(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1の食品用品質改良剤では、乾燥物にした場合、乾燥時間が長いため、製造に時間がかかるという課題があった。
【0007】
本発明は、このような課題に着目してなされたもので、乾燥時間を短くし、製造効率の向上を図ることができる食品用品質改良
材の製造方
法を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するために、本発明に
関する食品用品質改良材は、トレハロースが配合された架橋ゼラチンを含むことを特徴とする。
本発明に係る食品用品質改良材の製造方法は、ゼラチンとトレハロースと水との配合物にトランスグルタミナーゼを酵素反応させて架橋ゼラチンを形成した後、
熱風乾燥させることを特徴とする。
【0009】
本発明に
係る食品用品質改良材の製造方法では、トレハロースが配合されることにより乾燥時間を短くし、製造効率の向上を図ることができる。
乾燥方法としては、熱風乾燥機による静置乾燥が好ましい。乾燥後は、粉砕により粉末化することが好ましい。乾燥させた食品用品質改良材は、使用するゼラチンにもよるが、乾燥質量の500%〜2000%の保水量となる。
【0010】
前記架橋ゼラチンには、トランスグルタミナーゼが配合されていることが好ましい。ゼラチンにトランスグルタミナーゼを酵素反応させることにより、耐熱性に優れた架橋ゼラチンを形成することができる。
ゼラチンとトレハロースとトランスグルタミナーゼとの配合量(質量%)は、ゼラチン7.0%〜20.0%、トレハロース1.0%〜40.0%、トランスグルタミナーゼ0.005%〜0.01%が好ましい。それらを水に加熱溶解させて、酵素反応させる。
【0011】
前記架橋ゼラチンには、κカラギナンが配合されていることが好ましい。κカラギナンにより保水性の向上を図ることができる。κカラギナンの配合量は、0.2%〜0.8%が好ましい。
【0012】
前記ゼラチンはアルカリ処理ゼラチンであることが好ましい。
酸処理ゼラチン、アルカリ処理ゼラチンのいずれを用いても良いが、アルカリ処理ゼラチンは、酸処理ゼラチンに比べて保水性に優れている。
本発明に
関する品質改良食品は、前述の食品用品質改良材を含むことを特徴とする。
本発明に
関する品質改良食品は、食品用品質改良材を含むため、保水性が良好で離水が少ない。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、乾燥時間を短くし、製造効率の向上を図ることができる食品用品質改良
材の製造方
法を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の実施の形態について説明する。
なお、本実施の形態において、「%」はすべて「質量%」を意味する。
[試験1](架橋ゼラチンの乾燥試験)
ゼラチンにトランスグルタミナーゼを反応させることにより、耐熱性に優れた架橋ゼラチンを形成させることができる。この架橋ゼラチンを粗粉砕し、熱風乾燥することにより、架橋ゼラチン乾燥物を得ることができる。
架橋化されたゼラチンは、その水分量が影響して乾燥時間が長時間になる。
添加する糖類の種類と乾燥時間との関係を調べるため、表1に示す配合で架橋ゼラチンを製造した。表1に示す材料のうち、ゼラチンを水に投入し、90℃で加熱溶解させた後、糖類を投入し、90℃で再加熱し溶解させた。また、表1に示す配合で糖類を添加せずにゼラチンを90℃の水で加熱溶解させた。それらを55℃に冷却して、トランスグルタミナーゼ溶液を添加し、5分以内に所定容器に充填させた。こうして得られた架橋ゲルを10時間酵素反応させた後、クイックミル(クイックミルQMY−10、スクリーン径φ5.0、株式会社セイシン企業製)で平均粒径5mm未満に粗粉砕し、熱風乾燥機により70℃の熱風を当てて乾燥させ、乾燥時間を測定した。乾燥は、水分量5%未満となる時間を終点とした。
【0016】
その結果、糖類無添加、還元水あめ(糖組成の単糖46〜49%、二糖30〜49%、三糖5〜13%、4糖以上4〜10%)、マルトースとトレハロースのみ乾燥することができ、それ以外の糖類は未乾燥に終わった。スクロース、マルチトール、キシリトール、エリスリトール、グルコース、デキストリンを添加したものでは乾燥途中で一部グミ状になり、未乾燥状態となった。糖類無添加では22時間で水分値5%未満の乾燥状態となった。トレハロースと還元水あめ、マルトースを比較すると、トレハロースは8時間で水分値5%未満の乾燥状態になったが、還元水あめは13時間、マル
トースは18時間かかった。
【0017】
トレハロースはその起晶性が高いことや、単糖類や二糖類の中でガラス転移温度が高いことが影響し、早期にガラス化が生じ乾燥効率が上がると考えられる。スクロース、マルチトール、キシリトール、エリスリトール、グルコースなどはガラス転移温度がトレハロースより低いため、未乾燥、グミ化する等の問題が生じたと考えられる。このことから、糖類の中でも特にトレハロースを配合することが、乾燥時間を短縮するのに効果的であることがわかった。
【0018】
[試験2](架橋ゼラチン中のゼラチン・トレハロースと保水量の関係)
架橋ゼラチン中のゼラチンとトレハロースの配合量で架橋ゼラチン乾燥物の保水量が異なると推測し、最適化試験を実施した。
表2に示す配合で架橋ゼラチン乾燥物をそれぞれ製造した。表2に示す材料のうち、ゼラチンを水に投入し、90℃で加熱溶解させた後、トレハロースを投入し、90℃で再加熱し溶解させた。55℃に冷却して、トランスグルタミナーゼ溶液を添加し、5分以内に所定容器に充填させた。こうして得られた架橋ゲルを10時間酵素反応させた後、クイックミルで粗粉砕(スクリーンφ5.0)し、熱風乾燥機により70℃の熱風を当て、水分量が5%未満になるまで乾燥させた。得られた架橋ゼラチン乾燥物をクイックミル(スクリーンφ1.0)で細粉砕した後、JIS標準篩を使用して篩分けした平均粒径250μm以下のゼラチン粉末を用いて、保水量を評価した。
保水量の評価は、乾燥粉末2.0gを所定容器に入れ、市水を添加混合した後、常温で十分に静置させ、容器を転倒させた時に流動性がなくなる点を終点とした。測定した保水量を表2に示す。
【0020】
表2に示すとおり、ゼラチン配合量が多いと保水量が多くなる傾向にある。また、配合されるトレハロース量によっても保水量が異なり、トレハロース量が少ないほど、保水量が多くなることがわかった。このことから、ゼラチンとトレハロースの配合量で保水量をコントロールできることがわかる。
【0021】
[試験3](ゼラチン製造方法の違いが及ぼす保水力の差)
ゼラチンは、不溶性のコラーゲンを酸またはアルカリで前処理して製造される。その前処理工程の違いにより、得られるゼラチンの性質が異なる。その処理方法の違いが架橋ゼラチンの保水力に与える影響について調べた。
表3に示す配合で、試験2と同様の方法で架橋ゼラチン乾燥物を製造し、保水量を測定した。保水量は、試験2と同様の方法で測定した。試験には、豚皮・豚骨由来のアルカリ処理ゼラチン、酸処理ゼラチンを使用した。いずれもゼリー強度200gのものを使用した。
【0023】
その結果、豚骨・皮由来酸処理ゼラチンの保水量は600%であった。豚骨・皮由来アルカリ処理ゼラチンの保水量は1400%であった。このことから、保水量を高めるには、アルカリ処理ゼラチンを用いることが好ましいことがわかる。
【0024】
このように、酸処理とアルカリ処理で保水量に大きな差が見られた。この保水力の違いは、トランスグルタミナーゼの基質となるグルタミンの含量と、ゼラチンの分子量分布の違いによるものであると推察される。酸処理ゼラチンは、グルタミンを多く含み、架橋部分多く形成される。また酸処理により主鎖が分解され、分子量の低い分子も含まれることが影響し、脆いゲルが形成される。
【0025】
一方でアルカリ処理ゼラチンは、アルカリ処理によりグルタミンがグルタミン酸になり、トランスグルタミナーゼの基質となる部分が少ないが、主鎖が酸処理と比較して分解されず、分子量の大きい分子が多く含まれるため、弾力性の高いゲルが形成される。これらのゲル形成が影響して単位量当たりの保水量に差が出たと考えられる。
【0026】
[試験4](ゼラチン起源原料の差が保水力に及ぼす影響について)
架橋ゼラチンの原料となるゼラチンは、牛、豚などの骨・皮部分やテラピアのような魚鱗由来の原料でも使用することが可能である。こうした原料から得られた架橋ゼラチンを乾燥し粉末化した際の保水量について調べた。試験には、表4の配合で試験2の方法により製造した架橋ゼラチン粉末を使用した。保水量は、試験2と同様の方法で測定した。
【0028】
その結果、豚由来ゼラチンを使用した架橋ゼラチン粉末は、保水量1400%〜1600%であった。牛由来ゼラチンと魚鱗由来ゼラチンを使用した架橋ゼラチン粉末は、保水量500%〜600%程度であった。
【0029】
ゼラチンの前処理方法の効率性から、牛由来ゼラチンは酸処理ゼラチンが市場に出回り、アルカリ処理ゼラチンは少ない。豚由来ゼラチンは、酸処理・アルカリ処理ともに市場に多く存在している。魚鱗由来ゼラチンは、アルカリ処理による前処理は難しく、酸処理ゼラチンが多く市場に存在している。
【0030】
そのため、本試験では、牛由来ゼラチンと魚鱗由来ゼラチンは酸処理ゼラチン、豚由来はアルカリ処理ゼラチンを使用した。架橋ゼラチンの保水量はゼラチンの起源原料による影響は少なく、前処理の違いが大きく保水に影響していることがわかった。
【0031】
保水量はアルカリ処理ゼラチンを使用する方が大きくなることから、アルカリ処理ゼラチンの使用が好ましい。しかし、酸処理ゼラチンにおいても保水効果は見られるため、架橋ゼラチンに使用されるゼラチンは、起源原料に限らず、どちらを使用してもよい。なお、ゼリー強度の違いは保水量に影響しなかったため、ゼリー強度は限定されない。
【0032】
[試験5](ゼラチンと増粘多糖類の併用による保水効果)
豚アルカリ処理ゼラチンで各増粘多糖類の併用による保水効果について調べた。試験には、表5の配合で試験2の方法により製造した架橋ゼラチン粉末を使用した。各増粘多糖類は、ゼラチンを入れた水に、トレハロースを投入する際に投入した。保水量は、試験2と同様の方法で測定した。
【0034】
その結果、最も保水力が向上したのはκカラギナンの1900%であった。
その他の増粘多糖類の保水力は、増粘多糖類を併用していないものと比較して、同等もしくは劣る結果となった(1400%〜未満)。κカラギナンのみ保水力の相加効果が得られた。また、κカラギナンを含む架橋ゼラチンでは、その基本骨格が崩壊することがないためか、増粘多糖類特有の粘性や違和感は感じられなかった。
ゼラチンとκカラギナンとを併用することにより保水効果が向上することがわかった。架橋ゲル作製時の充填適性等を考慮すると、κカラギナンの最適配合量は0.2%〜0.8%である。
【0035】
実施の形態の食品用品質改良材は、好適には以下の方法で製造される。
ゼラチン7.0%〜20.0%、トレハロース1.0%〜40.0%、トランスグルタミナーゼ0.005%〜0.01%、残量を水とした配合で架橋ゲルを作製する。まず、ゼラチンを水に投入し、90℃で加熱溶解させた後、トレハロースを投入し、90℃で再加熱し溶解させる。55℃に冷却して、トランスグルタミナーゼ溶液を添加し、5分以内に所定容器に充填させる。作製された架橋ゲルを5時間〜18時間、酵素反応させた後、チョッパーやクイックミル等で粗粉砕する。トランスグルタミナーゼによる酵素反応では、ゼラチンのアミノ酸残基のリジンとグルタミンに特異的に反応して架橋構造を形成することから、全体的な架橋構造をとると考えられる。
【0036】
材料に、κカラギナン0.2%〜0.8%を配合してもよい。κカラギナンは、ゼラチンまたはトレハロースの加熱溶解の際に投入することが好ましい。また、食品用品質改良材の材料に、食塩・醤油・酢などの調味料、砂糖・蜂蜜・トレハロース・オリゴ糖などの甘味料、香料、保存料、着色料、こんにゃく粉などの増粘多糖類、その他の食品添加剤を含んでいてもよい。
【0037】
粗粉砕されたゲルを熱風乾燥機に投入した後、50℃〜90℃、好ましくは70℃程度で8時間から18時間、熱風乾燥させる。その温度で熱風乾燥させることにより、焦げ等が生じることなく乾燥されるため、乾燥後に得られる架橋ゼラチンの風味に苦味を発生しない。架橋ゼラチンの水分量は5%未満にする。トレハロースを1.0%〜40.0%配合して架橋ゼラチンを製造することにより、8時間から10時間の熱風乾燥で、架橋ゼラチンの水分量を5%未満にすることが可能である。
その後、ピンミル・ハンマーミル・クイックミル等で細粉砕し、架橋ゼラチン乾燥物の粉末を得る。架橋ゼラチン乾燥物の粉末が食品用品質改良材となる。必要に応じて、乾燥粉末を、所望のスクリーンを備えたふるい機にかけ、所望の粒径の乾燥粉末とする。乾燥して得られた粉末の保水量は、乾燥質量対比で500%〜2000%となる。
【0038】
実施の形態の品質改良食品は、食品の種類によるが、食品用品質改良材を0.1%〜10.0%含むことが好ましい。品質改良食品としては、例えば、ハンバーグ、メンチカツ、ネギトロ、クリームチーズなどの加工食品のほか、調味バラコなどの魚卵製品への応用が挙げられる。
【実施例1】
【0039】
[ハンバーグの食感改良・歩留向上効果]
豚骨・皮由来アルカリ処理ゼラチン(ゼリー強度200g)16.2%と、トレハロース12.0%と、トランスグルタミナーゼ0.01%と、κカラギナン0.2%と、残量を水とした配合で、ゼラチン、κカラギナンを水に投入し、90℃で加熱溶解させた後、トレハロースを投入し、90℃で再加熱し溶解させた。55℃に冷却し、トランスグルタミナーゼ溶液を添加し、5分以内に所定容器に充填させた。作製された架橋ゲルを10時間、酵素反応させ粗粉砕した後、熱風乾燥機により70℃の熱風を当て、水分量が5%未満になるまで乾燥させた。クイックミルで細粉砕し、ふるい機にかけて、食品用品質改良材となる架橋ゼラチン粉末(粒径250μm以下)を製造した。
【0040】
その架橋ゼラチン粉末を用いて、表6に示す配合にてハンバーグを作製した。表6の各数値は、質量部である。比較例として、架橋ゼラチン粉末を添加しない一般的なハンバーグを作製した。得られた各ハンバーグをパネラー8人に試食してもらい、食感やジューシー感、風味、嗜好性を評価した。良好な場合は○、大きな差が見られない場合は△、不良の場合は×とした。その結果を表7に示す。
【0041】
【表6】
【0042】
【表7】
【0043】
表7に示すように、いずれの評価項目においても、実施例は比較例よりも優れていた。実施例は比較例と比べて、冷めてもジューシー感が持続し、パサツキ感も少なかった。また、風味に関しても比較例よりも向上していた。
歩留に関しては、比較例と比べて2%〜4%の向上効果が見られた。
【0044】
このように、食品用品質改良材を添加したものでは、架橋ゼラチン自体が保水することにより、ハンバーグのジューシー感が向上する。また保水することで、全体的に成型性が向上し、製造における加工適性が向上する。さらに、ゼラチン元来の風味もあるため、嗜好性や風味が向上している。架橋ゼラチン自体は耐熱性があるため、焼成後もそのままの形で維持される。結果、歩留向上効果につながる。
【実施例2】
【0045】
[ネギトロの歩留向上効果]
実施例1と同じ方法で製造した架橋ゼラチン粉末(粒径250μm以下)を用い、表8に示す配合にてネギトロを作製した。比較例1として架橋ゼラチン粉末を添加せず、加水しないネギトロを、比較例2として架橋ゼラチン粉末を添加せず、加水したネギトロを作製した。表8の各数値は、質量部である。
【0046】
得られた各ネギトロを−20℃で冷凍した後、常温で自然解凍した際の離水・離油・食感を評価した。良好な場合は○、効果はあるものの満足のいくものでない場合は△、不良の場合は×とした。その結果を表9に示す。
【0047】
【表8】
【0048】
【表9】
【0049】
表9に示すように、実施例1、2は加水したにもかかわらず、比較例1と同程度の評価となった。実施例3は、加水が比較例1と比べると20.0質量部多いため、効果はよくなかった。
このように、架橋ゼラチン自体が保水するため、加水しても離水・離油がなく、食感も水っぽくはならない。ただし、架橋ゼラチンの保水量は1600%程度であるため、実施例3では保水が追いつかず、離水・離油がともに生じて、食感も水っぽいものとなった。
【実施例3】
【0050】
[魚卵製品への応用]
架橋ゼラチン粉末(平均粒径250μm〜600μm)が保水した際には、弾力性に富む粒感が得られる。これをスケソウダラおよびマダラ由来の魚卵、特に調味バラコに応用することができる。
【0051】
実施例1と同じ方法で製造した架橋ゼラチン粉末(粒径250μm)を用い、表10に示す配合にて調味バラコを作製した。比較例1として、架橋ゼラチン粉末の代わりに乾燥コンニャク粉末を使用したものを作製した。調製された調味バラコはパッキングし、中心温度60℃ 10分の殺菌を実施した後、ブライン凍結した。凍結解凍後の食感・離水を評価した。
【0052】
【表10】
【0053】
実施例と比較例を比べると、実施例の方が全体的に粒感が向上しており、違和感を感じなかった。
このように、架橋ゼラチンは、魚卵同様にタンパク質から構成されているため、魚卵に類似の食感が得られる。さらにゼラチンの架橋構造(共有結合)により、しっかりした弾力性が得られるため、粒感が引き立つようになる。架橋ゼラチンの粒径は250μm〜600μmが好ましい。それ以上では保水後の粒径が大きくなり、見た目上の違和感につながる。それ以下では粒感が得られにくいため、同様の効果が得られない。
【実施例4】
【0054】
[クリームチーズへの応用]
実施例1と同じ方法で製造した架橋ゼラチン粉末(粒径250μm以下)を使用し、表11に示す配合にて、クリームチーズを作製した。比較例1として架橋ゼラチン粉末を添加せず、加水しないクリームチーズを、比較例2、3として架橋ゼラチン粉末を添加せず、それぞれ10.00%と20.00%加水したクリームチーズを作製した。10℃以下で冷蔵保存10日後の離水、食感を評価した。良好な場合は○、不良の場合は×とした。その結果を表12に示す。
【0055】
【表11】
【0056】
【表12】
【0057】
比較例1、2、実施例1のように加水10%までは、離水もなく食感への影響も少なかった。比較例3のように加水が20%になると、離水が生じ、食感も非常に軟らかいものになった。一方、実施例2では、架橋ゼラチン粉末の保水により、加水が20%でも影響がなく、離水、食感ともに良好な評価となった。
【0058】
このように、クリームチーズは加水すると経時的に離水が生じる。特に加水率が多い場合は、より顕著にその傾向が見られる。離水防止目的で架橋ゼラチン粉末を配合することで、テクスチャーに影響を与えることなく、離水防止ができ、全体的なボリュームを上げることができる。
【実施例5】
【0059】
[餡子の離水抑制]
実施例1と同じ方法で製造した架橋ゼラチン粉末(粒径250μm以下)を使用し、表13に示す配合にて加熱し、糖度55°になったところで加熱を止め、全体を室温まで冷却することにより、加糖練餡を作製した。比較例として同様の方法で架橋ゼラチン粉末を添加しないものを作製した。得られた餡子を容器に入れ、密封して5℃以下の冷蔵庫にて28日間保管し、離水の有無、貯蔵後の食感を評価した。良好な場合は○、不良の場合は×とした。その結果を表14に示す。
【0060】
【表13】
【0061】
【表14】
【0062】
表14に示すように、比較例では7日目から離水が生じており、14日目、28日目に離水が顕著に見られた。一方、実施例では28日間、離水は生じなかった。テクスチャーに関しては、ザラツキやネトツキ等の違和感は感じられず、良好な食感であった。
【0063】
このように、加糖練餡を使用する和菓子は多いが、そのテクスチャーに影響を与えず、離水を抑制することは和菓子等の品位を保つのに重要である。架橋ゼラチン粉末は糖度55°の高ブリックスにおいてもその保水効果を発揮できることがわかった。