(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
コランダム構造を有する下地基板と、その上に直接又は他の層を介して少なくとも第1の層と第2の層とを含む2層以上の酸化物層と、前記酸化物層上に請求項1〜7のいずれかに記載の結晶性酸化物半導体膜とを備え、第1の層の主成分が、コランダム構造を有する結晶性酸化物であり、第2の層の主成分が、第1の層の主成分と組成比が異なるものであることを特徴とする積層構造体。
第1の層の主成分がガリウムおよびアルミニウムを含み、第2の層の主成分がガリウムおよびアルミニウムを含み、第1の層の酸素を除く主成分中におけるガリウムに対するアルミニウムの原子比が、1〜20%であり、かつ、第2の層の酸素を除く主成分中におけるガリウムに対するアルミニウムの原子比よりも大きい請求項8記載の積層構造体。
少なくとも第1の層と第2の層とを含む2層以上の酸化物層が直接又は他の層を介して300μm四方以上の面積にわたって表面に形成されている下地基板を用いて、前記酸化物層上に、コランダム構造を有する結晶性酸化物半導体を主成分として含み、膜表面の300μm四方の面積中にクラックを実質的に含まない結晶性酸化物半導体膜を形成する結晶性酸化物半導体膜の製造方法であって、前記下地基板が、コランダム構造を有しており、第1の層の主成分が、コランダム構造を有する結晶性酸化物であり、第2の層の主成分が、第1の層の主成分と組成比が異なるものであることを特徴とする、結晶性酸化物半導体膜の製造方法。
第1の層の主成分がガリウムおよびアルミニウムを含み、第2の層の主成分がガリウムおよびアルミニウムを含み、第1の層の酸素を除く主成分中におけるガリウムに対するアルミニウムの原子比が、1〜20%であり、かつ、第2の層の酸素を除く主成分中におけるガリウムに対するアルミニウムの原子比よりも大きい請求項12記載の製造方法。
【背景技術】
【0002】
従来、異種基板上に結晶成長させる際に、クラックや結晶欠陥が生じる問題がある。この問題に対し、基板と膜の格子定数や熱膨張係数を整合させること等が検討されている。また、不整合が生じる場合には、ELOのような製膜手法等も検討されている。
【0003】
特許文献1には、異種基板上にバッファ層を形成し、前記バッファ層上に酸化亜鉛系半導体層を結晶成長させる方法が記載されている。特許文献2には、ナノドットのマスクを異種基板上に形成して、ついで、単結晶半導体材料層を形成することが記載されている。非特許文献1には、サファイア上に、GaNのナノカラムを介して、GaNを結晶成長させる手法が記載されている。非特許文献2には、周期的なSiN中間層を用いて、Si(111)上にGaNを結晶成長させて、ピット等の欠陥を減少させる手法が記載されている。
【0004】
しかしながら、いずれの技術も、製膜速度が悪かったり、基板にクラック、転位、反り等が生じたり、また、エピタキシャル膜に転位やクラック等が生じたりして、高品質なエピタキシャル膜を得ることが困難であり、基板の大口径化やエピタキシャル膜の厚膜化においても、支障が生じていた。
【0005】
また、高耐圧、低損失および高耐熱を実現できる次世代のスイッチング素子として、バンドギャップの大きな酸化ガリウム(Ga
2O
3)を用いた半導体装置が注目されており、インバータなどの電力用半導体装置への適用が期待されている。しかも、広いバンドギャップからLEDやセンサー等の受発光装置としての応用も期待されている。当該酸化ガリウムは非特許文献2によると、インジウムやアルミニウムをそれぞれ、あるいは組み合わせて混晶することによりバンドギャップ制御することが可能であり、InAlGaO系半導体として極めて魅力的な材料系統を構成している。ここでInAlGaO系半導体とはIn
XAl
YGa
ZO
3(0≦X≦2、0≦Y≦2、0≦Z≦2、X+Y+Z=1.5〜2.5)を示し、酸化ガリウムを内包する同一材料系統として俯瞰することができる。
【0006】
コランダム構造を有するInAlGaO系の半導体膜を製膜する際も、通常、異種基板上に結晶成長を行うため、エピタキシャル膜にクラックが入る等の問題が生じていた。これまで、InAlGaO系の半導体膜のクラックや結晶欠陥を抑制するための手法が検討されてきており、特許文献3では、ELO技術を利用した製膜手法によってクラックの少ないα-Ga
2O
3膜を製膜している。また、特許文献4では、エピタキシャル膜の製膜時にボイドを設けることにより、クラックが低減されたα-Ga
2O
3膜を製膜している。しかしながら、これらの手法によっては、膜表面の大面積(300μm四方以上)にわたってクラックを実質的に含まない結晶性酸化物半導体膜を得ることは難しく、特に、3μm以上の厚膜を製膜した場合には、クラックが十分に低減された結晶性酸化物半導体膜を得ることができていなかった。そのため、300μm四方以上の面積にわたってクラックを実質的に含まない結晶性酸化物半導体膜およびその製造方法が待ち望まれていた。
なお、特許文献3および4はいずれも本出願人による特許出願に関する公報である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、膜表面の300μm四方以上の面積にわたって、クラックを実質的に含まない結晶性酸化物半導体膜とその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者らは、上記目的を達成すべく鋭意検討した結果、少なくとも第1の層と第2の層とを含む2層以上の酸化物層が直接又は他の層を介して300μm四方以上の面積にわたって表面に形成されている下地基板を用いて、前記酸化物層上に、結晶性酸化物半導体膜を形成すると、驚くべきことに、膜表面の300μm四方以上の面積にわたってクラックを実質的に含まない結晶性酸化物半導体膜が得られることを見出し、この結晶性酸化物半導体膜が、上記した従来の問題を一挙に解決できるものであることを知見した。
また、本発明者らは、上記知見を得た後、さらに検討を重ねて本発明を完成させるに至った。
【0011】
すなわち、本発明は、以下の発明に関する。
[1] コランダム構造を有する結晶性酸化物半導体を主成分として含む結晶性酸化物半導体膜であって、膜表面の300μm四方以上の面積にわたって、クラックを実質的に含まないことを特徴とする結晶性酸化物半導体膜。
[2] 膜厚が3μm以上である、前記[1]に記載の結晶性酸化物半導体膜。
[3] 結晶性酸化物半導体が、インジウム、ガリウムまたはアルミニウムを含む前記[1]または[2]に記載の結晶性酸化物半導体膜。
[4] 結晶性酸化物半導体が、ガリウムを含む前記[1]〜[3]のいずれかに記載の結晶性酸化物半導体膜。
[5] さらに、ドーパントを含む、前記[1]〜[4]のいずれかに記載の結晶性酸化物半導体膜。
[6] 膜厚が5μm以上である、前記[1]〜[5]のいずれかに記載の結晶性酸化物半導体膜。
[7] 膜表面の400μm四方以上の面積にわたって、クラックを実質的に含まないことを特徴とする、前記[1]〜[6]のいずれかに記載の結晶性酸化物半導体膜。
[8] コランダム構造を有する下地基板と、その上に直接又は他の層を介して少なくとも第1の層と第2の層とを含む2層以上の酸化物層と、前記酸化物層上に前記[1]〜[7]のいずれかに記載の結晶性酸化物半導体膜とを備え、第1の層の主成分が、コランダム構造を有する結晶性酸化物であり、第2の層の主成分が、第1の層の主成分と組成比が異なるものであることを特徴とする積層構造体。
[9] 前記[1]〜[7]のいずれかに記載の結晶性酸化物半導体膜または前記[8]に記載の積層構造体と、電極とを少なくとも含む半導体装置。
[10] 前記[9]に記載の半導体装置を含むシステム。
[11] 少なくとも第1の層と第2の層とを含む2層以上の酸化物層が直接又は他の層を介して300μm四方以上の面積にわたって表面に形成されている下地基板を用いて、前記酸化物層上に、結晶性酸化物半導体膜を形成する結晶性酸化物半導体膜の製造方法であって、前記下地基板が、コランダム構造を有しており、第1の層の主成分が、コランダム構造を有する結晶性酸化物であり、第2の層の主成分が、第1の層の主成分と組成比が異なるものであることを特徴とする、結晶性酸化物半導体膜の製造方法。
[12] 前記結晶性酸化物半導体膜の形成を、ミストCVD法にて行う前記[11]に記載の製造方法。
[13] 下地基板の主成分が、第1の層の主成分と異なる結晶性酸化物である前記[11]または[12]に記載の製造方法。
[14] 結晶性酸化物半導体膜の主成分が、第1の層の主成分と異なる結晶性酸化物半導体である前記[11]〜[13]のいずれかに記載の製造方法。
【発明の効果】
【0012】
本発明の結晶性酸化物半導体膜は、膜表面の300μm四方以上の面積にわたって、クラックを実質的に含んでいない。また、本発明の製造方法は、このような結晶性酸化物半導体膜を工業的有利に製造することができるものである。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の好適な実施形態について説明する。
【0015】
本発明の結晶性酸化物半導体膜は、コランダム構造を有する結晶性酸化物を主成分として含む結晶性酸化物半導体膜であって、膜表面の300μm四方以上の面積にわたって、クラックを実質的に含まないことを特徴とする。本発明においては、前記結晶性酸化物半導体膜が、膜表面の400μm四方以上の面積にわたって、クラックを実質的に含まないのがより好ましい。本明細書において、「クラック」とは、通常、前記結晶性酸化物半導体膜表面または膜中に生じる線状または略円状の欠陥部位をいい、亀裂、開口および割れを含む。また、前記「クラック」は、特に、好適には、幅0.2μm以上かつ長さ50μm以上の線状の結晶の欠陥部位を意味し、転位による結晶欠陥も含む。なお、より好適には、前記欠陥部位は、幅1.0μm以上かつ長さ50μm以上の線状の結晶の欠陥部位である。「クラックを実質的に含まない」とは、膜表面の光学顕微鏡による観察において、前記クラックの存在が確認できないことをいい、特に、膜表面の光学顕微鏡による観察において確認できるクラックがないことをいう。本発明においては、前記結晶性酸化物半導体が、インジウム、ガリウムまたはアルミニウムを含むのが好ましく、InAlGaO系半導体を含むのがより好ましく、ガリウムを少なくとも含むのが最も好ましい。なお、「主成分」とは、例えば結晶性酸化物半導体がα−Ga
2O
3である場合、膜中の金属元素中のガリウムの原子比が0.5以上の割合でα−Ga
2O
3が含まれていればそれでよい。本発明においては、前記膜中の金属元素中のガリウムの原子比が0.7以上であることが好ましく、0.8以上であるのがより好ましい。また、結晶性酸化物半導体膜の厚さは、特に限定されず、1μm以下であってもよいし、1μm以上であってもよいが、本発明においては、3μm以上であるのが好ましく、5μm以上であるのがより好ましい。また、前記結晶性酸化物半導体膜の形状等は特に限定されず、四角形状(正方形状、長方形状を含む)であっても、円形状(半円形状を含む)であっても、多角形状であってもよい。前記結晶性酸化物半導体膜の表面積は、300μm四方以上であれば、特に限定されないが、本発明においては、400μm四方以上であるのが好ましく、5mm角以上であるのがより好ましく、直径50mm以上であるのが最も好ましい。なお、前記結晶性酸化物半導体膜は、単結晶膜であってもよいし、多結晶膜であってもよいが、単結晶膜であるのが好ましい。
【0016】
前記結晶性酸化物半導体膜は、ドーパントが含まれているのが好ましい。前記ドーパントは、特に限定されず、公知のものであってよい。前記ドーパントとしては、例えば、スズ、ゲルマニウム、ケイ素、チタン、ジルコニウム、バナジウムまたはニオブ等のn型ドーパント、またはp型ドーパントなどが挙げられる。本発明においては、前記ドーパントが、Snであるのが好ましい。ドーパントの含有量は、前記結晶性酸化物半導体膜の組成中、0.00001原子%以上であるのが好ましく、0.00001原子%〜20原子%であるのがより好ましく、0.00001原子%〜10原子%であるのが最も好ましい。
【0017】
本発明の結晶性酸化物半導体膜は、例えば、少なくとも第1の層と第2の層とを含む2層以上の酸化物層が、直接又は他の層を介して300μm四方以上の面積にわたって表面に形成されている下地基板を用いて、前記下地基板上に、前記結晶性酸化物半導体膜を形成することにより得ることができる。ここで、第1の層の主成分は、コランダム構造を有する結晶性酸化物であり、第2の層の主成分は、第1の層の主成分と組成比が異なる結晶性酸化物である。なお、「第1の層の主成分」とは、前記結晶性酸化物が、原子比で、第1の層の全成分に対し、好ましくは50%以上、より好ましくは70%以上、更に好ましくは90%以上含まれることを意味し、100%であってもよいことを意味する。また、「第2の層の主成分」とは、前記結晶性酸化物が、原子比で、第2の層の全成分に対し、好ましくは50%以上、より好ましくは70%以上、更に好ましくは90%以上含まれることを意味し、100%であってもよいことを意味する。なお、前記結晶性酸化物半導体膜だけでなく、このようにして得られた積層構造体も本発明に含まれ、好適な態様の一つとして、下地基板と、その上に直接又は他の層を介して少なくとも第1の層と第2の層とを含む2層以上の酸化物層と、前記酸化物層上に前記結晶性酸化物半導体膜とを備え、第1の層の主成分が、コランダム構造を有する結晶性酸化物であり、第2の層の主成分が、第1の層の主成分と組成比が異なるものであることを特徴とする積層構造体が挙げられる。
【0018】
前記下地基板は、少なくとも第1の層と第2の層とを含む2層以上の酸化物層が、直接又は他の層を介して300μm四方以上の面積にわたって表面に形成されており、板状であって、前記結晶性酸化物半導体膜の支持体となるものであれば特に限定されない。前記下地基板は、絶縁体基板であってもよいし、半導体基板であってもよいし、導電性基板であってもよいが、前記下地基板が、絶縁体基板であるのが好ましい。前記下地基板としては、例えば、コランダム構造を有する基板材料を主成分として含む基板などが挙げられる。ここで、「主成分」とは、前記特定の結晶構造を有する基板材料が、原子比で、基板材料の全成分に対し、好ましくは50%以上、より好ましくは70%以上、更に好ましくは90%以上含まれることを意味し、100%であってもよいことを意味する。
【0019】
基板材料は、本発明の目的を阻害しない限り、特に限定されず、公知のものであってよい。前記のコランダム構造を有する基板材料を主成分とする下地基板としては、サファイア基板(好ましくはc面サファイア基板)やα型酸化ガリウム基板などが好適な例として挙げられるが、本発明においては、前記下地基板が、サファイア基板であるのが好ましく、c面サファイア基板であるのがより好ましい。
【0020】
前記下地基板上には、少なくとも第1の層と第2の層とを含む2層以上の酸化物層が直接又は他の層を介して300μm四方以上の面積にわたって表面に形成されているが、400μm四方以上の面積にわたって表面に形成されているのも好ましい。このような好ましい下地基板を、
図15に示す。
図15の下地基板は、表面に第1の層と第2の層とが形成されている。第1の層と第2の層は、いずれも酸化物層であり、第1の層と第2の層の形成には、ミストCVD法やミスト・エピタキシー法等の製膜手段を用いることが可能である。また、前記酸化物層を構成する第1の層の主成分は、コランダム構造を有する結晶性酸化物であり、第2の層の主成分は、第1の層の主成分と組成比が異なる結晶性酸化物である。本発明においては、第1の層の主成分が、ガリウムまたはアルミニウムを含むのが好ましく、ガリウムおよびアルミニウムを含むのがより好ましい。第1の層の主成分がガリウムおよびアルミニウムを含む場合には、第1の層の酸素を除く主成分中、ガリウムに対するアルミニウムの原子比が、1〜20%であるのが好ましく、第2の層の酸素を除く主成分中におけるガリウムに対するアルミニウムの原子比よりも大きいのも好ましい。
【0021】
また、本発明においては、前記下地基板の主成分が、第1の層の主成分と異なる結晶性酸化物であるのが好ましく、前記結晶性酸化物半導体膜の主成分が、第1の層の主成分と異なる結晶性酸化物半導体であるのも好ましい。
【0022】
前記酸化物層の形成手段は、本発明の目的を阻害しない限り、特に限定されず、公知の手段であってもよい。前記酸化物層の形成手段としては、例えば、CVD法、MOCVD法、MOVPE法、ミストCVD法、ミスト・エピタキシー法、MBE法、HVPE法またはパルス成長法などが挙げられる。本発明においては、前記酸化物層の形成手段が、MOCVD法、MBE法、HVPE法、ミストCVD法またはミスト・エピタキシー法であるのが好ましく、ミストCVD法またはミスト・エピタキシー法であるのがより好ましい。
【0023】
以下、前記酸化物層の形成手段の好適な例として、ミストCVD法またはミスト・エピタキシー法を用いて、少なくとも第1の層と第2の層とを含む2層以上の酸化物層を前記下地基板上に形成した例を挙げて、本発明をさらに詳細に説明する。
【0024】
前記ミストCVD法またはミスト・エピタキシー法では、第1及び第2の原料溶液をそれぞれ霧化し(霧化工程I)、生成される第1及び第2のミストを第1及び第2のキャリアガスをそれぞれ用いて前記下地基板までそれぞれ搬送し(搬送工程I)、ついで、第1及び第2のミストをそれぞれ熱反応させることにより、前記下地基板上に第1及び第2の層をそれぞれ製膜する(製膜工程I)。
【0025】
(霧化工程I)
霧化工程Iは、第1及び第2の原料溶液をそれぞれ霧化する。第1及び第2の霧化は同時に行われてもよいし、別々に行われてもよいが、本発明においては、別々に行われるのが好ましい。霧化手段は、第1及び第2の原料溶液を霧化できさえすれば特に限定されず、公知の手段であってよいが、本発明においては、超音波を用いる霧化手段が好ましい。超音波を用いて得られたミストは、初速度がゼロであり、空中に浮遊するので好ましく、例えば、スプレーのように吹き付けるのではなく、空間に浮遊してガスとして搬送することが可能なミストであるので衝突エネルギーによる損傷がないため、非常に好適である。ミストの液滴のサイズは、特に限定されず、数mm程度であってもよいが、好ましくは50μm以下であり、より好ましくは100nm〜10μmである。
【0026】
(第1及び第2の原料溶液)
第1及び第2の原料溶液は、ミストCVD法またはミスト・エピタキシー法により、前記酸化物層が得られる溶液であれば特に限定されない。第1及び第2の原料溶液としては、例えば、金属の有機金属錯体(例えばアセチルアセトナート錯体等)やハロゲン化物(例えばフッ化物、塩化物、臭化物またはヨウ化物等)の水溶液などが挙げられる。前記金属は、酸化物を構成可能な金属であればそれでよく、このような金属としては、例えば、ガリウム、インジウム、アルミニウム、鉄等が挙げられる。本発明においては、前記金属が、ガリウムまたはアルミニウムを少なくとも含むのが好ましく、ガリウムおよびアルミニウムを少なくとも含むのがより好ましい。第1及び第2の原料溶液中の金属の含有量は、本発明の目的を阻害しない限り特に限定されないが、好ましくは、0.001モル%〜50モル%であり、より好ましくは0.01モル%〜50モル%である。また、第1及び第2の原料溶液がガリウムおよびアルミニウムを含む場合には、第2の原料溶液が、第1の原料溶液よりもガリウムを多く含むのが好ましい。
【0027】
また、第1及び第2の原料溶液には、さらに、酸や塩基等のその他添加剤が含まれていてもよい。本発明においては、前記原料溶液に酸が含まれているのが好ましく、このような好ましい酸としては、例えば、塩酸、臭化水素酸、ヨウ化水素酸などが挙げられる。
【0028】
第1及び第2の原料溶液の溶媒は、特に限定されず、水等の無機溶媒であってもよいし、アルコール等の有機溶媒であってもよいし、無機溶媒と有機溶媒の混合溶液であってもよい。本発明においては、前記溶媒が水を含むのが好ましく、水と酸の混合溶媒であるのも好ましい。前記水としては、より具体的には、例えば、純水、超純水、水道水、井戸水、鉱泉水、鉱水、温泉水、湧水、淡水、海水などが挙げられるが、本発明においては、超純水が好ましい。また、前記酸としては、より具体的には、例えば、酢酸、プロピオン酸、ブタン酸等の有機酸;三フッ化ホウ素、三フッ化ホウ素エーテラート、三塩化ホウ素、三臭化ホウ素、トリフルオロ酢酸、トリフルオロメタンスルホン酸、p−トルエンスルホン酸などが挙げられるが、本発明においては、酢酸が好ましい。
【0029】
(搬送工程I)
搬送工程Iでは、第1及び第2のキャリアガスをそれぞれ用いて前記第1及び第2のミストを前記下地基板へそれぞれ搬送する。第1及び第2のキャリアガスの種類としては、本発明の目的を阻害しない限り特に限定されず、例えば、酸素、オゾン、窒素やアルゴン等の不活性ガス、または水素ガスやフォーミングガス等の還元ガスなどが挙げられるが、本発明においては、第1及び第2のキャリアガスとして酸素を用いるのが好ましい。また、第1及び第2のキャリアガスの種類はそれぞれ、1種類であってよいが、2種類以上であってもよく、キャリアガス濃度を変化させた希釈ガス(例えば10倍希釈ガス等)などを、さらに用いてもよい。また、第1及び第2のキャリアガスの供給箇所もそれぞれ、1箇所だけでなく、2箇所以上あってもよい。第1及び第2のキャリアガスの流量は、特に限定されないが、0.01〜20L/分であるのが好ましく、1〜10L/分であるのがより好ましい。希釈ガスの場合には、希釈ガスの流量が、0.001〜2L/分であるのが好ましく、0.1〜1L/分であるのがより好ましい。
【0030】
(製膜工程I)
製膜工程Iでは、前記第1及び第2のミストを前記下地基板の表面近傍で反応させて、前記下地基板表面の一部または全部に製膜する。前記熱反応は、前記ミストから膜が形成される熱反応であれば特に限定されず、熱でもって前記ミストが反応すればそれでよく、反応条件等も本発明の目的を阻害しない限り特に限定されない。本工程においては、前記熱反応を、通常、溶媒の蒸発温度以上の温度で行うが、高すぎない温度(例えば1000℃)以下が好ましく、650℃以下がより好ましく、400℃〜650℃が最も好ましい。また、前記熱反応は、本発明の目的を阻害しない限り、真空下、非酸素雰囲気下、還元ガス雰囲気下および酸素雰囲気下のいずれの雰囲気下で行われてもよく、また、大気圧下、加圧下および減圧下のいずれの条件下で行われてもよいが、本発明においては、酸素雰囲気下で行われるのが好ましく、大気圧下で行われるのも好ましく、酸素雰囲気下でかつ大気圧下で行われるのがより好ましい。なお、膜厚は、製膜時間を調整することにより、設定することができる。
【0031】
本発明の結晶性酸化物半導体膜の形成手段は、本発明の目的を阻害しない限り、特に限定されず、公知の手段であってもよい。前記結晶性酸化物半導体膜の形成手段としては、例えば、CVD法、MOCVD法、MOVPE法、ミストCVD法、ミスト・エピタキシー法、MBE法、HVPE法またはパルス成長法などが挙げられる。本発明においては、前記酸化物層の形成手段が、MOCVD法、MBE法、HVPE法、ミストCVD法またはミスト・エピタキシー法であるのが好ましく、ミストCVD法またはミスト・エピタキシー法であるのがより好ましい。
【0032】
以下、前記結晶性酸化物半導体膜の形成手段の好適な例として、ミストCVD法またはミスト・エピタキシー法を用いて、前記結晶性酸化物半導体膜を、前記酸化物層が表面に形成された下地基板上に形成した例を挙げて、本発明をさらに詳細に説明する。
【0033】
前記ミストCVD法またはミスト・エピタキシー法では、前記結晶性酸化物半導体の原料溶液を霧化し(霧化工程II)、生成されるミストをキャリアガスによって前記酸化物層が表面に形成された下地基板まで搬送し(搬送工程II)、熱反応によって、前記下地基板上に結晶性酸化物半導体膜を製膜する(製膜工程II)。
【0034】
(霧化工程II)
霧化工程IIは、前記結晶性酸化物半導体の原料溶液(以下、「原料溶液II」ともいう。)を霧化する。霧化手段は、原料溶液IIを霧化できさえすれば特に限定されず、公知の手段であってよいが、本発明においては、超音波を用いる霧化手段が好ましい。超音波を用いて得られたミストは、初速度がゼロであり、空中に浮遊するので好ましく、例えば、スプレーのように吹き付けるのではなく、空間に浮遊してガスとして搬送することが可能なミストであるので衝突エネルギーによる損傷がないため、非常に好適である。ミストの液滴のサイズは、特に限定されず、数mm程度であってもよいが、好ましくは50μm以下であり、より好ましくは100nm〜10μmである。
【0035】
(結晶性酸化物半導体の原料溶液)
原料溶液IIは、ミストCVD法またはミスト・エピタキシー法により、前記結晶性酸化物半導体が得られる溶液であれば特に限定されない。原料溶液IIとしては、例えば、金属の有機金属錯体(例えばアセチルアセトナート錯体等)やハロゲン化物(例えばフッ化物、塩化物、臭化物またはヨウ化物等)の水溶液などが挙げられる。前記金属は、半導体を構成可能な金属であればそれでよく、このような金属としては、例えば、ガリウム、インジウム、アルミニウム、鉄等が挙げられる。本発明においては、前記金属が、インジウム、ガリウムまたはアルミニウムを少なくとも含むのが好ましく、ガリウムを少なくとも含むのがより好ましい。原料溶液II中の金属の含有量は、本発明の目的を阻害しない限り特に限定されないが、好ましくは、0.001モル%〜50モル%であり、より好ましくは0.01モル%〜50モル%である。
【0036】
また、原料溶液IIは、ドーパントが含まれているのが好ましい。ドーパントを含ませることにより、イオン注入等を行わずに、前記結晶性酸化物半導体膜を形成することができる。前記ドーパントとしては、例えば前記金属が少なくともガリウムを含む場合には、ケイ素、ゲルマニウム、スズ、鉛などのn型ドーパント等が挙げられる。本発明においては、前記ドーパントがスズであるのが電気特性をより向上させることができるので好ましい。なお、前記ドーパントを原料溶液IIに含ませる場合には、ハロゲン化物や錯体の形態にして含有させるのが好ましい。また、ドーピング量は、本発明の目的を阻害しない限り特に限定されないが、原料溶液II中、体積比で、0.001〜20%であるのが好ましく、0.01〜10%であるのがより好ましい。また、本発明においては、ノンドープも好ましい。
【0037】
また、原料溶液IIには、さらに、酸や塩基等のその他添加剤が含まれていてもよい。本発明においては、原料溶液IIに酸が含まれているのが好ましく、このような好ましい酸としては、例えば、塩酸、臭化水素酸、ヨウ化水素酸などが挙げられる。
【0038】
原料溶液IIの溶媒は、特に限定されず、水等の無機溶媒であってもよいし、アルコール等の有機溶媒であってもよいし、無機溶媒と有機溶媒の混合溶液であってもよい。本発明においては、前記溶媒が水を含むのが好ましく、水と酸の混合溶媒であるのも好ましい。前記水としては、より具体的には、例えば、純水、超純水、水道水、井戸水、鉱泉水、鉱水、温泉水、湧水、淡水、海水などが挙げられるが、本発明においては、超純水が好ましい。また、前記酸としては、より具体的には、例えば、酢酸、プロピオン酸、ブタン酸等の有機酸;三フッ化ホウ素、三フッ化ホウ素エーテラート、三塩化ホウ素、三臭化ホウ素、トリフルオロ酢酸、トリフルオロメタンスルホン酸、p−トルエンスルホン酸などが挙げられるが、本発明においては、酢酸が好ましい。
【0039】
(搬送工程II)
搬送工程IIでは、前記酸化物層が表面に形成された下地基板を用いて、キャリアガスによって前記ミストを該下地基板へ搬送する。キャリアガスの種類としては、本発明の目的を阻害しない限り特に限定されず、例えば、酸素、オゾン、窒素やアルゴン等の不活性ガス、または水素ガスやフォーミングガス等の還元ガスなどが挙げられるが、本発明においては、キャリアガスとして酸素を用いるのが好ましい。また、キャリアガスの種類は1種類であってよいが、2種類以上であってもよく、キャリアガス濃度を変化させた希釈ガス(例えば10倍希釈ガス等)などを、さらに用いてもよい。また、キャリアガスの供給箇所も1箇所だけでなく、2箇所以上あってもよい。キャリアガスの流量は、特に限定されないが、0.01〜20L/分であるのが好ましく、1〜10L/分であるのがより好ましい。希釈ガスの場合には、希釈ガスの流量が、0.001〜2L/分であるのが好ましく、0.1〜1L/分であるのがより好ましい。
【0040】
(製膜工程II)
製膜工程IIでは、前記ミストを前記下地基板の表面近傍で反応させて、前記下地基板表面の一部または全部に製膜する。前記熱反応は、前記ミストから膜が形成される熱反応であれば特に限定されず、熱でもって前記ミストが反応すればそれでよく、反応条件等も本発明の目的を阻害しない限り特に限定されない。本工程においては、前記熱反応を、通常、溶媒の蒸発温度以上の温度で行うが、高すぎない温度(例えば1000℃)以下が好ましく、650℃以下がより好ましく、400℃〜650℃が最も好ましい。また、前記熱反応は、本発明の目的を阻害しない限り、真空下、非酸素雰囲気下、還元ガス雰囲気下および酸素雰囲気下のいずれの雰囲気下で行われてもよく、また、大気圧下、加圧下および減圧下のいずれの条件下で行われてもよいが、本発明においては、酸素雰囲気下で行われるのが好ましく、大気圧下で行われるのも好ましく、酸素雰囲気下でかつ大気圧下で行われるのがより好ましい。なお、膜厚は、製膜時間を調整することにより、設定することができる。
【0041】
上記のようにして得られる結晶性酸化物半導体膜または積層構造体は、半導体装置等に好適に用いることができ、とりわけ、パワーデバイスに有用である。例えば、前記結晶性酸化物半導体膜は、前記半導体装置のn型半導体層(n+型半導体層、n−型半導体層を含む)または、p型半導体層に用いられる。また、本発明においては、前記結晶性酸化物半導体膜または前記積層構造体を、そのままで用いてもよいし、前記基板等から剥離する等の公知の手段を用いた後に、半導体装置等に適用してもよい。
【0042】
また、前記半導体装置は、電極が半導体層の片面側に形成された横型の素子(横型デバイス)と、半導体層の表裏両面側にそれぞれ電極を有する縦型の素子(縦型デバイス)に分類することができ、本発明においては、横型デバイスにも縦型デバイスにも好適に用いることができるが、中でも、縦型デバイスに用いることが好ましい。前記半導体装置としては、例えば、ショットキーバリアダイオード(SBD)、金属半導体電界効果トランジスタ(MESFET)、高電子移動度トランジスタ(HEMT)、金属酸化膜半導体電界効果トランジスタ(MOSFET)、静電誘導トランジスタ(SIT)、接合電界効果トランジスタ(JFET)、絶縁ゲート型バイポーラトランジスタ(IGBT)または発光ダイオード(LED)などが挙げられる。
【0043】
以下、本発明の結晶性酸化物半導体膜をn型半導体層(n+型半導体やn−半導体層等)に適用した場合の好適な例を、図面を用いて説明するが、本発明は、これらの例に限定されるものではない。なお、以下に例示する半導体装置において、本発明の目的を阻害しない限り、さらに他の層(例えば絶縁体層、半絶縁体層、導体層、半導体層、緩衝層またはその他中間層等)などが含まれていてもよいし、また、緩衝層(バッファ層)なども適宜省いてもよい。
【0044】
図5は、本発明に係るショットキーバリアダイオード(SBD)の一例を示している。
図5のSBDは、n−型半導体層101a、n+型半導体層101b、ショットキー電極105aおよびオーミック電極105bを備えている。
【0045】
ショットキー電極およびオーミック電極の材料は、公知の電極材料であってもよく、前記電極材料としては、例えば、Al、Mo、Co、Zr、Sn、Nb、Fe、Cr、Ta、Ti、Au、Pt、V、Mn、Ni、Cu、Hf、W、Ir、Zn、In、Pd、NdもしくはAg等の金属またはこれらの合金、酸化錫、酸化亜鉛、酸化レニウム、酸化インジウム、酸化インジウム錫(ITO)、酸化亜鉛インジウム(IZO)等の金属酸化物導電膜、ポリアニリン、ポリチオフェン又はポリピロ−ルなどの有機導電性化合物、またはこれらの混合物並びに積層体などが挙げられる。
【0046】
ショットキー電極およびオーミック電極の形成は、例えば、真空蒸着法またはスパッタリング法などの公知の手段により行うことができる。より具体的に例えば、前記金属のうち2種類の第1の金属と第2の金属とを用いてショットキー電極を形成する場合、第1の金属からなる層と第2の金属からなる層を積層させ、第1の金属からなる層および第2の金属からなる層に対して、フォトリソグラフィの手法を利用したパターニングを施すことにより行うことができる。
【0047】
図5のSBDに逆バイアスが印加された場合には、空乏層(図示せず)がn型半導体層101aの中に広がるため、高耐圧のSBDとなる。また、順バイアスが印加された場合には、オーミック電極105bからショットキー電極105aへ電子が流れる。このようにして前記半導体構造を用いたSBDは、高耐圧・大電流用に優れており、スイッチング速度も速く、耐圧性・信頼性にも優れている。
【0048】
(HEMT)
図6は、本発明に係る高電子移動度トランジスタ(HEMT)の一例を示している。
図6のHEMTは、バンドギャップの広いn型半導体層121a、バンドギャップの狭いn型半導体層121b、n+型半導体層121c、半絶縁体層124、緩衝層128、ゲート電極125a、ソース電極125bおよびドレイン電極125cを備えている。
【0049】
(MOSFET)
本発明の半導体装置がMOSFETである場合の一例を
図7に示す。
図7のMOSFETは、トレンチ型のMOSFETであり、n−型半導体層131a、n+型半導体層131b及び131c、ゲート絶縁膜134、ゲート電極135a、ソース電極135bおよびドレイン電極135cを備えている。
【0050】
(JFET)
図8は、n−型半導体層141a、第1のn+型半導体層141b、第2のn+型半導体層141c、p型半導体層142、ゲート電極145a、ソース電極145bおよびドレイン電極145cを備えている接合電界効果トランジスタ(JFET)の好適な一例を示す。
【0051】
(IGBT)
図9は、n型半導体層151、n−型半導体層151a、n+型半導体層151b、p型半導体層152、ゲート絶縁膜154、ゲート電極155a、エミッタ電極155bおよびコレクタ電極155cを備えている絶縁ゲート型バイポーラトランジスタ(IGBT)の好適な一例を示す。
【0052】
(LED)
本発明の半導体装置が発光ダイオード(LED)である場合の一例を
図10に示す。
図10の半導体発光素子は、第2の電極165b上にn型半導体層161を備えており、n型半導体層161上には、発光層163が積層されている。そして、発光層163上には、p型半導体層162が積層されている。p型半導体層162上には、発光層163が発生する光を透過する透光性電極167を備えており、透光性電極167上には、第1の電極165aが積層されている。なお、
図10の半導体発光素子は、電極部分を除いて保護層で覆われていてもよい。
【0053】
透光性電極の材料としては、インジウム(In)またはチタン(Ti)を含む酸化物の導電性材料などが挙げられる。より具体的には、例えば、In
2O
3、ZnO、SnO
2、Ga
2O
3、TiO
2、CeO
2またはこれらの2以上の混晶またはこれらにドーピングされたものなどが挙げられる。これらの材料を、スパッタリング等の公知の手段で設けることによって、透光性電極を形成できる。また、透光性電極を形成した後に、透光性電極の透明化を目的とした熱アニールを施してもよい。
【0054】
図10の半導体発光素子によれば、第1の電極165aを正極、第2の電極165bを負極とし、両者を介してp型半導体層162、発光層163およびn型半導体層161に電流を流すことで、発光層163が発光するようになっている。
【0055】
第1の電極165a及び第2の電極165bの材料としては、例えば、Al、Mo、Co、Zr、Sn、Nb、Fe、Cr、Ta、Ti、Au、Pt、V、Mn、Ni、Cu、Hf、W、Ir、Zn、In、Pd、NdもしくはAg等の金属またはこれらの合金、酸化錫、酸化亜鉛、酸化レニウム、酸化インジウム、酸化インジウム錫(ITO)、酸化亜鉛インジウム(IZO)等の金属酸化物導電膜、ポリアニリン、ポリチオフェン又はポリピロ−ルなどの有機導電性化合物、またはこれらの混合物などが挙げられる。電極の製膜法は特に限定されることはなく、印刷方式、スプレー法、コ−ティング方式等の湿式方式、真空蒸着法、スパッタリング法、イオンプレ−ティング法等の物理的方式、CVD、プラズマCVD法等の化学的方式、などの中から前記材料との適性を考慮して適宜選択した方法に従って前記基板上に形成することができる。
【0056】
なお、発光素子の別の態様を
図11に示す。
図11の発光素子では、基板169上にn型半導体層161が積層されており、p型半導体層162、発光層163およびn型半導体層161の一部を切り欠くことによって露出したn型半導体層161の半導体層露出面上の一部に第2の電極165bが積層されている。
【0057】
前記半導体装置は、例えば電源装置を用いたシステム等に用いられる。前記電源装置は、公知の手段を用いて、前記半導体装置を配線パターン等に接続するなどして作製することができる。
図12に電源システムの例を示す。
図12は、複数の前記電源装置と制御回路を用いて電源システムを構成している。前記電源システムは、
図13に示すように、電子回路と組み合わせてシステム装置に用いることができる。なお、電源装置の電源回路図の一例を
図14に示す。
図14は、パワー回路と制御回路からなる電源装置の電源回路を示しており、インバータ(MOSFETA〜Dで構成)によりDC電圧を高周波でスイッチングしACへ変換後、トランスで絶縁及び変圧を実施し、整流MOSFET(A〜B’)で整流後、DCL(平滑用コイルL1,L2)とコンデンサにて平滑し、直流電圧を出力する。この時に電圧比較器で出力電圧を基準電圧と比較し、所望の出力電圧となるようPWM制御回路でインバータ及び整流MOSFETを制御する。
【実施例】
【0058】
以下、本発明の実施例を説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
<実施例>
1.製膜装置
図1を用いて、本実施例で用いたミストCVD装置を説明する。ミストCVD装置19は、基板20を載置するサセプタ21と、キャリアガスを供給するキャリアガス供給手段22aと、キャリアガス供給手段22aから送り出されるキャリアガスの流量を調節するための流量調節弁23aと、キャリアガス(希釈)を供給するキャリアガス(希釈)供給手段22bと、キャリアガス(希釈)供給手段22bから送り出されるキャリアガスの流量を調節するための流量調節弁23bと、原料溶液24aが収容されるミスト発生源24と、水25aが入れられる容器25と、容器25の底面に取り付けられた超音波振動子26と、内径40mmの石英管からなる供給管27と、供給管27の周辺部に設置されたヒーター28とを備えている。サセプタ21は、石英からなり、基板20を載置する面が水平面から傾斜している。製膜室となる供給管27とサセプタ21をどちらも石英で作製することにより、基板20上に形成される膜内に装置由来の不純物が混入することを抑制している。
【0059】
2.原料溶液の作製
臭化ガリウムを0.1mol/Lとなるように超純水に混合し、この際、臭化水素酸を体積比で10%含有させ、これを原料溶液とした。
【0060】
3.製膜準備
上記2.で得られた原料溶液24aミスト発生源24内に収容した。次に、基板20として、
図15に示すとおり、第1の層2aとして、α-(Al
0.12Ga
0.88)
2O
3層(膜厚120nm)、第2の層2bとして、α-(Al
0.02Ga
0.98)
2O
3層(膜厚120nm)とが積層されたc面サファイア基板1をサセプタ21上に設置し、ヒーター28の温度を500℃にまで昇温させた。次に、流量調節弁23a、23bを開いて、キャリアガス源であるキャリアガス供給手段22a、22bからキャリアガスを供給管27内に供給し、供給管27内の雰囲気をキャリアガスで十分に置換した後、キャリアガスの流量を5.0L/分に、キャリアガス(希釈)の流量を0.5L/分にそれぞれ調節した。なお、キャリアガスとして酸素を用いた。
【0061】
4.膜形成
次に、超音波振動子を振動させ、その振動を、水25を通じて原料溶液24aに伝播させることによって、原料溶液24aを霧化させてミストを生成させた。このミストが、キャリアガスによって、供給管27に搬送され、大気圧下、500℃にて、基板20表面近傍でミストが熱反応して基板20上に膜が形成された。なお、製膜時間は1.5時間であり、膜厚は3μmであった。
【0062】
5.評価
上記4.で得られた結晶性酸化物半導体膜について、X線回析装置を用いて膜の同定をしたところ、得られた膜はα-Ga
2O
3膜であった。また、得られたα-Ga
2O
3膜の表面を光学顕微鏡で観察した結果を
図2に示す。
図2から分かるように、得られたα-Ga
2O
3膜は、膜表面の300μm四方以上の面積にわたって、クラックを実質的に含まない膜であった。また、同様の方法でα-Ga
2O
3膜の膜厚が5μmになるまで製膜した場合にも、膜表面の300μm四方以上の面積にわたって、クラックを含まないα-Ga
2O
3膜が得られた。
【0063】
<比較例1>
下地基板として、
図16に示すとおり、第1の層2aとして、α-(Al
0.12Ga
0.88)
2O
3層(膜厚120nm)が表面に形成されたc面サファイア基板1を用いたこと以外は、実施例1と同様にして、結晶性酸化物半導体膜を得た。X線回析装置を用いて膜の同定をしたところ、得られた膜はα-Ga
2O
3膜であった。また、膜厚は3μmであった。得られたα-Ga
2O
3膜の表面を光学顕微鏡で観察した結果を
図3に示す。
図3から分かるように、得られたα-Ga
2O
3膜は、膜表面の300μm四方の面積中にクラックを含む膜であった。
【0064】
<比較例2>
下地基板として、c面サファイア基板を用いたこと以外は、実施例1と同様にして、結晶性酸化物半導体膜を得た。X線回析装置を用いて膜の同定をしたところ、得られた膜はα-Ga
2O
3膜であった。また、膜厚は3μmであった。得られたα-Ga
2O
3膜の表面を光学顕微鏡で観察した結果を
図4に示す。
図4から分かるように、得られたα-Ga
2O
3膜は、膜表面の300μm四方の面積中にクラックを含む膜であった。