(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記ジルコニウム含有酸化物が、リチウム、ニッケル、銅、亜鉛、セシウム、バリウム、ハフニウム、タンタル、セリウム及びジスプロシウムからなる群より選ばれる少なくとも1種の金属元素と、ジルコニウムとを含有する複合金属酸化物である、請求項2に記載のα−アミノ酸の製造方法。
前記ジルコニウム含有酸化物が、リチウム、ニッケル、銅、亜鉛、セシウム、バリウム、ハフニウム、タンタル、セリウム及びジスプロシウムからなる群より選ばれる少なくとも1種の金属元素を含有する金属化合物を、酸化ジルコニウム又は前記複合金属酸化物に担持した担持型金属酸化物である、請求項2又は3に記載のα−アミノ酸の製造方法。
前記複合金属酸化物中、ジルコニウム以外の前記金属元素含有量が、ジルコニウム100質量部に対して、0.01質量部以上100質量部以下である、請求項3に記載のα−アミノ酸の製造方法。
前記担持型金属酸化物中、ジルコニウム以外の前記金属元素担持量が、ジルコニウム100質量部に対して、0.01質量部以上10.0質量部以下である、請求項4に記載のα−アミノ酸の製造方法。
前記ジルコニウム化合物の使用量が、前記α−アミノ酸アミド100質量部に対して、1.0質量部以上200質量部以下である、請求項1〜6のいずれか1項に記載のα−アミノ酸の製造方法。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明を詳細に説明するが、本発明は後述する実施形態に限定されるものではない。
【0013】
[α−アミノ酸の製造方法]
本発明のα−アミノ酸の製造方法は、下記一般式(1)で表されるα−アミノ酸アミドと水とを、ジルコニウム化合物の存在下で反応させ、下記一般式(2)で表されるα−アミノ酸を製造する方法であって、当該ジルコニウム化合物が、リチウム、ニッケル、銅、亜鉛、セシウム、バリウム、ハフニウム、タンタル、セリウム及びジスプロシウムからなる群より選ばれる少なくとも1種の金属元素とジルコニウムとを含有する、α−アミノ酸の製造方法である。
【0015】
一般式(1)及び(2)中、R
1は、水素原子、置換基を有していてもよい炭素数1〜6のアルキル基、置換基を有していてもよい炭素数3〜6のシクロアルキル基、置換基を有していてもよい環構成炭素数6〜10のアリール基、又は、置換基を有していてもよい環構成原子数4〜13のヘテロアリール基である。
【0016】
<α−アミノ酸アミド>
前記α−アミノ酸アミドは、下記一般式(1)で表される化合物である。
【0018】
一般式(1)中、R
1は、水素原子、置換基を有していてもよい炭素数1〜6のアルキル基、置換基を有していてもよい炭素数3〜6のシクロアルキル基、置換基を有していてもよい環構成炭素数6〜10のアリール基、又は、置換基を有していてもよい環構成原子数4〜13のヘテロアリール基である。
なお、前記炭素数、前記環構成炭素数、又は前記環構成原子数には、置換基の炭素数及び原子数は含まれないものとする。
ここで、「置換基を有していてもよい」とは、前述する各基が置換基を有していてもよく、また、置換基を有していなくてもよいことを表している。例えば、前記置換基を有していてもよい炭素数1〜6のアルキル基とは、置換基を有する炭素数1〜6のアルキル基又は無置換の炭素数1〜6のアルキル基を表す。
【0019】
R
1は、好ましくは水素原子、又は置換基を有していてもよい炭素数1〜6のアルキル基、より好ましくは置換基を有していてもよい炭素数1〜6のアルキル基である。
当該炭素数1〜6のアルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、n−ブチル基、n−ペンチル基、n−ヘキシル基及びこれらの構造異性体(例えば、イソプロピル基、イソブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基等)が挙げられる。当該炭素数1〜6のアルキル基は、好ましくは炭素数1〜4のアルキル基、より好ましくは炭素数1〜3のアルキル基、更に好ましくは炭素数1又は2のアルキル基であり、当該炭素数1又は2のアルキル基とは、それぞれメチル基又はエチル基である。
前記炭素数3〜6のシクロアルキル基としては、シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基が挙げられる。
前記環構成炭素数6〜10のアリール基としては、フェニル基又はナフチル基が挙げられる。
前記環構成原子数4〜13のヘテロアリール基としては、ピロリジニル基、イミダゾリル基、又はインドリル基等が挙げられる。
前記「置換基を有していてもよい」場合に用いられる置換基としては、メチル基、エチル基、ヒドロキシ基、カルボキシ基、メトキシ基、アミノ基、メチルチオ基、メルカプト基、フェニル基、ヒドロキシフェニル基、ベンジル基、インドリル基、イミダゾリル基、グアニジノ基、及びカルバモイル基からなる群より選ばれる少なくとも1種が挙げられる。
【0020】
前記一般式(1)で表される具体的なα−アミノ酸アミドとしては、例えば、グリシンアミド、アラニンアミド、メチオニンアミド、イソロイシンアミド、ロイシンアミド、リシンアミド、システインアミド、フェニルアラニンアミド、チロシンアミド、トレオニンアミド、トリプトファンアミド、バリンアミド、ヒスチジンアミド、アルギニンアミド、アスパラギン酸アミド、アスパラギンアミド、グルタミン酸アミド、グルタミンアミド、及びセリンアミドからなる群より選ばれる少なくとも1種が挙げられる。これらのα−アミノ酸アミドの中では、好ましくはグリシンアミド、アラニンアミド、又はメチオニンアミドであり、より好ましくはメチオニンアミドである。
【0021】
また、本発明で用いるα−アミノ酸アミドの量は、α−アミノ酸アミド及び水を含有する反応溶液の総液量100質量%中、得られるα−アミノ酸の収率を向上させる観点から、好ましくは5.0質量%以上、より好ましくは7.5質量%以上、更に好ましくは9.0質量%以上、より更に好ましくは9.5質量%以上であり、そして、生産性の観点から、好ましくは50.0質量%以下、より好ましくは40.0質量%以下であり、そして、α−アミノ酸の収率を向上させる観点から、更に好ましくは30.0質量%以下、より更に好ましくは20.0質量%以下、より更に好ましくは15.0質量%以下、より更に好ましくは13.0質量%以下である。
【0022】
<α−アミノ酸>
前記α−アミノ酸は、下記一般式(2)で表される化合物である。
【0024】
一般式(2)中、R
1は前述した一般式(1)中のR
1と同様であり、その好適な態様も同様である。
【0025】
前記一般式(2)で表される具体的なα−アミノ酸としては、例えば、グリシン、アラニン、メチオニン、イソロイシン、ロイシン、リシン、システイン、フェニルアラニン、チロシン、トレオニン、トリプトファン、バリン、ヒスチジン、アルギニン、アスパラギン酸、アスパラギン、グルタミン酸、グルタミン、プロリン及びセリンからなる群より選ばれる少なくとも1種が挙げられる。これらのα−アミノ酸の中では、好ましくはグリシン、アラニン、又はメチオニンであり、より好ましくはメチオニンである。
【0026】
<ジルコニウム化合物>
前記ジルコニウム化合物は、リチウム、ニッケル、銅、亜鉛、セシウム、バリウム、ハフニウム、タンタル、セリウム及びジスプロシウムからなる群より選ばれる少なくとも1種の金属元素とジルコニウムとを含有する。当該ジルコニウム化合物は、前記α−アミノ酸アミドを加水分解して前記α−アミノ酸を得る反応で、触媒として作用する。
また、当該ジルコニウム化合物は、好ましくはリチウム、ニッケル、銅、亜鉛、セシウム、バリウム、ハフニウム、タンタル、セリウム及びジスプロシウムからなる群より選ばれる少なくとも1種の金属元素とジルコニウムとを含有するジルコニウム含有酸化物である。
前記ジルコニウム以外の金属元素としては、α−アミノ酸の収率をより向上させる観点から、好ましくはリチウム、ニッケル、銅、亜鉛、ハフニウム、タンタル及びジスプロシウムからなる群より選ばれる少なくとも1種、より好ましくはリチウム、ニッケル、亜鉛、タンタル及びジスプロシウムからなる群より選ばれる少なくとも1種である。
なお、当該ジルコニウム化合物は、単独で又は2種以上を組み合わせて用いてもよい。
当該ジルコニウム化合物中、ジルコニウム以外の前記金属元素含有量は、生産性向上の観点から、ジルコニウム100質量部に対して、好ましくは0.01質量部以上、より好ましくは0.05質量部以上、更に好ましくは0.1質量部以上であり、そして、副反応抑制の観点から、好ましくは100質量部以下、より好ましくは70.0質量部以下、更に好ましくは50.0質量部以下、より更に好ましくは30.0質量部以下、より更に好ましくは20.0質量部以下である。
【0027】
(ジルコニウム含有酸化物)
前記ジルコニウム含有酸化物は、好ましくは前記ジルコニウム含有酸化物が、リチウム、ニッケル、銅、亜鉛、セシウム、バリウム、ハフニウム、タンタル、セリウム及びジスプロシウムからなる群より選ばれる少なくとも1種の金属元素と、ジルコニウムとを含有する複合金属酸化物(以下、「ジルコニウム含有複合金属酸化物」ともいう。)である。
【0028】
〔ジルコニウム含有複合金属酸化物〕
前記ジルコニウム含有酸化物が前記ジルコニウム含有複合金属酸化物である場合、ジルコニウム以外の前記金属元素としては、α−アミノ酸の収率をより向上させる観点から、好ましくはリチウム、ニッケル、銅、亜鉛、ハフニウム、タンタル、及びセリウムからなる群より選ばれる少なくとも1種である。
【0029】
前記ジルコニウム含有複合金属酸化物中、ジルコニウム以外の前記金属元素含有量は、生産性向上の観点から、ジルコニウム100質量部に対して、好ましくは0.01質量部以上、より好ましくは0.04質量部以上、更に好ましくは0.1質量部以上であり、そして、副反応抑制の観点から、好ましくは100質量部以下、より好ましくは70.0質量部以下、更に好ましくは40.0質量部以下、より更に好ましくは30.0質量部以下、より更に好ましくは20.0質量部以下である。
【0030】
{ジルコニウム含有複合金属酸化物の製造方法}
前記ジルコニウム含有複合金属酸化物の製造方法は、例えば、後述する実施例に記載の方法(水熱合成法)、共沈法、ゾルゲル法を用いて製造することができる。
例えば、ジルコニウムの供給原料、ジルコニウム以外の金属元素の供給原料、及び溶媒を混合して加熱して得る方法が挙げられる。
当該ジルコニウムの供給原料としては、例えば、ジルコニウムの酢酸塩、炭酸塩、硝酸塩、硫酸塩、有機酸塩等の塩;塩化物、臭化物、ヨウ化物等のハロゲン化物;水酸化物;アルコキシド;オキシハロゲン化物等が挙げられる。当該供給原料は、無水物であっても水和物であってもよい。
当該ジルコニウム以外の金属元素の供給原料としては、例えば、前述したリチウム、ニッケル、銅、亜鉛、セシウム、バリウム、ハフニウム、タンタル、セリウム及びジスプロシウムからなる群より選ばれる少なくとも1種の金属元素の酢酸塩、炭酸塩、硝酸塩、硫酸塩、有機酸塩等の塩;塩化物、臭化物、ヨウ化物等のハロゲン化物;水酸化物;アルコキシド;オキシハロゲン化物等が挙げられる。当該供給原料は、無水物であっても水和物であってもよい。
当該溶媒としては、例えば、水及び/又は水以外の極性溶媒が挙げられる。当該極性溶媒としては、前記金属元素の供給原料を溶解できるものがよく、例えば、メタノール、エタノール、1−プロパノール、2−プロパノール、1−ブタノール等のアルコール類が挙げられる。
更に、必要に応じて、アンモニア、水酸化ナトリウム、ヒドラジン、過酸化水素、過硫酸ナトリウム、脂肪酸等を混合してもよい。
【0031】
前記ジルコニウムの供給原料、ジルコニウム以外の金属元素の供給原料、及び溶媒の混合方法は、特に制限はなく、混合物が均一になるように混合すればよく、好ましくは、得られるジルコニウム含有複合金属酸化物が前述した金属元素含有量を満たすようにジルコニウムの供給原料と前記ジルコニウム以外の金属元素の供給原料とを混合する。
前記ジルコニウム以外の金属元素の供給原料の配合量は、前記ジルコニウムの供給原料中のジルコニウム100質量部に対して、前記ジルコニウム以外の金属元素換算で、好ましくは1.0質量部以上、より好ましくは1.5質量部以上、更に好ましくは2.0質量部以上、より更に好ましくは5.0質量部以上であり、そして、好ましくは100質量部以下、より好ましくは70.0質量部以下、更に好ましくは40.0質量部以下である。
【0032】
その後、得られた混合物を、前記溶媒中で加熱する。当該加熱時の温度は、好ましくは100℃以上、より好ましくは150℃以上、更に好ましくは200℃以上であり、そして、好ましくは350℃以下、より好ましくは320℃以下、更に好ましくは300℃以下である。当該加熱時間は、特に制限はないが、好ましくは1時間以上、より好ましくは3時間以上、更に好ましくは5時間以上であり、そして、好ましくは200時間以下、より好ましくは100時間以下、更に好ましくは50時間以下である。
【0033】
加熱後、室温まで冷却し、得られた混合物(固体)を洗浄、ろ過し、更に乾燥を行う。これらの過程を経て得られた混合物(固体)を、更に、空気中で高温で焼成して、ジルコニウム含有複合金属酸化物を得ることができる。なお、当該焼成時の温度は、特に制限はないが、好ましくは300℃以上、より好ましくは400℃以上、更に好ましくは450℃以上であり、そして、好ましくは1000℃以下、より好ましくは900℃以下、更に好ましくは800℃以下である。当該焼成時間は、特に制限はないが、好ましくは1時間以上、より好ましくは2時間以上、更に好ましくは3時間以上であり、そして、好ましくは50時間以下、より好ましくは40時間以下、更に好ましくは30時間以下である。
【0034】
〔金属担持型ジルコニウム含有酸化物〕
前記ジルコニウム含有酸化物は、生産性向上という観点からは、好ましくはリチウム、ニッケル、銅、亜鉛、セシウム、バリウム、ハフニウム、タンタル、セリウム及びジスプロシウムからなる群より選ばれる少なくとも1種の金属元素を含有する金属化合物を、酸化ジルコニウム又は前記ジルコニウム含有複合金属酸化物に担持した担持型金属酸化物(以下、「金属担持型ジルコニウム含有酸化物」ともいう。)であってもよい。
【0035】
前記金属担持型ジルコニウム含有酸化物は、より好ましくはリチウム、ニッケル、銅、亜鉛、セシウム、バリウム、ハフニウム、タンタル、セリウム及びジスプロシウムからなる群より選ばれる少なくとも1種の金属元素を含有する金属化合物をハフニウムとジルコニウムとを含有する前記ジルコニウム含有複合金属酸化物又は酸化ジルコニウムに担持した担持型金属酸化物であり、更に好ましくはリチウム、ニッケル、銅、亜鉛、セシウム、バリウム、ハフニウム、タンタル、セリウム及びジスプロシウムからなる群より選ばれる少なくとも1種の金属元素を含有する金属化合物をハフニウムとジルコニウムとを含有する前記ジルコニウム含有複合金属酸化物に担持した担持型金属酸化物である。
【0036】
前記ジルコニウム含有酸化物が前記金属担持型ジルコニウム含有酸化物である場合、酸化ジルコニウム又は前記ジルコニウム含有複合金属酸化物に担持される金属化合物が含有するジルコニウム以外の前記金属元素としては、α−アミノ酸の収率をより向上させる観点から、リチウム、亜鉛、セシウム、バリウム及びジスプロシウムからなる群より選ばれる少なくとも1種、より好ましくはリチウム、亜鉛、セシウム及びジスプロシウムからなる群より選ばれる少なくとも1種、更に好ましくはリチウム、亜鉛及びジスプロシウムからなる群より選ばれる少なくとも1種である。
【0037】
当該金属担持型ジルコニウム含有酸化物中、ジルコニウム以外の前記金属元素担持量は、生産性向上の観点から、ジルコニウム100質量部に対して、好ましくは0.01質量部以上、より好ましくは0.05質量部以上、更に好ましくは0.1質量部以上、より更に好ましくは0.5質量部以上、より更に好ましくは0.7質量部以上、そして、副反応抑制の観点から、好ましくは10.0質量部以下、より好ましくは7.0質量部以下、更に好ましくは5.0質量部以下、より更に好ましくは3.0質量部以下、より更に好ましくは1.5質量部以下である。
【0038】
当該金属担持型ジルコニウム含有酸化物中、ジルコニウム以外の前記金属元素含有量は、生産性向上の観点から、ジルコニウム100質量部に対して、好ましくは0.1質量部以上、より好ましくは0.8質量部以上、更に好ましくは1.5質量部以上、より更に好ましくは1.7質量部以上であり、そして、副反応抑制の観点から、好ましくは10.0質量部以下、より好ましくは7.0質量部以下、更に好ましくは5.0質量部以下、より更に好ましくは3.0質量部以下、より更に好ましくは2.5質量部以下である。
当該ジルコニウム以外の前記金属元素含有量は、担持された当該金属量と、当該金属が担持される前のジルコニウム含有複合金属酸化物が含有していた当該金属量との合計量である。
【0039】
{金属担持型ジルコニウム含有酸化物の製造方法}
前記金属担持型ジルコニウム含有酸化物の製造方法は、例えば、含浸法、CVD法、噴霧乾燥法を用いて製造することができる。
例えば、含浸法の場合、担体として酸化ジルコニウム及び/又は前記ジルコニウム含有複合金属酸化物と、担持物の原料である前記ジルコニウム以外の金属元素の供給原料とを、溶媒中で混合した後、乾燥、焼成して得る方法が挙げられる。
当該ジルコニウム以外の金属元素の供給原料としては、例えば、前述したリチウム、ニッケル、銅、亜鉛、セシウム、バリウム、ハフニウム、タンタル、セリウム及びジスプロシウムからなる群より選ばれる少なくとも1種の金属元素の酢酸塩、炭酸塩、硝酸塩、硫酸塩、有機酸塩等の塩;塩化物、臭化物、ヨウ化物等のハロゲン化物;水酸化物;アルコキシド;オキシハロゲン化物等が挙げられる。当該供給原料は、無水物であっても水和物であってもよい。
当該金属担持型ジルコニウム含有酸化物の製造で用いる溶媒としては、例えば、水、及び/又は水以外の極性溶媒が挙げられる。当該極性溶媒としては、前記金属元素の供給原料を溶解できるものがよく、例えば、メタノール、エタノール、1−プロパノール、2−プロパノール、1−ブタノール等のアルコール類が挙げられる。
【0040】
前記酸化ジルコニウム若しくは前記ジルコニウム含有複合金属酸化物、前記ジルコニウム以外の金属元素の供給原料、及び溶媒との混合方法は、特に制限はなく、混合物が均一になるように混合すればよく、好ましくは、得られる金属担持型ジルコニウム含有酸化物が前述した金属元素含有量を満たすように酸化ジルコニウム若しくは前記ジルコニウム含有複合金属酸化物と前記ジルコニウム以外の金属元素の供給原料とを混合する。
前記ジルコニウム以外の金属元素の供給原料の配合量は、前記担体中のジルコニウム100質量部に対して、前記ジルコニウム以外の金属元素換算で、好ましくは0.01質量部以上、より好ましくは0.05質量部以上、更に好ましくは0.1質量部以上、より更に好ましくは0.5質量部以上、より更に好ましくは0.7質量部以上、そして、好ましくは10.0質量部以下、より好ましくは7.0質量部以下、更に好ましくは5.0質量部以下、より更に好ましくは3.0質量部以下、より更に好ましくは1.5質量部以下である。
【0041】
その後、得られた混合物を、例えば、減圧乾燥して溶媒を除去し、乾燥後の混合物(固体)を高温で焼成して、金属担持型ジルコニウム含有酸化物を得ることができる。
なお、当該焼成時の温度は、特に制限はないが、好ましくは300℃以上、より好ましくは400℃以上、更に好ましくは450℃以上であり、そして、好ましくは1000℃以下、より好ましくは900℃以下、更に好ましくは800℃以下である。
【0042】
前記ジルコニウム化合物を用いる際の形状は、特に制限はなく、例えば、粉末、粒子又は顆粒状であってもよく、球状、錠剤、柱状物、リング状、ハニカム状といった成形体(例えば、押出成形、加圧成形等により得られる成形体)として用いられてもよい。
【0043】
<水>
水は、前記α−アミノ酸アミドの溶媒としても用いられるが、前記ジルコニウム化合物の存在下、前記α−アミノ酸アミドと反応し、前記α−アミノ酸アミドを加水分解するための反応物でもある。
また、本発明で用いる水の量は、α−アミノ酸アミド1モルに対して1モル以上であればよいが、得られるα−アミノ酸の収率を向上させる観点から、α−アミノ酸アミド1モルに対して、好ましくは5モル以上、より好ましくは20モル以上、更に好ましくは40モル以上である。その上限は特に制限はないが、同様の観点から、α−アミノ酸アミド1モルに対して、好ましくは200モル以下、より好ましくは150モル以下、更に好ましくは100モル以下である。
【0044】
<反応>
前記α−アミノ酸アミドと水とを反応させる際の反応温度は、得られるα−アミノ酸の収率を向上させる観点から、好ましくは30℃以上、より好ましくは40℃以上、更に好ましくは50℃以上であり、そして、好ましくは250℃以下、より好ましくは220℃以下、更に好ましくは200℃以下である。
また、前記ジルコニウム化合物が前記ジルコニウム含有複合金属酸化物である場合の前記反応温度は、得られるα−アミノ酸の収率を向上させる観点から、好ましくは30℃以上、より好ましくは40℃以上、更に好ましくは50℃以上であり、そして、好ましくは250℃以下、より好ましくは220℃以下、更に好ましくは200℃以下である。
また、前記ジルコニウム化合物が前記金属担持型ジルコニウム含有酸化物である場合の前記反応温度は、得られるα−アミノ酸の収率を向上させる観点から、好ましくは30℃以上、より好ましくは40℃以上、更に好ましくは50℃以上であり、そして、好ましくは250℃以下、より好ましくは220℃以下、更に好ましくは200℃以下である。
【0045】
前記α−アミノ酸アミドと水とを反応させて、前記α−アミノ酸を得る際の反応時間は、反応液中のα−アミノ酸アミド濃度、反応温度、触媒としてのジルコニウム化合物の添加量、反応様式等によって異なるため、適宜、調整することができるが、好ましくは0.5時間以上、より好ましくは0.7時間以上、更に好ましくは1.0時間以上であり、そして、好ましくは5.0時間以下、より好ましくは3.0時間以下、更に好ましくは2.0時間以下である。
【0046】
前記α−アミノ酸アミドと水との反応は、前記α−アミノ酸アミドと水との反応により発生するアンモニア等の蒸発、揮発成分による自生圧力下で行ってもよく、当該発生するアンモニアを抜き出しながら反応させてもよい。また、反応液中の水の沸点を超える温度条件下で反応を行う場合等、必要に応じて、オートクレーブ等の加圧容器を用いて加圧しながら反応を行ってもよい。用いるα−アミノ酸アミド又は得られるα−アミノ酸の種類、また、反応液中のα−アミノ酸アミド濃度、反応温度、ジルコニウム化合物の添加量等によって、適宜、反応時の系内圧力を調整しながら行うことができる。
【0047】
反応方式は、回分法又は連続法のいずれの方法であってもよい。
例えば、回分法を用いる場合、前記ジルコニウム化合物の使用量は、前記α−アミノ酸アミド100質量部に対して、得られるα−アミノ酸の収率を向上させる観点から、好ましくは1.0質量部以上、より好ましくは3.0質量部以上、更に好ましくは5.0質量部以上であり、そして、副反応抑制の観点から、好ましくは200質量部以下、より好ましくは100質量部以下、更に好ましくは50.0質量部以下である。
また、前記ジルコニウム化合物の量は、前記α−アミノ酸アミド及び水を含有する反応溶液の総液量100質量部に対して、得られるα−アミノ酸の収率を向上させる観点から、好ましくは0.1質量部以上、より好ましくは0.4質量部以上、更に好ましくは1.0質量部以上であり、そして、副反応抑制の観点から、好ましくは50.0質量部以下、より好ましくは30.0質量部以下、更に好ましくは10.0質量部以下である。
連続法では、連続槽型反応器と管型反応器を用いることができる。連続槽型反応器は、完全混合流れ式反応器(CSTR:Continuous Stirred Tank Reactor)とも称され、複数の反応槽を直列に接続することで目的とする収率とすることができる。管型反応器は、押し出し流れ式反応器(PFR:Plug Flow Reactor)とも称され、目的とする収率とするために反応管内に混合効率を上げるために充填物を入れることや反応管の長さを変化させることができる。
CSTRを用いる場合の各反応条件は、前記各条件と同様の条件で行うことができ、その好適な範囲も同様である。また、PFRを用いる場合にも、前記各条件に基いて、その反応条件を、適宜設定することができる。なお、連続法の場合は、平均滞留時間を反応時間とみなす。
【0048】
前記α−アミノ酸アミドと水との反応によって得られたα−アミノ酸は、反応液から単離する場合、ろ過、蒸留、晶析等の方法及びこれらの方法を組み合わせることにより単離することができる。
【実施例】
【0049】
次に、本発明を実施例により、更に詳細に説明するが、本発明は、これらの例によってなんら限定されるものではない。
【0050】
[ジルコニウム化合物中のジルコニウム以外の金属元素含有量]
ジルコニウム化合物中のジルコニウム以外の金属元素含有量は、ジルコニウム以外の金属が未添加である条件で作成したジルコニウム化合物に対して、ジルコニウム以外の金属を混合して焼成した後のジルコニウム化合物の重量増加分からジルコニウム化合物中のジルコニウム以外の金属元素含有量を算出した。
ただし、ジルコニウム含有複合酸化物である「RC−100 酸化ジルコニウム」(製品名、第一稀元素化学工業株式会社製。以下、単に「RC−100」とも称する。)中のハフニウム含有量については、以下の方法により測定した。
・測定方法 誘導結合プラズマ(ICP)発光分光分析
・分析装置 720series ICP−OES(Agilent technologies社製)
・分析波長 263.9nm
50mL磁性るつぼに計量した「RC−100」約20mgに硫酸2.5mL(有害金属測定用硫酸、関東化学株式会社製)、硫酸アンモニウム100mg(原子吸光測定用、純正化学株式会社製)を加えて試料を調製し、ホットプレートを用いて300℃で2時間加熱した。更に、当該試料を電気炉で500℃まで加熱して溶解した。加熱処理後の磁性るつぼを冷却した後に、水で洗いこみながら1Lメスフラスコに全量を入れ、全量を1000mLとした。得られた溶液を前記分析装置(ICP−OES)を用いて分析し、RC−100に含まれるハフニウム含有量を算出した。
【0051】
[α−アミノ酸アミド及びα−アミノ酸の分析方法]
<メチオニンアミド及びメチオニンの分析方法>
メチオニンアミドの加水分解の検討には、高速液体クロマトグラフィー(HPLC)による分析を行った。分析条件は、以下の通りとした。
(HPLC分析条件1)
カラム:Shodex(登録商標) RSpak NN−814(昭和電工株式会社製)
カラムサイズ:8.0mm×250mm
カラム温度:40℃
溶離液:アセトニトリル/水=50/50(体積比)の混合液に、0.1質量%の濃度となるようにトリフルオロ酢酸を添加した水溶液
溶離液の流速:1.2mL/min
検出器:UV(紫外線)210nm検出器と、RI(示差屈折率)検出器とをこの順で直列に並べたものを使用
上記HPLC分析条件1で、測定対象となる標準品(メチオニンアミド塩酸塩(試薬)、和光純薬工業株式会社製;DL−メチオニン(試薬)、和光純薬工業株式会社製)を使用した絶対検量線法により分析液中の各化合物の濃度を算出し、反応液中のメチオニンアミド及びメチオニン濃度を算出し、反応開始前の原料メチオニンアミド転化率(%)及びメチオニン収率(%)を算出した。
【0052】
<グリシンアミド及びグリシンの分析方法>
グリシンアミドの加水分解の検討には、高速液体クロマトグラフィー(HPLC)による分析を行った。分析条件は、以下の通りとした。
(HPLC分析条件2)
カラム:Shodex(登録商標) RSpak NN−814(昭和電工株式会社製)
カラムサイズ:8.0mm×250mm
カラム温度:40℃
溶離液 : 8mMでKH
2PO
4を含む0.1質量%リン酸水溶液
溶離液の流速:1.0mL/min
検出器:UV(紫外線)210nm検出器と、RI(示差屈折率)検出器とをこの順で直列に並べたものを使用
上記のHPLC分析条件2で測定対象となる標準品(グリシンアミド塩酸塩:東京化成工業株式会社、和光純薬工業株式会社;グリシン:純正化学株式会社)を使用した絶対検量線法により分析液中の各化合物の濃度を算出し、反応液中のグリシンアミド及びグリシン濃度を算出し、反応開始前の原料グリシンアミド転化率(%)及びグリシン収率(%)を算出した。
【0053】
<アラニンアミド及びアラニンの分析方法>
アラニンアミドの加水分解の検討には、高速液体クロマトグラフィー(HPLC)による分析を行った。前述のメチオニンアミド及びメチオニンの測定条件と同じHPLC分析条件1で行った。
上記のHPLC分析条件1で測定対象となる標準品(アラニンアミド塩酸塩:東京化成工業株式会社製;アラニン:東京化成工業株式会社製)を使用した絶対検量線法により分析液中の各化合物の濃度を算出し、反応液中のアラニンアミド及びアラニン濃度を算出し、反応開始前の原料アラニンアミド転化率(%)及びアラニン収率(%)を算出した。
【0054】
[ジルコニウム化合物の調製]
<ジルコニウム含有複合金属酸化物(水熱合成品)>
(調製例1:ジルコニウム化合物No.1の調製)
撹拌子を入れた45mLのポリテトラフルオロエチレン(PTFE)製内筒管付の水熱合成反応容器(Parr Instrument社、PTFEライナー付高温高圧酸分解容器、容器サイズ45mL)の内筒管に硝酸ジルコニウム二水和物(和光純薬工業株式会社製) 0.8g、及び硝酸リチウム(関東化学株式会社製)をリチウム換算で当該硝酸ジルコニウム二水和物中のジルコニウム100質量部に対して10.0質量部加えて、更に、12.7mLの水に溶解し、溶液を得た。
当該溶液を撹拌しながら28質量%アンモニア水を5.0g滴下した。その後、反応容器を閉じ、240℃で12時間加熱した。その後、室温まで冷却した後、得られた固体を水で洗浄して濾過した後、100℃で3時間乾燥させた。乾燥後の固体を空気中で500℃で3時間焼成してジルコニウム含有複合金属酸化物(ジルコニウム化合物No.1)を得た。
【0055】
(調製例2〜9:ジルコニウム化合物No.2〜9の調製)
下記表1に示すように、ジルコニウム以外の金属元素の供給原料を後述する各金属元素の供給原料に変更したこと以外は、調製例1と同様の方法を用いて、ジルコニウム含有複合金属酸化物であるジルコニウム化合物No.2〜9を得た。
ただし、調製例7及び9において、当該ジルコニウム以外の金属元素の供給原料の量は、当該金属元素の供給原料中の金属元素換算で前記ジルコニウム二水和物中のジルコニウム100質量部に対して30.0質量部とした。
【0056】
(調製例10:ジルコニウム化合物No.10)
ジルコニウム含有複合酸化物である「RC−100 酸化ジルコニウム」(製品名、第一稀元素化学工業株式会社製、ジルコニウム100質量部に対するハフニウム含有量:1.0質量部)を、ジルコニウム化合物No.10として用いた。
【0057】
(調製例101〜103:ジルコニウム化合物No.101〜103の調製)
下記表3に示すジルコニウム以外の金属元素含有量となるようにし、ジルコニウム以外の金属元素の供給原料を後述する各金属元素の供給原料に変更したこと以外は、調製例1と同様の方法を用いて、ジルコニウム含有複合金属酸化物であるジルコニウム化合物No.101〜103を得た。
【0058】
(調製例104:ジルコニウム化合物No.104)
調製例1で、ジルコニウム以外の金属元素の原料となる化合物を添加しなかったこと以外は、調製例1と同様の方法を用いて、酸化ジルコニウムであるジルコニウム化合物No.104を得た。
【0059】
なお、前記調製例1〜9及び101〜103で用いた、ジルコニウム以外の金属元素の供給原料を以下に示す。
・リチウム(Li):「硝酸リチウム」(関東化学株式会社製)
・タンタル(Ta):「塩化タンタル(V)」(和光純薬工業株式会社製)
・銅(Cu):「硝酸銅(II)三水和物」(和光純薬工業株式会社製)
・ハフニウム(Hf):「硫酸ハフニウム(IV)」(シグマアルドリッチ社製)
・セリウム(Ce):「硝酸セリウム(III)六水和物」(和光純薬工業株式会社製)
・亜鉛(Zn):「硝酸亜鉛六水和物」(和光純薬工業株式会社製)
・ニッケル(Ni):「硝酸ニッケル(II)六水和物」(純正化学株式会社製)
・鉄(Fe):「硝酸鉄(III)九水和物」(純正化学株式会社製)
・イットリウム(Y):「硝酸イットリウム(III)六水和物」(純正化学株式会社製)
・チタン(Ti):「チタン(IV)テトラブトキシド,モノマー」(和光純薬工業株式会社製)
【0060】
<金属担持型ジルコニウム含有酸化物>
(調製例11:ジルコニウム化合物No.11の調製)
窒素雰囲気のグローブボックス内で、9mLパイレックス(登録商標)ガラス製バイアルにいれたジルコニウム含有複合酸化物である「RC−100 酸化ジルコニウム」(製品名、第一稀元素化学工業株式会社製、ジルコニウム100質量部に対するハフニウム含有量:1.0質量部)1.0gに、硝酸リチウム 0.0074g(関東化学株式会社製)を水0.88gに溶解した液の全量をスパーテルで混合しながら少しずつ滴下した。均一に混合した混合物を加温式真空乾燥機に入れ減圧条件下、50℃で1時間乾燥させて水分を除去した。乾燥後の固体をるつぼに移し、空気中で500℃で3時間焼成して、金属担持型ジルコニウム含有酸化物(ジルコニウム化合物No.11)を得た。
【0061】
(調製例12〜18:ジルコニウム化合物No.12〜18の調製)
下記表2に示すジルコニウム以外の金属元素含有量となるようにし、ジルコニウム以外の金属元素の供給原料を後述する各金属元素の供給原料に変更したこと以外は、調製例11と同様の方法を用いて、金属担持型ジルコニウム含有酸化物であるジルコニウム化合物No.12〜17を得た。
更に、下記表2に示す亜鉛含有量となるようにし、ジルコニウム以外の金属元素の供給原料を後述する「硝酸亜鉛六水和物」(和光純薬工業株式会社製)に変更したことに加えて、担体を「RC−100 酸化ジルコニウム」から「ジルコニウム化合物No.104」に変更したこと以外は、調製例11と同様の方法を用いて、ジルコニウム化合物No.18を得た。
【0062】
なお、前記調製例11〜18で用いた、ジルコニウム以外の金属元素の供給原料を以下に示す。
・リチウム(Li):「硝酸リチウム」(関東化学株式会社製)
・ジスプロシウム(Dy):「硝酸ジスプロシウム五水和物」(関東化学株式会社製)
・セシウム(Cs):「硝酸セシウム」(和光純薬工業株式会社製)
・バリウム(Ba):「硝酸バリウム」(関東化学株式会社製)
・亜鉛(Zn):「硝酸亜鉛六水和物」(和光純薬工業株式会社製)
【0063】
[α−アミノ酸の製造]
<原料基質の合成>
(2−[2−(メチルチオ)エチル]−2−アミノアセトニトリルの合成)
合成例1
水浴で40℃に加熱した1Lのフラスコに、シアン化水素70質量%水溶液 7.2gと、28質量%飽和アンモニア水溶液(和光純薬工業株式会社製) 103.5gと、メチルメルカプトプロピオンアルデヒド(シグマアルドリッチ社製) 18.3gとを、撹拌子で撹拌しながら、1時間で全量移液し終わるように供給した。
供給を完了した後、更に30分間熟成し、2−[2−(メチルチオ)エチル]−2−アミノアセトニトリルを含む反応液を調製した。
反応液の一部を取り出して、HPLC分析条件1で分析を行い、反応液中の2−[2−(メチルチオ)エチル]−2−アミノアセトニトリルの濃度を確認したところ、反応液中の当該濃度は16.1質量%であった。
【0064】
(メチオニンアミド(「2−アミノ−4−(メチルチオ)ブタンアミド」と同じ。)の合成)
合成例2
水浴20℃にて2Lのフラスコに、合成例1の方法により合成した2−[2−(メチルチオ)エチル]−2−アミノアセトニトリルを濃度16.1質量%で含む水溶液 257.1gを加え、更に水 153.3gと、アセトン(純正化学株式会社製) 53.66gと、20質量%NaOH(純正化学株式会社製の固体のNaOHを純水で20質量%に溶解した液) 3.09gを撹拌子で撹拌しながら室温で添加した。
添加完了後、水浴で温度20℃を保ち、3時間熟成し、メチオニンアミドを含む反応液を調製した。
反応液の一部を取り出して、HPLC分析条件1で分析を行い、反応液中のメチオニンアミドの濃度を確認したところ、反応液中の濃度は10.5質量%であった。
【0065】
<α−アミノ酸の合成>
(メチオニンの製造)
実施例1
合成例2の方法により合成したメチオニンアミドを含む反応液を減圧下にアンモニア、アセトンを留去した。留去後の液に水を加えてメチオニンアミド濃度11.0質量%の水溶液を調製した。
撹拌子を入れた30mLのステンレス製圧力容器に、調製例1の方法に従い合成したジルコニウム化合物No.1を0.1gと当該メチオニンアミド濃度11.0質量%の水溶液 10.0gとを加えた後、反応器を密閉して撹拌しながら130℃で1.0時間反応した。その後、反応液を室温まで冷却した。反応容器内の反応液をHPLC分析した結果、メチオニンアミド転化率は100%であり、メチオニンアミド基準のメチオニン収率は98.2%であった。
【0066】
実施例2〜21
下記表1及び表2に示すように、ジルコニウム化合物としてジルコニウム化合物No.2〜18を用い、反応条件を調整したこと以外は、実施例1と同様の方法を用いて、メチオニンアミドの加水分解を行った。得られた結果を、表1及び表2に示す。
【0067】
比較例1〜4
ジルコニウム化合物としてジルコニウム化合物No.101〜104を用いたこと以外は、実施例1と同様の方法を用いて、メチオニンアミドの加水分解を行った。得られた結果を、表3に示す。
【0068】
比較例5
ジルコニウム化合物を水酸化亜鉛(純正化学株式会社製)に変更したこと以外は、実施例1と同様の方法を用いて、メチオニンアミドの加水分解を行った。得られた結果を、表3に示す。
【0069】
比較例6
ジルコニウム化合物を酸化チタン(アナターゼ型、純正化学株式会社製)に変更したこと以外は、実施例1と同様の方法を用いて、メチオニンアミドの加水分解を行った。得られた結果を、表3に示す。
【0070】
比較例7
触媒を用いずに加水分解反応を行ったこと以外は、実施例1と同様の方法を用いて、メチオニンアミドの加水分解を行った。得られた結果を、表3に示す。
【0071】
(その他のα−アミノ酸の製造)
実施例22
グリシンアミドが液中濃度7.5質量%となる量のグリシンアミド塩酸塩を水に溶解し、グリシンアミド塩酸塩と同モル量の水酸化ナトリウムを加えて中和し、遊離のグリシンアミドの水溶液を調製した。
撹拌子を入れた15mLのガラス製圧力容器にグリシンアミド濃度7.5質量%に調整した水溶液 10.0gとジルコニウム化合物としてジルコニウム化合物No.16を0.1g加え、反応器を密閉して撹拌しながら130℃で1.0時間反応させた。その後、反応液を室温まで冷却した後、反応容器内の反応液をHPLC分析した結果、グリシンアミド転化率は100%であり、グリシンアミド基準のグリシン収率は94.5%であった。
【0072】
実施例23
ジルコニウム化合物としてジルコニウム化合物No.16を用い実施例22と同様の方法により、アラニンアミドの加水分解を行い、アラニンを得た。得られた結果を、表4に示す。
【0073】
実施例24
ジルコニウム化合物としてジルコニウム化合物No.10を用い実施例22と同様の方法により、グリシンアミドの加水分解を行い、グリシンを得た。得られた結果を、表4に示す。
【0074】
【表1】
【0075】
【表2】
【0076】
【表3】
【0077】
【表4】
【0078】
[結果]
表1〜3に示すように、実施例1〜21と、比較例1〜7との対比から、実施例1〜21に記載のジルコニウム化合物を用いることによって、より高い収率でメチオニンを得られることが確認された。
一方で、比較例1〜3では、ジルコニウム以外の金属元素として、特定の元素を含有していないため、メチオニン収率が各実施例に対して劣る結果となった。また、比較例4では、酸化ジルコニウム単体であるため、メチオニン収率が各実施例に対して劣る結果となった。また、比較例5及び比較例6では、ジルコニウム化合物にかえて、それぞれ独立に、水酸化亜鉛及び酸化チタンを用いており、触媒としてジルコニウム化合物を用いていないため、メチオニン収率が各実施例に対して劣る結果となった。また、比較例7では、触媒を用いずに加水分解を行っているため、メチオニン収率が各実施例に対して劣る結果となった。
更に、表4の実施例22〜24に示すように、本発明の製造方法は、メチオニンを製造する場合に限らず、グリシン及びアラニンを製造する場合にも有効であることが確認できた。