(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記外部配線が前記表面電極と接触する領域と、前記トランジスタ部と前記ダイオード部との境界とが、前記半導体基板のおもて面側から見たときに重なるように前記外部配線が設けられている
請求項1から5の何れか1項に記載の半導体装置。
第1導電型のドリフト領域を有する半導体基板と、前記半導体基板の内部において、前記半導体基板のおもて面に平行な第1方向に沿って交互に配置されており、前記半導体基板の裏面側に第2導電型のコレクタ領域を有するトランジスタ部と、前記半導体基板の裏面側に、前記ドリフト領域よりもドーピング濃度の高い第1導電型のカソード領域を有するダイオード部と、前記トランジスタ部および前記ダイオード部の上方に設けられて、前記トランジスタ部および前記ダイオード部に電気的に接続される表面電極と、前記表面電極に接合されており、前記第1方向における前記表面電極との接触幅が、前記第1方向における前記トランジスタ部の幅および前記第1方向における前記ダイオード部の幅の少なくとも一方より大きい外部配線と、を備える半導体装置の製造方法において、
前記表面電極の上面に保護膜を形成する工程と、
前記保護膜を形成する工程後に前記保護膜に前記表面電極を露出する第1開口部を形成する工程と、を有し、
前記外部配線は、前記第1開口部を用いて位置決めを行って前記表面電極に接続し、
前記第1方向における前記トランジスタ部の幅は、前記第1方向における前記ダイオード部の幅より大きく、
前記外部配線が前記表面電極と接触する接合部は、前記トランジスタ部と前記ダイオード部の領域にまたがっている
半導体装置の製造方法。
【発明を実施するための形態】
【0029】
以下、発明の実施の形態を通じて本発明を説明するが、以下の実施形態は請求の範囲にかかる発明を限定するものではない。また、実施形態の中で説明されている特徴の組み合わせの全てが発明の解決手段に必須であるとは限らない。
【0030】
本明細書では、X軸、Y軸およびZ軸の直交座標軸を用いて技術的事項を説明する。直交座標軸は、構成要素の相対位置を特定するに過ぎず、特定の方向を限定するものではない。例えば、Z軸は地面に対する高さ方向を限定して示すものではない。なお、+Z軸方向と−Z軸方向とは互いに逆向きの方向である。正負を記載せず、Z軸方向と記載した場合、+Z軸および−Z軸に平行な方向を意味する。
【0031】
図1は、本発明の実施形態における半導体装置100のおもて面を示す図である。本例の半導体装置100は、半導体基板10の内部において、トランジスタ部70とダイオード部80とを有する半導体チップである。トランジスタ部70とダイオード部80の外周には耐圧構造部400が備えられている。本例の半導体装置100は、トランジスタ部70の幅およびダイオード部80の幅の少なくとも一方を予め定められた値以下に制限することによって、半導体装置100のXY平面内での位置に応じた温度変動幅を小さくする。
【0032】
本例の半導体基板10は、シリコン(以下、Si)基板である。他の例において、半導体基板10は、炭化ケイ素(SiC)等の化合物半導体基板であってもよい。トランジスタ部70は、IGBT(Insulated Gate Bipolar Transistor)等のトランジスタを含む領域である。ダイオード部80は、FWD(Free Wheel Diode)等のダイオードを含む領域である。
【0033】
本例では、トランジスタ部70とダイオード部80とは、X軸方向に沿って交互に配置される。半導体基板10のおもて面方向から見た場合に、半導体基板10は、トランジスタ部70とダイオード部80とがストライプ状に交互に配置された平面形状を有してよい。トランジスタ部70とダイオード部80とは、それぞれY軸方向に延伸してよい。X軸方向は、半導体基板10のおもて面に平行な第1方向である。Y軸方向は、半導体基板10のおもて面に平行であって第1方向に直交する第2方向である。本例において、半導体基板10のおもて面は、XY平面と平行である。
【0034】
半導体基板10の上方には、表面電極を有する。
図1においては、トランジスタ部70とダイオード部80の配置を示すために、表面電極については省略している。表面電極は、トランジスタ部70およびダイオード部80とコンタクトホール等を通じて電気的に接続される。半導体基板10の上方には、ゲート電極90が設けられてよい。表面電極とゲート電極90とは互いに分離して設けられる。ゲート電極90は、コンタクトホールを通ってゲート配線に接触する。
【0035】
表面電極およびゲート電極90は、金属を含む材料で形成される。例えば、各電極の少なくとも一部の領域はアルミニウムまたはアルミニウム合金で形成される。各電極は、アルミニウム等で形成された領域の下層に、チタンやチタン化合物等で形成されたバリアメタルを有してよい。さらにコンタクトホール内において、バリアメタルとアルミニウム等に接するようにタングステン等を埋め込んで形成されたプラグを有してもよい。なお、各電極の少なくとも一部の領域は銅、または銅合金で形成されてもよく、外部配線2の材質によって、適正なものを選択する。
【0036】
半導体装置100は、外部配線2a、2b、2c、2d、2e、および2f(以下、外部配線2と総称する場合がある)を有する。外部配線2は、トランジスタ部70のエミッタに電気的に接続されるワイヤであってよい。外部配線2は、表面電極に接合される。外部配線2は、アルミニウムワイヤ、アルミニウム合金ワイヤ、アルミニウム−シリコンワイヤ、銅ワイヤ、銅合金ワイヤ、金ワイヤ、またはクラッドワイヤであってよい。クラッドワイヤは、芯材と、芯材を取り囲む外周部とを有する。芯材は、鉄または鉄合金で形成さてよく、外周部は、アルミニウムまたはアルミニウム合金で形成されてよい。外部配線2のワイヤ径は、好ましくは300μm以上600μm
以下であり、より好ましくは400μm以上500μm
以下である。
【0037】
本例では、複数の外部配線2は、外部配線2a、2b、および2cの群と、外部配線2d、2e、および2fの群に分かれて配置されている。しかしながら、外部配線2の本数および配置は、
図1に示される場合に限られない。外部配線2において、X軸方向における表面電極との接触幅D1が、X軸方向におけるトランジスタ部70の幅D3およびX軸方向におけるダイオード部80の幅D2の少なくとも一方より大きい。複数の外部配線2のそれぞれにおいて、X軸方向における表面電極との接触幅D1が、X軸方向におけるトランジスタ部70の幅D3およびX軸方向におけるダイオード部80の幅D2の少なくとも一方より大きくてよい。
【0038】
図2は、
図1におけるA−A´断面の一例を示す図である。
図2は、A−A´断面の概略構成について示しており、詳しい構成については省略している。本例では、半導体基板10の表面電極52側の主面をおもて面と称し、おもて面と反対側の他の主面を裏面と称する。裏面からおもて面に向かう方向を便宜的に「上」と称し、これと反対の方向を便宜的に「下」と称する。
【0039】
半導体装置100は、半導体基板10のおもて面側の内部に形成されたゲートトレンチ部40およびダミートレンチ部30を備える。ゲートトレンチ部40およびダミートレンチ部30は、トレンチ部の一例である。半導体装置100は、コレクタ電極24を備える。コレクタ電極24は、半導体基板10の裏面に形成される。本明細書において、表面電極52とコレクタ電極24とを結ぶ方向を深さ方向と称する。
【0040】
X軸方向におけるトランジスタ部70の幅D3は、X軸方向におけるダイオード部80の幅D2より大きい。トランジスタ部70の幅D3は、ダイオード部の幅D2の2倍以上3倍以下であってよい。ダイオード部80の幅D2は、100μm以上であってよく、さらに好ましくは、ダイオード部80の幅D2は、150μm以上であってよい。一方、トランジスタ部70の幅D3は、200μm以上であってよい。さらに好ましくは、トランジスタ部70の幅D3は、300μm以上であってよい。
【0041】
ダイオード部80の幅D2およびトランジスタ部70の幅D3の少なくとも一方が、小さくなるにつれて、ダイオード部80に順方向電圧V
fを印加したときのI−V特性がトランジスタ部70のゲート電圧による影響を受けやすくなる。具体的には、ダイオード部80の幅D2等が小さくなるにつれて、順方向電流が流れているときのダイオード部80の抵抗値が大きくなる。これは、ダイオード部80の幅D2およびトランジスタ部70の幅D3の少なくとも一方が小さくなるにつれて、ダイオード部80とトランジスタ部70の境界の数が増えることに起因すると考えられる。
【0042】
したがって、ダイオード部80の幅D2は、順方向電圧V
fの印加時における特性への影響を軽減する見地からは、好ましくは、100μm以上であり、より好ましくは150μm以上であってよい。同様に、ダイオード部80とトランジスタ部70の境界の数が増えすぎることを防止する見地から、トランジスタ部70の幅D3は、好ましくは、200μm以上であり、より好ましくは、300μm以上であってよい。
【0043】
一方、トランジスタ部70の動作時と、ダイオード部80の動作時とでの半導体基板10における温度分布を均一化する見地からは、ダイオード部80の幅D2は320μm以下であることが望ましい。同様に、温度分布を均一化する見地からは、トランジスタ部70の幅D3は、好ましくは、1000μm以下であり、より好ましくは500μm以下である。
【0044】
外部配線2は、接合部4およびフィード部6を備えてよい。接合部4は、ワイヤボンディングのときに表面電極52に接合する部分である。接合部4において、外部配線2の延伸方向に沿った長さが、接合長である。接合部4は、外部配線2の延伸方向に延伸している。したがって、本例では、接合部4は、第1方向に平行に延伸している。接合部4において外部配線2の延伸方向に垂直な方向の幅が、潰れ幅である。本例では、外部配線2は、X軸方向に沿って延伸している。外部配線2がX軸方向に沿って延伸している場合には、接合長が接触幅D1となる。したがって、潰れ幅に依存することなく接合長を長くすることによって接触幅D1を広くすることができる。
【0045】
外部配線2のX軸方向における表面電極52との接触幅D1は、X軸方向におけるトランジスタ部70の幅D3およびX軸方向におけるダイオード部80の幅D2のそれぞれより大きくてよい。換言すれば、X軸方向におけるトランジスタ部70の幅D3およびX軸方向におけるダイオード部80の幅D2が、外部配線2の接触幅D1に比べて小さくなるように、トランジスタ部70のX軸方向のピッチ間隔、およびダイオード部80のX軸方向のピッチ間隔が定められてよい。
【0046】
さらに、X軸方向におけるトランジスタ部70の幅D3およびX軸方向におけるダイオード部80の幅D2が、外部配線2のワイヤ径D4より小さくてよい。トランジスタ部70の幅D3およびダイオード部80の幅D2が外部配線2のワイヤ径D4より小さければ、ワイヤボンディングのプロセス条件によらず、X軸方向におけるトランジスタ部70の幅D3およびX軸方向におけるダイオード部80の幅D2を、外部配線2の接触幅D1に比べて小さくすることができる。
【0047】
外部配線2が表面電極52と接触する接触領域(すなわち接合部4の領域)と、トランジスタ部70とダイオード部80との境界とが、半導体基板10のおもて面側から見たときに重なるように外部配線2が設けられてよい。換言すれば、外部配線2が表面電極52と接触する接合部4は、トランジスタ部70の領域とダイオード部80の領域にまたがっている。トランジスタ部70の領域は、半導体基板10のおもて面側から見たときに、トランジスタ部70が占める領域である。ダイオード部80の領域は、半導体基板10のおもて面側から見たときに、
ダイオード部80が占める領域である。
図2に示される例では、トランジスタ部70とダイオード部80との境界として、複数の境界が、接触領域と重なっている。但し、1つの境界が接合部4の領域と重なっていてもよい。
【0048】
半導体基板10の厚みD5は、X軸方向におけるダイオード部80の幅D2の半分より大きくてよい。換言すれば、X軸方向におけるダイオード部80の幅D2は、半導体基板10の厚みD5の2倍より小さくてよい。また、半導体基板10の厚みD5は、X軸方向におけるトランジスタ部70の幅D3の半分より大きくてよい。換言すれば、X軸方向におけるトランジスタ部70の幅D3は、半導体基板10の厚みD5の2倍より小さくてよい。半導体基板10の厚みD5は、100μm以上であってよく、より好ましくは、100μm以上200μm以下であってよい。
【0049】
半導体基板10の厚みD5が薄くなるほど、発熱している領域から隣接する領域へ熱伝導しにくくなり、温度分布が不均一になりやすい。したがって、半導体基板10の厚みD5が薄くなるほど、X軸方向におけるダイオード部80の幅D2およびX軸方向におけるトランジスタ部70の幅D3を小さくして、温度分布の均一化を図ることが好ましい。
【0050】
図3は、
図1におけるA−A´断面の一例の拡大図である。
図3は、
図2における点線で囲まれた部分を示している。本例の半導体装置100は、半導体基板10、層間絶縁膜38、表面電極52、およびコレクタ電極24を有する。本例の表面電極52は、エミッタ電極である。但し、表面電極52は、外部配線2と接合されており、かつ、トランジスタ部70およびダイオード部80と電気的に接続されている電極であればよく、エミッタ電極に限られない。一例において、表面電極52は、エミッタ電極の上方に第2層間絶縁膜を介して積層された金属層であってよい。この場合、表面電極52は、第2層間絶縁膜に設けられたコンタクトホールを介してエミッタ電極に電気的に接続されてよい。
【0051】
表面電極52およびコレクタ電極24は、金属等の導電材料で形成される。一例において、表面電極52は、アルミニウム(Al)に固溶限以上のシリコン(Si)原子を添加したAl−Si電極であってもよい。表面電極52は、AlにSiと銅(Cu)を添加したAl−Si−Cu電極であってもよい。また、一例において、コレクタ電極24は、アルミニウム(Al)に固溶限以上のシリコン(Si)原子を添加したAl−Siにチタン(Ti)、ニッケル(Ni)、金(Au)を積層した電極であってもよい。コレクタ電極24
は、AlにSiと銅(Cu)を添加したAl−Si−Cu電極であってもよい。また、コレクタ電極は
、Al
電極であってもよい。
【0052】
図3に示される断面において、ゲートトレンチ部40およびダミートレンチ部30等の各トレンチ部に挟まれたメサ部61にはベース領域14が形成されている。メサ部61とは、トレンチ部に挟まれた半導体基板10の領域において、トレンチ部の最も深い底部よりもおもて面側の領域である。ベース領域14は、ウェル領域よりもドーピング濃度の低い第2導電型である。トランジスタ部70においては、ベース領域14の上面の一部に半導体基板よりもドーピング濃度が高い第1導電型のエミッタ領域12が選択的に形成される。本例のエミッタ領域12はN+型である。また、ベース領域14の下面には、半導体基板よりもドーピング濃度が高く、エミッタ領域12よりもドーピング濃度が低い第1導電型の蓄積層15が選択的に形成される。本例の蓄積層15はN型である。
【0053】
したがって、トランジスタ部70のおもて面側には、N+型のエミッタ領域12およびP−型のベース領域14、およびN型の蓄積層15が、半導体基板10のおもて面側から順番に形成される。A−A´断面において、ダイオード部80のおもて面側には、P−型のベース領域14が形成されている。
【0054】
トランジスタ部70において、P−型のベース領域14の下面とN−型のドリフト領域18との間にはN型の蓄積層15が形成される。ダイオード部80において、ベース領域14の下面とドリフト領域18との間には、N型の蓄積層15が形成される。トランジスタ部70およびダイオード部80の双方において、ドリフト領域18の下面にはN+型のバッファ領域20が形成される。
【0055】
バッファ領域20は、ドリフト領域18の下面側に形成される。バッファ領域20のドーピング濃度は、ドリフト領域18のドーピング濃度より高い。バッファ領域20は、ベース領域14の下面側から広がる空乏層が、P+型のコレクタ領域22およびN+型のカソード領域82に到達することを防ぐフィールドストップ層として機能してよい。
【0056】
トランジスタ部70において、バッファ領域20の下面には、P+型のコレクタ領域22が形成される。ダイオード部80において、バッファ領域20の下面には、N+型のカソード領域82が形成される。なお、活性領域において、カソード領域82に一致する下面の領域をダイオード部80とする。または、半導体基板10のおもて面に対して、半導体基板10の裏面と垂直な方向にカソード領域82を投影したときの投影領域をダイオード部80としてもよい。また、活性領域において、半導体基板のおもて面に対して、半導体基板10の裏面と垂直な方向にコレクタ領域22を投影したときの投影領域であって、且つ、エミッタ領域12を含む所定の単位構成が規則的に配置された領域をトランジスタ部70とする。
【0057】
半導体基板10のおもて面側には、1以上のゲートトレンチ部40、および、1以上のダミートレンチ部30が形成される。各トレンチ部は、半導体基板10のおもて面から、ベース領域14を貫通して、ドリフト領域18に到達する。エミッタ領域12が設けられている領域においては、各トレンチ部はエミッタ領域12も貫通して、ドリフト領域18に到達する。トレンチ部がドーピング領域を貫通するとは、ドーピング領域を形成してからトレンチ部を形成する順序で製造したものに限定されない。トレンチ部を形成した後に、トレンチ部の間にドーピング領域を形成したものも、トレンチ部がドーピング領域を貫通しているものに含まれる。
【0058】
ゲートトレンチ部40は、半導体基板10のおもて面側に形成されたゲートトレンチ、ゲート絶縁膜42およびゲート導電部44を有する。ゲート絶縁膜42は、ゲートトレンチの内壁を覆って形成される。ゲート絶縁膜42は、ゲートトレンチの内壁の半導体を酸化または窒化して形成してよい。ゲート導電部44は、ゲートトレンチの内部においてゲート絶縁膜42よりも内側に形成される。つまりゲート絶縁膜42は、ゲート導電部44と半導体基板10とを絶縁する。ゲート導電部44は、ポリシリコン等の導電材料で形成される。
【0059】
ゲート導電部44は、深さ方向において、ゲート絶縁膜42を挟んで、少なくとも隣接するベース領域14と対向する領域を含む。A−A´断面におけるゲートトレンチ部40は、半導体基板10のおもて面において層間絶縁膜38により覆われる。ゲート導電部44に所定の電圧が印加されると、ベース領域14のうちゲートトレンチに接する界面の表層に電子の反転層によるチャネルが形成される。
【0060】
ダミートレンチ部30は、A−A´断面において、ゲートトレンチ部40と同一の構造を有してよい。ダミートレンチ部30は、半導体基板10のおもて面側に形成されたダミートレンチ、ダミー絶縁膜32およびダミー導電部34を有する。ダミー絶縁膜32は、ダミートレンチの内壁を覆って形成される。ダミー導電部34は、ダミートレンチの内部に形成され、且つ、ダミー絶縁膜32よりも内側に形成される。ダミー絶縁膜32は、ダミー導電部34と半導体基板10とを絶縁する。ダミー導電部34は、ゲート導電部44と同一の材料で形成されてよい。例えばダミー導電部34は、ポリシリコン等の導電材料で形成される。ダミー導電部34は、深さ方向においてゲート導電部44と同一の長さを有してよい。当該断面におけるダミートレンチ部30は、半導体基板10の上面において層間絶縁膜38により覆われる。なお、ダミートレンチ部30およびゲートトレンチ部40の底部は、下側に凸の曲面状(断面においては曲線状)であってよい。
【0061】
以上のように構成される半導体装置100について、比較例と比較して説明する。
図4は、比較例における半導体装置101のおもて面を示す図である。比較例における半導体装置101では、トランジスタ部70の幅D3およびダイオード部80の幅D2が本発明の実施形態における半導体装置100と比べて大きい。比較例における半導体装置101では、X軸方向における表面電極との接触幅D1が、X軸方向におけるトランジスタ部70の幅D3およびX軸方向におけるダイオード部80の幅D2のそれぞれより大きい。
【0062】
図4に示される例では、外部配線2が表面電極52と接触する接触領域と、トランジスタ部70とダイオード部80との境界とが、半導体基板10のおもて面側から見たときに重ならない状態が示されている。外部配線2の接合部4の位置は、プロセス工程によって変動し得る。したがって、外部配線2の接合部4の位置の変動によっては、
外部配線2が表面電極52と接触する接触領域と、トランジスタ部70とダイオード部80との境界とが、半導体基板10のおもて面側から見たときに重ならないように外部配線2が配置され得る。
【0063】
図5は、比較例におけるダイオード部80の動作時における熱拡散の一例を示す図である。
図6は、比較例におけるトランジスタ部70の動作時における熱拡散の一例を示す図である。半導体装置101において、トランジスタ部70が動作して発熱している場合には、ダイオード部80は休止していて発熱していなくてよい。逆に、ダイオード部80が動作して発熱している場合には、トランジスタ部70は休止していて発熱していなくてよい。
【0064】
図5および
図6において、熱が拡散して温度が所定値以上に高くなった熱拡散領域110をハッチングで示している。一方、熱が十分に拡散しておらず温度が所定値未満である未拡散領域120については、ハッチングしていない。比較例の半導体装置101におけるトランジスタ部70のX軸方向における幅D3およびダイオード部80のX軸方向における幅D2が、本発明の実施形態における半導体装置100における幅D3およびD2に比べて大きい。したがって、
図5に示されるとおり、比較例の半導体装置101においては、熱拡散領域110と未拡散領域120とが生じており、平面における温度分布が不均一となり得る。
【0065】
また、
図5および
図6に示されるとおり、ダイオード部80の動作時とトランジスタ部70の動作時とで外部配線2の接合部4に生じる温度差が本発明の実施形態における半導体装置100に比べて大きい。接合部4のところで、温度が上昇と下降とを繰り返すことで、熱疲労が生じやすくなる。
【0066】
図7は、本発明の実施形態における半導体装置100における熱拡散の一例を示す。
図7は、半導体装置100においてダイオード部80の動作時における熱拡散の一例を示す。半導体装置100におけるトランジスタ部70のX軸方向における幅およびダイオード部80のX軸方向における幅は、比較例の半導体装置101における各幅に比べて小さい。
【0067】
したがって、ダイオード部80の動作時においても、隣接するトランジスタ部70の幅D3が比較例の場合に比べて小さいので、隣接するトランジスタ部70の全域に熱が十分に拡散する。それゆえ、半導体装置100の平面温度分布の均一性が比較例の場合に比べて高まる。トランジスタ部70の動作時においても、隣接するダイオード部80の幅D2が比較例の場合に比べて小さいので、隣接するダイオード部80の全域に熱が十分に拡散する。したがって、ダイオード部80の動作時とトランジスタ部70の動作時とで外部配線2の接合部4に生じる温度差が比較例の場合と比べて小さくなる。これにより、接合部4における熱疲労が軽減され、半導体装置100の長期的な信頼性を高めることができる。
【0068】
特に、半導体装置100が駆動される場合、トランジスタ部70とダイオード部80との境界と、外部配線2の接触領域とが重なる場合には、外部配線2の接触領域と重なる領域において、トランジスタ部70とダイオード部80のどちらかが発熱している。接合部4が、トランジスタ部70の領域とダイオード部80の領域にまたがっているように配置されることによって、トランジスタ部70の動作時とダイオード部80の動作時との間で外部配線2の接合部4に与えられる温度の差異を軽減することができる。したがって、接合部4において温度の変動が小さくなり、熱疲労が軽減され、半導体装置100の長期的な信頼性を高めることができる。
【0069】
外部配線2のX軸方向における表面電極52との接触幅D1が、X軸方向におけるトランジスタ部70の幅D3およびX軸方向におけるダイオード部80の幅D2のそれぞれより大きい場合には、外部配線2の接合部4の位置が変動しても、
外部配線2が表面電極52と接触する接触領域と、トランジスタ部70とダイオード部80との境界とが、半導体基板10のおもて面側から見たときに重なる。したがって、外部配線2の接合部4の位置がプロセス工程によって変動した場合であっても、上述したように、半導体装置100の長期的な信頼性を高めることができる。
【0070】
図8は、ダイオード部80の幅D2が540μmである半導体装置100においてトランジスタ部70に通電した場合の温度分布の一例である。トランジスタ部70の幅D3は、1050μmであり、ダイオード部80の幅D2の約2倍である。
図9は、ダイオード部80の幅D2が310μmである半導体装置100においてトランジスタ部70に通電した場合の温度分布の一例である。トランジスタ部70の幅D3は、710μmであり、ダイオード部80の幅D2の約2.3倍である。
図10は、ダイオード部80の幅D2が200μmである半導体装置100においてトランジスタ部70に通電した場合の温度分布の一例である。トランジスタ部70の幅D3は、470μmであり、ダイオード部80の幅D2の約2.4倍である。
【0071】
図8、
図9、および
図10において、それぞれ縦軸は、半導体装置100のチップ温度(℃)を示す。横軸は、半導体装置100の対角線上の位置を示す。
図8、
図9、および
図10において、半導体装置100の駆動条件、すなわち電流、電圧、および周波数の条件は同じである。
【0072】
図8、
図9、および
図10に示されるとおり、半導体装置100を駆動させたときには、半導体装置100の面内での位置に応じて温度は変動している。温度は、位置に応じて上昇と下降とを繰り返しており、波形状に分布している。温度の変動幅は、
図8の場合(D2が540μmの場合)がΔ4.0℃であり、
図9の場合(D2が310μmの場合)がΔ3.6℃であり、
図10の場合(D2が200μmの場合)がΔ1.0℃である。温度の変動幅は、波形状をなす温度分布の振幅、すなわち、温度分布のリップル幅を意味する。振幅は、波形状をなす温度分布の極大値と極小値との差分Xの半値であってよい。
【0073】
図11は、ダイオード部80の幅が540μmである半導体装置100においてダイオード部80に通電した場合の温度分布の一例である。トランジスタ部70の幅D3は、1050μmである。
図11において用いられる半導体装置100は、
図8において用いられた半導体装置100と同様である。
図12は、ダイオード部80の幅が310μmである半導体装置100においてダイオード部80に通電した場合の温度分布の一例である。トランジスタ部70の幅D3は、710μmである。
図12において用いられる半導体装置100は、
図9において用いられた半導体装置100と同様である。
【0074】
図11および
図12において、それぞれ縦軸は、半導体装置100のチップ温度(℃)を示す。横軸は、半導体装置100の対角線上の位置を示す。
図11および
図12において、半導体装置100の駆動条件、すなわち電流、電圧、および周波数の条件は同じである。
【0075】
図11の場合(D2が540μm)において、半導体装置100内の温度の変動幅がΔ6.0℃であり、
図12の場合(D2が310μm)において、半導体装置100内の温度の
変動幅がΔ1.0℃である。したがって、ダイオード部80の幅が310μmでありトランジスタ部70の幅D3が710μmとすることによって、ダイオード部80の幅が540μmでありトランジスタ部70の幅が1050μmである場合に比べて、半導体装置100内の温度の変動幅(リップル幅)を大幅に低減することができる。ダイオード部80の幅D2を、320μmより小さくすることにより、FWD通電時における半導体装置100の温度の変動幅を大幅に低減する効果が得られる。
【0076】
図13は、ダイオード部80の幅が540μmである半導体装置100においてダイオード部80に通電した場合の熱拡散の一例を示す図である。
図14は、ダイオード部80の幅が310μmである半導体装置100においてダイオード部80に通電した場合の熱拡散の一例を示す図である。
図15は、ダイオード部80の幅が200μmである半導体装置100においてダイオード部80に通電した場合の熱拡散の一例を示す図である。
図13、
図14、および
図15は、それぞれ
図8、
図9、
図10において用いた半導体装置100と同様である。
図13、
図14、および
図15において、ハッチング密度が高い(濃い)ほど、温度が高いことを示す。具体的には、一番温度が高い領域が領域301であり、領域302、領域303の順に温度が低くなる。
【0077】
図13、
図14、および
図15におけるパワーサイクル試験の条件は、Tj=25℃で開始、ΔTj100℃、Z相発熱、ダイオード部(FWD)通電 1秒オンとした。条件は、
図13、
図14、および
図15において同じである。
図13において示した位置A、B、C、Dにおいて、ワイヤの接点温度を測定した。
図14および
図15においても、
図13において示された位置と同じ位置において、接点温度を測定した。また、パワーサイクル耐量が評価された。パワーサイクル耐量とは、動作条件における温度の上昇および下降によって半導体装置100の内部構造が受ける熱ストレスによる半導体装置100の寿命を意味する。評価結果を表1に示す。
【0079】
図13に示されるとおり、ダイオード部80の幅が540μmの場合には、半導体装置100内において、トランジスタ部70の領域の形状およびダイオード部80の領域の形状に応じて温度の不均一性が観測される。
図14に示されるとおり、ダイオード部80の幅が310μmの場合には、半導体装置100内における温度の不均一性が軽減される。さらに、
図15に示されるとおり、ダイオード部80の幅が200μmの場合には、半導体装置100内における温度の不均一性がさらに軽減される。
【0080】
図16は、半導体装置100においてダイオード部80に通電した場合の温度分布の一例である。
図16において、縦軸は、半導体装置100のチップ温度(℃)を示す。横軸は、半導体装置100の第1方向に沿った位置を示す。
図16において、半導体装置100の駆動条件は、
図13、
図14、および
図15のパワーサイクル条件の場合と同様である。
図16からも、
図14および
図15の場合の方が、
図13の場合に比べて、半導体装置100内の温度の変動幅(リップル幅)ΔTが軽減されることがわかる。
【0081】
また、表1に示されるとおり、ダイオード部80の幅D2およびトランジスタ部70の幅D3が小さくなるにつれて、ワイヤの接点温度の最高値が129.0℃、127.9℃、125.8℃というように減少する。これは、ダイオード部80の幅D2およびトランジスタ部70の幅D3が狭くなるほど、熱が十分にトランジスタ部70に拡散しやすくなることに起因すると考えられる。また、ダイオード部80の幅D2およびトランジスタ部70の幅を小さくすることによって、パワーサイクル耐量が向上する。これは、ダイオード部80の幅D2を540μmから200μmに小さくすることによって、ワイヤの接点温度(接点温度の変化)を3.2℃低くすることができたことに起因すると考えられる。
【0082】
以上のように、半導体装置100を同じ駆動条件で駆動した場合であっても、ダイオード部80の幅D2およびトランジスタ部70の幅D3を小さくすることによって、半導体装置100の面内での位置に応じた温度の変動幅が小さくなる。したがって、外部配線2の接合部4の位置がプロセス工程によって半導体装置100の面内方向で変動した場合であっても、外部配線2の接合部4における温度の変動幅が小さくなる。これにより、外部配線2の接合部4における熱疲労が軽減され、半導体装置100の長期的な信頼性を高めることができる。
【0083】
図17は、ダイオード部の幅と破壊耐量との関係を示す一例である。横軸は、サンプル番号を示しており、縦軸は、破壊耐量の指標を示している。具体的には、白丸が、電流二乗時間積(I
2t)を示しており、黒丸が、せん頭サージ電流(IFSM)を示している。電流二乗時間積(I
2t)およびせん頭サージ電流(IFSM)は、値が大きいほど、半導体装置100の破壊耐量が高いことを示している。したがって、電流二乗時間積(I
2t)およびせん頭サージ電流(IFSM)が高いほど、半導体装置100の長期的信頼性が高い。サンプル番号(1)からサンプル番号(5)は、トランジスタ部70の幅D3およびダイオード部80の幅D2を除いて、ドーズ量など他の条件は同様である。
【0085】
図17に示されるとおり、半導体装置100におけるトランジスタ部70の幅D3およびダイオード部80の幅D2と、電流二乗時間積耐量およびせん頭サージ電流耐量とに相関関係がある。サンプル番号(1)から(3)のように幅D3が1060μmで幅D
2が540μmの場合より、サンプル
番号(4)のように幅D3が710μmで幅D2が320μmの場合の方が、電流二乗時間積(白丸)およびせん頭サージ電流(黒丸)が高まる。
【0086】
さらに、サンプル(4)のように幅D3が710μmで幅D2が320μmの場合より、サンプル(5)のように幅D3が480μmで幅D2が200μmの場合の方が、電流二乗時間積(白丸)およびせん頭サージ電流(黒丸)が高まる。したがって、トランジスタ部70の幅D3およびダイオード部80の幅D2が小さくなるにつれて、半導体装置100の破壊耐量を高めることができる。
【0087】
トランジスタ部70の幅D3およびダイオード部80の幅D2が小さいほど、発生した熱を半導体装置100のチップ面内で、より均等に分散するために、電流二乗時間積の耐量およびせん頭サージ電流の耐量が高まったと考えられる。
【0088】
トランジスタ部70の幅D3およびダイオード部80の幅D2は、表2の場合に限られない。上述したとおり、好ましくは、ダイオード部80の幅D2は、540μm以下であってよく、さらに好ましくは、ダイオード部80の幅D2は、320μm以下であってよい。トランジスタ部70の幅D3は、ダイオード部の幅D2の2倍以上3倍以下であってよい。
【0089】
以上のように、
図1から
図3に示される半導体装置100によれば、半導体装置100のXY平面において、温度分布を均一化する。ダイオード部80の動作時およびトランジスタ部70の動作時においても、それぞれ発生した熱を半導体装置100のXY平面内で、より均一に分散することができる。
【0090】
外部配線2において、X軸方向における表面電極52との接触幅D1が、X軸方向におけるトランジスタ部70の幅D3およびX軸方向におけるダイオード部80の幅D2の少なくとも一方より大きい。より好ましくは、接触幅D1が、幅D3および幅D2のそれぞれより大きい。したがって、外部配線2の接合部4の位置が、プロセス工程に起因して変動した場合であっても、外部配線2の接合部4と、トランジスタ部70とダイオード部80との境界とが、半導体基板10のおもて面側から見たときに重なる。
【0091】
その結果、外部配線2の接合部4において温度の上昇と下降とを繰り返す温度の変動幅を減少させることができる。したがって、外部配線2の接合部4における熱疲労が未然に防止される。熱疲労を防止することができるので、電流二乗時間積(I
2t)およびせん頭サージ電流(IFSM)が高くなる。また、半導体装置100のパワーサイクル耐量を高めることができ、半導体装置100の長期的信頼性を高めることができる。
【0092】
図18は、半導体装置100の他の例についておもて面を示す図である。
図19は、
図18におけるA−A´断面の一例を示す図である。
図18および
図19に示される半導体装置100は、外部配線2が延伸する方向を除いて、
図1から
図3において説明した半導体装置100と同様の構造を備える。したがって、共通する部分について繰返しの説明を省略する。
【0093】
本例では、外部配線2は、Y軸方向に沿って延伸している。したがって、外部配線2は、トランジスタ部70の延伸する方向、およびダイオード部80の延伸する方向と平行な方向に延伸してよい。外部配線2の接合部4は、第1方向に直交して延伸している。本例においても、外部配線2において、X軸方向における表面電極との接触幅D1が、X軸方向におけるトランジスタ部70の幅D3およびX軸方向におけるダイオード部80の幅D2の少なくとも一方より大きい。本例では、X軸方向における表面電極との接触幅D1が、トランジスタ部70の幅D3およびダイオード部80の幅D2のそれぞれより大きい。
【0094】
外部配線2の接合部4は、ワイヤボンディングの工程において、外部配線2が押しつぶされて幅が広がっている。接合部4の潰れ幅が、外部配線2において、X軸方向における表面電極との接触幅D1となる。外部配線2における潰れ幅は、外部配線のワイヤ径より大きい。外部配線2の潰れ幅は、外部配線2の材料に依存する。外部配線2の潰れ幅は、外部配線のワイヤ径の1.1倍以上であってよい。外部配線2の潰れ幅を大きくしようとすると、ワイヤボンディング工程のときに印加する超音波が強くなって半導体基板10を損傷させる可能性がある。また、潰れ幅を大きくすると、外部配線2の肉厚が薄くなる場合がある。したがって、外部配線2の潰れ幅は、外部配線のワイヤ径の1.5倍以下であってよい。本例においても、
図1から
図3に示される半導体装置100と同様の効果を奏する。
【0095】
図20は、半導体装置100の他の例について断面の一例を示す図である。本例においては、外部配線2において、X軸方向における表面電極52との接触幅D1が、X軸方向におけるダイオード部80の幅D2より大きいが、X軸方向におけるトランジスタ部70の幅D3より小さい。
図20に示される半導体装置100の他の構造は、
図1から
図3に示される半導体装置100、または
図18および
図19に示される半導体装置100と同様である。したがって、共通の構造についての繰返しの説明は省略する。
【0096】
本例のように、ダイオード部80の幅D2またはトランジスタ部70の幅D3のどちらか一方を小さくする場合においても、比較例の場合に比べて温度分布を均一化させることができる。したがって、半導体装置100のパワーサイクル耐量を高めることができ、半導体装置100の長期的信頼性を高めることができる。
【0097】
図21は、半導体装置100の他の例についておもて面を示す図である。
図8から
図12に示された温度分布においても明らかなように、半導体装置100の半導体基板10の中央部は、外周部と比べてチップ温度が高い。これは外周部の方が熱を放散しやすいからである。したがって、半導体基板10のおもて面から見て、半導体装置100のXY平面を、中央部104と、中央部104を取り囲む外周部106とに区別した場合に、外部配線2は、外周部106に接合されていることが望ましい。これにより、外部配線2が半導体基板10の中央部104に接触する場合と比べて、外部配線2に加わる熱ストレスが弱くなるため、半導体装置100のパワーサイクル耐量が高くなる。それゆえ、半導体装置100の長期的信頼性を高めることができる。
【0098】
中央部104と外周部106とは、適宜に設定されてよい。半導体装置100のXY平面において、端部に位置するトランジスタ部70の一列およびダイオード部80の一列を外周部106としてもよい。この場合、半導体装置100の端縁にそってD2+D3の幅の領域が外周部106であり、この外周部106によって囲まれている部分が中央部104となる。また、半導体装置100の端縁にそって、半導体装置100のXY平面における1辺の1/4の幅の領域を外周部106としてもよい。この外周部106によって囲まれている部分が中央部104となる。
【0099】
図22は、半導体装置100の他の例についておもて面を示す図である。
図22は、
図1に示される半導体装置100の変形例である。本例の外部配線2は、少なくとも一つの第1外部配線(2a、2b、2c)と、少なくとも一つの第2外部配線(2d、2e、2f)とを含んでいる。第1外部配線(2a、2b、2c)と第2外部
配線(2d、2e、2f)とは、半導体基板10のおもて面方向から見て、表面電極52の対角に接合されている。第1外部配線(2a、2b、2c)と、第2外部配線(2d、2e、2f)とは、それぞれの延伸方向(
図22の場合は、X方向)の異なる位置で表面電極52に接合されている。
【0100】
表面電極52のX軸およびY軸の中心を原点(X=0、Y=0)としたときに、表面電極52をおもて面から見た場合に、表面電極52は、第1象限(X>0、Y>0)、第2象限(X<0、Y>0)、第3象限(X<0、Y<0)、第4象限(X>0、Y<0)という4つの領域に等分できる。第1外部配線(2a、2b、2c)と第2外部配線(2d、2e、2f)とを対角に接合することは、第1象限および第3象限の何れか一方に、第1外部配線を接合し、他方に、第2外部配線を接合する場合、または第2象限および第4象限の何れか一方に、第1外部配線を接合し、他方に、第2外部配線を接合する場合を含んでよい。
【0101】
図23は、半導体装置100の他の例についておもて面を示す図である。
図23は、
図18に示される半導体装置100の変形例である。本例の外部配線2は、少なくとも一つの第1外部配線(2a、2b、2c)と、少なくとも一つの第2外部配線(2d、2e、2f)とを含む。第1外部配線(2a、2b、2c)と第2外部
配線(2d、2e、2f)とは、半導体基板10のおもて面方向から見て、表面電極52の対角に接合されている。第1外部配線(2a、2b、2c)と、第2外部配線(2d、2e、2f)とは、それぞれの延伸方向の異なる位置で表面電極52に接合されている。
【0102】
図22および
図23では、第1外部配線(2a、2b、2c)の延伸方向と第2外部配線(2d、2e、2f)の延伸方向とが同じ場合が示された。しかしながら、複数の外部配線2の接合部4、8が、半導体装置100の対角に位置するように設けられていればよく、第1外部配線(2a、2b、2c)の延伸方向と第2外部配線(2d、2e、2f)の延伸方向とが異なっていてもよい。
【0103】
半導体装置100の動作時に発生する熱は、表面電極52から接合部4(外部配線2が表面電極52と接触する接触領域)に伝わる。したがって、例えば
図1および
図18に示される場合のように複数の外部配線2が表面電極52の一辺に偏っている場合には、複数の外部配線2が接触している側に熱が集中しやすくなる。
図22および
図23のように、第1外部配線(2a、2b、2c)と第2外部配線(2d、2e、2f)とを半導体装置100の表面電極52内で対角に配置することによって、半導体装置100内の熱をさらに分散させることができる。外部配線2の本数は、本数が多いほど半導体装置100内の熱を分散しやすくなる。
【0104】
図24は、半導体装置100の他の例についておもて面を示す図である。
図24に示されるように、外部配線2a、2b、2cが、それぞれ3箇所に接合されている。
図24では、外部配線2a、2b、2cの接合部は、それぞれトランジスタ部70とダイオード部80との境界にまたがっている。本例においても、トランジスタ部70とダイオード部80とは、X軸方向に沿って交互に配置される。外部配線2a、2b、2cは、それぞれ異なるトランジスタ部70とダイオード部80との境界の上方に接合されてよい。
【0105】
図25は、ワイヤボンディング位置がトランジスタ部70にあるときの
図24のB−B´断面の一例を示す図である。
図25において、外部配線2が表面電極52と接触する接合部4の第1方向(本例では、X方向)における中心5が、トランジスタ部70の領域の第1方向における中心の上方に位置している。
【0106】
図26は、ワイヤボンディング位置がトランジスタ部とダイオード部の境界にあるときの
図24のB−B´断面の一例を示す図である。
図26において、外部配線2が表面電極52と接触する接合部4の第1方向(本例では、X方向)における中心5が、トランジスタ部70とダイオード部80の境界の上方に配置される。中心5が、トランジスタ部70とダイオード部80の境界の上方に配置される場合には、完全に中心5が境界の位置に一致する場合のみならず、半導体基板10のおもて面側から見たときに、中心5と境界の位置との第1方向における距離が、
接触幅D1の10%以内に収まり、かつ隣り合う第1方向におけるトランジスタ部70の中心と第1方向におけるダイオード部80の中心との間に接合部4の第1方向における中心5がある場合が含まれてよい。また、中心5と境界の位置との第1方向におけるずれは境界の位置を基準に
接触幅D1の±5%以内である場合が含まれてよい。ワイヤボンディング工程における誤差があるので、完全に中心5が境界の位置に一致することが困難な場合がある。
【0107】
図27は
、ワイヤボンディング位置がダイオード部80にあるときの
図24のB−B´断面の一例を示す図である。
図27において、外部配線2が表面電極52と接触する接合部4の第1方向(本例では、X方向)における中心5が、ダイオード部80の領域の第1方向における中心の上方に位置している。
【0108】
図28は、ワイヤボンディング位置とワイヤ接点温度との関係を示す図である。縦軸は、ワイヤの接点温度(℃)を示す。ワイヤの接点温度(℃)は、
図24に示される外部配線2a、2b、2cのうち、最も接点温度が高くなる中央の外部配線2bが接触している直下の表面電極52の温度を示している。横軸は、ワイヤボンディング位置を示す。横軸において、IGBT領域は、
図25に示される場合に対応し、IGBT−FWD境界は、
図26に示される場合に対応し、FWD領域は、
図27に示される場合に対応している。
【0109】
図28に示されるデータは、おもて面から見たときの大きさが7mm×7mmである半導体装置100を用いた場合のデータである。ダイオード部80であるFWD領域の幅D2が550μmであり、トランジスタ部70であるIGBT領域の幅D3が1050μmである。表面電極52の厚みは5μmである。外部配線2の径は500μmである。外部配線2が半導体装置100に接触する接合部4の第1方向に沿った接触幅D1は、1100μmである。接合部4の潰れ幅は、650μmである。表面電極52は、アルミニウム(Al)に固溶限以上のシリコン(Si)原子を添加したAl−Si電極である。コレクタ電極24は、アルミニウム(Al)に固溶限以上のシリコン(Si)原子を添加したAl−Siにチタン(Ti)、ニッケル(Ni)、金(Au)を順に積層した電極である。
【0110】
図28に示されるとおり、外部配線2の接触幅D1の第1方向における中心5が、トランジスタ部70とダイオード部80の境界の上方に配置される場合(IGBT−FWD境界と表記)が、トランジスタ部70(IGBT)通電時とダイオード部80(FWD)通電時に発生する熱による温度差が最も小さくなることがわかる。温度差は、具体的には、141.9℃−137.9℃=4℃である。これに対して、外部配線2の接触幅D1の第1方向における中心5が、トランジスタ部70の中心の上方に配置される場合(IGBT領域と表記)は、温度差が、146.6℃−122.8℃=23.8℃となる。また、外部配線2の接触幅D1の第1方向における中心5がダイオード部80の中心の上方に配置される場合(FWD領域と表記)は、温度差が、159.2−132.6℃=26.6℃となる。IGBT通電時とFWD通電時に発生する熱による温度差が小さくなることにより、半導体装置100の外部配線2と表面電極52の接合部4における熱疲労が軽減される。これにより、D3およびD2が大きい場合、具体的には、トランジスタ部70の幅D3が1050μmでありダイオード部80の幅D2が550μmである場合であっても、半導体装置100の長期的な信頼性を高めることができる。
【0111】
なお、上述した他の実施形態においても、
図26のように、外部配線2が表面電極52と接触する接合部4の第1方向における中心5が、トランジスタ部70とダイオード部80の境界の上方に配置されるように、半導体装置100が構成されてよい。
【0112】
図29は、半導体装置100の他の例について、おもて面を示す図である。
図29は、
図1の半導体装置100の変形例である。
図29に示される半導体装置100は、接合部4の接合位置を除いて、
図1に示される半導体装置100と同じ構造を有する。したがって、繰り返しの説明を省略する。本例においても、
図26に示される場合と同様に、外部配線2が表面電極52と接触する接合部4の第1方向(本例では、X方向)における中心5が、トランジスタ部70とダイオード部80の境界の上方に配置される。中心5が、トランジスタ部70とダイオード部80の境界の上方に配置される場合には、完全に中心5が境界の位置に一致する場合のみならず、半導体基板10のおもて面側から見たときに、中心5と境界の位置との第1方向における距離が、
接触幅D1の10%以内に収まり、かつ隣り合う第1方向におけるトランジスタ部70の中心と第1方向におけるダイオード部80の中心との間に接合部4の第1方向における中心5がある場合が含まれてよい。また、中心5と境界の位置との第1方向におけるずれは境界の位置を基準に
接触幅D1の±5%以内である場合が含まれてよい。
【0113】
図30は、半導体装置100の他の例について、おもて面を示す図である。
図30は、
図22の半導体装置100の変形例である。
図30に示される半導体装置100は、接合部4の接合位置を除いて、
図22に示される半導体装置100と同じ構造を有する。したがって、繰り返しの説明を省略する。本例においても、外部配線2が表面電極52と接触する接合部4の第1方向(本例では、X方向)における中心5が、トランジスタ部70とダイオード部80の境界の上方に配置される。
【0114】
図29および
図30に示される構成によれば、外部配線2の接触幅D1の中心5が半導体装置100のトランジスタ部70の領域とダイオード部80の領域の境界上に配置される。これにより、トランジスタ部70通電時とダイオード部80電時の外部配線2の接合部4の直下の表面電極52の温度差を小さくすることができる。また、
図30に示される構成によれば、第1外部配線(2a、2b、2c)と第2外部配線(2d、2e、2f)とを半導体装置100内で対角に配置することによって、半導体装置100内の熱をさらに分散させることができる。これにより、半導体装置100の外部配線2と表面電極52の接合部4における熱疲労が軽減され、長期的な信頼性をさらに高めることができる。
【0115】
図31は、半導体装置100の他の例についておもて面を示す図である。上述した半導体装置100においては、外部配線2が第1方向に平行に延伸している場合、および外部配線2が第1方向に直交して延伸している場合について説明した。しかしながら、半導体装置100は、これらの場合に限られない。
図31に示されるように、外部配線2が、第1方向に対して斜めに延伸してもよい。
図31の場合にも、外部配線2が表面電極52と接触する接合部4は、トランジスタ部70とダイオード部80の領域にまたがっている。外部配線2が表面電極52と接触する領域と、トランジスタ部70とダイオード部80との境界とが、半導体基板10のおもて面側から見たときに重なるように外部配線2が設けられてよい。
【0116】
図31に示される半導体装置100によっても、外部配線2が表面電極52と接触する接合部4は、トランジスタ部70とダイオード部80の領域にまたがっているので、トランジスタ部70の通電時とダイオード部80の通電時との温度差を小さくすることができる。これにより、接合部4における熱疲労が軽減され、半導体装置100の長期的な信頼性を高めることができる。
【0117】
図32は、半導体装置100の他の例について、おもて面を示す図である。本例において、各外部配線2a、2bは、一つの外部配線あたり複数の接合部4および接合部8において表面電極52と接触しつつ延伸する。本例では、各外部配線2は、2つの接合部4および接合部8において表面電極52と接触する。但し、本例と異なり、各外部配線2a、2bは、3つ以上の接合部において表面電極52と接触してよい。ワイヤボンディング工程において、
複数個所でステッチを形成することによって、複数の接合部4、8を構成してよい。半導体基板10のおもて面方向から見た場合に、半導体基板10は、トランジスタ部70とダイオード部80とがストライプ状に交互に配置された平面形状を有してよい。トランジスタ部70とダイオード部80とが第1方向に沿って交互に配置されている。
【0118】
各外部配線2a、2bは、第1方向に平行に延伸してよい。接合部4および接合部8の少なくとも一つは、トランジスタ部70とダイオード部80の領域にまたがってよい。本例は、接合部4および接合部8の双方が、トランジスタ部70とダイオード部80の領域にまたがってよい。換言すれば、接合部4と、トランジスタ部とダイオード部との境界とが、半導体基板のおもて面側から見たときに重なる。同様に、接合部8と、トランジスタ部とダイオード部との境界とが、半導体基板のおもて面側から見たときに重なる。
図26に示される例と同様に、接合部4の第1方向における中心5が、トランジスタ部70とダイオード部80の境界の上方に配置されてよく、接合部8の第1方向における中心5が、別のトランジスタ部70とダイオード部80の境界の上方に配置されてよい。
【0119】
半導体基板10のおもて面から見たときに、半導体装置100の表面電極52の一辺に沿って第1の接合部4が設けられ、一辺と対向する他辺に沿って第2の接合部8が設けられてよい。特に、複数の接合部4および接合部8が、表面電極52の4つの角部に対応して設けられてよい。
【0120】
外部配線2の本数が多いほど、外部配線と表面電極52との接触点の数が増えるため、半導体装置100内の熱を分散しやすくなる。しかしながら、外部配線2が接続されるDCB(Direct Copper Bond)基板7の回路パターンの制約等によっては、外部配線2の本数が限られる場合がある。本例によれば、外部配線2の一本あたりに複数の接合部4、8を設けるので、外部配線2の数を増やすことなく、外部配線と表面電極52との接触点の数を増やすことができる。したがって、外部配線2の本数が制限されている場合であっても、外部配線の接合部における熱疲労を軽減して長期的な信頼性を高めることができる。
【0121】
なお、外部配線2の本数は、
図32の場合に限られない。
図33は、半導体装置100の他の例についておもて面を示す図である。
図33に示される半導体装置100は、4本の外部配線2a、2b、2c、2dを有する。外部配線2a、2b、2c、2dは、一つの外部配線2あたり複数の接合部4および接合部8において表面電極52と接触しつつ延伸する。
図34は、半導体装置100の他の例について、おもて面を示す図である。
図34に示される半導体装置100は、一本の外部配線あたり一つの接合部を有する。
【0122】
図34に示される半導体装置100においては、外部配線2の接合部が、半導体装置100のチップ面内において、X軸およびY軸において対称に設けられていない。
図34に示される場合には、表面電極52の4つの角部のうち、対角に存する2つの角部に対応する位置には、接合部4が設けられているものの、残りの2つの角部に対応する位置には接合部4が設けられていない。表面電極52の中心を原点として、表面電極52を、第1象限(X>0、Y>0)、第2象限(X<0、Y>0)、第3象限(X<0、Y<0)、第4象限(X>0、Y<0)という4つの領域に等分すると、第2象限と第3象限とには接合部4が存在するが、第1象限と第4象限とに接合部4が存在しない。
【0123】
これに対して、
図33に示される半導体装置100においては、各外部配線2の接合部4、8が半導体装置100のチップ面内においてX軸およびY軸のそれぞれに対して対称に設けられている。半導体基板10のおもて面から見たときに、半導体装置100の表面電極52の一辺に沿って第1の接合部4が設けられ、一辺と対向する他辺に沿って第2の接合部8が設けられてよい。特に、複数の接合部4および接合部8が、表面電極52の4つの角部に対応して設けられてよい。
【0124】
図35は、
図33に示される半導体装置100の熱拡散の一例を示す。
図36は、
図34に示される半導体装置100の熱拡散の一例を示す。
図35は、トランジスタ部70(IGBT)の通電時の温度分布と、ダイオード部80(FWD)の通電時の温度分布を示している。
図36も同様に、トランジスタ部70(IGBT)の通電時の温度分布と、ダイオード部80(FWD)の通電時の温度分布を示している。
【0125】
一本の外部配線2あたり一つの接合部4を有する場合には、外部配線2の本数によっては、表面電極52の面内において、接合部4が偏在する。表面電極52から接合部4を通じて外部配線2に電流が流れるので、外部配線2が表面電極52に接触する接合部4が存在する数が多い領域ほど、その領域の温度が高くなる傾向を示す。したがって、表面電極52の面内において、接合部4が偏在する場合には、表面電極52の面内での温度のアンバランスが生じる。
図36に丸印を示したように、一本の外部配線2あたり一つの接合部4を有する外部配線2を有する半導体装置100は、面内での温度のアンバランスが生じ得る。
【0126】
一方、一本の外部配線2あたり複数の接合部4および接合部8を有する半導体装置100においては、複数の接合部4および接合部8が、表面電極52の4つの角部に対応して設けられてよい。したがって、外部配線2の本数に制限がある場合であっても、接合部4および接合部8を広い範囲に偏在することなく配置することができる。したがって、接合部の偏在に起因して表面電極52の面内での温度のアンバランスが生じることを抑制することができる。
図35に示されるように、一本の外部配線2あたり複数の接合部4および接合部8を有する場合には、
図36に示される場合に比べて、面内での温度のアンバランスが軽減されている。
【0127】
特に複数の接合部4および接合部8が、それぞれトランジスタ部70とダイオード部80の領域にまたがることによって、IGBT通電時とFWD通電時に発生する熱による温度差が小さくなる。本例のように、接合部4および接合部8の数を増やすことにより、さらに温度差を軽減することができる。したがって、半導体装置100の外部配線2と表面電極52の接合部4における熱疲労が軽減される。
【0128】
図37は、半導体装置100を備える半導体モジュール200の断面の一例を示す図である。
図37の半導体モジュール200は、半導体装置100、はんだ層130、およびDCB基板140を備えてよい。半導体装置100は、上述した
図1から
図3、
図18および
図19、
図20、または
図21から
図27、
図29から
図34に示される半導体装置100と同様であってよい。したがって、繰り返しの説明を省略する。
【0129】
DCB基板140において、絶縁基板144のおもて側に銅基板142が直接接合されている。一方、絶縁基板144の裏面側に銅基板
146が直接接合されている。絶縁基板144は、酸化アルミニウム(Al
2O
3)、窒化アルミニウム(AlN)、および窒化シリコン(SiN)からなる群から選ばれた少なくとも1つの絶縁物質で構成されてよい。
【0130】
半導体装置100は、半導体基板10の下方にはんだ層130を備える。具体的には、はんだ層130は、半導体装置100の裏面に設けられたコレクタ電極24と、DCB基板140の銅基板142との間を接合してよい。はんだ層130の厚みは、70μm以上、200μm以下であってよい。はんだ層130の厚みが70μm以下であると、銅基板142とはんだ層130との間で合金層が形成しづらくなり、銅基板142とはんだ層130とを接合できない場合がある。はんだ層130は、銀(Ag)の微粒子を混ぜてシンター処理を施したものであってもよい。
【0131】
半導体基板10の厚みD5は、100μm以上であってよい。はんだ層130の厚みD6は、50μm以上200μm以下であってよく、より好ましくは100μm以上200μm以下であってよい。そして、半導体基板10の厚みD5と、はんだ層130の厚みD6との合計(D5+D6)が、X軸方向におけるトランジスタ部70の幅D3より大きくてよい。同様に、半導体基板10の厚みD5と、はんだ層130の厚みD6との合計(D5+D6)が、X軸方向におけるダイオード部80の幅D2より大きくてよい。
【0132】
本例において、はんだ層130も、熱伝搬に寄与する。半導体基板10の厚みD5とはんだ層130の厚みD6の合計が小さくなるほど、発熱している領域から隣接する領域へ熱伝導しにくくなり、温度分布が不均一になりやすい。したがって、厚みD5と厚みD6との合計が薄くなるほど、X軸方向におけるダイオード部80の幅D2およびX軸方向におけるトランジスタ部70の幅D3を小さくして、温度分布の均一化を図ることが好ましい。
【0133】
本例によれば、半導体基板10の厚みD5と、はんだ層130の厚みD6とを考慮して、トランジスタ部70の幅D3およびダイオード部80の幅D2を設定することができる。したがって、半導体装置100における半導体基板10とはんだ層130による熱伝導を考慮して、トランジスタ部70の幅D3およびダイオード部80の幅D2を設定することができる。
【0134】
図38Aおよび
図38Bは、半導体装置100のワイヤボンディングの位置決めの一例について示す図である。
図38Aは半導体装置100のおもて面を示し、
図38Bは
図38AのV部分の拡大図を示す。
【0135】
図26に示す外部配線2が表面電極52と接触する接合部4の第1方向(X方向)における中心5
を、トランジスタ部70とダイオード部80の境界の上方に配置するために外部配線のボンディング位置を正確に決める必要がある。
【0136】
半導体装置100の表面電極52の上面には、保護膜95を備える。保護膜95は、外部配線2を接続する表面電極52を露出する第1開口部96とゲート電極90を露出する第2開口部97を備える。保護膜95は、例えばポリイミド、エポキシ系の樹脂、またはシリコン窒化膜等の絶縁性を有し半導体装置100の表面を保護する膜であればよい。
【0137】
保護膜95は、第1開口部96に半導体装置100の中央部に向かって突き出している凸部98を備えている。すなわち、第1開口部
96は、平面視で凸部98を備える。平面視とは、半導体装置100のおもて面側から見た場合であってよい。凸部98は、第1方向(X方向)に平行な端部98aと第1方向に垂直な方向(Y方向)に平行な端部98b1、端部98b2を有している。凸部98の第1方向に垂直な方向(Y方向)に平行な端部98b1、端部98b2は、ダイオード部80とトランジスタ部70との境界に沿って配置される。
【0138】
凸部98の第1方向に平行に配置される端部98aと第1方向に垂直な方向に平行配置される端部98b1または端部98b2のどちらか一方をワイヤボンディング装置で検出して外部配線2を表面電極52と接続する位置を決める。第1方向に垂直な方向に平行配置される端部98b1および端部98b2がダイオード部80とトランジスタ部70との境界に沿って配置されることにより、外部配線2の接合部4の第1方向における中心5とトランジスタ部70とダイオード部80の境界の上方に精度よく接続することができる。
【0139】
凸部98の幅(端部98b1と端部98b2との間の幅)は、ダイオード部80の幅D2と同じであってよい。
【0140】
なお、
図38Aは、半導体装置100のゲート電極90が設けられている側のダイオード部80の上面すべてに凸部98を備えているが、半導体装置100のダイオード部80の上面に少なくとも1つ以上凸部98が設けられていればよい。また、半導体装置100のゲート電極90が設けられている側と反対側の保護膜95に凸部98を設けてもよい。
【0141】
また、凸部98の第1方向に垂直な方向(Y方向)に平行な端部98b1、端部98b2は、どちらか一方がダイオード部80とトランジスタ部70との境界に沿って配置されていればよい。
【0142】
図39Aおよび
図39Bは、半導体装置100のワイヤボンディングの位置決めの他の例について示す図である。
図39Aは半導体装置100のおもて面を示し、
図39Bは
図39AのW部分の拡大図を示す。
図38Aおよび
図38Bと異なる点は、保護膜95に備えた第1開口部96が凹部99を有する点である。
【0143】
保護膜95は、第1開口部96に半導体装置100の外周に向かってくぼんでいる凹部99を備えている。凹部99は、第1方向(X方向)に平行な99aと第1方向に垂直な方向(Y方向)に平行な99b1、99b2を有している。凹部99の第1方向に垂直な方向(Y方向)に平行な99b1、99b2は、ダイオード部80とトランジスタ部70との境界に沿って配置される。
【0144】
凹部99の第1方向に平行に配置される99aと第1方向に垂直な方向に平行配置される99b1または99b2のどちらか一方をワイヤボンディング装置で検出して外部配線2を表面電極52と接続する位置を決める。第1方向に垂直な方向に平行配置される99b1および99b2がダイオード部80とトランジスタ部70との境界に沿って配置されることにより、外部配線2の接合部4の第1方向における中心5とトランジスタ部70とダイオード部80の境界の上方に精度よく接続することができる。
【0145】
凹部99の幅(99b1と99b2との間の幅)は、ダイオード部80の幅D2と同じであってよい。なお、
図39Aは、半導体装置100のゲート電極90が設けられている側のダイオード部80の上面すべてに凹部99を備えているが、半導体装置100のダイオード部80の上面に少なくとも1つ以上凹部99が設けられていればよい。
【0146】
また、半導体装置100のゲート電極90が設けられている側と反対側の保護膜95に凹部99を設けてもよい。また、凹部99の第1方向に垂直な方向(Y方向)に平行な99b1、99b2は、どちらか一方がダイオード部80とトランジスタ部70との境界に沿って配置されていればよい。
【0147】
以上、本発明を実施の形態を用いて説明したが、本発明の技術的範囲は上記実施の形態に記載の範囲には限定されない。上記実施の形態に、多様な変更又は改良を加えることが可能であることが当業者に明らかである。その様な変更又は改良を加えた形態も本発明の技術的範囲に含まれ得ることが、請求の範囲の記載から明らかである。