特許第6904581号(P6904581)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6904581
(24)【登録日】2021年6月28日
(45)【発行日】2021年7月21日
(54)【発明の名称】通信装置、通信方法及びプログラム
(51)【国際特許分類】
   H04W 8/20 20090101AFI20210708BHJP
   H04W 76/25 20180101ALI20210708BHJP
   H04W 92/08 20090101ALI20210708BHJP
   H04W 76/18 20180101ALI20210708BHJP
   H04M 1/00 20060101ALI20210708BHJP
【FI】
   H04W8/20
   H04W76/25
   H04W92/08
   H04W76/18
   H04M1/00 R
【請求項の数】6
【全頁数】15
(21)【出願番号】特願2018-194910(P2018-194910)
(22)【出願日】2018年10月16日
(65)【公開番号】特開2020-65132(P2020-65132A)
(43)【公開日】2020年4月23日
【審査請求日】2020年2月10日
(73)【特許権者】
【識別番号】000227205
【氏名又は名称】NECプラットフォームズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100103894
【弁理士】
【氏名又は名称】家入 健
(72)【発明者】
【氏名】竹下 剛
【審査官】 宮田 繁仁
(56)【参考文献】
【文献】 特開2016−184804(JP,A)
【文献】 特開2012−253556(JP,A)
【文献】 国際公開第2017/169016(WO,A1)
【文献】 欧州特許出願公開第3119128(EP,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04W4/00−99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
移動体通信サービスの提供元を識別可能な識別情報が記憶されている記憶媒体を装着可能な保持部と、
前記移動体通信サービスの提供元ごとに設定情報が登録された提供元別設定情報登録テーブルを記憶する記憶部と、
前記保持部に装着された前記記憶媒体に記憶されている前記識別情報に基づいて、前記提供元別設定情報登録テーブルから前記設定情報を読み出す制御部と、
前記制御部が読み出した前記設定情報に基づく移動体通信ネットワークへの接続試行を行い、前記接続試行に成功した後に、前記識別情報に応じて提供される前記移動体通信サービスに基づく通信を行う通信部と、
前記接続試行を行う際に、前記移動体通信ネットワークの基地局へのアタッチ要求に対する応答に基づいて、前記接続試行の成否を判定し、前記接続試行に成功した場合、前記移動体通信ネットワーク上の所定の宛先へ疎通確認用データを送信してデータ疎通の可否を確認した結果に基づいて、前記接続試行を行ったときの前記設定情報の正否を判定する、判定部と、
を備え
前記通信部は、前記接続試行に成功した後、前記設定情報が適切であった場合に、前記識別情報に応じて提供される前記移動体通信サービスに基づく通信を行う、
通信装置。
【請求項2】
前記判定部は、前記基地局から接続失敗の応答を受信した場合、前記基地局からの応答がない状態、又は、前記接続試行の成否を判定できない状態が一定時間続いた場合に、前記接続試行が失敗であると判定する、
請求項1に記載の通信装置。
【請求項3】
前記接続試行が失敗した場合、
前記制御部は、前記提供元別設定情報登録テーブルから他の設定情報を読み出し、
前記判定部は、前記他の設定情報に基づく他の接続試行の成否を判定する、
請求項1又は2に記載の通信装置。
【請求項4】
前記設定情報が正しくないと判定された場合、
前記制御部は、前記提供元別設定情報登録テーブルから他の設定情報を読み出し、
前記判定部は、前記他の設定情報に基づく他の接続試行の成否を判定する、
請求項1〜3のいずれか1項に記載の通信装置。
【請求項5】
記憶媒体に記憶された移動体通信サービスの提供元を識別可能な識別情報に基づいて、記憶部に記憶された前記移動体通信サービスの提供元ごとに設定情報が登録された提供元別設定情報登録テーブルから前記設定情報を読み出し、
読み出した前記設定情報に基づく移動体通信ネットワークへの接続試行を行い、
前記接続試行を行う際に、前記移動体通信ネットワークの基地局へのアタッチ要求に対する応答に基づいて、前記接続試行の成否を判定し、前記接続試行に成功した場合、前記移動体通信ネットワーク上の所定の宛先へ疎通確認用データを送信してデータ疎通の可否を確認した結果に基づいて、前記接続試行を行ったときの前記設定情報の正否を判定し、
前記接続試行に成功した後、前記設定情報が適切であった場合に、前記識別情報に応じて提供される前記移動体通信サービスに基づく通信を行う、
通信方法。
【請求項6】
記憶媒体に記憶された移動体通信サービスの提供元を識別可能な識別情報に基づいて、記憶部に記憶された前記移動体通信サービスの提供元ごとに設定情報が登録された提供元別設定情報登録テーブルから前記設定情報を読み出し、
読み出した前記設定情報に基づく移動体通信ネットワークへの接続試行を行い、
前記接続試行を行う際に、前記移動体通信ネットワークの基地局へのアタッチ要求に対する応答に基づいて、前記接続試行の成否を判定し、前記接続試行に成功した場合、前記移動体通信ネットワーク上の所定の宛先へ疎通確認用データを送信してデータ疎通の可否を確認した結果に基づいて、前記接続試行を行ったときの前記設定情報の正否を判定し、
前記接続試行に成功した後、前記設定情報が適切であった場合に、前記識別情報に応じて提供される前記移動体通信サービスに基づく通信を行う、
処理をコンピュータに実行させる、
プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、移動体通信サービスに基づく通信を行う通信装置、通信方法及びプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
複数の事業者が、LTE(Long Term Evolution)や3Gなどの様々な移動体通信サービスを提供している。これらの事業者は、移動体通信サービスの提供を受けるユーザに対して、サービス内容に応じた契約を行い、当該契約によるサービスの提供先を識別可能な加入者情報が記憶されたSIM(Subscriber Identity Module)カードを当該ユーザに提供する。SIMカードには、当該ユーザが契約した通信事業者の接続情報や契約情報が電子的に保存されている。SIMカードを装着した通信装置は、SIMカードに記憶された加入者情報を用いることで移動体通信ネットワークに接続可能となる。
【0003】
また、通信装置が移動体通信ネットワークを介して通信を行うためには、当該通信装置に、当該移動体通信ネットワークに接続するためのAPN(Access Point Name)等を設定する必要がある。APNとは、通信装置を移動体通信ネットワークに接続して通信を行う際に必要となる接続先を指定する情報である。通信装置は、装着されたSIMカードに記憶されている加入者情報をAPNによって示される接続先に送信することによって、移動体通信ネットワークを介して通信を行うことができるようになる。従って、事業者による移動体通信サービスの提供を受けて、通信装置が移動体通信ネットワークを介して通信を行うためには、SIMカードに応じたAPN設定を行う必要がある。
【0004】
近年、移動体通信サービスを提供するMVNO(仮想移動体通信事業者:Mobile Virtual Network Operator)が増加している。各MVNOによる移動体通信サービスの提供を受ける場合、ユーザは、通信装置に各事業者から提供されるSIMカードに応じたAPN設定を行う必要がある。MVNO及び移動体通信サービスの増加に伴って、それらに応じたAPN設定を行うために、通信装置の製造時に記憶手段に記憶される設定情報の数が増加している。ユーザが通信装置に装着するSIMカードを交換して他の事業者から移動体通信サービスの提供を受ける場合、記憶手段に記憶されている多くの設定情報から適切な設定情報を選択して手動で設定するため、作業に手間がかかる。
【0005】
そこで、特許文献1では、移動体通信サービスの提供元ごとに設定情報が登録された提供元別設定情報登録テーブルから、SIMカードに記憶されている識別情報に基づいて設定情報を自動で読み出すことで、ユーザによるAPN設定の手間を省く技術が提案されている。
【0006】
また、特許文献2には、アクセスポイントが、外部ネットワーク接続に必要となるAPN設定などを記憶したDBを予め持つことにより、ATコマンド等で得られるオペレータ情報から、各キャリアに適したAPNを自動的に設定する技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特許第6204399号公報
【特許文献2】国際公開第2014/034305号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、MVNOが提供する移動体通信サービスに使用されるAPNと一部又は全部が同じAPNが、他の移動体通信サービスにも使用される場合がある。特許文献1では、提供元別設定情報登録テーブルから自動で設定情報を読み出すことが記載されているにすぎず、当該設定情報に基づいた移動体通信ネットワークへの接続が成功したか失敗したかの判定方法について全く言及されていない。このため、同じAPNではあるが他のサービスである場合、あるいは、移動体通信ネットワーク側の応答がない場合などには、APN設定が完了できず、移動体通信ネットワークへの接続ができないという問題がある。
【0009】
また、特許文献2では、アクセスポイントを外部ネットワークと接続する際に、過去の接続履歴を確認して、外部ネットワークに接続されたBluetooth(登録商標)とアクセスポイントの接続が許可されているか否かを確認しているのみであり、外部ネットワーク側の応答を考慮してAPN設定を完了させるものではない。
【0010】
本開示の目的は、上述した問題を鑑み、自動化されたAPN設定を簡便に完了させることができる通信装置、通信方法及びプログラムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の一態様に係る通信装置は、移動体通信サービスの提供元を識別可能な識別情報が記憶されている記憶媒体を装着可能な保持部と、前記移動体通信サービスの提供元ごとに設定情報が登録された提供元別設定情報登録テーブルを記憶する記憶部と、前記保持部に装着された前記記憶媒体に記憶されている前記識別情報に基づいて、前記提供元別設定情報登録テーブルから前記設定情報を読み出す制御部と、前記制御部が読み出した前記設定情報に基づく移動体通信ネットワークへの接続試行を行い、前記接続試行に成功した後に、前記識別情報に応じて提供される前記移動体通信サービスに基づく通信を行う通信部と、前記接続試行を行う際に、前記移動体通信ネットワークの基地局へのアタッチ要求に対する応答に基づいて、前記接続試行の成否を判定する判定部とを備えるものである。
【0012】
本発明の一態様に係る通信方法は、記憶媒体に記憶された移動体通信サービスの提供元を識別可能な識別情報に基づいて、記憶部に記憶された前記移動体通信サービスの提供元ごとに設定情報が登録された提供元別設定情報登録テーブルから前記設定情報を読み出し、読み出した前記設定情報に基づく移動体通信ネットワークへの接続試行を行い、前記接続試行を行う際に、前記移動体通信ネットワークの基地局へのアタッチ要求に対する応答に基づいて、前記接続試行の成否を判定し、前記接続試行に成功した後に、前記識別情報に応じて提供される前記移動体通信サービスに基づく通信を行う。
【0013】
本発明の一態様に係るプログラムは、記憶媒体に記憶された移動体通信サービスの提供元を識別可能な識別情報に基づいて、記憶部に記憶された前記移動体通信サービスの提供元ごとに設定情報が登録された提供元別設定情報登録テーブルから前記設定情報を読み出し、読み出した前記設定情報に基づく移動体通信ネットワークへの接続試行を行い、前記接続試行を行う際に、前記移動体通信ネットワークの基地局へのアタッチ要求に対する応答に基づいて、前記接続試行の成否を判定し、前記接続試行に成功した後に、前記識別情報に応じて提供される前記移動体通信サービスに基づく通信を行う、処理をコンピュータに実行させる。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、自動化されたAPN設定を簡便に完了させることができる通信装置、通信方法及びプログラムを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】実施の形態に係る通信装置の接続例を示す概念図である。
図2】実施の形態に係る通信装置の構成例を示すブロック図である。
図3】実施の形態に係る通信装置の構成例を示すブロック図である。
図4】SIMカードに記憶されている識別情報に含まれるIMSI番号の構成を示す図である。
図5A】実施の形態に係る通信装置がAPN設定を行う動作を説明するフローチャートである。
図5B】実施の形態に係る通信装置がAPN設定を行う動作を説明するフローチャートである。
図5C】実施の形態に係る通信装置がAPN設定を行う動作を説明するフローチャートである。
図6】APN設定テーブルの例を示す図である。
図7】APN設定テーブルの例を示す図である。
図8図5Bの接続試行における判定処理の第1例を説明するフローチャートである。
図9図5Bの接続試行における判定処理の第2例を説明するフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、図面を参照して本発明の実施の形態について説明する。説明の明確化のため、以下の記載及び図面は、適宜、省略、及び簡略化がなされている。また、様々な処理を行う機能ブロックとして図面に記載される各要素は、ハードウェア的には、CPU、メモリ、その他の回線で構成することができる。また、本発明は、任意の処理を、CPU(Central Processing Unit)にコンピュータプログラムを実行させることにより実現することも可能である。従って、これらの機能ブロックがハードウェアのみ、ソフトウェアのみ、またはそれらの組合せによっていろいろな形で実現できることは当業者には理解されるところであり、いずれかに限定されるものではない。
【0017】
また、上述したプログラムは、様々なタイプの非一時的なコンピュータ可読媒体(non-Transitory computer Readable Medium)を用いて格納され、コンピュータに供給することができる。非一時的なコンピュータ可読媒体は、様々なタイプの実体のある記録媒体(tangible storage Medium)を含む。非一時的なコンピュータ可読媒体の例は、磁気記録媒体(例えばフレキシブルディスク、磁気テープ、ハードディスクドライブ)、光磁気記録媒体(例えば光磁気ディスク)、CD−ROM(Read Only Memory)、CD−R、CD−R/W、半導体メモリ(例えば、マスクROM、PROM(Programmable ROM)、EPROM(Erasable PROM)、フラッシュROM、RAM(Random Access Memory))を含む。また、プログラムは、様々なタイプの一時的なコンピュータ可読媒体(Transitory computer Readable Medium)によってコンピュータに供給されてもよい。一時的なコンピュータ可読媒体の例は、電気信号、光信号、及び電磁波を含む。一時的なコンピュータ可読媒体は、電線及び光ファイバ等の有線通信路、又は無線通信路を介して、プログラムをコンピュータに供給できる。
【0018】
実施の形態は、APNの設定を自動で行い、移動体通信サービスに基づく通信を行う通信装置、通信方法及びプログラムに関する。図1は、実施の形態に係る通信装置10の接続例を示す概念図である。図1に示すように、通信装置10は、携帯電話通信網等の移動体通信ネットワーク20の基地局30と情報を送受信する。通信装置10は、例えば、携帯電話機や可搬型コンピュータ等の通信端末に接続され、それら通信端末と移動体通信ネットワーク20の基地局30との間の通信を中継するモバイルルータ等である。
【0019】
実施の形態に係る通信装置10について、図2を参照して説明する。図2は、通信装置10の構成例を示すブロック図である。図2に示すように、通信装置10は、保持部11、記憶部12、制御部13、通信部14、判定部15を含む。
【0020】
保持部11は、移動体通信サービスの提供元を識別可能な識別情報が記憶されている記憶媒体を装着可能である。記憶部12は、移動体通信サービスの提供元ごとに設定情報が登録された提供元別設定情報登録テーブルを記憶する。制御部13は、保持部11に装着された記憶媒体に記憶されている識別情報に基づいて、提供元別設定情報登録テーブルから設定情報を読み出す。
【0021】
通信部14は、制御部13が読み出した設定情報に基づく移動体通信ネットワークへの接続試行を行い、接続試行に成功した後に、識別情報に応じて提供される移動体通信サービスに基づく通信を行う。判定部15は、接続試行を行う際に、移動体通信ネットワークの基地局へのアタッチ要求に対する応答に基づいて、接続試行の成否を判定する。実施の形態によれば、移動体通信ネットワークへの接続の成否を判定することで、自動化されたAPN設定を簡便に完了させることができる。
以下、実施の形態に係る通信装置について、具体的な例を挙げて説明する。
【0022】
実施の形態に係る通信装置100について、図3を参照して説明する。図3は、通信装置100の構成例を示すブロック図である。図3に示すように、通信装置100は、SIMカードスロット101、記憶部102、制御部103、通信部104、判定部105、表示部106、操作部107、アンテナ110を含む。
【0023】
SIMカードスロット101には、図示しないSIMカードが装着される。SIMカードは、移動体通信サービスの提供元を識別可能な識別情報が記憶されている記憶媒体である。SIMカードスロット101は、図2の保持部11に相当する。
【0024】
記憶部102には、通信装置100の制御に必要なソフトウェアや、APN設定テーブルが記憶されている。APN設定テーブルは、各移動体通信サービスを提供する事業者に応じたAPN等を含む設定情報が登録された提供元別設定情報登録テーブルである。記憶部102は、図2の記憶部12に相当する。
【0025】
制御部103は、通信装置100の全体を制御する。制御部13は、図2の制御部103に相当し、SIMカードに記憶されている識別情報に基づいて、提供元別設定情報登録テーブルから設定情報を読み出す。
【0026】
通信部14は、図2の通信部104に相当する。通信部104には、アンテナ110が接続されている。通信部104は、アンテナ110を介して無線通信で情報を送受信する。例えば、通信部104は、LTE等の通信方式に従って、移動体通信ネットワーク20の基地局30と情報を送受信する。また、通信装置100が基地局30と他の通信装置との間の通信を中継するモバイルルータ等の中継装置である場合、通信部104は当該他の通信装置と近距離無線通信で情報を送受信する。また、通信部104は、制御部13が読み出した設定情報に基づく移動体通信ネットワーク20への接続試行を行う。
【0027】
判定部105は、図2の判定部15に相当する。判定部105は、接続試行を行う際に、移動体通信ネットワーク20の基地局30へのアタッチ要求に対する応答に基づいて、接続試行の成否を判定する。制御部103、判定部105は、例えば、プログラムに従って処理を実行するCPU(Central Processing Unit)によって実現される。これらの動作については、後に詳述する。
【0028】
表示部106は、液晶ディスプレイや有機ELディスプレイ等であり、制御部103からの指示に従って、ユーザに対して通知すべき情報、操作に必要な情報等を表示する。操作部107は、ユーザが通信装置10を操作するために必要な各種の操作キーを備え、ユーザが操作した操作キーに基づく情報を受け付け、受け付けた情報を制御部103へ送出する。なお、表示部106と操作部107とが一体として構成されたタッチパネルを用いてもよく、表示部106と操作部107とを別に設けてもよい。
【0029】
次に、図4を参照して、SIMカードに記憶されている識別情報について説明する。図4は、SIMカードに記憶されている識別情報に含まれるIMSI(International Mobile Subscriber Identity)番号の構成を示す図である。図4に示すように、IMSI番号は、MCC(Mobile Country Code)、MNC(Mobile Network Code)、及び、MSIN(Mobile Station Identification Number)を含む。
【0030】
MCCは、例えば、ユーザにSIMカードを提供した移動体通信サービス事業者の運用地域(例えば、国)を3桁の数字で示す情報である。例えば、ユーザにSIMカードを提供した事業者の運用地域が日本であれば、MCCは440である。MNCは、ユーザにSIMカードを提供した事業者を識別する情報である。図3に示す例では、MNCは2桁の数字である。MSINは、ユーザを識別する情報である。図3に示す例では、MSINは10桁の数字である。図3に示す例では、IMSI番号の、1〜3桁目の数字がMCCであり、4、5桁目の数字がMNCであり、6〜15桁目の数字がMSINである。
【0031】
次に、図5A図5Cを参照して、実施の形態に係る通信方法について説明する。図5A〜5Cは、実施の形態に係る通信装置がAPN設定を行う動作を説明するフローチャートである。制御部103及び判定部105は、SIMカードスロット101に装着されているSIMカードに基づく通信を開始するときに、図5A〜5Cのフローチャートに示す処理を行う。なお、SIMカードに基づく通信とは、例えば、SIMカードに記憶されている識別情報に基づいて提供される移動体通信サービスに応じた通信をいう。
【0032】
以下に説明する処理は、特許第6204399号に記載されたAPN設定を自動で行う処理を含む。実施の形態に係る通信方法は、自動でAPN設定を行い、基地局への接続試行を実施する際に、以下に説明する判定処理を行うことで、簡便にAPN設定を完了させることを特徴としている。
【0033】
図5Aに示すように、まず、制御部103は、記憶部102に記憶されているAPN設定テーブルを読み出す(ステップS100)。ここで、APN設定テーブルについて詳細に説明する。図6、7は、APN設定テーブルの例を示す説明図である。図6、7に示すように、APN設定テーブルは、APN設定メインテーブルと、APN設定サブテーブルとを含む。図6には、APN設定メインテーブルが示されている。また、図7には、APN設定サブテーブルが示されている。
【0034】
図6に示すように、APN設定メインテーブルには、IMSI番号と設定情報(図6において、APN情報と示す)とが互いに対応付けられて登録されている。APN設定サブテーブルは、移動体通信サービスの事業者ごとに用意され、各事業者から移動体通信サービスの提供を受けるための設定情報が登録されている。なお、設定情報は、例えば、移動体通信サービスの提供を受けるための、APNや、ユーザ名、パスワード、認証タイプ等を示す情報である。
【0035】
図7に示すように、APN設定サブテーブルには、図6に示すAPN設定メインテーブルに登録されている設定情報が、移動体通信サービスの事業者ごとに登録されている。具体的には、APN設定サブテーブルAには、事業者Aによる移動体通信サービスの提供を受けるための設定情報(図7において、APN情報と示す)がそれぞれ登録されている。また、APN設定サブテーブルBには、事業者Bによる移動体通信サービスの提供を受けるための設定情報がそれぞれ登録されている。APN設定サブテーブルCには、事業者Cによる移動体通信サービスの提供を受けるための設定情報がそれぞれ登録されている。
【0036】
図6のAPN設定メインテーブルに登録されている設定情報は、当該設定情報に対応付けられているIMSI番号に含まれるMCC及びMNC(図3に示す例では、第1〜5桁目の数字)に基づいて、事業者ごとのサブテーブルに登録されている。具体的には、図6に示すAPN設定メインテーブルにおいて、第1〜5桁目の数字が「44010」であるIMSI番号に対応づけられている設定情報は、事業者Aを示す契約SIM名に対応付けてAPN設定サブテーブルAに登録される。また、図6に示すAPN設定メインテーブルにおいて、第1〜5桁目の数字が「44020」であるIMSI番号に対応づけられている設定情報は、事業者Bを示す契約SIM名に対応付けてAPN設定サブテーブルBに登録される。さらに、図6に示すAPN設定メインテーブルにおいて、第1〜5桁目の数字が「44050」であるIMSI番号に対応づけられている設定情報は、事業者Cを示す契約SIM名に対応付けてAPN設定サブテーブルCに登録される。
【0037】
なお、設定情報はAPN設定サブテーブルに直接登録されてもよく、当該設定情報が記憶されている記憶部102のアドレス等がAPN設定サブテーブルに登録されてもよい。制御部103が、APN設定サブテーブルから、又は、アドレス等に基づいて記憶部102から、設定情報を読み出すことができる。
【0038】
具体的には、制御部103は、ステップS101の処理で、APN設定メインテーブルに登録されているIMSI番号を読み出す。そして、制御部103は、SIMカードスロット101に装着されているSIMカードに記憶されているIMSI番号と一致するIMSI番号が、APN設定メインテーブルに登録されている場合(ステップS101、YES)、ステップS102の処理に移行する。
【0039】
ステップS102の処理では、制御部103は、APN設定メインテーブルにおいて、SIMカードスロット101に装着されているSIMカードに記憶されているIMSI番号に対応付けられている設定情報を記憶部102から読み出し、読み出した設定情報に基づいて、APN設定を行う(ステップS102)。具体的には、制御部103は、読み出した設定情報に含まれるAPNや、ユーザ名、パスワード、認証タイプ等を設定し、移動体通信ネットワーク20の基地局30に接続する。そして、制御部103は、処理を終了する。
【0040】
一方、SIMカードスロット101に装着されているSIMカードに記憶されているIMSI番号と合致するIMSI番号がAPN設定メインテーブルに登録されていない場合(ステップS102、NO)、ステップS103の処理に移行する。ステップS103の処理では、SIMカードスロット101に装着されているSIMカードに記憶されているIMSI番号におけるMCC及びMNCが、図6に示すAPN設定メインテーブルに登録されているいずれかのIMSI番号におけるMCC及びMNCと合致する場合に(ステップS103、YES)、ステップS104の処理に移行し、そうでない場合に(ステップS103、NO)、ステップS111の処理に移行する。
【0041】
制御部103は、ステップS111の処理で、ユーザに、APN設定を手動で行うように通知する。具体的には、制御部103は、ステップS111の処理で、例えば、APNや、ユーザ名、パスワード、認証タイプ等のAPN設定に必要な情報の入力を促す画面を表示部106に表示させる。そして、制御部103には、表示部106に表示された画面に応じて、ユーザによって操作部107になされた操作に応じた情報が入力される。
【0042】
制御部103は、ユーザによって入力された情報に応じて、APN設定を行う(ステップS112)。そして、制御部103は、ステップS112の処理で行ったAPN設定に基づいて、移動体通信ネットワーク20の基地局30に接続する(ステップS113)。
【0043】
制御部103は、移動体通信ネットワーク20の基地局30との接続に成功したときのAPN設定に用いた設定情報と、SIMカードスロット101に装着されているSIMカードに記憶されているIMSI番号とを対応付けてAPN設定メインテーブルに登録する(ステップS109)。そして、制御部103は、処理を終了する。
【0044】
一方、ステップS104の処理では、制御部103は、SIMカードスロット101に装着されているSIMカードに記憶されているIMSI番号に基づいて通信事業者を判別し、参照するAPN設定サブテーブルを決定する。具体的には、制御部103は、例えば、当該IMSI番号の第1〜5桁目の数字が「44010」であれば、APN設定サブテーブルAを参照すると決定する。また、制御部103は、例えば、当該IMSI番号の第1〜5桁目の数字が「44020」であれば、APN設定サブテーブルBを参照すると決定する。制御部103は、例えば、当該IMSI番号の第1〜5桁目の数字が「44050」であれば、APN設定サブテーブルCを参照すると決定する。なお、各APN設定サブテーブルは、IMSI番号の第1〜5桁目の数字と互いに対応付けられて記憶部102に記憶されているとする。
【0045】
その後、制御部103は、ステップS104の処理で決定したAPN設定サブテーブルから設定情報を読み出す(ステップS105)。そして、制御部103は、ステップS105の処理で読み出した設定情報に基づいてAPN設定を行い(ステップS106)、移動体通信ネットワーク20の基地局30への接続を試みる(ステップS107)。
【0046】
制御部103は、ステップS107の処理で移動体通信ネットワーク20の基地局30への接続に成功した場合に(ステップS108、YES)、ステップS109の処理に移行し、当該接続に失敗した場合に(ステップS108、NO)、ステップS110の処理に移行する。
【0047】
制御部103は、ステップS110の処理で、同じAPN設定サブテーブルを参照して、記憶部102に、今回以前のステップS105の処理で既に読み出した設定情報以外の設定情報が記憶されているか否かを判定する。制御部103は、記憶部102に、ステップS105の処理で読み出した設定情報以外の設定情報が記憶されていないと判定した場合に(ステップS110、NO)、ステップS111の処理に移行する。
【0048】
また、制御部103は、記憶部102に、今回以前のステップS105の処理で読み出した設定情報以外の設定情報が記憶されていると判定した場合に(ステップS110、YES)、再度ステップS105の処理に移行し、今回以前のステップS105の処理で読み出した設定情報以外の設定情報を読み出す。以降、今回以前のステップS105の処理で読み出した設定情報以外の設定情報がなくなるまで同様の処理を繰り返す(ステップS105〜S110)。これにより、制御部103が、ステップS102又はS105の処理で読み出した設定情報に基づいて、自動的にAPN設定を行うことができる。
【0049】
上記の自動APN設定では、制御部103が、事業者ごとに用意されたAPN設定サブテーブルに基づいて設定情報を読み出すので、基地局30への接続の試みに用いる設定情報の数を削減することができ、基地局30への接続に要する時間を短縮することができる。また、ステップS109の処理で、基地局30との接続に成功したときのAPN設定に用いた設定情報は、SIMカードスロット101に装着されているSIMカードに記憶されているIMSI番号と対応付けてAPN設定メインテーブルに登録される。このため、APN設定メインテーブルに新たに登録された設定情報は、次回以降のAPN設定及び基地局30への接続に活用され、次回以降の接続に要する時間を短縮することができる。この効果は、複数のSIMカードを適宜使い分ける場合に特に顕著である。
【0050】
上記の自動APN設定では、ステップS108の、移動体通信ネットワークへの接続が成功したか失敗したかの判定方法については全く言及されていない。このため、例えば、同じAPNで複数の移動体通信サービスがある場合やネットワーク側の応答がない場合など、自動APN設定が完了せず、移動体通信ネットワーク20に接続できない虞がある。そこで、実施の形態では、基地局への接続試行を実施する(ステップS107〜S108)際に、以下の判定処理を行う。図8は、図5Bの接続試行における判定処理の第1例を説明するフローチャートである。
【0051】
図8に示すように、ステップS108では、まず、判定部105が基地局30からのアタッチ要求に対する応答を受信したか否かを判定する(ステップS108−1)。具体的には、制御部103は、基地局30に対し、アタッチ要求としてアタッチリクエストメッセージを送信する。アタッチリクエストが受け入れられた場合、判定部105は、移動体通信ネットワーク20へのアタッチに成功したことを示すアタッチアクセプトメッセージを受信する。判定部105は、このアタッチアクセプトメッセージの受信に応じて(ステップS108−1、YES)、移動体通信ネットワークへの接続に成功したと判定し(ステップS108、YES)、S109の処理へ移行する。
【0052】
図8に示す例では、判定部105は、所定の応答待機時間が満了するまで、アタッチアクセプトメッセージの受信を待つように構成されている。ステップS107−2の処理において、待機時間が満了していない場合(NO)、再度、判定部105がアタッチ要求に対する応答の有無を判断する。判定部105がアタッチアクセプトメッセージを受信せず(ステップS108−1、NO)、さらに応答待機時間が満了した場合(ステップS108−2、YES)、移動体通信ネットワークへの接続が失敗したと判定し(ステップS108−3)、S110の処理へ移行する。
【0053】
なお、ステップS108−1では、上述したように、応答待機時間が完了するまでに、基地局30からの応答がない場合だけでなく、その他の要因により接続試行の成否を判断できない状態が続いた場合にも、判定部105は移動体通信ネットワークへの接続が失敗であると判定してもよい。また、応答待機時間の満了前であっても、基地局30から接続失敗の応答を受信した場合には、判定部105は移動体通信ネットワークへの接続が失敗であると判定してもよい。
【0054】
接続試行が失敗した場合には、上述したステップS110の処理で、制御部103がAPN設定サブテーブルから他の設定情報を読み出し、判定部105が当該他の設定情報に基づく他の接続試行の成否を判定する。
【0055】
このように、実施の形態によれば、APN設定サブテーブルから読み出した設定情報での接続試行に際し、基地局からのアタッチ要求に対する応答を用いて移動体通信ネットワークへの接続の成否を明確に確認することで、自動的なAPN設定を確実に完了させることができる。これにより、ユーザが手間をかけることなく確実にAPN設定がなされ、APN設定の自動化の実用性を大幅に向上させることができる。
【0056】
上述したように、異なる移動体通信サービスであるにも関わらず、一部又は全部が同じ設定情報が使用される場合がある。このような場合やその他移動体通信ネットワーク側の要因によって、基地局30へのアタッチができたとしても、移動体通信サービスを提供する事業者側で接続を拒否される可能性も考えられる。そこで、図9に示すように、第1例の判定処理に、データ疎通の判定処理を追加する。
【0057】
図9は、図5Bの接続試行における判定処理の第2例を説明するフローチャートである。第2例では、ステップS108は、第1例の処理(ステップS108−1〜S108−3)に加えて、ステップS108−4、S108−5の処理を含む。
【0058】
図9に示すように、判定部105が基地局30からのアタッチ要求に対する応答を受信した場合(ステップS108−1、YES)、ステップS108−4に移行する。ステップS108−4では、判定部105が、データ疎通試験を行い、データ疎通が成功したか否かを判定する。具体的には、判定部105は、移動体通信ネットワーク20上の所定の宛先へ疎通確認用データを送信してデータ疎通の可否を確認する。判定部105は、その確認結果に基づいて、接続試行を行ったときの設定情報の正否を判定する。
【0059】
疎通確認用データとしては、例えば、ICMP(Internet Control Message Protocol)のエコーリクエスト/エコーリプライを用いた通信テストプログラムの一つである、pingコマンド等を用いることができる。なお、データパケットの疎通が確認できる方法であれば、データ疎通試験は移動体通信サービスの提供事業者のサーバへのhttpアクセスであってもよく、特に限定されない。
【0060】
判定部105は、データ疎通が成功した場合、(ステップS108−4、YES)、移動体通信ネットワークへの接続に成功したと判定し(ステップS108、YES)、S109の処理へ移行する。データ疎通に失敗した場合(ステップS108−4、NO)、当該接続試行を行ったときの設定情報が不適切であったとみなし(ステップS108−5)、S110の処理へ移行する。なお、データ疎通に失敗した場合には、疎通確認用データに対する応答がない場合や、応答にデータエラーが発生した場合等を含む。
【0061】
これにより、実際に移動体通信ネットワーク20への接続ができる状態で、APN設定を自動的に完了することができる。このため、APN設定に関するユーザの負担なくインターネット接続環境を提供することができ、APN設定の自動化の実用性をさらに向上させることができる。
【0062】
なお、本発明は上記実施の形態に限られたものではなく、趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更することが可能である。例えば、実施の形態では、通信装置100は、表示部106、操作部107のうちいずれか一方又は両方を含んでいなくてもよい。
【0063】
また、実施の形態では、設定情報は、通信装置100の製造時又はステップS109の処理で記憶部102に記憶されるが、他のタイミングで記憶されてもよい。例えば、通信装置100は、USB(Universal Serial Bus)ケーブルや、近距離無線通信で接続されたの通信装置から送信された設定情報を受信して記憶部102に記憶させることができる。
【符号の説明】
【0064】
10 通信装置
11 保持部
12 記憶部
13 制御部
14 通信部
15 判定部
20 移動体通信ネットワーク
30 基地局
100 通信装置
101 SIMカードスロット
102 記憶部
103 制御部
104 通信部
105 判定部
106 表示部
107 操作部
110 アンテナ
図1
図2
図3
図4
図5A
図5B
図5C
図6
図7
図8
図9