(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【背景技術】
【0002】
熱交換器として、熱交換性の高い銅製のブロックの内部に冷却水路が形成されたヒートシンクを用いることが望ましい。
しかしながら、ブロック全てに銅材料を用いると、材料費のコストが格段に高くなることから、従来からアルミ鋳物にステンレスパイプを鋳込んだものが広く用いられている。このステンレスパイプをアルミ鋳物に鋳込んだものを用いてヒートシンクを形成した場合、コストを大幅に削減できるが、ステンレスの熱伝導率が低いため、熱交換効率が低下するという課題がある。
このような課題の下、全てに銅材料を用いる場合よりもコストを低減でき、且つステンレスよりも熱伝導率が良好なパイプ材料を用いたヒートシンクが求められていた。
前記課題を解決するものとして、ヒートシンクを構成する際に、配管には銅材料を用い、その周りを高純度のアルミニウムで鋳込んでブロック状とすることが考えられる。
【0003】
しかしながら、銅により形成した配管(銅パイプ)を鋳物成形型内に配置し、鋳物成形型内にアルミニウム溶湯を流し込んだ場合、銅とアルミニウムとが接することにより化学反応(コロージョン)が発生し、銅管が溶解するという課題があった。
【0004】
前記コロージョンの発生を防止可能なものとして、特許文献1には、銅パイプなどの冷媒配管の外周面に、この冷媒配管の素材よりも高い融点を持つ金属メッキを予め施し、その周囲にアルミニウムを鋳込む方法が開示されている。
特許文献1に開示された方法によれば、銅とアルミニウムとの直接的な接触がないためにコロージョンの発生を防止することができる。さらには、アルミニウム溶湯の熱により、銅パイプが軟化、変形することを防止することができる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1に開示されるように銅パイプの外周面に、銅よりも高い金属として例えば鉄メッキの膜を形成し、その周囲にアルミニウムで鋳込んだ場合、コロージョンによる銅パイプの溶解を防止することができる。
しかしながら、鉄の線膨張率とアルミニウムの線膨張率とは大きく異なるため、鉄メッキとアルミニウムの冷却ブロックとの間に亀裂が生じることがあり、密着性が悪いという課題があった。
【0007】
本発明は、前記した点に着目してなされたものであり、アルミニウムからなる冷却ブロックに銅パイプを埋設した熱交換器において、銅パイプの周りをアルミニウムで鋳込む際、銅パイプの溶解、変形が防止され、銅パイプの周面とアルミニウムとの密着性が向上した熱交換器、及びその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記した課題を解決するために、本発明に係る熱交換器は、アルミニウムからなる冷却ブロックに、外周面を鉄メッキ層で被覆されると共に、前記鉄メッキ層の外周面を、
アルミニウム溶湯によって溶融される銅メッキ層で被覆された銅パイプを、埋設した熱交換器であって、前記銅パイプと、前記銅パイプの外周面を被覆する鉄メッキ層と、アルミニウムからなる冷却ブロックと、
前記鉄メッキ層と前記冷却ブロックとの境界面に形成された混合層と、を備え、前記混合層は、前記鉄メッキ層の鉄と、
アルミニウム溶湯によって溶融した銅メッキ層の銅とアルミニウムの合金とが混ざり合う混合層であり、前記混合層により前記鉄メッキ層と前記冷却ブロックとが機械的に結合し密着していることに特徴を有する。
尚、前記鉄メッキ層の厚さは、5μm〜100μmの範囲内であることが望ましい。
このように構成された熱交換器によれば、冷却配管として熱伝導性に優れる銅パイプを有し、銅パイプの周りには、熱交換機能を向上し、且つコストの上昇を抑えるためにアルミニウムからなる冷却ブロックが設けられる。ここで、銅パイプと冷却ブロックとの間には鉄メッキ層が設けられ、銅パイプと鉄メッキ層との間、及び鉄メッキ層と冷却ブロック(アルミニウム)との間はそれぞれ強固に密着している。
これにより、冷却ブロックと銅パイプとの間の伝熱効率が格段に向上し、熱交換器としての機能が最大限に発揮される。
【0009】
また、前記した課題を解決するために、本発明に係る熱交換器の製造方法は、アルミニウムからなる冷却ブロックに、外周面を鉄メッキ層で被覆されると共に、前記鉄メッキ層の外周面を、
アルミニウム溶湯によって溶融される銅メッキ層で被覆された銅パイプを、埋設した熱交換器の製造方法であって、前記銅パイプを形成するステップと、前記銅パイプの外周面を鉄メッキ層で被覆するステップと、前記鉄メッキ層の外周面を銅メッキ層で被覆するステップと、前記鉄メッキ層と前記銅メッキ層とが形成された銅パイプを、鋳物成形型に配置するステップと、前記鋳物成形型にアルミニウム溶湯を流し込み、
アルミニウム溶湯によって銅メッキ層を溶融し、前記鉄メッキ層と前記冷却ブロックとの境界面に、前記鉄メッキ層の鉄と、
アルミニウム溶湯によって溶融した銅メッキ層の銅とアルミニウムの合金とが混ざり合う混合層を形成するステップと、前記鋳物成形型を冷却して熱交換器を取り出すステップと、を備えることに特徴を有する。
尚、前記銅パイプの外周面を鉄メッキ層で被覆するステップにおいて、前記鉄メッキ層の厚さを5μm〜100μmに形成することが望ましい。
また、前記鉄メッキ層の外周面を銅メッキ層で被覆するステップにおいて、前記銅メッキ層の厚さを0.5μm〜10μmに形成することが望ましい。
【0010】
このような方法により製造された熱交換器によれば、銅パイプと鉄メッキ層との界面は、銅(Cu)への鉄(Fe)のメッキ形成であるため密着性が高い。また、鉄メッキ層とアルミニウムからなる冷却ブロックとの境界面には、鋳込みの際のアルミニウムと銅メッキ層との化学反応により形成されたアルミニウムと銅との合金と、鉄メッキ層の表面の鉄とが混ざり合う混合層が形成される。この混合層により鉄メッキ層と冷却ブロックとが機械的に結合し強固に密着する。したがって、製造時における異金属間での分離や亀裂等の発生を抑制することができる。
また、鉄メッキ層を介して銅パイプと冷却ブロックとが接合した状態であるため、熱伝導性が高く、高性能な熱交換器を得ることができる。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、アルミニウムからなる冷却ブロックに銅パイプを埋設した熱交換器において、銅パイプの周りをアルミニウムで鋳込む際、銅パイプの溶解、変形が防止され、銅パイプの周面とアルミニウムとの密着性が向上した熱交換器、及びその製造方法を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明に係る熱交換器、及びその製造方法の実施の形態につき、図面に基づいて説明する。
図1は、本発明に係る熱交換器の全体を示す斜視図である。この熱交換器1は、アルミニウム(Al)により形成された冷却ブロック2に、冷却配管としての銅パイプ3が埋設されている。冷却ブロック2の一側面には、銅パイプ3の一端により冷却液(例えば水)の導入口2aが形成され、他端により冷却液の排出口2bが形成されている。銅パイプ3を形成する銅(Cu)の肉厚は、薄いほど好ましいが、エロージョンを防止するため、少なくとも0.4mm以上に形成されている。また、パイプ径は、適宜、求められる熱交換の性能に応じて決定すればよい。
また、冷却ブロック2を形成するアルミニウムは、熱伝導性をより高くするために成分の99%以上がAlにより形成された純アルミニウムが望ましい。
【0014】
図2は、
図1のA−A矢視断面図、及びその一部を拡大した図である。
図2の拡大図に示すように銅パイプ3と冷却ブロック2との間には、膜厚が5〜100μmの鉄(Fe)メッキ層4が形成されている。
これは、銅パイプ3の周りにアルミニウムからなる冷却ブロック2を鋳込む際、アルミニウム溶湯と銅パイプ3との化学的反応(共晶、コロージョンなど)を抑制するために設けられている。また、鉄の融点(1538℃)は銅の融点(1085℃)よりも高いため、鉄メッキ層4が介在することで、アルミニウム溶湯の熱により銅パイプ3が溶解及び変形することを防止することができる。また、鉄メッキ層4は、銅パイプ3に対する密着性のよいメッキ被膜が得られ、他の金属との接合性もよい。
【0015】
また、銅パイプ3と鉄メッキ層4とは、電気メッキ法により鉄メッキ層4が形成されているため、互いが強固に密着されている。
また、鉄メッキ層4とアルミニウムからなる冷却ブロック2との境界部においては、アルミニウムと銅との合金と、鉄とが混ざり合って機械的に結合する混合層6が形成され、それにより鉄メッキ層4と冷却ブロック2とが強固に密着している。この混合層6を形成して密着させる方法については、後述の本発明に係る製造方法の説明において行う。
【0016】
このように構成された熱交換器1によれば、冷却配管として熱伝導性に優れる銅パイプ3を有し、銅パイプ3の周りには、熱交換機能を向上し、且つコストの上昇を抑えるためにアルミニウムからなる冷却ブロック2が設けられる。ここで、銅パイプ3と冷却ブロック2との間には鉄メッキ層4が設けられ、銅パイプ3と鉄メッキ層4との間、及び鉄メッキ層4と冷却ブロック2(アルミニウム)との間はそれぞれ強固に密着している。
これにより、冷却ブロック2と銅パイプ3との間の伝熱効率が格段に向上し、熱交換器1としての機能が最大限に発揮される。
【0017】
続いて、
図1の熱交換器1の製造方法について、
図3のフローに沿って説明する。
図1に示した熱交換器1を製造する場合、先ず冷却配管とする銅パイプ3を形成する(
図3のステップS1)。これは、例えば
図4(a)に示すような直棒状の銅パイプ30(例えば銅管肉厚0.4mm、パイプ内径11mm)を用意し、これを湾曲成形し、例えば
図4(b)に示すようなW字状の銅パイプ3を得る。
【0018】
次いで、
図5(銅パイプ3の一部側断面図)を示すようにパイプ外周面に電気メッキ法により鉄メッキ層4を形成する(
図3のステップS2)。
即ち、鉄(Fe)をアノードとして、電解液に浸し、前記鉄に電流を流す。そして鉄(Fe)原子を酸化し、電解液に溶け出させる。カソードである銅パイプ3では、電解液に溶解した鉄(Fe)の金属イオンが電解液と銅パイプ3の接する面で還元され、銅パイプ3の外周面に鉄(Fe)がメッキされる。
この鉄メッキ層4の膜厚は、5〜100μmに形成する。これは、鉄メッキ層4の厚さが100μmよりも大きいと、鉄メッキ層4が厚すぎて、熱伝導率が低下するためである。また、鉄メッキ層4の厚さが5μmよりも小さいと、鉄メッキ層4が薄すぎて、アルミニウム溶湯と銅パイプ3とが化学反応し、銅パイプ3が溶解する虞があるためである。
【0019】
続いて、
図6に銅パイプ3の側断面図を示すように鉄メッキ層4の外周面に銅ストライクメッキ層5(銅メッキ層)を形成する(
図3のステップS3)。
即ち、電気メッキ法において、銅(Cu)をアノードとし、金属イオン濃度が薄い電解液を形成する。銅パイプ3の外周面に形成された鉄メッキ層4をカソードとし、比較的高い電流密度で比較的短時間のメッキ処理を行う。これにより鉄メッキ層4の外周面に、膜厚0.5〜10μm程度の比較的薄い銅ストライクメッキ層5が形成される。
このように銅パイプ3の外周面には、鉄メッキ層4と銅ストライクメッキ層5の2重の薄膜が形成される。
【0020】
尚、銅ストライクメッキ層5の厚さを0.5〜10μmとするのは、銅ストライクメッキ層5の厚さが0.5μmよりも小さいと、銅ストライクメッキ層5の厚さが薄すぎて、銅とアルミニウムとの化学反応(コロージョン)が小さくなり、鉄メッキ層4と冷却ブロック2(アルミニウム)とを十分に結合させることができないためである。
また、銅ストライクメッキ層5の厚さが10μmよりも厚いと、銅とアルミニウムとの化学反応(コロージョン)が強くなり過ぎ、鉄メッキ層4と冷却ブロック(アルミニウム)との間に隙間が生じる虞があるためである。
【0021】
銅パイプ3の外周面への鉄メッキ層4と銅ストライクメッキ層5の形成処理が完了すると、
図7に示すような上型11と下型12に分割可能な鋳物成形型10を用意する(
図3のステップS4)。上型11と下型12とを接合した鋳物成形型10の中には鋳型空間Rが形成されるようになっている。また、鋳型空間Rの一側面には、銅パイプ3の両端部を係止できるように係止凹部10aが形成されている。係止凹部10aは上型11と下型12とにより上下に分割可能に形成されている。この鋳物成形型10の型温度は、予め250〜370℃に設定する。
【0022】
次いで、外周面に前記鉄メッキ層4と銅ストライクメッキ層5とが形成された銅パイプ3を鋳物成形型10にセットする(
図3のステップS5)。
具体的には、先ず
図8(a)に示すように下型12内に銅パイプ3を配置する。このとき、銅パイプ3の先端部3aを
図8(b)に示すように下型12の係止凹部10a(下半分の形状)に置く。そして、
図8(c)のように下型12の上に上型11を載せて、型締め処理により上型11と下型12とを密着させる。このとき、銅パイプ3の先端部3aは、上型11側の係止凹部10a(上半分の形状)と下型12の係止凹部10aとにより周囲を覆われ係止される。それにより銅パイプ3の略全体が鋳型空間Rの中空内に保持される。
【0023】
次に、鋳物成形型10の溶湯口13からアルミニウム溶湯を鋳型空間R内に流しこむ(
図3のステップS6)。このときのアルミニウム溶湯の温度は、700℃〜900℃である。また、アルミニウム溶湯は、その99%以上がAlにより形成された純アルミニウムであることが好ましい。
ここで、流し込まれたアルミニウム溶湯に、銅パイプ3の最外周面に形成された銅ストライクメッキ層5が化学反応(コロージョン)し、銅ストライクメッキ層5が溶融する。そして、アルミニウムと銅との合金が形成されるとともに、鉄メッキ層4の表面が前記化学反応に巻き込まれる。そして、後述の冷却処理後には鉄メッキ層4と冷却ブロック2との境界面において、前記合金と鉄メッキ層4表面の鉄とが混ざり合う混合層6が形成される。混合層6により、鉄メッキ層4と冷却ブロック2とが機械的に結合し強固に密着する。
また、銅パイプ3の外周面が鉄メッキ層4に被覆されることにより、銅パイプ3はアルミニウム溶湯の熱から保護され、溶融や変形が生じることがない。
【0024】
鋳物形成型10の鋳型空間Rにアルミニウム溶湯が充填されると、その後、所定時間、例えば15分程度の冷却処理が施される(
図3のステップS7)。これによりアルミニウム溶湯は固化し、冷却ブロック2となる。
冷却処理後、鋳物成形型10の鋳型空間Rから冷却ブロック2を取り出し、銅パイプ3の先端3aを冷却ブロック2の形状に合わせて切断し、熱交換器1が得られる。
【0025】
以上のようにして製造された熱交換器1によれば、銅パイプ3と鉄メッキ層4との界面は、銅(Cu)への鉄(Fe)のメッキ形成であるため、密着性が高い。また、鉄メッキ層4とアルミニウムからなる冷却ブロック2との境界面は、鋳込みの際のアルミニウムと銅メッキストライク層5との化学反応(コロージョン)に鉄メッキ層4表面の鉄が巻き込まれ、混合層6が形成される。この混合層6は、アルミニウムと銅の合金と鉄メッキ層4表面の鉄とが混ざり合ったものであるため、アルミニウムからなる冷却ブロック2と鉄メッキ層4とは機械的に結合し強固に密着している。したがって、製造時における異金属間での分離や亀裂等の発生を抑制することができる。
また、鉄メッキ層4を介して銅パイプ3と冷却ブロック2とが強固に密着した状態であるため、熱伝導性が高く、高性能な熱交換器1を得ることができる。
【0026】
尚、前記実施の形態においては、銅パイプ3の外周面への鉄メッキ層4の形成、及び鉄メッキ層4の外周面への銅ストライクメッキ層5の形成に、それぞれ電気メッキ法を用いるものとしたが、本発明にあっては、メッキ形成方法を限定するものではなく、他のメッキ形成方法を用いてもよい。
【実施例】
【0027】
以下、本発明を実施例に基づき具体的に説明するが、本発明は下記に示す実施例により制限されるものではない。
【0028】
[実施例1]
実施例1では、前記実施形態に示した
図3のフローに従い、熱交換器を製造した。銅パイプの肉厚は、0.4mm、内径は11mmとし、鉄メッキ層の厚さは10μmとし、銅ストライクメッキ層の厚さは5μmとした。
熱交換器の製造後、これをパイプの長さ方向に直交する方向に切断し、その断面において、銅パイプと鉄メッキ層とアルミニウムからなる冷却ブロックとのそれぞれの界面をマイクロスコープにより拡大し観察した。
図9にその拡大した断面写真を示す。
図9の写真に示すように銅パイプと鉄メッキ層との間、及び鉄メッキ層とアルミニウム層との間には、隙間や亀裂は確認されなかった。また、鉄メッキ層とアルミニウム層との界面は、互いの金属が混合する混合層が形成され、強固に密着していることが確認できた。
【0029】
[実施例2]
実施例2では、鉄メッキ層の厚さをパラメータとして複数の条件を設定し、熱交換器の製造後、実施例1と同様に断面において金属間の界面を観察した。また、製造した熱交換器の冷却性能を評価した。
鉄メッキ層の厚さ寸法の条件(条件1〜条件7)と結果を表1に示す。表1の界面観察結果において、○は隙間なしを示し、△は隙間、亀裂箇所有りを示し、×は銅パイプ溶解、変形有りを示す。また、冷却性能評価において、○は期待される温度以下に十分に冷却されたもの、△は期待される温度まで冷却されるもの、×は期待される温度まで冷却されないものを示す。
[表1]
【0030】
表1に示すように、鉄メッキ層の厚さが100μmよりも大きい条件7では、冷却性能が比較的低い結果となった。これは、鉄メッキ層が厚すぎて、伝熱性が低下したためと考えられた。
また、鉄メッキ層の厚さが5μmよりも小さい条件1、2では、銅パイプに溶解及び変形がみられた。これは、鉄メッキ層が薄すぎて、アルミニウム溶湯と銅ストライクメッキ層との化学反応(コロージョン)に、鉄メッキ層だけでなく銅パイプの銅が巻き込まれたものと考えられた。
したがって、鉄メッキ層の厚さが5μm〜100μmであれば、銅パイプの溶解及び変形は抑制され、また、層間に隙間や亀裂が生じず、熱伝導率が良好なものとなることを確認した。
【0031】
[実施例3]
実施例3では、銅ストライクメッキ層の厚さをパラメータとして複数の条件を設定し、熱交換器の製造後、実施例1と同様に断面において金属間の界面を観察した。
鉄メッキ層の厚さ寸法の条件(条件8〜条件14)と結果を表2に示す。表2において、○は隙間なしを示し、△は隙間、亀裂箇所有りを示し、×は銅パイプ溶解、変形有りを示す。
[表2]
【0032】
表2に示すように、銅ストライクメッキ層の厚さが0.3μmの条件8では、鉄メッキ層と冷却ブロックとの界面の一部に隙間が確認された。これは、銅ストライクメッキ層の厚さが薄すぎて、鉄メッキ層表面の鉄を巻き込むだけの化学反応(コロージョン)が、アルミニウム溶湯と銅メッキストライク層との間で生じなかったためと考えられた。
【0033】
また、銅ストライクメッキ層の厚さが10μmよりも厚い条件13(厚さ12μm)、14(厚さ20μm)では、鉄メッキ層と冷却ブロックとの界面の一部に隙間が確認され、また、銅パイプに溶解及び変形がみられた。これは、銅ストライクメッキ層の厚さが厚すぎて、アルミニウム溶湯の鋳込み時に銅ストライクメッキ層とアルミニウムとの化学反応(コロージョン)が過剰となり、銅メッキ層が溶解し変形したためと考えられた。
したがって、銅ストライクメッキ層の厚さが0.5μm〜10μmであれば、鉄メッキ層と冷却ブロックとの界面に隙間や亀裂が生じず、銅パイプも溶解及び変形しないことを確認した。
【0034】
[比較例1]
比較例1では、銅パイプ(肉厚0.4mm、内径11mm)の上に鉄メッキ層(厚さ20μm)を形成し、これを鋳物成形型(
図7と同形)内にセットして、この鋳物成形型内にアルミニウム溶湯を流しこんで冷却後、熱交換器を得た。
この熱交換器パイプの長さ方向に直交する方向に切断し、その断面において、銅パイプと鉄メッキ層とアルミニウムからなる冷却ブロックとのそれぞれの界面をマイクロスコープにより拡大し観察した。
図10にその拡大した断面写真を示す。
図10の写真に示すように鉄メッキ層とアルミニウム層との間に亀裂が生じていることを確認した。
【0035】
以上の実施例の結果により、本発明によれば、銅パイプの溶解及び変形を防止するとともに、従来、鉄メッキ層とアルミニウム層との間の界面に生じていた隙間や亀裂の発生を抑制し、互いを強固に密着できることを確認することができた。