(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明の実施形態に係るハニカム構造体は、例えば、本発明の実施形態に係るハニカム構造体成形用金型を使用したポット・トランスファー成形にて成形される。
また、本実施形態では、成形材料の一例としてゴム材料(シリコーンゴム)を採用している。なお、成形材料は、ゴム材料の他、樹脂材料であってもよい。
以下、本発明のハニカム構造体の一実施形態について図に基いて説明した後、該ハニカム構造体を成形する本発明のハニカム構造体成形用金型の一実施形態について図に基いて説明する。
【0014】
「ハニカム構造体」
本発明のハニカム構造体は、例えば、第一実施形態と第二実施形態の2つの実施形態を一例として挙げることができ、順に図に基づき説明する。
本実施形態では、平面視で正六角形の筒状に形成された複数のセルの集合体からなる、いわゆる蜂の巣状のハニカム構造体を一例として採用している。また、実施例として記載した数値や各寸法の関係は一例にすぎず、ハニカム構造体の形態や成形材料によって当然に変わり得る。
【0015】
[第一実施形態]
第一実施形態のハニカム構造体1は、
図1に示すように、平面視で正六角形の筒状に形成されたセル2を、同一平面上で複数個並設して一体成形してなる平面集合体である。
1つのセル2は、平面視で正六角形の筒状を構成する6個の側壁3を備え、セル2同士が隣り合っていない側壁3b(3)の厚みW1は、セル2同士が隣り合っている側壁3a(3)の厚みW2よりも薄く成形されている(
図2参照。)。
本実施形態では、セル2同士が隣り合っていない側壁3b(3)の厚みW1は、セル2同士が隣り合っている側壁3a(3)の厚みの1/2程度である。
また、各セル2の上下面は開口されている。すなわち、本実施形態を構成する各セル2は上下面を開口した筒状に成形されている。
【0016】
本実施形態のハニカム構造体1を構成するセル2の数は、縦5個×横5の計25個で、これらを所定方向に並設して一体成形している。
また、
図2に示すように、1個のセル2のセルサイズ(相対向する側壁3の内面間の幅)W3は、利用用途や耐用強度によって選定される。すなわち、セルサイズW3が小さいほどせん断強さが高くなるため、たわみ量が少なくなる。本実施形態では、セルサイズW3は、25.98mmとしている。
また、セル2同士が隣り合っている側壁3a(3)の厚みW2は1mmで、セル2同士が隣り合っていない側壁3b(3)の厚みW1は、側壁3a(3)の厚みW2の1/2である500μmとしている。
【0017】
本実施形態のハニカム構造体1は、1個で使用する形態も可能であるが、例えば、所定数のハニカム構造体1を用意し、それぞれのハニカム構造体1における各セル2同士が隣り合っていない側壁3b(3)同士を、同一平面上で当接させて繋ぎ合せることで、ハニカム構造体1の全体面積(平面集合の面積)を利用用途に応じた任意の大きさにすることができる。
この場合、繋ぎ合わせた部分の側壁3b(3)同士が隣り合うこととなるため、繋ぎ合わせた側壁3b(3)同士の厚みW1、W1は、セル2同士が隣り合っている側壁3a(3)の厚みW2となる。
本実施形態では、成形材料としてシリコーンゴムを採用しているため、複数個のハニカム構造体1を繋ぎ合わせて大面積となっても、同面積の金属製のハニカム構造体と対比して軽量にすることができる。
このように、複数個のハニカム構造体1を繋ぎ合わせる場合には、例えば、シリコーン接着剤を使うことができる。なお、ハニカム構造体1の成形材料に応じた接着剤が本発明の範囲内で適宜選択される。
【0018】
本発明のハニカム構造体は、少なくとも三面以上の複数の側壁を有し、平面視で多角形の筒状に形成された複数のセルの集合体からなるものであれば全て本発明の範囲内であって適宜設計変更可能である。
【0019】
シリコーンゴムは、弾力性に富み一般の有機系ゴムと比べて曲げたり、伸ばしたり、縮めたりと大きく変形させることができる。このような性質は、曲面形状にも利用でき、例えば、最も衝撃吸収性が重要とされるヘルメットの内面部材(衝撃吸収部材)にも利用することができる。
また、軽量化を図りつつ衝撃吸収性を付与することが出来るため、自動車の車体内部や航空機の機体内部、あるいは内部以外の用途においても、本実施形態のハニカム構造体は有効に利用可能である。
【0020】
また、シリコーンゴムは、透明性に優れているため顔料による着色も容易となり、色鮮やかなハニカム構造体が提供できる。例えば、白色、桃色、赤色、黄色など各種の色とすることで、用いられるハニカム構造体の大小や利用個数などが一目瞭然となる。
ハニカム構造体の色彩や幾何学的な模様を、例えば家屋などの壁材として採用することも可能で、装飾性を高めるだけではなく、子供などが誤って室内の壁に衝突したとしても、その衝撃を吸収緩和することができ、安全な室内空間を提供し得る。さらに、ハニカム構造体の特徴として吸音性も有しているため、セル2の大きさなどを調整することにより防音壁などとしても利用可能である。
【0021】
[第二実施形態]
次に本発明の第二実施形態のハニカム構造体について説明する。
第二実施形態のハニカム構造体1は、平面視で正六角形の筒状で、所定の厚みW1、W2を有する6個の側壁3(3a、3b)を備えたセル2を、複数個同一平面上に並設して一体成形している点、及び作用効果については、第一実施形態のハニカム構造体1と同じなので、この点の説明を省略し、特に第二実施形態の特有な構成及び作用効果について詳細に説明する。
【0022】
第二実施形態のハニカム構造体2は、
図3、
図4に示すように、セル2の下面には、相対向する側壁3、3(3a、3b又は3a、3a又は3b、3b)のそれぞれの中間点3c、3cにわたって架け渡され、セル2の中央点6で交差する3本の補強支持部4と、補強支持部4を含みセル2の下面全域を覆う薄膜底部5と、を備えている。
すなわち、第一実施形態では、ハニカム構造体1を構成している筒状の各セル2は、6個の側壁3だけで構成され、上下方向ともに開口していたが、第二実施形態のハニカム構造体2のセル2は、上面のみが開口し、下面は、補強支持部4と薄膜底部5とによって閉塞されている。
【0023】
補強支持部4は、
図4に示すように、所定の厚みを持った略直方体状をなし、各補強支持部4は全て同一形状としている。従って、各補強支持部4の中央点6における交差角度は60度である。
また、このように構成されていることから、隣り合うセル2の補強支持部4はそれぞれが同一線上に位置することとなる。
【0024】
本実施形態において補強支持部材4は、各セル2における平面視で正六角形のそれぞれの角部(正六角の各頂点)同士にわたって架け渡されているのではなく、相対向する側壁3a(3)の中間点3cと側壁3b(3)の中間点3cとにわたって架け渡すこととしたため、各セル2の水平方向(各補強支持部4の延設方向)の強度を補強している。これにより、ハニカム構造体1が変形、座屈しても元の状態に戻りやすくなり、変化・復元性が良いものとなる。
また、補強支持部材4が交わる中央点6は半球状に突出している。
【0025】
また、補強支持部4の幅は2mmで、厚みは1.5mmの直方体であるが、これに限定されるものではない。
【0026】
薄膜底部5は、補強支持部4を含み、セル2の下面全域を、所定の厚みの薄膜で覆うように成形されている。これにより、薄膜底部5上に形成されている補強支持部4と相俟って、ハニカム構造体1を構成する各セル2の強度アップと復元性も向上させることができる。
このようなシリコーンゴムによる薄膜底部5は、本実施形態のハニカム構造体1を利用する場所や部材との間に気泡ができ難いことから吸着性が良く、密着性を有する用途には適している。例えば、フロアーマットとして本実施形態のハニカム構造体1を利用し、ハニカム構造体1をフローリングの床面に敷いた場合、シリコーンゴムによる薄膜底部5と床面とが隙間無く密着状態(空気が入らない状態)になるため、フロアーマットと床面との摩擦抵抗か高くなる。従って、フロアーマットが床面上で滑ってしまうことにより利用者が転んで怪我をするような事態を未然に防ぐことができる。
【0027】
[ハニカム構造体成形用金型]
次に、前記第二実施形態のハニカム構造体を成形するために用いられるハニカム構造体成形用金型の一実施形態について
図5乃至
図14に基づいて説明する。
ハニカム構造体成形用金型10は、上下方向に離接自在に重ね合わせ可能に分割された下型11、中子(駒)12、中型13及び上型14によって形成されるキャビティ20に、ゴム材料(成形材料)であるシリコーンゴム16を、プランジャ15によって圧入して加硫し、平面視で正六角形の筒状に形成された複数のセルの集合体からなるハニカム構造体を成形するために用いられる。
以下、金型10について、先に、本発明の主要部分となる中子(駒)12を説明し、その後、金型の下型11からプランジャ15まで積層順に図面を基に説明する。
【0028】
[中子(駒)]
中子(駒)12は、本実施形態では、上面12eと下面12fと6個の側面12aとを有し、平面視で正六角形の角柱状に形成している本体12hと、本体12hの下面12fの中央領域にて、該下面12fよりも小さく突出して一体成形されている脚部12bとで構成されている(
図5参照。)。
図5(a)に示すように、中子(駒)12のサイズ(相対向する側面12a、12a間の幅)T3は、
図2と
図4に示すハニカム構造体1を構成している一つのセル2のセルサイズW3に合ったものが選定される。
また、本実施形態の中子(駒)12は、金属素材にクロムメッキの被膜を生成処理され、金属クロムの硬さと滑りの良さを利用することで挿入がし易くされている。
【0029】
脚部12bは、後述する下型11の凹部11aに嵌合され、中子12を所定位置に位置決め固定する。本実施形態では、各角部をそれぞれ面取り加工している。
脚部12bの形状、個数は特に限定解釈されるものではなく本発明の範囲内で設計変更可能である。
【0030】
上面12eには、相対向する側面12a、12aの各上辺12g、12gのそれぞれの中間点P、P間にわたって架け渡される所定の深さを持った3個の溝部12cを備えるとともに、溝部12cが交差する中央点Qには、半球面からなる凹部12dを有している。上述のとおりに溝部12cを構成すると、溝部12cと溝部12cとのそれぞれの交差角度は60度となる。
【0031】
この凹部12dは、中子(駒)12の上面12eの中心に位置し、直径S1は6mmで、深さS2は1mmである(
図5、
図13参照。)。このような半球面からなる凹部12dを設けたことにより、未加硫のシリコーンゴム16が中子(駒)12と上型14の隙間(キャビティ)20に圧入されたときに、隙間(キャビティ)20内の溝部12cを均等に流れるように充填される。このように、シリコーンゴム16の充填が均等にされることより、補強支持部4と薄膜底部5とで構成されるセル2の下面を寸法精度良く成形することができる。
【0032】
図5において、本実施形態における溝部12cの溝の幅T1は2mmで、深さT2は1.5mmからなり、セル2の補強支持部材4を直方体に成形される。これら幅T1、深さT2の寸法は、セル2の大きさに応じて溝部12cや補強支持部材4の幅や深さを任意に変えることができる。本実施形態の中子(駒)12のサイズT3は、25.98mmである。
また、中子12の長さ(高さ)H1は約10mmで、下面12fから突設された略台形の脚部12bの長さ(高さ)H2は5mmで、短辺の長さH3は5mmで、長辺の長さH4は16mmとしているが、本実施形態の寸法に限定されるものではない(
図5、
図13参照。)。
【0033】
また、成形されるハニカム構造体1のセル2の側壁3の厚みW1、W2を変えて成形する場合、下型11、中型13及び上型14の寸法や構造を変えることなく、大きさが異なる中子(駒)12だけを取り替えるだけでよい。すなわち、ハニカム構造体1の製造要求に応じて、中子(駒)12だけの大きさを変える(中子を取り替える)ことにより、容易にセル2の側壁3の厚みW1、W2を容易に変えることができ合理的であり、かつ経済的である。
【0034】
このように、セル2の側壁3の厚みW1、W2を変える場合であっても、脚部12bの大きさが同じであるため下型11(凹部11aの形状)を変える必要はない。したがって、異なる大きさの下型11を複数揃える必要もなく、金型10を再構築することがなくなるため合理的であり経済的である。
【0035】
このような中子(駒)12を、金型10が組み立てられる過程で、下型11に1個ずつ、複数個(計25個)が全て挿入されると、複数の中子(駒)12の外周輪郭をかたち取った中型13の中空の空間領域13dが埋められるように配置される。
【0036】
[下型]
下型11は、上下方向に離接自在とされ、金型10の最下層に配置される(
図11参照。)。
下型11は、
図6に示すように、例えば、全体が所定の厚みを持つ矩形板状に形成され、中央領域に中子(駒)12のセット領域11bを備え、中子(駒)12のセット領域11bを避けた上面の四隅には、各金型10の合わせ位置がずれないように、位置合わせ用の第1ガイドピン11cと第2ガイドピン11dが突設されている。
【0037】
第1ガイドピン11cは、下型11と中型13と上型14とを所定位置に位置決めする位置合わせ用として機能している。
第1ガイドピン11cは、直径が約15mmの鋼製の円筒状で、中型13に形成された第二嵌合孔13aを介し、その上層の上型14に形成された第三嵌合孔13cの中途部分まで当接する。これにより、下型11と中型13と上型14とを所定位置に位置決めすることができる。
【0038】
第2ガイドピン11dは、第1ガイドピン11cの近傍、本実施形態では、第1ガイドピン11cよりも外側にて、該第1ガイドピン11cよりも短尺で、先端先細り状の円錐状に突設され、中型13を、第1ガイドピン11cとともに二重に位置決めすることで位置合わせの精度を向上させ、成形されるハニカム構造体1のセル2の側壁3(3a、3b)の厚み(W1、W2)の寸法精度を上げることができる。本実施形態では、その最大直径が約18mmの鋼製としている。
【0039】
これら第1ガイドピン11cと第2ガイドピン11dの形状は、金型10の大小に応じて変更可能で本実施形態に限定されず、また、この第1ガイドピン11c或いは第2ガイドピン11dを、最上層のポット蓋15まで延伸させて、金型10全体を組み立て可能としても構わない。
【0040】
また、第2ガイドピン11dの近傍には、上型14から突設された棒状の位置合わせ用の第3ガイドピン(図示しない)が嵌合する第一嵌合孔11eが四隅に穿孔されている。これにより、第1ガイドピン11cと第2ガイドピン11dと位置合わせとともに、下型11から上型14までを組み合わせたときの位置合わせが確実なものとなる。
【0041】
第1ガイドピン11cと第2ガイドピン11dは、ピン形状に限らずブロック形状でも良く、各嵌合孔の形状もスリット状、長円状、楕円状など任意である。
【0042】
セット領域11bは、中子(駒)12を全て挿入配置した場合のハニカム構造体1の外周輪郭を表し、セット領域11b内の所定位置には、凹部11aが、列をなして複数(25個)形成されている。
凹部11aは、中子(駒)12の脚部12bが嵌る程度の穴形状を有しており、脚部12bを凹部11aに嵌めたときに、中子12が所定位置に位置決めされる。
具体的には、中子(駒)12の脚部11bの全体が凹部11a内に埋まった状態に嵌め合わされたとき、脚部11bと凹部11aとの間に隙間が生じないように、脚部11bの形状に対応した嵌合空間が形成されている。
本実施形態では、凹部11aは、脚部11bの長さに即して、長辺が16mmで、短辺が5mmで、深さが約6mmの窪みである。
この凹部11aは、
図6に示すように、縦横に5列に並び、ハニカム構造体1のセル2の中心と凹部11aの中心と同一になるように隔列ごとにずらして配置され、ハニカム構造体1のセル2の数25個分が形成される。
【0043】
図7は、その凹部11aに中子(駒)12の脚部11bを挿入嵌合させて、セットした状態を示す図である。25個の中子(駒)12が組み込まれたときに、隣り合う中子(駒)12同士の隙間(第1の隙間)L2は、ハニカム構造体1のセル2の側壁3aの厚みW2となる1mmである。すなわち、凹部11aは、厚みW2を有するセル2の側壁3aが成形可能な隙間距離を、隣り合う各中子12間に形成可能なように穿設位置が設定されている。
【0044】
本実施形態の下型11は、長辺の長さが280mmで、短辺の長さが200mmで、その厚みが約25mmからなる金属板からなり、凹部11aの内面を含め全体表面が精度良くハードクロムメッキされている。また、中子(駒)12もクロムメッキの被膜を生成処理されていることから金属クロムの硬さと滑りの良さにより、中子(駒)12が下型11内で動く(ずれる)こともなくしっかりと固定される。その結果、圧入されたシリコーンゴムが中子(駒)12と下型11の間に無用なバリを成形することもない。
【0045】
また、下型11には、図示しない把手取り付け部を、下型11の短手方向の両側に有しており、作業者が組み立てや持ち運びできるようになっている。
【0046】
[中型]
中型13は、上下方向に離接自在とされ、下型11の上方の層に配置され、キャビティ20の一部を構成する(
図11参照。)。
図8に示すように、中型13の厚さは、中子(駒)12のと同じ厚みで、10mmとなる、また、下型11と同寸の矩形板状に形成された金属板で、全体がハードクロムメッキされている。
また、各金型の合わせ位置がずれないために、中型13にも下型11から突出したガイドピン用の第一嵌合孔13a、第二嵌合孔13b、第三嵌合孔13cが上面の四隅に3個ずつ計12個が穿孔されている。
【0047】
第一嵌合孔13aは、下型11に突設された棒状の第1ガイドピン11cを貫通させるための四隅に各々穿孔されている。これにより、中型13と下型11は所定の位置で嵌合し組み立て可能となっている。
第二嵌合孔13bは、嵌合孔13aの近傍に、下型11に突設された第2ガイドピン11d用として4個穿孔されている。
第三嵌合孔13cは、第二嵌合孔13bの近傍に、上型14から突出した第3ガイドピン(図示しない。)用として4個穿孔されている。これにより、第1ガイドピン11cと第2ガイドピン11dと相俟って、下型11から上型14までを組み合わせたとき、中型13を含め金型全体の位置合わせが確実なものとなる。
【0048】
中型13には、下型11に、所定数の中子(駒)12を配設したときの外周に配設される各中子12の本体12hの側壁外周全域の輪郭を形取った中空の空間領域(セット領域)13dが設けられている。この空間領域13dは、空間領域13d内に中子(駒)12を収容した際に、空間領域13dの内周と外周に配設される各中子(駒)12の本体12hの側面外周全域との間に、全周にわたって所定間隔の隙間L1が形成される大きさを有している(
図13、
図14を参照。)。隙間L1は、側壁12aの高さ方向全域にわたり所定間隔で形成されている。この隙間L1は、セル2の側壁3bの厚みW1(5mm)を成形する隙間となる。
【0049】
空間領域13dの深さ(鉛直方向深さ)は、下型11の凹部11aに脚部12bを嵌合させた状態で、下型11の上面から突出して配設される中子12の本体12hの高さ(鉛直方向高さ)よりも深く形成されている(
図13、
図14を参照。)。このように構成することにより、中型13を所定位置に配置したとき、中型13の空間領域13dの上縁13eと、中子12の本体12hの上面12eとの間には所定の隙間(第2の隙間)S3が形成される。
すなわち、この隙間(第2の隙間)S3は、中型13を配置した後、上型14を配置したときに、上型14の下面が中型13の上面に当接するため、上型14の下面との間で形成される空間領域13dの広さ全域にわたる一定深さの隙間となる。また、この隙間(第2の隙間)S3は、ハニカム構造体1の薄膜底部5の厚さを決定するものであり、薄膜底部5の必要厚さに応じて適宜設計変更可能で本発明の範囲内である。
【0050】
これらの中型13の第一嵌合孔13a、第二嵌合孔13b、第三嵌合孔13cのそれぞれ孔壁面にもクロムメッキされている。
【0051】
中型13には、図示しない把手取り付け部を、中型13の短手方向の両側に有しており、作業者が組み立てや持ち運びできるようになっている。
なお、本実施形態では、中型13を、中子12とともに、平面視で多角形の筒状に形成されたセル2の側壁3を成形するために用いているが、下型11、中子12、上型14とでキャビティ20を形成し、セル2の側壁3を成形できる場合には省くことができる。
【0052】
[上型]
上型14は、上下方向に離接自在とされ、中型13の上方の層に配置される(
図11参照。)。
図9に示すように、中型13と同寸の矩形板状に形成された金属板で、全体がハードクロムメッキされている。上型14の内部には、後述するポット14、とランナ14d、ゲート14eの構造を備えているため、そのような構造が備えていない下型11及び中型13の板状厚みよりも厚くされている。
【0053】
また、上型14にも、位置合わせ用に、下型11から突出した第1ガイドピン11cを貫通させる嵌合孔14aが四隅に各々穿孔されている。
なお、
図9は、上型14の片面の上面(プランジャ15側)だけを表しているため、上型14の下面(中型13側)には、図には示されていないガイドピンを形成している。このガイドピンは、下型11との複数の位置合わせ用として、略円錐上で、その先端が丸みを帯びた、直径が約15mmで鋼製の棒状である。これにより、上型14は、中型13と当接し正確な寸法精度で組み立て可能となっている。
【0054】
上型14には、未加硫のシリコーンゴム16を投入する凹状で矩形状のポット14cが形成されている。 このポット14cは、底面積の縦横長さが130mm×180mmで、その深さが15mmの矩形状の窪みである。なお、このポット14cの容積寸法に限定されず、ハニカム構造体1の投影面積の大きさによって変更可能である。
【0055】
ポット14cには、
図12〜
図14に示されるように、キャビティ20にゴム材を充填するための貫通孔のランナ14dとゲート14eを形成している。このランナ14dの中心は、下型11に配置された中子(駒)12の中心と同じ位置に形成されていて、配置された中子(駒)12の数(25個)だけ有している。
また、ランナ14dは、
図13に示すように、ポット14cの上面(ハニカムポット15側)開口面から下面(中型12側)に向かって、ポット14cの中途の位置まで、略10度傾斜させたテーパ溝(断面視台形状)である。その先端側にはランナ14dと中心が同じで、より小径の段差を有した円筒状のゲート14eを備えている。
本実施形態におけるランナ14dの長さは、一例として、15mmで、ゲート14eの長さは5mmとしている。
【0056】
このようにランナ14dをテーパ溝(抜き勾配)とすることで、シリコーンゴム16をキャビティ20に円滑に圧入充填させることができ、また加硫後に不要となったランナ14d内のポットバリを容易に取り出すことができる。また、ゲート14eを中子(駒)12の中心の凹部12dと略同径とすることで、ゴム材の流れ込む速度が少しのずれもないようにしている。これにより、速度が速すぎた場合のジェッティング、あるいは速度が遅すぎた場合のフローマーク(しま模様)を防ぐことができる。
【0057】
上型14には、図示しない把手取り付け部を、上型14の短手方向の両側に有しており、作業者が組み立てや持ち運びできるようになっている。
【0058】
[プランジャ]
プランジャ15は、上下方向に離接自在とされ、上型14の上方の層に配置される(
図11参照。)。このプランジャ15は、上型14と同寸の矩形板状に形成された所定の厚みを持つ金属板で、全体がハードクロムメッキされている。
図10に示すように、プランジャ15にも位置合わせ用に、四隅に1本ずつ突設された棒状の4本のガイドピン15aを有している。これにより、プランジャ15が圧縮成形機(プレス機)から押圧されたときに、上型14との位置がずれるのを防ぐことができる。
また、このガイドピン15aは、中型13に形成された第二嵌合孔13aを介し、その上層の上型14に形成された嵌合孔14aの中途部分まで貫き、これにより、下型11から中型13、上型14までが所定位置で嵌合し組み立て可能となっている。
【0059】
この複数のガイドピン15aは、直径が約15mmの鋼製の棒状で、その先端円周が丸みを帯びて突設されているが、これら形状は、金型の大小に応じて変更可能であり、本実施形態に限定されない。
【0060】
また、プランジャ15の下面(上型14側)には、上型14のポット14cと略同一の容積からなる形状の凸部15bが段差となって形成されている。この凸部15bは、キャビティ20を組み立て後、ポット14cに投入された未加硫のシリコーンゴム16を押圧して(
図12の矢印符号のプレス参照。)、ランナ14dに圧入させるために設けられている。したがって、この凸部15bの高さは、ポット14cの深さ15mmと略同一の14mmとしている。この差分の1mmの隙間に、ハニカム構造体1の成形には不要なポットバリを成形するが、作業者がこのバリ部分を引き出すことで、成形後に不要となったランナ14d内のポットバリを容易に取り出すことができる。
【0061】
プランジャ15には、図示しない把手取り付け部を、プランジャ15の短手方向の両側に有しており、作業者が組み立てや持ち運びできるようになっている。
【0062】
なお、本実施形態では、第二実施形態のハニカム構造体を成形する金型について説明するが、少なくとも三面以上の複数の側壁を有し、平面視で多角形の筒状に形成された複数のセルの集合体からなるハニカム構造体を成形するハニカム構造体成形用金型であれば本発明の範囲内であって、適宜設計変更可能である。具体的には、中子12と中型13の形態を、それぞれ、成形するセルの平面視形状に合致する形態とすればよい。
【0063】
[ハニカム構造体の製造方法]
本実施形態において、本発明のハニカム構造体1の製造は、図示しないプレス機を使用したポット・トランスファー成形法で行われる。
図11は、金型10を分離した状態を示していて、
図12は、これらを鉛直方向の下側から上側に向かって、積層に組み付けた状態を示している。
また、
図11〜
図12には、金型10のそれぞれが組みつけられる際の各ガイドピン11c、11d、15a及びこれに対応する嵌合孔11e、13a、13b、13c、14a、14bは省略されていて、図示されていない。
【0064】
先ず、
図7に示すように、下型11の全ての凹部11aに、中子(駒)12の脚部12bを嵌合させて、中子12を下型11に配設する。
【0065】
次に、プランジャ15を除く金型10を積層に順次組み合わせることで、ハニカム構造体1を成形するキャビティ20が形成される。
図13(
図12のキャビティ20の空間部分を拡大した図)に示すように、キャビティ20内の中子(駒)12同士の隙間距離W2は、ハニカム構造体1のセル2の側壁3aの厚みとなる1mmで、中子(駒)12同士が対向しない隙間距離W1は、隙間距離W2の半分の500μmである。
また、中子(駒)12の上面と上型14の下面との間に隙間S3(第2の隙間)を設けている。このような隙間(第2の隙間)S3を設けることで、薄膜部5が成形できる。また、中子(駒)12と上型14とで組み立てのときに相互に緩衝しない。なお、この場合の隙間(第2の隙間)S3の距離は100μmであるが、これに限定されずキャビティ20の大小によって決めることができる。
【0066】
次に、
図12に示すようにキャビティ20が形成後、上型14のポット14cに未加硫のシリコーンゴム16が投入される。ここで投入されるシリコーンゴム16の量はハニカム構造体1(セル2)を成形する量に不足が無いように同等の量よりもやや多くの量が1回分だけ投入される。この場合、ハニカム構造体1(セル2)を成形する量よりも多い部分はポットバリとなる。
なお、ポットバリが多少発生をしても、シリコーンゴム自体が廉価であることからハニカム構造体1の製造コストを廉価に抑えることができる。シリコーンゴムについて、以下に説明する。
【0067】
このシリコーンゴム16の硬度を調整することで、ハニカム構造体1がクッション材や緩衝材として用いられる場合の柔軟性を変えることができる。例えば、シリカ系粉体充填剤の添加量が多いと、ゴム硬度が高く(硬く)、逆に添加量が少ないとゴム硬度は低く(柔らかく)なる。なお、ゴム硬度を低く(柔らかく)する場合、シリコーン系のオイルを添加する方法でも構わない。
また、シリコーンゴム16は、その成分構成に毒性の物質を持たず、化学的に安定で生理的にも不活性であり、その性質が変わらないことから、安全なハニカム構造体1を用いた多様な製品ができる。
【0068】
また、シリコーンゴム16は透明性に優れているため、顔料による着色も容易で色鮮やかなハニカム構造体1を用いた製品を提供できる。例えば、着色の色を白色、桃色、赤色、黄色など各色やシリコーンゴム専用の顔料を組み合わせて使用することで色調調整ができるためハニカム構造体の大小や個数などが一目瞭然となる。
これにより、軽量を求められる自動車や航空機などのボディ内部の緩衝材に用いられるだけでなく、セル壁3の幾何学的な模様と共に各色を用いた多彩な装飾用としても活用できる。
【0069】
次に、
図12に示すように、図示しない圧縮成形(プレス)機で下降させて、プランジャ15をプレスすることにより(図内の「プレス」と矢印符号で示す。)、ポット14c内で加熱され軟化した未加硫のシリコーンゴム16は、ランナ14dからゲート14eを通じてキャビティ20に圧入される。また、ゲート14eからのシリコーンゴム16は、中子(駒)12の半球面からなる凹部12dに注入後、中子(駒)12と上型14によって形成されたキャビティ20内を均等に流れる。シリコーンゴム16が充填された領域はハッチングを付して表す(
図14参照。)。
【0070】
シリコーンゴム16がキャビティ20内の全域に行きわたると、キャビティ20内の未加硫のシリコーンゴム16を加熱加硫させる。これにより、柱状の側壁3と薄膜底部5と補強支持部材4で形成されたセル2が、配置された中子(駒)12の数(25個)分が集合(結合)状態で成形され、1つのハニカム構造体1ができあがる。
【0071】
本実施形態のハニカム構造体成形用金型10と製造方法は、第二実施形態のハニカム構造体1を成形するための一実施形態であるが、
図1及び
図2に示す第一実施形態のハニカム構造体1を成形する際に用いることも可能である。第一実施形態のハニカム構造体1を成形する場合、中子12の上面に設けられている溝部12cは不要であるため、上面がフラットな中子を採用することができる。なお、本実施形態の金型10と製造方法をそのまま用いて第一実施形態のハニカム構造体1を成形してもよく、この場合、各セル2の下面に成形される補強支持部材4と薄膜底部5は不用であるため、脱型後、当該部分はバリとして分離除去すればよい。
【0072】
また、トランスファー成形は特別な設備を必要とせず、シリコーンゴム素材が廉価であることから、成形品には不要なバリが多少発生をしても、総合的にハニカム構造体の製造コストを廉価に抑えることができる。