、フレキソ印刷などの既知の印刷方式で印刷できるが、特にグラビア印刷方式で印刷することが好ましい。グラビア印刷に用いられるシリンダーは、彫刻タイプ、腐食タイプ等公知のものが用いられる。
グラビア印刷に適した粘度及び濃度にまで希釈溶剤で希釈されたインキ組成物が、単独でまたは混合されて各印刷ユニットに供給され、印刷後、オーブンを通過させ、乾燥ないしは硬化され、インキ層が形成される。オーブンの温度は通常40〜80℃、印刷速度は通常50〜300m/分である。インキ層は、通常、0.5〜5g/m
2であり、1〜3.5g/m
2であることが好ましい。
【0061】
接着剤層は、前記ポリイソシアネート成分(A)と前記ポリオール成分(B)と前記25℃で液状のエステル(C)とを、前述の通り、ポリイソシアネート成分(A)とポリオール成分(B)との合計100質量部に対して、前記エステル(C)が0.1〜20質量部となるように、且つポリイソシアネート成分(A)とポリオール成分(B)との合計100質量%中に含まれる、4,4’−MDI、2,4’−MDIおよびTDIの合計量は10〜34質量%となるように混合した接着剤組成物の硬化物であり、例えば以下のような方法で得ることができる。
即ち、接着剤組成物を、前記インキ層上に、または酸素透過度が100CC(m
2、24hr、1atm、25℃)以下の基材2上に塗工し、接着剤層の前駆体を形成する。接着剤組成物の塗布量は、基材2の種類や塗工条件等に応じて適宜選択されるが、通常、1〜5g/m
2であり、好ましくは1.5〜4.5g/m
2である。
その後、接着剤層の前駆体に酸素透過度が100CC(m
2、24hr、1atm、25℃)以下の基材2を重ねたり、接着剤層の前駆体にインキ層、即ち透明基材1上に設けられた白色インキ層の前記透明基材1が接していない方の面を重ねたりした後、常温又は加温下にエージングして前記前駆体を硬化させ、接着剤層となし、積層体を製造する。本発明における接着剤組成物の場合、エージングに要する時間は1日程度である。また、本発明における接着剤組成物の場合、塗工〜エージングの際の環境湿度が高くても十分な接着性能を発現できる。
【0062】
用いられる基材2は酸素透過度が100CC(m
2、24hr、1atm、25℃)以下である。酸素透過度は厚みの影響を受ける。本願では、単位厚み(1μm)当たりの酸素透過度(以下、酸素透過係数という)と厚みから、酸素透過度が100CC以下のものを基材2として用いることができる。
例えば、エチレン含有率56%のエチレン−ビニルアルコール共重合物は、酸素透過係数(m
2、24hr、1atm、25℃)が3CCなので、1μmでも使用できる。
一方、以下に示すような酸素透過係数が大きいプラスチックフィルムも膜厚によっては使用できる。即ち、アクリロニトリル含有率70%のアクリロニトリル共重合物は、酸素透過係数が300CCなので、膜厚3μm以上とすれば使用できる。
同様に、
酸素透過係数が400CCのビニリデンクロライド共重合物は、膜厚4μm以上とすれば、
酸素透過係数が1700CCのナイロン6は、膜厚17μm以上とすれば、
酸素透過係数が1925CCのナイロン66は、膜厚19.25μm以上とすれば、
酸素透過係数が768CCのポリエチレンテレフタレートは、膜厚7.68μm以上とすれば、
酸素透過係数が2580CCのテレフタル酸−ビスフェノール共重合体ポリアリレートは、膜厚25.8μm以上とすれば、
酸素透過係数が4850CCのポリアセタールは、膜厚48.5μm以上とずれば、
酸素透過係数が650CCのポリクロロトリフロロエチレンは、膜厚6.5μm以上とすれば、
酸素透過係数が1300CCのポリフッ化ビニリデンは、膜厚13μm以上とすれば、
それぞれ基材2として使用できる。
【0063】
また、アルミニウム、酸化珪素、酸化アルミニウム等を各種プラスチックフィルムに蒸着した蒸着フィルムも基材2として用いることができる。多くの場合、蒸着層の厚みは1〜500nm程度であり、このような蒸着層を設けることによって、酸素透過度に対するプラスチックフィルムの種類・厚みの影響は極めて小さくなる。
例えば、無延伸ポリプロピレンフィルムにアルミニウム蒸着層を設けたものは、酸素透過度が20〜10CC(m
2、24hr、1atm、25℃)、
ポリエチレンテレフタレートフィルムにアルミニウム蒸着層を設けたものは、酸素透過度が2〜0.3CC(m
2、24hr、1atm、25℃)、
ポリエチレンテレフタレートフィルムに酸化アルミニウムの蒸着層を設けたものは、酸素透過度が4〜0.5CC(m
2、24hr、1atm、25℃)、
ポリエチレンテレフタレートフィルムに酸化珪素お蒸着層を設けたものは、酸素透過度が5〜0.3CC(m
2、24hr、1atm、25℃)であり、それぞれ基材2として用いられる。
また、金属箔として、ステンレス、鉄、銅、鉛等の金属箔は、厚みによらず酸素透過度が0CC(m
2、24hr、1atm、25℃)である。
基材2としては、各種プラスチックフィルムに蒸着層を設けたものや金属箔が好ましく、特に各種プラスチックフィルムに金属を蒸着したもの(以下、蒸着フィルムということもある)が好ましい。そして、金属の蒸着層は、接着剤層と接することが好ましい。
【0064】
なお、酸素透過度は、酸素透過率測定装置を用い、JISK7126の方法に従い求めることができる。例えば、株式会社日立ハイテクエンス製MОCОN酸素透過率測定装置(ОX-TRAN2/21)は、試料を通過した酸素量に比例した電流をキャリアガス(
窒素)により発生するクーロメトリックセンサーを備えた装置であり、標準負荷抵抗を通し電圧変化を測定し、酸素透過度に換算する。
【実施例】
【0065】
以下、実施例により本発明を更に具体的に説明する。実施例および比較例中の%および部は、断りのない限りは全て質量基準である。
【0066】
<質量平均分子量(Mw)および数平均分子量(Mn)の測定方法>
質量平均分子量(Mw)および数平均分子量(Mn)の測定は、昭和電工社製GPC(ゲルパーミエーションクロマトグラフィー)「ShodexGPCSystem−21」を用いた。GPCは溶媒に溶解した物質をその分子サイズの差によって分離定量する液体クロマトグラフィーであり、溶媒としてはテトロヒドロフラン、分子量の決定はポリスチレン換算で行った。
【0067】
<水酸基価の測定方法>
共栓三角フラスコ中に試料約1gを精密に量り採り、トルエン/エタノール(容量比:トルエン/エタノール=2/1)混合液100mlを加えて溶解した。更にアセチル化剤(無水酢酸25gをピリジンで溶解し、容量100mlとした溶液)を正確に5ml加え、約1時間攪拌した。これに、フェノールフタレイン試液を指示薬として加え、30秒間持続する。その後、溶液が淡紅色を呈するまで0.1Nアルコール性水酸化カリウム溶液で滴定した。
水酸基価は次の(式1)により求めた。水酸基価は樹脂の乾燥状態の数値とした(単位:mgKOH/g)。
(式1)水酸基価(mgKOH/g)=[{(b−a)×F×28.25}/S]/(不揮発分濃度/100)+D
ただし、S:試料の採取量(g)
a:0.1Nアルコール性水酸化カリウム溶液の消費量(ml)
b:空実験の0.1Nアルコール性水酸化カリウム溶液の消費量(ml)
F:0.1Nアルコール性水酸化カリウム溶液の力価
D:酸価(mgKOH/g)
【0068】
<酸価の測定方法>
共栓三角フラスコ中に試料約1gを精密に量り採り、トルエン/エタノール(容積比:トルエン/エタノール=2/1)混合液100mlを加えて溶解した。これに、フェノールフタレイン試液を指示薬として加え、30秒間保持した後、溶液が淡紅色を呈するまで0.1Nアルコール性水酸化カリウム溶液で滴定した。
酸価は次の(式2)により求めた。酸価は樹脂の乾燥状態の数値とした(単位:mgKOH/g)
(式2)酸価(mgKOH/g)={(5.611×a×F)/S}/(不揮発分濃度
/100)
ただし、S:試料の採取量(g)
a:0.1Nアルコール性水酸化カリウム溶液の消費量(ml)
F:0.1Nアルコール性水酸化カリウム溶液の力価
【0069】
<NCO含有率(質量%)の測定方法>
200mLの三角フラスコに試料約1gを精秤し、これに0.5Nジ−n−ブチルアミン(トルエン溶液)10mL、トルエン10mLを加えて溶解した。これに、フェノールフタレイン試液を指示薬として加え、30秒間保持した後、溶液が淡紅色を呈するまで0.25N塩酸溶液で滴定した。
NCO(質量%)は以下の(式3)によって求めた。
(式3)NCO(質量%)={(b−a)×4.202×F×0.25}/S
ただし、S:試料の採取量(g)
a:0.25N塩酸溶液の消費量(ml)
b:空実験の0.25N塩酸溶液の消費量(ml)
F:0.25N塩酸溶液の力価
【0070】
接着剤組成物用ポリイソシアネート成分(α)の合成
(合成例101)
数平均分子量約400のポリプロピレングリコール(以下、PPG−400という)129部、数平均分子量約2000のポリプロピレングリコール(以下、PPG−2000という)1018部、グリセリンにポリプロピレングリコールを付加した数平均分子量約400のトリオール(以下、PPG−400−3官能という)85部、4,4’−MDI670部を反応容器に仕込み、窒素ガス気流下で攪拌しながら70℃〜80℃で3時間加熱してウレタン化反応を行い、ポリウレタンポリイソシアネート(a)と未反応の4,4−ジフェニルメタンジイソシアネートとを含むポリイソシアネート組成物α−(1)を得た。
前記組成物α−(1)の、イソシアネート基含有率は6.9%、MDIモノマー含有率は23%であった。
【0071】
(合成例102)
アジピン酸(以下、ADAという)477部、プロピレングリコール323部を反応容器に仕込み、窒素ガス気流下で攪拌しながら150℃〜240℃に加熱してエステル化反応を行った。酸価が1.3(mgKOH/g)になったところで反応温度を200℃にし、反応容器内部を徐々に減圧し、1.3kPa以下で30分反応させ、酸価0.3(mgKOH/g)、水酸基価56.1(mgKOH/g)、数平均分子量約2000の両末端に水酸基を有するポリエステルジオール1を得た。
得られたポリエステルジオール1を222部、PPG−400を112部、PPG−2000を666部、PPG−400−3官能を72部、4,4’−MDIを800部、反応容器に仕込み、窒素ガス気流下で攪拌しながら70℃〜80℃で3時間加熱してウレタン化反応を行い、ポリウレタンポリイソシアネート(a)と未反応の4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネートとを含むポリイソシアネート組成物α−(2)を得た。
前記組成物α−(2)の、イソシアネート基含有率は10.3%、MDIモノマー含有率は28%であった。
【0072】
(合成例103−104)
表1に示す組成に従って、合成例101、合成例102と同様にして、ポリエーテルポリウレタンポリイソシアネート樹脂である、ポリイソシアネートα−(3)、ポリイソシアネートα−(4)を得た。
【0073】
【表1】
【0074】
(配合例201)
合成例101で得たポリイソシアネート組成物α−(1):700部、HDIビューレット体を200部、2,4’−MDI100部を混合し、ポリイソシアネート成分A−(1)を得た。
【0075】
(配合例201〜209)
表2に示す組成に従って、配合例301と同様にして、ポリイソシアネート成分A−(2)〜A−(9)を得た。
【0076】
【表2】
【0077】
接着剤組成物用ポリエーテルポリウレタンポリオール成分の合成
(合成例301)
PPG−400を400部、PPG−2000を200部、PPG−400−3官能を400部、4,4’−MDI:155部を反応容器に仕込み、窒素ガス気流下で攪拌しながら70℃〜80℃で3時間加熱してウレタン化反応を行い、数平均分子量が500、水酸基価220(mgKOH/g)のポリエーテルポリウレタンポリオールを得た。以下、この樹脂をポリエーテルポリウレタンポリオールb1−(1)と記す。
【0078】
(合成例302、303)
表3に示す組成に従って、合成例301と同様にして、ポリエーテルポリウレタンポリオールb1−(2)、ポリエーテルポリウレタンポリオールb1−(3)を得た。
【0079】
(配合例403)
合成例301で得たポリエーテルポリウレタンポリールb1−(1):90部、ジエチレングリコール:10部を混合し、ポリオール成分B−(3)を得た。
【0080】
【表3】
【0081】
(配合例404)
アジピン酸:208部、ジエチレングリコール:192部を反応容器に仕込み、窒素ガス気流下で攪拌しながら150℃〜240℃に加熱してエステル化反応を行った。酸価が1.3(mgKOH/g)になったところで反応温度を200℃にし、反応容器内部を徐々に減圧し、1.3kPa以下で30分反応させ、酸価0.5(mgKOH/g)、水酸基価56.1(mgKOH/g)、数平均分子量約2000の両末端に水酸基を有するポリエステルジオール2を得た。
合成例301で得たポリエーテルポリウレタンポリールb1−(1):70部、前記ポリエステルジオール2:30部を混合し、ポリオール成分B−(4)を得た。
【0082】
(配合例407)
合成例301で得たポリエーテルポリウレタンポリールb1−(1):60部、前記ポリエステルジオール2:40部を混合し、ポリオール成分B−(7)を得た。
【0083】
【表4】
なお、合成例301、302で得たポリエーテルポリウレタンポリールb1−(1)、b1−(2)をそのまま用いる場合を、配合例を示す表4では、便宜上ポリオール成分B−(1)、B−(2)と表現する。
【0084】
(実施例1)
配合例201で得たポリイソシアネート成分A−(1)100部と、配合例401で得たポリオール成分B−(1)50部と、エステルC−(1)として25℃で液状であるアジピン酸ジイソプロピル1.5部を60℃で混合し、無溶剤型接着剤組成物AD1を得た。AD1について後述する方法に従い、積層体を得、ラミネート外観、ラミネート強度を評価した。
なお、前記無溶剤型接着剤組成物AD1は、ポリオール成分中の水酸基:100モルに対し、ポリイソシアネート成分A−(1)由来のイソシアネート基を156モル含有する。
水酸基100モルに対するイソシアネート基の量は、以下のようにして求める。
水酸基100モルに対するイソシアネート基の量=[イソシアネート基(eq.)/水酸
基(eq.)]×100
イソシアネート基(eq.)=NCO含有率(質量%)/(42×100)
水酸基(eq.)=水酸基価/56100
【0085】
また、前記無溶剤型接着剤組成物100%中に含まれる、4,4’−MDI、2,4’−MDI、2,2’−MDI、TDI、HDI、IPDI(以下、イソシアネートモノマーという)の合計率は、17.3%であった。
イソシアネートモノマー含有率は、GPCチャート上に観察される、Mn=200〜300付近のMDIモノマー及びIPDIモノマー由来のピーク面積とMn=100〜200付近のTDIモノマー及びHDIモノマー由来のピーク面積との合計面積を、GPCチャート上に観察される全ピークの合計面積で除したものである。
イソシアネートモノマー含有率(%)=(イソシアネートモノマーのピーク面積の合計/全ピークの合計面積)×100
【0086】
また、前記無溶剤型接着剤組成物AD1はポリイソシアネート成分とポリオール成分との合計100質量部に対して、カルボキシル基を有する化合物と1価アルコールとのエステル化物であって、25℃で液状のエステルを1質量部含有する。
【0087】
(実施例2〜24)(比較例1〜13)
表5〜7に示す組成に従って、実施例1と同様にして、接着剤組成物AD2〜24、AD25〜37を得た。
なお、対比の便宜上、表6、7には、それぞれ実施例1、12も載せた。
【0088】
[積層体の作製]
無溶剤テストコーターを用い、ОPPフィルムに印刷されたインキ層の表面に、各実施例、比較例で得られた無溶剤型接着剤組成物AD1〜AD37を温度60℃で、塗工速度200m/分にて塗布し(塗布量:2g/m
2)、この塗布面に酸素透過度が20CC(m
2、24h、1atm、25℃)であるアルミニウム蒸着無延伸ポリプロピレンフィルム(以下、VMCPPという。厚さ:25μm。)の蒸着面を重ね、準備段階の積層体(プレ積層体)を得た。
これらプレ積層体を25℃、80%RHの環境下にて、1日間エージングして、接着剤層を硬化させ、積層体を作成した。得られた積層体について、下記の方法に従い、積層体の接着力、積層体の界面状態を評価した。結果を表5〜7に示す。
【0089】
[積層体の界面状態(外観)]
透明基材1側からインキ層および接着剤層を透して蒸着部を目視観察し、以下の基準にて評価した。巻かれているロールの外側から、小さな斑点状の模様が観察されなくなるまで巻き解し、巻き解した長さを測り、以下の基準にて評価した。ロール状のプレ積層体は内側になるほど圧力が増し、外側になるほど圧力が減少する。従って、内側になるほど硬化途中の接着剤層には圧力が加わるので濡れ広がりやすいが、外側になるほどレベリング性が低下する。ロールの末端から小さな斑点状の模様が観察されなくなるまでの長短がレベリング性の指標となり、短いほどレベリング性が優れる。
5:15m未満
4:15m以上、20m未満
3:20m以上、25m未満
2:25m以上、30m未満
1:30m以上
【0090】
[接着力]
小さな斑点状の模様が観察されなくなるまで巻き戻してから、積層体を長さ300mm、幅15mmに切り取り、テストピースとした。インストロン型引張試験機を使用し、25℃の環境下にて、剥離速度300mm/分の剥離速度で引張り、15mm幅でOPP/VMCPP間のT型剥離強度(N)を測定した。この試験を5回行い、その平均値を求め以下の基準にて評価した。
5:接着力1.2N以上
4:接着力0.9N以上、1.2N未満
3:接着力0.6N以上、0.9N未満
2:接着力0.3N以上、0.6N未満
1:接着力0.3N未満
【0091】
【表5】
【0092】
表5に示すように、本発明における接着剤組成物で接着剤層を形成した実施例1〜10は、25℃1日エージング後の外観と接着力に優れていることがわかる。
これに対し、比較例1は、イソシアネート成分(A)として、4、4’-MDIのみを使用して得られたウレタンプレポリマー(a)と4、4’-MDIを含有するイソシアネート成分A−(8)を使用するので、反応速度が速すぎて硬化途中の接着剤層のレベリング性が低下するために外観が十分ではない。
比較例2は、ウレタンプレポリマーを得る際に4、4’-MDIを使用しておらず、2、4’-MDIのみを使用しているため反応速度が遅すぎて25℃、1日エージング後の接着力が十分ではない。
比較例3で用いたポリオール成分(B)は、ポリオール成分B−(5)、即ち、質量平均分子量3200のポリエーテルポリウレタンポリオールb1−(3)であったので、塗工時の平滑性が低下し外観が不良となる。
比較例4は、ポリオール成分(B)として質量平均分子量191のトリプロピレングリコールをポリオールB−(6)として用いたので、イソシアネート成分(A)との反応速度が速すぎて、硬化途中の接着剤層のレベリング性が低下するために外観が十分ではない。
比較例5は、ポリオール成分(B)としてポリエステルポリオールを40%用いているため、ポリオール成分(B)とポリイソシアネート成分(A)の相溶性が低下するため外観が低下する。
比較例6は配合後の接着剤中にイソシアネートモノマーが34.2%含まれているため、インキへのイソシアネート成分の浸透が発生することによって塗工後のラミネート外観が十分ではない。
【0093】
【表6】
【0094】
表6に示すように本発明における接着剤組成物で接着剤層を形成した実施例1および実施例11〜19は、25℃1日エージング後の外観と接着力に優れていることがわかる。これに対し、比較例7〜9は、液状エステル(C)の代わりに、25℃において固形状のエステルを用いたので、平滑な接着剤層を形成できず、積層体外観が劣り、且つ、インキ層への密着性が低下し、接着性能が劣る。
【0095】
【表7】
【0096】
表7に示すように、液状エステル(C)としてC−(3)を用いて、本発明における接着剤組成物で接着剤層を形成した実施例14および実施例20〜24は、25℃1日エージング後の外観と接着力に優れていることがわかる。これに対し、比較例10は液状のエステルC−(3)を含んでおらず、比較例11では液状のエステルC−(3)の含有量が0.1%未満と少ないため、それぞれ十分に平滑な接着剤層を形成できず、積層体外観が劣る。比較例12〜13は液状のエステルC−(3)の量が多すぎるため、接着剤層が荒れて平滑な接着剤層を形成できず、積層体外観が劣り、且つ、インキ層への密着性が低下し、接着性能が劣る。