(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の実施形態に係るスカラロボット100について説明する。なお、図中のXYZ座標を用いて説明する。
【0018】
本実施形態のスカラロボット100は、
図1及び
図2に示すように、例えば、産業用ロボットとして用いられる水平多関節型ロボットである。スカラロボット100は、基部10と、第1アーム20と、ボールねじ60及びボールスプライン70を有する第2アーム30とを備える。スカラロボット100は、4つの運動軸L1〜L4について運動する。詳しくは、運動軸L1を回転軸として第1アーム20が基部10に対して回動し、運動軸L2を回転軸として第2アーム30が第1アーム20に対して回動する。また、ボールねじ60のボールねじナット62は、運動軸L3に沿って往復運動(直線運動)をし、ボールスプライン70のスプライン軸72は、ボールねじナット62の往復運動とともに運動軸L4に沿って往復運動(直線運動)をする。また、運動軸L4を回転軸として順逆双方向の回転運動をする。
【0019】
基部10は、第1アーム20を回動可能に支持する部材で、熱容量及び熱伝導性が良好な素材のアルミ材からなる基部本体12と、基部本体12に配置されているJ1モータユニット11と、支柱14と、連結部材15と、ケーブルカバー16と、を有する。
【0020】
J1モータユニット11(アーム回動用モータユニット)は、第1アーム20を回動させるために用いられる。J1モータユニット11は、第1アーム20と、第1アーム20を支持するためのアーム支持部材として機能する支柱14と、の関節部に配置されている。J1モータユニット11は、例えば、ACサーボモータから構成され、モータ本体と、出力軸と、減速機と、エンコーダとを有する。
【0021】
J1モータユニット11のモータ本体には、後述するケーブル群90のケーブルC1,C2等を介して電力が供給される。モータ本体に電力が供給されることによって、モータ本体のロータが回転する。このロータの回転運動は、減速機によって所定の減速比で減速され、出力軸に出力される。出力軸は、第1アーム20に接続されており、出力軸の回転とともに、第1アーム20は、運動軸L1を回転軸として回動する。エンコーダは、出力軸の回転位置、回転量、又は回転速度等を検出する。J1モータユニット11のエンコーダは、例えば、アブソリュートエンコーダから構成される。
【0022】
基部本体12は、J1モータユニット11を支持するとともに、J1モータユニット11のモータ本体、出力軸、減速機、及びエンコーダを内装しているZ軸方向を長手方向とするケース状の部材である。
【0023】
支柱14は、スカラロボット100の各部のモータユニットに電力供給、及び通信をするための後述するケーブル群90の一部を内装する筒状の部材である。支柱14は、概ね、基部本体12の長手方向と平行な方向に延在し、基部台板13を介して支柱14の−Z側の端部と基部本体12の−Z側の端部とが接続される。
【0024】
ケーブルカバー16は、第1アーム20と、第1アーム20を支持するためのアーム支持部材として機能する支柱14と、の関節部の少なくとも一部を覆うためのカバーである。後述する第2の屈曲部分B2は、このケーブルカバー16内に配置される。
【0025】
第1アーム20は、J1モータユニット11の減速機を介して、基部10に回動可能となっていると共に、第2アーム30を回動可能に支持する。第1アーム20は、
図3に示すように、第1アーム本体21と、J2モータユニット22と、放熱部23と、J2モータユニット用ケース24とを有する。また、第1アーム本体21は第1アーム本体上側フレーム21aと第1アーム本体下側フレーム21bとにより中空構造となっている。
【0026】
第1アーム本体21は、基部10に接続される円筒部分21cと、J2モータユニット22が内部に配置される円筒部分21dと、2つの円筒部分21c,21dを連結する連結部分21eとを有する。第1アーム本体21は、例えば、熱容量及び熱伝導性が良好な素材のアルミ材からなる。第1アーム本体21の中空構造には、ケーブル群90の一部が配線される。また、第1アーム本体21は、上側の面21fと、上側の面21fとは反対側の下側の面21gと、を有する。また、支柱14は、連結部材15、及び第1アーム本体21の上側の面21fに設置された軸受15a介して、第1アーム本体21の円筒部分21cに連結される。支柱14が連結部材15、軸受15aを介して第1アーム本体21に接続されることで、第1アーム本体21の中空構造に電力供給や通信をするための後述するケーブル等を配線することができる。また、連結部材15の上方と支柱14の上方はケーブルカバー16により閉塞され、ケーブル群90がスカラロボット100の装置内に収まるようになっている。更に、支柱14と連結部材15とは、基部10とともに、第1アーム20を補助的に回動可能に支持している。
【0027】
J2モータユニット22(アーム回動用モータユニット)は、第2アーム30を回動させるために用いられる。J2モータユニット22は、第2アーム30と、第2アーム30を支持するためのアーム支持部材として機能する第1アーム20と、の関節部に配置されている。J2モータユニット22は、モータ本体22aと、減速機22bと、出力軸22cと、エンコーダとを有する。
【0028】
J2モータユニット22のモータ本体22a及びエンコーダには、後述するケーブル群90のケーブルC1,C2等を介して電力供給や通信が行われる。モータ本体22aに電力が供給されることによって、モータ本体22aのロータが回転する。このロータの回転運動は、減速機22bによって所定の減速比で減速され、出力軸22cに出力される。出力軸22cは、
図2及び
図3を参照するとわかるように、第2アーム30に接続されており、出力軸22cの回転とともに、第2アーム30は、運動軸L2を回転軸として回動する。エンコーダは、出力軸22cの回転位置、回転量、又は回転速度等を検出する。
【0029】
放熱部23は、J2モータユニット22等の動作時に生じる熱を外部に放出するために用いられる。放熱部23は、第1アーム本体21の連結部分21eに、外部に露出して設けられている。詳しくは、放熱部23は、第1アーム本体21の下側の面21g(−Z側の面)に設けられている。放熱部23は、本実施形態では、複数枚の放熱フィンから構成されている。放熱フィンは、第1アーム20の回動する方向に沿って設けられている。
【0030】
J2モータユニット用ケース24(カバー)は、J2モータユニット22のモータ本体22aを覆うと共に、第2アーム30と、第2アーム30を支持するためのアーム支持部材として機能する第1アーム20と、の関節部の少なくとも一部を覆うためのカバーである。後述する第1の屈曲部分B1は、このJ2モータユニット用ケース24内に配置される。J2モータユニット用ケース24は、J2モータユニット22のモータ本体22aを外部に露出しないように保護する。
【0031】
図2に示すように、第2アーム30は、駆動側アーム部分31と、上述のボールねじ60及びボールスプライン70、ボールねじ軸61とスプライン軸72とを連結する連結部材80、Zモータユニット50と、を覆うカバー33と、従動側アーム部分32と、Rモータユニット40と、を覆うカバー34とを有する。尚、J2モータユニット用ケース24は、カバー34の一部を構成している。
【0032】
駆動側アーム部分31は、J2モータユニット22の減速機22bの出力軸22cを介して、第1アーム本体21に回動可能に取り付けられていると共に、Zモータユニット50等を支持する。
図4に示すように、駆動側アーム部分31は、第1アーム20の上側の面21fに取り付けられている。駆動側アーム部分31は、熱容量及び熱伝導性が良好な素材、例えば、アルミ材から形成されている。駆動側アーム部分31の先端は、従動側アーム部分32の先端に固定されている。
【0033】
図2に示すように、従動側アーム部分32は、軸受32a(
図3参照)を介して、第1アーム本体21に回動可能に取り付けられていると共に、Rモータユニット40等を支持する。
図4に示すように、従動側アーム部分32は、第1アーム20の下側の面21gに取り付けられている。従動側アーム部分32は、熱容量及び熱伝導性が良好な素材、例えば、アルミ材から形成されている。従動側アーム部分32は、駆動側アーム部分31の素材と同じ素材から形成されている。ただし、これに限らず、従動側アーム部分32と、駆動側アーム部分31とは、異なる素材から形成されていてもよい。しかしながら、従動側アーム部分32と、駆動側アーム部分31とは、同じ素材から形成されている方が、製造コストや製造効率の観点から望ましい。
【0034】
図2に示すように、Rモータユニット40は、ボールスプライン70のスプライン軸72を回転運動させるために用いられる。Rモータユニット40は、モータ本体と、モータ本体の出力軸と、出力軸の回転位置、回転量、又は回転速度等を検出するエンコーダとを有する。モータ本体及びエンコーダには、後述するケーブル群90のケーブルC1,C2等を介して電力供給や通信が行われる。モータ本体内で発生した回転運動は、モータ本体の出力軸に出力される。Rモータユニット40は、本実施形態においては、従動側アーム部分32に配置されている。
【0035】
Zモータユニット50は、ボールスプライン70のスプライン軸72をZ軸方向へ直線運動させるために用いられる。Zモータユニット50は、モータ本体と、モータ本体の出力軸と、出力軸の回転位置、回転量、又は回転速度等を検出するエンコーダとを有する。モータ本体及びエンコーダには、後述するケーブル群90のケーブルC1,C2等を介して電力供給や通信が行われる。モータ本体内で発生した回転運動は、モータ本体の出力軸に出力される。Zモータユニット50は、本実施形態においては、駆動側アーム部分31に配置されている。これにより、Zモータユニット50及びRモータユニット40は、互いに別のアーム部分に配置される。
【0036】
ボールねじ60は、Z軸方向に概ね平行に配置されている。ボールねじ60は、ボールねじ軸61と、ボールねじナット62とを有する。
【0037】
ボールねじ軸61の−Z側の端部には、プーリ及びベルトによって、Zモータユニット50の出力軸に接続されている。ボールねじ軸61は、Zモータユニット50の出力軸の回転とともに回転する。また、ボールねじ軸61の外周には、螺旋状の雄ねじ部が形成されている。このボールねじ軸61の雄ねじ部には、ボールねじナット62の雌ねじ部が、複数の鋼球を介して配置される。これにより、ボールねじ軸61の回転運動が、ボールねじナット62の直線運動に変換される。そして、ボールねじ軸61は、直線運動をしない状態で回転運動を行う。
【0038】
ボールスプライン70は、駆動側アーム部分31及び従動側アーム部分32に貫通されるように配置されている。ボールスプライン70は、スプライン外筒71と、スプライン軸72と、プーリ73と、軸受とを有する。
【0039】
スプライン軸72の外周には、複数のスプライン溝がZ軸方向に沿って形成されている。このスプライン軸72は、スプライン外筒71を貫通し、スプライン軸72のスプライン溝にスプライン外筒71の複数の鋼球が配置される。この鋼球がスプライン溝に配置されることにより、スプライン軸72は、スプライン外筒71に対して、Z軸方向に摺動する。
【0040】
プーリ73は、スプライン外筒71の外周に嵌め込まれることにより、スプライン外筒71に固定されるとともに、軸受によって、従動側アーム部分32に回転可能に配置されている。また、プーリ73は、Rモータユニット40の出力軸とベルトを介して接続されている。Rモータユニット40の回転運動は、このベルトを介してプーリ73に伝達される。
【0041】
ボールねじナット62とスプライン軸72の上端(+Z側の端部)とは、連結部材80によって連結されている。
【0042】
連結部材80は、軸受を有する。スプライン軸72の+Z側の端部は、この軸受によって、連結部材80に回転可能に支持されている。連結部材80は、ボールねじナット62と共に直線運動する。
【0043】
スカラロボット100は、
図5及び
図6に示すように、上述した基部10、第1アーム20、及び第2アーム30に加えて、ケーブル群90を、さらに備える。
【0044】
ケーブル群90は、支柱14、連結部材15、ケーブルカバー16、第1アーム本体21、J2モータユニット用ケース24、カバー34、従動側アーム部分32、カバー33の各内部の順に配線されている。このケーブル群90は、屈曲した形状からなる第1の屈曲部分B1及び第2の屈曲部分B2を有した状態で配線されている。
【0045】
第1の屈曲部分B1は、J2モータユニット用ケース24の内部に配置されている。第1の屈曲部分B1は、略U字形状に構成されている。このU字形状の内側には、J2モータユニット22(詳しくは、J2モータユニット22のモータ本体22a)が配置されている。これにより、J2モータユニット用ケース24の内部のケーブル群90は、J2モータユニット22への干渉を回避するように配線される。
【0046】
第2の屈曲部分B2は、ケーブルカバー16の内部に配置されている。第2の屈曲部分B2は、第1の屈曲部分B1と同様に、略U字形状に構成されている。
【0047】
また、スカラロボット100は、ケーブル群90に加えて、第1クランプ91と、第2クランプ92と、第3クランプ93と、第4クランプ94と、をさらに有する。
【0048】
第1クランプ91は、第1の屈曲部分B1の一端(+Y側の端部)を、第1アーム20の第1アーム本体21に固定する。
【0049】
第2クランプ92は、第1の屈曲部分B1の他端(−Y側の端部)を、第2アーム30の従動側アーム部分32に固定する。
また、第1アーム本体21に固定される第1クランプ91のZ軸方向の位置は、第2アーム30の従動側アーム部分32に固定される第2クランプ92のZ軸方向の位置より、+Z方向に固定されている。
【0050】
図7に示すように、第1クランプ91で固定された部分から第2クランプ92で固定された部分までのケーブル群90は、第1クランプ91及び第2クランプ92によって、フラットケーブル状に保持されている。
【0051】
図5及び
図6に戻り、第3クランプ93は、第2の屈曲部分B2の一端(+Y側の端部)を、連結部材15に固定する。
【0052】
第4クランプ94は、第2の屈曲部分B2の他端(−Y側の端部)を、第1アーム20の第1アーム本体21に固定する。
また、連結部材15に固定される第3クランプ93のZ軸方向の位置は、第1アーム本体21に固定される第4クランプ94のZ軸方向の位置より、+Z方向に固定されている。
【0053】
図8に示すように、第3クランプ93で固定された部分から第4クランプ94で固定された部分までのケーブル群90は、第3クランプ93及び第4クランプ94によって、フラットケーブル状に保持されている。
【0054】
第1クランプ91は、
図9に示すように、クランプ本体95と、クランプブラケット96とを有する。
【0055】
クランプ本体95は、ケーブル群90と接触する部位である。クランプ本体95は、第1パーツ95Aと第2パーツ95Bとから構成される2パーツの部材である。クランプ本体95は、POM、ABS等の樹脂からなっている。
【0056】
図9及び
図10に示すように、クランプ本体95の第1パーツ95Aと第2パーツ95Bとのそれぞれは、断面が略半円の複数の溝95aが形成されている。溝95aには、ケーブル群90が配置される。溝95aの内周面には、複数の滑り止めの突部95bが突出して形成されている。この突部95bは、クランプ本体95の溝95aに配置されたケーブル群90の外周面に喰い込むことで、クランプ本体95からのケーブル群90の位置ずれを防止する防滑手段として用いられる。溝95aの開口の縁には、曲面95cが施されている。
【0057】
図9に示すように、クランプ本体95は、クランプブラケット96と対向する面に複数の凸部97を有する。本実施形態では、凸部97は、クランプ本体95の第1パーツ95Aと第2パーツ95Bとのそれぞれに2つずつ形成されている。
【0058】
クランプブラケット96は、例えば、アルミ材等の金属からなり、クランプ本体95を保護するために用いられる。クランプブラケット96は、第1パーツ96Aと第2パーツ96Bとから構成される2パーツの部材である。第1パーツ96Aは、例えば、ボルト99によって、クランプ本体95を挟み込むようにして、第2パーツ96Bに取り付けられる。クランプブラケット96は、クランプ本体95と対向する面に孔部98を有する。孔部98は、凸部97が嵌り込む形状に形成されている。孔部98は、凸部97と同数形成され、本実施形態では、クランプブラケット96の第1パーツ96Aと第2パーツ96Bとのそれぞれに2つずつ形成されている。ケーブル群90及びクランプ本体95を保持したクランプブラケット96は、第1アーム本体21に固定される。
【0059】
図6及び
図9に示すように、第2クランプ92、第3クランプ93、及び第4クランプ94は、第1クランプ91と同様の構造を有し、2パーツのクランプ本体95と、2パーツのクランプブラケット96とを有する。第2クランプ92のクランプブラケット96は、従動側アーム部分32に固定される。第3クランプ93のクランプブラケット96は、連結部材15に固定される。第4クランプ94のクランプブラケット96は、第1アーム本体21に固定される。
【0060】
ケーブル群90は、ケーブルC1,C2と、エアチューブT1,T2,T3,T4と、を有する。これらのケーブルC1,C2、エアチューブT1,T2,T3,T4は、上記の各クランプ91〜94によって、ケーブル群90に束ねられている。なお、本実施形態では、ケーブル群90は、2本のケーブルC1,C2と、4本のエアチューブT1,T2,T3,T4と、を有する。しかしながら、これに限られず、動力ケーブルC1,C2、エアチューブT1,T2,T3,T4の本数は任意である。本実施形態で示した本数以外の本数であってもよい。
【0061】
ケーブルC1,C2は、J1モータユニット11、J2モータユニット22、Rモータユニット40、及びZモータユニット50の各モータ本体と各エンコーダに給電及び信号を伝送するために用いられる。
【0062】
エアチューブT1,T2,T3,T4は、スプライン軸72の先端に取り付けられたデバイスの動作に用いるエアを供給する。デバイスは、例えば、ワークを挟むための挟持装置である。
【0063】
上述のように構成されたスカラロボット100のスプライン軸72の下端(−Z側の端部)には、作業内容に合わせた任意の工具や機器が取り付けられる。また、スカラロボット100には、ケーブル群90のケーブルC1,C2を介して、図示しないコントローラが接続される。コントローラは、例えば、CPU(Central Processing Unit)、記憶部等を含んで構成されている。コントローラは、J1モータユニット11、J2モータユニット22、Rモータユニット40、及びZモータユニット50のエンコーダからの信号等に基づいて、J1モータユニット11、J2モータユニット22、Rモータユニット40、及びZモータユニット50を制御する。スカラロボット100の動作の内容は、コントローラに接続されたティーチングペンダント等によって設定され、コントローラの記憶部に記憶される。コントローラのCPUは、記憶部からプログラムやデータを読み出して、プログラムの実行等を行う。
【0064】
スカラロボット100の動作について、
図2を参照しつつ説明する。スカラロボット100の動作は、例えば記憶部に記憶されたプログラムをCPUが実行することで、開始され又は進行する。
【0065】
スカラロボット100の図示しないコントローラは、J1モータユニット11の出力軸を回転させることで、運動軸L1を回転軸として第1アーム20を回動させる。また、J2モータユニット22の出力軸22cを回転させることで、運動軸L2を回転軸として第2アーム30を回動させる。コントローラは、J1モータユニット11の出力軸を回転させたり、J2モータユニット22の出力軸を回転させたり、もしくは、両方を同時に回転させたりすることで、スプライン軸72の下端に取り付けられた工具をXY平面に水平に移動させる。これにより、プログラムによって設定された任意の位置まで当該工具を移動させる。
【0066】
スプライン軸72の下端に取り付けられた工具が、XY平面における設定位置まで移動すると、スカラロボット100のコントローラは、Zモータユニット50の出力軸を回転させることで、ベルトを介して、ボールねじ軸61が回転する。そして、ボールねじ軸61の回転運動に伴って、ボールねじナット62は、+Z方向又は−Z方向のいずれかに直線運動をする。
【0067】
ボールねじナット62が−Z方向に直線運動をすると、ボールねじナット62に連結されたスプライン軸72も、運動軸L4に沿って、−Z方向に直線運動をする。また、スプライン外筒71は玉軸受として構成されており、スプライン軸72は、スプライン外筒71に対して円滑に移動する。やがて、スプライン軸72は下死点まで移動する。これにより、例えば、スプライン軸72に取り付けられた工具が、ワーク等に当接する。
【0068】
また、コントローラは、Rモータユニット40の出力軸を回転させた場合は、出力軸の回転運動は、ベルトを介して、プーリ73に伝達される。プーリ73が回転すると、スプライン外筒71は、プーリ73に固定されているため、スプライン外筒71も、プーリ73とともに回転する。この結果、スプライン外筒71とスプライン係合されているスプライン軸72は、スプライン外筒71とともに、運動軸L4回りに回転する。
【0069】
すなわち、コントローラが、Zモータユニット50の出力軸のみを回転させた場合は、スプライン軸72は直線運動をする。Rモータユニット40の出力軸のみを回転させた場合は、スプライン軸72は運動軸L4回りに回転運動をする。Zモータユニット50の出力軸とRモータユニット40の出力軸とのいずれも回転させた場合は、スプライン軸72は、スパイラル運動をする。
【0070】
スプライン軸72が、直線運動、回転運動、又はスパイラル運動等の所定の運動をすると、スカラロボット100のコントローラは、再び、J1モータユニット11の出力軸及びJ2モータユニット22の出力軸を回転させることで、第1アーム20及び第2アーム30を回動させて、スプライン軸72に取り付けられた工具をXY平面に水平に移動させる。そして、初期位置まで移動させる。
【0071】
スカラロボット100のコントローラは、記憶部に記憶されたプログラムにしたがって、以上のような運動を反復させる。
【0072】
以上、説明したように、本実施形態のスカラロボット100のケーブル群90は、
図6に示すように、略U字形状に構成されている第1の屈曲部分B1を有している。この第1の屈曲部分B1の内側に、第1アーム20のJ2モータユニット22を配置することで、スカラロボット100の可動部分(例えば、連結部材15と第1アーム本体21との接続部分、第1アーム本体21と従動側アーム部分32との接続部分など)との干渉を回避しつつ、ケーブル群90を配線することが可能になる。これにより、ケーブル群90が、スカラロボット100の関節の可動部分に干渉することを抑制することができる。
【0073】
また、
図11に示すように、本実施形態では、第1の屈曲部分B1は、J2モータユニット用ケース24の内部に配置されている。このため、第1の屈曲部分B1が、スカラロボット100の周辺の装置101(例えば、別のロボット、ベルトコンベアなど)と干渉するおそれがない。
【0074】
また、本実施形態では、ケーブル群90は、略U字形状に構成されている第2の屈曲部分B2を有している。これにより、ケーブル群90が、連結部材15と第1アーム本体21との接続部分に干渉することを抑制することができる。
【0075】
また、本実施形態では、第2の屈曲部分B2は、ケーブルカバー16の内部に配置されている。このため、第2の屈曲部分B2が、スカラロボット100の周辺の装置102と干渉するおそれがない。
【0076】
また、本実施形態では、ケーブル群90が、ケーブルカバー16、第1アーム本体21、J2モータユニット用ケース24、カバー34、従動側アーム部分32、カバー33に配線されている。このため、ケーブル群90全体が、筐体に覆われているため、スカラロボット100の周辺の装置101,102と干渉するおそれがない。
【0077】
また、スカラロボット100の可動部分である、第1アーム本体21と従動側アーム部分32との接続部分の近傍に、第1の屈曲部分B1を配置することができることから、スカラロボット100の小型化を実現することが可能になる。同様に、スカラロボット100の可動部分である、連結部材15と第1アーム本体21との接続部分の近傍に、第2の屈曲部分B2を配置することができることから、スカラロボット100の小型化を実現することが可能になる。
【0078】
また、本実施形態では、第1の屈曲部分B1の一端は、第1クランプ91によって第1アーム本体21に、第1の屈曲部分B1の他端は、第2クランプ92によって従動側アーム部分32に固定されている。また、第2の屈曲部分B2の一端は、第3クランプ93によって連結部材15に、第2の屈曲部分B2の他端は、第4クランプ94によって第1アーム本体21に固定されている。これにより、ケーブル群90が、スカラロボット100の関節の可動部分に干渉することを抑制することができる。
第1アーム本体21に固定される第1クランプ91のZ軸方向の位置は、第2アーム30の従動側アーム部分32に固定される第2クランプ92のZ軸方向の位置より、+Z方向に固定されている。また、連結部材15に固定される第3クランプ93のZ軸方向の位置は、第1アーム本体21に固定される第4クランプ94のZ軸方向の位置より、+Z方向に固定されている。これにより、スカラロボット100の関節が最大可動角度まで回動しても、各クランプ同士が干渉することを抑制することができる。
【0079】
また、
図10に示すように、本実施形態では、第1クランプ91,第2クランプ92,第3クランプ93,第4クランプ94のクランプ本体95には、ケーブル群90との接触部分に防滑手段である複数の突部95bが設けられている。このため、ケーブル群90に対する各クランプ91〜94の保持力を向上させることができる。また、クランプ本体95からのケーブル群90の位置ずれを防止することができるため、結果として、ケーブル群90が、スカラロボット100の関節の可動部分に干渉することを抑制することができる。
【0080】
また、本実施形態では、第1クランプ91,第2クランプ92,第3クランプ93,第4クランプ94は、クランプ本体95をそれぞれ有し、このクランプ本体95は、POM、ABS等の樹脂からなる。このため、スカラロボット100の動作に伴って、各クランプ91〜94に対してケーブル群90が僅かに移動して、各クランプ91〜94が、ケーブル群90を傷付けることを抑制することができる。
【0081】
本実施形態では、各クランプ91〜94の溝95aの開口の縁には、曲面95cが施されている。このため、各クランプ91〜94が、ケーブル群90を傷付けることを抑制することができる。
【0082】
また、
図9に示すように、本実施形態では、クランプ本体95は、凸部97を有し、クランプブラケット96は、孔部98を有する。孔部98に凸部97が嵌り込むことにより、クランプブラケット96に対するクランプ本体95の位置決めをすることができる。また、クランプブラケット96に対するクランプ本体95の位置ずれの防止をすることができると共に、クランプブラケット96に対するクランプ本体95の組み込み方向の誤りを防止することができる。また、ケーブル群90のケーブルC1,C2、エアチューブT1〜T4をそれぞれ個別に結束バンド等で固定するよりも作業工数を削減することができる。更に、ケーブルが移動する箇所で結束バンドを使用して固定する場合のように、結束バンドのエッジで表面が摩耗することを避けることができる。
本実施形態では、ケーブル群90が各クランプ91〜94で保持される場合、クランプ本体95の中央付近に電源、通信のケーブルC1,C2を配置し、外側にエアチューブT1〜T4を配置している。これにより、スカラロボット100の関節が回動した時に、繰り返しの曲げにより断線する可能性のある電源、通信のケーブル部の屈曲半径の変化をできる限り小さくすることができ、断線を予防することができる。
【0083】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態等によって限定されるものではない。
【0084】
例えば、本発明の実施形態では、第1の屈曲部分B1,第2の屈曲部分B2は、U字形状に構成されている。しかしながら、U字形状に限定されるものではない。例えば、第1の屈曲部分B1,第2の屈曲部分B2は、U字形状以外の形状であってもよい。また、本発明のU字形状は、角が丸みを帯びている形状等に限定されるものではなく、J字形状やC字形状も含むものとする。
【0085】
また、本実施形態では、各クランプ91〜94それぞれは、一対のクランプ本体95を有する。しかしながら、これに限られない。一対のクランプ本体95が一体に形成されている単一のクランプ本体95を有していてもよい。この場合、クランプ本体95は、溝95aに代えて、ケーブル群90を配置するための孔が形成される。
【0086】
また、本実施形態では、クランプ本体95は、凸部97を有し、クランプブラケット96は、凸部97が嵌り込む孔部98を有する。しかしながら、これに限られない。クランプ本体95は、孔部98を有し、クランプブラケット96は、凸部97を有していてもよい。
【0087】
本実施形態では、クランプブラケット96は、凸部97が嵌り込む孔部98を有する。しかしながら、これに限られない。クランプブラケット96は、孔部98に代えて、凸部97が嵌り込む凹部を有していてもよい。
【0088】
また、本実施形態では、溝95aの開口の縁には、曲面95cが施されている。しかしながら、これに限られない。溝95aの開口の縁には、面取りが施されていてもよい。
【0089】
また、本実施形態では、本実施形態のスカラロボット100は、4つの運動軸L1〜L4について運動する4軸関節ロボットとして構成されているが、これに限らず、3軸以下又は5軸以上の多関節ロボットとして構成してもよい。
【0090】
本発明は、本発明の広義の精神と範囲を逸脱することなく、様々な実施形態及び変形が可能とされるものである。上述した実施形態は、本発明を説明するためのものであり、本発明の範囲を限定するものではない。