【文献】
ファインテック・ジャパン2018出展のご案内,株式会社飯沼ゲージ製作所,URL,https://iinuma-gauge.co.jp/wp/wp-content/uploads/2018/11ファインテックジャパン2018.pdf
【文献】
塗布幅可変スリットコーター,製品紹介,株式会社飯沼ゲージ製作所,URL,https://iinuma-gauge.co.jp/products/691.php
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特許文献1及び特許文献2に記載のスリットコーターにおいては、スリット長を変更することは可能であるが、2枚のダイプレートの接合部の隙間(スリットギャップという)を自在に変更することは困難であった。例えば、特許文献1では、スリットギャップは2枚のダイプレートの形状(段差)を変更することで変更することが可能となり、特許文献2においては、シムプレートの厚さ及び構成を変更することから共にスリットギャップを容易に変更することはできないという課題がある。特許文献2においては、2枚のダイプレートの間にシム部材移動手段を配設しており複雑な構造となっているので、シムプレートの交換は一層困難となる。なお、スリットギャップは、吐出される液体の流動性(粘度)によって適切に調整されることが好ましい。すなわち、吐出する液体の粘度や塗膜速度に対応したスリットギャップに調整可能なスリットコーターが望まれている。
【0008】
また、特許文献2に記載のシール部材は、両端に左ネジ及び右ネジを有する共通のネジ軸を回転することによって2枚のシムプレートが移動してスリット長を変更するものである。2枚のシムプレートは同じ移動速度で反対方向に移動することから塗布幅は中心基準線に対して対称形となる。従って、直線と曲線とを組み合わせたような任意形状の塗膜を形成することはできないという課題を有している。
【0009】
そこで、本発明は、このような課題を解決するためになされたものであって、従来のスリットコート法の特長を生かしつつ、吐出する液体の種類(粘度の違い)や吐出速度に対応しやすく、しかも、矩形、曲線或いは直線と曲線とを組み合わせた任意形状の塗膜を形成することが可能なスリットコーターを実現しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
[1]本発明のスリットコーターは、スリットコート法によってワーク上に液体を吐出して塗膜を形成するスリットコーターであって、固定ダイプレート、前記固定ダイプレートに対して長さ方向にスライド移動可能な可動ダイプレート及び前記固定ダイプレートと前記可動ダイプレートとの接合面に形成されるスリット状ノズルとを有してメインフレームに取付けられるスリットダイと、前記可動ダイプレートをスライド移動させて前記スリット状ノズルのスリット長を変更する可動ダイプレートスライド機構と、前記スリットダイを前記メインフレームに沿ってスライド移動させるスリットダイスライド機構と、前記ワークをステージに吸着して搬送するステージ駆動機構と、を有し、前記固定ダイプレート及び前記可動ダイプレートには、それぞれ前記スリット状ノズルのスリットギャップの大きさを規定するシムプレートが着脱可能に固定されていることを特徴とする。
【0011】
本発明のスリットコーターによれば、可動ダイプレートと固定ダイプレートとの間に介在される2枚のシムプレートの厚みを制御すればスリット状ノズルのスリットギャップを容易に切り換えることが可能となる。また、可動ダイプレートを固定ダイプレートに対してスリット状ノズルの長さ方向に移動することによってスリット長を自在に変更することが可能とる。従って、従来のスリットコート法の特長を生かしつつ、吐出する液体の種類(粘度の違い)や吐出速度に対応しやすく、しかも、矩形、曲線或いは直線と曲線とを組み合わせた任意形状の塗膜を形成することが可能となる。なお、スリット長とはスリット状ノズルの塗膜幅に相当する長さであり、スリットギャップとは固定ダイプレートと可動ダイプレートとの隙間幅である。また、液体としては、レジスト、特殊膜材或いは接着剤(UV接着剤)などに適合可能である。
【0012】
[2]本発明のスリットコーターにおいては、前記可動ダイプレートスライド機構と前記スリットダイスライド機構とは、複数の歯車によって1個のモータに連結されており、前記スリットダイの移動距離は、前記可動ダイプレートの移動距離の1/2であり、前記スリットダイの移動方向は前記可動ダイプレートの移動方向に対して逆方向であることが好ましい。
【0013】
このようにすれば、可動ダイプレートと固定ダイプレートとは同期して逆方向に相対的に移動する。スリットダイの移動距離を可動ダイプレートの移動距離の1/2としていることから基準線(中心線)に対して線対称形、いわゆるセンター振り分け塗布が可能となる。可動ダイプレートの移動速度及び移動距離と、基板の移動速度(塗布速度)とを制御すれば四角形や多角形或いは円形の液体塗布が可能となり、例えば、半導体ウエハの外形に沿った円形の塗膜Sを形成することが可能となる。
【0014】
[3]本発明のスリットコーターにおいては、前記スリットダイスライド機構及び前記可動ダイプレートスライド機構が、それぞれを独立して駆動するモータを有していることが好ましい。
【0015】
このようにすれば、可動ダイプレートを移動させてスリット長を変更することに対してスリットダイの移動速度、移動方向及び移動距離を任意に制御することが可能になることから、矩形、多角形、或いは直線と曲線とを組み合わせた任意形状の塗膜を形成することが可能となる。勿論、センター振り分け塗布も可能となる。
【0016】
[4]本発明のスリットコーターにおいては、前記可動ダイプレート及び前記固定ダイプレートはそれぞれ、スリット状ノズルに前記液体を供給するためのマニホールド部を備えており、各前記マニホールド部は連通して1個のマニホールドを形成し、前記可動ダイプレートの移動位置に関わらず前記マニホールドの容積は一定である、
ことが好ましい。
【0017】
このような構成にすれば、可動ダイプレートを固定ダイプレートに対して移動する際に、マニホールドの容積が変わらないのでスリット長が変化してもスリット状ノズルに安定して液体を供給することができ、吐出均一性を確保することが可能となる。すなわち、塗膜の厚みや形状を高精度に形成することが可能となる。
【0018】
[5]本発明のスリットコーターにおいては、前記可動ダイプレートと前記固定ダイプレートとは、前記可動ダイプレートの移動方向に延長された平行キーによって案内されていることが好ましい。
【0019】
このような構成にすれば、可動ダイプレートを固定ダイプレートに対して移動させる際に、可動ダイプレートが固定ダイプレートに対して傾斜することを抑えることができるから摺動性を高めることが可能となり、さらにスリット状ノズルの吐出開口部とワークとのギャップを均一にすることができることから塗布精度を高めることが可能となる。
【0020】
[6]本発明のスリットコーターにおいては、前記ワーク上に前記液体を吐出して塗膜を形成する際に、前記スリット状ノズルのスリット長の変化及び前記ワークの移動速度に応じて前記マニホールドへの前記液体の供給量を制御する液量コントローラをさらに有していることが好ましい。
【0021】
液体の吐出量に応じて液体供給量を制御することによって、過不足のない液体供給により所望の塗膜形状を形成することが可能となる。また、液体供給経路内に液体が不足することによって気泡が発生することを防ぐことが可能となる。
【0022】
[7]本発明のスリットコーターにおいては、前記液体の供給量を一定にして前記スリット長の変化に同期して前記ワークの移動速度を制御する送り速度コントローラをさらに有していることが好ましい。
【0023】
例えば、スリット長を長くしていくときには吐出量が増加していくことからワークの送り速度を遅くすれば液体が不足することがない。また、スリット長を短くしていくときにはワークの送り速度を速くすれば液体の吐出過多を防ぐことが可能となる。
【0024】
[8]本発明のスリットコーターにおいては、前記可動ダイプレートと前記固定ダイプレートとの摺動面に塗布対象の前記液体が塗布されていることが好ましい。
【0025】
予め可動ダイプレートと前記固定ダイプレートとの摺動面に塗布対象の液体を塗布しておけば液体の膜が潤滑剤となり、可動ダイプレートと固定ダイプレートとの摺動性を高めることが可能となる。塗布対象以外の潤滑剤を使用すると、塗布対象の液体と潤滑剤が混入したり、化学反応によって硬化したりすることが考えられるので、塗布対象の液体を潤滑剤とすることが好ましい。
【0026】
[9]本発明のスリットコーターにおいては、前記可動ダイプレートを前記固定ダイプレートに押圧するローラ及び前記ローラを支持するカムフォロアベースとから構成される押圧手段をさらに有していることが好ましい。
【0027】
このような押圧手段によって可動ダイプレートと固定ダイプレートとを密接させることによって摺動面からの液漏れの発生を防ぐことが可能となり、スリットギャップを一定に維持することが可能となる。また、押圧手段としてローラを使用することによって、可動ダイプレートの摩擦負荷の増加を抑えることが可能となり摺動性を維持できる。
【0028】
[10]本発明のスリットコーターにおいては、前記ワークが厚み方向に曲面を有しているときに、前記スリット状ノズルが前記曲面の法線延長上に配置されるよう前記スリットダイを傾斜させるスリットダイ回動機構部をさらに有していることが好ましい。
【0029】
このようにすれば、曲面を有するワークにも高精度の塗膜を形成することが可能となる。なお、ワークが平坦面であれば、スリット状ノズルを平坦面に対して垂直線上に配置するようにスリットダイ回動機構を制御すればよい。
【発明を実施するための形態】
【0031】
以下、本発明の実施の形態に係るスリットコーター1について、
図1〜
図15を参照して説明する。スリットコーター1は、スリットコート法によってワーク上に液体を吐出して塗膜を形成する装置である。ワークとしては、板材、回路基板、フレキシブルプリント基板或いは半導体ウエハなど様々であるが、以下の説明においてはワークの1例として基板3として説明する。
【0032】
[スリットコーター1の全体構成]
図1は、本発明の実施の形態に係るスリットコーター1の全体構成を示す斜視図である。なお、以降に説明する各図は、
図1の図示奥行方向をX方向、X方向に直交する方向をY方向又は左右方向、X−Y平面に対して直交する方向をZ方向又は上下方向と記載して説明する。また、以降説明する各図は、適宜縮尺及び拡大率を変えている。スリットコーター1は、液体を吐出する吐出ヘッド機構部2と、ワークである基板3を吸着してX方向に移動するステージ駆動機構部4と、液供給タンク5から液体を吸引して吐出ヘッド機構部2(具体的にはスリットダイ20、
図2、
図4参照)に供給するポンプ6と、を有している。X方向は、基板3が吐出ヘッド機構部2に対して相対的に移動する方向であって、塗膜を形成していく方向である。
【0033】
吐出ヘッド機構部2は、Z軸駆動機構部7によって基板3に対してZ方向に昇降させる。吐出ヘッド機構部2は、Y軸方向に延在されるメインフレーム8にY方向に移動可能に取り付けられている。メインフレーム8の図示右方側端部は、スリットダイ回動機構部9に連結されている。スリットダイ回動機構部9は、メインフレーム8の延長方向に対して直交方向に吐出ヘッド機構部2を回動する機能を有している。メインフレーム8は、左右両側に立てられた2本のポスト10,10に水平に支持されている。
【0034】
ステージ駆動機構部4は、基板3を真空吸着するステージ11と、ステージ11をX方向に移動するステージ駆動機構12とを有している。液供給タンク5とポンプ6とは、図示しない輸液チューブで接続されている。吐出ヘッド機構部2、ステージ駆動機構部4、液供給タンク5、ポンプ6、Z軸駆動機構部7及びステージ駆動機構4などは、架台13の上方に配置されるブース14の内部に配置される。
図1に示すスリットコーター1は、吐出ヘッド機構部2に対して基板3(基板ステージ8)をX方向に移動する構成としているが、ステージ11を固定して吐出ヘッド機構部2をX方向に移動する構成としてもよい。
【0035】
スリットコーター1の図示正面側には、操作パネル15が配置されている。操作パネル15は、表示部16、入力ボタン17及びON/OFFスイッチ18などを有している。表示部16は、駆動条件や駆動情報などを表示する液晶ディスプレイ又は有機ELディスプレイなどである。なお、図示は省略するが、スリットコーター1の駆動全体を制御する制御装置がブース14内の図示奥方向の空間に配置されている。
【0036】
[吐出ヘッド機構部2Aの構成]
以降に説明する吐出ヘッド機構部2は、基準線P(
図9参照)に対して左右対称に振り分け塗布が可能な構成(吐出ヘッド機構部2A)と、基準位置に対して左右任意形状に塗布が可能な構成(吐出ヘッド機構部2B)とがある。まず、吐出ヘッド機構部2Aの構成について、
図2〜
図5を参照して説明する。
【0037】
図2は、スリットダイ機構部2Aを
図1の図示手前側から見た正面図、
図3は、
図2の上方側から見た平面図、
図4は、
図3のA−A切断線で切断した断面図、
図5は、
図2の図示右方側から見た歯車群の配列を模式的に示す側面図である。スリットダイ機構部2Aは、メインフレーム8に左右方向(Y方向)にスライド移動が可能に取り付けられたスリットダイ20(
図4参照)と、スリットダイ20をメインフレーム8に沿ってY方向に往復移動するスリットダイスライド機構22(
図3参照)と、可動ダイプレート21を図示左右方向(Y方向に)移動する可動ダイプレートスライド機構23と、メインフレーム8をスリットダイ20が装着された状態で、メインフレーム8の延長方向に対して直交する方向に回動するスリットダイ回動機構部9と、を有している。なお、
図2は、可動ダイプレート21が固定ダイプレート24(
図6参照)に対して移動していない基準位置にある状態を表している。
【0038】
次に可動ダイプレートスライド機構23の構成について
図2及び
図5を参照して説明する。可動ダイプレートスライド機構23は、モータ25と、モータ25の回転をネジ軸26に伝達する歯車列を有している。歯車列は、モータ軸25aに軸固定される第1歯車27、第2歯車28及び第3歯車29によって構成される。第3歯車29はネジ軸26に軸固定されている。モータ25及び第2歯車28は、歯車支持プレート30に回転可能に支持されている。ネジ軸26の左方先端部はネジブロック31に螺合し、右方先端側は歯車支持プレート30に回転可能に支持されている。
【0039】
ネジブロック31は、可動ダイプレート21に固定されている。可動ダイプレートスライド機構23は、いわゆるネジ駆動機構であって、ネジブロック31は、ネジ軸26に対してスライダーナットの機能を有する。ネジ軸26は右ネジであるから、右回転するとネジ軸26の位置は変わらずに、ネジブロック31が可動ダイプレート21と一体で図示右方向に移動し、左回転すると図示左方向に移動する。
図5において、ネジ軸26が右回転する際のモータ25及び各歯車の回転方向を実線の矢印で示す。モータ25はサーボモータであるが、ロータリーエンコーダ付きの他のモータであってもよく、或いは可動ダイプレート21の移動を検出するリニアエンコーダを装備するようにしてもよい。
【0040】
図3及び
図5に示すように、第1歯車27の小歯車27aは第4歯車32に歯合する。第4歯車32はスリットダイスライド機構22を駆動するものであって、モータ25の回転をネジ軸59に伝達する。第4歯車32は第3歯車29に対して歯数比が2:1となっている。モータ25の回転に同期して第3歯車29と第4歯車32はモータ25の回転に対して逆方向に同期回転する。つまり、第3歯車29が1回転するときに第4歯車32は1/2回転する。スリットダイスライド機構22の構成については、
図2を参照して詳しく後述する。
【0041】
図2及び
図3に示すように、吐出ヘッド機構部2Aはモータ33を有している。モータ33は、モータバックアッププレート34に取付けられており、モータ軸33aはモータバックアッププレート34を貫通し、メインフレーム8の側板部8aに軸固定されている。モータバックアッププレート34はポスト10に固定されている(
図1参照)。モータ軸33aの中心軸の位置は、スリットダイ20の先端部(液体の出口開口部35、
図5参照)と重なる。従って、モータ軸33aを左右に回転することによって、メインフレーム8を介してスリットダイ20を出口開口部35を中心に図示点線の矢印方向に回動することが可能となっている(
図5参照)。なお、モータ33は減速歯車付きのサーボモータとすることが好ましい。
【0042】
次に、可動ダイプレート21を固定ダイプレート24に押圧する押圧手段45の構成について
図2及び
図4を参照して説明する。押圧手段45は、6本のカム軸46とカム軸46を支持するカムフォロアベース47とを有している。カムフォロアベース47は、ベース部48と、ベース部48から上方に突設される3本の柱部49とを有している。カムフォロアベース47は、柱部49を支持フレーム50にネジなどで固定される。カム軸46は、軸部51とローラ52と軸部51の先端部に設けられる操作部53とから構成され、ベース部38を下方側から貫通している。ローラ52は、図示しないベアリングを介して軸部51に固定されている。ローラ52は、軸部51の中心軸に対して偏心しており、軸部51を回転することによってローラ52が偏心ローラであることを利用して可動ダイプレート21を固定ダイプレート24に押圧する。操作部53は、先端に六角穴が形成されており六角レンチで回転することが可能となっている。
【0043】
支持フレーム50は、支持プレート54、スライダー55及びスライダーベース56を介してメインフレーム8に固定されている。従って、スリットダイ20は、支持プレート54とローラ52との間で押圧されながら挟持されている。スリットダイ24、支持プレート54及びスライダー55は一体となってメインフレーム8に対してY方向に移動することが可能である。
【0044】
可動ダイプレート21を固定ダイプレート24に押圧手段45によって押圧することによって、可動ダイプレート21と固定ダイプレート24との間の液漏れを防いでいる。なお、押圧手段45は、ベアリングを有するローラ52によって押圧することから固定ダイプレート24を押圧する際にローラ52が回転して過大な押圧力を与えることなく可動ダイプレート21をスムーズに移動させることが可能となっている。支持フレーム50は、支持プレート54、スライダー55及びスライダーベース56を介してメインフレーム8に固定されている。
【0045】
なお、固定ダイプレート24は、可動ダイプレート21に向かって突設する平行キー57を有している。可動ダイプレート21にはキー溝58が形成されていて、平行キー57はキー溝58に嵌合して、可動ダイプレート21が固定ダイプレート24に対して傾かないように案内している。なお、図示は省力するが、支持フレーム50の上方から可動ダイプレート21の頂面を下方側に押圧するボルトが設けられている。このように構成すれば、可動ダイプレート21を平行キー57に押圧することによってスリットダイ20の上方からの液漏れを防ぐことが可能となる。
【0046】
次に、スリットダイスライド機構22の構成について
図3及び
図4を参照して説明する。モータ25の回転は第1歯車27の小歯車27aを介して第4歯車32に伝達されてネジ軸59を回転する。ネジ軸59はスライダー55に固定されたネジブロック60に螺合している。ネジ軸59には左ネジが形成されていることからモータ25の回転に連動して可動ダイプレート21とは逆方向にスリットダイ20を移動する。ネジブロック60はスライダーナットの機能を有する。
【0047】
スライダー55は長さ方向に延長される平行な2本の凸条部55aを有し、凸条部55aには各々溝55bが形成されている。一方、スライダーベース56には、溝55bに嵌合する2本の平行な凸条部56aが形成されていて、スリットダイ20をメインフレーム8に対して平行に移動することが可能となっている。なお、スリットダイ20と可動ダイプレート21とは、同期して逆方向に相対的に移動することが可能となっている。具体的には、可動ダイプレート21の移動量に対してスリットダイ20は、1/2だけ逆方向に移動することになることから、液体は、基準線P(
図9参照)に対して左右対称な形状で基板3に振り分け塗布することが可能となる。このことについては、
図9を参照して後述する。
【0048】
[スリットダイ20の構成]
次に、スリットダイ20の構成について
図6〜
図8を参照して説明する。
【0049】
図6は、スリットダイ20の構成を示す斜視図であり、
図7は、スリットダイ20の組立分解図、
図8は、
図6のA−A切断線で切断した断面図である。なお、
図6〜
図8は、スリットダイ20を簡略化して表しており、取付け具などの付帯的な要素の図示を省略している。スリットダイ20は、可動ダイプレート21と固定ダイプレート24とから構成されている。可動ダイプレート21は、ダイプレートベース70、シムプレート71及びシムプレートベース72が密着積層されて構成される。シムプレート71は、ダイプレートベース70とシムプレートベース72との間に挟持されてネジなどで接合される。
図7に示すように、シムプレート71及びシムプレートベース72には、各々切欠き部71a,72aが形成されており、接合された状態において切欠き部71a,72aそれぞれの端面71b,72bは、スリットギャップG(
図8、
図9参照)の長さ(スリット長)を規定する端面74となる。
【0050】
シムプレートベース72のダイプレート75側の面72cには、平行キー57が嵌合するキー溝58が形成されている。平行キー57は、ダイプレート75にネジなどで固定される。ダイプレートベース70は、ダイプレート75側に突設された凸部70aを有し、凸部70aのダイプレート75側の頂面70bにはマニホールド部80(
図8参照)が穿設されている。凸部70aは、シムプレート71の切欠き部71aを貫通し、シムプレートベース72の切欠き部72aの厚みの途中まで突出している。
【0051】
固定ダイプレート24は、ダイプレート75、シムプレート76及びシムプレートブロック77が密接積層されて構成される。シムプレート76及びシムプレートブロック77は、ダイプレート75の図示左方側に設けられた凹部78に嵌合し、ダイプレート75にネジなどで着脱可能に固定される。シムプレートブロック77は、ダイプレート75のシムプレートベース72に対向する面75aから突出しており、シムプレートベース72及びシムプレート71それぞれの切欠き部72a,71aの図示左方向内側に嵌合可能である。シムプレートブロック77の図示右方側の端面77aは、スリットギャップG(
図8参照)の一方の長さ(スリット長)を規定する。可動ダイプレート21と固定ダイプレート24とを接合した際に、可動ダイプレート21側の端面74と固定ダイプレート24側の端面77aとの距離がスリット長となる。
【0052】
ダイプレート75には、可動ダイプレート21側の面75aにマニホールド部79が穿設されている。マニホールド部79,80は、
図9に示すようにY方向中央部で交差するよう配置されており、同じ形状及び同じサイズを有している。但し、形状及びサイズは多少の違いがあってもよい。なお、可動ダイプレート21と固定ダイプレート24とを接合する際に、ダイプレート75の面75aには、予め塗布対象の液体を潤滑剤として塗布しておくことで、可動ダイプレート21を固定ダイプレート24に対して移動する際の摩擦負荷を減ずることが可能となる。塗布対象以外の潤滑剤を使用すると、塗布対象の液体が固まってしましたり、変質してしまったりすることが考えられるが、塗布対象の液体を使用すればそのような虞はない。可動ダイプレート21と固定ダイプレート24とを接合した際に、シムプレートベース72とダイプレート75それぞれの面72c,75aは摺動面となる。
図7に示すように、シムプレート71,76は厚みが一様な板材で形成され、着脱可能であるから、厚みの変更を容易に行うことができる。すなわち、スリットギャップGの調整が容易に可能となる。
【0053】
図8に示すように、可動ダイプレート21と固定ダイプレート24との間にはスリットギャップGが形成される。具体的には、シムプレートベース70側の凸部頂面70bとダイプレート75の面75aとの隙間がスリットギャップGである。スリットギャップGが形成される範囲がスリット状ノズル81である。スリットギャップGは、単純形状の板材で形成されているシムプレート71,76の厚さを変更することで容易に切り換えることが可能となる。例えば、シムプレート71を厚くすると、シムプレートブロック77がダイプレートベース70を図示左方側に押してスリットギャップGが増加する。この際、シムプレート71の厚みをシムプレート76の厚みと同じにすることによってシムプレートベース72の面72cは、対向するダイプレート75の面75aに密着する。マニホールド部79には、ポンプ6から塗布対象の液体を供給する供給路82が連通している。続いて、塗膜形成動作について
図9及び
図10を参照して説明する。
【0054】
[塗膜形成動作]
図9は、塗膜形成時の動作を模式的に示す説明図であり、
図10は、円形の塗膜を形成するときの動作を模式的に示す説明図である。
図9(a)は、塗布前の初期状態を示す図であり、可動ダイプレート21及びスリットダイ20が移動しない状態を示している。この状態においては、スリット状ノズル81のスリット長は最少塗布幅(最少スリット長)となっている。スリット長の中心を通る直線を基準線Pと表す。マニホールド79,80は、スリット状ノズル81の形成範囲において交差している。なお、最少スリット長を「0」とすることもある。
【0055】
図9(b)は、スリット長が最大、つまり最大塗布幅の場合を表している。可動ダイプレート21を矢印A方向に最大距離移動させることによって最大塗布幅が得られる。スリットダイ20は逆方向に移動する。スリットダイ20の移動距離は、可動ダイプレート21の移動距離の1/2であるから、塗布幅は基準線Pに対して図示左右対称幅となる。このようにすれば、いわゆる基準線Pに対してのセンター振り分け塗布が可能となる。なお、最少塗布幅の状態から最大塗布幅の状態に移行する間に、マニホールド部79,80の容積の総和に変化はなく、いずれの状態においてもスリット状ノズル81に過不足なく液体を供給することが可能となる。なお、スリットギャップGは変化しない。次に、円形の塗膜Sを形成する例について
図10を参照して説明する。
【0056】
図10は、円形の塗膜Sを形成する際の動作を模式的に示す説明図であり、スリット状ノズル81のスリット長と塗膜Sとの相関を表している。
図10(a)〜
図10(c)はスリット状ノズル81のスリット長の変化を表し、
図10(d)は、基板3上に形成された塗膜Sの形状を表している。なお、図中太い矢印は基板3の移動方向を表している。
図10は、スリット長とスリット長に対応する塗布幅との関係を二点鎖線で結んで表している。
図10(a)は、最少スリット長のときを表し、
図10(c)はスリット長が最大のときを表している。スリット長が最大のときに、スリット長が塗膜Sの直径に相当する。
図10(b)は、スリット長が最少から最大に至る途中を表している。スリット長が最大のときから徐々に短くしていけば円形の塗膜を形成することが可能となる。つまり、可動ダイプレート21とスリットダイ20の移動と基板3の移動速度とを同期すれば、基準線Pを対称軸とした線対称の任意の形状の塗膜を形成することが可能となる。
図11に塗布形状の例を示す。
【0057】
図11は、吐出ヘッド機構部2Aを使用したときの塗膜Sの形状例を示す図である。
図11(a)〜
図11(g)に示すように、基準線Pに対して線対称となる形状であれば、円形、半円形、四角形、多角形及びこれらを組み合わせた任意の形状の塗膜Sを最大スリット長の範囲で形成することが可能となる。
【0058】
[吐出ヘッド機構部2Bの構成]
図2〜
図5に記載の吐出ヘッド機構部2Aが、基準線Pに対して左右対称にセンター振り分け塗布が可能な構成であることに対して、吐出ヘッド機構部2Bは基準線Pに対して左右任意形状に塗膜Sを形成することが可能な構成であることに特徴を有している。具体的には、スリットダイスライド機構専用のモータ91を有していることが吐出ヘッド既往部Aとの相違点であり、スリットダイ20及び可動ダイプレートスライド機構23の構成は吐出ヘッド機構部2Aと同じである。
【0059】
図12は、吐出ヘッド機構部2Bの構成を示す平面図であり、
図13は、
図12の図示右方側から見た歯車列及びモータ91の配置を模式的に示す側面図である。
図12では、
図3において説明した吐出ヘッド機構部2Aとの相違個所を中心に説明し、同じ構成部品には
図3と同じ符号を付している。また、
図13では、
図5において説明した歯車列との相違点を中心に説明し、同じ構成部品には
図5と同じ符号を付している。
【0060】
図12及び
図13に示すように、吐出ヘッド機構部2Bは、可動ダイプレートスライド機構23とスリットダイスライド機構90とを有している。スリットダイスライド機構90は、モータ91と、モータ軸91aとカップリングで連結されるネジ軸59とで構成される。モータ91は正逆転可能なサーボモータであり、歯車支持プレート30に固定されている。モータ91は、第1歯車27から離間した位置に配置されている。ネジ軸92には左ネジが形成されていることからモータ91が反時計回りに回転すると図示左方向にスリットダイ20を移動し、時計回りに回転すると図示右方向にスリットダイ20を移動する。スリットダイスライド機構90は、モータ91が直接ネジ軸92に連結していることから、可動ダイプレートスライド機構22に対し独立して駆動することが可能である。従って、基準線Pに対して左右任意形状の塗膜Sを形成することが可能となる。そのことについて、
図14及び
図15を参照して説明する。
【0061】
図14は、スリットダイスライド機構90を停止し、可動ダイプレートスライド機構23のみを駆動したときに形成可能な塗膜Sの形状例を表した図である。従って、塗膜Sは、基準線Pの図示右方側だけに形成される。
図14(a)は台形、
図14(b)は波形を有する形状、
図14(c)は半円形、
図14(d)は変形五角形である。
図14に示した塗膜Sの形状は1例であって、可動ダイプレート21の移動速度、移動距離、移動方向及び基板3の移動速度を適宜制御することによって基準線Pに対して可動ダイプレート21の移動範囲において任意形状の塗膜を形成することが可能となる。
【0062】
図15は、スリットダイスライド機構90及び可動ダイプレートスライド機構23を共に自在の組み合わせで駆動したときに形成可能な塗膜Sの形状例を表した図である。
図15(a)〜
図15(d)に示す塗布形状は1例であって、スリットダイ20と可動ダイプレート23の移動速度、移動方向及び移動距離と、基板3の移動速度とを適宜制御することによって任意形状の塗膜Sを最大塗布幅(最大スリット長)の範囲で形成することが可能となる。なお、スリットダイスライド機構90と可動ダイプレート機構23とを同期させて駆動すれば、
図11に示したような基準線Pに対して線対称形となる塗膜Sを形成することも可能である。
【0063】
なお、スリットコーター1は、水平平坦面に限らず曲面を有する基板3に塗膜Sを形成することが可能である。
図1及び
図16を参照して曲面や傾斜面を有する基板3に塗膜Sを形成することについて説明する。
【0064】
図16は、曲面及び傾斜面を有する基板3に塗膜Sを形成する方法を模式的に示す説明図である。
図16に示すような湾曲した基板3を例示して塗膜Sを形成することを説明する。ステージ11は、基板3に沿った形状を有しているものとする。なお図中の直線Rはスリット状ノズル81の延長線を表し、太い矢印はステージ11(基板11)の移動方向を表している。(a)は、基板3の水平平坦部に液体を塗布する様子を示しており、直線Rは基板3に対して鉛直線上にある。従って、スリットダイ20は傾斜させずにZ軸駆動機構7(
図1参照)によってスリットダイ20を基板3に対して液体を塗布することが可能な位置に移動させた状態を示している。
【0065】
(b)は、基板3の曲面部に液体を塗布する様子を示しており、直線Rは曲面部の法線上にある。従って、(b)は、直線Rが法線上に達するまでスリットダイ回動機構9(
図1参照)によってスリットダイ20を傾斜させ、さらにZ軸駆動機構部7(
図1参照)によってスリットダイ20を基板3に対して液体を塗布することが可能な位置に移動させた状態を示している。
【0066】
(c)は、基板3の傾斜面に液体を塗布する様子を示しており、直線Rは斜面部に対して垂直線上にある。従って、(c)は、直線Rが垂直線上に達するまでスリットダイ回動機構9(
図1参照)によってスリットダイ20を傾斜させ、さらにZ軸駆動機構部7(
図1参照)によってスリットダイ20を基板3に対して液体を塗布することが可能な位置に移動させた状態を示している。
【0067】
(d)は、基板3の水平平坦面に液体を塗布する様子を示しており、直線Rは基板3に対して鉛直線上にある。従って、スリットダイ20は傾斜させずにZ軸駆動機構部7(
図1参照)によってスリットダイ20を基板3に対して液体を塗布することが可能な位置に移動させた状態を示している。
【0068】
すなわち、基板3の送り速度、基板3の曲率や傾斜角度に合わせてスリットダイ20の傾斜角度、傾斜方向及びZ方向高さを制御することによって曲面や傾斜面が連続している基板3に塗膜Sを形成することが可能となる。この制御は、予め制御装置(図示せず)に基板3の送り速度、基板3の曲率、傾斜角度及び傾斜方向と、Z方向の高さデータをプログラムしておくことで可能となる。
【0069】
なお、図示は省略するが、制御装置は液量コントローラを有している。液量コントローラは、基板3上に液体を吐出して塗膜を形成する際に、スリット状ノズル81のスリット長の変化及び基板3の移動速度に応じてマニホールド83への液体の供給量を制御する装置である。液体の吐出量は、スリット長の寸法及び基板3の移動速度によって決まる。スリット長は可動ダイプレート21の移動量によって、基板3の移動速度はステージ駆動機構4によって検知可能である。液量コントローラによって液体の吐出量に応じて液体供給量を制御すれば、過不足のない液体供給により所望の塗膜形状を形成することが可能となる。また、液体供給経路内に液体が不足することによって気泡が発生することを防ぐことが可能となる。
【0070】
或いは、液量コントローラに替えて基板3の移動速度(送り速度)を制御する送り速度コントローラ(図示は省略)としてもよい。送り速度コントローラでは、液体の供給量を一定にし、スリット長の変化に同期して基板3の移動速度を制御するものである。例えば、スリット長を長くしていくときには吐出量が増加していくことから基板3の送り速度を遅くすれば液体が不足することがない。また、スリット長を短くしていくときには基板3の送り速度を速くすれば液体の吐出過多を防ぐことが可能となる。
【0071】
以上説明したスリットコーター1は、固定ダイプレート24、固定ダイプレート24に対して長さ方向にスライド移動可能な可動ダイプレート21、及び固定ダイプレート24と可動ダイプレート21との接合面に形成されるスリット状ノズル81とを有してメインフレーム8に取付けられるスリットダイ20と、可動ダイプレート21を移動してスリット状ノズル81のスリット長を変更する可動ダイプレートスライド機構23と、スリットダイ20をメインフレーム8に沿って移動するスリットダイスライド機構22と、ワークである基板3をステージ11に吸着して搬送するステージ駆動機構4と、を有し、固定ダイプレート24及び可動ダイプレート21には、それぞれスリット状ノズル81のスリットギャップGの大きさを変更することが可能なシムプレート76,71が着脱可能に固定されている。
【0072】
このような構成にすれば、可動ダイプレート21と固定ダイプレート24との間に介在される着脱可能な2枚のシムプレート71,76の厚みを変更すればスリット状ノズル81のスリットギャップGを容易に切り換えることが可能となる。また、可動ダイプレート21を固定ダイプレート24に対してスリット状ノズル81の長さ方向に移動することによってスリット長、すなわち塗布幅を自在に制御することが可能となる。従って、従来のスリットコート法の特長を生かしつつ、吐出する液体の種類(粘度の違い)や吐出速度に対応しやすく、しかも、矩形、曲線或いは直線と曲線とを組み合わせた任意形状の塗膜を形成することが可能となる。
【0073】
吐出ヘッド機構部2Aは、可動ダイプレートスライド機構23とスリットダイスライド機構22とが第1歯車27、第2歯車28、第3歯車29及び第4歯車32によって1個のモータ25に連結されており、スリットダイ20の移動距離は、可動ダイプレート21の移動距離の1/2である。スリットダイ20の移動方向は可動ダイプレート21の移動方向に対して逆方向である
【0074】
このようにすれば、可動ダイプレート21と固定ダイプレート24とは同期して逆方向に相対的に移動する。スリットダイ20の移動距離を可動ダイプレート24の移動距離の1/2としていることから基準線Pに対して線対称形、いわゆるセンター振り分け塗布が可能となる。従って、可動ダイプレート21の移動速度及び移動距離と、基板3の移動速度(塗布速度)とを制御すれば四角形や多角形或いは円形の液体塗布が可能となり、例えば、半導体ウエハの外形に沿った円形の塗膜Sを形成することが可能となる。
【0075】
また、吐出ヘッド機構部2Bにおいては、スリットダイスライド機構90及び可動ダイプレートスライド機構23が、それぞれを独立して駆動するモータ25,91を有している。このようにすれば、可動ダイプレート21を移動させてスリット長を変更することに対してスリットダイ20の移動速度、移動方向及び移動距離を任意に制御することが可能になることから、矩形、多角形、或いは直線と曲線とを組み合わせた任意形状の塗膜を形成することが可能となる。勿論、センター振り分け塗布も可能となる。
【0076】
また、可動ダイプレート21及び固定ダイプレート24はそれぞれ、スリット状ノズル81に液体を供給するためのマニホールド部80,79を備えており、各マニホールド部は連通して1個のマニホールド83を形成し、可動ダイプレート21の移動位置に関わらずマニホールド83の容積は一定である。
【0077】
このような構成にすれば、可動ダイプレート21を固定ダイプレート24に対して移動する際に、マニホールド83の容積が変わらないのでスリット長が変化してもスリット状ノズル81に安定して液体を供給することができ、吐出均一性を確保することが可能となる。すなわち、塗膜の厚みや形状を高精度に形成することが可能となる。特に、スリット長が徐々に大きくなるのに従いスリット状ノズル81の容積が増加していくが、マニホールド83の容積は変化しないので液体を過不足なく供給すること可能となる。
【0078】
可動ダイプレート21と固定ダイプレート24とは、可動ダイプレート21の移動方向に延長される平行キー57によって案内されている。このように平行キー57を設けることによって、可動ダイプレート21を固定ダイプレート24に対して移動させる際に、可動ダイプレート21が固定ダイプレート24に対して傾斜することを抑えることができるから摺動性を高めることが可能となり、さらにスリット状ノズル81の吐出開口部35と基板3との隙間を均一にすることができることから塗布精度を高めることが可能となる。
【0079】
スリットコーター1は、基板3上に液体を吐出して塗膜Sを形成する際に、スリット状ノズル81のスリット長の変化及び基板3の移動速度に応じてマニホールド83への液体の供給量を制御する液量コントローラを備えるようにしてもよい。液体の吐出量に応じて液体供給量を制御することによって、過不足のない液体供給により所望の塗膜形状を形成することが可能となる。また、液体供給経路内に液体が不足することによって気泡が発生することを防ぐことが可能となる。
【0080】
また、上述した液量コントローラに替えて、液体の供給量を一定にしてスリット長の変化に同期して基板3の移動速度を制御する送り速度コントローラを備えるようにしてもよい。例えば、スリット長を長くしていくときには吐出量が増加していくことから基板3の移動速度を遅くすれば液体が不足することがない。また、スリット長を短くしていくときには基板3の移動速度を速くすれば液体の吐出過多を防ぐことが可能となる。
【0081】
また、スリットダイ20においては、可動ダイプレート21と固定ダイプレート24との摺動面に塗布対象の液体が塗布されている。予め可動ダイプレート又は固定ダイプレート24との摺動面(面72c又は面75a)に塗布対象の液体を塗布しておけば液体の膜が潤滑剤となり、可動ダイプレート21と固定ダイプレート22との摺動性を高めることが可能となる。
【0082】
スリットコーター1は、可動ダイプレート21を固定ダイプレート24に押圧するローラ52及びローラ52を支持するカムフォロアベース47とから構成される押圧手段を有している。ローラ52によって可動ダイプレート21と固定ダイプレート24とを密接させることによって摺動面(面72c又は面75a)からの液漏れの発生を防ぐことが可能となり、スリットギャップGを一定に維持することが可能となる。また、押圧手段としてベアリングを介して軸支されるローラ52を使用することによって、可動ダイプレート21の摩擦負荷の増加を抑えることが可能となり摺動性を維持できる。なお、支持フレーム50の上方から可動ダイプレート21の頂面を下方側に押圧するようにすれば、可動ダイプレート21を平行キー57に押圧することによってスリットダイ20の上方からの液漏れを防ぐことが可能となる。
【0083】
また、スリットコート1は、基板3が厚み方向に曲面を有しているときに、スリット状ノズル81が曲面の法線延長上に配置されるようスリットダイ20を傾斜させるスリットダイ回動機構部9を有している。スリットダイ回動機構部9によってスリットダイ20の傾斜角度を制御すれば、曲面や傾斜面を有する基板3にも高精度の塗膜を形成することが可能となる。なお、基板3が平坦面であれば、スリット状ノズル81を平坦面に対して垂直線上に配置するようにスリットダイ回動機構部9を制御すればよい。このようにすれば、曲面や傾斜面を有する基板3にも塗膜を形成することが可能となる。
【0084】
なお、本発明は前述の実施の形態に限定されるものではなく、本発明の目的を達成できる範囲での変形、改良等は本発明に含まれるものである。例えば、前述した実施の形態では、スリットコーター1は、吐出ヘッド機構部2A又は吐出ヘッド機構部2Bの一方を1セット装備する構成でるが、吐出ヘッド機構部2A又は吐出ヘッド機構部2Bのどちらかをメインフレーム8に沿って2セット或いは3セットというように複数セット直列に配設してもよい。このようにすれば、一度に複数の基板に塗膜Sを形成することや、一枚の基板に複数列の塗膜Sを形成することが可能となる。吐出ヘッド機構部2Aと吐出ヘッド機構部2Bを交互に配列してもよい。
【0085】
また、前述した実施の形態では、吐出ヘッド機構部2A又は吐出ヘッド機構部2Bに対して基板3を移動しているが、基板3に対して吐出ヘッド機構部2A又は吐出ヘッド機構部2Bを移動する構成としてもよい。このような構成においては、メインフレーム8をX方向に移動するX駆動機構を装備すれば可能となる。さらに、X駆動機構とステージ駆動機構4を併用する構成とすることも可能である。